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特開2024-129308画像形成装置及び画像形成装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129308
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】画像形成装置及び画像形成装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03G 21/18 20060101AFI20240919BHJP
【FI】
G03G21/18 157
G03G21/18 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038427
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116964
【弁理士】
【氏名又は名称】山形 洋一
(74)【代理人】
【識別番号】100120477
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 賢改
(74)【代理人】
【識別番号】100135921
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 昌彦
(74)【代理人】
【氏名又は名称】半田 淳一
(72)【発明者】
【氏名】佐川 康正
【テーマコード(参考)】
2H171
【Fターム(参考)】
2H171FA02
2H171FA04
2H171GA08
2H171JA23
2H171JA29
2H171KA26
2H171LA03
2H171LA09
2H171PA15
2H171QA03
2H171QA08
2H171QB32
2H171TA20
(57)【要約】
【課題】複数の現像装置を備えた画像形成装置においては、現像装置を駆動するギヤの影響によりジッタが発生する場合があるという問題があった。
【解決手段】駆動ギヤ50をそれぞれが備える複数の画像形成ユニット12と、これ等のそれぞれに対応して設けられる複数の二段ギヤ60とを備え、各二段ギヤ60は、対応する駆動ギヤ50と噛合するドラム側ギヤ61を有し、互いに隣接する画像形成ユニット12Kと画像形成ユニット12Yのうち、ドラム側ギヤ61Kと駆動ギヤ50Kの各回転中心を結ぶ仮想線L1と、ドラム側ギヤ61Yと駆動ギヤ50Yの各回転中心を結ぶ仮想線L2とを想定した場合、仮想線L1に対するドラム側ギヤ61Kの、回転方向の各ギヤ歯の回転角の中で、最も小さい回転角θ1は、仮想線L2に対するドラム側ギヤ61Yの、回転方向の各ギヤ歯の回転角の中で、最も小さい回転角θ2と異なる。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体に並設され、駆動ギヤ部をそれぞれが備える複数の現像装置と、
前記複数の現像装置のそれぞれに対応して設けられる複数の伝達ギヤ部材と
を備え、
前記複数の伝達ギヤ部材は、対応する前記駆動ギヤ部と噛合して駆動源の駆動力を出力する出力ギヤ部をそれぞれ有し、
前記複数の現像装置の何れかであって、互いに隣接する第1の現像装置と第2の現像装置のうち、
前記第1の現像装置に対応する前記出力ギヤ部を第1の出力ギヤ部とし、
前記第2の現像装置に対応する前記出力ギヤ部を第2の出力ギヤ部とし、
前記第1の出力ギヤ部の回転中心と、対応する前記駆動ギヤ部の回転中心とを結ぶ仮想線を第1の仮想線とし、
前記第2の出力ギヤ部の回転中心と、対応する前記駆動ギヤ部の回転中心とを結ぶ仮想線を第2の仮想線とした場合に、
前記第1の仮想線に対する前記第1の出力ギヤ部の、回転方向における各ギヤ歯の角度の中で、最も小さい角度θ1は、
前記第2の仮想線に対する前記第2の出力ギヤ部の、回転方向における各ギヤ歯の角度の中で、最も小さい回転角θ2と異なることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記複数の伝達ギヤ部材は、前記駆動源から前記出力ギヤ部までのギヤ列において、前記駆動源側のギヤ部材と噛合する入力ギヤ部をそれぞれが有し、
前記入力ギヤ部は、前記出力ギヤ部に対して前記伝達ギヤ部材の回転軸方向において異なる領域に形成され、
前記入力ギヤ部のギヤ歯の数は、前記出力ギヤ部のギヤ歯の数より多いことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記出力ギヤ部が、何れも回転角θ毎にギヤ歯を有する場合に、
前記回転角θ1及び前記回転角θ2は
1/4≦|θ1-θ2|/θ≦3/4
を満たし、
前記入力ギヤ部のギヤ歯の数は、前記出力ギヤ部のギヤ歯の数の2倍以上であることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記複数の現像装置には、第1の方向に並設された、
前記第1の現像装置に対して前記第1の方向側の隣に並設される前記第2の現像装置と、
前記第2の現像装置に対して前記第1の方向側の隣に並設される第3の現像装置と、
前記第3の現像装置に対して前記第1の方向側の隣に並設される第4の現像装置と
が含まれ、
前記第3の現像装置に対応する前記出力ギヤ部を第3の出力ギヤ部とし、
前記第4の現像装置に対応する前記出力ギヤ部を第4の出力ギヤ部とし、
前記第3の出力ギヤ部の回転中心と対応する前記駆動ギヤ部の回転中心とを結ぶ仮想線を第3の仮想線とし、
前記第4の出力ギヤ部の回転中心と対応する前記駆動ギヤ部の回転中心とを結ぶ仮想線を第4の仮想線とし、
前記第3の仮想線に対する前記第3の出力ギヤ部の、前記回転方向の各ギヤ歯の回転角の中で、最も小さい角度をθ3とし、
前記第4の仮想線に対する前記第4の出力ギヤ部の、前記回転方向の各ギヤ歯の回転角の中で、最も小さい角度をθ4とした場合に、
1/4≦|θ3-θ2|/θ≦3/4
及び
1/4≦|θ4-θ3|/θ≦3/4
を満たすことを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記複数の現像装置には、
前記第4の現像装置に対して前記第1の方向側の隣に並設される第5の現像装置が含まれ、
第5の出力ギヤ部の回転中心と対応する前記駆動ギヤ部の回転中心とを結ぶ仮想線を第5の仮想線とし、
前記第5の仮想線に対する前記第5の出力ギヤ部の、前記回転方向の各ギヤ歯の回転角の中で、最も小さい角度をθ5とした場合に、
1/4≦|θ5-θ4|/θ≦3/4
を満たすことを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記出力ギヤ部が、何れも回転角θ毎にギヤ歯を有する場合に、
前記回転角θ1及びθ2は
3/8≦|θ1-θ2|/θ≦5/8
を満たし、
前記入力ギヤ部のギヤ歯の数は、前記出力ギヤ部のギヤ歯の数の4倍以上であることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記複数の現像装置は、それぞれが像担持体を有し、
前記駆動ギヤ部は、前記像担持体の一端に形成されることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記複数の現像装置は、それぞれ前記本体に対して着脱自在であり、
前記複数の伝達ギヤ部材は、前記本体に設けられる
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項9】
出力ギヤ部と該出力ギヤ部よりギヤ歯数が多い入力ギヤ部とを有する多段ギヤからなる複数の伝達ギヤ部材を用い、
画像形成装置の本体に対して、前記複数の伝達ギヤ部材の何れかである第1の伝達ギヤ部材を取り付ける第1の工程と、
前記画像形成装置の本体に対して、前記複数の伝達ギヤ部材の何れかである第2の伝達ギヤ部材を取り付ける第2の工程と、
治具を用いて、前記第1の伝達ギヤ部材の第1の出力ギヤ部と前記第2の伝達ギヤ部材の第2の出力ギヤ部のギヤ歯の位相差を決定し且つ維持する第3の工程と、
駆動源と前記位相差を維持した前記複数の伝達ギヤ部材との間に、ギヤ列を形成する第4の工程と、
前記治具を取り外す第5の工程と
を有することを特徴とする画像形成装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関し、特に複数の現像装置を備えた画像形成装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の現像装置を有する画像形成装置が知られている。
(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-178918号公報(第7頁、図1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、現像装置を駆動するギヤの影響によりジッタが発生する場合があり、ジッタ発生を抑制することが求められているが、ジッタ抑制を行うことは困難であった。
本発明は、従来の画像形成装置に対して、容易にジッタ抑制を可能とする画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による画像形成装置は、
本体に並設され、駆動ギヤ部をそれぞれが備える複数の現像装置と、前記複数の現像装置のそれぞれに対応して設けられる複数の伝達ギヤ部材とを備え、
前記複数の伝達ギヤ部材は、対応する前記駆動ギヤ部と噛合して駆動源の駆動力を出力する出力ギヤ部をそれぞれ有し、前記複数の現像装置の何れかであって、互いに隣接する第1の現像装置と第2の現像装置のうち、前記第1の現像装置に対応する前記出力ギヤ部を第1の出力ギヤ部とし、前記第2の現像装置に対応する前記出力ギヤ部を第2の出力ギヤ部とし、前記第1の出力ギヤ部の回転中心と、対応する前記駆動ギヤ部の回転中心とを結ぶ仮想線を第1の仮想線とし、前記第2の出力ギヤ部の回転中心と、対応する前記駆動ギヤ部の回転中心とを結ぶ仮想線を第2の仮想線とした場合に、
前記第1の仮想線に対する前記第1の出力ギヤ部の、回転方向における各ギヤ歯の角度の中で、最も小さい回転角θ1は、前記第2の仮想線に対する前記第2の出力ギヤ部の、前記回転方向における各ギヤ歯の角度の中で、最も小さい回転角θ2と異なることを特徴とする。
【0006】
本発明による画像形成装置の製造方法は、
出力ギヤ部と該出力ギヤ部よりギヤ歯数が多い入力ギヤ部とを有する多段ギヤからなる複数の伝達ギヤ部材を用い、
画像形成装置の本体に対して、前記複数の伝達ギヤ部材の何れかである第1の伝達ギヤ部材を取り付ける第1の工程と、前記画像形成装置の本体に対して、前記複数の伝達ギヤ部材の何れかである第2の伝達ギヤ部材を取り付ける第2の工程と、治具を用いて、前記第1の出力ギヤ部と前記第2の出力ギヤ部のギヤ歯の位相差を決定し且つ維持する第3の工程と、駆動源と前記位相差を維持した前記複数の伝達ギヤ部材との間に、ギヤ列を形成する第4の工程と、前記治具を取り外す第5の工程とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本実施の形態の画像形成装置によれば、現像装置の駆動ギヤ部への駆動力伝達によって生じる振動が、振動干渉によって抑制できるため、この振動に起因して生じる印刷画像の濃淡縞(ジッタ)を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明による実施の形態1の画像形成装置の要部構成を概略的に示す要部構成図である。
図2】用紙搬送方向の上流側から順に配列された4つの画像形成ユニットを、各感光体ドラムに回転力を伝達する回転駆動系と共に斜め下方からみた外観斜視図である。
図3】二段ギヤのドラム側ギヤの1つギヤ歯が、隣接する次のギヤ歯まで、反時計方向に段階的に回転してずれる過程を、(a)から(i)まで、9の段階で示している。尚、ここでは、回転後の二段ギヤのドラム側ギヤを実線で示し、回転前の位置(基準位置)にある二段ギヤのドラム側ギヤのギヤ歯を点線で示す。
図4】二段ギヤを構成するドラム側ギヤとモータ側ギヤのギヤ歯数の関係についての説明に供する図である。
図5】(a)は、組み立て治具を用いて4つの二段ギヤのずれ量を設定する説明に供する図であり、(b)~(e)は、各二段ギヤの噛合部の部分拡大図である。
図6】(a)は、組み立て治具が装着された状態で、第1アイドルギヤ及び第2アイドルギヤを装着する段階の説明に供する図であり、(b)は、組み立て治具を外す段階の説明に供する図である。
図7】位相ずれ量nの説明に供する図である。
図8】位相ずれ量nを変数として、回転駆動系を動作させたときの各感光体ドラムの振動を合成したときの振幅比の関係を、シミュレーションにより求めた結果を示すグラフであり、(a)は4つの感光体ドラムを対象とし、(b)は隣接する2つの感光体ドラムを対象としている。
図9】位相ずれ量nをn=1/2ねらいで設定した画像形成装置を使用して印刷したハーフトーン印刷画像の濃淡縞(ジッタ)の強度分布を解析し、位相ずれ量nが0の場合と比較したグラフであり、(a)はブラック(K)を単色印刷した場合の、(b)はマゼンタ(M)を単色印刷した場合の、(c)はブラック(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の4色の混色印刷した場合の測定結果である。
図10】本実施の形態の変形例1の画像形成装置の要部構成を示す図である。
図11】本実施の形態の変形例2の画像形成装置の要部構成を示す図である。
図12】本実施の形態の変形例3の画像形成装置の要部構成を示す図である。
図13】位相ずれ量nを変数として、回転駆動系を動作させたときの各感光体ドラム13の振動を合成したときの振幅比の関係を、シミュレーションにより求めた結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1は、本発明による実施の形態1の画像形成装置11の要部構成を概略的に示す要部構成図である。
【0010】
画像形成装置11は、例えば、電子写真カラープリンタとしての構成を備え、画像形成部を構成する、4つの独立した現像装置としての画像形成ユニット12K、12Y、12M、12C(特に区別する必要がない場合は単に画像形成ユニット12と称す場合がある)が、記録媒体としての記録用紙40の搬送方向(矢印A方向)に沿って上流側から順に配設されている。
【0011】
画像形成ユニット12Kはブラック(K)の画像を形成し、画像形成ユニット12Yはイエロー(Y)の画像を形成し、画像形成ユニット12Mはマゼンタ(M)の画像を形成し、画像形成ユニット12Cはシアン(C)の画像を形成する。尚、記録媒体として、記録用紙40の他に、OHP用紙、封筒、複写紙、特殊紙等を使用することができる。
【0012】
各画像形成ユニット12K、12Y、12M、12Cは、使用する現像剤の色以外は同一の構成を備えているため、ここでは代表して画像形成ユニット12Kの構成について説明する。
【0013】
画像形成ユニット12Kには、像担持体としての感光体ドラム13Kと、感光体ドラム13Kの表面を一様に、且つ、均一に帯電させる帯電ローラ14Kと、感光体ドラム13Kの表面に形成された静電潜像に図示しない現像剤(例えば、トナー)を付着させ、可視像であるトナー像を形成する現像ローラ16Kと、現像ローラ16Kに圧接させたトナー供給ローラ18Kと、転写後に、感光体ドラム13Kに残留するトナーを除去するクリーニングブレード27Kが配設されている。
【0014】
トナー供給ローラ18Kは、画像形成ユニット本体に対して着脱可能に装着された対応するトナーカートリッジ20Kから供給されたトナーを現像ローラ16Kに供給するローラである。現像ローラ16Kには、現像ブレード19Kが圧接されている。現像ブレード19は、現像ローラ16K上において、トナー供給ローラ18Kから供給されたトナーを薄層化するものである。尚、ここでは、トナーカートリッジ20Kは、画像形成ユニット12K本体に対して着脱自在に装着されるものとする。
【0015】
尚、画像形成ユニット12Kの各構成部材には符号末尾に(K)を付したが、画像形成ユニット12Y、画像形成ユニット12M、画像形成ユニット12Cの対応する各構成部材にはそれぞれ(Y)、(M)、(C)を付して区別するが、特にこの区別を必要としない場合には付さない。
【0016】
各画像形成ユニット12K、12Y、12M、12Cにおける、感光体ドラム13K、13Y、13M、13Cの上方には、それぞれ対応するLEDヘッド15K、15Y、15M、15C(特に区別する必要がない場合は単にLEDヘッド15と称す場合がある)が、感光体ドラム13K、13Y、13M、13Cと対向する位置に配設されている。各LEDヘッド15は、対応する色の画像データに従って、感光体ドラム13を露光し、静電潜像を形成する装置である。
【0017】
4つの画像形成ユニット12の各感光体ドラム13の下方には、転写ユニット21が配設されている。転写ユニット21は、転写ローラ17K、17Y、17M、17C(特に区別する必要がない場合は単に転写ローラ17と称す場合がある)と、転写ベルト駆動ローラ21a及び転写ベルト従動ローラ21bによって、張架した状態で図1中の矢印A方向へ走行可能に配設された転写ベルト26を備えている。
【0018】
各転写ローラ17は、転写ベルト26を介してそれぞれ対応する感光体ドラム13に圧接して配置され、このニップ部において記録用紙40をトナーと逆の極性に帯電させ、対応する感光体ドラム13に形成された各色のトナー像を順次記録用紙40に重ねて転写する。
【0019】
画像形成装置11内の下部には、転写ベルト26に記録用紙40を供給するための給紙機構が配設されている。給紙機構は、ホッピングローラ43、レジストローラ対45、用紙収容カセット24等を備えている。
【0020】
更に、転写ベルト26による記録用紙40の排出側には、定着器28が設けられている。定着器28は、加熱ローラ29及びバックアップローラ30を有し、記録用紙40上に転写されたトナーを加圧、加熱することによって定着させる装置であり、この排出側には、用紙ガイド42に沿って配置された搬送ローラ対46、排出ローラ対47、及び用紙スタッカ部48等が設けられている。
【0021】
以上のように構成された画像形成装置11における印刷動作について、簡単に説明する。先ず、用紙収容カセット24内の記録用紙40は、ホッピングローラ43によって用紙ガイド41に繰り出され、レジストローラ対45へ送られて斜行が矯正され、続いてレジストローラ対45から転写ベルト26に送られ、この転写ベルト26の走行に伴って、画像形成ユニット12K、12Y、12M、12Cへと順次搬送される。
【0022】
一方、各画像形成ユニット12において、感光体ドラム13の表面は、帯電ローラ14によって帯電された後、対応するLEDヘッド15によって露光され、この露光によって表面に静電潜像が形成される。静電潜像が形成された部分には、現像ローラ16上で薄層化されたトナーが静電的に付着されて対応する色のトナー像が形成される。
【0023】
各感光体ドラム13に形成されたトナー像は、対応する転写ローラ17によって記録用紙40に順次重ねて転写され、記録用紙40上にカラーのトナー像を形成する。転写後に、各感光体ドラム13上に残留したトナーは、それぞれクリーニングブレード27によって除去される。
【0024】
カラーのトナー像が形成された記録用紙40は、定着器28に送られる。この定着器28において、カラーのトナー像が記録用紙40に定着され、カラー画像が形成される。カラー画像が形成された記録用紙40は、搬送ローラ対46によって用紙ガイド42に沿って搬送され、排出ローラ対47によって用紙スタッカ部48へ排出される。以上のような過程を経て、カラー画像が記録用紙40上に形成される。尚、転写ベルト26上に付着する残留トナーは、ベルトクリーニングブレード34によってベルトクリーナ容器35内に収容される。
【0025】
尚、図1中のX、Y、Zの各方向は、記録用紙40が画像形成ユニット12K、12Y、12M、12Cを通過する際の搬送方向(矢印A方向)をX方向とし、感光体ドラム13K、13Y、13M、13Cの回転軸方向をY方向とし、これら両軸と直交する方向をZ方向としている。また、後述する他の図においてX、Y、Zの各方向が示される場合、これらの方向は、共通する方向を示すものとする。即ち、各図のXYZ方向は、各図の描写部分が、図1に示す画像形成装置11を構成する際の配置方向を示している。またここでは、Z方向が略鉛直方向となるように配置されるものとする。
【0026】
図2は、用紙搬送方向(矢印A方向)の上流側から順に配列された4つの画像形成ユニット12K、12Y、12M、12Cを、各感光体ドラム13に回転力を伝達する回転駆動系と共に斜め下方からみた外観斜視図である。尚、同図において、各画像形成ユニット12は、各感光体ドラム13のみを示し、且つ外形略図を二点鎖線で示している。
【0027】
回転駆動系は、回転軸に形成されたモータギヤ71aを備えた駆動源としての駆動モータ71、第1アイドルギヤ72、2つの第2アイドルギヤ73,74、伝達ギヤ部材としての4つの二段ギヤ60K、60Y,60M,60C(特に区別する必要がない場合は単に二段ギヤ60と称す場合がある)、及び各感光体ドラム13の端部に同軸で一体的に配設された駆動ギヤ部としての駆動ギヤ50K,50Y,50M,50C(特に区別する必要がない場合は単に駆動ギヤ50と称す場合がある)を有する。
【0028】
第1アイドルギヤ72は、駆動モータ71の回転軸に一体的に形成されたモータギヤ71a、及び2つの二段ギヤ60Y,60Mの各径大ギヤであるモータ側ギヤ62Y,62Mに噛合し、駆動モータ71の回転駆動力を2つの二段ギヤ60Y,60Mに伝達する。
【0029】
二段ギヤ60Yの径小ギヤであるドラム側ギヤ61Yは駆動ギヤ50Yと噛合して駆動モータ71の回転駆動力を画像形成ユニット12Yの感光体ドラム13Yに伝達し、二段ギヤ60Mの径小ギヤであるドラム側ギヤ61Mは駆動ギヤ50Mと噛合して駆動モータ71の回転駆動力を画像形成ユニット12Mの感光体ドラム13Mに伝達する。
【0030】
第2アイドルギヤ73は、2つの二段ギヤ60K,60Yの各径大ギヤであるモータ側ギヤ62K,62Yと噛合し、駆動モータ71の回転駆動力を二段ギヤ60Kに伝達し、第2アイドルギヤ74は、2つの二段ギヤ60M,60Cの各径大ギヤであるモータ側ギヤ62M,62Cと噛合し、駆動モータ71の回転駆動力を二段ギヤ60Cに伝達する。
【0031】
二段ギヤ60Kの径小ギヤであるドラム側ギヤ61Kは駆動ギヤ50Kと噛合して駆動モータ71の回転駆動力を画像形成ユニット12Kの感光体ドラム13Kに伝達し、二段ギヤ60Cの径小ギヤであるドラム側ギヤ61Cは駆動ギヤ50Cと噛合して駆動モータ71の回転駆動力を画像形成ユニット12Cの感光体ドラム13Cに伝達する。
【0032】
従って、駆動モータ71のモータギヤ71aが、所定の回転速度で矢印B方向に回転する時、最終的に各感光体ドラム13は、所定の回転速度で矢印C方向に回転する。尚、ここでは2つの第2アイドルギヤ73,74の歯数は同数であり、4つの出力ギヤ部としてのドラム側ギヤ61K,61Y,61M,61Cの各歯数は同数であり、4つの入力ギヤ部としてのモータ側ギヤ62K,62Y,62M,62Cの各歯数は同数である。
【0033】
また図2に示すように、二段ギヤ60の、ドラム側ギヤ61とモータ側ギヤ62とは、二段ギヤ60の回転軸方向において互いに異なる領域に形成されている。
【0034】
ここで、隣接する2の二段ギヤ60の位相ずれについて、位相ずれ量nを定義する。図3は、二段ギヤ60の径小ギヤであるドラム側ギヤ61の1つギヤ歯が、隣接する次のギヤ歯まで、反時計方向(矢印方向)に段階的に回転してずれる過程を、同図(a)から同図(i)まで、9の段階で示している。尚、ここでは、回転後の二段ギヤ60のドラム側ギヤ61を実線で示し、回転前の位置(基準位置)にある二段ギヤ60のドラム側ギヤ61のギヤ歯を点線で示す。
【0035】
同図(a)は、ドラム側ギヤ61の特定のギヤ歯61aが基準位置にある状態を示し、この時の位相ずれ量nを[n=0]とする。同図(i)は、この特定のギヤ歯61aが、隣接する次のギヤ歯の位置まで移動したときの状態を示し、この時の位相ずれ量nを[n=1]とする。
【0036】
またドラム側ギヤ61の一回転の回転角(360[°])に対して、ドラム側ギヤ61の隣接するギヤ歯間の回転角(以後、ギヤ歯の1周期当たりの回転角、と称す場合がある)をθとし、ドラム側ギヤ61のギヤ歯数をZ1とすると、
θ=360[°]/Z1 ・・・(1)
となる。
【0037】
同図(b)~同図(h)は、特定のギヤ歯61aが、同図(a)に示す基準位置から回転角(θ/8)ずつ紙面の反時計方向にずれた状態を示す。このため、同図(b)での位相ずれ量nは[n=1/8]、同図(c)での位相ずれ量nは[n=2/8]、同図(d)での位相ずれ量nは[n=3/8]、同図(e)での位相ずれ量nは[n=4/8]、同図(f)での位相ずれ量nは[n=5/8]、同図(g)での位相ずれ量nは[n=6/8]、同図(h)での位相ずれ量nは[n=7/8]となる。n=0からn=1までのずれを一周期とする。位相ずれ量nが[n=4/8=1/2]で、基準位置のギヤ歯(点線)に対してギヤ歯の山と谷が重なる逆相状態となる。
【0038】
ここでは周期的に形成された一対の波形の位相のずれ量を問題とするため、特定のギヤ歯61aがθを超えてずれた場合も、位相ずれ量nは、1が0に相当して0~1を同様に繰り返すものである。
【0039】
また、位相ずれ方向を紙面反時計回りに正と規定しているが、適用する装置内で方向を統一させれば紙面時計回りを正としても良い。またここでの2つの二段ギヤ60は、図2に示す隣接する画像形成ユニット12に対応する2つの二段ギヤ60を示すものであるが、一方と他方の二段ギヤ60の関係は表1の関係となる。
【0040】
【表1】
【0041】
図4は、二段ギヤ60を構成するドラム側ギヤ61とモータ側ギヤ62のギヤ歯数の関係についての説明に供する図である。
【0042】
本実施の形態では、同図に示す、ドラム側ギヤ61のギヤ歯数をZ1、モータ側ギヤ62のギヤ歯数をZ2とすると、そのギヤ比率Xを、
X=Z2/Z1≧4 ・・・(2)
としている。即ち、ドラム側ギヤ61のギヤ歯数「1」に対してモータ側の歯数が「4」以上の割合となっている。
【0043】
次に、回転駆動系を構成する、モータギヤ71aを備えた駆動モータ71、第1アイドルギヤ72、2つの第2アイドルギヤ73,74、4つの二段ギヤ60K、60Y,60M,60C(特に区別する必要がない場合は単に二段ギヤ60と称す場合がある)の組み立て方法について図5図6を参照しながら説明する。
【0044】
図5(a)は、治具としての組み立て治具91を用いて4つの二段ギヤ60のずれ量を設定する説明に供する図であり、図5(b)~図5(e)は、各二段ギヤ60の噛合部の部分拡大図である。図6(a)は、組み立て治具91が装着された状態で、第1アイドルギヤ72及び第2アイドルギヤ73,74を装着する段階の説明に供する図であり、図6(b)は、組み立て治具91を外す段階の説明に供する図である。
【0045】
先ず、図5(a)に示すように、画像形成装置11内の所定箇所に、ドラム側ギヤ61を有する4つの二段ギヤ60を互いに所定の間隔で配置し、各ドラム側ギヤ61と噛合するように組み立て治具91を装着して位相ずれ量nを設定する。尚、ここまでが、第1~第3の工程に相当し、このずれ量の設定は、4つの画像形成ユニット12を装着する前に行うものである。
【0046】
この組み立て治具91は、図5(b)~図5(e)に示すように各ドラム側ギヤ61と噛合するラックギヤ部を有し、各ラックギヤ部は、図5(b)に示すように、二段ギヤ60Kとは、その噛合点P1においてドラム側ギヤ61Kの歯先と噛合するようにラック部が形成され、図5(c)に示すように、二段ギヤ60Kの左側で隣接する二段ギヤ60Yとは、その噛合点P2においてドラム側ギヤ61の歯底と噛合するようにラック部が形成され、図5(d)に示すように、二段ギヤ60Yの左側で隣接する二段ギヤ60Mとは、その噛合点P3においてドラム側ギヤ61の歯先と噛合するようにラック部が形成され、図5(e)に示すように、二段ギヤ60Mの左側で隣接する二段ギヤ60Cとは、その噛合点P4においてドラム側ギヤ61の歯底と噛合するようにラック部が形成されている。
【0047】
即ち、4つの二段ギヤ60は、組み立て治具91が装着された段階で、隣接する1対のドラム側ギヤ61間の位相ずれ量nがn=1/2となるように設定される。このように組み立て治具91が装着された状態で、図6(a)に示すように、第1アイドルギヤ72を、二段ギヤ60Yのモータ側ギヤ62Y、二段ギヤ60Mのモータ側ギヤ62M、及び駆動モータ71のモータギヤ71aと噛合するように装着し、第2アイドルギヤ73を、二段ギヤ60Kのモータ側ギヤ62K、及び二段ギヤ60Yのモータ側ギヤ62Yと噛合するように装着し、更に第2アイドルギヤ74を、二段ギヤ60Mのモータ側ギヤ62M、及び二段ギヤ60Cのモータ側ギヤ62Cと噛合するように装着する。尚、ここでの各アイドルギヤを装着する工程が第4の工程に相当する。
【0048】
以上により、駆動モータ71から4つの二段ギヤ60までの、ギヤによる回転駆動系が連結する。最後に、図6(b)に示すように、組み立て治具91を外して回転駆動系の組み立て過程を終了する。尚、ここでの組み立て治具91を外す工程が第5の工程に相当する。
【0049】
ここで、上記した回転駆動系の組み立て時に発生する組み立て誤差について考察する。上記した図6に示すように、第1アイドルギヤ72及び第2アイドルギヤ73,74を装着する段階では、各部材の撓みや、組み立て治具91の浮き上がり等のバックラッシュによって発生する誤差の範囲でこれらのアイドルギヤがはめ込まれる。
【0050】
この時発生する誤差の最大回転角範囲は、上式(2)によって求めたドラム側ギヤ61のギヤ歯数Z1に対するモータ側ギヤ62のギヤ歯数Z2のギヤ比率Xによって、
±(1/(2X)×θ)
となる。従って、隣接するドラム側ギヤ61間の位相ずれを厳密に1/2に固定できる組み立て治具91を使用した場合、位相ずれ量nの誤差範囲は
1/2-1/(2X)≦n≦1/2+1/(2X) ・・・(3)
となる。例えばギヤ比率XをX=4とした場合、位相ずれ量nの誤差範囲は、1/2を中心に、
3/8≦n≦5/8
となる。
【0051】
従って、上式(3)から、ギヤ比率Xを少なくとも1より大きく設定する、即ちモータ側ギヤ62ギヤ歯数Z2をドラム側ギヤ61のギヤ歯数Z1より多く設定することにより、位相ずれ量nの誤差範囲を±1/2未満に納めることが出来るため、隣接するドラム側ギヤ61間で位相差をつけることができる。
【0052】
ここで、位相ずれ量nについて更に説明する。図7は、位相ずれ量nの説明に供する図である。
【0053】
同図は、噛合する、二段ギヤ60Kの第1の出力ギヤ部としてのドラム側ギヤ61Kと感光体ドラム13Kの駆動ギヤ50K、及び二段ギヤ60Kに隣接する二段ギヤ60Yの第2の出力ギヤ部としてのドラム側ギヤ61Yと感光体ドラム13Yの駆動ギヤ50Yを、Y軸のプラス側から且つ重ねてみた概略図である。従って、ドラム側ギヤ61Kの回転中心63Kと駆動ギヤ50Kの回転中心51Kとを結ぶ第1の仮想線L1と、ドラム側ギヤ61Yの回転中心63Yと駆動ギヤ50Yの回転中心とを結ぶ第2の仮想線L2とが重複している。
【0054】
ここで、第1の仮想線L1に対するドラム側ギヤ61Kの回転方向の回転角における、ドラム側ギヤ61Yの、ギヤ歯の回転角の中で最も小さい特定のギヤ歯61aの回転角をθ1とし、第2の仮想線L2に対するドラム側ギヤ61Yの回転方向の回転角における、ドラム側ギヤ61Yの、ギヤ歯の角度の中で最も小さい基準ギヤ歯61bの回転角をθ2とすると、位相ずれ量nは
n=|θ2-θ1|/θ ・・・(4)
となる。
【0055】
また、ここでは二段ギヤ60Kのドラム側ギヤ61Kと二段ギヤ60Yのドラム側ギヤ61Yとの、位相ずれ量nの関係について説明したが、同様にドラム側ギヤ61Mのギヤ歯の回転角の中で最も小さいギヤ歯の回転角をθ3、ドラム側ギヤ61Cのギヤ歯の回転角の中で最も小さいギヤ歯の回転角をθ4とすると、
ドラム側ギヤ61Mとドラム側ギヤ61Yとの位相ずれ量nは、
n=|θ3-θ2|/θ
となり、
ドラム側ギヤ61Cとドラム側ギヤ61Mとの位相ずれ量nは、
n=|θ4-θ3|/θ
となる。
【0056】
また、例えばドラム側ギヤ61Kの任意の隣接するギヤ歯間の任意の第1回転角位置の、第1の仮想線L1からの回転角をθaとし、第1の仮想線L1から第1回転角位置までの歯数をCaとし、この一対のギヤの第1の仮想線L1側のギヤ歯中心から第1回転角位置までの回転角をθ1とすると、θaは、
θa=Ca×θ+θ1
となる。
【0057】
一方、ドラム側ギヤ61Yの任意の隣接するギヤ歯間の任意の第2回転角位置の、第2の仮想線L2からの回転角をθbとし、第2の仮想線L2から第2回転角位置までの歯数をCbとし、この一対のギヤの第2の仮想線L2側のギヤ歯中心から第2回転位置までの回転角をθ2とすると、θbは、
θb=Cb×θ+θ2
となる。ここでのθは、上式(1)からθ=360[°]/Z1である。
【0058】
従って、第1の回転角位置と第2の回転角位置の回転角差Δθは
Δθ=θb-θa=(Cb×θ+θ2)-(Ca×θ+θ1)
となるが、第1回転角位置と第2回転位置の位相差は|θ2-θ1|となるため、ここでの位相ずれ量nも上式(4)できまる。
【0059】
図8は、隣接する二段ギヤ60のドラム側ギヤ61間の位相ずれ量nを変数として、駆動モータ71から感光体ドラム13までの回転駆動系を動作させたときの各感光体ドラム13の振動を合成したときの振幅比の関係を、シミュレーションにより求めた結果を示すグラフであり、縦軸に振幅比を、横軸に位相ずれ量nをとっている。
【0060】
同図(a)は、4つの感光体ドラム13を対象とし、これら感光体ドラム13がそれぞれ単独では、同じ振幅及び周期で互いに同期して振動を発生する場合を想定し、同図(b)は、隣接する2つの感光体ドラム13を対象とし、これら感光体ドラム13がそれぞれ単独では、同じ振幅及び周期で互いに同期して振動を発生している場合を想定し、各シミュレーション結果による最大の振幅を1とした。
【0061】
尚、ここでは、各感光体ドラム13に生ずる振動は、主に二段ギヤ60のドラム側ギヤ61と駆動ギヤ50との噛合によって生じるものとしているため、振動の周期はこれらの各ギヤ歯が噛合するタイミングに基いて設定している。
【0062】
同図(a)に示すように、4つの感光体ドラム13を対象としたシミュレーション結果によれば、4つの感光体ドラム13の振動干渉により、位相ずれ量nが、0,1のときの振幅が最大の1となり、位相ずれ量nが、1/4、1/2、3/4のとき、各振動が打ち消されて0となる結果を得た。更に、位相ずれ量nが
1/4≦n≦3/4
の範囲であれば振幅比を0.3以下に抑えることが出来る。
【0063】
実際の装置でこの結果を得るためには、上記したように、組み立て治具91によって、隣接するドラム側ギヤ61間の位相ずれ量nをn=1/2に設定した上で、上式(3)から、ギヤ比率X(Z2/Z1)を2以上とすることによって得ることが出来る。
【0064】
一方、同図(b)に示すように、隣接する2つの感光体ドラム13を対象としたシミュレーション結果によれば、2つの感光体ドラム13の振動干渉により、位相ずれ量nが、0,1のときの振幅が最大の1となり、位相ずれ量nが、1/2のとき、各振動が打ち消されて0となる結果を得た。更に、位相ずれ量nが
3/8≦n≦5/8
の範囲であれば振幅比を0.4以下に抑えることが出来る。
【0065】
実際の装置でこの結果を得るためには、上記したように、組み立て治具91によって、隣接するドラム側ギヤ61間の位相ずれ量nをn=1/2に設定した上で、上式(3)から、ギヤ比率X(Z2/Z1)を4以上とすることによって得ることが出来る。
【0066】
図9は、位相ずれ量nをn=1/2ねらいで設定した画像形成装置11を使用して印刷したハーフトーン印刷画像の濃淡縞(ジッタ)を、用紙搬送方向で高速フーリエ変換(fast Fourier transform: FFT)して周波数の強度分布を解析し、二段ギヤ60のドラム側ギヤ61のギヤピッチ(ここでは2[mm]~[3mm])の濃淡縞の強度を、位相ずれ量nが0の場合と比較したグラフである。
【0067】
図9の各グラフの縦軸は、濃淡縞の強度を数値化したものであり、強度は数値に比例している。各グラフでの測定値は、測定毎の強度のバラツキを生じているが、その平均値を○で示している。
【0068】
同図(a)は、ブラック(K)を単色印刷した場合の測定結果であり、位相ずれ量nをn=1/2とした場合、n=0の場合に比べて濃淡縞(ジッタ)の強度が半分程度に抑制される。同図(b)は、マゼンタ(M)を単色印刷した場合の測定結果であり、この場合も、位相ずれ量nをn=1/2とした場合、n=0の場合に比べて濃淡縞(ジッタ)の強度が半分程度に抑制される。同図(c)は、ブラック(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の4色の混色印刷した場合の測定結果であり、この場合は、位相ずれ量nをn=1/2とした場合、n=0の場合に比べて濃淡縞(ジッタ)の強度が1/4以下に抑制される。
【0069】
同図(a),(b)の単色印刷での濃淡縞強度のバラツキは、色毎の発色のバラツキや、画像形成ユニット12の配置位置の差による振動発生のバラツキによるものと思われる。また同図(c)の4色混色の場合は、各色の重なりにより濃淡縞が現れにくくなったものと思われる。
【0070】
変形例1.
図10は、本実施の形態の変形例1の画像形成装置の要部構成を示す図であり、用紙搬送方向の上流側から順に配列された4つの画像形成ユニット112K、112Y、112M、112Cを、各感光体ドラム13に回転力を伝達する回転駆動系と共に斜め下方からみた外観斜視図である。尚、同図において、各画像形成ユニット112は、各感光体ドラム13のみを示し、且つ外形略図を二点鎖線で示している。
【0071】
同図に示すように、ここでは、各二段ギヤ60が、それぞれ対応する画像形成ユニット112の内部に配設されている。この変形例では、各画像形成ユニット112は画像形成装置11本体に固定されており、4つの二段ギヤ60のずれ量の設定は、4つの感光体ドラム13が組み込まれる前に、4つの二段ギヤ60のずれ量の設定を可能とする専用の治具を用いて行うものである。
尚、ここでは感光体ドラム13の端部に形成された駆動ギヤ50が駆動ギヤ部に相当し、駆動ギヤ50と噛合する2段ギヤ60のドラム側ギヤ61が出力ギヤ部に相当する。
【0072】
変形例2.
図11は、本実施の形態の変形例2の画像形成装置の要部構成を示す図であり、用紙搬送方向の上流側から順に配列された4つの画像形成ユニット212K、212Y、212M、212Cを、各感光体ドラム13に回転力を伝達する回転駆動系と共に、Y軸のプラス側から見た透視図である。尚、同図において、各画像形成ユニット212は、各感光体ドラム13のみを示し、且つ外形略図を二点鎖線で示している。
【0073】
同図に示すように、ここでは、各画像形成ユニット212の内部において、伝達ギヤとしての第3アイドルギヤ201が、二段ギヤ60のドラム側ギヤ61と感光体ドラム13の駆動ギヤ50との間に配置されている。これらの第3アイドルギヤ201を設けることによって、画像形成装置11内における回転駆動系の配置上の自由度を増すことが出来る。
【0074】
この変形例2では、画像形成ユニット212にアイドルギヤ201が含まれ、画像形成ユニット212が画像形成装置11本体に対して着脱自在であることを想定している。この場合、アイドルギヤ201が駆動ギヤ部に対応し、二段ギヤ60が伝達ギヤ部材に対応する。
【0075】
またここで、アイドルギヤ201が画像形成ユニット212に含まれずに画像形成装置11本体側にあり、アイドルギヤ201を有しない画像形成ユニットが画像形成装置11本体に対して着脱自在である場合を想定することができる。この場合、駆動ギヤ50が駆動ギヤ部に対応し、アイドルギヤ201が伝達ギヤ部材に対応する。
【0076】
更に、画像形成ユニット212が画像形成装置11本体に対して着脱自在でない場合、感光体ドラム13の端部に設けられる駆動ギヤ50が駆動ギヤ部に対応し、アイドルギヤ201が伝達ギヤ部材に対応する。
【0077】
変形例3.
図12は、本実施の形態の変形例3の画像形成装置の要部構成を示す図であり、用紙搬送方向の上流側から順に配列された5つの画像形成ユニット12K、12Y、12M、12C、12Wを、各感光体ドラム13に回転力を伝達する回転駆動系と共に、Y軸のプラス側から見た透視図である。尚、同図において、各画像形成ユニット12は、各感光体ドラム13のみを示し、且つ外形略図を二点鎖線で示している。
【0078】
同図に示すように、各画像形成ユニット212の内部において、5つ目の画像形成ユニット12、ここでは例えばホワイト(W)の現像剤を使用して同色のトナー画像を形成する画像形成ユニット12Wが、画像形成ユニット12Cの隣に隣接して配置されている。この画像形成ユニット12Wは、使用する現像剤の色以外は他の画像形成ユニット12と同一の構成を備えており、その感光体ドラム13Wの端部には駆動ギヤ50Wが同軸で一体的に配設されている。
【0079】
この感光体ドラム13Wに回転力を伝達するため、更に、二段ギヤ60Wと第2アイドルギヤ301とが設けられている。二段ギヤ60Wは、他の二段ギヤ60と同様にそのドラム側ギヤ61Wが対応する感光体ドラム13Wの駆動ギヤ50Wと噛合するように配置され、第2アイドルギヤ301は、二段ギヤ60C及び60Wの各モータ側ギヤ62C及び62Wに噛合するように配置されている。これにより駆動モータ71の回転が画像形成ユニット12Wまで伝達される。
【0080】
ここで、二段ギヤ60Wのドラム側ギヤ61Wは、隣接する二段ギヤ60Cのドラム側ギヤ61Cに対して、位相ずれ量nが、他の隣接するドラム側ギヤ61間のずれ量と同一となるように設定されるものである。
【0081】
図13は、以上のように、隣接する二段ギヤ60のドラム側ギヤ61間の位相ずれ量nを変数として、駆動モータ71から感光体ドラム13までの回転駆動系を動作させたときの各感光体ドラム13の振動を合成したときの振幅比の関係を、シミュレーションにより求めた結果を示すグラフであり、縦軸に振幅比を、横軸に位相ずれ量nをとっている。5つの感光体ドラム13を対象とし、これら感光体ドラム13がそれぞれ単独では、同じ振幅及び周期で互いに同期して振動を発生している場合を想定し、シミュレーション結果による最大の振幅を1とした。
【0082】
同図に示すように、5つの感光体ドラム13を対象としたシミュレーション結果によれば、5つの感光体ドラム13の振動干渉により、位相ずれ量nが、0,1のときの振幅が最大の1となり、その間の4つの極小部で振幅比が0.1以下となる結果を得た。また位相ずれ量nが
1/4≦n≦3/4
の範囲であれば振幅比を0.3以下に抑えることができる。
【0083】
実際の装置でこの結果を得るためには、上記したように、組み立て治具91によって、隣接するドラム側ギヤ61間の位相ずれ量nをn=1/2に設定した上で、上式(3)から、ギヤ比率X(Z2/Z1)を2以上とすることによって得ることが出来る。
更に、位相ずれ量nが
3/8≦n≦5/8
の範囲の範囲では振幅比を0.2以下に抑えることが出来る。
【0084】
実際の装置でこの結果を得るためには、上記したように、組み立て治具91によって、隣接するドラム側ギヤ61間の位相ずれ量nをn=1/2に設定した上で、上式(3)から、ギヤ比率X(Z2/Z1)を4以上とすることによって得ることが出来る。
【0085】
尚、上記した実施の形態では、本発明を4又は5の画像形成ユニット12を備えた画像形成装置に適用した例を示したが、これに限定されるものではなく、2及び6以上の画像形成装置を備えた画像形成装置にも適用できるものである。
【0086】
更に、モノクロ用の画像形成装置にも態様できるものである。但し、この場合、単色用の一つの画像形成ユニットの他に、現像機能を必要としない、例えばダミーの感光体ドラムのみを備えたダミーユニットを用意し、各感光体ドラムを上記した位相ずれ量nを設定して回転駆動するものである。
【0087】
以上のように、本実施の形態の画像形成装置によれば、複数の画像形成ユニット12の各感光体ドラム13に生じる振動が、お互いの振動干渉によって抑制できるため、感光体ドラム13の振動に起因して生じる印刷画像の濃淡縞(ジッタ)を抑制できる。
【0088】
また、前記した実施の形態の説明において、「上」、「下」、「左」、「右」、といった言葉を使用したが、これらは便宜上であって、画像形成装置を配置する状態における絶対的な位置関係を限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本実施の形態では画像形成装置としてカラープリンタを用いて説明したが、単色プリンタ、複写機、FAX、更にこれらを複合させた複合機等にも適用可能である。
【符号の説明】
【0090】
11 画像形成装置、 12 画像形成ユニット、 13 感光体ドラム、 14 帯電ローラ、 15 LEDヘッド、 16 現像ローラ、 17 転写ローラ、 18 トナー供給ローラ、 19 現像ブレード、 20 トナーカートリッジ、 21 転写ユニット、 24 用紙収容カセット、 26 転写ベルト、 27 クリーニングブレード、 28 定着器、 29 加熱ローラ、 30 バックアップローラ、 34 ベルトクリーニングブレード、 35 ベルトクリーナ容器、 40 記録用紙、 42 用紙ガイド、 43 ホッピングローラ、 45 レジストローラ対、 46 搬送ローラ対、 47 排出ローラ対、 48 用紙スタッカ部、 50 駆動ギヤ、 51 回転中心、 60 二段ギヤ、 61 ドラム側ギヤ、 61a 特定のギヤ歯、 61b 基準ギヤ歯、 62 モータ側ギヤ、 63 回転中心、 71 駆動モータ、 71a モータギヤ、 72 第1アイドルギヤ、 73 第2アイドルギヤ、 74 第2アイドルギヤ、 91 組み立て治具、 112 画像形成ユニット、 201 第3アイドルギヤ、 212 画像形成ユニット、 301 第2アイドルギヤ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13