(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129333
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】コネクタ端子、コネクタ、及びコネクタ製造方法
(51)【国際特許分類】
H01R 13/405 20060101AFI20240919BHJP
H01R 43/18 20060101ALI20240919BHJP
【FI】
H01R13/405
H01R43/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038472
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】水野 清隆
(72)【発明者】
【氏名】永山 雅隆
【テーマコード(参考)】
5E063
5E087
【Fターム(参考)】
5E063XA01
5E087EE14
5E087FF05
5E087GG02
5E087HH02
5E087JJ03
5E087MM09
5E087QQ04
5E087RR25
5E087RR36
(57)【要約】
【課題】金型を動かしてコネクタ端子に被せる際に、金型を良好に被せる。
【解決手段】コネクタ端子12が、第1接続部121と、第2接続部122と、中間部123と、第1接続部121における中間部123寄りの一部における両側縁から幅方向D13に延出した一対の部位であって、コネクタハウジングの成型時に、第1接続部121に対して長さ方向D14に移動して被せられる金型の入り口へと第1接続部121の先端121aが達する前に、この入り口の両脇に設けられた一対の案内溝に挿入されることで、上記の先端121aを、第1接続部121の表裏面と交差する矯正方向D17に動かして金型の入り口へと案内する一対の矯正部124と、を備えたことを特徴とする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1相手方端子に接続する帯状金属製の第1接続部と、
前記第1相手方端子に対する前記第1接続部の接続とは逆向きに第2相手方端子に接続する帯状金属製の第2接続部と、
前記第1接続部と前記第2接続部とを繋ぐ中間部と、
前記第1接続部における前記中間部寄りの一部における両側縁から幅方向に延出した一対の部位であって、少なくとも前記中間部が埋設されるような樹脂モールドを含むコネクタハウジングの成型時に、前記第1接続部に対して長さ方向に移動して被せられる金型の入り口へと前記第1接続部の先端が達する前に、前記入り口の両脇に設けられて前記長さ方向に延在する一対の案内溝に挿入されることで、前記先端を、前記第1接続部の表裏面と交差する矯正方向に動かして前記入り口へと案内する一対の矯正部と、
を備えたことを特徴とするコネクタ端子。
【請求項2】
前記第1接続部が、1本の帯状金属がZ字形をなすように折り曲げ形成されたときの一端側部分であり、
前記第2接続部が、前記Z字形の前記帯状金属における他端側部分であり、
前記中間部が、前記Z字形の前記帯状金属において前記第1接続部と前記第2接続部とを斜めに繋ぐ部位であることを特徴とする請求項1に記載のコネクタ端子。
【請求項3】
前記中間部と前記第2接続部との境界を含む部分における両側縁から前記幅方向に延出した一対の部位であって、前記Z字形に応じて前記境界とともに折り曲げられる一対の拡幅折曲げ部を更に備えていることを特徴とする請求項2に記載のコネクタ端子。
【請求項4】
前記一対の拡幅折曲げ部の側縁間の距離が、前記一対の矯正部の側縁間の距離よりも短いことを特徴とする請求項3に記載のコネクタ端子。
【請求項5】
前記一対の矯正部が、前記第1接続部と前記中間部との境界から前記先端側に離れた位置に設けられており、
前記第1接続部において前記一対の矯正部よりも前記中間部寄りの部分、及び当該中間部が、何れも、前記第1接続部において前記一対の矯正部よりも前記先端側の部分に比べて幅狭に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のコネクタ端子。
【請求項6】
請求項1~5のうち何れか一項に記載のコネクタ端子と、
前記第1接続部が内側に配置される第1間口、及び、前記第1間口とは逆向きに開口して前記第2接続部が内側に配置される第2間口、を有し、少なくとも前記中間部が埋設される樹脂製のコネクタハウジングと、
を備えたことを特徴とするコネクタ。
【請求項7】
請求項1~5のうち何れか一項に記載のコネクタ端子における前記2接続部を、所定位置に固定設置された固定金型の内側へと挿入する固定金型挿入工程と、
深さ方向に移動可能な移動金型を、前記コネクタ端子における前記第1接続部に、前記一対の矯正部の前記一対の案内溝への挿入によって前記先端が前記入り口へと案内された状態で移動させて被せる移動金型被せ工程と、
前記第2接続部が前記固定金型に挿入され、前記第1接続部に前記移動金型が被せられた状態の前記コネクタ端子について少なくとも前記中間部が埋設されるように樹脂製のコネクタハウジングを型成形するハウジング成形工程と、
を備えたことを特徴とするコネクタ製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタ端子、樹脂製のコネクタハウジングにコネクタ端子の一部が埋設されるように設けられたコネクタ、及び、そのようなコネクタを製造するコネクタ製造方法に関するものとなっている。
【背景技術】
【0002】
従来、コネクタ端子の一部が埋設されるように樹脂製のコネクタハウジングを型成形して製造されるコネクタが知られている(例えば、特許文献1参照。)。この特許文献1のコネクタは、ハウジング成形型の内部にコネクタ端子が配置された状態で樹脂を充填してコネクタハウジングを成形することで製造される。
【0003】
ところで、コネクタの中には、コネクタハウジングにおける相手方コネクタとの嵌合のための間口が互いに逆向きの二方向に開口した二方向嵌合型のコネクタがある。このようなコネクタでは、帯状のコネクタ端子の一端側部分が一方の間口の内側に配置され、他端側部分が他方の間口の内側に配置され、中間部分が樹脂製のコネクタハウジングに埋設された構造が採用されることがある。このような構造におけるコネクタハウジングの成型では、相手方コネクタ端子との接続側となるコネクタ端子の両端部分に樹脂からの遮蔽用の金型が被せられた状態でハウジング成形型に対する樹脂の充填が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、コネクタ端子の両端側部分それぞれに金型を被せる処理として、一方の端部を一の金型に挿入し、他方の端部へと他の金型を動かして被せるといった処理が行われることがある。コネクタ端子の端部を金型に挿入する処理は、端子側を適宜に動かして精密に位置合わせして行うことができる。これに対し、金型を動かして被せる処理は、端部が固定された状態のコネクタ端子に向かい、あらかじめ決められたルートで金型をスライド移動して被せる処理となる。このとき、長尺形状のコネクタ端子における撓み等により、コネクタ端子の先端が金型の入り口からずれた状態で金型が動かされる場合がある。このような場合、無理に金型を動かすとコネクタ端子の先端が入り口に入らず、金型によってコネクタ端子が押し潰されてしまう恐れがある。
【0006】
従って、本発明は、上記のような問題に着目し、金型を動かして被せる際に、金型を良好に被せることができるコネクタ端子を提供することを目的とする。また、本発明は、このようなコネクタ端子の一部が樹脂製のコネクタハウジングに埋設されるように設けられたコネクタ、及び、そのようなコネクタを製造するコネクタ製造方法を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、コネクタ端子は、第1相手方端子に接続する帯状金属製の第1接続部と、前記第1相手方端子に対する前記第1接続部の接続とは逆向きに第2相手方端子に接続する帯状金属製の第2接続部と、前記第1接続部と前記第2接続部とを繋ぐ中間部と、前記第1接続部における前記中間部寄りの一部における両側縁から幅方向に延出した一対の部位であって、少なくとも前記中間部が埋設されるような樹脂モールドを含むコネクタハウジングの成型時に、前記第1接続部に対して長さ方向に移動して被せられる金型の入り口へと前記第1接続部の先端が達する前に、前記入り口の両脇に設けられて前記長さ方向に延在する一対の案内溝に挿入されることで、前記先端を、前記第1接続部の表裏面と交差する矯正方向に動かして前記入り口へと案内する一対の矯正部と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
また、上記課題を解決するために、コネクタは、上述のコネクタ端子と、コネクタ端子と、前記第1接続部が内側に配置される第1間口、及び、前記第1間口とは逆向きに開口して前記第2接続部が内側に配置される第2間口、を有し、少なくとも前記中間部が埋設される樹脂製のコネクタハウジングと、を備えたことを特徴とする。
【0009】
また、上記課題を解決するために、コネクタ製造方法は、上述のコネクタ端子における前記2接続部を、所定位置に固定設置された固定金型の内側へと挿入する固定金型挿入工程と、深さ方向に移動可能な移動金型を、前記コネクタ端子における前記第1接続部に、前記一対の矯正部の前記一対の案内溝への挿入によって前記先端が前記入り口へと案内された状態で移動させて被せる移動金型被せ工程と、前記第2接続部が前記固定金型に挿入され、前記第1接続部に前記移動金型が被せられた状態の前記コネクタ端子について少なくとも前記中間部が埋設されるように樹脂製のコネクタハウジングを型成形するハウジング成形工程と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
上述のコネクタ端子、コネクタ、及びコネクタ製造方法によれば、金型を動かしてコネクタ端子に被せる際に、金型を良好に被せることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】一実施形態に係るコネクタ端子を備えたコネクタを示す分解斜視図である。
【
図2】
図1に示されているコネクタの、
図1中のV11-V11線に沿った断面図である。
【
図3】
図1に示されているコネクタにおける、一のコネクタ端子を示す斜視図である。
【
図4】
図3に示されているコネクタ端子の上面図を、
図2に示されている断面におけるコネクタ端子を含む部分の拡大図と並べて示した図である。
【
図5】コネクタ製造方法における固定金型挿入工程及び移動金型被せ工程を、
図1に対応した断面図で示す図である。
【
図6】
図5に示されている固定金型挿入工程を、
図5と同様の断面が見えるカット斜視図で示す図である。
【
図7】
図5に示されている移動金型被せ工程、これに続くハウジング成形工程を、
図6と同様のカット斜視図で示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、コネクタ端子、コネクタ、及びコネクタ製造方法の一実施形態について説明する。
【0013】
図1は、一実施形態に係るコネクタ端子を備えたコネクタを示す分解斜視図であり、
図2は、
図1に示されているコネクタの、
図1中のV11-V11線に沿った断面図である。
図3は、
図1に示されているコネクタにおける、一のコネクタ端子を示す斜視図である。また、
図4は、
図3に示されているコネクタ端子の上面図を、
図2に示されている断面におけるコネクタ端子を含む部分の拡大図と並べて示した図である。
【0014】
本実施形態におけるコネクタ1は、一例として、車両等に搭載され、第1相手方コネクタ21及び第2相手方コネクタ22を互いに接続するための中継コネクタとして利用される。コネクタ1は、相手方コネクタとの嵌合のための間口が互いに逆向きの二方向に開口した二方向嵌合型のコネクタとなっている。また、このコネクタ1は、オス型コネクタとなっており、第1相手方コネクタ21及び第2相手方コネクタ22は何れもメス型コネクタとなっている。コネクタ1は、コネクタハウジング11と、コネクタ端子12と、を備えている。
【0015】
コネクタハウジング11は、第1相手方コネクタ21を受け入れる矩形筒状の第1間口111、及び、第1間口111とは逆向きに開口して第2相手方コネクタ22を受け入れる矩形筒状の第2間口112、を有する樹脂製のハウジングである。このコネクタハウジング11には、コネクタ端子12の一部が埋設される。本実施形態では、第1間口111及び第2間口112は、第1相手方コネクタ21及び第2相手方コネクタ22の配置の関係から、これらのコネクタとの嵌合方向D11に対する交差方向D12についてずれて開口するように設けられている。図示の例では、第1間口111よりも第2間口112の方が高位側にずれて配置されている。
【0016】
コネクタ端子12は、コネクタハウジング11に後述の中間部123含む部分が埋設された状態で複数収容される2ピンのオス端子である。各コネクタ端子12は、第1接続部121、第2接続部122、中間部123と、一対の矯正部124と、一対の拡幅折曲げ部125と、を備えている。
【0017】
第1接続部121は、第1相手方コネクタ21における第1相手方端子に接続する帯状金属製の部位である。更に、本実施形態では、第1接続部121は、1本の帯状金属が、
図2~
図4に示されているようにZ字形をなすように折り曲げ形成されたときの一端側部分となっている。この第1接続部121は、コネクタハウジング11における第1間口111の内側に配置される。
【0018】
第2接続部122は、第1相手方端子に対する第1接続部121の接続とは逆向きに第2相手方コネクタ22における第2相手方端子に接続する帯状金属製の部位である。本実施形態では、第2接続部122は、Z字形の帯状金属における他端側部分となっている。この第2接続部122は、第1間口111よりも高位側の第2間口112の内側に配置される。
【0019】
中間部123は、第1接続部121と第2接続部122とを繋ぐ部位であり、本実施形態では、Z字形の帯状金属において両者を斜めに繋ぐ部位となっている。この中間部123は、樹脂製のコネクタハウジング11の中央部の隔壁113内に埋設される。本実施形態では、この中間部123とともに、第1接続部121及び第2接続部122それぞれの中間部123寄りの部分も一緒に隔壁113内に埋設される。第1間口111の内側には、第1接続部121の接続側が隔壁113から突出するように配置され、第2間口112の内側には、第2接続部122の接続側が隔壁113から突出するように配置される。中間部123は、第1接続部よりも幅狭に形成されている
【0020】
一対の矯正部124は、第1接続部121における中間部123寄りの一部における両側縁から幅方向D13に延出した一対の部位である。また、本実施形態では、一対の矯正部124は、第1接続部121と中間部123との境界12aから先端121a側に離れた位置に設けられている。そして、第1接続部121において一対の矯正部124よりも中間部123寄りの部分の幅寸法d11及び中間部123の幅寸法d12が、何れも、一対の矯正部124よりも先端121a側の部分の幅寸法d13に比べて幅狭に形成されている。尚、第1接続部121の中間部123寄りの部分の幅寸法d11は、中間部123の幅寸法d12と同幅となっている。また、この先端121a側の部分の幅寸法d13は、第2接続部122の幅寸法d14と同幅となっている。
【0021】
これら一対の矯正部124は、中間部123を含む部分が埋設されるような樹脂モールドを含むコネクタハウジング11の成型時に、次のような働きをする。即ち、一対の矯正部124は、第1接続部121に対して長さ方向D14に移動して被せられる金型の入り口へと第1接続部121の先端121aを案内する。この一対の矯正部124の働きについては、後で別図を参照して詳細に説明する。
【0022】
一対の拡幅折曲げ部125は、中間部123と第2接続部122との境界12bを含む部分における両側縁から幅方向D13に延出した一対の部位であって、Z字形に応じて上記の境界12bとともに折り曲げられる。本実施形態では、これら一対の拡幅折曲げ部125の側縁間の距離d15が、一対の矯正部124の側縁間の距離d16よりも短い。
【0023】
次に、コネクタ端子12の中間部123を含む部分に対する樹脂モールドを伴うコネクタハウジング11の成型を伴うコネクタ製造方法について説明する。
【0024】
図5は、コネクタ製造方法における固定金型挿入工程及び移動金型被せ工程を、
図1に対応した断面図で示す図であり、
図6は、
図5に示されている固定金型挿入工程を、
図5と同様の断面が見えるカット斜視図で示す図である。また、
図7は、
図5に示されている移動金型被せ工程、これに続くハウジング成形工程を、
図6と同様のカット斜視図で示す図である。
【0025】
まず、
図5及び
図6に示されている固定金型挿入工程(S11)では、コネクタ端子12において一対の矯正部124の非形成側となる第2接続部122が、固定金型31の端子挿入溝311の内側へと挿入される。固定金型31は、所定位置に固定設置された金型であり、後工程における樹脂充填時にこの樹脂から第2接続部122を遮蔽しつつ、コネクタハウジング11の第2間口112側の形状を画定する金型である。
【0026】
固定金型挿入工程(S11)では、第2接続部122は、この固定金型31における端子挿入溝311の入り口311aへと、先端122aが精密に位置付けられた状態で挿入される。この固定金型挿入工程(S11)に続き、被せ溝321の深さ方向D15に移動可能な移動金型32が、固定金型31へと向かう移動方向D16へと動かされる移動金型被せ工程(S12)が行われる。
【0027】
移動金型被せ工程(S12)では、移動金型32が移動方向D16へと動かされて、コネクタ端子12における第1接続部121に被せられる。このとき、移動金型32は、固定金型31に対し、完成状態のコネクタ1における第2接続部122に対する第1接続部121の相対位置に対応した位置関係となっている。これに対し、第2接続部122が固定金型31に挿入されたコネクタ端子12では、長尺形状のコネクタ端子12の撓みや折り曲げ誤差等により、第2接続部122に対する第1接続部121の相対位置が、完成状態で求められる位置からずれている可能性がある。この場合、移動中の移動金型32の被せ溝321における広口形状の入り口321aから第1接続部121の先端121aがずれている可能性がある。以下、両者がずれているものとして説明を続ける。
【0028】
まず、移動金型32には、第1接続部121から見て、各被せ溝321の入り口321aの、幅方向D13の両脇に長さ方向D14に延在する一対の案内溝322が設けられている。移動金型被せ工程(S12)では、移動金型32が移動方向D16へと動かされると、被せ溝321の入り口321aへと第1接続部121の先端121aが達する前に、一対の矯正部124が一対の案内溝322に挿入される。この挿入により、一対の矯正部124は、第1接続部121の先端121aを、第1接続部121の表裏面と交差する矯正方向D17に動かして被せ溝321の入り口321aへと案内する。
【0029】
移動金型被せ工程(S12)では、このように先端121aが入り口321aに案内された状態で移動金型32が移動方向D16へと動かされて、被せ溝321の内部に第1接続部121の先端121aが収められる。この移動金型32の移動は、移動方向D16の前端が固定金型31に当接するまで続けられる。この移動金型32は、後工程における樹脂充填時にこの樹脂から第1接続部121を遮蔽しつつ、コネクタハウジング11の第1間口111側の形状を画定する金型となっている。そして、移動金型32が固定金型31に当接することで、コネクタ端子12における中間部123を含む部分を埋設する二方向嵌合型のコネクタハウジング11の全体形状を画定し、樹脂が充填される充填空間A11が形成される。
【0030】
移動金型被せ工程(S12)に続くハウジング成形工程(S13)では、上記の充填空間A11に樹脂が充填されて固化されることで、コネクタハウジング11が型成形される。このハウジング成形工程(S13)は、コネクタ端子12について、第2接続部122が固定金型31に挿入され、第1接続部121に移動金型32が被せられ、上記の充填空間A11に中間部123を含む部分が露出した状態で行われる。このような充填空間A11への樹脂の充填により、コネクタ端子12における中間部123を含む部分が樹脂に埋設される。樹脂の固化後に固定金型31及び移動金型32が型抜きされる。このハウジング成形工程(S13)の終了を以て、コネクタ製造方法が終了し、
図1及び
図2に示されているコネクタ1が完成する。
【0031】
以上に説明した実施形態のコネクタ端子12、コネクタ1、及びコネクタ製造方法によれば、次のような効果を奏することができる。本実施形態によれば、移動金型32は第1接続部121に被せられることとなる。この際には、まず、移動金型32における被せ溝321の入り口321aの両脇に設けられた一対の案内溝322に、第1接続部121における中間部123寄りに設けられた一対の矯正部124が挿入される。長尺形状のコネクタ端子12の撓み等により、コネクタ端子12の先端121aが被せ溝321の入り口321aからずれた状態であったとしても、案内溝322への矯正部124の挿入により、コネクタ端子12の先端121aが入り口321aへと案内される。このとき、矯正部124が、第1接続部121において撓み等による振れ幅が先端121aに比べて小さくなる中間部123寄りに設けられている。このような位置への設置により、矯正部124は、先端121aに比べて良好に案内溝322へと挿入することができる。そして、この矯正部124の案内溝322への挿入によって先端121aが被せ溝321の入り口321aへと案内されるので移動金型32が第1接続部121へと良好に被せられることとなる。このように、本実施形態によれば、移動金型32を動かして被せる際に、移動金型32を良好にコネクタ端子12に被せることができる。
【0032】
また、このように移動金型32が第1接続部121に被せられて行われるコネクタハウジング11の型成形では、先端121aが移動金型32によって精密に位置決めされた状態で樹脂が固化される。固定金型31に挿入される第2接続部122の先端122aについては言うまでもない。このような状態での樹脂の固化により、完成後の第1間口111及び第2間口112それぞれの内部における各先端121a,122aの位置精度を向上させることができる。
【0033】
ここで、本実施形態では、第1接続部121が、1本の帯状金属がZ字形をなすように折り曲げ形成されたときの一端側部分であり、第2接続部122が、Z字形の帯状金属における他端側部分である。また、中間部123は、Z字形の帯状金属において第1接続部121と第2接続部122とを斜めに繋ぐ部位となっている。この構成によれば、二方向開口型で2つの間口の位置がずれた形状のコネクタハウジング11にコネクタ端子12を良好に収めることができる。また、このようなZ字形に折り曲げ形成されたコネクタ端子12は、折り曲げ誤差等に起因して第1接続部121の先端121aのずれが大きくなりがちとなる。しかしながら、第1接続部121における振れ幅が比較的小さくなる中間部123寄りに設けられた上述の矯正部124により、先端121aのずれが大きい場合であっても先端121aを移動金型32の入り口321aへと効果的に案内することができる。
【0034】
また、本実施形態では、中間部123と第2接続部122との境界12bを含む部分における両側縁から幅方向D13に延出した一対の拡幅折曲げ部125がコネクタ端子12に設けられている。この構成によれば、一対の拡幅折曲げ部125によって上記の境界12bの幅が拡げられている。この拡幅により、中間部123と第2接続部122との境界12bでの折り曲げ誤差を抑え、第1接続部121の先端121aのずれも抑えることができる。
【0035】
また、本実施形態では、一対の拡幅折曲げ部125の側縁間の距離d15が、一対の矯正部124の側縁間の距離d16よりも短い。この構成によれば、一対の矯正部124が第1接続部121の先端121aを矯正方向D17に動かす際に、一対の拡幅折曲げ部125を含む部分から受ける抵抗力を抑えることができる。
【0036】
また、本実施形態では、一対の矯正部124が、第1接続部121と中間部123との境界12aから先端121a側に離れた位置に設けられている。そして、第1接続部121において一対の矯正部124よりも中間部123寄りの部分の幅寸法d11及び中間部123の幅寸法d12が、何れも、一対の矯正部124よりも先端121a側の部分の幅寸法d13に比べて幅狭に形成されている。この構成によれば、一対の矯正部124が先端121aを矯正方向に動かす際に、矯正部124よりも第2接続部122側の部分から受ける抵抗力を抑えることができる。
【0037】
尚、以上に説明した実施形態はコネクタ端子、コネクタ、及びコネクタ製造方法の代表的な形態を示したに過ぎない。コネクタ端子、コネクタ、及びコネクタ製造方法は、これに限定されるものではなく種々変形して実施することができる。
【0038】
例えば、上述した実施形態では、コネクタの一例として、車両に搭載されて利用されるコネクタ1が例示されている。しかしながら、コネクタは、これに限るものではなく、その具体的な適用対象を問うものではない。
【0039】
また、上述した実施形態では、コネクタハウジングの一例として、各々矩形筒状を有した第1間口111及び第2間口112が設けられた、
図1に示された外観を有するコネクタハウジング11が例示されている。しかしながら、コネクタハウジングは、これに限るものではなく、互いに逆向きの第1間口及び第2間口を有する樹脂ハウジングであれば、具体的な間口形状等は任意の形状を採用し得るものである。
【0040】
また、上述した実施形態では、コネクタ端子の一例として、Z字形に折り曲げ形成され、第1接続部121がその一端側部分であり、第2接続部122が他端側部分であり、中間部123が両者を斜めに繋ぐ部位となったコネクタ端子12が例示されている。しかしながら、コネクタ端子は、これに限るものではなく、単純な棒状のもの等であってもよい。ただし、Z字形のコネクタ端子12によれば、第1間口111と第2間口112とがずれた形状のコネクタハウジング11に良好に収めることができる点は上述した通りである。また、このようなZ字形のコネクタ端子12であっても、上述の一対の矯正部124によって第1接続部121の先端121aを移動金型32の入り口321aへと効果的に案内できる点も上述した通りである。
【0041】
また、上述した実施形態では、コネクタ端子の一例として、中間部123と第2接続部122との境界12bを含む部分に一対の拡幅折曲げ部125が設けられたコネクタ端子12が例示されている。しかしながら、コネクタ端子は、これに限るものではなく、上記の境界を含む部分が、両側縁からは特に何も延出していない単純帯形状で形成されたもの等であってもよい。ただし、一対の拡幅折曲げ部125を設けることで、中間部123と第2接続部122との境界12bでの折り曲げ誤差を抑え、第1接続部121の先端121aのずれも抑えることができる点は上述した通りである。
【0042】
また、上述した実施形態では、コネクタ端子の一例として、一対の拡幅折曲げ部125の側縁間の距離d15が、一対の矯正部124の側縁間の距離d16よりも短いコネクタ端子12が例示されている。しかしながら、コネクタ端子は、これに限るものではなく、一対の拡幅折曲げ部の側縁間の距離が、一対の矯正部の側縁間の距離と同幅又は長くなるように形成されたもの等であってもよい。ただし、一対の拡幅折曲げ部125の側縁間の距離d15が、一対の矯正部124の側縁間の距離d16よりも短いことで、先端121aを動かすときの抵抗力を抑えることができる点は上述した通りである。
【0043】
また、上述した実施形態では、コネクタ端子の一例として、第1接続部121において一対の矯正部124よりも中間部123寄りの部分の幅寸法d11及び中間部123の幅寸法d12が次のような寸法で形成されたコネクタ端子12が例示されている。即ち、これら2箇所の幅寸法d11,d12が、何れも、先端121a側の部分の幅寸法d13に比べて幅狭となっている。しかしながら、コネクタ端子は、これに限るものではなく、長さ方向の各部の幅寸法は任意の寸法に設定し得るものである。ただし、矯正部124よりも中間部123寄りの部分及び中間部123の各幅寸法d11,d12を先端121a側の部分の幅寸法d13よりも幅狭とすることで、先端121aを動かすときの抵抗力を抑えることができる点は上述した通りである。
【符号の説明】
【0044】
1 コネクタ
11 コネクタハウジング
12 コネクタ端子
12a,12b 境界
21 第1相手方コネクタ
22 第2相手方コネクタ
31 固定金型
32 移動金型
111 第1間口
112 第2間口
113 隔壁
121 第1接続部
121a,122a 先端
122 第2接続部
123 中間部
124 矯正部
125 拡幅折曲げ部
311 端子挿入溝
311a,321a 入り口
321 被せ溝
322 案内溝
A11 充填空間
D11 嵌合方向
D12 交差方向
D13 幅方向
D14 長さ方向
D15 深さ方向
D16 移動方向
D17 矯正方向
d11,d12,d13,d14 幅寸法
d15,d16 距離
S11 固定金型挿入工程
S12 移動金型被せ工程
S13 ハウジング成形工程