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特開2024-129337通報位置特定支援装置、通報位置特定支援方法、及び、通報位置特定支援プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129337
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】通報位置特定支援装置、通報位置特定支援方法、及び、通報位置特定支援プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/26 20240101AFI20240919BHJP
   G06F 40/56 20200101ALI20240919BHJP
   G06F 16/909 20190101ALI20240919BHJP
【FI】
G06Q50/26
G06F40/56
G06F16/909
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038477
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【弁理士】
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【弁理士】
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】西井 大智
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 俊宏
(72)【発明者】
【氏名】角田 哲洋
【テーマコード(参考)】
5B175
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5B175DA03
5B175FA01
5B175GA04
5B175GC03
5L049CC35
5L050CC35
(57)【要約】
【課題】通報位置を迅速に特定できるような通報者に対する適切な質問を行うように支援する。
【解決手段】通報位置特定支援装置30は、通報者と受理者との間の会話の音声を認識する音声認識部31と、その会話の音声認識結果310に対して自然言語処理を行う自然言語処理部32と、自然言語処理結果320に含まれる通報位置に関する情報が示す位置条件と合致する位置を地図情報330において検索することによって、通報位置の1以上の候補331を特定する特定部33と、候補331をさらに絞り込むための受理者から通報者に対する誘導質問340を、候補331と誘導質問340との関係を表す誘導質問生成基準341に基づいて生成する生成部34と、を備える。
【選択図】 図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通報者と受理者との間の会話の音声を認識する音声認識手段と、
前記会話の音声の認識結果に対して自然言語処理を行う自然言語処理手段と、
前記自然言語処理の結果に含まれる通報位置に関する情報が示す位置条件と合致する位置を地図情報において検索することによって、前記通報位置の1以上の候補を特定する特定手段と、
前記候補をさらに絞り込むための受理者から通報者に対する誘導質問を、前記候補と前記誘導質問との関係を表す誘導質問生成基準に基づいて生成する生成手段と、
を備える通報位置特定支援装置。
【請求項2】
前記特定手段は、前記通報位置に関する情報として、目印となる拠点を表すキーワードを前記自然言語処理の結果から抽出し、目印となる拠点の位置を表す前記地図情報において前記位置条件と合致する位置を検索する、
請求項1に記載の通報位置特定支援装置。
【請求項3】
前記地図情報は、通報者が拠点を視認する方向における視認の障害となる障害物の存在状況を表す3次元情報を含み、
前記特定手段は、前記障害物の存在状況を含む前記位置条件と合致する位置を検索する、
請求項1または請求項2に記載の通報位置特定支援装置。
【請求項4】
通報者からの音声に含まれる環境音を認識する環境音認識手段をさらに備え、
前記特定手段は、前記環境音が発生することを前記位置条件として、前記位置条件と合致する位置を前記地図情報において検索する、
請求項1または請求項2に記載の通報位置特定支援装置。
【請求項5】
前記特定手段は、1以上の前記環境音の個々の大きさから推定される前記環境音の発生源の位置を前記位置条件として、前記位置条件と合致する位置を前記地図情報において検索する、
請求項4に記載の通報位置特定支援装置。
【請求項6】
前記候補と前記誘導質問との関係を学習することによって前記誘導質問生成基準を生成あるいは更新する学習手段をさらに備える、
請求項1または請求項2に記載の通報位置特定支援装置。
【請求項7】
前記自然言語処理の結果を、前記候補からの位置関係が通知条件を満たす位置にいる職員の端末に通知する通知手段をさらに備える、
請求項1または請求項2に記載の通報位置特定支援装置。
【請求項8】
前記通知手段は、前記自然言語処理の結果を表す情報において、重要性が基準以上である部分を特定し、特定した部分を、他の部分とは異なる態様により、前記端末の表示画面に表示する、
請求項7に記載の通報位置特定支援装置。
【請求項9】
情報処理装置によって、
通報者と受理者との間の会話の音声を認識し、
前記会話の音声の認識結果に対して自然言語処理を行い、
前記自然言語処理の結果に含まれる通報位置に関する情報が示す位置条件と合致する位置を地図情報において検索することによって、前記通報位置の1以上の候補を特定し、
前記候補をさらに絞り込むための受理者から通報者に対する誘導質問を、前記候補と前記誘導質問との関係を表す誘導質問生成基準に基づいて生成する、
通報位置特定支援方法。
【請求項10】
通報者と受理者との間の会話の音声を認識する音声認識処理と、
前記会話の音声の認識結果に対する自然言語処理と、
前記自然言語処理の結果に含まれる通報位置に関する情報が示す位置条件と合致する位置を地図情報において検索することによって、前記通報位置の1以上の候補を特定する特定処理と、
前記候補をさらに絞り込むための受理者から通報者に対する誘導質問を、前記候補と前記誘導質問との関係を表す誘導質問生成基準に基づいて生成する生成処理と、
をコンピュータに実行させるための通報位置特定支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通報位置特定支援装置、通報位置特定支援方法、及び、通報位置特定支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
日々、警察や消防等に対する多数の通報が行われている。そして警察や消防等が受け付けた通報に迅速に対応できるように、通報が行なわれた位置を迅速に特定するための技術が期待されている。
【0003】
上述の技術に関連して、特許文献1には、通報された情報に基づいて、現場位置の特定を支援する位置特定装置が開示されている。この装置は、通報された情報より、通報者が視認した目標物の名称と当該目標物の位置属性を表すキーワードとを抽出する。この装置は、目標物の位置属性を表すキーワードに基づいて、通報者と目標物、又は目標物同士の位置関係を決定する。そしてこの装置は、地図上の各目標物の名称と位置情報とを有する位置関係データから、抽出した目標物の名称と決定した位置関係に該当する当該地図上の範囲を現場位置の候補に特定する。
【0004】
また、特許文献2には、電話機を介した発話者及び受話者の音声データを取得し、辞書データを用いて、音声データからテキストデータへの変換を行う電話受付システムが開示されている。このシステムは、位置情報データを用いて、変換したテキストデータから位置情報を含むキーワードを検索して抽出する。そしてこのシステムは、検索したキーワードのうち地図表示すべき位置情報として選択された位置情報に対応する地図データを検索して取得する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-221852号公報
【特許文献2】特開2009-230466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
通報に含まれる通報位置に関する条件に該当する通報位置の候補が複数存在する場合、通報位置を特定するための追加の情報を通報者から提供してもらうことによって、通報位置を特定することができる。この際、通報者から追加の情報を取得するための通報者に対する質問の内容が適切でないと、通報位置を特定するのに時間を要することになり、事件あるいは事故等への対応が遅れる要因となる。即ち、通報位置を迅速に特定できるような通報者に対する適切な質問を行うように支援することが課題である。上述した特許文献1及び2は、このような課題を解決することは困難である。
【0007】
本発明の主たる目的は、通報位置を迅速に特定できるような通報者に対する適切な質問を行うように支援することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る通報位置特定支援装置は、通報者と受理者との間の会話の音声を認識する音声認識手段と、前記会話の音声の認識結果に対して自然言語処理を行う自然言語処理手段と、前記自然言語処理の結果に含まれる通報位置に関する情報が示す位置条件と合致する位置を地図情報において検索することによって、前記通報位置の1以上の候補を特定する特定手段と、前記候補をさらに絞り込むための受理者から通報者に対する誘導質問を、前記候補と前記誘導質問との関係を表す誘導質問生成基準に基づいて生成する生成手段と、を備える。
【0009】
上記目的を達成する他の見地において、本発明の一態様に係る通報位置特定支援方法は、情報処理装置によって、通報者と受理者との間の会話の音声を認識し、前記会話の音声の認識結果に対して自然言語処理を行い、前記自然言語処理の結果に含まれる通報位置に関する情報が示す位置条件と合致する位置を地図情報において検索することによって、前記通報位置の1以上の候補を特定し、前記候補をさらに絞り込むための受理者から通報者に対する誘導質問を、前記候補と前記誘導質問との関係を表す誘導質問生成基準に基づいて生成する。
【0010】
また、上記目的を達成する更なる見地において、本発明の一態様に係る通報位置特定支援プログラムは、通報者と受理者との間の会話の音声を認識する音声認識処理と、前記会話の音声の認識結果に対する自然言語処理と、前記自然言語処理の結果に含まれる通報位置に関する情報が示す位置条件と合致する位置を地図情報において検索することによって、前記通報位置の1以上の候補を特定する特定処理と、前記候補をさらに絞り込むための受理者から通報者に対する誘導質問を、前記候補と前記誘導質問との関係を表す誘導質問生成基準に基づいて生成する生成処理と、をコンピュータに実行させる。
【0011】
更に、本発明は、係る通報位置特定支援プログラム(コンピュータプログラム)が格納された、コンピュータ読み取り可能な、不揮発性の記録媒体によっても実現可能である。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、通報位置を迅速に特定できるような通報者に対する適切な質問を行うように支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1の実施形態に係る通報位置特定支援装置10の構成を示すブロック図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係る地図情報184を例示する図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係る通報位置特定支援装置10が通報位置の候補を特定し、誘導質問を生成する動作を例示するシーケンス図である。
図4】本発明の第1の実施形態に係る通報位置特定支援装置10の動作を示すフローチャートである。
図5】本発明の第2の実施形態に係る通報位置特定支援装置30の構成を示すブロック図である。
図6】本発明の第2の実施形態に係る通報位置特定支援装置30の動作を示すフローチャートである。
図7】本発明の各実施形態に係る通報位置特定支援装置を実現可能な情報処理装置900の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る通報位置特定支援装置10の構成を示すブロック図である。通報位置特定支援装置10は、例えば警察あるいは消防署等において、受け付けた通報の通報位置を迅速に特定できるように支援する装置である。通報位置特定支援装置10は、受理者端末22及び職員の端末23と通信可能に接続されている。
【0016】
受理者端末22は、通報者端末21からの事件あるいは事故等に関する通報を受理する職員(警察官あるいは消防隊員等)が使用する、例えばスマートフォンあるいはパーソナルコンピュータ等の通話機能を備えた情報処理装置である。尚、本実施形態では以降、事件あるいは事故等をまとめて事象と記載する場合がある。通報者端末21は、例えばスマートフォン等の通話機能を備えた情報処理装置である。通報者端末21から受理者端末22への通報を契機に、通報者端末21と受理者端末22との間で、事象に関する会話を表す音声データが送受信される。
【0017】
職員の端末23は、事象の発生現場に出動する職員が所持する、例えばスマートフォン等の情報処理装置である。
【0018】
通報位置特定支援装置10は、音声認識部11、自然言語処理部12、環境音認識部13、特定部14、生成部15、学習部16、通知部17を備える。音声認識部11、自然言語処理部12、環境音認識部13、特定部14、生成部15、学習部16、通知部17は、順に、音声認識手段、自然言語処理手段、環境音認識手段、特定手段、生成手段、学習手段、通知手段の一例である。
【0019】
記憶部18は、例えば、図7を参照して後述するRAM(Random Access Memory)あるいはハードディスク904のような記憶デバイスである。記憶部18は、音声認識結果181、自然言語処理結果182、環境音認識結果183、地図情報184、誘導質問生成基準185、重要性判定基準186を記憶している。記憶部18に記憶されたこれらの情報については後述する。
【0020】
音声認識部11は、通報者端末21と受理者端末22との間で送受信される、事象に関する会話を表す音声データを取得し、その音声データに対する音声認識処理を行った音声認識結果181を生成し、生成した音声認識結果181を記憶部18に格納する。音声認識結果181は、例えば、事象に関する会話を表すテキストデータとして表される。
【0021】
自然言語処理部12は、音声認識部11により生成された音声認識結果181に対して、形態素解析及び構文解析等を含む自然言語処理を行い、その結果を自然言語処理結果182として記憶部18に格納する。
【0022】
環境音認識部13は、通報者端末21からの音声データに含まれる環境音を認識する。環境音は、通報者が通報中にその近辺において発生している音であり、例えば、踏切の警告音、幹線道路を走行する自動車の走行音、自治体からの放送(所定の時刻を知らせる音楽等)、工場等の施設から発生する音などである。
【0023】
環境音認識部13は、通報者端末21からの音声データに含まれる環境音を分析することによってその特徴を抽出し、記憶部18に登録されている様々な環境音の特徴を表す情報(不図示)と比較することによって、環境音の発生源の種別等を特定する。環境音認識部13は、環境音の特徴として、例えばその周波数スペクトルを使用可能である。
【0024】
環境音認識部13は、例えば、通報者端末21からの音声データに含まれる環境音の周波数スペクトルと、事前に登録されている踏切の警告音の周波数スペクトルとの類似度が所定の閾値以上である場合、通報者端末21からの音声データに含まれる環境音が踏切の警告音であることを特定する。踏切の警告音の周波数スペクトルの特徴が、例えば鉄道会社ごとに異なる、あるいは個々の踏切ごとに異なる場合、鉄道会社あるいは個々の踏切を識別可能な識別情報と関連付けされた、踏切の警告音の周波数スペクトルの特徴を表す情報が、記憶部18に事前に登録されてもよい。この場合、環境音認識部13は、通報者端末21からの音声データに含まれる環境音の発生源である踏切の鉄道会社あるいは踏切の個体を特定可能である。踏切とは異なる環境音の発生源についても同様に、発生源を識別可能な情報と関連付けされた環境音の特徴を表す情報が記憶部18に事前に登録されることによって、環境音認識部13は、環境音の発生源を詳細に特定することができる。
【0025】
環境音認識部13は、また、通報者端末21からの音声データに含まれる環境音の大きさを分析し、その大きさから、環境音の発生源の位置と通報位置との距離を推定してもよい。環境音認識部13は、例えば、環境音ごとに、その発生源からの距離と音の大きさとの関係を表す情報(不図示)を取得し、取得した情報に基づいて、環境音の発生源の位置と通報位置との距離を推定可能である。
【0026】
環境音認識部13は、上述の通りに通報者端末21からの音声データに含まれる環境音を認識した環境音認識結果183を、記憶部18に格納する。環境音認識結果183は、通報の音声に含まれる環境音の発生源の種別、及び、通報位置と環境音の発生源の位置との推定された距離等を含む。
【0027】
特定部14は、自然言語処理結果182及び環境音認識結果183に含まれる通報位置に関する情報が示す位置条件と合致する位置を地図情報184において検索することによって、通報位置の1以上の候補を特定する。特定部14は、この際、通報位置に関する情報として、目印となる拠点を表すキーワードを自然言語処理結果182から抽出し、目印となる拠点の位置を表す地図情報184において、当該位置条件と合致する位置を検索する。
【0028】
生成部15は、特定部14によって特定された通報位置の候補をさらに絞り込むための受理者から通報者に対する誘導質問を、候補と誘導質問との関係を表す誘導質問生成基準185に基づいて生成する。
【0029】
次に、上述した特定部14及び生成部15の動作について、図2及び図3を参照して説明する。
【0030】
図2は、本実施形態に係る地図情報184を例示する図である。図2に例示する地図情報184によれば、コンビニ(コンビニエンスストア)BとコンビニCとが隣接する場所が、A駅の北口側に2か所、A駅の南口側に2か所存在する。
【0031】
図3は、本実施形態に係る特定部14が通報位置の候補を特定し、特定部14による通報位置の候補の特定結果に基づいて生成部15が受理者から通報者に対する誘導質問を生成する動作を例示するシーケンス図である。
【0032】
図3に示す例において、通報者端末21から受理者端末22に対して、「A駅の近くで人が暴れています。近くにコンビニBとコンビニCが見えます。」という通報が行われている。音声認識部11は、前述した通報の音声をテキストデータに変換した音声認識結果181を生成する。そして自然言語処理部12は、生成された音声認識結果181に対する自然言語処理を行った自然言語処理結果182を生成する。
【0033】
特定部14は、生成された自然言語処理結果182から、「A駅」、「コンビニB」、「コンビニC」という目印となる拠点を表すキーワードを抽出する。特定部14は、図2に例示する地図情報184において、A駅の近辺においてコンビニBとコンビニCとが隣接することによってその両方を視認可能であるという位置条件と合致する位置を検索する。そして特定部14は、地図情報184において、通報位置の候補として、候補W、候補X、候補Y、候補Zという4ヵ所を特定する。
【0034】
生成部15は、特定部14によって通報位置の候補として特定された候補W、候補X、候補Y、候補Zから候補をさらに絞り込むための受理者から通報者に対する誘導質問を、誘導質問生成基準185に基づいて生成する。誘導質問生成基準185は、通報位置の候補として、図2に例示する候補W、候補X、候補Y、候補Zが存在する場合において、通報位置がA駅の北口側であるのか南口側であるのかを確認することを示している。したがって、生成部15は、「そちらの場所はA駅の北口側ですか、それとも南口側ですか。」という誘導質問を生成し、生成した誘導質問を受理者端末22の表示画面に表示する。そしてその誘導質問は、受理者端末22の表示画面を確認した受理者によって通報者に対して行われる。
【0035】
図3に示す例では、通報位置特定支援装置10は、上述した誘導質問に対して「A駅の北口側です。」という通報者からの回答を得ている。音声認識部11は、前述した回答の音声をテキストデータに変換した音声認識結果181を生成し、自然言語処理部12は、生成された音声認識結果181に対する自然言語処理を行った自然言語処理結果182を生成する。
【0036】
特定部14は、生成された自然言語処理結果182から、「A駅の北口側」という目印となる拠点を表すキーワードを抽出する。特定部14は、図2に例示する地図情報184において、通報位置の候補として既に特定されている、候補W、候補X、候補Y、候補Zのうち、A駅の北口側であるという位置条件と合致する位置を検索する。そして特定部14は、通報位置の候補を、候補W及び候補Xという2ヵ所に絞り込む。
【0037】
生成部15は、特定部14によって通報位置の候補として絞り込まれた候補W及び候補Xから候補をさらに絞り込むための受理者から通報者に対する誘導質問を、誘導質問生成基準185に基づいて生成する。誘導質問生成基準185は、通報位置の候補として、図2に例示する候補W及び候補Xが存在する場合において、コンビニBとコンビニCとが道路の同じ側にあるのか互いに道路の反対側にあるのかを確認することを示している。したがって、生成部15は、「コンビニBとコンビニCは、道路の同じ側にありますか、それとも互いに道路の反対側にありますか。」という誘導質問を生成し、生成した誘導質問を受理者端末22の表示画面に表示する。そしてその誘導質問は、受理者端末22の表示画面を確認した受理者によって通報者に対して行われる。
【0038】
図3に示す例では、通報位置特定支援装置10は、上述した誘導質問に対して「道路の同じ側です。」という通報者からの回答を得ている。音声認識部11は、前述した回答の音声をテキストデータに変換した音声認識結果181を生成し、自然言語処理部12は、生成された音声認識結果181に対する自然言語処理を行った自然言語処理結果182を生成する。
【0039】
特定部14は、生成された自然言語処理結果182から、「道路の同じ側」というキーワードを抽出する。特定部14は、図2に例示する地図情報184において、通報位置の候補として既に絞り込まれている、候補W及び候補Xのうち、コンビニBとコンビニCが道路の同じ側であるという位置条件と合致する位置を検索する。そして特定部14は、通報位置の候補を候補Xに絞り込み、通報位置が候補Xであると特定する。
【0040】
図2及び図3に例示する特定部14及び生成部15の上述した動作は一例であり、特定部14及び生成部15は、上述とは異なる動作によって通報位置の特定を支援してもよい。例えば、図2に示す例において、特定部14は、コンビニB及びコンビニCの他に各場所から視認可能な目印となる拠点(銀行、郵便局、駐車場、大型店舗、観光名所、球技場等)の違いによって、通報位置の候補を特定してもよい。その場合、生成部15は、前述した目印となる拠点が見えるか否かを問う誘導質問を生成すればよい。特定部14は、また、環境音認識結果183に含まれる、環境音の発生源の種別、及び、環境音の発生源と通報位置との距離に関する位置条件と合致する位置を地図情報184において検索することによって、通報位置の候補を特定してもよい。
【0041】
尚、地図情報184は、通報者が目印となる拠点を視認する方向における視認の障害となる障害物の存在状況を表す3次元情報を含んでもよい。例えば、通報者の位置の近くに目印となる拠点があったとしても、通報者と目印となる拠点との間に高い建造物(障害物)等が存在する場合、通報者はその目印となる拠点を視認することができない。この場合において地図情報184が上述した3次元情報を含まない場合、特定部14は、通報者の位置から目印となる拠点を視認できるという誤った位置条件を用いて、通報位置の候補を誤って特定するおそれがある。したがって、特定部14は、障害物の存在状況を含む位置条件と合致する位置を、3次元情報を含む地図情報184において検索することによって、前述した問題を回避することができる。
【0042】
尚、受理者端末22が通報者端末21からの通報に対して自動応答する機能を備える場合、生成部15は、生成した誘導質問を通報者端末21に対して行うように受理者端末22を制御してもよい。
【0043】
図1に示す学習部16は、過去の通報に対する対応事例によって示される、通報位置の候補と、通報位置の候補をさらに絞り込むための通報者に対する誘導質問との関係を学習することによって、誘導質問生成基準を生成あるいは更新する。学習部16は、生成あるいは更新した誘導質問生成基準185を記憶部18に格納する。
【0044】
通知部17は、自然言語処理部12によって生成された自然言語処理結果182を、特定部14によって特定された通報位置の候補からの位置関係が通知条件(不図示)を満たす位置にいる職員の端末23に通知する。当該通知条件は、例えば、特定部14によって特定された通報位置の候補からの距離が予め決められた閾値以下であること、あるいは、通報位置の候補に移動するまでの所要見込み時間が所与の閾値以下であること等を表す。通知部17は、上述した職員の端末23に対する自然言語処理結果182の通知を、例えば、特定部14によって通報位置の候補が1つに絞られたときに行ってもよいし、あるいは、通報位置の候補が所定の数(例えば2つ)以下に絞られたときに行うようにしてもよい。
【0045】
通知部17は、また、自然言語処理結果182において、重要性判定基準186に基づいて、重要性が基準以上である部分を特定し、特定した部分を、他の部分とは異なる態様により、職員の端末23の表示画面に表示する。通知部17は、より具体的には、例えば、自然言語処理結果182において重要性が基準以上である部分をハイライト表示する。
【0046】
重要性判定基準186は、例えば、通報が行われた事象への対応を職員が行う上で、重要な情報となるキーワードを示す。重要な情報となるキーワードは、例えば事件の場合、容疑者の特徴等を表す語句であり、例えば車両の事故の場合、事故発生時における車両の動きの特徴等を表す語句である。重要性判定基準186は、例えば通報位置特定支援装置10の管理者等によって与えられてもよいし、通報位置特定支援装置10が他の情報処理装置から取得するようにしてもよい。
【0047】
次に図4のフローチャートを参照して、本実施形態に係る通報位置特定支援装置10の動作(処理)について詳細に説明する。
【0048】
音声認識部11は、通報者端末21と受理者端末22との間で送受信される、通報者と受理者との間の会話の音声に対する音声認識処理を行い、認識した音声認識結果181を生成する(ステップS101)。自然言語処理部12は、音声認識部11によって生成された音声認識結果181に対して形態素解析及び構文解析等を含む自然言語処理を行った自然言語処理結果182を生成する(ステップS102)。特定部14は、自然言語処理部12によって生成された自然言語処理結果182から目印となる拠点を表すキーワードを抽出する(ステップS103)。
【0049】
環境音認識部13は、通報者からの音声に含まれる環境音を認識した環境音認識結果183を生成する(ステップS104)。特定部14は、目印となる拠点を表すキーワードと環境音認識結果183によって示される位置条件と合致する位置を通報位置の候補として、地図情報184において検索する(ステップS105)。
【0050】
特定部14によって通報位置の候補が1つに絞られた場合(ステップS106でYes)、全体の処理は終了する。特定部14によって通報位置の候補が1つに絞られていない(即ち、通報位置の候補が複数存在する)場合(ステップS106でNo)、生成部15は、通報位置の候補と誘導質問生成基準185とから、通報位置の候補をさらに絞り込むための誘導質問を生成する(ステップS107)。生成部15は、生成した誘導質問を、受理者端末22を介して通報者端末21に提示し(ステップS108)、処理はステップS101へ戻る。
【0051】
本実施形態に係る通報位置特定支援装置10は、通報位置を迅速に特定できるような通報者に対する適切な質問を行うように支援することができる。その理由は、通報位置特定支援装置10は、自然言語処理結果182に含まれる通報位置に関する情報が示す位置条件と合致する位置を地図情報184において検索して通報位置の候補を特定し、その候補をさらに絞り込むための通報者に対する誘導質問を、誘導質問生成基準185に基づいて生成するからである。
【0052】
以下に、本実施形態に係る通報位置特定支援装置10によって実現される効果について、詳細に説明する。
【0053】
通報に含まれる通報位置に関する条件に該当する通報位置の候補が複数存在する場合、通報位置を特定するための追加の情報を通報者から提供してもらうことによって、通報位置を特定することができる。この際、通報者から追加の情報を取得するための通報者に対する質問の内容が適切でないと、通報位置を特定するのに時間を要することになり、事件あるいは事故等への対応が遅れる要因となる。即ち、通報位置を迅速に特定できるような通報者に対する適切な質問を行うように支援することが課題である。
【0054】
このような問題に対して、本実施形態に係る通報位置特定支援装置10は、通報者と受理者との間の会話の音声を認識し、その会話の音声認識結果181に対して自然言語処理を行う。通報位置特定支援装置10は、自然言語処理結果182に含まれる通報位置に関する情報が示す位置条件と合致する位置を地図情報184において検索することによって、通報位置の1以上の候補を特定する。そして、通報位置特定支援装置10は、候補をさらに絞り込むための受理者から通報者に対する誘導質問を、候補と誘導質問との関係を表す誘導質問生成基準185に基づいて生成する。これにより、通報位置特定支援装置10は、通報者に対する質問を自動で生成するので、通報位置を迅速に特定できるような適切な質問を行うように支援することができる。
【0055】
また、本実施形態に係る通報位置特定支援装置10は、通報者が拠点を視認する方向における視認の障害となる障害物の存在状況を表す3次元情報を含む地図情報184を使用する。そして通報位置特定支援装置10は、その障害物の存在状況を含む位置条件と合致する位置を検索する。これにより、通報位置特定支援装置10は、通報位置の候補をより高い精度で特定することができる。
【0056】
また、本実施形態に係る通報位置特定支援装置10は、通報者からの音声に含まれる環境音を認識し、当該環境音が発生することを位置条件として、その位置条件と合致する位置を地図情報184において検索する。通報位置特定支援装置10は、さらに、1以上の環境音の個々の大きさから推定される環境音の発生源の位置を位置条件として、当該位置条件と合致する位置を地図情報184において検索する。これにより、通報位置特定支援装置10は、より迅速かつ正確に通報位置の候補を特定することができる。
【0057】
また、本実施形態に係る通報位置特定支援装置10は、通報位置の候補と誘導質問との関係を学習することによって誘導質問生成基準185を生成あるいは更新する。これにより、通報位置特定支援装置10は、生成する誘導質問の適切性を次第に高めることができる。
【0058】
また、本実施形態に係る通報位置特定支援装置10は、自然言語処理結果182を、通報位置の候補からの位置関係が通知条件を満たす位置にいる職員の端末23に通知する。そして通報位置特定支援装置10は、自然言語処理結果182において、重要性が基準以上である部分を特定し、特定した部分を、他の部分とは異なる態様により、職員の端末23の表示画面に表示する。これにより、通報位置特定支援装置10は、通報された事象に職員が迅速かつ適切に対応できるように支援することができる。
【0059】
<第2の実施形態>
図5は、本発明の第2の実施形態に係る通報位置特定支援装置30の構成を示すブロック図である。
【0060】
本実施形態に係る通報位置特定支援装置30は、音声認識部31、自然言語処理部32、特定部33、生成部34を備えている。音声認識部31、自然言語処理部32、特定部33、生成部34は、順に、音声認識手段、自然言語処理手段、特定手段、生成手段の一例である。
【0061】
音声認識部31は、通報者と受理者との間の会話の音声を認識する。音声認識部31は、例えば、第1の実施形態に係る音声認識部11と同様に動作する。
【0062】
自然言語処理部32は、会話の音声認識結果310に対して自然言語処理を行う。音声認識結果310は、例えば、第1の実施形態に係る音声認識結果181と同様な情報である。自然言語処理部32は、例えば、第1の実施形態に係る自然言語処理部12と同様に動作する。
【0063】
特定部33は、自然言語処理結果320に含まれる通報位置に関する情報が示す位置条件と合致する位置を地図情報330において検索することによって、通報位置の1以上の候補331を特定する。自然言語処理結果320は、例えば、第1の実施形態に係る自然言語処理結果182と同様な情報である。地図情報330は、例えば、第1の実施形態に係る地図情報184と同様な情報である。特定部33は、例えば、第1の実施形態に係る特定部14と同様に動作する。
【0064】
生成部34は、候補331をさらに絞り込むための受理者から通報者に対する誘導質問340を、候補331と誘導質問340との関係を表す誘導質問生成基準341に基づいて生成する。誘導質問生成基準341は、例えば、第1の実施形態に係る誘導質問生成基準185と同様な基準である。生成部34は、例えば、第1の実施形態に係る生成部15と同様に動作する。
【0065】
次に図6のフローチャートを参照して、本実施形態に係る通報位置特定支援装置30の動作(処理)について詳細に説明する。
【0066】
音声認識部31は、通報者と受理者との間の会話の音声を認識する(ステップS201)。自然言語処理部32は、音声認識部31による音声認識結果310に対して自然言語処理を行う(ステップS202)。
【0067】
特定部33は、自然言語処理部32による自然言語処理結果320に含まれる通報位置に関する情報が示す位置条件と合致する位置を地図情報330において検索することによって、通報位置の1以上の候補331を特定する(ステップS203)。生成部34は、候補331をさらに絞り込むための受理者から通報者に対する誘導質問340を誘導質問生成基準341に基づいて生成し(ステップS204)、処理はステップS201へ戻る。
【0068】
本実施形態に係る通報位置特定支援装置30は、通報位置を迅速に特定できるような通報者に対する適切な質問を行うように支援することができる。その理由は、通報位置特定支援装置30は、自然言語処理結果320に含まれる通報位置に関する情報が示す位置条件と合致する位置を地図情報330において検索して通報位置の候補を特定し、その候補をさらに絞り込むための通報者に対する誘導質問340を、誘導質問生成基準341に基づいて生成するからである。
【0069】
<ハードウェア構成例>
上述した各実施形態において図1、及び、図5に示した通報位置特定支援装置における各部は、専用のHW(HardWare)(電子回路)によって実現することができる。また、図1、及び、図5において、少なくとも、下記構成は、プロセッサによって実行される命令を含むソフトウェアプログラムの機能(処理)単位(ソフトウェアモジュール)と捉えることができる。
・音声認識部11及び31、
・自然言語処理部12及び32、
・環境音認識部13、
・特定部14及び33、
・生成部15及び34、
・学習部16、
・通知部17、
・記憶部18における記憶制御機能。
【0070】
但し、これらの図面に示した各部の区分けは、説明の便宜上の構成であり、実装に際しては、様々な構成が想定され得る。この場合のハードウェア環境の一例を、図7を参照して説明する。
【0071】
図7は、本発明の各実施形態に係る通報位置特定支援装置を実現可能な情報処理装置900(コンピュータ)の構成を例示的に説明する図である。即ち、図7は、図1、及び、図5に示した通報位置特定支援装置を実現可能なコンピュータ(情報処理装置)の構成であって、上述した実施形態における各機能を実現可能なハードウェア環境を表す。
【0072】
図7に示した情報処理装置900は、構成要素として下記を備えている。
・CPU(Central_Processing_Unit)901、
・ROM(Read_Only_Memory)902、
・RAM(Random_Access_Memory)903、
・ハードディスク(記憶装置)904、
・通信インタフェース905、
・バス906(通信線)、
・CD-ROM(Compact_Disc_Read_Only_Memory)等の記録媒体907に格納されたデータを読み書き可能なリーダライタ908、
・モニターやスピーカ、キーボード等の入出力インタフェース909。
【0073】
即ち、上記構成要素を備える情報処理装置900は、これらの構成がバス906を介して接続された一般的なコンピュータである。情報処理装置900は、CPU901を複数備える場合もあれば、マルチコアにより構成されたCPU901を備える場合もある。情報処理装置900は、また、上述した構成の一部を備えない場合もある。
【0074】
そして、上述した実施形態を例に説明した本発明は、図7に示した情報処理装置900に対して、次の機能を実現可能なコンピュータプログラムを供給する。その機能とは、その実施形態の説明において参照したブロック構成図(図1及び図5)における上述した構成、或いはフローチャート(図4及び図6)の機能である。本発明は、その後、そのコンピュータプログラムを、当該ハードウェアのCPU901に読み出して解釈し実行することによって達成される。また、当該装置内に供給されたコンピュータプログラムは、読み書き可能な揮発性のメモリ(RAM903)、または、ROM902やハードディスク904等の不揮発性の記憶デバイスに格納すれば良い。
【0075】
また、前記の場合において、当該ハードウェア内へのコンピュータプログラムの供給方法は、現在では一般的な手順を採用することができる。その手順としては、例えば、CD-ROM等の各種記録媒体907を介して当該装置内にインストールする方法や、インターネット等の通信回線を介して外部よりダウンロードする方法等がある。そして、このような場合において、本発明は、係るコンピュータプログラムを構成するコード或いは、そのコードが格納された記録媒体907によって構成されると捉えることができる。
【0076】
以上、上述した実施形態を模範的な例として本発明を説明した。しかしながら、本発明は、上述した実施形態には限定されない。即ち、本発明は、本発明のスコープ内において、当業者が理解し得る様々な態様を適用することができる。
【符号の説明】
【0077】
10 通報位置特定支援装置
11 音声認識部
12 自然言語処理部
13 環境音認識部
14 特定部
15 生成部
16 学習部
17 通知部
18 記憶部
181 音声認識結果
182 自然言語処理結果
183 環境音認識結果
184 地図情報
185 誘導質問生成基準
186 重要性判定基準
21 通報者端末
22 受理者端末
23 職員の端末
30 通報位置特定支援装置
31 音声認識部
310 音声認識結果
32 自然言語処理部
320 自然言語処理結果
33 特定部
330 地図情報
331 候補
34 生成部
340 誘導質問
341 誘導質問生成基準
900 情報処理装置
901 CPU
902 ROM
903 RAM
904 ハードディスク(記憶装置)
905 通信インタフェース
906 バス
907 記録媒体
908 リーダライタ
909 入出力インタフェース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7