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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129344
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】電気化学セルとその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0583 20100101AFI20240919BHJP
   H01M 10/056 20100101ALI20240919BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20240919BHJP
   H01M 50/105 20210101ALI20240919BHJP
   H01M 50/109 20210101ALI20240919BHJP
   H01M 50/124 20210101ALI20240919BHJP
【FI】
H01M10/0583
H01M10/056
H01M10/052
H01M50/105
H01M50/109
H01M50/124
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038486
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】000002325
【氏名又は名称】セイコーインスツル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 竜
【テーマコード(参考)】
5H011
5H029
【Fターム(参考)】
5H011CC02
5H011CC06
5H011CC10
5H011DD13
5H029AJ14
5H029AM01
5H029AM07
5H029AM12
5H029BJ03
5H029BJ15
5H029CJ02
5H029CJ08
5H029DJ02
5H029HJ01
5H029HJ05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本発明は、電気化学セルとその製造方法の提供を目的とする。
【解決手段】本発明の電気化学セル1は、正極接続部20で接続された複数の正極集電体19上に正極活物質を含む正極層16を備えた正極体と、負極接続部で接続された複数の負極集電体11上に負極活物質を含む負極層14を備えた負極体が、前記正極層16と前記負極層14の間に固体電解質層15を介在させて互いに折り重ねられた電極体を有し、前記固体電解質が、リチウム塩を含むイオン液体:65~80質量%、酸化物粒子:20~30質量%、バインダー:1~5質量%を含有する固体電解質層15であることを特徴とする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極接続部で接続された複数の正極集電体上に正極活物質を含む正極層を備えた正極体と、負極接続部で接続された複数の負極集電体上に負極活物質を含む負極層を備えた負極体が、前記正極層と前記負極層の間に固体電解質層を介在させて互いに折り重ねられた電極体を有し、
前記固体電解質層が、リチウム塩を含むイオン液体:65~80質量%、酸化物粒子:20~30質量%、バインダー:1~5質量%を含有する疑似固体電解質層であることを特徴とする電気化学セル。
【請求項2】
前記酸化物粒子の平均粒径が5nm以上50nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の電気化学セル。
【請求項3】
負極接続部で接続された複数の負極集電体の上に負極活物質を含む負極層を備えた負極体と、正極接続部で接続された複数の正極集電体の上に正極活物質を含む正極層を備えた正極体と、前記負極層と前記正極層の間に設けられる固体電解質層を備え、前記負極体と前記正極体が前記固体電解質層を介し前記負極層と前記正極層を重ねるように折り重ねられた電極体を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電気化学セル。
【請求項4】
前記電極体が容器状の外装体に収容されたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電気化学セル。
【請求項5】
リチウム塩を含むイオン液体と酸化物粒子とバインダーを所定の割合で溶媒に投入し、混合した後、加熱処理により溶媒を揮発させ、リチウム塩を含むイオン液体:65~80質量%、酸化物粒子:20~30質量%、バインダー:1~5質量%を含有する疑似固体電解質のスラリーを作成し、
前記スラリーを用いて疑似固体電解質シートを作成し、
前記疑似固体電解質シートから得た固体電解質層を介し、正極体と負極体を重ねて電極体を作成することを特徴とする電気化学セルの製造方法。
【請求項6】
正極接続部で接続された複数の正極集電体の上に正極層を備えた正極体と、負極接続部で接続された複数の負極集電体の上に負極層を備えた負極体と、前記固体電解質層を利用し、
前記正極層と前記負極層の間に前記固体電解質層を介在させて前記正極体と前記負極体を互いに折り重ねて電極体を構成し、前記電極体を外装体に収容することを特徴とする請求項5に記載の電気化学セルの製造方法。
【請求項7】
前記外装体が、正極側ラミネートフィルムからなる正極側容器と、負極側ラミネートフィルムからなる負極側容器とから構成される外装体であることを特徴とする請求項6に記載の電気化学セルの製造方法。
【請求項8】
前記正極側容器の周壁と前記負極側容器の周壁部を重ねて熱融着することを特徴とする請求項7に記載の電気化学セルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学セルとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
全固体電池の製造方法の一例として、積層セラミックコンデンサー(MLCC)の技術を応用した製造方法が知られている。
この製造方法では、例えば、正極層、負極層、電解質層などを必要数積み重ね、一括焼成することで、積層体を構成する。次に、積層体の側面に導電ペーストを塗布し、導電ペーストの硬化温度で焼成することで各層を接続し、集電している。
【0003】
以下の特許文献1には、複数接続された正極集電体の上に正極活物質層を備えた正極体と、複数接続された負極集電体の上に負極活物質層を備えた負極体を備え、固体電解質層を介し正極体と負極体を折り重ねた全固体電池が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-139589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述の全固体電池では、一括焼成ができない材料の組合せでも個別に焼成し、正極層と負極層と固体電解質層を組み合わせた電池として提供できる特徴を有している。
しかし、焼成を経た材料は硬く、脆いので、製造途中あるいは使用中に電池に衝撃が作用すると破損のリスクを有している。
【0006】
このため本願発明は、焼結を必要としない軟質の固体電解質層を用いて電気化学セルを構成することにより、耐衝撃性に優れるとともに破損リスクの少ない電気化学セルを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明に係る電気化学セルは、正極接続部で接続された複数の正極集電体上に正極活物質を含む正極層を備えた正極体と、負極接続部で接続された複数の負極集電体上に負極活物質を含む負極層を備えた負極体が、前記正極層と前記負極層の間に固体電解質層を介在させて互いに折り重ねられた電極体を有し、前記固体電解質層が、リチウム塩を含むイオン液体:65~80質量%、酸化物粒子:20~30質量%、バインダー:1~5質量%を含有する疑似固体電解質層であることを特徴とする。
【0008】
リチウム塩を含むイオン液体と酸化物粒子とバインダーを前述の割合で含む電解質層は、スラリーを乾燥させた疑似固体電解質層であり、焼成体ではないため、軟質である。このため、正極体と負極体の間に軟質の固体電解質層を配置した構造となるので、衝撃などの負荷が作用したとして破損リスクの低い電気化学セルを提供できる。また、酸化物粒子の周囲に適量のイオン液体が存在するので、良好なイオン伝導性を得ることができ、電池性能の向上に寄与する。固体電解質層は適量の酸化物粒子を含むため、正極体と負極体の仕切体として適切な密度を有し、正負極の短絡を防止しつつ良好なイオン伝導性を発揮する。
【0009】
(2)本発明に係る一形態に係る電気化学セルにおいて、前記酸化物粒子の平均粒径が5nm以上50nm以下であることが好ましい。
【0010】
前述の粒径の酸化物粒子であれば、粒子の表面に適量のイオン液体を担持することができ、イオン伝導性の向上に寄与する。酸化物粒子の粒径が小さい方がイオン液体を担持するための表面積は大きくなるが、小さすぎる粒子は粒子の凝集性が高くなり、粒子の均一分散性が低下する。前述の粒径範囲であるならば、高いイオン伝導度を有しつつ酸化物粒子の均一分散性に優れた固体電解質層を提供できる。
【0011】
(3)本発明の一形態に係る電気化学セルにおいて、負極接続部で接続された複数の負極集電体の上に負極活物質を含む負極層を備えた負極体と、正極接続部で接続された複数の正極集電体の上に正極活物質を含む正極層を備えた正極体と、前記負極層と前記正極層の間に設けられる固体電解質層を備え、前記負極体と前記正極体が前記固体電解質層を介し前記負極層と前記正極層を重ねるように折り重ねられた電極体を有することが好ましい。
【0012】
前述の電気化学セルによれば、別々に形成した負極体と正極体について、固体電解質層を介し負極層と正極層を重ねるように折り重ねることで電気化学セルを作製できる。
【0013】
(4)本発明の一形態に係る電気化学セルにおいて、前記電極体が容器状の外装体に収容されたことが好ましい。
【0014】
電極体を外装体に収容することで外力や負荷などに耐える堅牢な構成の電気化学セルを提供できる。
【0015】
(5)本発明の一形態に係る電気化学セルの製造方法において、リチウム塩を含むイオン液体と酸化物粒子とバインダーを所定の割合で溶媒に投入し、混合した後、加熱処理により溶媒を揮発させ、リチウム塩を含むイオン液体:65~80質量%、酸化物粒子:20~30質量%、バインダー:1~5質量%を含有する疑似固体電解質のスラリーを作成し、前記スラリーを用いて疑似固体電解質シートを作成し、前記疑似固体電解質シートから得た固体電解質層を介し、正極体と負極体を重ねて電極体を作成することができる。
【0016】
リチウム塩を含むイオン液体と酸化物粒子とバインダーを前述の割合で含む固体電解質層は、スラリーを乾燥させた疑似固体電解質であり、焼成体ではないため、軟質である。このため、正極体と負極体の間に軟質の固体電解質層を配置した構造となるので、衝撃などの負荷が作用したとして破損リスクの低い電気化学セルを提供できる。また、酸化物粒子の周囲に適量のイオン液体が存在するので、良好なイオン伝導性を得ることができ、電池性能の向上に寄与する。固体電解質層は適量の酸化物粒子を含むため、正極体と負極体を仕切るための適切な密度を有し、正負極の短絡を防止しつつ良好なイオン伝導性を発揮する。
【0017】
(6)本発明の一形態に係る電気化学セルの製造方法において、負極接続部で接続された複数の負極集電体の上に負極活物質を含む負極層と該負極層の表面を覆う固体電解質層を備えた負極体と、正極接続部で接続された複数の正極集電体の上に正極活物質を含む正極層を備えた正極体を利用し、前記固体電解質層を介し前記負極層と前記正極層を重ねるように前記負極体と前記正極体を折り重ねて電極体を構成し、前記電極体を外装体に収容することが好ましい。
【0018】
固体電解質層を負極層上に有する負極体と、正極層を有する正極体とを折り重ねることで目的の電極体を構成できる。電極体を外装体に収容することにより、外力や負荷などに耐える堅牢な構成の電気化学セルを提供できる。
【0019】
(7)本発明に係る電気化学セルの製造方法において、前記外装体が、正極側ラミネートフィルムからなる正極側容器と、負極側ラミネートフィルムからなる負極側容器とから構成される外装体であることが好ましい。
【0020】
外装体をラミネートフィルムから構成することで軽量の電気化学セルを提供できる。
外装体を正極側容器と負極側容器から構成することで、正極側容器に正極側電極板を設け、負極側容器に負極側電極板を設けた場合に、電極体の正極体と負極体をそれぞれ容易に接続することができる。
ラミネートフィルムからなる正極側容器と負極側容器は、それらの周壁部を熱融着することで容易に一体化することができ、軽量かつ密閉性の高い外装体を備えた電気化学セルを提供できる。
【0021】
(8)本発明に係る電気化学セルの製造方法において、前記正極側容器の周壁と前記負極側容器の周壁部を重ねて熱融着することが好ましい。
【0022】
ラミネートフィルムからなる正極側容器と負極側容器は、それらの周壁部を熱融着することで容易に一体化することができ、軽量かつ密閉性の高い外装体を備えた電気化学セルを提供できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る電気化学セルにおいて、リチウム塩を含むイオン液体と酸化物粒子とバインダーを適切な割合で含む固体電解質層は、スラリーを乾燥させた疑似固体電解質であり、焼成体ではないため、軟質である。このため、正極体と負極体の間に軟質の疑似固体電解質層を配置した構造となるので、衝撃などの負荷が作用したとして破損リスクの低い電気化学セルを提供できる。また、酸化物粒子の周囲に適量のイオン液体が存在するので、良好なイオン伝導性を得ることができ、電池性能の向上に寄与する。固体電解質層は適量の酸化物粒子を含むため、正極体と負極体の仕切体として適切な密度を有し、正負極の短絡を防止しつつ良好なイオン伝導性を発揮する電気化学セルを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】第1実施形態に係る電気化学セルの上面側外観を示す斜視図である。
図2】第1実施形態に係る電気化学セルの底面側外観を示す斜視図である。
図3】同電気化学セルの内部構造を示す部分断面図である。
図4】同電気化学セルの内部構造を示す部分断面図である。
図5】負極複合体と正極体を重ねて構成した電極体について各層の積層状態の一例を示す側面図である。
図6】同電気化学セルに収容する負極層を備えた負極体の一例を示すもので、(a)は表面図、(b)は裏面図である。
図7図6に示す負極層の上に電解質層を設けた負極複合体の一例を示すもので、(a)は表面図、(b)は裏面図である。
図8】同電気化学セルに収容する正極体の一例を示すもので、(a)は表面図、(b)は裏面図である。
図9】同電気化学セルに収容する固体電解質層の一例を示す表面図である。
図10図9に示す固体電解質層と図6に示す負極層の積層状態を示す説明図である。
図11図7に示す負極複合体と図8に示す正極体を折り畳み積層するために近接させた状態を示す斜視図である。
図12図7に示す負極複合体と図8に示す正極体の一部を重ねて折り畳み積層する工程を説明するための斜視図である。
図13】負極複合体と正極体を重ねて構成した電極体の一例について正極タブ側を示す斜視図である。
図14】負極複合体と正極体を重ねて構成した電極体の一例について負極タブ側を示す斜視図である。
図15】電気化学セルを製造する場合に用いる接合体の一例を示す斜視図である。
図16】電気化学セルを製造する場合に行う絞り加工の初期段階を示す部分断面図である。
図17】電気化学セルを製造する場合に行う絞り加工の終了段階を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る電気化学セルの実施形態について図面を参照して説明する。以下の実施形態では、電気化学セルの一例として、コイン型の全固体電池(以下、単に「電池」という。)を挙げ、この電池の構成について説明する。
なお、以下の説明に用いる図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更し、表示している。
【0026】
<第1実施形態>
図1図4は本発明に係る電気化学セルを全固体電池に適用した第1実施形態を示す図面である。
本実施形態の電池(電気化学セル)1は、平面視円形状のボタン型の電池である。この電池1は、容器状の外装体2と外装体2の内部に収容された電極体3を備えている。
【0027】
(外装体)
図4に示すように外装体2は、電極体3を収容する収容部4と、収容部4の外周に沿って折り曲げられた封止部5と、を備える。封止部5は、例えば絞り成形によって、収容部4の外周に沿って折り曲げられている。
外装体2は、電極体3を間に挟む第1容器(外側容器)7および第2容器(内側容器)8を備える。第1容器7および第2容器8は、それぞれラミネートフィルム(ラミネート構造体)により形成されている。ラミネートフィルムは、金属箔(金属層)と、重ね合わせ面(内側面)に設けられ金属箔を被覆する融着層(樹脂層)と、外側面に設けられ金属箔を被覆する保護層(樹脂層)とを有する。金属層は、例えばアルミニウムやステンレス鋼等からなり、外気や水蒸気を遮断する金属箔により形成されている。
重ね合わせ面の融着層は、例えば、ポリオレフィンのポリエチレンやポリプロピレン等の熱可塑性樹脂の単体やコポリマーから形成されている。外側面の保護層は、例えば、上述のポリオレフィンや、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン等から形成される。例えば、第1容器7が負極側ラミネートフィルムからなり、第2容器8が正極側ラミネートフィルムからなる。
【0028】
第1容器(負極側容器;外側容器)7は、円形状の第1底壁部6と、第1底壁部6の外周から筒状に延びる第1周壁部9を備える。第1底壁部6の中心には第1底壁部6の内径の数分の一程度の内径を有する第1貫通孔23が形成されている。
第1底壁部6の内面側には、リング状の第1シーラントフィルム(負極側のシーラントフィルム)24を介しニッケルプレートあるいは銅板にニッケルメッキを施した金属プレートなどの負極側電極板26が熱融着されている。第1シーラントフィルム24は、ポリオレフィンのポリエチレンやポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂を用いて形成されたシーラントフィルムをリング状に成形したものである。なお、第1シーラントフィルム24の一面側は第1容器7の第1底壁部6に対し熱溶着されるとともに、第1シーラントフィルム24の他面側は負極側電極板26に対し熱溶着されている。
【0029】
負極側電極板26は、第1貫通孔23を介し電池1の外部に露出され、電池1の負極端子として機能する。後述する電極体3の負極タブ13は例えば超音波溶接などの接合手段により負極側電極板26に接続されている。
【0030】
第2容器(正極側容器:内側容器)8は、円板状の第2底壁部31と、第2底壁部31の外周縁から筒状に延びる第2周壁部32と、第2周壁部32の開口縁から第2周壁部32の外側に向けて断面U字状になるように折り曲げられて第2底壁部31側に延びる折曲周壁部33を備えている。
第2底壁部31は、電極体3を挟んで第1容器7の第1底壁部6と反対側に配置されている。第2底壁部31は、第1容器7の第1底壁部6と同等の外径に形成されている。第2底壁部31の中心には、第2底壁部31の内径の数分の一程度の内径を有する第2貫通孔35が形成されている。
【0031】
第2底壁部31の内面側には、リング状の第2シーラントフィルム(正極側のシーラントフィルム)37を介し正極側電極板38が熱融着されている。正極側電極板38の外面の中央には、ニッケルプレート、Auメッキプレートなどからなる保護プレートが溶接されていることが好ましい。なお、正極側電極板38の外面にニッケルまたはニッケル合金等のめっき層を形成するならば、保護プレートは省略してもよい、第2シーラントフィルム37は、第1シーラントフィルム24と同様に、熱可塑性樹脂により形成されている。
【0032】
正極側電極板38の中心部は電極体3の後述する正極タブ21(図8図13参照)に接続されている。なお、図3においては内部構造が複雑なためタブ接続部分は記載を略している。
正極側電極板38は、SUS316などの耐食性に優れたステンレス鋼板からなり、電池1の正極端子として機能する。
【0033】
図4に示すように第2周壁部32は、第2底壁部31の外周から第1容器7の第1底壁部6に向けて筒状に延びている。第2周壁部32は、収容部4の外周を形成する。折曲周壁部33は、第2周壁部32のうち、第1底壁部6側の端部から第2周壁部32に沿って第2底壁部31側へ筒状になるように折り曲げられている。折曲周壁部33は、第2周壁部32に対して外側に間隔をおいて配置されている。
第2周壁部32は、第1周壁部9の内側に配置されている。また、折曲周壁部33は、第1周壁部9の内側に配置され、折曲周壁部33の融着層と第1周壁部9の融着層とが熱融着されている。
【0034】
折曲周壁部33の融着層と第1周壁部9の融着層とが融着されることにより、封止部5が形成されている。よって、収容部4の外周が封止部5で封止されている。以上の構造により、第1容器7および第2容器8が重ね合わされて接合され、外装体2が形成されている。封止部5は、収容部4の外側に筒状に形成されている。
収容部4には、第1容器7と第2容器8とが重ね合されることにより密封空間が形成されている。具体的に、収容部4は、第1底壁部6、第2底壁部31、および第2周壁部32により画成され、平面視で円形に形成されている。
【0035】
(電極体)
図3図5は、本実施形態の電極体3を示す図であり、電極体3は、固体電解質層15を介し負極層14と正極層16を積層した構造を複数積層した積層構造を有する。
図6に示すように、負極体10は、円板状の複数の負極集電体11とこれら負極集電体11を接続する負極接続部12を有する帯状の構造体である。負極体10は例えば銅箔からなる。負極体10において、負極集電体11の表裏両面に金属リチウムなどの負極層14が蒸着などの手段により形成されている。図6に示す負極体10には、負極集電体11が10個設けられ、それらが帯状の負極接続部12により直線状に接続されている。負極体10の長さ方向一端側の負極集電体11には負極接続部12の配列方向を延長するように短冊状の負極タブ13が延出されている。
【0036】
負極集電体11は、銅、ニッケルあるいはステンレス等の金属材料で形成されている。負極層14は、負極活物質、導電助剤、バインダー及び増粘剤等を含む。例えば、負極層14は、黒鉛等の炭素材料で形成されている。例えば、導電助剤としては、カーボンブラック類、炭素材料及び金属微粉等が挙げられる。例えば、バインダーとしては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレンブタジエンゴム(SBR)及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の樹脂材料が挙げられる。例えば、増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース(CMC)等の樹脂材料が挙げられる。
あるいは、負極層14は、金属リチウムを抵抗加熱蒸着法などで蒸着した金属リチウムの蒸着膜からなる。負極層14は金属リチウムをホットプレスなどの熱圧着法あるいは合金化反応を利用した接着法により付着させた金属リチウムの層であってもよい。
【0037】
負極体10において負極タブ13を設けた負極集電体11を第1番目の負極集電体11と呼称することができ、負極体10には順次第2番目の負極集電体11~第10番目の負極集電体11まで合計10個の負極集電体11が設けられている。
図6に示す構成では、第1番目の負極集電体11のみ片面側に負極層14が蒸着され、他面側の負極層14は略されている。第2番目の負極集電体11~第10番目の負極集電体11には表裏両面に負極層14が蒸着されている。なお、第1番目の負極集電体11のみ片面側に負極層14を設けたのは、第1番目の負極集電体11の両面に負極層14を設けると、後述する折り重ね構造とした場合、第1番目の負極集電体11の一方の面の負極層14がむき出しとなるため、不用意な反応を避けるためである。前述の不用意な反応の心配がなければ、第1番目の負極集電体11の両面に負極層14を設けてもよい。
【0038】
図7は、図6に示す負極体10に対し、負極体10の両面に配置した負極層14の表面側に固体電解質層15を塗布し乾燥させた負極複合体17を示す。なお、負極複合体17において、第1番目の負極集電体11には負極層14を設けた片面側にのみ固体電解質層15が形成されている。その他、第2番目の負極集電体11~第10番目の負極集電体11には表裏両面に、平面視略円形状の負極層14と固体電解質層15がそれぞれ形成されている。
固体電解質層15の表面を図9に拡大して示し、固体電解質層15の裏面側に負極層14が設けられている状態を図10に示す。なお、後述する折り畳み構造を容易とするために、固体電解質層15の外周縁の一部を切り欠いたフラット部15aを設けることが好ましい。図9図10に示す例では、固体電解質層15の外周部に周回り90°間隔で4つのフラット部15aが形成されている。
【0039】
図8は、正極体18を示し、この正極体18は金属箔からなる10個の円板状の正極集電体19を金属箔からなる正極接続部20により直線状に接続した帯状構造を有し、正極集電体19の表裏面に円板状の正極層が形成されている。
正極体18においても、図6に示す負極体10と同様に、第2番目の正極集電体19~第10番目の正極集電体19には表裏両面に正極層16が形成されている。そして、第1番目の正極集電体19のみ片面側に正極層16が形成され、他面側の正極層16は略されている(図8(b)参照)。正極体18の長さ方向一端側の正極集電体19には正極接続部20の配列方向を延長するように短冊状の正極タブ21が形成されている。
【0040】
正極集電体19は、アルミニウムまたはアルミニウム合金あるいはステンレス等の金属材料で形成されている。正極層16は、金属リチウム層から、あるいは、正極活物質、導電助剤、バインダー及び増粘剤等を含む層から構成される。例えば、正極活物質層は、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム等の複合金属酸化物などで形成されている。例えば、導電助剤としては、カーボンブラック類、炭素材料及び金属微粉等が挙げられる。例えば、バインダーとしては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレンブタジエンゴム(SBR)及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の樹脂材料が挙げられる。例えば、増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース(CMC)等の樹脂材料が挙げられる。
【0041】
電極体3は、図7に示す負極複合体17と図8に示す正極体18を交互に折り重ねて構成されている。
一例として、図11に示すように負極タブ13と第1番目の負極集電体11を左側に位置するように負極複合体17を手前側斜め横向きに配置する。これに対し、負極複合体17の第1番目の負極集電体11に対し、正極体18の第10番目の正極集電体19が接近するように正極体18と負極複合体17をL字状に配置する。
【0042】
この状態から、図12に示すように負極複合体17の第1番目の固体電解質層15上に正極体18の第10番目の正極層16を重ね、重ねた後に負極複合体17と正極体18を交互に互いの負極接続部12あるいは正極接続部20を基点として折り曲げて重ねる。
この折り重ね処理により、負極複合体17の第1番目の負極層14上に、固体電解質層15を介し正極体18の第10番目の正極層16を折り重ねることができる。以降、正極体18の第10番目の正極層16上に負極複合体17の第2番目の固体電解質層15を重ね、次に負極複合体17の第2番目の固体電解質層15上に正極体18の第9番目の正極層16を折り重ねる折り重ね処理を行う。
このように順序に負極複合体17と正極体18を折り返しつつ各層どうしを重ね合わせ、最後の正極タブ21を折り返すことで、図13に示すように正極タブ21を正極側で折り返した折り畳み構造の電極体3を得ることができる。また、負極タブ13を折返しておくことで電極体3の負極側の負極タブ13は図14に示すように電極体3の負極側に折り返される。
【0043】
以上により、負極接続部12で接続された複数の負極集電体11上に負極活物質を含む負極層14を備え、該負極層14上に固体電解質層15を介し正極活物質を含む正極層16を貼り付けた負極複合体17と、正極接続部20で接続された複数の正極集電体19を備えた正極体18が、交互に折り重ねられた電極体3を得ることができる。
【0044】
(固体電解質層の詳細構造)
固体電解質層15は、一例として、リチウム塩を含むイオン液体:65~80質量%、酸化物粒子:20~30質量%、バインダー:1~5質量%を含有する疑似固体電解質層からなる。
【0045】
固体電解質層15を製造するには、リチウム塩を含有するイオン液体、酸化物粒子、バインダーを所定の割合で溶媒中に投入し、攪拌してスラリーを作成する。溶媒中に可塑剤や分散剤を添加しても良い。
このスラリーをドクターブレード法、シート成型法などでキャリアフィルム表面に必要厚さ塗工し、この塗工物を大気中、電気炉中などで加熱し、乾燥させて疑似固体電解質シートを得る。この疑似固体電解質シートを必要な形状になるようにキャリアフィルムから剥がして、疑似固体電解質層である固体電解質層15とする。前述のドクターブレード法などの塗布法により予め図9に示す平面視形状に印刷しても良いし、打ち抜きなどの方法により図9に示す平面視形状に打ち抜き加工した後、キャリアフィルムから固体電解質層15を剥離しても良い。
疑似固体電解質層の乾燥は、電気炉等で積極的に加熱処理を施し、溶媒を揮発させて乾燥しても良いし、大気中で乾燥しても良い。
【0046】
イオン液体と酸化物粒子とバインダーを混合する場合に用いる溶媒は、NMP(N-メチル-2-ピロリドン)、1-プロパノール、2-プロパノール、エタノール、アセトン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートのうち、1種または2種以上の混合物を用いることができる。
【0047】
前記リチウム塩を含むイオン液体において、リチウム塩は、LiTFSI(リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド)、LiFSI、LiPF、LiBF、LiClOなどを用いることができる。
イオン液体は、アニオンとカチオンのイオンのみから構成される液体であり、高いイオン伝導性を有する。前記イオン液体を構成する溶媒は、アンモニウム系溶媒、イミダゾリウム系溶媒、ピロリジニウム系溶媒、ピペリジニウム系溶媒の何れかを選択することができる。
アンモニウム系溶媒は、TMPA-TFSI(N,N,N-トリメチル-N-プロピルアンモニウムビス-(テトラフルオロメタンスルホニル)イミド)、TMBA-TFSI(N、N、N-トリメチルブチルアンモニウムビス-(テトラフルオロメタンスルホニル)イミド)、TMHA-TFSI(トリメチルヘキシルアンモニウム-(テトラフルオロメタンスルホニル)イミド)のうち、いずれか1種または2種以上を用いることができる。
【0048】
イミダゾリウム系溶媒は、EMI-BF(1-エチル-3-メチルイミダゾリウム-テトラフルオロボレート)、EMI-PF(1-エチル-3-メチルイミダゾリウム-ヘキサフルオロフォスフェート)、EMI-TFSI(1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド)、EMI-FSI、BMI-PF(1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム-ヘキサフルオロフォスフェート)、BMI-TFSIのうち、いずれか1種または2種以上を用いることができる。
【0049】
ピロリジニウム系溶媒は、MPPyr-PF(1-メチル-1-プロピルピロリジニウム-フォスフェート)、MPPyr-TFSI、MPPy-FSI、BMPyr-PF(1-ブチル-1-メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド-ヘキサフルオロフォスフェート)、BMPyr-TFSIのうち、いずれか1種または2種以上を用いることができる。
ピペリジニウム系溶媒は、MPPip-TFSI(1-メチル-1-プロピルピロリジニウム-(テトラフルオロメタンスルホニル)イミド)を用いることができる。
【0050】
これらの中で、一例として、EMI-TFSIにLiTFSI(リチウムビス(トリフルオロメチレンスルホニル)イミド)を1Mとなるように混合した1MのLiTFSI/EMI-TFSIを用いることができる。LiTFSI/EMI-TFSIを用いる場合、LiTFSIの濃度は0.8~1.5Mの範囲とすることが好ましい。
【0051】
固体電解質層15に含まれるイオン液体は、65質量%以上80質量%の範囲であることが望ましい。
イオン液体の含有量が前述の範囲であれば、酸化物粒子に担持されるイオン液体量より多く塗工した場合、余剰なイオン液体が正極層16(または負極層14)に含侵されることとなり、塗工により形成した固体電解質層15との電池的な接触が良好となり、イオン伝導が高くなり、電池性能が向上する。
【0052】
固体電解質層15に含まれる酸化物粒子は20質量%以上30質量%以下であることが望ましい。酸化物粒子の平均粒子径(メディアン径:D50)は、5nm以上50nm以下であることが望ましい。
固体電解質層15に含まれる酸化物粒子は、酸化物粒子を選択できる。粒子を構成する材料は、例えば、非イオン性伝導材料として、SiO、Al、TiO、ZrO、MgOのうち1種または2種以上を用いることができる。あるいは、粒子を構成する材料は、イオン導電性材料として、Li1.3Al0.3Ti1.7(PO)、Li1.5Al0.5Ge1.5(PO)、LiLaZr12、LiLaTa12のうち、1種または2種以上を用いることができる。
固体電解質層15に含まれる酸化物粒子の含有量が少ない場合、固体電解質層15の密度が低下するため、正負極の短絡のリスクを有する。酸化物粒子の含有量が前述の範囲であれば、正負極短絡のおそれはなく、かつイオン伝導度が高くなる。
【0053】
酸化物粒子によるイオン液体の担持量は、酸化物粒子の比表面積に影響すると考えられる。酸化物粒子の粒径が小さいほど比表面積は大きく、イオン液体の担持量が増加するため、イオン伝導は高くなる。しかし、酸化物粒子の粒子径が小さくなると粒子の凝集性が高くなり、酸化物粒子の均一分散ができない問題を生じる。
酸化物粒子の粒径が50nmを超えて大きい場合、イオン伝導は低くなるが、粒子分散性の問題は生じ難い。酸化物粒子の平均粒子径(D50)が前述の範囲(5nm以上50nm以下)であれば、高いイオン伝導を得るとともに、粒子を均一分散させた固体電解質層15を得ることができる。酸化物粒子の平均粒径は、一般的なレーザー回折・散乱法により求められる体積基準の累積50%における粒子径を採用できる。
【0054】
固体電解質層15に含まれるバインダーは、1質量%以上5質量%以下であることが望ましい。
バインダーを形成する材料は、PVdF(ポリフッ化ビニリデン)、PVdF-HFP(ヘキサフルオロプロピレン)、PVA(ポリビニルアルコール)、PVB(ポリブチルビニラール)、PVP(ポリビニルピロリドン)、PEO(ポリエチレンオキサイド)、PEG(ポリエチレングリコール)のうち、1種または2種以上を用いることができる。
バインダーは複数混合して用いても良い。例えば、PVdFを用いて固体電解質層15の機械的強度向上を図り、PEOを用いて固体電解質層15に柔軟性を付与することができる。
【0055】
前述の構成の固体電解質層15は、図7を用いて先に説明したように負極層14の表面に密着させて使用する。
固体電解質層15を負極層14に密着するには、ホットプレスによる熱圧着法を採用してもよいし、前述のスラリーを負極層14の表面に直接塗布し、乾燥させても良い。
【0056】
先に説明したように図13図14に示す電極体3を得たならば、外装体2の内部に収容する。次に、導電ペーストによる貼り付け、あるいは溶接などの接合手法により負極タブ13を第1容器7の負極側電極板26に接合し、正極タブ21を第2容器8の正極側電極板38に接合する。次に、第1容器7と第2容器8の周壁部どうしを熱融着することで電気化学セル1を得ることができる。タブの溶接はレーザー溶接、抵抗溶接、超音波溶接などいずれの方法を用いても良い。
また、負極側電極板26と正極側電極板38の外面側にNi、Alの金属板を貼り付けるかステンレス鋼板などの耐食性の良好な金属板を貼り付けて設けても良い。
【0057】
また、上述の製造方法において、作製パターン、順番は特に問わず、種々の方法を採用できる。
例えば、負極体10において負極層14の表面に固体電解質層15を形成せず、正極体18の正極層16の表面側に固体電解質層15を形成し、固体電解質層15を備えていない負極体10と固体電解質層15を備えた正極体18を交互に折り畳むようにして電極体を構成することもできる。折り重ねる度に、負極層14と正極層16の間に固体電解質層15を挟むようにする。
これらにより、正極接続部20で接続された複数の正極集電体19上に正極活物質を含む正極層16を備えた正極体と、負極接続部12で接続された複数の負極集電体11上に負極活物質を含む負極層14を備えた負極体10が、正極層16と負極層14の間に固体電解質層15を介在させて互いに折り重ねられた電極体を得ることができる。
【0058】
上述の電池1を製造する場合に用いる材料に特に制限はないが、これまで説明した構成要素の他に以下のものを例示できる。
・正極活物質または負極活物質:ソフトカーボンやハードカーボンなどの炭素系材料、リチウム、硫黄。Liを含む、または含まない酸化物を利用できる。
・導電助剤:カーボンブラックや、アセチレンブラックなどを添加できる。
・集電体の材料:銅、アルミ、SUS、ニッケルなどを選択できる。
・溶媒:水、アルコール系、ケトン系などを選択できる。
・分散剤、可塑剤を添加してもよい。グリーンシートの作製時に使用されている一般的な分散剤、可塑剤を添加できる。
【0059】
・電池の寸法:正極層、負極層、電解質層のそれぞれの厚みは100μm以下とすることができ。直径は20mm以下とすることができる。
・集電箔の厚みは20μm以下とすることができる。
・外装:金属ラミネート、金属缶、樹脂コーティング、酸化物コーティングの何れかを選択できる。
・電極体の形状:円形、楕円形、多角形などを例示できる。
【0060】
正極層の組成:Li1.3Al0.3Ti1.712の場合、これに黒鉛を混ぜたものを選択でき、焼成条件:800℃、黒鉛の燃焼を抑える為、窒素やアルゴン雰囲気、真空雰囲気を選択できる。
負極層の組成:負極活物質としてリチウム(未焼成)を選択できる。
【0061】
・一括焼成できないもの
一般的な酸化物系固体電解質であるLi1.5Al0.5Ge1.512(LAGP)などのガラスセラミック系の焼成温度は約800℃である。LiLaZr12(LLZ)などの結晶系は1000℃以上である。
そのため、活物質として、高エネルギー密度として注目されるリチウム(融点約180℃)や、硫黄(融点115℃)などは一括焼成の場合、電池の構成材料として使用できない。集電材として一般的な、アルミニウム(融点約660℃)も使用できない。
これらに対し、上述の例では、イオン液体を含む固体電解質層15を用いているので、リチウムや硫黄、アルミニウムの使用に際し、熱の問題を生じない。このため、電池特性に優れた電気化学セル1を得ることができる。
【0062】
「ラミネート容器の製造方法」
図1図4に示すラミネートフィルムからなる構造の外装体2を備えた電池1を製造する場合、図15図17を基に以下に説明する方法により製造できる。
例えば、ラミネートフィルムからなる図15に示す円板状の第1容器素材115とラミネートフィルムからなるハット状の第2容器素材116を用意する。第2容器素材116の突部117の内側に電極体3を収容し、各電極を接続し、第2容器素材116の外周部116aと第1容器素材115の外周部115aを重ね合わせて熱溶着などの接合方法で接合し、図15に示す接合体118とする。
次に、図16に示すように下型121と上型122からなる金型120とパンチ123を用意する。下型121の中央部と上型122の中央部には接合体118の突部117を遊挿可能な成型孔121a、122aが形成されており、下型121と上型122の間に接合体118の外周部を挟持する。
【0063】
また、パンチ123の上端部に円環壁からなる成形突部124が設けられており、下型121と上型122の間に接合体118の外周部を挟持した状態でパンチ123を図16に示す位置から上昇させることができる。図17に示すように成形突部124を成型孔121aから122aまで上昇させると、接合体118の外周部を全周に渡り成形突部124で断面逆U字状に加工しつつ接合体118の外周縁部から切断することができる。このプレス加工により図1図4に示す外装体2を備えた電池1を得ることができる。
【0064】
本明細書では、以上説明のように、負極複合体と正極体として種々の形状を採用することができ、折り重ね構造も種々の形状を採用でき、これまで説明した例に制限されないのは勿論である。
なお、本発明に係る電気化学セルとして、上述したようなラミネートフィルム製の第1容器7及び第2容器8からなる平面視円形状のボタン型の外装体2を用いることを例に挙げた。しかし、本発明はこれに限られず、第1容器と第2容器のいずれか又は両方が金属製容器であってもよい。また、有底円筒状の金属製の正極缶と、正極缶の開口部を塞ぐ有蓋円筒状の蓋状の金属製の負極缶と、正極缶と負極缶とを絶縁するガスケットとを用いた外装体を用いてもよく、外装体の形状や構造は電池用の一般的なものを広く適用することができる。
【実施例0065】
イオン液体として、EMI-FSI(1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(フルオロメタンスルホニル)イミド)に、LiTFSI(リチウムビス(トリフルオロメチレンスルホニル)イミド)を1Mとなるように混合した1MのLiTFSI/EMI-FSIを用意した。酸化物粒子として、SiO粒子(平均粒径35nm(D50))を用意した。バインダーはPVdF-HFPを用意した。
イオン液体(1MのLiTFSI/EMI-FSI)を70.4質量%、酸化物粒子(SiO粒子)を28.2質量%、バインダー(PVdF-HFP)を1.4質量%の割合となるように準備した。先にアセトン溶媒にイオン液体と酸化物粒子を投入して混合後、アセトン溶媒にバインダーを添加し、混合し、スラリー状の混合物を得た。
【0066】
図6に示す銅箔からなる円板状の10個の負極集電体を帯状の負極接続部で接続した負極体に対し、負極集電体両面にリチウムを熱圧着してリチウム層を形成し、負極複合体を得た。
図8に示すアルミ箔からなる円板状の10個の正極集電体を帯状の正極接続部で接続した正極体に対し、正極活物質としてコバルト酸リチウム(LiCoO)を67.6質量%、バインダーとしてPVDFを21.0質量%、導電助剤としてアセチレンブラックを1.8質量%、溶媒としてNMPを9.6質量%を混合してなるスラリー状の混合物をドクターブレード法で正極集電体両面に塗布し、大気中で乾燥することにより、正極集電体両面に正極活物質を含む正極層を形成し、正極体を得た。
正極体の両面にさらに、前記スラリー状の混合物をドクターブレード法で塗布し、円板状の塗布層(厚さ40μm)を形成後、塗布層を大気中で乾燥した。乾燥により、塗布層を疑似固体電解質層とすることができ、正極集電体の表裏両面に正極層と疑似固体電解質層を有する正極複合体を得た。
負極複合体と正極複合体を図11図12に示す固定に従い交互に折り畳み、折り畳み構造体をプレスし、電極体を形成した。この電極体の通電試験を実施したところ、電圧の発生を確認できた。
【符号の説明】
【0067】
1…電池(電気化学セル)、2…外装体、3…電極体、7…負極側容器(第1容器)、8…正極側容器(第2容器)、9…第1周壁部、10…負極体、11…負極集電体、12…負極接続部、13…負極タブ、14…負極層、15…固体電解質層(疑似固体電解質層)、16…正極層、17…負極複合体、18…正極体、19…正極集電体、20…正極接続部、21…正極タブ、26…負極側電極板、38…正極側電極板。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17