(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129330
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】導体接続構造
(51)【国際特許分類】
H01R 13/11 20060101AFI20240919BHJP
【FI】
H01R13/11 E
H01R13/11 302P
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038469
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 貴彦
(57)【要約】
【課題】クリップ状端子を介して第1導体と第2導体とが導通する導体接続構造において、接触抵抗を低減させることを目的とする。
【解決手段】導体接続構造1は、互いに間隔をあけて配置された板状の第1導体4及び第2導体5と、クリップ状端子2と、を備えている。クリップ状端子2は、板状の基部20と、第1弾性片21と、第2弾性片22と、を備えている。第1弾性片21及び前記第2弾性片22は、自然状態において基部20側から先端側に向かうにしたがって互いに近付く方向に延びており、その先端側部分に互いに離れる方向に曲がった屈曲部21a,21a’,22aが形成されている。屈曲部21a,21a’,22aは、屈曲線が基部20の面に対して非平行となるように曲がっている。第1導体4及び第2導体5は、第1弾性片21と第2弾性片22との間に挟まれることで、クリップ状端子2を介して導通する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに間隔をあけて配置された板状の第1導体及び第2導体と、クリップ状端子と、を備え、
前記クリップ状端子は、金属板で構成されており、板状の基部と、前記基部の一端から曲げ起こされた第1弾性片と、前記基部の他端から曲げ起こされ、前記第1弾性片と対向した第2弾性片と、を備え、
前記第1弾性片及び前記第2弾性片は、自然状態において前記基部側から先端側に向かうにしたがって互いに近付く方向に延びており、その先端側部分に互いに離れる方向に曲がった屈曲部が形成されており、
前記屈曲部は、屈曲線が前記基部に対して非平行となるように曲がっており、
前記第1導体及び前記第2導体が前記第1弾性片と前記第2弾性片との間に挟まれることで、前記クリップ状端子を介して前記第1導体と前記第2導体とが導通し、
前記第1導体及び前記第2導体は、それぞれ、互いに離れる側に突出した凸部を備え、
前記第1弾性片の前記屈曲部が前記第1導体の前記凸部に接触し、前記第2弾性片の前記屈曲部が前記第2導体の前記凸部に接触する
ことを特徴とする導体接続構造。
【請求項2】
前記凸部が断面円弧状に形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の導体接続構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリップ状端子を用いた導体接続構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
クリップ状端子を用いた導体接続構造の一例として、
図10,11に示すものが公知である(特許文献1を参照)。
【0003】
図10,11に示す導体接続構造501は、電気自動車の電源回路に適用されるものであり、互いに間隔をあけて配置された板状の第1導体504及び第2導体505と、クリップ状端子502と、を備えている。第1導体504は、バッテリ側に接続された電線511の端末に接続されている。第2導体505は、負荷側に接続された電線512の端末に接続されている。
【0004】
クリップ状端子502は、金属板で構成されており、基部520と、基部520の一端から曲げ起こされた第1弾性片521と、基部520の他端から曲げ起こされた第2弾性片522と、を備えている。また、クリップ状端子502は、第1弾性片521及び第2弾性片522を複数対備えている。
【0005】
第1弾性片521及び第2弾性片522は、自然状態において基部520側から先端側に向かうにしたがって互いに近付く方向に延びており、その先端側部分に互いに離れる方向に曲がった屈曲部521a,522aが形成されている。
【0006】
第1導体504及び第2導体505は、第1弾性片521と第2弾性片522との間に挟まれることで、クリップ状端子502を介して導通する。この際、第1弾性片521の屈曲部521aが第1導体504に弾性接触し、第2弾性片522の屈曲部522aが第2導体505に弾性接触する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した導体接続構造501においては、接触抵抗を低減させることが要望されており、改善の余地があった。
【0009】
そこで、本発明は、クリップ状端子を介して第1導体と第2導体とが導通する導体接続構造において、接触抵抗を低減させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、互いに間隔をあけて配置された板状の第1導体及び第2導体と、クリップ状端子と、を備え、前記クリップ状端子は、金属板で構成されており、板状の基部と、前記基部の一端から曲げ起こされた第1弾性片と、前記基部の他端から曲げ起こされ、前記第1弾性片と対向した第2弾性片と、を備え、前記第1弾性片及び前記第2弾性片は、自然状態において前記基部側から先端側に向かうにしたがって互いに近付く方向に延びており、その先端側部分に互いに離れる方向に曲がった屈曲部が形成されており、前記屈曲部は、屈曲線が前記基部に対して非平行となるように曲がっており、前記第1導体及び前記第2導体が前記第1弾性片と前記第2弾性片との間に挟まれることで、前記クリップ状端子を介して前記第1導体と前記第2導体とが導通し、前記第1導体及び前記第2導体は、それぞれ、互いに離れる側に突出した凸部を備え、前記第1弾性片の前記屈曲部が前記第1導体の前記凸部に接触し、前記第2弾性片の前記屈曲部が前記第2導体の前記凸部に接触することを特徴とする導体接続構造である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、第1導体及び第2導体とクリップ状端子間の接触抵抗を低減させることができ、通電性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態にかかる導体接続構造を示す斜視図である。
【
図4】
図1のクリップ状端子のみを示す側面図である。
【
図7】
図6の導体接続構造の接触面積について説明するための説明図である。
【
図8】
図1の導体接続構造の接触面積について説明するための説明図である。
【
図9】参考例の導体接続構造の接触面積と本発明の導体接続構造の接触面積の大きさについて説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態にかかる「導体接続構造」について、
図1~9を参照して説明する。
【0014】
図1~3に示す導体接続構造1は、電気自動車の電源回路に適用されるものであり、第1導体4及び第2導体5と、クリップ状端子2と、を備えている。第1導体4は、バッテリ側に接続されている。第2導体5は、負荷側に接続されている。
【0015】
第1導体4は、金属板にプレス加工等が施されて得られるものであり、
図5に示すように、クリップ状端子2に挟まれる長方形板状の第1接続部44と、不図示の電線又はバスバと接続される第2接続部45と、を備えている。
【0016】
第2導体5は、第1導体4と同一形状であり、
図2に示すように、クリップ状端子2に挟まれる長方形板状の第1接続部54と、不図示の電線又はバスバと接続される第2接続部55と、を備えている。
【0017】
第1導体4及び第2導体5は、不図示の樹脂部に保持されており、第1接続部44,54同士が互いに間隔をあけて平行に配置された状態が維持されている。
【0018】
第1導体4の第1接続部44は、第2導体5の第1接続部54と反対側の平坦面40から突出した凸部41を複数備えている。複数の凸部41は、第1接続部44の長手方向に間隔をあけて並んでいる。各凸部41の断面は、
図3に示すようにかまぼこ形状である。
【0019】
同様に、第2導体5の第1接続部54は、第1導体4の第1接続部44と反対側の平坦面50から突出した凸部51を複数備えている。複数の凸部51は、第1接続部54の長手方向に間隔をあけて並んでいる。各凸部51の断面は、図示しないが、各凸部41同様かまぼこ形状である。
【0020】
クリップ状端子2は、金属板で構成されており、
図1,4に示すように、平板状の基部20と、基部20の一端から曲げ起こされた第1弾性片21と、基部20の他端から曲げ起こされ、第1弾性片21と対向した第2弾性片22と、を備えている。また、クリップ状端子2は、第1弾性片21及び第2弾性片22を二対備えている。二つの第1弾性片21は、基部20の一端に間隔をあけて並んでいる。同様に、二つの第2弾性片22は、基部20の他端に間隔をあけて並んでいる。
【0021】
第1弾性片21及び第2弾性片22は、細長い帯状に形成されている。対を成す第1弾性片21及び第2弾性片22は、自然状態において基部20側から先端21b,22b側に向かうにしたがって互いに近付く方向に延びており、その先端21b,22b側部分に互いに離れる方向に曲がった屈曲部21a,21a’,22aが形成されている。
【0022】
図4に示すように、二つの第1弾性片21の屈曲部21a,21a’は、それぞれ、屈曲線L1,L1’が基部20の面に対して非平行となるように曲がっている。また、一方の屈曲部21aと他方の屈曲部21a’は、左右対称に曲がっている。二つの第2弾性片22の屈曲部22aは、二つの第1弾性片21の屈曲部21a,21a’と同様に基部20の面に対して非平行となるように曲がっている。なお、
図4中の二点鎖線L2,L2’は、
図10,11に示した従来のクリップ状端子の屈曲部における屈曲線を表している。この屈曲線L2,L2’は、基部20の面に対して平行である。
【0023】
第1導体4及び第2導体5は、第1接続部44,54が第1弾性片21と第2弾性片22との間に挟まれることで、クリップ状端子2を介して導通する。この際、各第1弾性片21の屈曲部21a,21a’が第1導体4の各凸部41に弾性接触し、各第2弾性片22の屈曲部22aが第2導体5の各凸部51に弾性接触する。
【0024】
また、
図2,3に示すように、各屈曲部21a,21a’,22aの接触面は曲面(円柱の外周面の一部の形状)であり、各凸部41,51の接触面も曲面(かまぼこ形状)、即ち断面円弧状である。各凸部41,51の接触面を曲面にすることで、例えば
図3の矢印で示すように第1導体4にねじれが生じた場合でも、接点が離れることを抑制できる。
【0025】
このような導体接続構造1の各接点における接触の仕方は、
図8に示すように、弾力のある円柱91,92同士を交差させて弾性接触させたものに近い。
図8中のS1は、円柱91,92同士の接触面を表している。この接触面S1の面積は、a’×b×πである。
【0026】
一方、参考例として、各屈曲部21a,21a’,22aを
図4中の屈曲線L2,L2’で曲げた導体接続構造の各接点における接触の仕方は、
図6,7に示すものになる。即ち、円柱91,92同士を直角に交差させて弾性接触させたものに近い。
図7中のS2は、円柱91,92同士の接触面を表している。この接触面S2の面積は、a×b×πである。
【0027】
接触面S1と接触面S2の大きさを比較すると、
図9に示すように、a<a’であることから、接触面S2<接触面S1となる。即ち、
図9中の傾きθが大きくなるにしたがって接触面S1の面積が増加する。導体接続構造1において、この傾きθ、即ち
図4中の屈曲線L1,L1’の基部20に対する角度は、最大12°程度まで設定可能である。
【0028】
このように、導体接続構造1の接点を成す各屈曲部21a,21a’,22aは、それぞれ、屈曲線が基部20の面に対して非平行となるように曲がっている。よって、従来技術よりも接点における接触面積が増加しており、これにより接触抵抗が低減されて通電性能が向上している。
【0029】
なお、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、この実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。かかる変形によってもなお本発明の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
【符号の説明】
【0030】
1 導体接続構造
2 クリップ状端子
4 第1導体
5 第2導体
20 基部
21 第1弾性片
21a,21a’ 屈曲部
22 第2弾性片
22a 屈曲部
41 凸部
51 凸部