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特開2024-129313ヒートシール機、ラミネート型二次電池、及びラミネート型二次電池の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129313
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】ヒートシール機、ラミネート型二次電池、及びラミネート型二次電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/178 20210101AFI20240919BHJP
   H01M 50/193 20210101ALI20240919BHJP
   H01M 50/105 20210101ALI20240919BHJP
【FI】
H01M50/178
H01M50/193
H01M50/105
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038435
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新海 貴史
【テーマコード(参考)】
5H011
【Fターム(参考)】
5H011AA09
5H011CC02
5H011CC06
5H011CC10
5H011FF04
5H011HH02
5H011JJ25
5H011JJ27
5H011JJ29
5H011KK01
(57)【要約】
【課題】シール性能の低下を防止する。
【解決手段】ヒートシール機30は、ラミネートシート21の内面に貼着された合成樹脂製のシール材23を熱溶着することによって、シール機能部26と樹脂溜まり部27とを形成する。ヒートシール機30は、ラミネートシート21の外周縁領域24を加熱及び加圧することによってシール機能部26を成形する第1成形部33と、ラミネートシート21のうち外周縁領域24の内周側に隣接する内周側隣接領域25を加熱及び加圧することによって樹脂溜まり部27を成形することが可能な第2成形部37と、を有しており、第2成形部37は、第1成形部33よりも凹んだ形状であり、且つ加圧方向と交差する平面からなる加圧面38を有している。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極板と負極板とセパレータとを積層した積層電極体の外周縁からタブを突出させ、前記タブの基端部と前記積層電極体の全体を一対のラミネートシートによって挟んだ状態で包囲したラミネート型二次電池を製造するために用いられ、前記ラミネートシートの内面に貼着された合成樹脂製のシール材を熱溶着することによって、シール機能部と樹脂溜まり部とを形成するヒートシール機であって、
前記ラミネートシートの外周縁領域を加熱及び加圧することによって前記シール機能部を成形する第1成形部と、
前記ラミネートシートのうち前記外周縁領域の内周側に隣接する内周側隣接領域を加熱及び加圧することによって前記樹脂溜まり部を成形することが可能な第2成形部と、を有しており、
前記第2成形部は、前記第1成形部よりも凹んだ形状であり、且つ加圧方向と交差する平面からなる加圧面を有しているヒートシール機。
【請求項2】
前記第1成形部が、
外周側成形部と、
前記外周側成形部の内周側に隣接し、前記外周側成形部よりも凹んだ形態であり、且つ加圧方向と交差する平面からなる押圧面を有する内周側成形部とを備えており、
前記第2成形部が、前記内周側成形部よりも凹んだ形状である請求項1に記載のヒートシール機。
【請求項3】
正極板と負極板とセパレータとを積層した積層電極体と、
前記積層電極体の外周縁から突出したタブと、
前記タブの基端部と前記積層電極体の全体を挟んだ状態で包囲する一対のラミネートシートと、
前記ラミネートシートの内面に貼着された合成樹脂製のシール材と、
前記ラミネートシートの外周縁領域において前記シール材を熱溶着することによって形成されたシール機能部と、
前記シール材を熱溶着することによって前記シール機能部の内周側に隣接するように形成され、前記シール機能部よりも厚く、且つ偏平な形状に成形された樹脂溜まり部と、を備えているラミネート型二次電池。
【請求項4】
正極板と負極板とセパレータとを積層した積層電極体の外周縁からタブが突出し、前記タブの基端部と前記積層電極体の全体が一対のラミネートシートによって挟まれた状態で包囲され、前記ラミネートシートの内面に貼着された合成樹脂製のシール材を熱溶着することによって、シール機能部と、前記シール機能部の内周側に隣接する樹脂溜まり部とが形成されたラミネート型二次電池を製造する方法であって、
ヒートシール機を用いて前記ラミネートシートを加熱及び加圧することによって、前記ラミネートシートの外周縁領域に前記シール機能部を形成すると同時に、前記樹脂溜まり部を前記シール機能部よりも厚肉であり、且つ偏平な形状に成形するラミネート型二次電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートシール機、ラミネート型二次電池、及びラミネート型二次電池の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、積層電極の外周縁からタブを突出させ、積層電極の全体とタブの基端部を一対のラミネートフィルムで挟んだリチウムイオン二次電池が開示されている。一対のラミネートフィルムの外周縁部には、電解液の漏出を防止するためのフィルム封止部が設けられている。フィルム封止部は、ラミネートフィルムの材料であるポリエチレンを熱溶着することによって形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-229889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
タブは積層電極よりも薄いため、積層電極の外周縁部とタブとの間に段差が生じ、この段差部ではラミネートフィルムとタブとの間に間隙が生じる。フィルム封止部を形成する工程では、加圧によってタブに押し付けられたラミネートフィルムの一部が、段差部の間隙内に押し出される。ラミネートフィルムのうち段差部の間隙に面する部分は、充分に加圧されないため、金型との間の熱抵抗が大きくなり、充分に加熱されないままで固化する。一方、加圧によって間隙内へ押し出されたポリエチレンは、充分に加熱された後に固化して樹脂溜まりとなる。充分に加熱されずに固化した表層側の部分と、充分に加熱された後に固化した部分との界面では、両者間の親和性が温度差によって低くなっているため、電解液が浸透し易い。電解液が浸透すると、界面にクラックが生じる。樹脂溜まり部とフィルム封止部は繋がっているので、クラックがフィルム封止部にまで拡がり、シール性能が低下する虞がある。タブの側縁部とラミネートフィルム同士が直接密着するフィルム封止部との間の段差部や、積層電極の外周縁部とラミネートフィルム同士が直接密着するフィルム封止部との間の段差部にも、段差に起因する間隙が生じるため、上記と同様にシール性能の低下が懸念される。
【0005】
本開示は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、シール性能の低下を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の開示のヒートシール機は、
正極板と負極板とセパレータとを積層した積層電極体の外周縁からタブを突出させ、前記タブの基端部と前記積層電極体の全体を一対のラミネートシートによって挟んだ状態で包囲したラミネート型二次電池を製造するために用いられ、前記ラミネートシートの内面に貼着された合成樹脂製のシール材を熱溶着することによって、シール機能部と樹脂溜まり部とを形成するヒートシール機であって、
前記ラミネートシートの外周縁領域を加熱及び加圧することによって前記シール機能部を成形する第1成形部と、
前記ラミネートシートのうち前記外周縁領域の内周側に隣接する内周側隣接領域を加熱及び加圧することによって前記樹脂溜まり部を成形することが可能な第2成形部と、を有しており、
前記第2成形部は、前記第1成形部よりも凹んだ形状であり、且つ加圧方向と交差する平面からなる加圧面を有している。
【0007】
第2の開示のラミネート型二次電池は、
正極板と負極板とセパレータとを積層した積層電極体と、
前記積層電極体の外周縁から突出したタブと、
前記タブの基端部と前記積層電極体の全体を挟んだ状態で包囲する一対のラミネートシートと、
前記ラミネートシートの内面に貼着された合成樹脂製のシール材と、
前記ラミネートシートの外周縁領域において前記シール材を熱溶着することによって形成されたシール機能部と、
前記シール材を熱溶着することによって前記シール機能部の内周側に隣接するように形成され、前記シール機能部よりも厚く、且つ偏平な形状に成形された樹脂溜まり部と、を備えている。
【0008】
第3の開示のラミネート型二次電池の製造方法は、
正極板と負極板とセパレータとを積層した積層電極体の外周縁からタブが突出し、前記タブの基端部と前記積層電極体の全体が一対のラミネートシートによって挟まれた状態で包囲され、前記ラミネートシートの内面に貼着された合成樹脂製のシール材を熱溶着することによって、シール機能部と、前記シール機能部の内周側に隣接する樹脂溜まり部とが形成されたラミネート型二次電池を製造する方法であって、
ヒートシール機を用いて前記ラミネートシートを加熱及び加圧することによって、前記ラミネートシートの外周縁領域に前記シール機能部を形成すると同時に、前記樹脂溜まり部を前記シール機能部よりも厚肉であり、且つ偏平な形状に成形する。
【発明の効果】
【0009】
偏平な形状となるように加圧された樹脂溜まり部には、電解液を浸透させ得るような界面が存在しないので、界面に電解液が浸透することに起因するクラックが生じる虞はない。よって、シール性能の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態1の二次電池の斜視図である。
図2】積層電極体の分解斜視図である。
図3】二次電池の平面図である。
図4図3のX-X線で切断した断面において、タブの厚さ、シール材の厚さ、シート状基材の厚さを誇張してあらわした模式図である。
図5】熱溶着の初期工程を断面であらわした模式図である。
図6】熱溶着の途中の工程を断面であらわした模式図である。
図7】熱溶着が完了した状態を断面であらわしたす模式図である。
図8】タブの厚さが薄い場合において、熱溶着が完了した状態を断面であらわした模式図である。
図9】実施形態2の二次電池におけるX-X線相当の断面において、タブの厚さ、シール材の厚さ、シート状基材の厚さを誇張してあらわした模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
ここで、本開示の望ましい形態例を示す。下記の複数の形態例を、矛盾を生じない範囲で任意に組み合わせたものも、発明を実施するための形態に含まれる。
【0012】
第1の開示において、前記第1成形部が、外周側成形部と、前記外周側成形部の内周側に隣接し、前記外周側成形部よりも凹んだ形態であり、且つ加圧方向と交差する平面からなる押圧面を有する内周側成形部とを備えており、前記第2成形部が、前記内周側成形部よりも凹んだ形状であることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、第1成形部がシール材を加圧したときに、加圧時におけるシール材の潰れ量が少ない場合は、外周側成形部から内周側成形部へ押し出されたシール材が、内周側成形部において押圧面によって偏平となるように成形され、樹脂溜まり部を形成する。加圧時におけるシール材の潰れ量が多い場合は、外周側成形部から内周側成形部へ押し出されたシール材と、当初から内周側成形部内に存在したシール材が、第2成形部へ押し出され、第2成形部において樹脂溜まり部を形成する。外周側成形部では、シール機能部が形成される。内周側成形部では、シール機能部又は樹脂溜まり部が形成される。シール材に対する加圧量に変動があっても、シール機能部と樹脂溜まり部を形成することができる。
【0014】
[実施形態1]
本開示を具体化した実施形態1を、図1図8を参照して説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。本実施形態1において、前後の方向については、図1~7におけるF方向を前方と定義する。左右の方向については、図1~3におけるR方向を右方と定義する。左右方向と幅方向を同義で用いる。上下の方向については、図1,2,4~7におけるH方向を上方と定義する。
【0015】
本実施形態1のラミネート型二次電池A(以下、「二次電池A」という)は、図1に示すように、積層電極体10と、一対のタブ16と、外装体20とを備えて構成されている。図2に示すように、積層電極体10は、複数枚の負極板11と複数枚の正極板12を、複数枚のセパレータ13を挟んで交互に積層して構成されている。セパレータ13は、PN(ポリアクリロニトリル)や不織布等からなる。
【0016】
負極板11は、全体として長方形をなすシート状の負極用基材(図示省略)の表裏両面に、負極用スラリー(図示省略)を塗布して構成された周知形態のものである。負極側接続部14の前縁には、負極用スラリーが塗布されていない突起状の負極側接続部14が形成されている。正極板12は、全体として長方形をなすシート状の正極用基材(図示省略)の表裏両面に、正極用スラリー(図示省略)を塗布して構成された周知形態のものである。正極側接続部15の前縁には、正極用スラリーが塗布されていない突起状の正極側接続部15が形成されている。
【0017】
負極板11と正極板12をセパレータ13を挟んで積層した状態では、積層電極体10の前縁に、積層状態の複数枚の負極側接続部14と、積層状態の複数枚の正極側接続部15とが左右に間隔を空けて配置される。積層状態の負極側接続部14と積層状態の正極側接続部15には、夫々、タブ16が導通可能に固着されている。負極側のタブ16と正極側のタブ16は、平板状をなしていて、積層電極体10の前方へ水平に突出している。
【0018】
外装体20は、タブ16の基端部と積層電極体10の全体とを液密状に包囲する部材である。外装体20の内部には、電解液(図示省略)が収容されている。外装体20は、図4に示すように、一対のラミネートシート21からなる。ラミネートシート21は、シート状基材22と、シート状基材22の内面に貼着したシール材23とによって構成されている。外装体20は、シール材23同士が対向するように一対のラミネートシート21を配置し、シール材23を熱溶着することによって偏平な袋状に構成された部材である。尚、図4~8は、ラミネートシートの積層構造と熱溶着工程を模式的にあらわした図であるから、タブ16の厚さ、シート状基材22の厚さ、シール材23の厚さは、実際の製品の仕様とは異なっている。
【0019】
シート状基材22は、導電性を有する材料(例えば、アルミニウムやアルミニウム合金等の金属)からなり、方形をなす薄膜状の部材である。シール材23は、変性PP(ポリプロピレン)等の熱可塑性樹脂からなり、シート状基材22の内面全体に亘って貼着されている。シール材23は、絶縁性とシール性と接着性を有している。
【0020】
本実施形態1では、図4~8に示すように、ラミネートシート21(シート状基材22)のうち外周縁の全周に沿った部位を、外周縁領域24と定義する。ラミネートシート21のうち外周縁領域24の全周に対して内周側に隣接する部位を、内周側隣接領域25と定義する。図4,7,8に示すように、上下両シート状基材22の間には、シール材23を熱溶着することによってシール機能部26と樹脂溜まり部27が形成されている。1回の熱溶着工程において、シール機能部26と樹脂溜まり部27の両方が成形される。
【0021】
シール機能部26は、外周縁領域24のみに配置されている。シール機能部26は、外装体20内に収容されている電解液の漏出を防止する部位である。樹脂溜まり部27は、内周側隣接領域25のみ、又は外周縁領域24と内周側隣接領域25の両方に配置されている。樹脂溜まり部27は、シール機能部26が形成される際に、シール機能部26側から内周側へ押し出されたシール材23を含む部位である。
【0022】
樹脂溜まり部27の外周縁とシール機能部26の内周縁とは、互いに繋がった状態で隣接している。シール機能部26と樹脂溜まり部27は、熱溶着工程において充分に加圧され、且つ加熱により溶融して均一に混合した状態となった1枚のシール材23から形成されている。したがって、シール機能部26と樹脂溜まり部27との間には、界面は存在しない。シール機能部26と樹脂溜まり部27は、いずれも偏平な形状をなしている。樹脂溜まり部27の厚さ寸法(高さ寸法)は、シール機能部26の厚さ寸法よりも大きい。
【0023】
ヒートシール機30は、シール材23を熱溶着するための装置である。ヒートシール機30は、固定して設けられた下型31と、下型31の上方において昇降する上型32とを備えて構成されている。上型32の下降時における停止位置(最下端の高さ)は、一定である。上型32と下型31は、ラミネートシート21を加熱するための熱源としての機能と、ラミネートシート21を所定の形状に成形する機能とを備えている。
【0024】
下型31の上面と上型32の下面には、上下対称な第1成形部33と、上下対称な第2成形部37とが形成されている。第1成形部33は、ラミネートシート21の外周縁領域24を加熱及び加圧する部位である。第1成形部33は、外周側成形部34と、外周側成形部34の内周側に隣接する内周側成形部35とから構成されている。下型31の内周側成形部35は、外周側成形部34よりも下方へ凹んだ形状をなす。上型32の内周側成形部35は、外周側成形部34よりも上方へ凹んだ形状をなす。内周側成形部35は、水平な押圧面36を有している。外周側成形部34の内周縁部と、内周側成形部35(押圧面36)の外周縁部は、曲面を介して連なっている。
【0025】
第2成形部37は、ラミネートシート21の内周側隣接領域25を加熱及び加圧する部位である。下型31の第2成形部37は、第1成形部33の内周側成形部35よりも下方へ凹んだ形状をなす。上型32の第2成形部37は、内周側成形部35よりも上方へ凹んだ形状をなす。第2成形部37は、水平な加圧面38を有している。内周側成形部35(押圧面36)の内周縁部と、第2成形部37(加圧面38)の外周縁部は、曲面を介して連なっている。
【0026】
本実施形態1のヒートシール機30は、タブ16の厚さにばらつきがあっても、熱溶着することが可能である。以下、タブ16が厚肉である場合の熱溶着工程を説明する。2枚のラミネートシート21のうち一方のラミネートシート21を、シール材23が上を向くようにして下型31に被せるようにセットする。このとき、ラミネートシート21の外周縁領域24が下型31の第1成形部33の上に配置され、内周側隣接領域25が第2成形部37の上に配置されるように位置決めする。次に、このラミネートシート21の上に、タブ16の基端部と積層電極体10をセットする。このとき、タブ16の基端部が、下型31の第1成形部33及び第2形成部の上に配置されるようにする。
【0027】
次に、上側のラミネートシート21を、厚肉タブ16Tの基端部と積層電極体10に被せる。このとき、上側のラミネートシート21の外周縁領域24が、下側のラミネートシート21の外周縁領域24の真上に配置され、上側のラミネートシート21の内周側隣接領域25が、下側のラミネートシート21の内周側隣接領域25の真上に配置されるように位置決めする。厚肉タブ16Tの先端部は、外装体20(ラミネートシート21)の前端縁から前方へ突出している。
【0028】
この後、下型31と上型32を加熱し、上型32を下降させていく。まず、図5に示すように、第1成形部33の外周側成形部34が外周縁領域24の外面に当接し、外周側成形部34の熱がシート状基材22を介してシール材23に伝達され、シール材23が溶融状態となる。この状態から上型32を更に下降させると、図6に示すように、外周側成形部34によって加圧されたシール材23が薄くなるように潰れ変形するとともに、加圧されたシール材23の一部が内周側成形部35と対向する領域へ押し出される。
【0029】
内周側成形部35と対向する領域では、外周側成形部34と対向する領域から押し出されたシール材23の分だけ、ラミネートシート21の厚さが増す。厚さを増した部分においては、シール材23のうち当初から内周側成形部35と対向している既存部位が、加熱されて溶融状態となり、外周側成形部34との対向領域から押し出された溶融状態のシール材23と均一に混合した状態となる。この均一に混合したシール材23は、内周側成形部35の押圧面36によって厚肉タブ16Tとの間で加圧される。加圧されたシール材23の一部は、内周側成形部35と対向する領域から第2成形部37と対向する領域へ押し出される。この間も、外周側成形部34によって加圧されているシール材23の一部は、内周側成形部35と対向する領域へ押し出される。
【0030】
第2成形部37と対向する領域では、内周側成形部35と対向する領域から押し出されたシール材23の分だけ、ラミネートシート21の厚さが増す。厚さを増した部分においては、シール材23のうち当初から第2成形部37と対向している既存部位が、加熱されて溶融状態となり、内周側成形部35との対向領域から押し出された溶融状態のシール材23と均一に混合した状態となる。この均一に混合したシール材23は、第2成形部37の加圧面38によって厚肉タブ16Tとの間で加圧される。混合状態で加圧されたシール材23は、加圧面38によって偏平な形状に成形され、樹脂溜まり部27となる。図7に示すように、シール材23のうち第1成形部33(外周側成形部34と内周側成形部35)によって加圧された部位は、シール機能部26となる。
【0031】
熱溶着工程において上型32が最も下降したときの高さは、タブ16の厚さに関係なく一定の高さである。したがって、厚肉タブ16Tを有する二次電池Aにおけるシール機能部26は、ラミネートシート21の外周縁領域24に形成され、樹脂溜まり部27は、ラミネートシート21の内周側隣接領域25に形成される。
【0032】
シール機能部26は、第1成形部33によって充分に加圧されているので、タブ16とシート状基材22に強固に密着し、高いシール機能を発揮する。樹脂溜まり部27は、第2成形部37によって充分に加熱及び加圧され、シール材23のうち第2成形部37との対向領域に存在していた既存部位と、シール材23のうち第1成形部33との対向領域から押し出された流動部位とが溶融して均一に混合した状態となっている。そのため、外装体20に充填されている電解液(図示省略)が樹脂溜まり部27に接触しても、樹脂溜まり部27にクラックが生じる虞はない。
【0033】
また、シール材23のうち樹脂溜まり部27の内周側に繋がる非溶着部は、ヒートシール機30による加熱と加圧が不十分な部位である。そのため、非溶着部と樹脂溜まり部27との間にクラックが生じることが懸念される。しかし、この場合のクラックは、樹脂溜まり部27からシール機能部26に向かって径方向(水平方向)に延びるのではなく、非溶着部と樹脂溜まり部27との界面に沿って上下方向に延びる。したがって、仮にクラックが生じたとしても、そのクラックがシール機能部26にまで延びる虞はない。
【0034】
厚肉タブ16Tよりも厚さの薄い薄肉タブ16Lを有する二次電池Aの場合は、ヒートシール機30によってシール材23が潰れ変形する量が、厚肉タブ16Tを有するものに比べると少ない。したがって、図8に示すように、シール機能部26は、外周側成形部34との対向領域に形成され、樹脂溜まり部27は、内周側成形部35との対向領域に形成される。第2成形部37には、シール機能部26も樹脂溜まり部27も形成されない。シール材23のうち第2成形部37に存在する残存部は、内周側成形部35の樹脂溜まり部27にくらべると加熱と加圧が不十分である。一方、樹脂溜まり部27は、十分に加熱及び加圧されて均一に溶融されているため、樹脂溜まり部27にはクラックは生じない。残存部と樹脂溜まり部27との界面にクラックが生じたとしても、そのクラックがシール機能部26にまで延びる虞はない。
【0035】
本実施形態1の二次電池Aは、正極板12と負極板11とセパレータ13とを積層した積層電極体10の外周縁からタブ16を突出させたものである。タブ16の基端部と積層電極体10の全体が、一対のラミネートシート21によって挟んだ状態で包囲されている。ラミネートシート21の内面には合成樹脂製のシール材23が貼着されている。ラミネートシート21は、外周縁領域24と、外周縁領域24の内周側に連なる内周側隣接領域25とを有する。一対のラミネートシート21からなる外装体20の内部には、電解液が封入されている。二次電池Aは、電解液の漏出を防止するためのシール機能部26と、シール機能部26を形成する際に押し出されたシール材23によって形成された樹脂溜まり部27とを有する。
【0036】
シール機能部26は、ラミネートシート21の外周縁領域24においてシール材23を熱溶着することによって形成されている。樹脂溜まり部27は、シール材23を熱溶着することによって、シール機能部26の内周側に隣接するように形成されている。樹脂溜まり部27は、シール機能部26よりも厚く、且つ偏平な形状に成形されている。シール材23を熱溶着する手段として、ヒートシール機30が用いられる。
【0037】
ヒートシール機30は、第1成形部33と、第2成形部37とを有する。第1成形部33は、ラミネートシート21の外周縁領域24を加熱及び加圧することによってシール機能部26を成形する。第2成形部37は、外周縁領域24の内周側に隣接する内周側隣接領域25を加熱及び加圧することによって樹脂溜まり部27を成形することが可能である。第2成形部37は、第1成形部33よりも凹んだ形状であり、且つ加圧方向と交差する平面からなる加圧面38を有している。
【0038】
ヒートシール機30によってラミネートシート21を加熱及び加圧すると、ラミネートシート21の外周縁領域24において強く加圧されたシール材23が、シール機能部26として形成されるとともに、外周縁領域24のシール材23の一部が内周側へ押し出される。シール機能部26よりも内周側では、シール材23のうち当初から存在する既存部位と、シール機能部26から押し出された流動部位とが偏平となるように加圧される。この加圧作用によって、ヒートシール機30から既存部位を経て流動部位に至る熱抵抗が小さくなり、既存部位と流動部位は、両方ともに充分に加熱されて均一に溶融して混合した状態の樹脂溜まり部27となる。シール機能部26は、樹脂溜まり部27よりも加圧されているので、良好なシール機能を発揮する。
【0039】
ヒートシール機30の第1成形部33は、外周側成形部34と、内周側成形部35とを有する。内周側成形部35は、外周側成形部34の内周側に隣接し、外周側成形部34よりも凹んだ形態である。内周側成形部35は、ヒートシール機30による加圧方向(上下方向)と交差する平面からなる押圧面36を有する。第2成形部37は、内周側成形部35よりも凹んだ形状である。
【0040】
薄肉タブ16Lが用いられた二次電池Aの場合は、第1成形部33がシール材23を加圧したときに、加圧時におけるシール材23の潰れ量が少ない。そのため、外周側成形部34から内周側成形部35へ押し出されたシール材23は、内周側成形部35において押圧面36によって偏平となるように成形され、樹脂溜まり部27を形成する。つまり、シール機能部26は外周側成形部34によって成形され、樹脂溜まり部27は内周側成形部35によって偏平な形状に成形される。
【0041】
厚肉タブ16Tが用いられた二次電池Aの場合は、熱溶着時(加圧時)におけるシール材23の潰れ量が多いので、外周側成形部34から内周側成形部35へ押し出されたシール材23と、当初から内周側成形部35内に存在したシール材23が、第2成形部37へ押し出される。これにより、シール機能部26が外周側成形部34と内周側成形部35とによって成形され、樹脂溜まり部27が第2成形部37によって成形される。シール材23に対する加圧量に変動があっても、シール機能部26と樹脂溜まり部27を形成することができる。
【0042】
本実施形態1のヒートシール機30、二次電池A、及びヒートシール機30を用いた製造方法によれば、樹脂溜まり部27には、電解液を浸透させ得るような界面が存在しないので、界面に電解液が浸透することに起因するクラックが生じる虞はない。よって、本実施形態1のヒートシール機30、二次電池A、及びヒートシール機30を用いた製造方法によれば、シール性能の低下を防止することができる。
【0043】
<実施形態2>
次に、本開示を具体化した実施形態2を図9を参照して説明する。本実施形態2の二次電池Bは、シール機能部41と樹脂溜まり部42の形状を上記実施形態1とは異なる構成とし、ヒートシール機43の形状を上記実施形態1とは異なる構成としたものである。その他の構成については上記実施形態1と同じであるため、同じ構成については、同一符号を付し、構造、作用及び効果の説明は省略する。
【0044】
本実施形態2のヒートシール機43を構成する上型44と下型45には、第1成形部46と第2成形部47とが形成されている。第1成形部46と第2成形部47は、上型44の昇降方向に対して交差し、且つ水平に近い角度で傾斜している。第1成形部46と第2成形部47は、段差を介さずに、面一状に連続している。換言すると、第1成形部46と第2成形部47は、同一角度で傾斜した平面によって構成されている。このヒートシール機43を用いて形成されたシール機能部41と樹脂溜まり部42は、ラミネートシート21の外周側から内周側に向かってシール材23の厚さが次第に厚くなるような形状をなして繋がっている。
【0045】
本実施形態2の樹脂溜まり部42は、実施形態1と同様、シール材23のうち当初から存在する既存部位と、シール機能部41から押し出された流動部位とが偏平となるように加圧された部位である。加圧作用によって、ヒートシール機43から既存部位を経て流動部位に至る熱抵抗が小さくなり、既存部位と流動部位は、両方ともに充分に加熱されて均一に溶融して混合した状態となっている。樹脂溜まり部42には、電解液を浸透させ得るような界面が存在しないので、界面に電解液が浸透することに起因するクラックが生じる虞はない。よって、本実施形態2のヒートシール機43、二次電池B、及びヒートシール機43を用いた製造方法によれば、シール性能の低下を防止することができる。
【0046】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
第1成形部は、高さの異なる外周側成形部と内周側成形部とに分けず、高さが一定の単一の成形部によって構成してもよい。
第1成形部は、高さの異なる3つ以上の成形部によって構成してもよい。
【符号の説明】
【0047】
A,B…二次電池
10…積層電極体
11…負極板
12…正極板
13…セパレータ
16…タブ
16L…薄肉タブ(タブ)
16T…厚肉タブ(タブ)
21…ラミネートシート
23…シール材
24…外周縁領域
25…内周側隣接領域
26,41…シール機能部
27,42…樹脂溜まり部
30,43…ヒートシール機
33,46…第1成形部
34…外周側成形部
35…内周側成形部
37,47…第2成形部
38…加圧面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9