(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129364
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】風向調整装置
(51)【国際特許分類】
F24F 13/15 20060101AFI20240919BHJP
B60H 1/34 20060101ALI20240919BHJP
F24F 13/02 20060101ALI20240919BHJP
【FI】
F24F13/15 H
B60H1/34 611B
F24F13/02 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038516
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】000229955
【氏名又は名称】日本プラスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 慎也
【テーマコード(参考)】
3L080
3L081
3L211
【Fターム(参考)】
3L080AA03
3L081AA02
3L081AB02
3L081FA03
3L211BA55
3L211DA14
(57)【要約】
【課題】配風性能を確保しつつ省スペースでの配置が可能な風向調整装置を提供する。
【解決手段】風向調整装置1は、通気路5と、通気路5に配置された風向調整部18と、を備える。風向調整部18は、通気路5の通気方向に対して交差する方向に離れた一対のフィン部20を有する。各フィン部20は、上流端部と下流端部とがそれぞれ固定位置で回動可能に支持されるとともに、上流端部と下流端部との間のヒンジ部22で屈曲可能である。一方のフィン部20と他方のフィン部20とは、ヒンジ部22よりも下流側が互いに平行に回動し、ヒンジ部22よりも上流側が互いに異なる角度に回動するように連動される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通気路と、
この通気路に配置された風向調整部と、を備え、
前記風向調整部は、前記通気路の通気方向に対して交差する方向に離れた一対のフィン部を有し、
前記各フィン部は、上流端部と下流端部とがそれぞれ回動可能に支持されるとともに、これら上流端部と下流端部との間のヒンジ部で屈曲可能であり、
一方の前記フィン部と他方の前記フィン部とは、前記ヒンジ部よりも下流側が互いに平行を保って回動し、前記ヒンジ部よりも上流側が互いに異なる角度に回動するように連動される
ことを特徴とする風向調整装置。
【請求項2】
フィン部は、ヒンジ部よりも上流側と下流側との長さを調整する調整部を有する
ことを特徴とする請求項1記載の風向調整装置。
【請求項3】
フィン部は、
上流端部が回動可能に支持された第一上流側フィン部と、
この第一上流側フィン部の下流側に摺動可能に位置する第二上流側フィン部と、
下流端部が回動可能に支持された第一下流側フィン部と、
この第一下流側フィン部の上流側に摺動可能に位置する第二下流側フィン部と、を有し、
前記第二上流側フィン部の下流側と前記第二下流側フィン部の上流側とがヒンジ部を介して連結され、
一方の前記フィン部の前記ヒンジ部と他方の前記フィン部の前記ヒンジ部とが連結され、
調整部は、前記ヒンジ部での前記フィン部の屈曲に応じて、前記第一上流側フィン部に対し前記第二上流側フィン部が摺動し、前記第一下流側フィン部に対し前記第二下流側フィン部が摺動することで長さを調整する
ことを特徴とする請求項2記載の風向調整装置。
【請求項4】
風向調整部は、各フィン部の上流端部及び下流端部がそれぞれ固定位置で回動可能に支持されている
ことを特徴とする請求項1ないし3いずれか一記載の風向調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通気路に配置された風向調整部を備える風向調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車などの車両に用いられる空調装置において、吹き出す風向を調整する風向調整装置がある。風向調整装置は、空調風吹出装置、エアアウトレット、ベンチレータ、レジスタなどとも呼ばれ、例えばインストルメントパネルやセンタコンソール部などの車両の各部に設置されて、冷暖房による快適性能の向上に寄与している。
【0003】
このような風向調整装置において、前後に分割された上下一対のフィンと、これら上下のフィンの間に位置する中央のルーバと、を一体的に連結した風向調整部を備え、ルーバが上下に振られたときに、上下一対のフィンのうち、風向調整部の中心部に対して対角に位置する部分、つまり上側フィンの前側と下側フィンの後側、あるいは上側フィンの後側と下側フィンの前側を連動して回動させることで、省スペースのレイアウトでも外観を損なうことなく、風向の指向性を保つものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-318438号公報 (第6-7頁、
図6-7)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の構成の場合、上側フィンの後側、あるいは下側フィンの後側が通気路内に進出することで気流が遮断されるため、通気抵抗が上がることが懸念され、性能との両立を図るためのさらなる構成が要求される。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、配風性能を確保しつつ省スペースでの配置が可能な風向調整装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の風向調整装置は、通気路と、この通気路に配置された風向調整部と、を備え、前記風向調整部は、前記通気路の通気方向に対して交差する方向に離れた一対のフィン部を有し、前記各フィン部は、上流端部と下流端部とがそれぞれ回動可能に支持されるとともに、これら上流端部と下流端部との間のヒンジ部で屈曲可能であり、一方の前記フィン部と他方の前記フィン部とは、前記ヒンジ部よりも下流側が互いに平行を保って回動し、前記ヒンジ部よりも上流側が互いに異なる角度に回動するように連動されるものである。
【0008】
請求項2記載の風向調整装置は、請求項1記載の風向調整装置において、フィン部は、ヒンジ部よりも上流側と下流側との長さを調整する調整部を有するものである。
【0009】
請求項3記載の風向調整装置は、請求項2記載の風向調整装置において、フィン部は、上流端部が回動可能に支持された第一上流側フィン部と、この第一上流側フィン部の下流側に摺動可能に位置する第二上流側フィン部と、下流端部が回動可能に支持された第一下流側フィン部と、この第一下流側フィン部の上流側に摺動可能に位置する第二下流側フィン部と、を有し、前記第二上流側フィン部の下流側と前記第二下流側フィン部の上流側とがヒンジ部を介して連結され、一方の前記フィン部の前記ヒンジ部と他方の前記フィン部の前記ヒンジ部とが連結され、調整部は、前記ヒンジ部での前記フィン部の屈曲に応じて、前記第一上流側フィン部に対し前記第二上流側フィン部が摺動し、前記第一下流側フィン部に対し前記第二下流側フィン部が摺動することで長さを調整するものである。
【0010】
請求項4記載の風向調整装置は、請求項1ないし3いずれか一記載の風向調整装置において、風向調整部は、各フィン部の上流端部及び下流端部がそれぞれ固定位置で回動可能に支持されているものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の風向調整装置によれば、各フィン部のヒンジ部よりも上流側の角度と、ヒンジ部よりも下流側の角度と、によって、配風性能を確保しつつ、例えばフィン部全体が平行移動する構成と比較して、風向変更時の操作範囲として大きなスペースを必要としない省スペースでの配置が可能となる。
【0012】
請求項2記載の風向調整装置によれば、請求項1記載の風向調整装置の効果に加えて、位置が固定されている上流側端部及び下流側端部とヒンジ部との距離がヒンジ部での屈曲により変化しても調整部による長さ調整によって吸収され、ヒンジ部よりも下流側が互いに平行を保ちつつ、ヒンジ部よりも上流側が互いに異なる角度に回動する構成を容易に実現できる。
【0013】
請求項3記載の風向調整装置によれば、請求項2記載の風向調整装置の効果に加えて、配風性能への影響が少ない調整部を構成しつつ、一対のフィン部を、ヒンジ部の下流側が互いに平行を保ちつつ、ヒンジ部の上流側が互いに異なる角度に回動するように容易に連動させることができる。
【0014】
請求項4記載の風向調整装置によれば、請求項1ないし3いずれか一記載の風向調整装置の効果に加えて、風向調整部により風向を調整しても風向調整部全体としての上流側端部と下流側端部との位置が変わらず、省スペースでの配置が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1の実施の形態の風向調整装置の風向調整部の中立状態を示す断面図である。
【
図2】同上風向調整装置の風向調整部の上振り状態を示す断面図である。
【
図3】同上風向調整装置の通気路内部の斜視図である。
【
図6】本発明の第2の実施の形態の風向調整装置の風向調整部の中立状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の第1の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0017】
図4及び
図5において、1は風向調整装置である。風向調整装置1は、エアアウトレット、ベンチレータ、レジスタなどとも呼ばれ、空調装置などからの風の吹き出し方向を調整するものである。以下、説明をより明確にするために、風向調整装置1は、風が吹き出す側である風下側を前側、正面側または手前側とし、その反対側、つまり風を受け入れる側である風上側を後側、背後側または奥側として、前側から見て左右方向である両側方向または幅方向、及び、上下方向を規定する。本実施の形態において、風向調整装置1は、自動車などの車両用の空調装置に適用される。風向調整装置1は、任意の位置に配置されていてよいが、図面においては、矢印FR側を前側、矢印RR側を後側、矢印L側を左側、矢印R側を右側、矢印U側を上側、矢印D側を下側とするように配置されているものとする。これらの方向は、あくまで一例として図示されるものであって、風向調整装置1の設置位置や設置向きによって適宜変更されるものとする。
【0018】
風向調整装置1は、ケース体3を備える。ケース体3は、ダクトとも呼ばれる。ケース体3は、筒状に形成されている。本実施の形態において、ケース体3は、前後方向に筒状に形成されている。図示される例では、ケース体3は、角筒状に形成されている。ケース体3により、内部に通気路5が囲まれている。ケース体3の中心軸に平行な方向が通気路5の通気方向である。本実施の形態において、通気路5の通気方向は、前後方向であり、後方から前方に向かって通気される。すなわち、通気路5において、後側は通気方向の上流側、前側は通気方向の下流側である。
【0019】
ケース体3は、通気路5の通気方向に所定長を有する。本実施の形態において、ケース体3は、上下方向に扁平であり、左右方向に長手状、つまり横長に形成されている。したがって、風向調整装置1は、横型の薄型に形成されている。ケース体3は、通気路5の中央部、すなわち中心軸を挟んで互いに対向する一対の端壁部6と、これら一対の端壁部6間を連結する一対の側壁部7と、を一体的に有する。一対の端壁部6は、上下方向に互いに対向し、一対の側壁部7は、左右方向に互いに対向する。一対の端壁部6,6と一対の側壁部7,7との後端部により、通気路5に空気すなわち空調風を受け入れる受入口8が囲まれ、一対の端壁部6,6と一対の側壁部7,7との前端部により、通気路5から空調風を排出する吹出口9が囲まれる。つまり、ケース体3の後端部は、通気路5に空調風を受け入れる受入口8であり、ケース体3の前端部は、通気路5から空調風を吹き出す吹出口9となっている。受入口8と吹出口9との間にこれらを連通する通気路5が形成されている。受入口8から吹出口9へと空調風が通過する。受入口8及び吹出口9は、それぞれ横長となっている。なお、ケース体3は、一体的に形成されていてもよいし、複数の部材を組み合わせて形成されていてもよい。
【0020】
また、ケース体3には、吹出口9に向かって徐々に縮小する縮小部11が形成されている。縮小部11は、ケース体3の前端部に形成されている。本実施の形態では、縮小部11は、端壁部6,6が互いに徐々に接近するように傾斜して形成されている。縮小部11により、通気路5の下流端が吹出口9へと徐々に断面積が小さく絞られるように構成されている。
【0021】
ケース体3の縮小部11に対して後側は、受入口8に亘り、断面積が一定または略一定の一般部12となっている。一般部12において、端壁部6,6同士、及び、側壁部7,7同士が、互いに平行または略平行を保っている。
【0022】
ケース体3は、一体的に形成されていてもよいし、複数の部材を組み合わせて形成されていてもよい。本実施の形態では、ケース体3は、ケース体本体部15と、フィニッシャ16と、を有する。ケース体本体部15は、端壁部6,6及び側壁部7,7を有する角筒状であり、フィニッシャ16は、ケース体本体部15の前端部において上下左右方向に面状に拡がり、吹出口9が開口されていて、風向調整装置1の意匠面を構成している。
【0023】
ケース体3の内部、すなわち通気路5には、吹出口9から吹き出される空調風の風向を調整する風向調整部18が配置されている。風向調整部18は、一対のフィン部20を有する。本実施の形態では、フィン部20は、上下一対配置されている。すなわち、フィン部20は、通気路5の通気方向に対して交差または直交する方向に離れている。
【0024】
各フィン部20は、上流端部と下流端部とがそれぞれ通気路5における固定位置で回動可能に支持されるとともに、これら上流端部と下流端部との間のヒンジ部22で屈曲可能となっている。図示される例では、フィン部20は、上流側フィン24と、下流側フィン25と、を有する。
【0025】
図1、
図2及び
図4に示す上流側フィン24は、リアフィンなどとも呼ばれる。上流側フィン24は、左右方向に長手状の板状であって、上流端部すなわち後端部が上下方向に回動可能に支持されている。すなわち、本実施の形態の上流側フィン24は、横フィンである。上流側フィン24の後端部には、上流側支持部27が左右両側に形成されている。上流側支持部27が、上流側支持受け部28に上下方向に回動可能に保持される。上流側支持部27と上流側支持受け部28とは、一方が軸部、他方が穴部または凹部である。本実施の形態では、上流側支持部27が軸部、上流側支持受け部28が丸穴状の穴部である。本実施の形態では、上流側支持受け部28は、ケース体3の側壁部7に対向して通気路5の内側に位置する受け部である板状のスペーサ29に形成されているが、ケース体3の側壁部7に直接形成されていてもよい。図示される例では、上流側支持部27及び上流側支持受け部28は、ケース体3の一般部12に位置する。また、上流側支持部27及び上流側支持受け部28は、ケース体3の端壁部6に近接して位置する。つまり、上側の上流側フィン24の上流側支持部27及びそれに対応する上流側支持受け部28は、ケース体3の上側の端壁部6に近接して位置し、下側の上流側フィン24の上流側支持部27及びそれに対応する上流側支持受け部28は、ケース体3の下側の端壁部6に近接して位置する。
【0026】
また、下流側フィン25は、フロントフィンなどとも呼ばれる。下流側フィン25は、左右方向に長手状の板状であって、上流側フィン24と等しいまたは略等しい左右幅寸法を有し、下流端部すなわち前端部が上下方向に回動可能に支持されている。すなわち、本実施の形態の下流側フィン25は、横フィンである。下流側フィン25の前端部には、下流側支持部31が左右両側に形成されている。下流側支持部31が、下流側支持受け部32に上下方向に回動可能に保持される。下流側支持部31と下流側支持受け部32とは、一方が軸部、他方が穴部または凹部である。本実施の形態では、下流側支持部31が軸部、下流側支持受け部32が丸穴状の穴部である。本実施の形態では、下流側支持受け部32は、スペーサ29に形成されているが、ケース体3の側壁部7に直接形成されていてもよい。図示される例では、下流側支持部31及び下流側支持受け部32は、ケース体3の縮小部11に位置し、吹出口9の短手方向の縁部、本実施の形態では上下の縁部に近接している。そのため、同じフィン部20において、下流側支持部31及び下流側支持受け部32に対し、上流側支持部27及び上流側支持受け部28が通気路5の上下方向に離れて位置する。また、
図5に示すように、下流側フィン25が吹出口9から見えにくい位置となっている。
【0027】
そして、
図1、
図2及び
図4に示すように、各フィン部20は、ヒンジ部22に対して上流側と下流側との通気方向の長さを調整する調整部34を有する。本実施の形態において、調整部34は、上流側フィン24の長さ及び下流側フィン25の長さをそれぞれ調整する。
【0028】
例えば、上流側フィン24は、互いに別体の第一上流側フィン部36と第二上流側フィン部37とを前後に備える。第一上流側フィン部36及び第二上流側フィン部37は、それぞれ空調風を整流する平面状の整流面を有する平板状に形成され、本実施の形態では互いに等しいまたは略等しい長手寸法すなわち左右寸法に設定されている。第一上流側フィン部36は、上流側の左右両側に上流側支持部27が形成されている。そして、第一上流側フィン部36の下流側に対し、第二上流側フィン部37の上流側が摺動可能となっていることで、上流側フィン24の前後方向の長さが調整可能となっている。
【0029】
図示される例では、第一上流側フィン部36と第二上流側フィン部37とのいずれか一方が他方に向かって開口され、他方が一方に摺動可能に挿入されている。本実施の形態では、第一上流側フィン部36が上流側アウタフィンであり、下流側が下流側に向けて開口され、第二上流側フィン部37が上流側インナフィンであり、上流側が第一上流側フィン部36の下流側に摺動可能に挿入されている。すなわち、本実施の形態では、第一上流側フィン部36は、第二上流側フィン部37が挿入される凹部36aを下流側に有する。凹部36aは、第一上流側フィン部36の左右両側に亘り連なって形成されている。凹部36aにより、第一上流側フィン部36の下流側は、コ字状に形成されている。
【0030】
同様に、下流側フィン25は、互いに別体の第一下流側フィン部40と第二下流側フィン部41とを前後に備える。第一下流側フィン部40及び第二下流側フィン部41は、それぞれ空調風を整流する平面状の整流面を有する平板状に形成され、本実施の形態では互いに等しいまたは略等しい長手寸法すなわち左右寸法に設定されている。第一下流側フィン部40は、下流側の左右両側に下流側支持部31が形成されている。そして、第一下流側フィン部40の上流側に対し、第二下流側フィン部41の下流側が摺動可能となっていることで、下流側フィン25の前後方向の長さが調整可能となっている。
【0031】
図示される例では、第一下流側フィン部40と第二下流側フィン部41とのいずれか一方が他方に向かって開口され、他方が一方に摺動可能に挿入されている。本実施の形態では、第一下流側フィン部40が下流側アウタフィンであり、上流側が上流側に向けて開口され、第二下流側フィン部41が下流側インナフィンであり、下流側が第一下流側フィン部40の上流側に摺動可能に挿入されている。すなわち、本実施の形態では、第一下流側フィン部40は、第二下流側フィン部41が挿入される凹部40aを上流側に有する。凹部40aは、第一下流側フィン部40の左右両側に亘り連なって形成されている。凹部40aにより、第一下流側フィン部40の上流側は、コ字状に形成されている。
【0032】
そして、本実施の形態では、第二上流側フィン部37と第二下流側フィン部41とは、互いに別体で形成され、第二上流側フィン部37の下流側と第二下流側フィン部41の上流側とがのそれぞれに連結部43,44が形成されて、これら連結部43,44が連結されて回動可能となることでヒンジ部22が構成されている。
【0033】
さらに、一方のフィン部20のヒンジ部22と、他方のフィン部20のヒンジ部22と、は、リンク46を介して互いに上下に連結されている。本実施の形態では、リンク46は、フィン部20の左右両側にそれぞれ設定されている。リンク46は、例えば左右方向に厚みを有する板状に形成されている。
図3及び
図4に示すように、リンク46には、支持受け部48が形成されており、各ヒンジ部22に形成された支持部49を回動可能に受けている。支持受け部48と支持部49とは、一方が軸部、他方が凹部または穴部である。本実施の形態では、支持受け部48が丸穴状の穴部であり、支持部49が軸部である。支持部49は、連結部43,44と同軸に形成され、フィン部20から左右方向にそれぞれ突出している。図示される例では、支持部49は連結部44と一体的に形成されているが、これに限らず、連結部43と一体的に形成されていてもよい。
【0034】
リンク46の上下の支持受け部48,48間の距離は、上下の下流側フィン25,25の下流側支持部31,31間の距離と等しいまたは略等しい。一方、リンク46の上下の支持受け部48,48間の距離は、上下の上流側フィン24,24の上流側支持部27,27間の距離よりも小さい。
【0035】
いずれか一方のリンク46には、支持受け部48,48間に、受圧部51が形成されている。受圧部51は、リンク46の上下方向の中央部、すなわち支持受け部48,48に対して等距離または略等距離に位置している。本実施の形態では、受圧部51は、リンク46の板厚方向に突出する凸部である。受圧部51に対して
図4に示す加圧部53から外力が加えられることで、リンク46が上下方向に沿う状態を維持しつつ、つまり上端部または下端部の一方が他方に対して前方に傾かない状態を維持しつつ、上下に移動可能となっている。
【0036】
加圧部53は、使用者の手動などでもよいが、本実施の形態では、モータなどのアクチュエータ55に備えられる。アクチュエータ55は、例えばケース体3の一方の側壁部7の前端部側の外側部に形成された配置部56に配置されており、加圧部53が側壁部7に形成された穴部57から通気路5内に挿入されて受圧部51と連結されている。そして、加圧部53は、左右方向に軸方向を有して回動することにより、受圧部51に対して上下方向に円弧状に加圧するようになっている。受圧部51は、ガイド部59に沿って円弧状に上下動するようになっている。本実施の形態では、ガイド部59は、一方のスペーサ29に形成された円弧状のカム溝であり、受圧部51はガイド部59に挿入されてガイドされるカムである。ガイド部59は、側壁部7に直接形成されていてもよい。
【0037】
その他、風向調整装置1には、風向調整部18よりも上流側つまり後側に。風向を変えるための任意のフィン(ルーバ)や通気路5を開閉するシャットバルブなどが配置されていてもよい。
【0038】
そして、風向調整装置1を組み立てる際には、第一上流側フィン部36の凹部36aに第二上流側フィン部37を挿入して上流側フィン24を構成するとともに、第一下流側フィン部40の凹部40aに第二下流側フィン部41を差し込んで下流側フィン25を構成し、第二上流側フィン部37と第二下流側フィン部41とを連結部43,44で互いに連結して、上流側フィン24と下流側フィン25とがヒンジ部22で回動可能に連結されたフィン部20を形成する。次いで、このフィン部20を一対用意し、これらフィン部20のヒンジ部22に形成された支持部49を、各リンク46の支持受け部48にそれぞれ受けて一対のフィン部20を連結し、風向調整部18を構成する。そして、この風向調整部18の上流側フィン24に設定される上流側支持部27を、各スペーサ29の上流側支持受け部28に受け、下流側フィン25に設定される下流側支持部31を各スペーサ29の下流側支持受け部32に受けて、受圧部51をガイド部59に挿入し、
図3に示すように、風向調整部18をスペーサ29,29間に挟み込み、これらスペーサ29と風向調整部18とを
図5に示すケース体3の内部の通気路5内に一体的に組み込む。受圧部51は、ケース体3の配置部56に取り付けたアクチュエータ55の加圧部53と連結する。
【0039】
風向調整装置1は、
図1に示す中立位置において、下流側フィン25の回動軸となる下流側支持部31が吹出口9付近に配置され、上流側フィン24の回動軸となる上流側支持部27が、その上流側かつ下流側支持部31よりも上方または下方に配置されるため、下流側フィン25が水平状態で上流側フィン24が吹出口9に向かって傾斜するように位置する。そこで、受入口8から受け入れた空調風が上下方向の中心側に向かって傾斜する上流側フィン24,24に沿って集められつつ、これら上流側フィン24,24間を下流側に向かって流れ、水平状態の下流側フィン25,25間に沿って吹出口9から前方に直進風として吹き出される。
【0040】
この状態から、
図4に示すアクチュエータ55の加圧部53の回動によって、リンク46の受圧部51に対し上下方向に加圧されることで、風向調整部18が動作する。風向調整部18は、受圧部51がガイド部59に沿って円弧状に移動することによってリンク46が上下動し、このリンク46の上下動に伴い、リンク46と連結されている上下の上流側フィン24,24の第二上流側フィン部37,37と下流側フィン25,25の第二下流側フィン部41,41とが、ヒンジ部22を中心として回動する。このとき、ヒンジ部22と上流側支持部27,27及び下流側支持部31,31との距離が変化することとなるが、調整部34において、第二上流側フィン部37が第一上流側フィン部36に対してスライドするとともに、第二下流側フィン部41が第一下流側フィン部40に対してスライドすることにより、生じた距離の変化分を吸収することで、上流側フィン24及び下流側フィン25が任意位置に回動する。例えば、下流側フィン25は、下流側支持部31,31の位置を中心として互いの長さを調整部34により同一または略同一長さのまま変えながら、互いに平行または略平行を保って回動する。他方、上下の上流側フィン24,24は互いに長さを変えながら、互いに異なる角度で回動する。
【0041】
例えば、
図2に示すように、リンク46を下方に移動させた場合、つまり風向調整部18を上方に振っていく場合、下流側フィン25,25が互いに平行または略平行を保ったまま下流側に向かって上方へと傾斜していく。また、上側の上流側フィン24については、第二上流側フィン部37が第一上流側フィン部36に対して大きくスライドして下流側つまりヒンジ部22側(下流側フィン25側)へと下方に傾斜していく。さらに、下側の上流側フィン24については、上側の上流側フィン24と比較して、第二上流側フィン部37の第一上流側フィン部36に対するスライド量が抑えられ、水平状態に近づいていく。そこで、受入口8から受け入れた空調風が下方向に向かって傾斜する上流側フィン24に沿って集められつつ、上流側フィン24,24間を下流側に向かって流れ、下流側に向かって上方向に傾斜した下流側フィン25,25間に沿って吹出口9から上方に吹き出される。
【0042】
なお、リンク46を上方に移動させた場合、つまり風向調整部18を下方に振っていく場合については、上方に振っていく場合と動作の上下が反転するのみであるから、詳細な説明を省略する。
【0043】
このように、第1の実施の形態によれば、風向調整部18に、通気路5の通気方向に対して交差する方向に離れた一対のフィン部20を配し、各フィン部20の上流端部と下流端部とをそれぞれ回動可能に支持してこれら上流端部と下流端部との間のヒンジ部22で屈曲可能とし、一方のフィン部20と他方のフィン部20とが、ヒンジ部22よりも下流側つまり下流側フィン25が互いに平行を保って回動し、ヒンジ部22よりも上流側つまり上流側フィン24が互いに異なる角度に回動するように連動されるため、各フィン部20のヒンジ部22よりも上流側の上流側フィン24の角度と、ヒンジ部22よりも下流側の下流側フィン25の角度と、によって、配風性能を確保しつつ、例えばフィン部全体が平行移動する構成と比較して、風向変更時の操作範囲として大きなスペースを必要としない省スペースでの配置が可能となる。そのため、外観や配風性能に影響を与えることなく風向調整装置1の形状やレイアウトの自由度を向上させることができる。
【0044】
このとき、フィン部20に、ヒンジ部22よりも上流側つまり上流側フィン24とヒンジ部22よりも下流側つまり下流側フィン25との長さを調整する調整部34を備えるため、位置が固定されている上流側端部及び下流側端部とヒンジ部22との距離がヒンジ部22での屈曲により変化しても調整部34による長さ調整によって吸収され、下流側フィン25,25が互いに平行を保ちつつ、上流側フィン24,24が互いに異なる角度に回動する構成を容易に実現できる。
【0045】
また、フィン部20の上流側端部である上流側フィン24の上流側支持部27が、フィン部20の下流側端部である下流側フィン25の下流側支持部31から見て、通気路5の通気方向と交差する方向の外側、つまり上側のフィン部20においては上流側支持部27が下流側支持部31より上側にあり、下側のフィン部20においては上流側支持部27が下流側支持部31より下側にあるため、上流側フィン24が基本的に上流側に向かって流路を開く方向に傾斜するので、上流側フィン24によって通気を妨げにくい。
【0046】
さらに、上流側フィン24の上流端部である上流側支持部27の位置が、リンク46が最大に上下に移動した位置でもリンク46の支持受け部48と水平または略水平な位置となるように設定されているため、上流側フィン24が、最大に振った位置でも通気路5の通気方向に対して傾斜することがなく、上流側フィン24によって通気を妨げることがない。
【0047】
また、上流端部が回動可能に支持された第一上流側フィン部36と、第一上流側フィン部36の下流側に摺動可能に位置する第二上流側フィン部37と、下流端部が回動可能に支持された第一下流側フィン部40と、第一下流側フィン部40の上流側に摺動可能に位置する第二下流側フィン部41と、を有し、第二上流側フィン部37の下流側と第二下流側フィン部41の上流側とがヒンジ部22を介して連結され、一方のフィン部20のヒンジ部22と他方のフィン部20のヒンジ部22とが連結され、ヒンジ部22でのフィン部20の屈曲に応じて、第一上流側フィン部36に対し第二上流側フィン部37が摺動し、第一下流側フィン部40に対し第二下流側フィン部41が摺動することで調整部34により長さを調整するので、配風性能への影響が少ない調整部34を構成しつつ、一対のフィン部20を、下流側フィン25,25が互いに平行を保ちつつ、上流側フィン24,24が互いに異なる角度に回動するように容易に連動させることができる。
【0048】
また、フィン部20は一対であって、それらの中間に他のフィンやルーバを必要としないので、通気方向と交差する方向、本実施の形態では上下方向の寸法を抑えることができ、薄型の風向調整装置1に対応できるとともに、フィン部20を吹出口9から見えにくい、吹出口9の縁部の奥に配置できるので、見栄えも向上する。
【0049】
さらに、風向調整部18の各フィン部20の上流端部及び下流端部がそれぞれ固定位置で回動可能に支持されているため、風向調整部18により風向を調整しても風向調整部18全体としての上流側端部と下流側端部との位置が変わらず、省スペースでの配置が可能である。
【0050】
なお、第1の実施の形態では、ヒンジ部22を、別体の第二上流側フィン部37と第二下流側フィン部41とを連結部43,44で回動可能に連結する構成としたが、これに限らず、例えば
図6に示す第2の実施の形態のように、上流側インナフィンと下流側インナフィンとを、折り曲げ可能な軟質の部材、例えば合成樹脂やフィルムなどにより一体的に形成しても、配風性能を確保しつつ省スペースでの配置が可能であるなど、第1の実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0051】
また、各実施の形態において、風向調整装置1は、自動車用のものに限らず、その他の任意の用途に用いてよい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、例えば自動車の空調用の風向調整装置として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0053】
1 風向調整装置
5 通気路
18 風向調整部
20 フィン部
22 ヒンジ部
34 調整部
36 第一上流側フィン部
37 第二上流側フィン部
40 第一下流側フィン部
41 第二下流側フィン部