(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129328
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】航空機用灯具
(51)【国際特許分類】
F21S 2/00 20160101AFI20240919BHJP
F21V 23/00 20150101ALI20240919BHJP
F21V 5/00 20180101ALI20240919BHJP
F21V 5/04 20060101ALI20240919BHJP
F21W 107/30 20180101ALN20240919BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20240919BHJP
【FI】
F21S2/00 340
F21S2/00 350
F21V23/00 140
F21V5/00 320
F21V5/00 510
F21V5/04 350
F21W107:30
F21Y115:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038462
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100136630
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 祐啓
(74)【代理人】
【識別番号】100201514
【弁理士】
【氏名又は名称】玉井 悦
(72)【発明者】
【氏名】塚本 三千男
【テーマコード(参考)】
3K014
【Fターム(参考)】
3K014AA01
(57)【要約】
【課題】狭い領域を集中的に照明する集光照明と、広範囲の領域を照明する拡散照明とを、一の灯具で兼用可能な航空機用灯具を提供する。
【解決手段】本開示の航空機用サーチライト1は、複数の光学系11を備える。各々の光学系11は、LED2と、該LED2の光を配光するレンズ4とを含む。また、複数の光学系11は、LED2の光Lを所定の第1範囲S1に配光する集光光学系11-1と、LED2の光Lを第1範囲S1よりも広い第2範囲S2に配光する拡散光学系11-2とを含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光学系を備え、
各々の前記光学系が、光源と、該光源の光を配光するレンズと、を含み、
複数の前記光学系が、前記光源の光を所定の第1範囲に配光する集光光学系と、前記光源の光を前記第1範囲よりも広い第2範囲に配光する拡散光学系と、を含むことを特徴とする航空機用灯具。
【請求項2】
前記集光光学系及び前記拡散光学系を搭載する搭載領域を備え、
前記集光光学系及び前記拡散光学系は、各々、前記搭載領域に分散配置された、請求項1に記載の航空機用灯具。
【請求項3】
複数の前記光学系の各々の出力状態を制御する制御手段を備え、
前記制御手段は、複数の制御モードで前記光学系を制御可能であり、
前記制御モードが、前記集光光学系を前記拡散光学系よりも高出力に制御する集光モードと、前記集光光学系と前記拡散光学系とを同じ出力に制御する中間モードと、前記集光光学系を前記拡散光学系よりも低出力に制御する拡散モードと、を含む、請求項1に記載の航空機用灯具。
【請求項4】
複数の前記光学系の各々の出力状態を制御する制御手段を備え、
前記制御手段は、複数の制御モードで前記光学系を制御可能であり、
前記制御モードが、前記集光光学系を前記拡散光学系よりも高出力に制御する集光モードと、前記集光光学系を前記拡散光学系よりも低出力に制御する拡散モードと、前記集光光学系と前記拡散光学系とを同じ出力に制御する中間モードと、を含み、
前記制御手段は、前記拡散モードから前記中間モード、前記中間モードから前記集光モードに切り替える、請求項1に記載の航空機用灯具。
【請求項5】
航空機用サーチライトである、請求項1に記載の航空機用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、航空機用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、航空機用灯具において、複数の光源と各光源に対応する複数のレンズとを備え、各々の光源の光を適切に配光する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-17456号公報
【特許文献2】特開2020-17457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、航空機用灯具においては、広範囲にわたって照明する拡散照明用の灯具と、狭い範囲を集中的に照明する集光照明用の灯具とがある。ところが、これら複数の光学系を有する灯具を個別に設けると、製造コストがかかるうえ、機体全体の重量が増大し、また、灯具取付空間を圧迫するという問題があった。
【0005】
そこで、本開示の目的は、拡散照明と集光照明とを兼用可能な航空機用灯具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示の航空機用灯具は、以下の特徴を備える。
(1) 複数の光学系を備え、各々の光学系が、光源と、該光源の光を配光するレンズと、を含み、複数の光学系が、光源の光を所定の第1範囲に配光する集光光学系と、光源の光を第1範囲よりも広い第2範囲に配光する拡散光学系と、を含むこと。
【0007】
(2)(1)の場合に、集光光学系及び拡散光学系を搭載する搭載領域を備え、集光光学系及び拡散光学系は、各々、搭載領域に分散配置されたこと。
【0008】
(3)(1)又は(2)の場合に、複数の光学系の各々の出力状態を制御する制御手段を備え、制御手段は、複数の制御モードで光学系を制御可能であり、制御モードが、集光光学系を拡散光学系よりも高出力に制御する集光モードと、集光光学系と拡散光学系とを同じ出力に制御する中間モードと、集光光学系を拡散光学系よりも低出力に制御する拡散モードと、を含むこと。
【0009】
(4)(1)~(3)の何れか一つの場合に、複数の光学系の各々の出力状態を制御する制御手段を備え、制御手段は、複数の制御モードで光学系を制御可能であり、制御モードが、集光光学系を拡散光学系よりも高出力に制御する集光モードと、集光光学系を拡散光学系よりも低出力に制御する拡散モードと、集光光学系と拡散光学系とを同じ出力に制御する中間モードと、を含み、制御手段は、拡散モードから中間モード、中間モードから集光モードに切り替えること。
【0010】
(5)(1)~(4)の何れか一つの場合に、航空機用サーチライトであること。
【発明の効果】
【0011】
本開示の航空機用灯具によれば、集光光学系と拡散光学系とを備えたため、第1範囲を集中的に照明する集光照明と、第1範囲より広い第2範囲を照明する拡散照明とを一の灯具で兼用できる。このため、これら複数の光学系を備えた個別の灯具を設ける必要が無く、製造コスト、機体重量、取付空間を抑制できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示の一実施形態を示す航空機用灯具の斜視図である。
【
図2】
図1の航空機用灯具の(a)正面図、(b)A-A線端面模式図である。
【
図3】拡散光学系を(a)灯具周縁側、(b)灯具中央側に配置した場合の作用を示す作用図である。
【
図4】(a)集光光学系、(b)中拡散光学系、(c)拡散光学系を示す模式図である。
【
図5】変形例による、(a)集光光学系、(b)中拡散光学系、(c)拡散光学系を示す模式図である。
【
図6】制御モードと各光学系の制御状態との関係を示す表である。
【
図7】海上の人物を捜索する様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示を航空機用灯具、特に、航空機用サーチライトに具体化した一実施形態を図面に基づいて説明する。以下の説明では、透光カバー5の配置された側を灯具正面側として説明する。
【0014】
図1,2に示す航空機用サーチライト1は、ヘリコプター等の飛行体に搭載される航空機用サーチライトであって、機体に取り付けられる灯具ボディ6と、透光カバー5とを備える。灯具ボディ6と透光カバー5との間に形成される灯室9内には、複数の光源(LED2)と、各々のLED2に対応する複数のレンズ4と、LED2を搭載した光源基板3とが収容されている。また、灯具ボディ6の背面側には、LED2の熱を放散するヒートシンク7が設けられている。透光カバー5及びレンズ4は、ポリカーボネート等の透明樹脂材料より設けられている。
【0015】
また、航空機用サーチライト1は、複数の光学系11と、複数の光学系11の各々の出力状態を制御部(図示なし)とを備える。各々の光学系11は、LED2と、該LED2の光を配光するレンズ4とから構成される。また、光学系11は、LED2の光Lを所定の第1範囲(
図6参照)に配光する集光光学系11-1と、LED2の光Lを第1範囲S1よりも広い第2範囲S2に配光する拡散光学系11-2とを含む。
【0016】
さらに、航空機用サーチライト1は、集光光学系11-1及び拡散光学系11-2を搭載する搭載領域Bを備える。ここで、搭載領域Bとは、レンズホルダ8の外周に囲まれた範囲を示す(
図2(a)太破線内)。集光光学系11-1及び拡散光学系11-2は、搭載領域Bに分散配置される。ここで、「分散配置」とは、集光光学系11-1同士、拡散光学系11-2同士が偏在しないことをいう。集光光学系11-1と拡散光学系11-2とは、同時に高出力で点灯する可能性が低いため、分散配置することにより、搭載領域Bにおける発熱を分散させることができる。また、集光光学系11-1は熱が発生し易いため、集光光学系11-1同士を離して配置することによって、熱の集中を防止することができる。
【0017】
ここで、
図3(a)に示すように、拡散光学系11-2を搭載領域Bの周縁部寄りに配置すると、拡散光学系11-2から出射した光Lが、灯具ボディ6の側壁61により遮蔽され、第2範囲S2を照明する光量が低下するおそれがある。このため、
図3(b)に示すように、拡散光学系11-2を搭載領域Bの中央寄りに配置することにより、光Lが遮蔽されることを防止でき、第2範囲S2を無駄なく照明することができる。
【0018】
図4(a)に示すように、集光光学系11-1は、LED2と、LED2の光Lを集光する集光レンズ4-1とから構成されている。LED2の光Lを集光レンズ4-1に向けて反射させるリフレクタ10を配置して、より集光機能を高めることも可能である。
【0019】
図4(b)に示すように、中拡散光学系11-2’は、LED2と、LED2の光Lを拡散する中拡散レンズ4-2とから構成されている。
図4(c)に示すように、拡散光学系11-2は、LED2と、LED2の光Lを拡散する拡散レンズ4-3とから構成されている。このように、薄肉のレンズ4ほど焦点を絞り切らず、より広範囲に配光することが可能である。配光する第2範囲S2に応じて、中拡散レンズ4-2及び/又は拡散レンズ4-3を選択することができる。
【0020】
図5に、集光光学系11-1、中拡散光学系11-2’、拡散光学系11-2におけるレンズ4の変形例を示す。
図5(a)に示すように、変形例の集光レンズ4-1は、レンズ中央部に形成された凸部41と、凸部41を包囲し、凸部41に向けて傾斜する傾斜面42とを含む。
図5(b)に示すように、変形例の中拡散レンズ4-2は、傾斜面42に、光拡散ステップ43を含む。
図5(c)に示すように、変形例の拡散レンズ4-3は、集光レンズ4の凸部41よりも曲率の大きな凸部41と、中拡散レンズよりも広がりの大きな大拡散ステップ44を含む。
【0021】
図6に示すように、制御部は、複数の制御モードにより光学系11を制御することができる。制御モードは、例えば、集光モード、拡散モード、中間モードを含む。集光モードは、集光光学系11-1を拡散光学系11-2よりも高出力に制御するモードを示し、拡散モードは、集光光学系11-1を拡散光学系11-2よりも低出力に制御するモードを示し、中間モードは、集光光学系11-1と拡散光学系11-2とを同じ出力に制御するモードを示す。また、「集光モード<中間モード<拡散モード」の順に照明範囲が大きくなり、「拡散モード<中間モード<集中モード」の順に照明の明るさが明るくなる。
【0022】
図6の例では、集光モードは、集光光学系11-1を出力100%、拡散光学系11-2を出力0%(消灯)とし、拡散モードは、集光光学系11-1を出力0%(消灯)、拡散光学系11-2を出力100%とし、中間モードは、集光光学系11-1を出力50%、拡散光学系11-2を出力50%としている。この他、制御部は、例えば、集光モードは、集光光学系11-1を出力80%、拡散光学系11-2を出力20%とし、拡散モードは、集光光学系11-1を出力20%、拡散光学系11-2を出力80%とするなど、適宜出力割合を調整できる。
【0023】
制御部は、複数の制御モードを相互に切り替えることができる。例えば、拡散モードから集光モードに瞬時に切り替えたり、拡散モードから中間モードを経て集光モードに切り替えることも可能である。同様に、集光モードから拡散モードに瞬時に切り替えたり、集光モードから中間モードを経て集光モードに切り替えることも可能である。また、各制御モードにおいて点滅を実施し、注意を喚起することも可能である。
【0024】
具体的には、例えば、
図7に示すように、海上の人物を捜索する場合に、まず、制御部は、航空機用サーチライト1を拡散モードに制御し、広範囲を照明する。人物を発見すると、制御部は、航空機用サーチライト1を集光モードに制御し、照明範囲を狭めて人物を集中的に照明する。このとき、特に、中間モードを経て集光モードに制御すると、人物の周囲の状況も観察することができる。一方、集光モードに制御した後で見間違いに気づいた場合は、すぐに拡散モードに切り替えることができる。
【0025】
したがって、この実施形態の航空機用サーチライト1によれば、集光光学系11-1と拡散光学系11-2とを備えたため、狭い範囲である第1範囲S1を集中的に照明する集光照明と、広い範囲である第2範囲を照明する拡散照明とを、一の灯具で兼用できる。このため、これら複数の光学系11を備えた個別のサーチライト1を各々設ける必要が無く、製造コスト、機体重量、取付空間を抑制できる。
【0026】
なお、本開示は、上記実施形態に限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で各部の形状や構成を適宜に変更して実施することも可能である。例えば、集光モードから拡散モードへの切り替えを、拡散モードから集光モードへの切り替えと同様に制御可能である。また、各制御モードにおいて、点消灯を繰り返し、注意を喚起する制御も可能である。
【符号の説明】
【0027】
1 航空機用サーチライト
2 LED
3 光源基板
4 レンズ
4-1 集光レンズ
4-2 中拡散レンズ
4-3 拡散レンズ
5 透光カバー
6 灯具ボディ
7 ヒートシンク
8 レンズホルダ
9 灯室
10 リフレクタ
11 光学系
11-1 集光光学系
11-2 拡散光学系
41 凸部
42 傾斜面
43 光拡散ステップ
44 大拡散ステップ
61 側壁
B 搭載領域
S1 第1領域
S2 第2領域
L 光