(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129343
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】ダイバーシチ受信装置及びダイバーシチ受信方法
(51)【国際特許分類】
H04B 7/08 20060101AFI20240919BHJP
H04L 27/18 20060101ALI20240919BHJP
【FI】
H04B7/08 480
H04B7/08 372A
H04L27/18 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038485
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】宇野 一貴
(72)【発明者】
【氏名】向口 昂寿
(57)【要約】
【課題】少ない演算量で、フェージング環境下で同相化精度の改善を図り、ランダムノイズの環境下において同相化精度を劣化させないダイバーシチ受信装置を提供する。
【解決手段】ダイバーシチ受信装置は、第1のブランチ及び第2のブランチと、第1の位相補償部と、第2の位相補償部と、ブランチ合成部とを備える。第1のブランチ及び第2のブランチは、差動位相偏移変調された信号を受信し、受信信号を出力する。第1の位相補償部は、第1のブランチに設けられ、受信信号に含まれるフェージング位相歪を補償する。第2の位相補償部は、第2のブランチに設けられ、受信信号に含まれるフェージング位相歪を補償する。ブランチ合成部は、第1の位相補償部の出力信号と第2の位相補償部の出力信号との位相差を算出し、同じ位相差がN回連続したとき、当該位相差に基づいて第1の位相補償部の出力信号と第2の位相補償部の出力信号との位相差を補正して合成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
差動位相偏移変調された信号を受信し、受信信号を出力する第1のブランチ及び第2のブランチと、
前記第1のブランチに設けられ、前記受信信号に含まれるフェージング位相歪を補償する第1の位相補償部と、
前記第2のブランチに設けられ、前記受信信号に含まれるフェージング位相歪を補償する第2の位相補償部と、
前記第1の位相補償部の出力信号と前記第2の位相補償部の出力信号との位相差を算出し、同じ位相差がN(Nは整数)回連続したとき、当該位相差に基づいて前記第1の位相補償部の出力信号と前記第2の位相補償部の出力信号との位相差を補正して合成するブランチ合成部と、を具備するダイバーシチ受信装置。
【請求項2】
前記ブランチ合成部は、
前記第1の位相補償部の出力信号と前記第2の位相補償部の出力信号とを比較してブランチ間の位相差を算出する算出部と、
前記算出部による算出結果に基づいて、同じ位相差が前記N(Nは整数)回連続したとき、当該位相差に相当する位相補正量で前記第2の位相補償部の出力信号の位相を補正する補正部と、
前記第1の位相補償部の出力信号と前記補正部の出力信号とを合成する合成処理部と、
を有する請求項1に記載のダイバーシチ受信装置。
【請求項3】
前記補正部は、
前記第2の位相補償部の出力信号の位相を、記憶された第1の位相補正量で補正する位相補正部と、
前記算出部による算出結果に基づいて、同じ位相差が前記N(Nは整数)回連続するか否かを判定し、前記同じ位相差が前記N(Nは整数)回連続した場合に、当該位相差に相当する第2の位相補正量を求めて、前記位相補正部に記憶された前記第1の位相補正量を前記第2の位相補正量に更新する位相補正量決定部と、
を有する請求項2に記載のダイバーシチ受信装置。
【請求項4】
前記第1のブランチ及び前記第2のブランチは、差動4位相偏移変調信号を受信し、
前記ブランチ合成部は、前記位相差として、90°単位のブランチ間の象限ずれを検出する、請求項1に記載のダイバーシチ受信装置。
【請求項5】
前記位相補正量決定部は、通信システムの移動局に適用される場合に、第1の値として前記Nが2以上に設定され、同じ位相差が前記第1の値の回数以上連続するか否かを判定する、請求項3に記載のダイバーシチ受信装置。
【請求項6】
前記位相補正量決定部は、通信システムの固定局に適用される場合に、前記Nが前記通信システムの移動局に適用される場合に設定される第1の値より大きな第2の値に設定される、請求項3に記載のダイバーシチ受信装置。
【請求項7】
差動位相偏移変調された信号を第1のブランチ及び第2のブランチによりそれぞれ受信することと、
第1のブランチから出力される受信信号に含まれるフェージング位相歪を第1の位相補償部で補償することと、
第2のブランチから出力される受信信号に含まれるフェージング位相歪を第2の位相補償部で補償することと、
前記第1の位相補償部の出力信号と前記第2の位相補償部の出力信号とを比較してブランチ間の位相差を算出することと、
同じ位相差がN(Nは整数)回連続するか否かを判定することと、
前記同じ位相差が前記N(Nは整数)回連続した場合に、当該位相差に相当する位相補正量で、前記第1の位相補償部の出力信号及び前記第2の位相補償部の出力信号のいずれか一方の位相を補正することと、
を具備するダイバーシチ受信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイバーシチ受信装置及びダイバーシチ受信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタル無線回線を使用する通信システムにおいては、フェージングによる伝送品質の著しい劣化を改善するために、ダイバーシチ受信装置が用いられる。このダイバーシチ受信装置の一つに、合成型ダイバーシチ受信装置がある。合成型ダイバーシチ受信装置は、受信品質を改善するために、複数のアンテナを用いて、例えば送信側で差動4位相偏移変調(DQPSK)信号を受信し、各アンテナの受信経路であるブランチ間で各受信信号を同相化して合成する。そして、合成信号のシンボル間で差動復号を行うことにより、受信信号を復調する。
【0003】
特許文献1に記載の合成型ダイバーシチ受信装置は、位相歪補償後の任意の1つのブランチ(ブランチA)を基準とし、他のブランチ(ブランチB)の信号を2π/M(M=4)ずつ位相回転させたレプリカを生成する。そして、連続する2シンボル間で基準となるブランチAの信号とこのレプリカの信号点距離の自乗和を計算し、信号点距離が最小となるものを選択することで同相化し、該当するブランチAの信号とブランチBの信号を合成する。この合成型ダイバーシチ受信装置では、位相歪補償後に補償しきれないブランチ毎に独立な位相不確定性が、連続する2シンボル間で変化しないと仮定している。この仮定のもとで、上記のブランチ間の信号点距離の自乗和が最小となるものを最も確からしい受信信号と判定し、それらを合成する。
特許文献1によれば、合成型ダイバーシチ受信装置の同相化精度を改善し、伝送品質を向上することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、受信装置内部の熱雑音の影響といったランダムノイズの環境下において、上記の仮定が成立しないため、上記特許文献1では同相化精度を向上させる効果が得られない、または同相化精度が劣化しかえって伝送品質が低下する可能性がある。
また、上記特許文献1では、シンボル毎に同相化するための複数回の演算が必要となり、受信装置に相応の演算能力が必要となる。
【0006】
本発明は、このような従来の未解決の問題に着目してなされたものであり、少ない演算量で、フェージング環境下で同相化精度の改善を図り、且つ、ランダムノイズの環境下において同相化精度を劣化させないダイバーシチ受信装置及びダイバーシチ受信方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一態様によれば、差動位相偏移変調された信号を受信し、受信信号を出力する第1のブランチ及び第2のブランチと、第1のブランチに設けられ、受信信号に含まれるフェージング位相歪を補償する第1の位相補償部と、第2のブランチに設けられ、受信信号に含まれるフェージング位相歪を補償する第2の位相補償部と、第1の位相補償部の出力信号と第2の位相補償部の出力信号との位相差を算出し、同じ位相差がN(Nは整数)回連続したとき、当該位相差に基づいて第1の位相補償部の出力信号と第2の位相補償部の出力信号との位相差を補正して合成するブランチ合成部と、を具備するダイバーシチ受信装置、が提供される。
【0008】
また、本発明の他の態様によれば、差動位相偏移変調された信号を第1のブランチ及び第2のブランチによりそれぞれ受信することと、第1のブランチから出力される受信信号に含まれるフェージング位相歪を第1の位相補償部で補償することと、第2のブランチから出力される受信信号に含まれるフェージング位相歪を第2の位相補償部で補償することと、第1の位相補償部の出力信号と第2の位相補償部の出力信号とを比較してブランチ間の位相差を算出することと、同じ位相差がN(Nは整数)回連続するか否かを判定することと、同じ位相差がN(Nは整数)回連続した場合に、当該位相差に相当する位相補正量で、第1の位相補償部の出力信号及び第2の位相補償部の出力信号のいずれか一方の位相を補正することと、を具備するダイバーシチ受信方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、少ない演算量で、フェージング環境下で同相化精度の改善を図り、且つ、ランダムノイズの環境下において同相化精度を劣化させないダイバーシチ受信装置及びダイバーシチ受信方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る合成型ダイバーシチ受信装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】
図1に示したブランチ合成部の内部の構成を示すブロック図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態に係る合成型ダイバーシチ受信装置が適用される通信システムの一例を示す図である。
【
図4】通信システムの送信装置の構成を示すブロック図である。
【
図5】π/4シフトQPSKの信号空間ダイアグラムを示す図である。
【
図6】受信波を合成する基本的な方法を説明するための図である。
【
図7】2アンテナ構成の受信ダイバーシチ時の3シンボル時間分の様子を示す図である。
【
図8】位相不確定性の除去を行う場合のブランチ合成の例を示す図である。
【
図9】比較例の合成型ダイバーシチ受信装置の処理概念を示す図である。
【
図10】本第1の実施形態に係る合成型ダイバーシチ受信装置のブランチ合成部13による制御処理手順を示すフローチャートである。
【
図11】本第1の実施形態において、2シンボル連続で同じ位相差を検出した場合のタイミングチャートである。
【
図12】本第1の実施形態において、2シンボル連続で同じ位相差を検出しない場合のタイミングチャートである。
【
図13】本発明の第2の実施形態に係る合成型ダイバーシチ受信装置が適用される通信システムの一例を示す図である。
【
図14】本第2の実施形態に係る合成型ダイバーシチ受信装置のブランチ合成部による制御処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものである。
また、以下に示す実施の形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0012】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態に係るダイバーシチ受信装置の構成を示すブロック図である。第1の実施形態に係る合成型ダイバーシチ受信装置1は、例えば、第1のアンテナ111及び第2のアンテナ121の2個のアンテナを用いている。第1のアンテナ111及び第2のアンテナ121は、通信システムの送信装置(後述する)から送信される、例えば差動位相偏移変調(DPSK)で変調された信号を受信して受信信号を出力する。以下では、変調方式として差動4位相偏移変調(DQPSK)であるπ/4シフトQPSKを例にして説明する。
【0013】
第1のアンテナ111からの受信信号は、第1のダウンコンバータ112により無線周波数(RF)帯からベースバンド帯に周波数変換され、ベースバンド信号となる。このベースバンド信号は、第1のローパスフィルタ(LPF)113によりノイズ成分が除去され、第1のアナログ/デジタル(A/D)変換部114によってデジタル信号に変換された後、第1の位相補償部115に入力される。
【0014】
第1の位相補償部115は、入力される受信信号に含まれるフェージング位相歪を補償する。補償後の受信信号は、検波後シンボルとしてブランチ合成部13に入力される。なお、第1のアンテナ111、第1のダウンコンバータ112、第1のLPF113、第1のA/D変換部114及び第1の位相補償部115は、第1のブランチ#1を構成する。
【0015】
一方、第2のアンテナ121からの受信信号は、第2のダウンコンバータ122によりRF帯からベースバンド帯に周波数変換され、ベースバンド信号となる。このベースバンド信号は、第2のLPF123によりノイズ成分が除去され、第2のA/D変換部124によってデジタル信号に変換された後、第2の位相補償部125に入力される。
【0016】
第2の位相補償部125は、入力される受信信号に含まれるフェージング位相歪を補償する。補償後の受信信号は、検波後シンボルとしてブランチ合成部13に入力される。なお、第2のアンテナ121、第2のダウンコンバータ122、第2のLPF123、第2のA/D変換部124及び第2の位相補償部125は、第2のブランチ#2を構成する。
【0017】
ブランチ合成部13は、第1の位相補償部115の出力信号と第2の位相補償部125の出力信号との位相差を算出し、同じ位相差が例えば2回(2シンボル)連続したとき、当該位相差をブランチ間の位相差として第1の位相補償部115の出力信号と第2の位相補償部125の出力信号との位相差を補正(同相化)して合成する。
【0018】
ブランチ合成部13の出力信号は、差動復号部14で差動復号処理が施され、これによって復号データが得られる。この復号データは、後段の回路(図示せず)で位相π/4シフトQPSKに応じたデマッピングがなされる。
【0019】
図2は、上記ブランチ合成部13の内部の構成を示すブロック図である。ここでは、第2のブランチ#2に位相補正部131が設けられている。位相補正部131には、第1の位相補正量を記憶したメモリ1311が備えられている。このメモリ1311は、情報を更新可能な例えば不揮発性のメモリである。位相補正部131は、第2の位相補償部125の出力信号の位相を、メモリ1311で記憶された第1の位相補正量で補正する。
【0020】
また、ブランチ合成部13は、ブランチ間位相差算出部132と、ブランチ間位相補正量決定部133と、合成処理部134とを備えている。ブランチ間位相差算出部132は、第1の位相補償部115の出力信号と第2の位相補償部125の出力信号とを比較することで、第1のブランチ#1と第2のブランチ#2との間の位相差を算出する。
【0021】
ブランチ間位相補正量決定部133は、ブランチ間位相差算出部132による算出結果に基づいて、同じ位相差が2回連続するか否かを判定し、同じ位相差が2回連続した場合に、当該位相差に相当する第2の位相補正量を求める。位相補正部131は、ブランチ間位相補正量決定部133が求めた第2の位相補正量が入力されると、メモリ1311に記憶された第1の位相補正量を第2の位相補正量に更新する。
合成処理部134は、第1の位相補償部115の出力信号と位相補正部131の出力信号とを合成する。
【0022】
(通信システムの構成)
図3は、本発明の第1の実施形態に係る合成型ダイバーシチ受信装置1が適用される通信システムの一例を示している。通信システムは、合成型ダイバーシチ受信装置1と、送信装置2とを備えている。送信装置2は、π/4シフトQPSK信号を、サービスエリアに向け送信する。一方、合成型ダイバーシチ受信装置1は、通信システムの移動局に適用される。つまり、合成型ダイバーシチ受信装置1は、車両RSに搭載されるか、又はユーザが携帯することにより使用される。
【0023】
合成型ダイバーシチ受信装置1は、上記サービスエリア内において送信装置2から到来するπ/4シフトQPSK信号を受信して復号する。
【0024】
(送信装置の構成)
図4は、上記通信システムの送信装置の構成を示すブロック図である。送信装置2は、シリアル/パラレル(S/P)変換部21と、差動符号化部22と、直交変調部23とを備えている。ここで、差動符号化とは、デジタル通信における符号化方式であり、デジタル変調して送ろうとするデジタルデータを、そのまま振幅・周波数・位相に対応させるのではなく、連続したデジタルデータの隣符号との変化(差分)を振幅・周波数・位相に対応させる方式である。主に位相偏移変調(PSK(Phase Shift Keying))で使用され、差動符号化方式を用いたPSK方式を差動位相偏移変調(DPSK(Differential Phase Shift Keying))と呼ぶ。
【0025】
図4において、入力されたシリアルデータはS/P変換部21でパラレルデータに変換された後、差動符号化部22でπ/4シフトQPSKのI/Qの位相マッピング処理を受ける。差動符号化部22は、入力されたパラレルデータに従って1つ前のシンボルの位相を回転させて現在のシンボルのデータであるI成分(同相成分)、Q成分(直交成分)の2つのデータを出力する。これらのI成分とQ成分は、直交変調部23に入力され、直交変調されて出力される。
【0026】
(π/4シフトQPSK信号の生成方法)
上記π/4シフトQPSK信号の生成方法(差動符号化の方法)について、具体的に説明する。
まず、シリアルの2値データ信号列anを、送信するバイナリデータの先頭ビットから2ビット毎にシリアル/パラレル(S/P)変換部21により2ビットパラレルデータ(Xk,Yk)に変換する。シリアル入力の2値データ信号列anから2ビットパラレルデータ(Xk ,Yk )への割り付けはXk=an、Yk=an+1である(n=0,1,2,・・・)。
【0027】
1つ前のシンボルをS(n-1)とし、これに2ビットのパラレルデータ(X
k,Y
k)が加わったときの現在のシンボルをS(n)とする。また、1つ前のシンボルS(n-1)の直交する2つの成分をI
k-1、Q
k-1とし、現在のシンボルS(n)の直交する2つの成分をI
k、Q
kとする。1つ前のシンボルS(n-1)から現在のシンボルS(n)への変換は、加えられる2ビットのパラレルデータ(X
k,Y
k)に応じた位相ΔΦだけ1つ前のシンボルS(n-1)の位相を回転させる操作となる。この操作は、下式及び
図5(a)によるものとする。
【数1】
【0028】
π/4シフトQPSKの信号空間ダイアグラムは、
図5(b)に示すとおり、正八角形と、正八角形の各々の頂点とその頂点の対角線上にある頂点の両隣の2つの頂点を結ぶ対角線で表される。信号点の遷移は1つの頂点を例にすると、その頂点から正八角形の辺上を移動して両隣の頂点に至る2つの経路と、その頂点から上記の対角線上を移動してその頂点の対角線上にある頂点の両隣の2つの頂点に至る2つの経路を合わせて4つの状態に遷移する。
【0029】
図5(a)、(b)を用いて1つ前のシンボルS(n-1)から現在のシンボルS(n)への変換について具体的に説明する。
図5(a)に示すように、加えられた2ビットのパラレルデータ(X
k,Y
k)に応じて1つ前のシンボルS(n-1)を回転させる位相ΔΦが決められている。例えば、
図5(b)に示す1つ前のシンボルS(n-1)に2ビットのパラレルデータ(1,1)が加えられると、
図5(a)に示すように、その際のシンボルを回転させる位相ΔΦは-3π/4となり、
図5(b)のダイアグラム上では現在のシンボルS(n)1に遷移する。同様に、加えられる2ビットのパラレルデータが(0,1)、(0,0)、(1,0)の場合も、それぞれに対応する位相ΔΦで1つ前のシンボルS(n-1)が回転されて現在のシンボルS(n)2~S(n)4に遷移する。
【0030】
(受信ダイバーシチの仕組み)
合成型ダイバーシチ受信装置1において、複数の相関の低い受信波が得られた後、これらの受信波を合成(以下、ブランチ合成と呼ぶ)する基本的な方法として、
図6(a)に示す選択合成法、
図6(b)に示す等利得合成法、
図6(c)に示す最大比合成法がある。
【0031】
選択合成法は、複数の受信波の内、最大の信号対雑音比(SNR: Signal to Noise Ratio)を有する受信波を選択する方法である。しかしながら、すべての受信波を用いて合成すれば、SNRをより改善することができる。等利得合成法と最大比合成法は、この種の合成を行う。
【0032】
等利得合成法は、すべての受信波の位相が同位相になるよう位相調整して合成する。このように合成すれば、受信波は互いに打ち消し合うことなく、SNRを選択合成法よりも増加させることができる。
【0033】
最大比合成法は、すべての受信波の位相が同位相になるよう位相調整した後、合成波のSNRが最大となるように、各受信波にその包絡線を乗算して合成する。
本第1の実施形態で対象とするブランチ合成方法は、「等利得合成法」と、「最大比合成法」となる。
【0034】
(位相不確定性の除去)
等利得合成法、最大比合成法においては、すべての受信波の位相が同位相になるよう位相調整して合成する必要があるが、実際には伝搬路の影響(例えばフェージング)や外来ノイズ、合成型ダイバーシチ受信装置1の内部のノイズの影響を受け、位相を完全に同位相に調整するのは困難である。受信ダイバーシチでは復調されて得られた信号には送信信号に対して受信ブランチ毎に独立に位相不確定性(送信信号位相と復調出力位相との一意には決まらないずれ)が生じる。これは、フェージングや合成型ダイバーシチ受信装置1の内部のノイズ(熱雑音等)による位相変動がブランチ間で相関がなく、ブランチ毎に独立しているからである。
【0035】
位相不確定性の除去について、その処理概念について説明する。
図7は、2アンテナ構成の受信ダイバーシチ時の3シンボル時間分の様子を示す。
図7(a)は、第1の受信ブランチ#1の復調後の受信シンボルを示す。
図7(b)は、第2の受信ブランチ#2の復調後の受信シンボルを示す。
図7(c)は、ブランチ合成後の復調シンボルS(n)、S(n+1)、S(n+2)の3シンボル時間分の様子を示す。
図7は復調後の受信ブランチ毎に独立の位相不確定性があり、その結果ブランチ間の位相がπ(180°)ずれている場合の例を示している。
図7(c)に示すように、位相不確定性の除去を行わない(ブランチ間の位相のずれを補正しない)場合、そのままブランチ合成をしてしまうと、双方に逆位相で打ち消し合うことになり、正しくデータを復元できなくなる可能性がある。
【0036】
図8は、位相不確定性の除去を行う(ブランチ間の位相のずれを補正する)場合のブランチ合成の例である。
図8(a)は、第1の受信ブランチ#1の復調後の受信シンボルを示す。
図8(b)は、第2の受信ブランチ#2の復調後の受信シンボルを示す。
図8(c)は、ブランチ合成後の復調シンボルS(n)、S(n+1)、S(n+2)の3シンボル時間分の様子を示す。
【0037】
第1のブランチ#1を基準として第2のブランチ#2の位相を補正している。ブランチ間の位相合わせ(以降、同相化と呼ぶ)を行う合成を行うことでブランチ合成の利得を得ることができる。
【0038】
<実施形態の比較例>
比較例の技術をπ/4シフトQPSK、2ブランチの受信ダイバーシチを例にとって説明する。
比較例の合成型ダイバーシチ受信装置では、位相歪補償後に補償しきれないブランチ毎に独立な位相不確定性が、連続する2シンボル間で変化しないと仮定している。この仮定のもとで、上記のブランチ間の信号点距離の自乗和が最小となるものを最も確からしい受信信号と判定し、それらを合成する。
【0039】
その処理概念図を
図9に示す。
図9においてa
m-1、a
m(×印の位置)が基準となるブランチAの復調後の受信シンボルを表し、b
m-1、b
m(×印の位置)がもう一方のブランチBの復調後の受信シンボルを表す。なお、mは、0,1,2,・・・といった整数を表す。
図9(a)はm-1シンボル目の受信シンボル、
図9(b)はmシンボル目の受信シンボルである。また、-j・b
m-1、-b
m-1、j・b
m-1、及び、-j・b
m、-b
m、j・b
m(〇印の位置)がブランチBの復調後の受信シンボルを2π/M(M=4)ずつ位相回転したレプリカのシンボル位置となる。そして、
図9(c)に示すように、連続するシンボル間でブランチAとブランチBとの信号点間距離の自乗和を計算する。ブランチ間信号点距離d
1~d4は、下式のように求められる。
d
1=|a
m-1-b
m-1|
2+|a
m-b
m|
2
d
2=|a
m-1-j・b
m-1|
2+|a
m-j・b
m|
2
d
3=|a
m-1+b
m-1|
2+|a
m+b
m|
2
d
4=|a
m-1+j・b
m-1|
2+|a
m+j・b
m|
2
図9(c)の例の場合、基準ブランチAと、もう一方のブランチBのレプリカを含む、連続する2シンボルでのブランチ間信号点距離d
1~d
4のうちd
4が最も小さくなるため、ブランチAとブランチB間でπ/2の位相差が生じていると判定して、-j・b
m-1、-j・b
mをブランチBの正のシンボルとしてブランチAとブランチBのブランチ合成(複素加算、ベクトル加算)を実施する。
【0040】
比較例において1シンボル毎にブランチ間信号点距離の自乗和が最小となるものを都度選択せず、連続する2シンボル間のブランチ間信号点距離の自乗和を計算する理由は、π/4シフトQPSK信号が隣接するシンボルの位相の変化に情報を乗せるため、1シンボル長の間に基準のブランチ(上記のブランチA)に対してフェージングによる急激な位相変動があった場合には、結果としてダイバーシチ合成後の信号の位相変化が送信信号の位相変化に一致しなくなる場合が生じるためである。これを避けるために、位相の不確定性によるずれを連続する2シンボル間から検出している。
【0041】
しかし、比較例では、すべてのシンボルタイミングで現シンボルと1つ前のシンボル同士でブランチ間の信号点間距離の自乗和を計算する必要がある。例えば、π/4シフトQPSKの場合、毎シンボル、基準のブランチ(ブランチA)に対し、もう一方のブランチ(ブランチB)の各レプリカとの距離の自乗和を計4回計算する必要がある。
【0042】
<第1の実施形態の解決手段>
そこで、本第1の実施形態では、少ない演算量で、フェージング環境下で同相化精度の改善を図り、且つ、ランダムノイズの環境下において同相化精度を劣化させないダイバーシチ受信方法を提供する。
【0043】
図10は、本第1の実施形態に係る合成型ダイバーシチ受信装置1のブランチ合成部13による制御処理手順を示すフローチャートである。
図11は、2シンボル連続で同じ位相差を検出した場合のタイミングチャートを示す。ここでは、例として通信システムにおいて後述する固定局に比べてフェージングの影響による時間的な位相変動が大きい移動局に合成型ダイバーシチ受信装置1を適用することを想定して、位相補正量を更新するか否かを判定するためのNの値を「2」に設定する。
【0044】
図11(a)は、第1のブランチ#1の位相補償部115から出力される検波後シンボルを示す。
図11(a)に示す検波後シンボルは、a
n,a
n+1,a
n+2,a
n+3,a
n+4の順に出力される。
図11(b)は、第2のブランチ#2の位相補償部125から出力される検波後シンボルを示す。
図11(b)に示す検波後シンボルは、b
n,b
n+1,b
n+2,b
n+3,b
n+4の順に出力される。
図11(c)は、ブランチ間位相差算出部132により算出される第1のブランチ#1と第2のブランチ#2との位相差を示す。
図11(d)は、ブランチ間位相補正量決定部133により判定され位相補正部131のメモリ1311に記憶される第1のブランチ#1と第2のブランチ#2との位相差を示す。
図11(e)は、位相補正部131で位相を補正される第2のブランチ#2の検波後シンボルを示す。
図11(f)は、ブランチ合成部13の合成処理部134の出力を示す。
図11(g)は、差動復号部14の出力を示す。
【0045】
ブランチ合成部13は、制御処理を開始すると、第1の位相補償部115の出力信号(
図11(a))と第2の位相補償部125の出力信号(
図11(b))とを比較して、第1のブランチ#1と第2のブランチ#2との間の位相差(
図11(c))を算出する(ステップST13a)。具合的には、ブランチ合成部13は、90°,180°,270°といった90°単位の第1のブランチ#1と第2のブランチ#2との間の象限ずれを算出する。
【0046】
そして、ブランチ合成部13は、同じ位相差が2シンボル連続するか否かを判定する(ステップST13b)。例えば、第1のブランチ#1の検波後シンボルa
n+2,a
n+3及び第2のブランチ#2の検波後シンボルb
n+2,b
n+3の時に、同じ位相差(θ
1)が2シンボル連続したと判定した場合に(ステップST13b:Yes)、ブランチ合成部13は当該位相差θ
1に相当する第2の位相補正量θ
1’を算出し、位相補正部131のメモリ1311に記憶された第1の位相補正量θ
0’を第2の位相補正量θ
1’に更新する(ステップST13c、
図11(d))。
【0047】
そして、ブランチ合成部13は、第2の位相補償部125から出力される検波後シンボルb
n+3,b
n+4の位相を、第2の位相補正量θ
1’で補正して検波後シンボルb
n+3’,b
n+4’を得て(ステップST13d、
図11(e))、第1の位相補償部115から出力される検波後シンボルa
n+3,a
n+4と、位相補正部131から出力される検波後シンボルb
n+3’,b
n+4’とを合成し(ステップST13e、
図11(f))、合成信号を差動復号部14に出力する。差動復号部14は、1シンボル前の検波後シンボルb
n+2’と検波後シンボルa
n+3とを差動復号処理し、続いて検波後シンボルb
n+3’と検波後シンボルa
n+4とを差動復号処理する(
図11(g))。
【0048】
図12は、2シンボル連続で同じ位相差を検出しない場合のタイミングチャートを示す。
図12(a)は、第1のブランチ#1の位相補償部115から出力される検波後シンボルを示す。
図12(a)に示す検波後シンボルは、a
n,a
n+1,a
n+2,a
n+3,a
n+4の順に出力される。
図12(b)は、第2のブランチ#2の位相補償部125から出力される検波後シンボルを示す。
図12(b)に示す検波後シンボルは、b
n,b
n+1,b
n+2,b
n+3,b
n+4の順に出力される。
図12(c)は、ブランチ間位相差算出部132により算出される第1のブランチ#1と第2のブランチ#2との位相差を示す。
図12(d)は、ブランチ間位相補正量決定部133により判定され位相補正部131のメモリ1311に記憶される第1のブランチ#1と第2のブランチ#2との位相差を示す。
図12(e)は、位相補正部131で位相を補正される第2のブランチ#2の検波後シンボルを示す。
図12(f)は、ブランチ合成部13の合成処理部134の出力を示す。
図12(g)は、差動復号部14の出力を示す。
【0049】
図12(c)に示すように、第1のブランチ#1の検波後シンボルa
n+2及び第2のブランチ#2の検波後シンボルb
n+2の時に、ノイズ(熱雑音環境)の影響で突発的に第1のブランチ#1と第2のブランチ#2との間の位相差θ
0が位相差θ
1に変化した場合(ステップST13b:No)、ブランチ合成部13は位相補正部131のメモリ1311に記憶された第1の位相補正量θ
0’を第2の位相補正量θ
1’に更新することなく、第2の位相補償部125から出力される検波後シンボルb
n+3,b
n+4の位相を、第1の位相補正量θ
0’で補正して検波後シンボルb
n+3’,b
n+4’を得て(
図12(e))、第1の位相補償部115から出力される検波後シンボルa
n+3,a
n+4と、位相補正部131から出力される検波後シンボルb
n+3’,b
n+4’とを合成し(
図12(f))、合成信号を差動復号部14に出力する。差動復号部14は、1シンボル前の検波後シンボルb
n+2’と検波後シンボルa
n+3とを差動復号処理し、続いて検波後シンボルb
n+3’と検波後シンボルa
n+4とを差動復号処理する(
図12(g))。
【0050】
<第1の実施形態による作用効果>
以上のように第1の実施形態によれば、位相補償後の第1の位相補償部115の出力信号と第2の位相補償部125の出力信号との位相差を算出し、同じ位相差が2シンボル連続した場合に、位相差を第1のブランチ#1と第2のブランチ#2との間のずれ量として補正するため、フェージング環境において緩やかに変動する位相変動(定常的な位相のずれ量)を検出することが可能となる。
【0051】
また、第1の実施形態によれば、合成型ダイバーシチ受信装置1の内部の熱雑音の影響といったランダムノイズの影響下で、例えば特定の1シンボルan+2,bn+2においてのみ第1のブランチ#1と第2のブランチ#2との間の位相差が生じた場合には、それを第1のブランチ#1と第2のブランチ#2との間の定常的な位相差として検出せず誤った同相化が行われないようにすることができる。これにより、ランダムノイズの環境下において同相化精度を劣化させずに済む。
【0052】
また、第1の実施形態によれば、シンボル単位では、第1のブランチ#1と第2のブランチ#2との間の位相差を判定する。具体的には、ブランチ合成部13は、第1のブランチ#1と第2のブランチ#2との間の位相差として、90°単位のブランチ間の象限ずれを検出するのみのため、シンボル毎に同相化するための複数回の演算が不要となり、比較例(特許文献1)の技術に比べて大幅に演算量を削減することが可能となる。
【0053】
さらに、第1の実施形態によれば、位相補償後の第1の位相補償部115の出力信号と第2の位相補償部125の出力信号との位相差を算出し、同じ位相差が2シンボル連続するか否かを判定するようにしている。このため、同じ位相差が2シンボル連続しない場合には、ランダムノイズの影響と判断して、第2の位相補償部125の出力信号の位相を、位相補正部131のメモリ1311に記憶された第1の位相補正量で補正し、一方、同じ位相差が2シンボル連続した場合には、フェージング環境における位相変動と判断して、位相差に相当する第2の位相補正量を求めて、第2の位相補償部125の出力信号の位相を、第2の位相補正量で補正するというように、合成型ダイバーシチ受信装置1の周囲の環境ごとに適切な第1のブランチ#1と第2のブランチ#2との間の位相差を補正することができる。
【0054】
<第2の実施形態>
図13は、本発明の第2の実施形態に係るダイバーシチ受信装置が適用される通信システムの一例を示している。この通信システムは、主として固定局向けの通信を行うものである。送信装置2Aから出力されたπ/4シフトQPSK信号は、サービスエリアに向け送信される。一方、合成型ダイバーシチ受信装置1Aは、通信システムにおける固定局に適用される。つまり、合成型ダイバーシチ受信装置1Aは、例えば、ビルや家屋内に固定的に設置される。
【0055】
合成型ダイバーシチ受信装置1Aは、上記サービスエリア内において送信装置2Aから到来するπ/4シフトQPSK信号を受信して復号する。なお、送信装置2Aは、広範囲でサービスエリアをカバーできるように、建物の屋上やトンネルの入り口付近に設置される。また、合成型ダイバーシチ受信装置1Aの内部構成は、上記第1の実施形態に係る合成型ダイバーシチ受信装置1の内部構成と同一のものとする。
【0056】
<第2の実施形態の解決手段>
図14は、本第2の実施形態に係る合成型ダイバーシチ受信装置1Aのブランチ合成部13による制御処理手順を示すフローチャートである。ここでは、例として通信システムにおいて移動局に比べてフェージングの影響による時間的な位相変動が小さい固定局に合成型ダイバーシチ受信装置1Aを適用することを想定して、位相補正量を更新するか否かを判定するためのNの値を、移動局に設定する値より大きい「4」に設定する。
【0057】
ブランチ合成部13は、制御処理を開始すると、第1の位相補償部115の出力信号と第2の位相補償部125の出力信号とを比較して、第1のブランチ#1と第2のブランチ#2との間の位相差を算出する(ステップST17a)。
【0058】
そして、ブランチ合成部13は、同じ位相差が4シンボル連続するか否かを判定する(ステップST17b)。ここで、同じ位相差が4シンボル連続したと判定した場合に(ステップST17b:Yes)、当該位相差に相当する第2の位相補正量を算出し、位相補正部131のメモリ1311に記憶された第1の位相補正量を第2の位相補正量に更新する(ステップST17c)。
【0059】
そして、ブランチ合成部13は、第2の位相補償部125の出力信号の位相を、第2の位相補正量で補正し(ステップST17d)、第1の位相補償部115の出力信号と位相補正部131の出力信号とを合成し(ステップST17e)、合成信号を差動復号部14に出力する。
【0060】
一方、ノイズ(熱雑音環境)の影響で突発的に第1のブランチ#1と第2のブランチ#2との間の位相差が変化した場合(ステップST17b:No)、ブランチ合成部13は位相補正部131のメモリ1311に記憶された第1の位相補正量を第2の位相補正量に更新することなく、第2の位相補償部125の出力信号の位相を、第1の位相補正量で補正し、第1の位相補償部115の出力信号と位相補正部131の出力信号とを合成し、合成信号を差動復号部14に出力する。
【0061】
<第2の実施形態による作用効果>
以上のように第2の実施形態によれば、通信システムの固定局に適用される場合に、Nを移動局に適用される場合の値(2シンボル)より大きな値(4シンボル)に設定することにより、固定環境のフェージングの影響下においても、緩やかに変動する位相変動(定常的な位相のずれ量)を検出することが可能となる。すなわち、受信局(受信装置)側がフェージングの影響による時間的な位相変動が大きい場合は、位相補正量を更新するか否かを判定するためのNの値を小さく(例えばN=2)設定し、受信局(受信装置)側がフェージングの影響による時間的な位相変動が小さい場合は、位相補正量を更新するか否かを判定するためのNの値を大きく(例えばN=4)設定すればよい。つまり、適用される通信システムの受信局ごとに位相変動の大きさに合わせて適切にNを設定することができる。このように位相変動の大きさに合わせて同相化に用いるブランチ間位相差の更新周期(Nの値)を変えることで、同相化の精度を向上できる。
【0062】
<その他の実施形態>
上記のように、本発明は第1及び第2の実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は本発明を限定するものであると理解すべきではない。上記の第1及び第2の実施形態が開示する技術内容の趣旨を理解すれば、当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が本発明に含まれ得ることが明らかとなろう。また、第1及び第2の実施形態がそれぞれ開示する構成を、矛盾の生じない範囲で適宜組み合わせることができる。例えば、複数の異なる実施形態がそれぞれ開示する構成を組み合わせてもよく、同一の実施形態の複数の異なる変形例がそれぞれ開示する構成を組み合わせてもよい。
例えば、各実施形態では、π/4シフトQPSK信号を受信する例について説明したが、例えば差動2位相偏移変調(DBPSK)信号や差動8位相偏移変調(D8PSK)信号など、種々の差動位相偏移変調信号を受信することが可能である。
【符号の説明】
【0063】
1,1A 合成型ダイバーシチ受信装置
2,2A 送信装置
13 ブランチ合成部
14 差動復号部
21 S/P変換部
22 差動符号化部
23 直交変調部
111 第1のアンテナ
112 第1のダウンコンバータ
113 第1のLPF
114 第1のA/D変換部
115 第1の位相補償部
121 第2のアンテナ
122 第2のダウンコンバータ
123 第2のLPF
124 第2のA/D変換部
125 第2の位相補償部
131 位相補正部
132 ブランチ間位相差算出部
133 ブランチ間位相補正量決定部
134 合成処理部
1311 メモリ