(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129354
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】タンク設備の検査方法
(51)【国際特許分類】
F17C 13/00 20060101AFI20240919BHJP
B63B 25/16 20060101ALI20240919BHJP
B63J 2/08 20060101ALI20240919BHJP
F17C 13/12 20060101ALI20240919BHJP
【FI】
F17C13/00 302Z
B63B25/16 B
B63J2/08 B
F17C13/12 302A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038501
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】518022743
【氏名又は名称】三菱造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】林 知得
(72)【発明者】
【氏名】濱谷 伸弘
(72)【発明者】
【氏名】橋本 直弥
【テーマコード(参考)】
3E172
【Fターム(参考)】
3E172AA03
3E172AA05
3E172AA06
3E172AB04
3E172AB11
3E172AB13
3E172AB20
3E172BA06
3E172BB05
3E172BB12
3E172BB13
3E172BB17
3E172BD01
3E172CA30
3E172DA28
3E172DA29
3E172EA02
3E172EA03
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3E172EA30
3E172EB02
3E172EB03
3E172EB10
3E172EB17
3E172EB18
3E172EB19
3E172GA20
3E172GA26
3E172KA02
3E172KA24
(57)【要約】
【課題】タンク設備の設置後における検査を効率良く行い、補修工事等が必要となった場合には、迅速に作業を行うことができる。
【解決手段】タンク設備の検査方法は、LNG(液化天然ガス)を貯留するタンクと、タンクに接続され、LNGが流通する配管と、を備えるタンク設備の検査方法であって、配管を通してタンクに液体窒素を供給する工程と、液体窒素によって冷却されたタンク設備の検査を行う工程と、を含む。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
LNG(液化天然ガス)を貯留するタンクと、
前記タンクに接続され、前記LNGが流通する配管と、を備えるタンク設備の検査方法であって、
前記配管を通して前記タンクに液体窒素を供給する工程と、
前記液体窒素によって冷却された前記タンク設備の検査を行う工程と、を含む
タンク設備の検査方法。
【請求項2】
前記検査を行う工程では、前記タンク設備の検査の結果、前記タンク設備が正常であった場合に、前記配管を通して前記タンクにLNG液を供給する工程、を更に含む
請求項1に記載のタンク設備の検査方法。
【請求項3】
前記検査を行う工程では、前記タンク設備の検査の結果、前記タンク設備に異常が認められた場合、前記タンク設備に補修を施す工程、を更に含む
請求項2に記載のタンク設備の検査方法。
【請求項4】
前記タンクにLNG液を供給する工程の前に、前記配管を通して前記タンクにLNGガスを供給する工程、を更に含む
請求項2又は3に記載のタンク設備の検査方法。
【請求項5】
前記タンクに液体窒素を供給する工程の前に、前記配管を通して前記タンクに窒素ガスを供給する工程、を更に含む
請求項1又は2に記載のタンク設備の検査方法。
【請求項6】
前記タンク設備は、浮体に設けられている
請求項1又は2に記載のタンク設備の検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、タンク設備の検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、LNG(液化天然ガスLNG:Liquefied Natural Gas)液を搭載可能なタンクを備えたタンク設備が開示されている。LNG液は、例えば-160℃以下という低温でタンク内に貯留される。
ところで、低温状態のLNG液を貯留するタンクを備えた浮体、陸上設備等のタンク設備においては、配管を通してタンクにLNG液を入れると、配管及びタンクの温度が低下する。すると、配管やタンクが熱収縮して、例えば、配管の溶接部分の破損、配管が曲がる部分の変形や位置ずれ、配管の支持部材の変形、配管を覆う防熱材の亀裂等の欠陥が生じる可能性がある。このため、タンク設備の設置後、タンク設備を実際に運用するに先立ち、実際にLNG液を配管に通し、配管を実際の稼働状態と同等の温度に冷却して各部の検査を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のタンク設備の検査を行うには、配管を通してタンク内にLNG液を充填する必要がある。これには、まず、タンク設備の設置後に配管やタンク内の存在している空気を窒素ガス等により置換する。次いで、配管やタンク内に、窒素ガスよりも低温のLNGガスを充填し、配管やタンクを、例えば-20℃程度まで中間冷却する。その後、-160℃以下のLNG液を配管内に入れ、配管やタンクを、実際の稼働状態と同等の温度に冷却して、各部の検査を行う。
【0005】
しかしながら、検査の結果、何らかの欠陥が発生していた場合、LNG液が存在している状態では、欠陥に対応するための各種作業を行うのが困難なことがある。例えば、配管の溶接部の補修工事が必要となった場合、配管内に可燃性のLNG液が存在している状態では、溶接作業を行うことができない。このため、配管やタンク内のLNG液を、再び窒素ガス等に置換する必要があり、手間と時間が掛かる。
【0006】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、タンク設備の設置後における検査を効率良く行い、補修工事等が必要となった場合には、迅速に作業を行うことができるタンク設備の検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示に係るタンク設備の検査方法は、タンクと、配管とを備えるタンク設備の検査方法である。タンクは、LNGを貯留する。配管は、前記タンクに接続され、前記LNGが流通する。前記タンク設備の検査方法は、液体窒素を供給する工程と、タンク設備の検査を行う工程と、を含む。前記液体窒素を供給する工程では、前記配管を通して前記タンクに液体窒素を供給する。前記タンク設備の検査を行う工程では、前記液体窒素によって冷却された前記タンク設備の検査を行う。
【発明の効果】
【0008】
本開示のタンク設備の検査方法によれば、タンク設備の設置後における検査を効率良く行い、補修工事等が必要となった場合には、迅速に作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の実施形態に係るタンク設備の検査方法を備えた浮体の側面図である。
【
図2】本開示の実施形態に係るタンク設備の概略構成を示す図である。
【
図3】本開示の実施形態に係るタンク設備の検査方法の手順を示すフローチャートである。
【
図4】本開示の実施形態に係るタンク設備に、窒素ガスを供給した状態を示す図である。
【
図5】本開示の実施形態に係るタンク設備に、液体窒素を供給した状態を示す図である。
【
図6】本開示の実施形態に係るタンク設備に、LNGガスを供給した状態を示す図である。
【
図7】本開示の実施形態に係るタンク設備に、LNG液を供給した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施形態に係るタンク設備の検査方法について、
図1~
図7を参照して説明する。本実施形態では、水に浮かぶ浮体に設けられたタンク設備を一例にして説明する。
(浮体の構成)
図1に示すように、本実施形態の浮体1は、浮体本体2と、タンク設備10と、を少なくとも備えている。浮体1としては、例えば、液化天然ガス(LNG)、二酸化炭素、アンモニア等の液化ガスの運搬船、貨物船、フェリー、RORO船(Roll-on/Roll-off船)、PCTC(Pure Car & Truck Carrier)、客船、観測・調査船等を例示できる。
【0011】
(浮体本体の構成)
浮体本体2は、その外殻をなす一対の舷側3A,3Bと、船底4と、上甲板5と、を有している。舷側3A,3Bは、左右舷側をそれぞれ形成する一対の舷側外板を有する。船底4は、これら舷側3A,3Bを接続する船底外板を有する。これら一対の舷側3A,3B及び船底4により、浮体本体2の外殻は、船首尾方向Daに直交する断面において、U字状を成している。この実施形態で例示する上甲板5は、外部に露出する全通甲板である。浮体本体2には、例えば船尾2b側の上甲板5上に、居住区を有する上部構造7が形成されている。
【0012】
(タンク設備の構成)
図2は、本開示の実施形態に係るタンク設備の概略構成を示す図である。
図2に示すように、タンク設備10は、タンク11と、配管12と、安全弁16と、を少なくとも備えている。
タンク11は、LNGを貯留可能である。
図1に示すように、本実施形態のタンク11は、例えば、浮体本体2内に収容されている。本実施形態のタンク11は、例えば浮体本体2内に収容された主機、補機、発電機用エンジン(いずれも図示せず)等の燃焼器9の燃料としてLNGを貯留する場合を例示している。
【0013】
本実施形態のタンク11は、水平方向に延びる円筒状をなし、船首尾方向Daに延びるように設けられている。なお、タンク11は、浮体本体2内に収容されたものに限られず、例えば上甲板5上に設けられていてもよい。さらに、タンク11の浮体本体2における設置数、配置については何ら限定するものではない。また、タンク11の形状は、円筒状に限られず、例えばタンク11は球形、方形等であってもよい。
【0014】
配管12は、タンク11に接続されている。本実施形態では、積込配管13と、払出配管14と、接続配管15と、が配管12として設けられている。配管12は、タンク11の外部において、防熱材(図示せず)によって覆われている。また、配管12は、タンク11の外部において、部分的に外管(図示せず)によって覆われた二重管になっている部分がある。
【0015】
積込配管13は、外部から供給されるLNGをタンク11内に積み込むための配管である。本実施形態で例示する積込配管13は、タンク11の頂部を貫通し、タンク11の内外を上下方向Dvの上方から下方に向かって延びている。積込配管13の先端(言い換えれば、上下方向Dvにおける下端)は、タンク11内の下部で下方を向いて開口している。
【0016】
払出配管14は、タンク11内のLNGをタンク11外に払い出すための配管である。本実施形態で例示する払出配管14は、タンク11の外部からタンク11の頂部を貫通し、タンク11の内部に延びている。払出配管14の先端部は、タンク11内の下部に配置されている。払出配管14の先端部には、ポンプ(図示せず)が設けられている。ポンプ(図示せず)は、タンク11内に配置されている。ポンプ(図示せず)は、タンク11内のLNGを吸い込み、払出配管14を通してタンク11の外部に送り出す。
【0017】
積込配管13、及び払出配管14の基端部は、バンカーステーション18に接続されている。バンカーステーション18には、陸上のLNG貯蔵施設、LNGを運搬するタンクローリー、バンカー船等に設けられた外部配管が着脱可能に接続される。バンカーステーション18は、例えば舷側3A,3Bの少なくとも一方に設けられている。
【0018】
安全弁16は、タンク11に、接続配管15を介して接続されている。本実施形態で例示する接続配管15は、タンク11の頂部に接続され、タンク11内の気相に連通している。安全弁16は、タンク11内の圧力が、予め設定された設定圧力に到達した場合に、タンク11内の圧力を外部に解放する。
【0019】
(タンク設備の検査方法の手順)
次に、上記タンク設備10の検査方法について図面を参照しながら説明する。
図3は、本開示の実施形態に係るタンク設備の検査方法の手順を示すフローチャートである。
図4は、本開示の実施形態に係るタンク設備に、窒素ガスを供給した状態を示す図である。
図3に示すように、本実施形態に係るタンク設備の検査方法S10は、窒素ガスを供給する工程S11と、液体窒素を供給する工程S12と、検査を行う工程S13と、検査結果を確認する工程S14と、LNGガスを供給する工程S15と、LNG液を供給する工程S16と、補修を施す工程S18と、を含んでいる。
【0020】
窒素ガスを供給する工程S11は、例えば、タンク設備10の設置後や改修後などに、タンク11にLNGを貯留してタンク設備10を実際に運用するに先立って実行する。
図4に示すように、窒素ガスを供給する工程S11では、配管12を通してタンク11に窒素ガスG1を供給する。窒素ガスG1は、例えば、浮体1の外部から、バンカーステーション18を介してタンク設備10に送り込むことができる。タンク設備10に送り込まれた窒素ガスG1は、配管12である積込配管13を通してタンク11に供給される。ここで、払出配管14等に開閉弁(図示せず)等が設けられている場合、窒素ガスG1がタンク設備10に設けられたタンク11や配管12の全体に行き渡るように、開閉弁を開いておくことが好ましい。また、払出配管14内に窒素ガスG1を行き渡らせるため、タンク11内から払出配管14内に流入する窒素ガスG1の一部を、バンカーステーション18を介して、浮体1の外部に払い出すようにしてもよい。
【0021】
窒素ガスを供給する工程S11では、配管12を通してタンク11に窒素ガスG1を送り込むことにより、タンク設備10の設置後、タンク設備10を構成するタンク11や配管12内に存在していた空気が、窒素ガスG1に置換される。窒素ガスを供給する工程S11では、窒素ガスG1の供給源側で、窒素ガスG1の温度を、常温よりも低い所定の温度、例えば-20℃に調整しておくようにする。また、窒素ガスを供給する工程S11では、当初は、常温の窒素ガスG1をタンク設備10に送り込み、その後、常温よりも低い所定の温度、例えば-20℃の窒素ガスG1を送り込むようにしてもよい。これにより、タンク11や配管12を中間冷却することができる。ここで、窒素ガスを供給する工程S11による中間冷却は、タンク11内の温度が、予め設定された温度(例えば-20℃)まで低下した時点で終了すればよい。タンク11内の温度は、タンク11に設けられた温度センサ(図示せず)により測定できる。
【0022】
図5は、本開示の実施形態に係るタンク設備に、液体窒素を供給した状態を示す図である。
液体窒素を供給する工程S12では、窒素ガスを供給する工程S11によって空気が窒素ガスG1に置換されたタンク設備10に対して、
図5に示すように、液体窒素L1を供給する。液体窒素L1は、バンカーステーション18を介して浮体1の外部からタンク設備10に送り込むことができる。タンク設備10に送り込まれた液体窒素L1は、配管12である積込配管13を通してタンク11内に貯留される。この際、積込配管13内の窒素ガスG1は、液体窒素L1に押されてタンク11内に流入する。
【0023】
ここで、タンク11内の液体窒素L1の貯留量が増加すると、タンク11内の窒素ガスG1の圧力は上昇する。そして、タンク11内の窒素ガスG1の圧力が、予め設定された設定圧力に到達すると、安全弁16が開放される。これにより、タンク11内の窒素ガスG1が接続配管15を通して外部(例えば、大気中)に放出される。
【0024】
液体窒素を供給する工程S12では、配管12を通してタンク11に液体窒素L1を送り込むことにより、タンク11や配管12内に存在していた窒素ガスG1が、液体窒素L1に置換される。液体窒素L1の貯留量は、タンク11内の液位を検出する液位センサ(図示せず)により測定するようにしてもよい。この場合、液体窒素を供給する工程S12の開始後、液位センサで検出されるタンク11内の液体窒素L1の液位が予め設定されたレベルまで到達したら、液体窒素L1の供給を停止すればよい。また、払出配管14内に液体窒素L1を行き渡らせるため、ポンプ(図示せず)を作動させてタンク11内に貯留された液体窒素L1を払出配管14内に吸上げるようにしてもよい。さらには、払出配管14内に吸い上げた液体窒素L1の一部を、バンカーステーション18を介して、浮体1の外部に払い出すようにしてもよい。
このようにして液体窒素L1が配管12を通してタンク11に供給されると、タンク11や配管12が液体窒素L1によって冷却される。液体窒素L1は、例えば-180℃以下であり、例えば-160℃であるLNG液よりも、20℃程度低温である。
【0025】
検査を行う工程S13では、液体窒素を供給する工程S12で供給された液体窒素L1によって冷却されたタンク設備10の検査を行う。より具体的には、この検査を行う工程S13では、配管12、及びタンク11の熱伸縮量、熱伸縮の方向、熱伸縮による配管12の溶接部の破損、配管12が曲がる部分の変形や位置ずれ、配管12の支持部材の変形、熱伸縮による配管12を覆う防熱材の不良等の有無を、作業員が目視等で確認する。ここで、液体窒素L1は、例えば-180℃以下であり、例えば-160℃であるLNG液よりも低温である。したがって、タンク11を実際に運用する際に配管12、タンク11内にLNG液が存在している状態よりも、より厳しい条件下で、タンク設備10の検査が行われる。なお、防熱材の不良は、防熱されずに冷却されることで生じるいわゆるコールドスポットの有無を目視によりで確認できる。
【0026】
検査結果を確認する工程S14では、検査を行う工程S13により、タンク設備10に、低温の液体窒素L1によってタンク設備10が冷却されることで生じる、配管12、タンク11の熱伸縮(熱収縮)に起因する異常が生じているか否かを判定する。
【0027】
検査結果を確認する工程S14による判定の結果、タンク設備10が正常であった場合(S14でYes)、LNGガスを供給する工程S15に進む。一方で、検査結果を確認する工程S14による判定の結果、タンク設備10が正常ではなく何らかの異常が生じていた場合(S14でNo)、補修を施す工程S18に進む。
【0028】
補修を施す工程S18では、タンク設備10に補修を施す。すなわち、検査結果を確認する工程S14により異常が生じていると判定された箇所を補修する。ここで、液体窒素L1は、不燃性である。このため、タンク設備10の異常がガス漏洩である場合であっても、漏洩したガスへの引火の可能性が無く、また、液体窒素L1や窒素ガスG1を他の不活性ガスに置換せずに溶接等、火気を用いた配管12やタンク11の補修作業を行うことが可能である。
この補修を施す工程S18によるタンク設備10の補修が完了した後は、上述した窒素ガスを供給する工程S11に戻る。すなわち、再度、上述したステップS11からステップS14を行い、液体窒素L1を用いてタンク設備10を冷却した状態で検査を行う。
【0029】
図6は、本開示の実施形態に係るタンク設備に、LNGガスを供給した状態を示す図である。
LNGガスを供給する工程S15では、配管12を通してタンク11にLNGガスG2を供給する。LNGガスG2は、浮体1の外部から、バンカーステーション18を介してタンク設備10に送り込む。タンク設備10に送り込まれたLNGガスG2は、配管12である積込配管13を通してタンク11に供給される。
供給されるLNGガスG2により、配管12、タンク11内の液体窒素L1が、タンク設備10外に押し出されて排出される。このとき、LNGガスG2の温度は、液体窒素L1の温度よりも高いので、供給されたLNGガスG2により、液体窒素L1が気化し、接続配管15を介して外部に排出される。
【0030】
図7は、本開示の実施形態に係るタンク設備に、LNG液を供給した状態を示す図である。
続いて、LNG液を供給する工程S16では、配管12を通してタンク11にLNG液L2を供給する。LNG液L2は、浮体1の外部から、バンカーステーション18を介してタンク設備10に送り込む。タンク設備10に送り込まれたLNG液L2は、配管12である積込配管13を通してタンク11に供給される。このとき、タンク設備10を構成する配管12,タンク11等は、液体窒素L1によって冷却されている。このため、工程S13以降で、配管12、タンク11等の温度が上昇したとしても、LNG液L2を供給することで、配管12、タンク11の温度が速やかに低下する。そして、LNG液L2が、タンク11内に所定量供給されることで、この工程S16を終了する。
その後は、タンク設備10にLNG液L2を貯留した状態で、タンク設備10の運用を開始する。
【0031】
(作用効果)
上記実施形態のタンク設備の検査方法では、配管12を通してタンク11に液体窒素L1を供給した後に、液体窒素L1によって冷却されたタンク設備10の検査を行う。液体窒素L1は、例えば-180℃以下であり、例えば-160℃であるLNG液L2よりも低温である。したがって、タンク11を実際に運用する際に配管12、タンク11内にLNG液L2が存在している状態よりも、より厳しい条件下で、タンク設備10の検査を行うことができる。しかも、液体窒素L1は、不燃性である。このため、タンク設備10の検査の結果、例えば、タンク設備10内の液体窒素L1を排出する場合であっても、タンク設備10の周囲に可燃性ガスが及ぶことが抑えられる。さらに、タンク設備10の検査の結果、溶接等、火気を用いて補修作業を行う必要が生じた場合であっても、タンク設備10の配管12、タンク11内の残留ガスへの引火が抑えられる。したがって、タンク設備10の設置後における検査を効率良く行い、補修工事等が必要となった場合には、迅速に作業を行うことができることが可能となる。
【0032】
また、上記実施形態では、タンク設備10の検査の結果、タンク設備10が正常であった場合に、配管12を通してタンク11にLNG液L2を供給する。これにより、LNG液L2よりも低温の液体窒素L1によって配管12、タンク11に熱収縮を生じさせた状態でタンク設備10の検査を効率良く行った後に、LNG液L2を、配管12を通してタンク11にLNG液L2を供給し、タンク設備10の運用へと効率良く移行させることができる。
【0033】
また、上記実施形態では、タンク設備10の検査の結果、タンク設備10に異常が認められた場合、タンク設備10に補修を施すことで、タンク設備10の異常を解除することができる。また、タンク設備10の検査の際には、配管12、タンク11内には液体窒素L1が存在していたので、可燃性ガスであるLNGガスG2を周囲に放出することが抑えられる。
【0034】
また、上記実施形態では、配管12、タンク11内に存在している液体窒素L1よりも温度が高いLNGガスG2を供給することで、液体窒素L1を気化させることができる。これにより、配管12、タンク11内の液体窒素L1を気化させて、容易にタンク設備10外に排出することができる。
【0035】
また、上記実施形態では、タンク11に液体窒素を供給する工程S12の前に、配管12を通してタンク11に窒素ガスG1を供給することで、配管12、及びタンク11内を、例えば-20℃程度まで冷却することができる。
【0036】
また、上記実施形態では、タンク設備10が、浮体1に設けられている。浮体1においては、浮体1の運動(揺動)により、浮体本体2に変形が生じ、その結果、タンク設備10の各部に負荷が掛かる。このような浮体1に設けられたタンク設備10において、タンク設備10の設置後における検査を効率良く行い、補修工事等が必要となった場合には、迅速に作業を行うことが可能となる。
【0037】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
なお、上記実施形態ではタンク11として、主機、補機、発電機用エンジン(いずれも図示せず)に供給する燃料としてのLNGを貯留するものを例示したが、これに限られない。本実施形態におけるタンク設備の検査方法は、貨物としてのLNGを貯留するタンクを備えたタンク設備を対象とすることも可能である。
また、タンク設備10は、浮体1の浮体本体2に限らず、洋上浮体設備の浮体本体、陸上のLNG貯蔵施設等に備えられていてもよい。
また、上記実施形態で示したタンク設備の検査方法S10の手順は、適宜変更可能である。
【0038】
<付記>
実施形態に記載のタンク設備10の検査方法S10は、例えば以下のように把握される。
【0039】
(1)第1の態様に係るタンク設備10の検査方法S10は、LNG(液化天然ガス)を貯留するタンク11と、前記タンク11に接続され、前記LNGが流通する配管12と、を備えるタンク設備10の検査方法S10であって、前記配管12を通して前記タンク11に液体窒素を供給する工程S12と、前記液体窒素L1によって冷却された前記タンク設備10の検査を行う工程S13と、を含む。
【0040】
このタンク設備10の検査方法S10は、配管12を通してタンク11に液体窒素L1を供給した後に、液体窒素L1によって冷却されたタンク設備10の検査を行う。液体窒素L1は、例えば-180℃以下であり、例えば-160℃であるLNG液L2よりも低温である。したがって、タンク11を実際に運用する際に配管12、タンク11内にLNG液L2が存在している状態よりも、より厳しい条件下で、タンク設備10の検査を行うことができる。しかも、液体窒素L1は、不燃性である。このため、タンク設備10の検査の結果、例えば、タンク設備10内の液体窒素L1を排出する場合であっても、タンク設備10の周囲に可燃性ガスが及ぶことが抑えられる。さらに、タンク設備10の検査の結果、溶接等、火気を用いて補修作業を行う必要が生じた場合であっても、タンク設備10の配管12、タンク11内の残留ガスへの引火が抑えられる。したがって、タンク設備10の設置後における検査を効率良く行い、補修工事等が必要となった場合には、迅速に作業を行うことができることが可能となる。
【0041】
(2)第2の態様に係るタンク設備10の検査方法S10は、(1)のタンク設備10の検査方法S10であって、前記検査を行う工程S13では、前記タンク設備10の検査の結果、前記タンク設備10が正常であった場合に、前記配管12を通して前記タンク11にLNG液L2を供給する工程S16、を更に含む。
【0042】
これにより、タンク設備10の検査の結果、タンク設備10が正常であった場合に、配管12を通してタンク11にLNG液L2を供給する。これにより、LNG液L2よりも低温の液体窒素L1によって配管12、タンク11に熱収縮を生じさせた状態でタンク設備10の検査を効率良く行った後に、LNG液L2を、配管12を通してタンク11にLNG液L2を供給し、タンク設備10の運用へと効率良く移行させることができる。
【0043】
(3)第3の態様に係るタンク設備10の検査方法S10は、(2)のタンク設備10の検査方法S10であって、前記検査を行う工程S13では、前記タンク設備10の検査の結果、前記タンク設備10に異常が認められた場合、前記タンク設備10に補修を施す工程S18、を更に含む。
【0044】
これにより、タンク設備10の検査の結果、タンク設備10に異常が認められた場合、タンク設備10に補修を施すことで、タンク設備10の異常を解除することができる。また、タンク設備10の検査の際には、配管12、タンク11内には液体窒素L1が存在していたので、可燃性ガスであるLNGガスG2を周囲に放出することが抑えられる。
【0045】
(4)第4の態様に係るタンク設備10の検査方法S10は、(2)又は(3)のタンク設備10の検査方法S10であって、前記タンク11にLNG液L2を供給する工程S16の前に、前記配管12を通して前記タンク11にLNGガスG2を供給する工程S15、を更に含む。
【0046】
これにより、配管12、タンク11内に存在している液体窒素L1よりも温度が高いLNGガスG2を供給することで、液体窒素L1を気化させることができる。これにより、配管12、タンク11内の液体窒素L1を気化させて、容易にタンク設備10外に排出することができる。
【0047】
(5)第5の態様に係るタンク設備10の検査方法S10は、(1)から(4)の何れか一つのタンク設備10の検査方法S10であって、前記タンク11に液体窒素を供給する工程S12の前に、前記配管12を通して前記タンク11に窒素ガスを供給する工程S11、を更に含む
【0048】
これにより、タンク11に液体窒素を供給する工程S12の前に、配管12を通してタンク11に窒素ガスG1を供給することで、配管12、及びタンク11内を、例えば-20℃程度まで冷却することができる。
【0049】
(6)第6の態様に係るタンク設備10の検査方法S10は、(1)から(5)の何れか一つのタンク設備10の検査方法S10であって、前記タンク設備10は、浮体に設けられている。
浮体の例としては、船舶の浮体本体、洋上浮体設備の浮体が挙げられる。
【0050】
これにより、浮体に設けられたタンク設備において、タンク設備10の設置後における検査を効率良く行い、補修工事等が必要となった場合には、迅速に作業を行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0051】
1…浮体 2…浮体本体 2b…船尾 3A、3B…舷側 5…上甲板 7…上部構造 9…燃焼器 10…タンク設備 11…タンク 12…配管 13…積込配管(配管) 14…払出配管(配管) 15…接続配管(配管) 16…安全弁 18…バンカーステーション G1…窒素ガス G2…LNGガス L1…液体窒素 L2…LNG液 S10…タンク設備の検査方法 S11…窒素ガスを供給する工程 S12…液体窒素を供給する工程 S13…検査を行う工程 S14…検査結果を確認する工程 S15…LNGガスを供給する工程 S16…LNG液を供給する工程 S18…補修を施す工程