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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129297
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】車速制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/14 20060101AFI20240919BHJP
   B60W 30/08 20120101ALI20240919BHJP
【FI】
B60W30/14
B60W30/08
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038408
(22)【出願日】2023-03-13
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(74)【代理人】
【識別番号】100167793
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 学
(72)【発明者】
【氏名】仲田 昌司
【テーマコード(参考)】
3D241
【Fターム(参考)】
3D241BA08
3D241BA10
3D241BA31
3D241CE05
3D241DB02Z
3D241DC31Z
3D241DC33Z
3D241DC50Z
(57)【要約】
【課題】走行可能な幅に適した速度で車両を走行させる。
【解決手段】車速制御装置10は、車両の走行路の進行方向前方の障害物の位置及び大きさを取得する取得部121と、障害物の位置及び大きさに基づいて、走行路において車両が走行可能な走行幅を算出する算出部123と、車両の車幅及び減速度を記憶する記憶部11と、走行幅と車幅との差、及び減速度に基づいて、車両が走行路を走行する車速を決定する決定部124と、を有する。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の走行路の進行方向前方の障害物の位置及び大きさを取得する取得部と、
前記障害物の位置及び大きさに基づいて、前記走行路において前記車両が走行可能な走行幅を算出する算出部と、
前記車両の車幅及び減速度を記憶する記憶部と、
前記走行幅と前記車幅との差、及び前記減速度に基づいて、前記車両が前記走行路を走行する車速を決定する決定部と、
を有する車速制御装置。
【請求項2】
前記取得部は、前記走行路の左側の第1障害物の位置及び大きさと、前記走行路の右側の第2障害物の位置及び大きさとを取得し、
前記算出部は、前記走行幅として、前記第1障害物と前記第2障害物との距離を算出する、
請求項1に記載の車速制御装置。
【請求項3】
複数の前記障害物のうち、前記車両が前記減速度で減速して停止する位置の先にある前記障害物を特定する特定部をさらに有し、
前記算出部は、前記特定部が特定した前記障害物の位置及び大きさに基づいて、前記走行幅を算出する、
請求項1に記載の車速制御装置。
【請求項4】
前記決定部は、予め設定された前記障害物の速度と所定の余裕距離とにさらに基づいて、前記車速を決定する、
請求項1に記載の車速制御装置。
【請求項5】
前記算出部は、前記障害物の位置に基づいて前記障害物の速度をさらに算出し、
前記決定部は、前記障害物が前記車両の進行方向に移動する場合、決定した前記車速に前記障害物の速度を加算し、前記障害物が前記車両の進行方向と反対方向に移動する場合、決定した前記車速から前記障害物の速度を減算する、
請求項1に記載の車速制御装置。
【請求項6】
前記算出部は、前記障害物が、前記車両の進行方向と直交する方向において前記走行路から離れる場合、前記障害物の速度に補正係数を乗算した補正値を前記走行幅に加算し、前記障害物が、前記車両の進行方向と直交する方向において前記走行路に近づく場合、前記補正値を前記走行幅から減算する、
請求項1に記載の車速制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車速制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の車両制御装置は、車両の車幅方向両側の障害物の位置に基づいて車両が走行可能な幅を算出することにより、車両が走行できるか否かを判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2020/235385号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の車両制御装置は、車両が走行できると判定した場合は、車両が走行可能な幅と車幅との差に余裕がない道路であっても、運転者の操作に応じた速度で走行する。このため、運転者が誤って速度を速くする運転操作を行うことで車両が障害物に接触するおそれがある。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、走行可能な幅に適した速度で車両を走行させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様に係る車速制御装置は、車両の走行路の進行方向前方の障害物の位置及び大きさを取得する取得部と、前記障害物の位置及び大きさに基づいて、前記走行路において前記車両が走行可能な走行幅を算出する算出部と、前記車両の車幅及び減速度を記憶する記憶部と、前記走行幅と前記車幅との差、及び前記減速度に基づいて、前記車両が前記走行路を走行する車速を決定する決定部と、を有する。
【0007】
前記取得部は、前記走行路の左側の第1障害物の位置及び大きさと、前記走行路の右側の第2障害物の位置及び大きさとを取得し、前記算出部は、前記走行幅として、前記第1障害物と前記第2障害物との距離を算出してもよい。
【0008】
複数の前記障害物のうち、前記車両が前記減速度で減速して停止する位置の先にある前記障害物を特定する特定部をさらに有し、前記算出部は、前記特定部が特定した前記障害物の位置及び大きさに基づいて、前記走行幅を算出してもよい。
【0009】
前記決定部は、予め設定された前記障害物の速度と所定の余裕距離とにさらに基づいて、前記車速を決定してもよい。
【0010】
前記算出部は、前記障害物の位置に基づいて前記障害物の速度をさらに算出し、前記決定部は、前記障害物が前記車両の進行方向に移動する場合、決定した前記車速に前記障害物の速度を加算し、前記障害物が前記車両の進行方向と反対方向に移動する場合、決定した前記車速から前記障害物の速度を減算してもよい。
【0011】
前記算出部は、前記障害物が、前記車両の進行方向と直交する方向において前記走行路から離れる場合、前記障害物の速度に補正係数を乗算した補正値を前記走行幅に加算し、前記障害物が、前記車両の進行方向と直交する方向において前記走行路に近づく場合、前記補正値を前記走行幅から減算してもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、走行可能な幅に適した速度で車両を走行させるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態に係る車両Sの概要を説明するための図である。
図2】車両Sの車速を決定する動作を説明するための図である。
図3】走行路の複数の障害物の一例を示す図である。
図4】車速制御装置10における処理シーケンスの例を示す図である。
図5】第2変形例に係る走行路の障害物の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<車両Sの概要>
図1は、本実施形態に係る車両Sの概要を説明するための図である。図1に示す車両Sは、障害物特定装置1と、速度センサ2と、走行制御装置3と、車速制御装置10と、を備える。車両Sは、例えば、運転者が設定した車速に基づく走行(いわゆるクルーズコントロールによる走行)が可能な車両であり、走行路の進行方向前方の障害物の位置及び大きさに基づいて、走行路を走行する車速を決定する機能を有する。障害物は、例えば、車両Sと異なる他の車両、人、動植物、壁、及び車両Sの走行が困難な段差である。運転者が設定した速度は、速度の上限値を含む。
【0015】
障害物特定装置1は、車両Sの進行方向前方の障害物の位置及び大きさを特定する処理を実行する。一例として、障害物特定装置1は、車両Sに搭載されたADAS(Advanced Driver-Assistance Systems;先進運転支援システム)が備えるLiDAR(Light Detection And Ranging)等の三次元レーザ(不図示)が、車両Sの進行方向前方の物体を測定することにより生成した点群データに基づいて、障害物の位置及び大きさを特定する。速度センサ2は、車両Sの車速を検出して車速制御装置10に送信する。走行制御装置3は、例えばVCU(Vehicle Control Unit)であり、車速制御装置10が決定した車速で車両Sを走行させる。
【0016】
車速制御装置10は、障害物特定装置1が特定した障害物の位置及び大きさと、速度センサ2が検出した車速とに基づいて、車両Sが障害物の周囲を走行するための車速を決定する処理を実行する。車速制御装置10は、電子部品を含む筐体を有していてもよく、電子部品が実装されたプリント基板であってもよい。
【0017】
図2は、車両Sの車速を決定する動作を説明するための図である。車速制御装置10は、走行路Aの位置及び幅における障害物Q1の位置及び大きさを障害物特定装置1から取得し、車両Sが走行可能な走行幅L1を算出する。そして、車速制御装置10は、走行幅L1と車幅L2との差、及び車両Sの減速度に基づいて、車両Sが位置P1から位置P2までの距離R1を走行する車速を決定する。
【0018】
車両Sは、例えば、クルーズコントロールによる走行において車両Sの運転者が設定した車速よりも車速制御装置10が決定した車速が小さい場合、車速制御装置10が決定した車速に減速して走行する。クルーズコントロールによる走行ではない場合、車両Sは、車速制御装置10が決定した車速を上限値として、アクセルペダルの踏込量に対応する車速で走行する。これにより、車両Sは、走行路Aにおいて運転者が誤って車速を速くする動作(すなわち、設定する車速を誤って大きくしたり、誤ってアクセルを踏み込んだりする動作)を行ったとしても、走行可能な走行幅L1に応じた車速で走行できるため、車両Sが障害物Q1に接触することを抑制できる。
以下、車速制御装置10の構成及び動作を詳細に説明する。
【0019】
<車速制御装置10の構成>
車速制御装置10は、記憶部11と、制御部12と、を有する。制御部12は、取得部121と、特定部122と、算出部123と、決定部124と、を有する。
【0020】
記憶部11は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)等の記憶媒体を有する。記憶部11は、制御部12が実行するプログラムを記憶している。記憶部11は、車両Sの車速を決定するための各種の情報を記憶している。一例として、記憶部11は、車両Sの車幅L2及び減速度を記憶する。減速度は、車両Sがスリップ等の異常を発生しないように減速できる値であり、実験又はシミュレーションにより定められる。
【0021】
制御部12は、例えば、CPU(Central Processing Unit)又はECU(Electronic Control Unit)等のプロセッサである。制御部12は、記憶部11に記憶されたプログラムを実行することにより、取得部121、特定部122、算出部123及び決定部124として機能する。なお、制御部12は、1つのプロセッサで構成されていてもよいし、複数のプロセッサ又は1以上のプロセッサと電子回路との組み合わせにより構成されていてもよい。
以下、制御部12により実現される各部の構成を説明する。
【0022】
取得部121は、障害物特定装置1が特定した車両Sの走行路Aの進行方向前方の障害物の位置及び大きさを取得する。例えば、図2において、取得部121は、障害物Q1の輪郭線に対応する複数の座標、及び走行路Aの内側と外側との境界にある段差F1及び段差F2に対応する複数の座標を取得する。一例として、座標は、車両座標系の座標である。
【0023】
取得部121は、複数の障害物それぞれの位置及び大きさを取得してもよい。図3は、走行路の複数の障害物の一例を示す図である。取得部121は、例えば、走行路Aの左側の第1障害物Q1の位置及び大きさと、走行路Aの右側の第2障害物Q2の位置及び大きさとを取得する。また、取得部121は、速度センサ2が検出した走行中の車両Sの速度を取得する。
【0024】
特定部122は、一定時間ごとに、走行路Aの複数の障害物のうち、車両Sの車速を決定する対象となる障害物を特定する。特定部122は、例えば、記憶部11に記憶された減速度を参照することにより、複数の障害物のうち、車両Sが当該減速度で減速して停止する位置の先にある障害物を特定する。例えば、図3において、特定部122は、取得部121が取得した速度で走行する車両Sが記憶部11に記憶された減速度で減速した場合に、位置P3で停止することを特定する。そして、特定部122は、位置P3から距離R2先にある第1障害物Q1及び第2障害物Q2を特定する。すなわち、特定部122は、進行方向において位置P3からもっとも近い位置にある障害物を特定する。
【0025】
算出部123は、特定部122が特定した障害物Q1の位置及び大きさに基づいて、走行路Aにおいて車両Sが走行可能な走行幅L1を算出する。例えば、図2において、算出部123は、障害物Q1の輪郭線に対応する複数の座標のうち、進行方向と直交する方向において走行路Aの中央にもっとも近い座標C1を特定する。そして、算出部123は、段差F2に対応する複数の座標のうち、座標C1にもっとも近い座標C2を特定し、座標C1と座標C2との距離L1を走行幅として算出する。
【0026】
算出部123は、走行路Aの左側に第1障害物Q1があり、走行路Aの右側に第2障害物Q2がある場合、走行幅として、第1障害物Q1と第2障害物Q2との距離を算出してもよい。例えば、図3において、算出部123は、第1障害物Q1の輪郭線に対応する複数の座標のうち、進行方向と直交する方向において走行路Aの中央にもっとも近い座標C3を特定する。算出部123は、第2障害物Q2の輪郭線に対応する複数の座標のうち、進行方向と直交する方向において走行路Aの中央にもっとも近い座標C4を特定する。そして、算出部123は、座標C3と座標C4との距離L1を走行幅として算出する。
【0027】
走行路Aの障害物が車両Sと異なる他の車両、人又は動物である場合、障害物が移動することが想定される。そこで、算出部123は、障害物の位置に基づいて障害物の速度を算出する。算出部123は、例えば、所定の時間が経過する度に取得部121が取得した障害物の位置の差に基づいて障害物の速度を算出する。算出部123がこのように動作することで、後述する決定部124が、障害物の速度を考慮した車速を決定することができる。
【0028】
また、算出部123は、所定の時間が経過する度に取得部121が取得した障害物の位置に基づいて、障害物が移動する方向を特定する。一例として、算出部123が特定する方向は、図3に示す方向D1、D2、D3及びD4の少なくともいずれかである。そして、算出部123は、障害物が、車両Sの進行方向と直交する方向において走行路Aから離れる場合(図3に示す方向D3に移動する場合)、障害物の速度に補正係数を乗算した補正値を走行幅L1に加算する。補正係数は、実験又はシミュレーションにより定められてた係数であり、記憶部11に記憶されている。一方、算出部123は、障害物が、車両Sの進行方向と直交する方向において走行路Aに近づく場合(図3に示す方向D4に移動する場合)、補正値を走行幅L1から減算する。算出部123がこのように動作することで、障害物と走行路Aとの距離に基づく走行幅L1を算出できる。
【0029】
決定部124は、走行幅L1と車幅L2との差、及び減速度に基づいて、車両Sが走行路Aを走行する車速を決定する。決定部124は、例えば、走行幅L1と車幅L2との差δ、記憶部11に記憶された減速度αを用いて「φ=αδ」を算出することにより、車速φを決定する。決定部124がこのように動作することで、車両Sは、走行可能な幅に応じた車速φで走行することができる。その結果、車両Sの車速が大きいことにより、障害物に接触することを抑制できる。
【0030】
走行路Aの障害物が人又は動物である場合、障害物が走行路Aに向かって移動する(すなわち飛び出す)可能性がある。そこで、決定部124は、予め設定された障害物の速度βと所定の余裕距離τとにさらに基づいて、車速φを決定してもよい。障害物の速度βは、例えば、人又は動物が走行路に飛び出す際の速度であり、所定の余裕距離τは、いわゆるオフセット値である。速度β及び余裕距離τは、実験又はシミュレーションにより定められており、記憶部11に記憶されている。決定部124は、例えば「φ=α(δ+τ)/β」を算出することにより車速φを決定する。決定部124がこのように動作することで、障害物が走行路Aに飛び出した場合であっても、車両Sは障害物に接触する位置よりも手前の位置で停止することができる。
【0031】
さらに、走行路Aの障害物が人又は動物である場合、障害物が移動する速度及び方向に応じて、車両Sが走行路Aを走行するために適した車速が変化する。そこで、決定部124は、障害物が移動する速度及び方向に基づいて車両Sの車速を決定してもよい。決定部124は、例えば、障害物が車両Sの進行方向に移動する場合(図3に示す方向D1に移動する場合)、決定した車速に障害物の速度を加算する。一方、決定部124は、障害物が車両Sの進行方向と反対方向に移動する場合(図3に示す方向D2に移動する場合)、決定した車速から障害物の速度を減算する。決定部124がこのように動作することで、障害物が車両Sに近づく場合は車両Sの車速を小さくし、障害物が車両Sから遠ざかる場合は車両Sの車速を大きくすることができるため、障害物が移動する方向に応じた車速を決定できる。
【0032】
<車速制御装置10における処理シーケンス>
図4は、車速制御装置10における処理シーケンスの例を示す図である。図4に示す処理シーケンスは、障害物Qの位置及び大きさに基づいて、車両Sが走行路Aを走行する車速を決定する動作を示す。車速制御装置10は、図4に示す処理シーケンスを一定時間ごとに繰り返す。
【0033】
取得部121は、走行路Aの進行方向前方の障害物Qの位置及び大きさを取得する(S11)。算出部123は、取得部121が取得した障害物Qの位置及び大きさに基づいて、走行路Aにおける車両Sの走行幅L1を算出する(S12)。決定部124は、走行幅L1と車幅L2との差、及び減速度に基づいて、車両Sが走行路Aを走行する車速を決定する(S13)。
【0034】
算出部123は、所定の時間が経過する度に取得部121が取得した障害物Qの位置及び大きさに基づいて、障害物Qの速度を算出し、障害物Qが移動する方向を特定する(S14)。算出部123が算出した障害物Qの速度が0である場合(S15のNO)、車速制御装置10は、S13において決定した車速を走行制御装置3に通知する(S19)。
【0035】
算出部123が算出した障害物Qの速度が0より大きい場合(S15のYES)、かつ算出部123が特定した障害物Qの移動方向が車両進行方向である場合(S16のYES)、決定部124は、S13において決定した車速に障害物Qの速度を加算する(S17)。算出部123が算出した障害物Qの速度が0より大きい場合(S15のYES)、かつ算出部123が特定した障害物Qの移動方向が車両進行方向ではない場合(S16のNO)、決定部124は、S13において決定した車速から障害物Qの速度を減算する(S18)。決定部124は、決定した車速を走行制御装置3に通知する(S19)。
【0036】
<第1変形例>
以上の説明においては、車速制御装置10が走行路Aを走行する車両Sの車速を決定する動作を例示したが、これに限らない。車速制御装置10は、決定した車速を車両Sの車速の上限値として走行制御装置3に通知してもよい。
【0037】
<第2変形例>
以上の説明においては、算出部123が走行路Aにおいて車両Sが走行可能な走行幅を1つ算出する動作を例示したが、これに限らない。車速制御装置10においては、算出部123が、走行路Aにおいて車両Sが走行可能な複数の走行幅を算出し、決定部124が、複数の走行幅のうち1つの走行幅に基づいて車速を決定してもよい。
【0038】
図5は、第2変形例に係る走行路の障害物の一例を示す図である。図5においては、走行路Aを走行する車両Sの進行方向前方に障害物Q1が置かれている。まず、算出部123は、障害物Q1の輪郭線に対応する複数の座標のうち、段差F1にもっとも近い座標C1と段差F2にもっとも近い座標C2とを特定する。そして、算出部123は、段差F1に対応する複数の座標のうち座標C1にもっとも近い座標P1と座標C1との距離L1、及び段差F2に対応する複数の座標のうち座標C2にもっとも近い座標P2と座標C2との距離L2を算出する。続いて、決定部124は、算出部123が算出した距離L1及び距離L2のうち、距離が大きい距離L2を用いて車両Sの車速を決定する。車速制御装置10がこのように動作することで、走行路Aにおいて複数の走行可能な走行幅がある場合に、もっとも大きい走行幅(すなわち、もっとも安全に走行できる走行幅)を用いた車速を決定できる。
【0039】
<車速制御装置10による効果>
以上説明したように、車速制御装置10は、車両Sの走行路Aの進行方向前方の障害物の位置及び大きさを取得する取得部121と、障害物の位置及び大きさに基づいて、走行路Aにおいて車両Sが走行可能な走行幅L1を算出する算出部123と、車両Sの車幅L2及び減速度を記憶する記憶部11と、走行幅L1と車幅L2との差、及び減速度に基づいて、車両Sが走行路を走行する車速を決定する決定部124とを有する。
【0040】
車速制御装置10がこのように構成されることで、走行路Aにおいて走行可能な走行幅L1に応じた車速で車両Sを走行させることができる。その結果、クルーズコントロールにおいて運転者が誤った車速を設定したり、手動操舵において誤ってアクセルを踏み込んだりした場合であっても、車両Sが障害物に接触することを抑制できる。
【0041】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0042】
1 障害物特定装置
2 速度センサ
3 走行制御装置
10 車速制御装置
11 記憶部
12 制御部
121 取得部
122 特定部
123 算出部
124 決定部
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2023-12-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の走行路の進行方向前方の障害物の位置及び大きさを取得する取得部と、
前記障害物の位置及び大きさに基づいて、前記走行路において前記車両が走行可能な走行幅を算出する算出部と、
前記車両の車幅及び減速度を記憶する記憶部と、
前記走行幅と前記車幅との差、及び前記減速度に基づいて、前記車両が前記走行路を走行する車速を決定する決定部と、
複数の前記障害物のうち、前記車両が前記減速度で減速して停止する位置の先にある前記障害物を特定する特定部と、
を有し、
前記算出部は、前記特定部が特定した前記障害物の位置及び大きさに基づいて、前記走行幅を算出する、
速制御装置。
【請求項2】
前記取得部は、前記走行路の左側の第1障害物の位置及び大きさと、前記走行路の右側の第2障害物の位置及び大きさとを取得し、
前記算出部は、前記走行幅として、前記第1障害物と前記第2障害物との距離を算出する、
請求項1に記載の車速制御装置。
【請求項3】
前記決定部は、予め設定された前記障害物の速度と所定の余裕距離とにさらに基づいて、前記車速を決定する、
請求項1に記載の車速制御装置。
【請求項4】
前記算出部は、前記障害物の位置に基づいて前記障害物の速度をさらに算出し、
前記決定部は、前記障害物が前記車両の進行方向に移動する場合、決定した前記車速に前記障害物の速度を加算し、前記障害物が前記車両の進行方向と反対方向に移動する場合、決定した前記車速から前記障害物の速度を減算する、
請求項1に記載の車速制御装置。
【請求項5】
前記算出部は、前記障害物が、前記車両の進行方向と直交する方向において前記走行路から離れる場合、前記障害物の速度に補正係数を乗算した補正値を前記走行幅に加算し、前記障害物が、前記車両の進行方向と直交する方向において前記走行路に近づく場合、前記補正値を前記走行幅から減算する、
請求項1に記載の車速制御装置。