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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129301
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】コイル後端材の取出装置
(51)【国際特許分類】
   B21D 43/04 20060101AFI20240919BHJP
【FI】
B21D43/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038413
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田畑 和博
(57)【要約】
【課題】プレス機で発生したコイル後端材を長尺の場合でも人手をかけずに取り出すことができる、コイル後端材の取出装置を提供する。
【解決手段】コイル後端材の取出装置101は、プレス機6に並置される本体部20と、コイル後端材Wを保持するための保持ユニット30と、本体部20と保持ユニット30との間に介装され、本体部20に対する保持ユニット30の前後方向Xの相対位置が可変となるように互いに前後方向Xにスライド可能に連結された複数の可動体41,42と、複数の可動体41,42のそれぞれをそれぞれがスライド駆動する複数の駆動部51,52と、保持ユニット30が本体部20に対して本体部20側からプレス機6のプレス加工領域7までの間で複数の可動体41,42を介して前後方向Xに複数段階で動くように複数の駆動部51,52を制御する制御部と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレス機で発生したコイル後端材をプレス加工領域から取り出す、コイル後端材の取出装置であって、
上記プレス機に並置される本体部と、
上記コイル後端材を保持するための保持ユニットと、
上記本体部と上記保持ユニットとの間に介装され、上記本体部に対する上記保持ユニットの前後方向の相対位置が可変となるように互いに前後方向にスライド可能に連結された複数の可動体と、
上記複数の可動体のそれぞれをそれぞれがスライド駆動する複数の駆動部と、
上記保持ユニットが上記本体部に対して上記本体部側から上記プレス機の上記プレス加工領域までの間で上記複数の可動体を介して前後方向に複数段階で動くように、上記複数の駆動部を制御する制御部と、
を備える、コイル後端材の取出装置。
【請求項2】
上記複数の可動体は、上記保持ユニットと一体化された取付部材と、上記取付部材を前後方向にスライド可能に支持する支持機構部と、で構成されており、上記支持機構部は、上記本体部によって前後方向にスライド可能に支持されている、請求項1に記載の、コイル後端材の取出装置。
【請求項3】
上記支持機構部は、上記取付部材を前後方向にスライド可能に支持するために前後方向に延びるスライドシリンダを有し、上記スライドシリンダは、ピストンを内蔵したシリンダ部と、上記ピストンに連結されたスライダと、を有し、上記スライダが上記取付部材に固定されている、請求項2に記載の、コイル後端材の取出装置。
【請求項4】
上記スライドシリンダを上下方向に昇降させる昇降駆動部を備える、請求項3に記載の、コイル後端材の取出装置。
【請求項5】
上記保持ユニットと上記取付部材と上記スライドシリンダは、前後方向から見たときに互いに横並びとなるように配置される、請求項3または4に記載の、コイル後端材の取出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル後端材の取出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、コイル材の材料端末送り装置が開示されている。この装置は、プレス機のプレス加工領域に配置されるものであり、コイル材を平坦に展開した材料をピッチ送りしてプレス加工領域に送るように動作する。この装置によれば、コイル材の端末送りが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-62394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、プレス機のプレス加工領域では、コイル材の加工によってコイル後端材が発生する。このコイル後端材には、予定された一定長さの製品材料と、短尺の欠寸材料と、が含まれる。製品材料は製品に使用され、欠寸材料は廃棄される。コイル材の加工後にプレス加工領域からコイル後端材を取り出す必要がある。コイル後端材の取り出し作業は、作業者がプレス加工領域に直にアクセスして行う人手作業ではなく、プレス機の下流側に設置した取出設備を使用して自動で行われるのが好ましい。この場合、取出設備の設置に要するスペースが限られていても、長尺のコイル後端材をプレス機のプレス加工領域から確実に取り出すことを可能とする技術が求められている。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、プレス機で発生したコイル後端材を長尺の場合でも人手をかけずに取り出すことができる、コイル後端材の取出装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、
プレス機で発生したコイル後端材をプレス加工領域から取り出す、コイル後端材の取出装置であって、
上記プレス機に並置される本体部と、
上記コイル後端材を保持するための保持ユニットと、
上記本体部と上記保持ユニットとの間に介装され、上記本体部に対する上記保持ユニットの前後方向の相対位置が可変となるように互いに前後方向にスライド可能に連結された複数の可動体と、
上記複数の可動体のそれぞれをそれぞれがスライド駆動する複数の駆動部と、
上記保持ユニットが上記本体部に対して上記本体部側から上記プレス機の上記プレス加工領域までの間で上記複数の可動体を介して前後方向に複数段階で動くように、上記複数の駆動部を制御する制御部と、
を備える、コイル後端材の取出装置、
にある。
【発明の効果】
【0007】
上述の態様の、コイル後端材の取出装置において、本体部と、コイル後端材を保持するための保持ユニットと、の間に介装される複数の可動体は、本体部に対する保持ユニットの前後方向の相対位置が可変となるように互いに前後方向にスライド可能に連結されている。複数の可動体のそれぞれの駆動部を制御部で制御することによって、保持ユニットが本体部に対して本体部側からプレス機のプレス加工領域までの間で複数の可動体を介して前後方向に複数段階で動く。すなわち、所謂「伸縮式掛け竿構造」に類似の原理を利用して、保持ユニットをプレス機のプレス加工領域まで伸長させたり本体部側に向けて短縮させたりするものである。
【0008】
本構造によれば、保持ユニットを支持する部位の前後方向の寸法を比較的短く抑えても、プレス機のプレス加工領域からコイル後端材を取り出すための、保持ユニットの前後方向のストローク代をかせぐことが可能になる。これにより、取出設備の設置に要する前後方向のスペースに制限がない場合は勿論、このスペースが限られている場合であっても、長尺のコイル後端材をプレス機のプレス加工領域から取り出すことが可能になる。要するに、コイル後端材の前後方向の長さ寸法の制約を受けにくくなる。また、制御部による制御によって保持ユニットが自動的に動くため、作業者がプレス加工領域に直にアクセスして行うような人手作業を要しない。
【0009】
以上のごとく、上述の態様によれば、プレス機で発生したコイル後端材を長尺の場合でも人手をかけずに取り出すことができる、コイル後端材の取出装置を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係る、コイル材の加工設備の全体側面図。
図2】本実施形態の、コイル後端材の取出装置の側面図。
図3図2中の支持機構部及びスライドシリンダの断面図であって、スライドシリンダが上昇位置にあるときの状態を示す断面図。
図4図2中の支持機構部及びスライドシリンダの断面図であって、スライドシリンダが下降位置にあるときの状態を示す断面図。
図5】コイル後端材の取出装置の制御にかかるシステム構成図。
図6】コイル後端材の取出装置の第1動作段階の様子を示す側面図。
図7】コイル後端材の取出装置の第2動作段階の様子を示す側面図。
図8】コイル後端材の取出装置の第3動作段階の様子を示す側面図。
図9】コイル後端材の取出装置の第4動作段階の様子を示す側面図。
図10】コイル後端材の取出装置の第5動作段階の様子を示す側面図。
図11】コイル後端材の取出装置の第6動作段階の様子を示す側面図。
図12】コイル後端材の取出装置の第7動作段階の様子を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
上述の態様の好ましい実施形態について以下に説明する。
【0012】
上述の態様の、コイル後端材の取出装置は、上記複数の可動体は、上記保持ユニットと一体化された取付部材と、上記取付部材を前後方向にスライド可能に支持する支持機構部と、で構成されており、上記支持機構部は、上記本体部によって前後方向にスライド可能に支持されているのが好ましい。
【0013】
この取出装置によれば、保持ユニットと一体化された取付部材と、取付部材を前後方向にスライド可能に支持するとともに本体部によって前後方向にスライド可能に支持されている支持機構部と、を可動体とすることで、保持ユニットをプレス機のプレス加工領域まで伸長させたり本体部側に向けて短縮させたりする構造を簡素化できる。
【0014】
上述の態様の、コイル後端材の取出装置において、上記支持機構部は、上記取付部材を前後方向にスライド可能に支持するために前後方向に延びるスライドシリンダを有し、上記スライドシリンダは、ピストンを内蔵したシリンダ部と、上記ピストンに連結されたスライダと、を有し、上記スライダが上記取付部材に固定されているのが好ましい。
【0015】
この取出装置によれば、保持ユニットと一体化された取付部材を、スライドシリンダを利用して前後方向にスライドさせる構造を構築できる。
【0016】
上述の態様の、コイル後端材の取出装置は、上記スライドシリンダを上下方向に昇降させる昇降駆動部を備えるのが好ましい。
【0017】
この取出装置によれば、保持ユニットと一体化された取付部材を支持するスライドシリンダを、昇降駆動部を利用して上下方向に昇降させる構造を構築できる。
【0018】
上述の態様の、コイル後端材の取出装置において、上記保持ユニットと上記取付部材と上記スライドシリンダは、前後方向から見たときに互いに横並びとなるように配置されるのが好ましい。
【0019】
この取出装置によれば、コイル後端材の取り出しのためにいずれもプレス加工領域に進入する、保持ユニットと取付部材とスライドシリンダを互いに横並びに配置することによって、上下方向の高さ寸法を抑えることができる。このため、プレス機のプレス加工領域がその高さ寸法が限られた狭い空間であっても、プレス加工領域からのコイル後端材の取り出しが可能になる。
【0020】
(実施形態)
以下、図1図12を参照しながら、コイル材の加工設備の具体的な実施形態について説明する。
【0021】
なお、この説明のための図面では、特にことわらない限り、コイル材の送り方向X1に沿った前後方向を矢印Xで示し、前後方向と直交する左右方向を矢印Yで示し、前後方向と直交する上下方向を矢印Zで示すものとする。
【0022】
1.コイル材の加工設備1の全体構成
図1に示されるように、コイル材の加工設備1は、コイル材Cを加工するための設備である。この加工設備1は、その主要な構成要素として、アンコイラ2と、レベラー3と、ダウンルーパ4と、フィーダー5と、プレス機6と、コイル後端材の取出装置10(以下、単に「取出装置10」という。)と、を備えている。
【0023】
アンコイラ2には、コイル材Cが巻き出し自在にできる様にコイル内径保持とコイル外径押さえが設けられている。レベラー3は、コイル材Cから巻き出された帯状のコイル材Cを平坦状に矯正する機能を有する。レベラー3で平坦状に矯正されたコイル材Cは、ダウンルーパ4及びフィーダー5を経由してプレス機6に導入される。プレス機6では、下型D1と上型D2で上下が区画されるプレス加工領域7において、コイル材Cを所望の長さに切断したりコイル材Cに穴開けしたりする加工が実施される。このプレス機6のプレス加工領域7でコイル材Cの後端側が切断されることによって、コイル後端材Wが発生する。コイル後端材Wには、予定された一定長さの製品材料と、短尺の欠寸材料と、が含まれる。製品材料は製品に使用され、欠寸材料は廃棄される。取出装置10は、プレス機6で発生したコイル後端材Wをプレス加工領域7から取り出すためのものである。以下では、一例として、製品材料となるコイル後端材Wを取り出す場合について説明する。
【0024】
2.取出装置10の構造
図2に示されるように、取出装置10は、本体部20と、保持ユニット30と、取付部材41と、支持機構部42と、を備えている。本体部20は、プレス機6に並置されている。すなわち、本体部20は、プレス機6のアプライト6aに対して送り方向X1の下流側に隣接して設けられている。なお、本体部20の下方には、プレス機6のプレス加工領域7から取り出されたコイル後端材Wを下流へと搬出するための搬出コンベア24が設けられている。
【0025】
保持ユニット30は、コイル後端材Wを、プレス機6のプレス加工領域7で保持するためのものである。この保持ユニット30は、吸着パッド31によって構成されている。吸着パッド31は、接続ホースを通じて吸引機54(図5を参照)に接続されている。このため、吸引機54が作動した状態では、吸着パッド31の空間が減圧されて、吸着パッド31の開口面に吸着作用が生じる。吸着パッド31は、その開口面に沿ってコイル後端材Wを吸着保持できる。これに対して、吸引機54が停止した状態では、吸着パッド31の空間の減圧が解除されて、吸着パッド31による吸着作用が消失する。コイル後端材Wを安定して吸着保持するためには、吸着パッド31の数を増やすのが好ましい。
【0026】
取付部材41は、保持ユニット30と一体化されている。支持機構部42は、取付部材41を前後方向Xにスライド可能に支持する機能を有する。このため、取付部材41は、支持機構部42に対する可動体である。取付部材41は、エア供給機51(図5を参照)を駆動部として、前後方向Xにスライド駆動される。エア供給機51は、制御部60によって制御される。保持ユニット30は、取付部材41の動きに伴って、スライドシリンダ43に対して初期位置P1から保持位置P2までの間で前後方向Xにスライドできるようになっている。保持位置P2は、初期位置P1よりもプレス機6側に移動した位置である。
【0027】
支持機構部42は、本体部20によって前後方向Xにスライド可能に支持されている。このため、支持機構部42は、本体部20に対する可動体である。支持機構部42は、本体部20に対して、第1位置Q1から第2位置Q2までの間で前後方向Xにスライドできるようになっている。支持機構部42のスライド動作は、本体部20との間に介装されたガイドローラ42a(図3及び図4を参照)によってガイドされる。第2位置Q2は、第1位置Q1よりもプレス機6側に移動した位置である。
【0028】
支持機構部42は、本体部20の下面の前後端部に設けられている各ストッパによって端決めできるようになっている。支持機構部42が本体部20の一方側の端部で端決めされることによって、この支持機構部42の前後方向Xの位置が第1位置Q1に定まる。また、支持機構部42が本体部20の他方側の端部で端決めされることによって、この支持機構部42の前後方向Xの位置が第2位置Q2に定まる。
【0029】
支持機構部42は、ベルト駆動式であり、ベルト21,22を回転させるモータ52(図2及び図5を参照)を駆動部として、前後方向Xにスライド駆動される。モータ52は、制御部60によって制御される。
【0030】
図2図4に示されるように、支持機構部42は、取付部材41を前後方向Xにスライド可能に支持するために前後方向Xに延びるスライドシリンダ43と、このスライドシリンダ43を上昇位置R1(図2及び図3を参照)から下降位置R2(図4を参照)までの間で上下方向Zに昇降させる昇降駆動部53と、を有する。スライドシリンダ43は、エア駆動式のピストン43bを内蔵した筒状のシリンダ部43aと、ピストン43bに連結されたスライダ43cと、を有する。スライドシリンダ43は、「ロッドレスシリンダ」と称される。昇降駆動部53は、エアシリンダや電動シリンダなどによって構成される。
【0031】
スライドシリンダ43において、スライダ43cは、ピストン43bの前後方向Xの動きに連動してシリンダ部43aに対して前後方向Xにスライドする。このスライダ43cのスライド動作は、シリンダ部43aとの間に介装されたガイド部材43d(図3及び図4を参照)によってガイドされる。シリンダ部43aに対してスライドするスライダ43cが取付部材41に一体状に固定されている。このため、取付部材41は、スライドシリンダ43のシリンダ部43aに対する可動体となる。
【0032】
取付部材41は、シリンダ部43aの前後端部に設けられている各ストッパによって端決めできるようになっている。取付部材41がシリンダ部43aの一方側の端部で端決めされることによって、スライドシリンダ43に対する保持ユニット30の前後方向Xの位置が初期位置P1に定まる。これに対して、取付部材41がシリンダ部43aの他方側の端部で端決めされることによって、スライドシリンダ43に対する保持ユニット30の前後方向Xの位置が保持位置P2に定まる。
【0033】
図3及び図4に示されるように、保持ユニット30と取付部材41とスライドシリンダ43は、前後方向Xから見たときに互いに左右方向Yに横並びとなるように配置されている。
【0034】
図5に示されるように、制御部60は、エア供給機51と、モータ52と、昇降駆動部53と、吸引機54と、のそれぞれに対して予め設定されたタイミングで制御信号を出力する。
【0035】
前述の説明の通り、取付部材41及び支持機構部42は、本体部20と保持ユニット30との間に介装されていて、本体部20に対する保持ユニット30の前後方向Xの相対位置が可変となるように互いに前後方向Xにスライド可能に連結された可動体である。そして、制御部60は、保持ユニット30が本体部20に対して本体部20側の初期位置P1からプレス機6側の保持位置P2までの間で取付部材41及び支持機構部42を介して前後方向Xに複数段階で動くように、取付部材41の駆動部(エア供給機51)と支持機構部42の駆動部(モータ52)をそれぞれ制御するように構成されている。
【0036】
3.取出装置10の動作
次に、図6図12を参照しつつ、上記構成の取出装置10の動作を説明する。プレス機6で発生したコイル後端材Wをプレス加工領域7から取り出す場合、取出装置10は、以下のような動作を段階的に実行する。この動作は、図2に示す状態を初期状態として、この初期状態から制御部60によって全て自動的に実行されるものである。
【0037】
3-1.第1動作段階
図6に示されるように、取出装置10の第1動作段階では、昇降駆動部53によって、スライドシリンダ43を支持機構部42に対して上昇位置R1(図2を参照)から任意の中間位置R3まで下降させる。これにより、支持機構部42に対してスライドシリンダ43が下降する。このとき、スライドシリンダ43に対する保持ユニット30の前後位置は初期位置P1に維持され、且つ、本体部20に対する支持機構部42の前後位置は第1位置Q1に維持される。
【0038】
3-2.第2動作段階
図7に示されるように、取出装置10の第2動作段階では、エア供給機51(図5を参照)によって、保持ユニット30をスライドシリンダ43に対して初期位置P1から保持位置P2までスライドさせる。このとき、本体部20に対する支持機構部42の前後位置は第1位置Q1に維持され、且つ、支持機構部42に対するスライドシリンダ43の上下位置は中間位置R3に維持される。
【0039】
3-3.第3動作段階
図8に示されるように、取出装置10の第3動作段階では、モータ52によって、支持機構部42を本体部20に対して第1位置Q1から第2位置Q2までスライドさせる。或いは、支持機構部42を第2位置Q2よりも手前の任意の位置で停止させても良い。これにより、保持ユニット30がプレス機6のプレス加工領域7に進入して、コイル後端材Wの直上に配置される。このとき、スライドシリンダ43に対する保持ユニット30の前後位置は保持位置P2に維持され、且つ、支持機構部42に対するスライドシリンダ43の上下位置は中間位置R3に維持される。図6の第1動作段階と、図8の第3動作段階と、によれば、保持ユニット30が二段階ストロークで伸長する。
【0040】
3-4.第4動作段階
図9に示されるように、取出装置10の第4動作段階では、昇降駆動部53(図5を参照)によって、スライドシリンダ43を支持機構部42に対して中間位置R3(図8を参照)から下降位置R2まで下降させる。これにより、保持ユニット30の吸着パッド31がコイル後端材Wの上面に当接する。この状態で、吸引機54(図5を参照)を作動させることによって、保持ユニット30でコイル後端材Wを保持できる。このとき、スライドシリンダ43に対する保持ユニット30の前後位置は保持位置P2に維持され、且つ、本体部20に対する支持機構部42の前後位置は第2位置Q2に維持される。
【0041】
3-5.第5動作段階
図10に示されるように、取出装置10の第5動作段階では、モータ52によって、支持機構部42を本体部20に対して第2位置Q2から第1位置Q1までスライドさせる。これにより、コイル後端材Wは保持ユニット30で保持された状態で、その一部が取出装置10側に引き出される。このとき、スライドシリンダ43に対する保持ユニット30の前後位置は保持位置P2に維持され、且つ、支持機構部42に対するスライドシリンダ43の上下位置は第2位置R2に維持される。なお、この第5動作段階の途中で、昇降駆動部53によって、スライドシリンダ43を支持機構部42に対して下降位置R2から任意の位置まで上昇させるようにしても良い。
【0042】
3-6.第6動作段階
図11に示されるように、取出装置10の第6動作段階では、エア供給機51(図5を参照)によって、保持ユニット30をスライドシリンダ43に対して保持位置P2から初期位置P1までスライドさせる。これにより、コイル後端材Wは保持ユニット30で保持された状態で、その全体が取出装置10側に引き出される。このとき、本体部20に対する支持機構部42の前後位置は第1位置Q1に維持され、且つ、支持機構部42に対するスライドシリンダ43の上下位置は下降位置R2に維持される。図9の第4動作段階と、図11の第6動作段階と、によれば、保持ユニット30が二段階ストロークで短縮する。
【0043】
3-7.第7動作段階
図12に示されるように、取出装置10の第7動作段階では、吸引機54(図5を参照)の作動を停止して保持ユニット30によるコイル後端材Wの保持を解除する。そして、昇降駆動部53によって、スライドシリンダ43を支持機構部42に対して下降位置R2(図11を参照)から上昇位置R1まで上昇させる。このとき、スライドシリンダ43に対する保持ユニット30の前後位置は初期位置P1に維持され、且つ、本体部20に対する支持機構部42の前後位置は第1位置Q1に維持される。
【0044】
なお、取出装置10の上述の動作は、コイル後端材Wが製品材料である場合の取り出し動作であるが、この動作をコイル後端材Wが製品材料よりも短尺の欠寸材料である場合の取り出し動作に適用できることは勿論である。
【0045】
上述の実施形態によれば、以下のような作用効果が得られる。
【0046】
取出装置10において、本体部20と、コイル後端材Wを保持するための保持ユニット30と、の間に介装される可動体である取付部材41及び支持機構部42は、本体部20に対する保持ユニット30の前後方向Xの相対位置が可変となるように互いに前後方向Xにスライド可能に連結されている。取付部材41及び支持機構部42のそれぞれの駆動部(エア供給機51及びモータ52)を制御部60で制御することによって、保持ユニット30が本体部20に対して本体部20側からプレス機6のプレス加工領域7までの間で取付部材41及び支持機構部42を介して前後方向Xに複数段階で動く。本構造は、伸縮式掛け竿構造に類似の原理を利用したものであり、保持ユニット30をプレス機6のプレス加工領域7まで伸長させたり本体部20側に向けて短縮させたりすることができる。本形態では、概して、取付部材41のスライド動作と、支持機構部42のスライド動作と、による二段階ストロークによって、保持ユニット30が前後方向Xに伸縮するようになっている。
【0047】
本構造によれば、保持ユニット30を支持する部位の前後方向Xの寸法を比較的短く抑えても、プレス機6のプレス加工領域7からコイル後端材Wを取り出すための、保持ユニット30の前後方向Xのストローク代をかせぐことが可能になる。これにより、取出設備20の設置に要する前後方向Xのスペースに制限がない場合は勿論、このスペースが限られている場合であっても、長尺のコイル後端材Wをプレス機6のプレス加工領域7から取り出すことが可能になる。要するに、コイル後端材Wの前後方向Xの長さ寸法の制約を受けにくくなる。また、制御部60による制御によって保持ユニット30が自動的に動くため、作業者がプレス加工領域7に直にアクセスして行うような人手作業を要しない。
【0048】
以上のごとく、上述の態様によれば、プレス機6で発生したコイル後端材Wを長尺の場合でも人手をかけずに取り出すことができる、コイル後端材の取出装置10を提供することが可能になる。
【0049】
上記構成の取出装置10によれば、保持ユニット30と一体化された取付部材41と、取付部材41を前後方向Xにスライド可能に支持するとともに本体部20によって前後方向Xにスライド可能に支持されている支持機構部42と、を可動体とすることで、保持ユニット30をプレス機6のプレス加工領域7まで伸長させたり本体部20側に向けて短縮させたりする構造を簡素化できる。
【0050】
上記構成の取出装置10によれば、保持ユニット30と一体化された取付部材41を、スライドシリンダ43を利用して前後方向Xにスライドさせる構造を構築できる。
【0051】
上記構成の取出装置10によれば、保持ユニット30と一体化された取付部材41を支持するスライドシリンダ43を、昇降駆動部53を利用して上下方向Zに昇降させる構造を構築できる。
【0052】
上記構成の取出装置10によれば、コイル後端材Wの取り出しのためにいずれもプレス加工領域7に進入する、保持ユニット30と取付部材41とスライドシリンダ43を互いに横並びに配置することによって、上下方向Zの高さ寸法を抑えることができる。このため、プレス機6のプレス加工領域7がその高さ寸法が限られた狭い空間であっても、プレス加工領域7からのコイル後端材Wの取り出しが可能になる。
【0053】
本発明は、上述の典型的な形態のみに限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の応用や変更が考えられる。例えば、上述の形態を応用した次の各形態を実施することもできる。
【0054】
上述の形態では、二段階ストロークで保持ユニット30が前後方向Xに伸縮する構造について例示したが、必要に応じて、三段階以上のストロークで保持ユニット30が前後方向Xに伸縮する構造を採用しても良い。
【0055】
制御部60によって制御される駆動部の具体的な構造は、上述の形態で記載されたものに限定されず、各種のアクチュエータの構造を利用することができる。
【0056】
上述の形態では、保持ユニット30を吸着パッド31によって構成する場合について例示したが、これに代えて、永久磁石や電磁石のような吸着部材によって保持ユニット30を構成しても良い。
【0057】
上述の形態では、スライドシリンダ43を上下方向Zに昇降させる昇降駆動部53を設ける場合について記載したが、コイル後端材Wの取り出すためにスライドシリンダ43の上下方向Zの昇降動作を要しない場合には、必要に応じて昇降駆動部53を省略しても良い。
【符号の説明】
【0058】
6…プレス機、 7…プレス加工領域、 10…コイル後端材の取出装置、 20…本体部、 30…保持ユニット、 41…取付部材(可動体)、 42…支持機構部(可動体)、 43…スライドシリンダ、 43a…シリンダ部、 43b…ピストン、 43c…スライダ、 51…エア供給機(駆動部)、 52…モータ(駆動部)、 53…昇降駆動部、 60…制御部、 W…コイル後端材
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