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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129361
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】回路装置および発振器
(51)【国際特許分類】
   H03B 5/32 20060101AFI20240919BHJP
【FI】
H03B5/32 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038512
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000660
【氏名又は名称】Knowledge Partners弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】山本 壮洋
【テーマコード(参考)】
5J079
【Fターム(参考)】
5J079AA04
5J079BA11
5J079BA32
5J079DA22
5J079DA24
5J079FA05
5J079FA14
5J079FA21
5J079FB02
5J079GA05
5J079GA12
5J079JA02
(57)【要約】
【課題】サーマルノイズを抑制した状態でのデューティーの調整。
【解決手段】発振信号を生成する発振回路と、前記発振信号を矩形波のクロック信号に整形する波形整形回路と、前記クロック信号を平滑化して前記クロック信号のデューティーに対応する検出電圧を生成するローパスフィルターと、前記検出電圧と基準電圧との差に基づくバイアス電圧を、前記波形整形回路の入力ノードに出力する差動増幅器と、を備え、前記差動増幅器のユニティゲイン周波数は、前記ローパスフィルターのカットオフ周波数より小さい、回路装置を構成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発振信号を生成する発振回路と、
前記発振信号を矩形波のクロック信号に整形する波形整形回路と、
前記クロック信号を平滑化して前記クロック信号のデューティーに対応する検出電圧を生成するローパスフィルターと、
前記検出電圧と基準電圧との差に基づくバイアス電圧を、前記波形整形回路の入力ノードに出力する差動増幅器と、を備え、
前記差動増幅器のユニティゲイン周波数は、前記ローパスフィルターのカットオフ周波数より小さい、
回路装置。
【請求項2】
前記差動増幅器のユニティゲイン周波数は、前記ローパスフィルターのカットオフ周波数の半分以下である、
請求項1に記載の回路装置。
【請求項3】
前記差動増幅器のユニティゲイン周波数は、前記ローパスフィルターのカットオフ周波数の1/10以下である、
請求項1または請求項2に記載の回路装置。
【請求項4】
レギュレーター電圧を分圧して前記基準電圧を生成する抵抗分圧回路をさらに含む、
請求項1または請求項2に記載の回路装置。
【請求項5】
前記抵抗分圧回路は、直列接続された複数の抵抗素子と、前記複数の抵抗素子の間の各ノードのいずれかを選択して前記基準電圧を出力するスイッチ回路と、を含む、
請求項4に記載の回路装置。
【請求項6】
前記波形整形回路は、前記発振信号が入力される第1インバーターと、前記第1インバーターの出力信号を反転させて前記クロック信号を生成する第2インバーターと、を含み、
前記基準電圧は、前記第1インバーターの出力信号を平滑化することで生成される、
請求項1または請求項2に記載の回路装置。
【請求項7】
前記発振回路と前記波形整形回路との間にローパスフィルターを有しない、
請求項1または請求項2に記載の回路装置。
【請求項8】
請求項1に記載の回路装置と、
振動子と、を含み、
前記発振回路は前記振動子を発振させて前記発振信号を生成する、
発振器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路装置および発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、クロック信号のデューティー比を調整するための技術が知られている。例えば、特許文献1においては、入力クロックの立ち上り及び立ち下がりがローパスフィルターでなめらかにされ、このクロック信号がインバーターで反転されて反転クロックとされる。また、反転クロックのDCレベルが演算増幅器の+入力に供給される。さらに、反転クロックがインバーターで反転され、積分されたDCレベルが演算増幅器の-入力に供給される。演算増幅器はこれらの差分値を上記クロック信号に加えてバイアス補正してインバーターに供給する。この結果、論理値判断タイミングが補正され、デューティー比が調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5-252007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術においては、入力クロックの立ち上り及び立ち下がりを滑らかにするローパスフィルターが用いられている。しかし、当該ローパスフィルターは、サーマルノイズ(ノイズフロア)を上昇させてしまう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための回路装置は、発振信号を生成する発振回路と、前記発振信号を矩形波のクロック信号に整形する波形整形回路と、前記クロック信号を平滑化して前記クロック信号のデューティーに対応する検出電圧を生成するローパスフィルターと、前記検出電圧と基準電圧との差に基づくバイアス電圧を、前記波形整形回路の入力ノードに出力する差動増幅器と、を備え、前記差動増幅器のユニティゲイン周波数は、前記ローパスフィルターのカットオフ周波数より小さい。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1実施形態にかかる発振器の機能ブロック図。
図2】波形変換回路の回路図。
図3】発振信号と閾値とバイアス電圧とクロック信号との関係を示す図。
図4】ローパスフィルターのゲインの周波数特性を示す図。
図5】ローパスフィルターの位相の周波数特性を示す図。
図6】差動増幅器のゲインの周波数特性を示す図。
図7】差動増幅器の位相の周波数特性を示す図。
図8】第2実施形態にかかる波形変換回路の回路図。
図9】第3実施形態にかかる波形変換回路の回路図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は特許請求の範囲に記載された本発明の一例であり、発明の実施形態は以下に示す実施形態に限定されない。また以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0008】
1.第1実施形態
1-1.発振器の構成
図1は、第1実施形態にかかる発振器1の機能ブロック図である。本実施形態に係る発振器1は、回路装置2、振動子3を備えており、図示しないパッケージおよびリッドを備えている。回路装置2および振動子3は、パッケージおよびリッドによって形成される空間に収容される。本実施形態における振動子3は、基板材料として水晶を用いた水晶振動子であり、例えば、ATカット水晶振動子や音叉型水晶振動子等である。振動子3は、SAW(Surface Acoustic Wave)共振子やMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)振動子であってもよい。また、振動子3の基板材料としては、水晶の他、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム等の圧電単結晶や、ジルコン酸チタン酸鉛等の圧電セラミックス等の圧電材料、又はシリコン半導体材料等を用いることができる。振動子3の励振手段としては、圧電効果によるものを用いてもよいし、クーロン力による静電駆動を用いてもよい。また、本実施形態では、回路装置2は1チップの集積回路(IC:Integrated Circuit)で実現されている。ただし、回路装置2は、少なくとも一部がディスクリート部品で構成されていてもよい。
【0009】
回路装置2は、外部接続端子として、VDD端子、VSS端子、OUT端子、VC端子、XI端子及びXO端子を有している。VDD端子、VSS端子、OUT端子及びVC端子は、図2に示した発振器1の複数の外部端子であるT1端子、T2端子、T3端子及びT4端子とそれぞれ電気的に接続されている。XI端子は振動子3の一端と電気的に接続され、XO端子は振動子3の他端と電気的に接続される。
【0010】
本実施形態では、回路装置2は、発振回路10、出力回路20、温度センサー30、温度補償回路32、周波数制御回路34、ロジック回路36、電源回路40、記憶回路50を含む。なお、回路装置2は、これらの要素の一部を省略又は変更し、あるいは他の要素を追加した構成としてもよい。
【0011】
電源回路40は、T1端子及びVDD端子を介して外部から供給される電源電圧に基づいて各種の一定電圧を生成するレギュレーターを備える。各種の一定電圧は、各回路に供給される。
【0012】
発振回路10は、XI端子及びXO端子と電気的に接続され、振動子3を発振させて発振信号OSCOを生成する。具体的には、発振回路10は、振動子3の出力信号を増幅して振動子3にフィードバックすることにより、振動子3を発振させる回路である。
【0013】
温度センサー30は、回路装置2の温度を検出し、温度に応じた電圧の温度信号を出力するセンサーであり、例えば、バンドギャップリファレンス回路の温度特性を利用した回路等で実現される。
【0014】
温度補償回路32は、温度センサー30から出力される温度信号と、振動子3の周波数温度特性に応じた温度補償データとに基づいて、発振回路10から出力される発振信号OSCOの周波数温度特性を補正するための温度補償電圧Vcompを生成し、発振回路10に供給する。温度補償データは、ロジック回路36から温度補償回路32に供給される。
【0015】
周波数制御回路34には、T4端子から入力される周波数制御信号がVC端子を介して供給される。そして、周波数制御回路34は、周波数制御信号の電圧レベルに応じて、発振回路10の発振周波数を制御するための周波数制御電圧Vafcを生成し、発振回路10に供給する。
【0016】
温度補償電圧Vcompにより、発振回路10が出力する発振信号OSCOは、所定の温度範囲に含まれる任意の温度において周波数制御電圧Vafcに応じたほぼ一定の周波数となる。発振信号OSCOは、出力回路20に入力される。
【0017】
本実施形態では、出力回路20は、波形変換回路21、分周回路22、プリバッファー23、出力バッファー24、プリバッファー25及び出力バッファー26を含む。波形変換回路21は、発振回路10から出力される発振信号OSCOに基づいて矩形波のクロック信号CK1を生成し、出力する。
【0018】
分周回路22は、波形変換回路21から出力されるクロック信号CK1を、分周比データに応じた分周比で分周したクロック信号CK2を出力する。分周比データは、ロジック回路36から分周回路22に供給される。なお、分周回路22は、分周比が1の場合は、波形変換回路21から出力されるクロック信号CK1をバッファリングしたクロック信号CK2を出力する。分周回路22から出力されるクロック信号CK2は、プリバッファー23及びプリバッファー25に共通に入力される。
【0019】
プリバッファー23は、分周回路22から出力されるクロック信号CK2をバッファリングしたクロック信号CK3を出力する。プリバッファー23は、出力バッファー24の入力電圧レベルに整合させた電圧レベルのクロック信号CK3を出力するレベルシフターとしても機能する。出力バッファー24は、プリバッファー23から出力されるクロック信号CK3をバッファリングしてCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)出力波形のクロック信号を出力する。
【0020】
プリバッファー25は、分周回路22から出力されるクロック信号CK2をバッファリングしたクロック信号CK4を出力する。出力バッファー26は、プリバッファー25から出力されるクロック信号CK4をクリップドサイン波形のクロック信号に変換して出力する。
【0021】
本実施形態では、出力バッファー24の出力ノード、出力バッファー26の出力ノードのそれぞれは、図示しないスイッチ回路を介してOUT端子に電気的に接続されている。ロジック回路36は、これらのスイッチを制御し、出力バッファー24の出力ノードと、出力バッファー26の出力ノードと、のいずれか一方をOUT端子に電気的に接続させる。
【0022】
出力バッファー24の出力ノードのみがOUT端子に電気的に接続された状態においては、出力バッファー24から出力されるCMOS出力波形のクロック信号が、OUT端子及びT3端子を介して、クロック信号CKOとして発振器1の外部に出力される。また、出力バッファー26の出力ノードのみがOUT端子に電気的に接続された状態においては、出力バッファー26から出力されるクリップドサイン波形のクロック信号が、OUT端子及びT3端子を介して、クロック信号CKOとして発振器1の外部に出力される。
【0023】
ロジック回路36は、各回路の動作を制御する。また、ロジック回路36は、回路装置2の端子に入力される制御信号に基づいて、発振器1あるいは回路装置2のモードを、各種の動作モードに設定可能である。動作モードには通常動作モードと外部通信モードが含まれる。外部通信モードにおいてロジック回路36は、端子T4を介して外部機器と通信し、通信によって取得した各種データを記憶回路50に書き込むことができる。なお、通信は種々の規格で実施されてよく、例えば、I2C(Inter-Integrated Circuit)、SPI(Serial Peripheral Interface)等の規格を用いることができる。
【0024】
通常動作モードにおいてロジック回路36は、図示しないスイッチを制御し、出力バッファー24,26の出力のいずれか一方の出力信号をクロック信号CKOとして、OUT端子から出力させる。この結果、発振器1のT3端子からクロック信号CKOが出力される。
【0025】
記憶回路50は、各種の情報を記憶する回路であり、例えば、レジスターと不揮発性メモリー等を含む構成とすることができる。不揮発性メモリーは、例えば、MONOS(Metal Oxide Nitride Oxide Silicon)型メモリーやEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)等で構成可能である。発振器1の製造工程において、不揮発性メモリーに、温度補償データ、分周比データ、出力を選択するスイッチの制御データ等の各種の情報が記憶される。そして、発振器1に電源が投入されると、不揮発性メモリーに記憶されている各種の情報はレジスターに転送され、レジスターに保存された各種の情報がロジック回路36を介して各回路に供給される。
【0026】
1-2.波形変換回路の構成
以上のような発振器1は、発振回路10から出力されたサイン波状の発振信号を、波形変換回路21が備える波形整形回路21aによって矩形波に整形する。発振器1は整形された矩形波に基づいてクロック信号CKOを生成し、出力する。図2は、本実施形態にかかる波形変換回路21の回路図である。図2に示す波形変換回路21は、抵抗素子R1~抵抗素子R6と、P型トランジスターTp1,Tp2と、N型トランジスターTn1,Tn2と、容量素子C1,C2と、差動増幅器A1と、波形整形回路21aとを備える。波形整形回路21aは、第1インバーターIn1および第2インバーターIn2を備える。
【0027】
波形変換回路21は、電源回路40によって生成されたレギュレーター電圧が供給される電源ノードVREGを備えている。電源ノードVREGと低電位ノードGNDとの間には、電源ノードVREGから低電位ノードGNDに向けて並ぶように抵抗素子R1,R2が直列に接続されている。抵抗素子R1,R2の間のノードN1は、発振回路10の出力に対して電気的に接続される。本実施形態において、抵抗素子R1,R2の抵抗値は同一であり、低電位ノードはグラウンドである。従って、抵抗素子R1,R2は、ノードN1の電圧を電源ノードVREGにおける電圧の1/2にバイアスする抵抗分圧回路として機能する。
【0028】
さらに、電源ノードVREGと低電位ノードGNDとの間には、電源ノードVREGから低電位ノードGNDに向けて並ぶようにP型トランジスターTp1,N型トランジスターTn1が直列に接続され、第1インバーターIn1を構成している。すなわち、P型トランジスターTp1のソースは電源ノードVREG、ドレインはN型トランジスターTn1のドレインに接続される。P型トランジスターTp1のドレインおよびN型トランジスターTn1のドレインが接続されるノードをノードN2と呼ぶ。N型トランジスターTn1のソースは低電位ノードGNDに接続される。また、P型トランジスターTp1のゲートとN型トランジスターTn1のゲートは電気的に接続される。発振回路10の出力に対して接続されるノードN1は、P型トランジスターTp1のゲートとN型トランジスターTn1のゲートに電気的に接続され、かつ、ノードN1にも電気的に接続される。
【0029】
さらに、電源ノードVREGと低電位ノードGNDとの間には、電源ノードVREGから低電位ノードGNDに向けて並ぶようにP型トランジスターTp2,N型トランジスターTn2が直列に接続され、第2インバーターIn2を構成している。すなわち、P型トランジスターTp2のソースは電源ノードVREG、ドレインはN型トランジスターTn2のドレインに接続される。P型トランジスターTp2のドレインおよびN型トランジスターTn2のドレインが接続されるノードをノードN3と呼ぶ。ノードN3は、波形変換回路21の出力ノードである。N型トランジスターTn2のソースは低電位ノードGNDに接続される。また、P型トランジスターTp2のゲートとN型トランジスターTn2のゲートは電気的に接続され、かつ、ノードN2にも電気的に接続される。
【0030】
ノードN3と低電位ノードGNDとの間には、ノードN3から低電位ノードGNDに向けて並ぶように抵抗素子R3,容量素子C1が直列に接続され、ローパスフィルターLPF1を構成している。抵抗素子R3,容量素子C1の間のノードN4は、差動増幅器A1の反転入力端子に対して電気的に接続される。
【0031】
さらに、電源ノードVREGと低電位ノードGNDとの間には、電源ノードVREGから低電位ノードGNDに向けて並ぶように抵抗素子R4,R5が直列に接続されている。抵抗素子R4,R5の間のノードN5は、差動増幅器A1の非反転入力端子に対して電気的に接続される。従って、抵抗素子R4,R5は、電源ノードVREGに印加されるレギュレーター電圧を分圧して基準電圧を生成する抵抗分圧回路RD1を構成する。なお、本実施形態において、抵抗素子R4,R5の抵抗値は同一である。従って、ノードN5の電圧は、電源ノードVREGにおける電圧の1/2にバイアスされる。
【0032】
差動増幅器A1は、電源ノードVREGから電源の供給を受け、所定のゲインで差動増幅を行う回路である。差動増幅器A1の出力ノードであるノードN6には、抵抗素子R6の一端と、容量素子C2の一端とが電気的に接続される。抵抗素子R6の他端はノードN1に電気的に接続され、容量素子C2の他端は低電位ノードGNDに電気的に接続される。
【0033】
以上の構成にかかる波形変換回路21において、発振回路10から出力された発振信号OSCOが入力されるノードN1には、抵抗素子R1,R2によって所定のバイアスがかけられている。ノードN1とノードN3との間には第1インバーターIn1および第2インバーターIn2によって構成される波形整形回路21aが存在する。これらのインバーターはCMOSインバーターであり、入力信号が閾値以上である場合にローレベルを出力し、入力信号が閾値より小さい場合にハイレベルを出力する。このため、第1インバーターIn1および第2インバーターIn2は、入力信号を反転させて出力するとともに、波形を矩形波に整形する回路として機能する。
【0034】
波形整形回路21aは、第1インバーターIn1および第2インバーターIn2によって、発振信号OSCOに対して2段階の整形を行う。従って、発振信号OSCOが2回反転されることとなり、発振信号OSCOが矩形波のクロック信号CKOに変換されることになる。
【0035】
以上のように、本実施形態に係る波形整形回路21aは、インバーターによって波形を矩形波に整形する。インバーターは、入力される信号と閾値との比較によって出力レベルが変化する回路である。従って、ノードN1のバイアス電圧が変化すると、インバーターから出力される信号がハイレベルである期間が変化し、発振信号の周期(ハイレベルである期間とローレベルである期間との和)に対してハイレベルである期間が占める割合、すなわち、デューティーが変化する。
【0036】
本実施形態においては、抵抗素子R1,R2によってノードN1に所定のバイアスがかけられており、当該バイアスは、所望のデューティーになるように設計される。本実施形態において、所望のデューティーは50%(ハイレベルの期間=ローレベルの期間)であり、電源ノードVREGの電圧の1/2の電圧に対して発振信号OSCOが印加された場合に、デューティーが50%になるように設計されている。しかし、第1インバーターIn1および第2インバーターIn2が備える各トランジスターの閾値に製造ばらつきがある場合や、温度によって変動した場合には、抵抗素子R1,R2によって得られるノードN1のバイアスが所望のデューティーを得るために不適切なバイアスになり得る。
【0037】
そこで、本実施形態においては、ノードN3の出力を、ノードN1にフィードバックしてバイアス電圧を調整するための構成が設けられている。具体的には、ノードN3にはローパスフィルターLPF1が接続されている。ローパスフィルターLPF1は、クロック信号CK1を平滑化する回路として機能する。本実施形態において、クロック信号CK1の周波数は、例えば、数十~数百MHzであり、ローパスフィルターLPF1のカットオフ周波数fcは、例えば、数MHzである。このため、ローパスフィルターLPF1は、クロック信号CK1をほぼ直流化した電圧をノードN4に出力するフィルターとして機能する。また、ローパスフィルターLPF1の出力であるノードN4の電圧は、クロック信号CK1がハイレベルである期間に依存する電圧値となる。このため、ローパスフィルターLPF1からノードN4に出力される電圧は、クロック信号CK1のデューティーに対応する電圧である。ここでは、ノードN4に出力される電圧を検出電圧と呼ぶ。
【0038】
差動増幅器A1は、反転入力端子の電圧と非反転入力端子の電圧との差を増幅して出力する回路である。本実施形態において、非反転入力端子に対して電気的に接続されるノードN5は、電源ノードVREGに印加されるレギュレーター電圧が抵抗分圧回路RD1によって分圧された一定の電圧である。このため、当該ノードN5における一定の電圧を基準電圧と呼ぶと、差動増幅器A1は、検出電圧と基準電圧との差に基づくバイアス電圧を、抵抗素子R6を介して波形整形回路21aの入力ノードN1に出力する回路として機能する。
【0039】
以上の構成により、本実施形態においては、ノードN3におけるクロック信号CK1のデューティーに応じてノードN1に印加されるバイアス電圧が調整される。例えば、図3に示す例のように、第1インバーターIn1および第2インバーターIn2における閾値ThがノードN1のバイアス電圧Vbsより小さい場合、発振信号OSCOの電圧が閾値より大きい期間Tonが閾値より小さい期間Toffより長くなる。この結果、クロック信号CK1において、ハイレベルである期間は50%より長くなる。
【0040】
ローパスフィルターLPF1は、ハイレベルの期間が長いほど大きい電圧を出力するため、ノードN4に出力される検出電圧は、ノードN5の基準電圧より大きくなる。このため、差動増幅器A1においては、非反転入力端子に入力される基準電圧より反転入力端子に入力される検出電圧の方が大きくなる。この結果、差動増幅器A1においては、ノードN6の電圧を下げるように増幅が行われ、ノードN1のバイアス電圧Vbsが小さくなり、第1インバーターIn1および第2インバーターIn2における閾値Thに近づく。
【0041】
本実施形態においては、以上のようなフィードバックにより、デューティーを所望の値に調整するように構成されている。この構成においては、図2に示すように、発振回路10と波形整形回路21aとの間に、特許文献1のようなローパスフィルターが存在しない。発振回路10の出力と第1インバーターIn1との間に、特許文献1のようなローパスフィルターが存在すると、波形整形回路21aに入力される信号のサーマルノイズ(ノイズフロア)を上昇させてしまう。しかし、本実施形態においては、このようなローパスフィルターが用いられていないため、波形整形回路21aに入力される信号のサーマルノイズ(ノイズフロア)を上昇させることはない。
【0042】
一方、本実施形態のように差動増幅器A1を備えるフィードバックループを有する回路においては、異常発振に対する対策が必要になる。図2に示す実施形態においては、フィードバックの過程で主にローパスフィルターLPF1および差動増幅器A1によって位相の遅延が発生する。このため、フィードバックの過程で位相が180°程度ずれ、かつ、有意なゲインがある周波数が存在すると、発振してしまう可能性がある。
【0043】
図4は、ローパスフィルターLPF1のゲインの周波数特性、図5はローパスフィルターLPF1の位相の周波数特性、図6は、差動増幅器A1のゲインの周波数特性、図7は差動増幅器A1の位相の周波数特性を示すグラフである。なお、これらのグラフは、周波数特性を定性的に説明するためのグラフである。むろん、周波数特性は、素子の抵抗値や容量値に応じて変化するため、素子の組合せに応じてグラフ上の特性は変動し得る。
【0044】
ローパスフィルターLPF1においては、図4に示す例のように周波数が小さい帯域においてゲインは0dBであるが、周波数が大きくなるとゲインが低下し、ゲインが-3dBとなるカットオフ周波数fcよりも周波数が大きくなると、顕著にゲインが低下していく。また、ローパスフィルターLPF1においては、図5に示す例のように周波数が小さい帯域において位相の遅れはないが、周波数が大きくなるにつれて徐々に位相の遅れが発生していく。そして、カットオフ周波数fcにおいて典型的には45°程度位相が遅れ、さらに周波数が大きくなると、最終的には90°の位相遅れが発生し得る。
【0045】
一方、差動増幅器A1においては、図6において実線で示す例のように、典型的には周波数が1HzにおけるオープンループDCゲインが最大値であり、周波数が小さい帯域においてゲインはほぼ最大値であるが、周波数が大きくなるとゲインが低下していく。また、差動増幅器A1においては、図7において実線で示す例のように周波数の増加とともに位相が遅れていき、最終的には90°の位相遅れが発生し得る。
【0046】
ローパスフィルターLPF1と差動増幅器A1は、典型的には以上のような周波数特性を有するため、フィードバックループにローパスフィルターLPF1と差動増幅器A1が存在すると、特定の周波数帯域において位相遅れが180°程度になり得る。このため、当該特定の周波数帯域において差動増幅器A1のゲインが0dBより大きいと、異常発振の原因となる。
【0047】
そこで、本実施形態において差動増幅器A1のユニティゲイン周波数fuは、ローパスフィルターLPF1のカットオフ周波数fcより小さくなるように構成されている。ここで、ユニティゲイン周波数fuは、図6に示すように、ゲインが0dBとなる周波数である。従って、ユニティゲイン周波数fuより大きい周波数において異常発振は発生しない。図6および図7においては、ユニティゲイン周波数fu1がローパスフィルターLPF1のカットオフ周波数fcより小さい差動増幅器A1の周波数特性の例を破線によって示している。
【0048】
カットオフ周波数fcにおけるローパスフィルターLPF1の遅延の遅れは、典型的には、図5に示されるように45°程度である。従って、図6において破線で示す周波数特性の差動増幅器A1を用いれば、ローパスフィルターLPF1と差動増幅器A1の位相の遅れが合わせて180°となる前に差動増幅器A1ゲインが0dBに達する。このため、差動増幅器A1のユニティゲイン周波数fuがローパスフィルターLPF1のカットオフ周波数fcより小さくなるように構成された本実施形態においては、異常発振が発生しない。
【0049】
差動増幅器A1のユニティゲイン周波数fuは、ローパスフィルターLPF1のカットオフ周波数fcより小さければ良いが、ユニティゲイン周波数fuがカットオフ周波数fcとの差が大きいほど異常発振の可能性を低減させることができる。このため、差動増幅器A1のユニティゲイン周波数fuを、ローパスフィルターLPF1のカットオフ周波数fcの半分以下とすれば、より確実に異常発振の可能性を低減させることができる。
【0050】
さらに、差動増幅器A1のユニティゲイン周波数fuを、ローパスフィルターLPF1のカットオフ周波数fcの1/10以下とすれば、さらに確実に異常発振の可能性を低減させることができる。このような構成は、例えば、オープンループDCゲインが60dB以上の差動増幅器A1を用いて、抵抗素子R1~R6を50kΩ、容量素子C1を1pF,容量素子C2を2pF、電源ノードVREGの電圧を1.5V程度、クロック信号CK1の数十~数百MHzとすることによって実現可能である。この構成において、例えば、ローパスフィルターLPF1のカットオフ周波数fcは3MHz、ユニティゲイン周波数fu1は300kHzとなる。このため、異常発振がほぼ発生しないように回路を構成することができる。
【0051】
なお、差動増幅器A1のオープンループDCゲインは、第1インバーターIn1および第2インバーターIn2の閾値変動に応じたバイアス電圧の調整を実施できる程度の値であれば良く、この範囲で適宜調整可能である。そして、閾値変動に応じたバイアス電圧の調整を実施できるゲインを用いれば、第1インバーターIn1および第2インバーターIn2の閾値が変動した場合でも、デューティーの変動が±1%以下になることが出願人によって確認されている。
【0052】
また、本実施形態によれば、デューティーを所望の値に調整可能である。そして、所望のデューティーを50%とした場合、クロック信号CK1の波形が対称な矩形波に近づくため、クロック信号CK1に含まれる高調波成分のうち、偶数次の高調波成分を非常に効果的に低減することができる。
【0053】
さらに、本実施形態によれば、第1インバーターIn1および第2インバーターIn2の閾値変動に応じたクロック信号CK1のデューティーの変動を抑制することができる。従って、温度変化によって第1インバーターIn1および第2インバーターIn2の閾値変動が生じたとしても、クロック信号CK1が所望のデューディーとなるように調整することができる。このため、広い温度範囲、例えば、-40℃~125℃の範囲で、異常発振や不要スプリアスが発生せず、所望のデューティーのクロック信号CK1を出力させることができる。
【0054】
2.第2実施形態
上述の第1実施形態において、抵抗分圧回路RD1は、抵抗素子R4,R5の抵抗比に応じた分圧抵抗をノードN5に印加する構成であるが、他の構成であっても良い。例えば、差動増幅器A1の非反転入力端子に印加される基準電圧の値を調整可能であっても良い。
【0055】
図8は、第1実施形態における抵抗分圧回路RD1を抵抗分圧回路RD2に置換した第2実施形態にかかる波形変換回路210の回路図である。図8において、図2と同様の構成は同様の符号で示している。波形変換回路210が備える抵抗分圧回路RD2においては、抵抗分圧回路RD1と同様に、電源ノードVREGと低電位ノードGNDとの間に、抵抗素子R4,R5が接続されている。すなわち、抵抗素子R4の一端は電源ノードVREGに電気的に接続され、抵抗素子R5の一端は低電位ノードGNDに電気的に接続される。
【0056】
抵抗分圧回路RD2においては、抵抗素子R4,R5の間にスイッチ回路SW1が設けられている。スイッチ回路SW1は、直列接続された複数の抵抗素子と、複数の抵抗素子の間の各ノードのいずれかを選択して基準電圧を出力する回路である。具体的には、スイッチ回路SW1は、複数の抵抗素子Rs1,Rs2,Rs3,,,Rsn(nは自然数。但し、Rsnは図8に図示されていない)を備え、これらの抵抗素子Rs1~Rsnは直列接続されている。抵抗素子Rs1の一端は抵抗素子R4に電気的に接続され、抵抗素子Rsnの一端は抵抗素子R5に電気的に接続される。
【0057】
抵抗素子Rs1~Rsnの端部のノードにはスイッチSs1~Ssnの一端が電気的に接続されており、スイッチSs1~Ssnの他端はノードN5に電気的に接続される。例えば、抵抗素子R4と抵抗素子Rs1との間のノードNs1はスイッチSs1の一端に電気的に接続され、抵抗素子Rs1と抵抗素子Rs2との間のノードNs2はスイッチSs2の一端に電気的に接続される。
【0058】
スイッチ回路SW1において、各スイッチSs1~Ssnのオン、オフはロジック回路36に制御される。すなわち、上述の外部通信モードにおいて、オンにすべきスイッチを示すスイッチ制御データが外部装置から記憶回路50に記憶される。スイッチ制御データが記憶回路50に記憶された状態で通常動作モードの動作が開始されると、ロジック回路36は当該スイッチ制御データが示すスイッチをオンとし、他のスイッチをオフとする。この構成によれば、ユーザーは外部装置を用いて抵抗分圧回路RD2における分圧比を調整することができる。
【0059】
図8においては、スイッチSs3がオンになった状態を示している。この状態であれば、ノードN5の電圧は、抵抗素子R4,Rs1,Rs2の抵抗値の和と、抵抗素子Rs3,,,Rsn+R5の抵抗値の和と、の比によってレギュレーター電圧が分圧された値となる。なお、図8に示す例においても抵抗素子R4,R5の抵抗値は同一である。また、抵抗素子Rs1~Rsnの抵抗値は抵抗素子R4,R5の抵抗値よりも小さく、例えば、一桁または二桁以上小さい値である。このため、スイッチ制御データによってオンとなるスイッチSs1~Ssnを選択することで、ユーザーは、分圧比を微調整することが可能である。
【0060】
この構成によれば、ノードN5の電圧である基準電圧を電源ノードVREGの電圧の1/2よりも小さく、または大きくなるように微調整することができる。所望のデューティーは一般に50%であるが、発振器1の出力端子であるT3端子に接続された回路がデューティーを変化させる特性を有している場合がある。例えば、T3端子に接続された回路に50%のデューティーのクロック信号CKOが入力された場合に、ハイレベルの期間が1%長くなり、ローレベルの期間が1%短くなる等の特性を有することが想定される。
【0061】
この場合、T3端子に接続された回路に対して50%のデューティーのクロック信号CKOが入力されても、当該回路内でハイレベルの期間が51%、ローレベルの期間が49%になってしまう。このような場合に図8に示す回路において、分圧比を微調整し、クロック信号CKOのデューティーを1%程度変化させ、例えば、ハイレベルの期間が49%、ローレベルの期間が51%程度になるように設定すれば、T3端子に接続された回路の特性によって当該回路内のデューティーが変化し、50%に近づくことになる。この結果、発振器1のT3端子に接続された回路において、所望のデューティーになるように調整することができる。
【0062】
図8に示す第2実施形態においても、発振回路10と波形整形回路21aとの間に、特許文献1のようなローパスフィルターが存在しない。従って、当該ローパスフィルターによるサーマルノイズ(ノイズフロア)の上昇を誘発することはない。また、第2実施形態においても差動増幅器A1のユニティゲイン周波数fuが、ローパスフィルターLPF1のカットオフ周波数fcより小さくなるように構成される。このため、ノードN3とノードN1との間のフィードバックに起因する異常発振は発生しない。さらに、差動増幅器A1のユニティゲイン周波数fuは、ローパスフィルターLPF1のカットオフ周波数fcの半分以下であってもよいし、1/10以下であってもよい。これらの構成により、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0063】
3.第3実施形態
さらに、基準電圧は、レギュレーター電圧を分圧した電圧である構成に限定されない。図9は、第1インバーターIn1の出力信号に基づいて基準電圧が生成される構成を有する波形変換回路211の回路図である。図9において、図2と同様の構成は同様の符号で示している。波形変換回路211においては、抵抗分圧回路RD1を備えておらず、代わりにローパスフィルターLPF2を備えている。
【0064】
ローパスフィルターLPF2は、抵抗素子R7と容量素子C3とを備えている。抵抗素子R7と容量素子C3は、ノードN2と低電位ノードGNDとの間において、ノードN2から低電位ノードGNDに向けて並ぶように直列に接続される。抵抗素子R7,容量素子C3の間のノードN5は、差動増幅器A1の非反転入力端子に対して電気的に接続される。ローパスフィルターLPF2において、抵抗素子R7の抵抗値は、例えば、抵抗素子R3の抵抗値と同一とすることができる。また、容量素子C3の容量値は、例えば、容量素子C1の容量値と同一とすることができる。
【0065】
以上の構成によれば、差動増幅器A1の非反転入力端子であるノードN5に印加される基準電圧は、第1インバーターIn1の出力信号をローパスフィルターLPF2で平滑化した電圧となる。第1インバーターIn1の出力ノードであるノードN2は、第2インバーターIn2の入力ノードである。そして、ローパスフィルターLPF2にはノードN2の信号が入力され、ローパスフィルターLPF1には第2インバーターIn2の出力ノードであるノードN3の信号が入力される。
【0066】
従って、ローパスフィルターLPF2とローパスフィルターLPF1とのそれぞれには、互いに逆相のクロック信号が入力される。このため、ローパスフィルターLPF2に入力されるノードN2のクロック信号においてハイレベルである期間がローレベルである期間より長ければ、ローパスフィルターLPF1に入力されるノードN3のクロック信号においてローレベルである期間がハイレベルである期間より長くなる。すなわち、ノードN2のクロック信号のデューティーが小さくなれば、ノードN3のクロック信号のデューティーが大きくなる。また、ノードN2のクロック信号のデューティーが大きくなれば、ノードN3のクロック信号のデューティーが小さくなる。
【0067】
ローパスフィルターLPF2,LPF1は、入力されたクロック信号を平滑化する。従って、ローパスフィルターLPF2は、ノードN2のクロック信号のデューティーに対応する電圧を出力し、ローパスフィルターLPF3は、ノードN3のクロック信号のデューティーに対応する電圧を出力する。このため、ローパスフィルターLPF1の出力電圧を検出電圧、ローパスフィルターLPF2の出力電圧を基準電圧として、差動増幅器A1に入力すれば、差動増幅器A1から両電圧の差異を解消するバイアス電圧を出力させることができる。
【0068】
図9に示す第2実施形態においても、発振回路10と波形整形回路211aとの間に、特許文献1のようなローパスフィルターが存在しない。従って、当該ローパスフィルターによるサーマルノイズ(ノイズフロア)の上昇を誘発することはない。また、第3実施形態においても差動増幅器A1のユニティゲイン周波数fuが、ローパスフィルターLPF1のカットオフ周波数fcより小さくなるように構成される。このため、ノードN3とノードN1との間のフィードバックに起因する異常発振は発生しない。さらに、差動増幅器A1のユニティゲイン周波数fuは、ローパスフィルターLPF1のカットオフ周波数fcの半分以下であってもよいし、1/10以下であってもよい。これらの構成により、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0069】
4.他の実施形態
上述の実施形態は本発明を実施するための例であり、他にも種々の実施形態を採用可能である。例えば、温度センサー30および温度補償回路32や周波数制御回路34が省略された構成であっても良い。また、出力回路20においては、プリバッファー23,25および出力バッファー24,26を備え、CMOS出力波形とクリップドサイン波形とを選択可能であるが、一方のみ出力可能な構成であっても良いし、他の波形の出力が可能であっても良い。さらに、発振器1の適用対象は限定されず種々の対象、例えば、各種の電子機器、車両の電装品等に使用可能である。
【0070】
発振回路は、発振信号を生成することができればよく、振動子の出力信号を増幅して振動子にフィードバックすることができればよい。その方式は限定されず、例えば、ピアース発振回路、インバーター型発振回路、コルピッツ発振回路、ハートレー発振回路などの種々のタイプの発振回路であってよい。波形整形回路は、発振信号を矩形波に整形することができればよく、その方式は限定されない。例えば、コンパレーターを用いた回路であっても良い。
【0071】
ローパスフィルターは、クロック信号を平滑化してクロック信号のデューティーに対応する検出電圧を生成することができればよい。従って、ローパスフィルターを構成する素子は、上述のような素子に限定されず、種々の素子の組合せによってローパスフィルターが実現されて良い。
【0072】
差動増幅器は、検出電圧と基準電圧との差に基づくバイアス電圧を、波形整形回路の入力ノードに出力する回路であり、差動増幅器のユニティゲイン周波数が、ローパスフィルターのカットオフ周波数より小さい構成であれば良い。差動増幅器を構成する素子も、種々の組合せによって実現されて良い。
【符号の説明】
【0073】
1…発振器、2…回路装置、3…振動子、10…発振回路、20…出力回路、21…波形変換回路、21a…波形整形回路、22…分周回路、23…プリバッファー、24…出力バッファー、25…プリバッファー、26…出力バッファー、30…温度センサー、32…温度補償回路、34…周波数制御回路、36…ロジック回路、40…電源回路、50…記憶回路、210…波形変換回路、211…波形変換回路、A1…差動増幅器、C1~C3…容量素子、LPF1,LPF2,LPF3…ローパスフィルター、R1~R7…抵抗素子、RD1,RD2…抵抗分圧回路、Rs1~Rsn…抵抗素子、SW1…スイッチ回路、Ss1~Ssn…スイッチ、Tn1,Tn2…N型トランジスター、Tp1,Tp2…P型トランジスター
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
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図9