(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129369
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】貨幣処理方法
(51)【国際特許分類】
G07D 11/28 20190101AFI20240919BHJP
G07D 11/235 20190101ALI20240919BHJP
A61L 2/24 20060101ALI20240919BHJP
A61L 2/10 20060101ALN20240919BHJP
【FI】
G07D11/28
G07D11/235
A61L2/24
A61L2/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038529
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】000001432
【氏名又は名称】グローリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中山 友晶
【テーマコード(参考)】
3E141
4C058
【Fターム(参考)】
3E141AA01
3E141AA08
3E141BA14
3E141CA02
3E141DA06
3E141EA10
4C058AA30
4C058BB01
4C058DD02
4C058DD07
(57)【要約】
【課題】除菌器を有する貨幣処理機の処理の効率を高める。
【解決手段】貨幣処理方法は、貨幣処理機(貨幣整理機1)の搬送を伴う処理中に、処理されている貨幣を除菌器220によって除菌し、除菌器の温度を取得し、取得した温度に基づいて、貨幣処理機が処理を行う貨幣の上限数を決定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貨幣処理機での搬送を伴う処理中に、処理されている貨幣を除菌器によって除菌し、
前記除菌器の温度を取得し、
前記取得した温度に基づいて、前記貨幣処理機が処理を行う貨幣の上限数を決定する、貨幣処理方法。
【請求項2】
前記除菌器の温度は、前記貨幣処理機が処理を開始する前に取得される、請求項1に記載の貨幣処理方法。
【請求項3】
前記除菌器の温度は、前記貨幣処理機の処理中に取得される、請求項1又は2に記載の貨幣処理方法。
【請求項4】
前記上限数は、前記除菌器の温度と、前記除菌器の制限温度から定まる除菌可能な貨幣の数とが対応付けられたテーブルに基づいて、決定される、請求項2又は3に記載の貨幣処理方法。
【請求項5】
前記上限数は、前記除菌器の温度と、前記除菌器の制限温度と、除菌可能な貨幣の数との関係を表すモデル式に基づいて、決定される、請求項2又は3に記載の貨幣処理方法。
【請求項6】
これから処理を行う貨幣の数が前記上限数を上回る場合に、前記貨幣処理機が処理の開始を禁止する、請求項1~5のいずれか1項に記載の貨幣処理方法。
【請求項7】
これから処理を行う貨幣の数が前記上限数を上回る場合に、前記貨幣処理機が、処理の実行を指示する信号を受けることにより、前記禁止を解除して処理を開始する、請求項6に記載の貨幣処理方法。
【請求項8】
前記貨幣処理機の処理中に前記除菌器の温度が制限温度に到達した場合に、前記貨幣処理機が処理を停止する、請求項1~7のいずれか1項に記載の貨幣処理方法。
【請求項9】
前記貨幣処理機の処理中に前記除菌器の温度が制限温度に到達した場合に、前記除菌器が動作を停止しかつ、前記貨幣処理機が処理を継続する、請求項1~7のいずれか1項に記載の貨幣処理方法。
【請求項10】
前記除菌器は、前記貨幣処理機が取込部から取り込んだ貨幣を識別した後、少なくとも一の、機外と通じる開口を有する集積部に貨幣を集積する計数処理を実行中に、前記集積部への集積前に貨幣を除菌する、請求項1~9のいずれか1項に記載の貨幣処理方法。
【請求項11】
前記除菌器は、前記貨幣処理機が取込部から取り込んだ貨幣を識別した後、金庫に収納する入金処理を実行中に、前記金庫への収納前に貨幣を除菌する、請求項1~10のいずれか1項に記載の貨幣処理方法。
【請求項12】
前記貨幣処理機は、識別された貨幣を前記金庫へ直接収納する第1入金処理と、識別された貨幣を一時保留部へ収納しかつ、前記一時保留部から繰り出された貨幣を再識別した後、前記金庫へ収納する第2入金処理とを切り替えて実行し、
前記除菌器は、前記第1入金処理中は識別後に貨幣を一回除菌し、前記第2入金処理中は2回の識別後それぞれにおいて貨幣を除菌し、
前記貨幣処理機が前記第1入金処理を行う場合に、前記貨幣処理機が処理を行う貨幣の上限数である第1上限数が決定され、前記貨幣処理機が前記第2入金処理を行う場合に、前記第1上限数よりも少ない第2上限数が決定される、請求項11に記載の貨幣処理方法。
【請求項13】
前記除菌器は、前記貨幣処理機が金庫から繰り出した貨幣を払出部へ払い出す出金処理を実行中に、前記払出部への払い出し前に貨幣を除菌する、請求項1~12のいずれか1項に記載の貨幣処理方法。
【請求項14】
前記貨幣処理機の金庫には、除菌されている貨幣と除菌されていない貨幣とが収納されており、
前記貨幣処理機は、前記貨幣処理機が金庫から繰り出した貨幣を払出部へ払い出す出金処理において、除菌されている貨幣を前記払出部へ払い出し、除菌されていない貨幣を前記払出部へ払い出さない、請求項1~12のいずれか1項に記載の貨幣処理方法。
【請求項15】
前記貨幣処理機の処理後に、除菌されていない貨幣が機外に払い出された場合に、未除菌に関する情報を提供する、請求項1~14のいずれか1項に記載の貨幣処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示する技術は、貨幣処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、紙幣処理装置が記載されている。この従来の紙幣処理装置は、加熱ローラを備えている。加熱ローラは、紙幣処理装置の処理中に紙幣を熱によって殺菌する。温度センサが検出した加熱ローラの温度に基づいて、加熱ローラへの通電と非通電とが切り替わる。加熱ローラの温度は、殺菌が可能な温度帯に維持される。従来の紙幣処理装置はまた、温度センサの検出に基づいて加熱ローラの温度制御の異常を検知した場合、加熱ローラへの通電を停止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、熱を利用するのではなく、例えば紫外線を貨幣に照射することにより、貨幣を除菌する除菌器が知られている。紫外線の照射が継続すると、除菌器の温度が上昇する。除菌器の保護、及び/又は、除菌効果の維持のために、除菌器の制限温度が定められる。従来の貨幣処理機は、除菌器の温度が制限温度を超えないように、処理の上限数が予め一律に定められていた。つまり、従来の貨幣処理機は、処理の上限数に達すると、除菌器の温度に関わらず処理を中断していた。
【0005】
処理の上限数が予め定められていると、除菌器の温度は制限温度を超えないが、貨幣処理機の効率は下がってしまう。この技術課題は、紫外線を照射する除菌器に限定されず、連続使用が制限される除菌器を有する貨幣処理機において共通の技術課題である。
【0006】
ここに開示する技術は、除菌器を有する貨幣処理機の処理の効率を高める。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここに開示する技術は、貨幣処理方法に係る。この貨幣処理方法は、貨幣処理機での搬送を伴う処理中に、処理されている貨幣を除菌器によって除菌し、コントローラーが、前記除菌器の温度を取得し、前記取得した温度に基づいて、コントローラーが、前記貨幣処理機が処理を行う貨幣の上限数を決定する。
【0008】
貨幣処理機は、貨幣に関する処理を行う。貨幣は、紙幣及び/又は硬貨である。貨幣処理機は、処理中に貨幣を搬送する。
【0009】
除菌器は、処理されている貨幣を除菌する。除菌器は、例えば紫外線を貨幣に照射する紫外線照射器を有していてもよい。尚、除菌器は、紫外線を照射する装置に限定されない。除菌器は、発熱等に起因して、連続使用が制限される装置である、としてもよい。尚、連続使用は、必ずしも除菌器の動作が連続していることに限らない。例えば紫外線を連続的に照射することに限らず、紫外線の照射と停止とを比較的短い時間において繰り返すことも、ここでいう連続使用に含まれる。例えば貨幣が除菌器を通過している間だけ紫外線の照射を行い、貨幣が除菌器を通過していない間は紫外線の照射を停止する場合、複数の貨幣が順次除菌器を通過すると、紫外線の照射と停止とが繰り返される。このような除菌器の使用も、前記の連続使用に含まれる。
【0010】
ここに開示する貨幣処理方法は、コントローラーが、除菌器の温度を取得し、その温度に基づいて貨幣処理機が処理を行う貨幣の上限数を決定する。例えば除菌器の温度が低い場合、コントローラーは、処理の上限数を大きくし、除菌器の温度が高い場合、処理の上限数を小さくしてもよい。除菌器の制限温度が超えない範囲で、貨幣処理機は貨幣処理を実行できる。除菌器の実際の温度に関わらず貨幣処理機の処理の上限数が予め一律に定められる従来の貨幣処理機と比較して、前記の構成の貨幣処理機は、処理の効率が高まる。
【0011】
前記除菌器の温度は、前記貨幣処理機が処理を開始する前に取得される、としてもよい。
【0012】
貨幣処理機が処理を開始する前に、除菌器の温度に基づいて、処理の上限数が適切な数に設定される。貨幣処理機は、除菌器の制限温度が超えない範囲で貨幣処理を実行できる。
【0013】
前記除菌器の温度は、前記貨幣処理機の処理中に取得される、としてもよい。
【0014】
貨幣処理機の処理中は除菌器も貨幣を除菌しているため、貨幣処理機の処理中に除菌機の温度は上昇する。貨幣処理機の処理中に、除菌器の温度が取得されることにより、貨幣処理機は、処理を行う貨幣の上限数を、動的に決定できる。除菌器の制限温度が超えない範囲で、貨幣処理機は、貨幣処理を継続できる。
【0015】
前記上限数は、前記除菌器の温度と、前記除菌器の制限温度から定まる除菌可能な貨幣の数とが対応付けられたテーブルに基づいて、決定される、としてもよい。
【0016】
例えば予め実施した実験結果に基づいてテーブルを定めておけば、貨幣処理機は、そのテーブルに基づいて、除菌器の制限温度が超えない範囲で貨幣を除菌しながら、貨幣処理を実行できる。テーブルは、除菌器の初期温度、貨幣の処理が継続することに伴う除菌器の温度変化、及び、除菌器の制限温度によって定めることができる。
【0017】
前記上限数は、前記除菌器の温度と、前記除菌器の制限温度と、除菌可能な貨幣の数との関係を表すモデル式に基づいて、決定される、としてもよい。
【0018】
例えば予め実施した実験結果に基づいてモデル式を定めておけば、貨幣処理機は、そのモデル式に基づいて、除菌器の制限温度が超えない範囲で貨幣を除菌しながら、貨幣処理を実行できる。モデル式は、テーブルと同様に、除菌器の初期温度、貨幣の処理が継続することに伴う除菌器の温度変化、及び、除菌器の制限温度によって定めることができる。また、モデル式には、除菌器の温度、除菌器の制限温度の他にも様々なパラメータを含めることができる。例えば周囲温度は、除菌器の放熱に関係し、除菌器の温度に影響を与える。
【0019】
前記の貨幣処理方法では、これから処理を行う貨幣の数が前記上限数を上回る場合に、前記貨幣処理機が処理の開始を禁止する、としてもよい。
【0020】
貨幣処理機の処理中に、除菌器の温度が制限温度を超えてしまうことが未然に回避される。貨幣処理機の利用者は、例えば処理を行う貨幣の数を減らした上で、処理を開始してもよい。
【0021】
これから処理を行う貨幣の数が前記上限数を上回る場合に、前記貨幣処理機が、処理の実行を指示する信号を受けることにより、前記禁止を解除して処理を開始する、としてもよい。
【0022】
利用者は、貨幣処理装置の処理の実行を優先できる。
【0023】
前記貨幣処理機の処理中に前記除菌器の温度が制限温度に到達した場合に、前記貨幣処理機が処理を停止する、としてもよい。
【0024】
除菌器が制限温度を超えてしまうことが抑制される。尚、貨幣処理機が処理を停止した後、例えば貨幣処理機の利用者からの指示に基づいて、貨幣処理機は、処理を再開してもよい。また、貨幣処理機の停止中に除菌器の温度が低下すれば、貨幣処理機は、処理を再開してもよい。
【0025】
また、貨幣処理機の処理中に前記除菌器の温度が制限温度に到達した場合に、(1)貨幣処理機は処理を停止する、(2)貨幣処理機は処理を停止せず継続する、(3)利用者からの指示に基づいて、処理の停止/継続を切り替える、のいずれかを行うことを、予め設定してもよい。
【0026】
また、貨幣処理機は、貨幣処理機の利用者の情報を予め取得しておき、貨幣処理機は、当該利用者に応じて、前記(1)(2)(3)のいずれかを選択してもよい。
【0027】
前記貨幣処理機の処理中に前記除菌器の温度が制限温度に到達した場合に、前記除菌器が動作を停止しかつ、前記貨幣処理機が処理を継続する、としてもよい。
【0028】
除菌器は動作を停止するため、温度の上昇が抑制される。除菌器が制限温度を超えてしまうことが抑制される。
【0029】
貨幣処理機は、除菌器が動作を停止した後も処理を継続する。貨幣処理機は、処理を速やかに終了させることができる。但し、除菌器の停止以降に処理された貨幣は、除菌されていない。
【0030】
前記除菌器は、前記貨幣処理機が取込部から取り込んだ貨幣を識別した後、少なくとも一の、機外と通じる開口を有する集積部に貨幣を集積する計数処理を実行中に、前記機外集積部への集積前に貨幣を除菌する、としてもよい。
【0031】
計数処理の実行後、貨幣処理機の利用者は、集積部に集積された貨幣を、開口を通じて取り出す。利用者は、除菌された貨幣を取り扱うことができる。
【0032】
前記除菌器は、前記貨幣処理機が取込部から取り込んだ貨幣を識別した後、金庫に収納する入金処理を実行中に、前記金庫への収納前に貨幣を除菌する、としてもよい。
【0033】
入金処理の実行後、金庫には、除菌された貨幣が収納される。
【0034】
前記貨幣処理機は、識別された貨幣を前記金庫へ直接収納する第1入金処理と、識別された貨幣を一時保留部へ収納しかつ、前記一時保留部から繰り出された貨幣を再識別した後、前記金庫へ収納する第2入金処理とを切り替えて実行し、前記除菌器は、前記第1入金処理中は識別後に貨幣を一回除菌し、前記第2入金処理中は2回の識別後それぞれにおいて貨幣を除菌し、前記貨幣処理機が前記第1入金処理を行う場合に、前記貨幣処理機が処理を行う貨幣の上限数である第1上限数が決定され、前記貨幣処理機が前記第2入金処理を行う場合に、前記第1上限数よりも少ない第2上限数が決定される、としてもよい。
【0035】
第1入金処理では、各貨幣について1回の除菌が行われるのに対し、第2入金処理では、各貨幣について2回の除菌が行われる。第2入金処理の方が、除菌器の動作頻度が高いため、第2入金処理の方が、除菌器の温度が上昇しやすい。第2入金処理の方が、除菌器が制限温度に到達しやすいから、第2入金処理においては、処理を行う貨幣の上限数を、相対的に少なくする。第1入金処理及び第2入金処理のそれぞれにおいて、処理を行う貨幣の上限数が適切に決定される。貨幣処理機は、除菌器が制限温度を超えることを抑制しつつ、第1入金処理、又は、第2入金処理を効率的に実行できる。
【0036】
前記除菌器は、前記貨幣処理機が金庫から繰り出した貨幣を払出部へ払い出す出金処理を実行中に、前記払出部への払い出し前に貨幣を除菌する、としてもよい。
【0037】
出金処理の実行後、貨幣処理機の利用者は、払出部へ払い出された貨幣を取り出す。利用者は、除菌された清潔な貨幣を取り扱うことができる。
【0038】
前記貨幣処理機の金庫には、除菌されている貨幣と除菌されていない貨幣とが収納されており、前記貨幣処理機は、前記貨幣処理機が金庫から繰り出した貨幣を払出部へ払い出す出金処理において、除菌されている貨幣を前記払出部へ払い出し、除菌されていない貨幣を前記払出部へ払い出さない、としてもよい。
【0039】
貨幣処理機は、除菌されている貨幣のみを払出部へ払い出すから、利用者は、除菌された貨幣を取り扱うことができる。
【0040】
尚、貨幣処理機は、払出部へ払い出さない貨幣を、例えば一時保留部へ収納してもよい。貨幣処理機は、払出部へ払い出されなかった貨幣であって、除菌されていない貨幣を、出金処理の終了後に、一時保留部から繰り出して再び金庫へ収納してもよい。除菌器は、金庫へ再収納される貨幣の除菌を行ってもよい。貨幣処理機は、除菌された貨幣を、次回の出金処理時に、払出部へ払い出すことができる。
【0041】
尚、例えば出金処理時に、貨幣処理機は、除菌されていない貨幣を払出部へ払い出してもよい。
【0042】
前記貨幣処理機の処理後に、除菌されていない貨幣が機外に払い出された場合に、未除菌に関する情報を提供する、としてもよい。尚、この処理は、貨幣が機外に払い出される処理であり、出金処理に限定されない。前述した計数処理も、ここでいう処理に含まれる。
【0043】
貨幣処理機の利用者は、情報の提供を受けることによって、除菌されていない貨幣が払い出されたことを認識できる。
【0044】
尚、情報の提供は、例えばフラットパネルディスプレイからなる表示部を通じて行われてもよいし、例えばLED(light-emitting diode)といった通知ランプの点灯を通じて行われてもよい。
【0045】
尚、前記除菌器は、前記貨幣処理機が精査処理を実行中に、貨幣を除菌してもよい。精査処理は、収納部に収納されている貨幣を再計数することによって、収納部の在高を確定させる処理である。精査処理時に、貨幣処理装置は、第1の収納部に収納されている貨幣を繰り出して第2の収納部に収納すると共に、当該第2の収納部から繰り出された貨幣を、元の第1の収納部に収納する。貨幣処理装置は、第1の収納部と第2の収納部との間で貨幣が搬送されている際に、貨幣の計数を行う。除菌器は、第1の収納部と第2の収納部との間で貨幣が搬送されている際に、貨幣を除菌してもよい。
【0046】
除菌器は、搬送中の貨幣へ紫外線を照射する紫外線照射器であってもよい。紫外線照射器は、貨幣が紫外線照射器を通過している間に紫外線を照射し、紫外線照射器を通過していない間は紫外線の照射を停止してもよい。
【発明の効果】
【0047】
前記の貨幣処理方法によると、除菌器を有する貨幣処理機の処理の効率が高まる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図1】
図1は、紙幣整理機の内部構造を示している。
【
図4】
図4は、除菌器の温度と、処理可能枚数とが対応づけられたテーブルを例示している。
【
図5】
図5は、紙幣整理機の制御に係るフローチャートである。
【
図6】
図6(a)(b)(c)は、インターフェース部に表示される画面例を示している。
【
図7】
図7は、紙幣処理機の内部構造を示している。
【
図9】
図9の上図は、第1入金処理時の紙幣の搬送経路を示し、下図は、第2入金処理時の紙幣の搬送経路を示している。
【
図10】
図10は、紙幣処理機の制御に係るフローチャートの一部である。
【
図11】
図11は、紙幣処理機の制御に係るフローチャートの一部である。
【
図12】
図12は、記憶部に記憶される識別番号リストを示している。
【
図13】
図13は、出金処理時の紙幣の搬送経路を示している。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下、貨幣処理方法の実施形態について、図面を参照しながら説明する。ここで説明する貨幣処理方法は例示である。
【0050】
(紙幣整理機)
図1及び
図2は、貨幣処理機の一例としての紙幣整理機1を示している。紙幣整理機1は、紙幣の計数処理を実行する。紙幣整理機1は、基本モジュール11を備えている。紙幣整理機1はまた、拡張モジュール12を備えている。拡張モジュール12は、基本モジュール11に対して脱着可能に連結されるモジュールである。
【0051】
基本モジュール11は、インターフェース部21を有している(
図2参照)。インターフェース部21は、例えばタッチパネル式のフラットパネルディスプレイである。インターフェース部21は、各種の情報を画面に表示する表示部である。インターフェース部21はまた、紙幣整理機1の利用者が行う入力操作を受け付ける操作部である。
【0052】
基本モジュール11は、取込部22を有している。取込部22は、計数処理の対象の紙幣を受け入れる。利用者は、取込部22に複数枚の紙幣を重ねて載置できる。取込部22は、取込部22に載置された紙幣を1枚ずつ装置内に繰り出す繰り出し機構を有している。
【0053】
基本モジュール1は、リジェクト部23を有している。リジェクト部23は、リジェクト紙幣を保持する。リジェクト部23は、紙幣整理機1の機外に開放されている。利用者は、リジェクト紙幣をリジェクト部23から手で取り出すことができる。リジェクト紙幣とは、紙幣整理機1が処理できない紙幣である。後述する識別部29が、リジェクト紙幣であるか否かを判断する。
【0054】
基本モジュール11は、複数の集積部24~27を有している。図例の基本モジュール11は、第1~第4の4つの集積部24~27を有している。第1~第4集積部24~27は、水平に並んでいる。第1~第4集積部24~27はそれぞれ、正常紙幣、つまり、リジェクト紙幣ではない紙幣を集積する。第1~第4集積部24~27はそれぞれ、紙幣整理機1の機外と通じる開口2を有している。利用者は、開口2を通じて、第1~第4集積部24~27に集積されている紙幣を、手で取り出すことができる。
【0055】
基本モジュール11は、第1搬送部28を有している。第1搬送部28は、基本モジュール11の機内に位置する搬送路を有している。
図1において搬送路は、太い実線で示される。搬送路は、取込部22、リジェクト部23、及び、第1~第4集積部24~27を互いにつないでいる。第1搬送部28は、多数のローラ、複数のベルト、これらを駆動するモータ、及び、複数のガイドの組み合わせによって構成されている。搬送路の途中には通過センサが設置されている。通過センサは、搬送路に沿って搬送される紙幣の通過を検知する。分岐機構が搬送路の分岐箇所に配設されている。分岐機構は、紙幣の搬送方向を変更する。第1搬送部28は、搬送路に沿って紙幣を一枚一枚、間隔を空けて搬送する。紙幣は、その長辺を搬送方向の前方として、短辺と平行な方向に搬送される。
【0056】
基本モジュール11は、識別部29を有している。識別部29は、取込部22と第1~第4集積部24~27との間の搬送路に、位置している。識別部29は、搬送される紙幣を識別する。識別部29は、複数種のセンサを有している。識別部29は、複数種のセンサによって得られた紙幣の特徴に基づいて、少なくとも、紙幣の金種、真偽、及び、正損を識別する。
【0057】
拡張モジュール12は、複数の集積部31~34を有している。図例の拡張モジュール12は、第5~第8の4つの集積部31~34を有している。第5~第8集積部31~34は、垂直に並んでいる。第5~第8集積部31~34はそれぞれ、正常紙幣を集積する。第5~第8集積部31~34はそれぞれ、紙幣整理機1の機外と通じる開口3を有している。利用者は、開口3を通じて、第5~第8集積部31~34に集積されている紙幣を、手で取り出すことができる。
【0058】
拡張モジュール12は、第2搬送部35を有している。第2搬送部35は、第1搬送部28と同様に、多数のローラ、複数のベルト、これらを駆動するモータ、及び、複数のガイドの組み合わせによって構成されている。第2搬送部35の搬送路は、第1搬送部28の搬送路に接続されている。第2搬送部35の搬送路はまた、第5~第8集積部31~34に接続されている。第2搬送部35は、基本モジュール11から拡張モジュール12へ搬送されてきた紙幣を、第5~第8集積部31~34へ選択的に搬送する。
【0059】
基本モジュール11は、
図2に示すように、コントローラー20を有している。コントローラー20は、CPU(Central Processing Unit)、メモリ、及び、I/O回路を含んで構成することができる。CPUは、プログラムを実行する。メモリは、紙幣整理機1の動作のためのプログラム及びデータを格納する。メモリは、例えばRAM(Random Access Memory)及び/又はROM(Read Only Memory)である。I/O回路は、コントローラー20とコントローラー20に接続された各機器との間の電気信号の入出力を行う。コントローラー20には、前述したインターフェース部21、取込部22、リジェクト部23、第1集積部24、第2集積部25、第3集積部26、第4集積部27、第1搬送部28、識別部29、第5集積部31、第6集積部32、第7集積部33、第8集積部34、及び、第2搬送部35が、それぞれ信号の授受可能に接続されている。
【0060】
基本モジュール11は、通信部212を有している。通信部212は、外部装置211と通信を行う。コントローラー20は、通信部212を通じて、外部装置211との間で情報を授受できる。利用者が外部装置211を操作することに応じて、紙幣整理機1は動作を行うことができる。通信部212は、インターフェース部21と同様に、貨幣処理機へ指示信号を出力する要素である。
【0061】
基本モジュール11はまた、除菌器220を有している。除菌器220は、紙幣整理機1が計数処理を行っている最中に、紙幣の除菌を行う。除菌器220は、
図1に示すように、搬送路上において、識別部29の側方に位置している。識別部29を通過した紙幣は、除菌器220を通過する。除菌器220を通過した後、除菌された紙幣は、第1~第4集積部24~27、第5~第8集積部31~34、又は、リジェクト部23へ搬送される。
【0062】
図3は、除菌器220の内部構造を例示している。除菌器220は、搬送中の紙幣10の表面及び裏面へ紫外線を照射することにより、紙幣10を除菌する。尚、ここでいう除菌は、菌又はウイルスの感染力を除去/低減することであり、殺菌、滅菌、又は、失活を包含する。紙幣10の除菌するために、除菌器220は、波長λが10nm≦λ≦400nmの光を紙幣10に照射してもよい。
【0063】
除菌器220は、照射器221を有している。照射器221は、
図3において破線で示される搬送路を挟んだ、第1側と第2側とのそれぞれに位置している。二つの照射器221は、搬送路に沿って搬送される紙幣10の表面及び裏面のそれぞれに、紫外線を照射することができる。尚、除菌器220は、一つの照射器221を有していてもよい。
【0064】
照射器221を構成する基板には、温度センサ222が取り付けられている。温度センサ222は、照射器221の温度を計測する。温度センサ222は、温度と相関関係がある電圧値(または電流値)に基づき、照射器221の温度を取得することができる。後述するように、照射器221の照射時間が長くなると、照射器221の温度が上昇する。温度センサ222は、計測した温度に対応する信号をコントローラー20へ出力する。なお、温度センサ222が取得した温度と相関関係がある電圧値(または電流値)の情報に基づいて、コントローラー20が照射器221の温度を取得してもよい。
【0065】
搬送路において、除菌器220を挟んだ紙幣10の搬送方向の上流側と下流側とのそれぞれには、通過センサ223が位置している。通過センサ223は、搬送される紙幣10の先端及び後端を検知する。二つの通過センサ223の検知信号に基づいて、除菌器220は、紙幣10が除菌器220内を通過していることを把握できる。除菌器220は、紙幣10が除菌器220内を通過している間は、紫外線を照射する。それによって、除菌器220内を通過している紙幣に紫外線が照射される。除菌器220は、紙幣10が除菌器220内を通過していない間は、紫外線の照射を停止する。無駄な電力消費が抑えられると共に、除菌器220の温度上昇が抑制される。
【0066】
尚、除菌器220は、放熱ファン224を有している。除菌器220の運転中、及び、停止中に、放熱ファン224は、除菌器220を強制的に放熱させる。
【0067】
基本モジュール11は、記憶部213を有している。記憶部213は、各種の情報を記憶する。記憶部213は、テーブル4(
図4参照)を記憶している。コントローラー20は、後述するように、テーブル4を参照することによって、紙幣整理機1の処理可能枚数を決定する。この制御の詳細は、後述する。
【0068】
次に、紙幣整理機1の動作を簡単に説明する。紙幣整理機1は、紙幣を仕分ける整理計数処理を行う。
【0069】
紙幣整理機1の利用者は、処理対象の紙幣を、取込部22に載置する。取込部22は、紙幣を一枚ずつ装置内に繰り出す。
【0070】
第1搬送部28は、紙幣を識別部29へ搬送する。識別部29は紙幣を識別する。第1搬送部28は、識別結果に基づいて紙幣を、リジェクト部23、第1~第4集積部24~27、又は、拡張モジュール12へ選択的に搬送する。第2搬送部35はまた、紙幣を、識別結果に基づいて、第5~第8集積部31~34へ選択的に搬送する。リジェクト部23は、リジェクト紙幣を保持する。第1~第4集積部24~27、及び、第5~第8集積部31~34は、例えば金種及び/又は正損に応じて紙幣を集積する。
【0071】
除菌器220は、紙幣が第1~第4集積部24~27、第5~第8集積部31~34、又は、リジェクト部23へ集積される前に、紙幣を除菌する。利用者は、紙幣整理機1の処理後、除菌された紙幣を取り扱うことができる。
【0072】
(除菌器の制御)
前述したように、除菌器220は、照射時間が長くなると、温度が上昇する。除菌器220の保護、及び/又は、除菌効果の維持のために、除菌器220には、制限温度が定められる。除菌器220を、制限温度を超えて動作させることは、避けることが好ましい。そのために、従来の紙幣整理機は、処理の上限数を予め一律に定めていた。上限数は、除菌器の温度が制限温度を超えることがないよう、余裕を持って定められていた。また、従来の紙幣整理機は、処理の上限数に達すると、除菌器の温度に関わらず処理を中止していた。しかしながら、この従来の紙幣整理機は、処理効率が下がってしまう。
【0073】
そこで、この紙幣整理機1は、処理の上限数を予め一律に定めるのではなく、除菌器220の温度に基づいて、紙幣整理機1が処理を行う貨幣の上限数を決定する。
【0074】
図5は、紙幣整理機1の制御に関するフローを示している。先ずスタート後のステップS51において、コントローラー20は、除菌器220の温度を取得する。除菌器220の温度は、温度センサ222の計測信号に基づく。温度センサ222は、照射器221の温度計測信号を、常時出力している。コントローラー20は、二つの温度センサ222から得られる温度の平均値を除菌器220の温度としてもよい。
【0075】
コントローラー20は、続くステップS52において、取得した温度に基づいて処理可能枚数を決定する。コントローラー20は、処理可能枚数を、
図4に示すテーブル4に基づいて決定する。テーブル4は、除菌器220の温度と、除菌器220の制限温度から定まる除菌可能な紙幣の枚数とを対応付けている。このテーブルにおいて除菌器220の制限温度は、一例として65℃である。除菌器220の温度が65℃以上になると、除菌器220の温度をそれ以上に温度を上昇させることは好ましくない。そのため、この状態においては、制限温度未満での除菌可能な紙幣の枚数はゼロになる。除菌器220の温度が低い場合は、制限温度との差が大きいため、その分、除菌器220の温度の上昇が許容される。従って、除菌器220の温度が低い場合は、除菌可能な紙幣の枚数が多くなり、除菌器220の温度が高くなるほど、除菌可能な紙幣の枚数は少なくなる。尚、テーブル4は、例えば予め行った実験に基づいて、設定することが可能である。
【0076】
テーブル4において設定される「除菌可能な紙幣の枚数」は、そのまま、「紙幣整理機1が処理可能な紙幣の枚数」に相当する。従って、コントローラー20は、ステップS52において、取得した温度と、テーブル4に基づいて処理可能枚数を決定する。
【0077】
ステップS53において、コントローラー20は、処理可能枚数Npを利用者に通知する。例えば
図6(a)に示すように、インターフェース部21に、処理可能枚数Npを表示してもよい。利用者は、インターフェース部21を通じて提供された情報を見ることによって、紙幣整理機1において処理可能な紙幣の枚数を認識することができる。例えば紙幣整理機1が計数処理を行った直後は、除菌器220の温度が高くなっていることにより、処理可能枚数が比較的少なく表示される場合がある。
【0078】
ステップS54において、コントローラー20は、インターフェース部21を通じて、利用者により計数処理の実行が指示されたか否かを判断する。ステップS54の判断がNoの場合、制御プロセスはステップS51へ戻る。
【0079】
処理の開始を指示する場合、利用者は、例えば
図6(a)の画面においてスタートボタンを操作する。ステップS54の判断がYesの場合、コントローラー20は、ステップS55において、実行が指示された処理に係る紙幣の枚数Nと、処理可能枚数Npとを比較する。尚、紙幣の枚数Nは、利用者によってインターフェース部21を通じて入力されてもよい。ステップS55の判断がYesの場合、つまり、枚数Nが処理可能枚数Npよりも少ない場合、コントローラー20は、ステップS56において、計数処理を開始する。ステップS56においては、紙幣の搬送が開始される。
【0080】
ステップS57において、コントローラー20は、除菌器220をオンする。除菌器220は、紙幣を除菌する。なお、コントローラー20が除菌器220をオンにするとは、搬送されてきた紙幣が除菌器220に到達したときに、除菌器220が紫外線を照射する除菌器220の状態をいう。一方、コントローラー20が除菌器220をオフにするとは、搬送されてきた紙幣が除菌器220に到達したときであっても、除菌器220が紫外線を照射しない除菌器220の状態をいう。
【0081】
紙幣整理機1が処理を実行している間も、温度センサ222は温度の計測信号を出力する。ステップS58において、コントローラー20は、温度の計測信号から、除菌器220の温度を取得する。コントローラー20は、紙幣整理機1が処理を実行している間も、除菌器220の温度を取得できる。
【0082】
続くステップS59において、コントローラー20は、除菌器220が制限温度に到達したか否かを判断する。制限温度に到達していない場合、コントローラー20は、ステップS510において、処理が終了したか否かを判断する。処理が終了していない場合、制御プロセスはステップS57に戻り、紙幣整理機1は、計数処理を継続する。
【0083】
ステップS59において、除菌器220が制限温度に到達した場合、除菌器220の温度がそれ以上に上昇することを避けることが好ましい。そこで、コントローラー20は、ステップS512において、除菌器220をオフにする。除菌器220は動作を停止する一方で、紙幣整理機1は、計数処理を継続する。ステップS513において、コントローラー20は、処理が終了したか否かを判断し、処理が終了していない場合、制御プロセスはステップS512に戻り、除菌器220をオフにしたまま、紙幣整理機1は、計数処理を継続する。
【0084】
ステップS510又はステップS513の判断がYesになれば、紙幣整理機1は計数処理を終了する。
【0085】
ステップS55に戻り、ステップS55の判断がNoの場合、つまり、枚数Nが処理可能枚数Np以上の場合、計数処理を行うと、除菌器220が制限温度を超えると予想される。コントローラー20は、ステップS511において、インターフェース部21に、例えば
図6(b)に示すような画面を表示し、利用者に処理の開始か、キャンセルかを指定させる。利用者が処理をキャンセルする場合、つまり、ステップS511の判断がNoの場合、紙幣整理機1は計数処理を開始しないで、制御プロセスは終了する。
【0086】
利用者が処理の開始を指定した場合、つまり、ステップS511の判断がYesの場合、制御プロセスはステップS56へ移行し、紙幣整理機1は計数処理を開始する。この場合、計数処理中に除菌器220の温度が制限温度に到達することが予想される。除菌器220の温度が制限温度に到達すれば、前述したように、制御プロセスはステップS59からステップS512へ移行し、除菌器220をオフにした状態で、紙幣整理機1は、計数処理を継続する。
【0087】
紙幣整理機1は、除菌器220の実際の温度に基づいて紙幣の処理及び除菌を行うため、除菌器220の制限温度が超えない範囲で、貨幣処理を実行できる。除菌器の実際の温度に関わらず処理の上限数が予め一律に定められる従来の装置と比較して、紙幣整理機1は、処理の効率が高まる。
【0088】
また、紙幣整理機1が処理を開始する前に、除菌器220の温度に基づいて、処理の上限数が適切な数に設定されるため、紙幣整理機1は除菌器220の制限温度が超えない範囲で処理を実行できる。
【0089】
紙幣整理機1の処理中に取得された除菌器220の温度に基づいて、除菌器220をオフにするため、除菌器220が制限温度を超えることが抑制できる。
【0090】
(変形例)
紙幣整理機1の処理中に除菌器220が制限温度に到達した場合、紙幣整理機1は、除菌器220の動作を停止させつつ処理を継続する代わりに、処理を中止してもよい。また、紙幣整理機1は、(1)除菌器220の動作を停止させつつ処理を継続する、又は、(2)処理を中止する、を、切り替えてもよい。(1)(2)の切り替えは、利用者がインターフェース部21を通じて決定してもよい。また、紙幣整理機1が予め取得した利用者の情報に基づいて、紙幣整理機1が自動的に切り替えを行ってもよい。また、紙幣整理機1において、(1)又は(2)の何れか一方を、予め設定しておいてもよい。
【0091】
また、紙幣整理機1及び除菌器220が処理を中断している間に、強制的に放熱されている除菌器220の温度が下がる。紙幣整理機1及び除菌器220は、計測された除菌器220の温度が再開可能温度を下回れば、処理及び紙幣の除菌を再開してもよい。再開可能温度は、制限温度よりも低い温度として、適宜設定できる。
【0092】
また、紙幣整理機1は、テーブル4に基づいて処理可能枚数を決定する代わりに、除菌器220の温度T0と、除菌器220の制限温度T1と、除菌可能な貨幣の数との関係を表すモデル式f(T0,T1)に基づいて、処理可能枚数を決定してもよい。モデル式は、例えば予め実施した実験結果に基づいて定めることができる。
【0093】
モデル式には、除菌器の温度T0、除菌器の制限温度T1の他にも様々なパラメータα、例えば周囲温度といったパラメータαを含めることができる(つまり、f(T0,T1,α))。周囲温度T2が高いと除菌器220が放熱しにくく、除菌器220の温度が高くなりやすい。周囲温度T2が高いと、処理可能枚数は少なくなる。
【0094】
また、ステップS55の判断がNoの場合、紙幣整理機1は、処理の実行を強制的に中止してもよい(つまり、紙幣整理機1は、処理の開始を禁止する)。紙幣整理機1の処理中に、除菌器220の温度が制限温度を超えてしまうことが未然に回避される。
【0095】
また、ステップS511において、利用者は、処理対象の紙幣の枚数を、処理可能枚数Np未満に再設定した上で、処理の開始を指定してもよい。
【0096】
ステップS512において除菌器220をオフにした後に、紙幣整理機1が処理を行った紙幣は除菌されずに集積部24~27、又は、集積部31~34に集積される。紙幣整理機1は、例えば
図6(c)に示すように、インターフェース部21を通じて、除菌されていない紙幣が、集積部に集積されていることを、利用者に通知してもよい。この通知には、除菌されていない紙幣が集積されている集積部の情報を含めてもよい。利用者は、集積部24~27、又は、集積部31~34に集積されている紙幣に、除菌されていない紙幣が含まれることを認識できる。尚、利用者に対する情報の提供は、インターフェース部21の表示に代えて、LEDといった通知ランプの点灯であってもよい。通知ランプは、例えば各集積部24~27及び集積部31~34に対応して、紙幣整理機1に取り付けられていてもよい。利用者は、点灯した通知ランプに基づいて、除菌されていない紙幣が集積されている集積部を認識することができる。
【0097】
また、紙幣整理機1は、処理中に取得された除菌器220の温度に基づいて、処理可能枚数を決定してもよい。この場合、処理可能枚数は、紙幣整理機1の処理中に変化する除菌器220の温度に応じて、動的に決定される。紙幣整理機1は、動的に決定される処理可能枚数に基づいて、紙幣の処理を実行する。紙幣整理機1の処理中に、処理可能枚数を動的に決定する場合も、上述した、テーブル4またはモデル式を用いて処理可能枚数を決定できる。紙幣整理機1は、除菌器220の制限温度が超えない範囲で、処理を実行できる。
【0098】
(紙幣処理機)
図7は、紙幣処理機5を示している。紙幣処理機1は、貨幣処理機の変形例でありかつ、
図1の紙幣整理機1の変形例である。
【0099】
紙幣処理機5は、例えば金融機関に設置される。紙幣処理機5の利用者は、例えば金融機関の行員または顧客である。利用者は、紙幣処理機5を使って、入金処理を行ったり、出金処理を行ったりできる。尚、紙幣処理機5の設置場所は、特定の場所に限定されない。
【0100】
紙幣処理機5は、バラ紙幣を取り扱う。紙幣処理機5は、利用者の紙幣を入金したり、利用者へ紙幣を出金したりする。紙幣処理機5は、例えばリサイクラーである。紙幣処理機5は、単体で設置されてもよいし、他の装置、例えば硬貨を取り扱う硬貨処理装置、及び/又は、小切手を取り扱う小切手処理装置と組み合わされてもよい。
【0101】
紙幣処理機5は、処理部51と金庫部52とを有している。処理部51は、上部筐体511を有している。金庫部52は、金庫筐体521を有している。金庫筐体521は、収容物を所定以上のセキュリティレベルで防護する。金庫筐体521のセキュリティレベルは上部筐体511よりも高い。具体的に金庫筐体521は、所定の厚み以上の金属板によって形成されている。
【0102】
処理部51は、入金部61を有している。入金部61は、例えば入金処理において、利用者が入金のための紙幣を投入する部位である。入金部61は、入金口611を有している。利用者は、入金口611を通じて、紙幣を入金部61へ手で投入する。入金部61は、複数枚の紙幣を保持できる。入金部61は、紙幣を一枚ずつ上部筐体511の中へ繰り出す機構を有している。
【0103】
処理部51は、出金部62を有している。出金部62は、例えば出金処理において、出金のための紙幣が払い出される部位である。出金部62は、複数枚の紙幣を保持できる。出金部62は、出金口621を有している。利用者は、出金部62に保持されている紙幣を、出金口621を通じて手で取り出す。
【0104】
処理部51は、一時保留部64を有している。一時保留部64は、紙幣の収納と、収納している紙幣の繰り出しを行う。一時保留部64は、例えばドラム巻取式の収納ユニットである。一時保留部64には、公知の様々な構造が採用できる。ドラム巻取式の一時保留部64は、紙幣を収納する時及び紙幣を繰り出す時に、紙幣の順番が入れ替わらないという特徴を有している。
【0105】
処理部51は、上部搬送路71を有している。紙幣は、上部搬送路71に沿って、一枚一枚、間隔を開けて搬送される。上部搬送路71は、ループ状の搬送路を有している。紙幣は、ループ状の搬送路に沿って、
図7における時計回り方向又は反時計回り方向に搬送される。入金部61、出金部62、及び、一時保留部64はそれぞれ、ループ状の搬送路から分岐した搬送路に接続されている。入金部61に投入された紙幣は、入金部61からループ状の搬送路へ搬送される。また、ループ状の搬送路に沿って搬送される紙幣は、選択的に、出金部62、又は、一時保留部64へ搬送される。一時保留部64から繰り出された紙幣は、一時保留部64からループ状の搬送路へ搬送される。
【0106】
処理部51は、識別部65を有している。識別部65は、ループ状の搬送路に位置している。紙幣は、識別部65を通過する。識別部65は、識別部65を通過する紙幣の一枚一枚について識別を行う。識別部65は、紙幣の特徴を取得するための、複数種のセンサを有している。識別部65は、紙幣の特徴に基づいて、紙幣の金種、真偽、及び、正損を識別する。識別部65はまた、紙幣に印刷されている識別番号を取得する。識別番号は、例えば複数の記号の列なりから構成される。識別番号は、数字、文字、及び、符号の少なくとも二種類を含んでいる。
【0107】
金庫部52は、収納部を有している。金庫部52は、第1収納部81、第2収納部82、第3収納部83、第4収納部84、及び、第5収納部85を有している。第1収納部81、第2収納部82、第3収納部83、第4収納部84、及び、第5収納部85はそれぞれ、紙幣の収納と、収納している紙幣の繰り出しが可能である。第1収納部81、第2収納部82、第3収納部83、第4収納部84、及び、第5収納部85が紙幣を収納することは、紙幣処理機5の金庫部52が紙幣を収納することと同義である。
【0108】
第1収納部81、第2収納部82、第3収納部83、第4収納部84、及び、第5収納部85はそれぞれ、スタック式のカセットである。スタック式の収納部は、紙幣を重ねて収納する。
図7に示すように、第1収納部81、第2収納部82、及び、第3収納部83はそれぞれ、一つの収納領域を有している。第4収納部84、及び、第5収納部85はそれぞれ、上領域91と下領域92との二つの収納領域を有している。上領域91と下領域92とは互いに独立している。尚、第4収納部84は、一つの収納領域のみを有していてもよい。第5収納部85も、一つの収納領域を有していてもよい。
【0109】
例えば、第1収納部81、第2収納部82、第3収納部83、第4収納部84、及び、第5収納部85は、互いに異なる金種の紙幣を収納してもよい。第1収納部81、第2収納部82、第3収納部83、第4収納部84、及び、第5収納部85は、入金処理時に、紙幣を収納してもよい。第1収納部81、第2収納部82、第3収納部83、第4収納部84、及び、第5収納部85は、出金処理時に、紙幣を繰り出してもよい。
【0110】
金庫部52は、下部搬送路72を有している。紙幣は、下部搬送路72に沿って、一枚一枚、間隔を開けて搬送される。下部搬送路72は、それぞれ上部搬送路71のループ状の搬送路から分岐した、複数の分岐路を有している。第1収納部81、第2収納部82、第3収納部83、第4収納部84の上領域91及び下領域92、並びに、第5収納部85の上領域91及び下領域92はそれぞれ、下部搬送路72の複数の分岐路に接続されている。ループ状の搬送路に沿って搬送される紙幣は、選択的に、下部搬送路72を介して、第1収納部81、第2収納部82、第3収納部83、第4収納部84の上領域91若しくは下領域92、又は、第5収納部85の上領域91若しくは下領域92へ搬送される。また、第1収納部81、第2収納部82、第3収納部83、第4収納部84の上領域91若しくは下領域92、又は、第5収納部85の上領域91若しくは下領域92から下部搬送路72へ繰り出された紙幣は、ループ状の搬送路へ搬送される。
【0111】
尚、
図7の金庫部52の構成は一例である。金庫筐体521内に収容される収納部の数及び配置、並びに、各収納部の構造は、
図7の構成に限定されない。
【0112】
搬送部7は、上部搬送路71又は下部搬送路72に沿って、紙幣を搬送する。これらの搬送路は、多数のローラ、複数のベルト、これらを駆動するモータ、及び、複数のガイドの組み合わせによって構成されている。各紙幣は、上部搬送路71及び下部搬送路72において、その長辺の縁を前にして搬送される。尚、各紙幣は、その短辺の縁を前にして搬送されてもよい。
【0113】
上部搬送路71及び下部搬送路72における各分岐箇所には、分岐機構が配設されている。分岐機構は、紙幣の搬送方向を切り替える。分岐機構の構造は公知である。また、上部搬送路71及び下部搬送路72における各所には、通過センサが配設されている。通過センサは、光学式、超音波式又は機械式のセンサであって、紙幣の通過を検知する。通過センサは、後述するコントローラー60へ検知信号を出力する。搬送部7は、コントローラー60からの制御信号と通過センサの検知信号とに基づいて各分岐機構を制御する。紙幣は、所定の搬送先へ搬送される。
【0114】
尚、
図7の搬送部7の構成は一例である。上部搬送路71及び下部搬送路72の構成は、入金部61、出金部62、一時保留部64、識別部65、及び、収納部81~85の配置に応じて、適宜変更することができる。
【0115】
紙幣処理機5は、除菌器68を有している。除菌器68は、搬送中の紙幣を除菌する。除菌器68は、ループ状の搬送路において、識別部65に隣り合って位置している。除菌器68は、搬送部7に組み込まれており、入金処理の紙幣搬送方向において、識別部65より下流に位置する。識別部65を通過する紙幣は、除菌器68も通過する。除菌器68は、
図3に示す除菌器220と同じ構造であってもよい。紙幣は、ループ状の搬送路に沿って時計回り方向又は反時計回り方向に搬送されるため、紙幣は、除菌器68を第1方向、又は、第1方向とは逆方向の第2方向に通過する。除菌器68の温度センサは、後述のコントローラー60へ、除菌器68の温度に対応する信号を出力する。
【0116】
紙幣処理機5は、
図8に示すように、コントローラー60を備えている。コントローラー60は、CPU、メモリ、及び、I/O回路を含んで構成することができる。コントローラー60には、入金部61、出金部62、一時保留部64、識別部65、搬送部7、第1収納部81、第2収納部82、第3収納部83、第4収納部84、及び、第5収納部85が、それぞれ信号の授受可能に接続されている。
【0117】
紙幣処理機5は、インターフェース部66を有している。インターフェース部66は、コントローラー60に信号の授受可能に接続されている。インターフェース部66は、利用者が操作を行う部位である。インターフェース部66は、例えばタッチパネル式のフラットパネルディスプレイ、及び/又は、EPP(Encrypting Pin Pad)としてもよい。利用者は、インターフェース部66を通じて、入金処理又は出金処理の実行を、紙幣処理機5へ指示することができる。インターフェース部66はまた、外部装置からの信号を受信する受信機であってもよい。利用者が外部装置を操作することにより、外部装置はインターフェース部66へ信号を送信する。インターフェース部66は、利用者の操作に対応する信号を、コントローラー60へ出力する。
【0118】
紙幣処理機5は、記憶部67を有している。記憶部67は、各種の情報を記憶する。記憶部67は、例えば、第1収納部81、第2収納部82、第3収納部83、第4収納部84、及び、第5収納部85のそれぞれに収納されている紙幣の情報を記憶する。記憶部67は、具体的には、各収納部81~85に収納されている紙幣の枚数及び金種を記憶している。記憶部67はまた、各収納部81~85の在高を記憶している。在高は、紙幣の枚数及び金種に基づく合計金額である。
【0119】
記憶部67は、各収納部81~85に収納されている紙幣の識別番号を記憶している。記憶部67は、
図12に例示するように、各収納部81~85における紙幣の収納順に、識別番号を記憶している。紙幣の収納順と識別番号とを対応付けた情報を、以下において識別番号リスト670と呼ぶ場合がある。
【0120】
記憶部67はまた、
図4に示されるテーブル4を記憶している。
【0121】
コントローラー60は、利用者の指示に関する信号であって、インターフェース部66からの信号を受けた場合に、紙幣処理機5が所定の動作を行うよう、入金部61、出金部62、一時保留部64、識別部65、搬送部7、第1収納部81、第2収納部82、第3収納部83、第4収納部84、及び、第5収納部85へ制御信号を出力する。以下、紙幣処理機5が各種の処理を実行する際の動作を説明する。
【0122】
(入金処理)
図9の上図は、紙幣処理機5における、入金処理時の、紙幣の搬送経路を、矢印によって示している。利用者は、入金のための紙幣を、入金部61に投入する。入金部61は、紙幣を一枚一枚、上部筐体511の中へ繰り出す。搬送部7は、紙幣を識別部65へ搬送する。識別部65は、紙幣を識別する。識別部65はまた、紙幣から識別番号を読み取る。
【0123】
搬送部7は、識別部65の識別結果に従って、紙幣を、第1収納部81、第2収納部82、第3収納部83、第4収納部84、又は、第5収納部85へ搬送する。尚、
図9の上図では、紙幣の搬送先が、第3収納部83である場合を例示している。収納部81~85は、紙幣を収納する。尚、搬送部7は、識別部65がリジェクト紙幣であると識別した紙幣を、利用者へ返却するために、出金部62へ搬送する。入金部61に投入された紙幣が全て紙幣処理機5の中に取り込まれれば、入金処理は終了する。
【0124】
尚、識別部65から収納部81~85へ紙幣が搬送される間に、除菌器68は紙幣の除菌を行う。収納部81~85は、除菌された紙幣を収納する。
【0125】
図9の上図は、入金処理において、一時保留部64を利用しないで、識別された紙幣を収納部81~85へ直接収納する第1入金処理に対応する。紙幣処理機5は、入金処理において、一時保留部64を利用した第2入金処理も可能である。
図9の下図は、第2入金処理時の、紙幣の搬送経路を、矢印によって示している。搬送部7は、識別部65が識別を行った紙幣を一時保留部64へ搬送する(
図9の下図の実線参照)。一時保留部64は、紙幣を収納する。
【0126】
入金部61に投入された紙幣が全て紙幣処理機5の中に取り込まれた後、紙幣処理機5は、利用者に対し、識別部65の識別結果に基づく入金金額を提示する。利用者がインターフェース部66を通じて確定操作を行えば、
図9の下図に破線で示すように、一時保留部64が紙幣を繰り出す。搬送部7は、紙幣を、識別部65を介して収納部81~85へ搬送する。収納部81~85は紙幣を収納する。尚、利用者がインターフェース部66を通じてキャンセル操作を行えば、一時保留部64が紙幣を繰り出すと共に、搬送部7は、紙幣を出金部62へ搬送する。
【0127】
第2入金処理において、除菌器68は、識別部65から一時保留部64へ紙幣が搬送される間に、紙幣の除菌を行うと共に、一時保留部64から収納部81~85へ紙幣が搬送される間にも、紙幣の除菌を行う。第2入金処理において、除菌器68は、一枚の紙幣につき二回の除菌を行う。尚、除菌器68は、2回の除菌の内の1回を省略してもよい。
【0128】
第1入金処理又は第2入金処理が終了すれば、記憶部67は、収納部81~85に収納された紙幣に関する情報を記憶する。記憶部67は、識別番号リスト670を更新する(
図12参照)。つまり、記憶部67は、識別部65が紙幣から読み取った識別番号を、収納部毎に、紙幣の収納順に記憶する。
図12に例示される識別番号リスト670では、収納部に収納されている紙幣の通し番号(
図12の例では、「91」~「104」)と、紙幣の金種(
図12の例では、$1)と、識別番号(
図12の例では、G61938等)とが対応付けられている。最も上位の通し番号は、収納部に収納されている紙幣の枚数に相当する。記憶部67は、入金処理が行われる度に、各収納部81~85の識別番号リスト670を更新する。記憶部67が記憶している識別番号リスト670には、各収納部81~85の最新の収納状態が反映される。
【0129】
(出金処理)
出金処理の際に利用者は、インターフェース部66を通じて、出金すべき紙幣の金種及び枚数を指定する。利用者は、出金すべき金額を指定してもよい。
【0130】
収納部81~85は、出金のための紙幣を繰り出す。具体的には、出金すべき金種の紙幣を収納している収納部が、紙幣を繰り出す。搬送部7は、紙幣を、識別部65へ搬送する。識別部65は、紙幣の識別を行う。搬送部7は、識別部65によって非リジェクト紙幣と判断された紙幣、つまり正常紙幣を、出金部62へ搬送する。出金部62は紙幣を保持する。尚、識別部65によってリジェクト紙幣と判断された紙幣は、例えば一時保留部64へ収納される。リジェクト紙幣は、例えば重送及び/又は斜行している紙幣である。
【0131】
出金すべき紙幣が全て、出金部62に出金されれば、出金処理は終了する。記憶部67は、出金処理後に、収納部81~85から繰り出された紙幣に関するデータを、消去する。記憶部67は、出金処理中に識別部65が紙幣から読み取った識別番号を、識別番号リスト670から消去する。記憶部67は、出金処理が行われる度に、各収納部81~85の識別番号リスト670を更新する。記憶部67が記憶している識別番号リスト670には、各収納部81~85の最新の収納状態が反映される。
【0132】
除菌器68は、出金処理においてはオフにされ、紙幣の除菌を行わない。収納部81~85から繰り出された紙幣は、既に除菌されているためである。なお、設定により、出金処理においても、除菌器68をオンにして紙幣の除菌を行ってもよい。
【0133】
(精査処理)
精査処理は、収納部81~85に収納されている紙幣を確定させる処理である。担当者が、インターフェース部66を通じて、精査処理の開始を指示すれば、精査処理の対象の収納部は、収納している紙幣を繰り出す。搬送部7は、紙幣を、識別部65を介して一時保留部64へ搬送する。一時保留部64は、紙幣を収納する。収納部が全ての紙幣を繰り出しかつ、一時保留部64が紙幣を収納すれば、一時保留部64は、収納している紙幣の繰り出しを開始する。搬送部7は、紙幣を、識別部65を介して元の収納部へ搬送する。元の収納部は、紙幣を収納する。
【0134】
識別部65は、紙幣が2回通過するうちの少なくとも1回の通過時に、紙幣の識別と、識別番号の取得とを行う。元の収納部が、全ての紙幣を収納した後、記憶部67は、識別結果に基づいて、当該収納部の在高を更新すると共に、識別番号リスト670を更新する。収納部に収納されている紙幣が確定し、精査処理が終了する。
【0135】
尚、除菌器68は、精査処理において、紙幣が2回通過するうちの少なくとも1回の通過時に、紙幣の除菌を行ってもよい。また、除菌器68は、精査処理中は、紙幣の除菌を行わなくてもよい。また、担当者が、精査処理中の紙幣の除菌の要否を選択してもよい。
【0136】
(除菌器の制御)
次に、
図10及び
図11のフローチャートを参照しがら、除菌器68の制御を含む紙幣処理機5の制御の説明を行う。ステップS11~S14は、
図5のフローのステップS51~54と同じである。ステップS11において、コントローラー60は、除菌器68の温度を取得する。
【0137】
続くステップS12において、コントローラー60は、取得した温度に基づいて処理可能枚数を決定する。コントローラー60は、処理可能枚数を、
図4に示すテーブル4に基づいて決定する。コントローラー60は、処理可能枚数を、前述したモデル式に基づいて決定してもよい。
【0138】
ステップS13において、コントローラー60は、インターフェース部66を通じて処理可能枚数Npを利用者に通知する(
図6(a)参照)。
【0139】
ステップS14において、コントローラー60は、インターフェース部66を通じて、利用者により処理の実行が指示されたか否かを判断する。ステップS14の判断がNoの場合、制御プロセスはステップS11へ戻る。
【0140】
ステップS14の判断がYesの場合、コントローラー60は、ステップS15において、実行が指示された処理が、入金処理であるか否かを判断する。ステップS15の判断がYesの場合、コントローラー60は、ステップS16において、その入金処理が第1入金処理であるか否かを判断する。
【0141】
ステップS16の判断がYesの場合、コントローラー60は、ステップS17において、実行が指示された処理に係る紙幣の枚数Nと、処理可能枚数Npとを比較する。ステップS17は、ステップS55と実質的に同じステップである。ステップS17の判断がYesの場合、つまり、枚数Nが処理可能枚数Npよりも少ない場合、制御プロセスは、ステップS110へ進む。
【0142】
図11のステップS110~S118は、ステップS56~S513と実質的に同じステップである。コントローラー20は、ステップS110において、処理を開始する。ステップS111において、コントローラー20は、除菌器68をオンする。除菌器68は、紙幣を除菌する。
【0143】
ステップS112において、コントローラー60は、温度の計測信号から、除菌器68の温度を取得する。続くステップS113において、コントローラー60は、除菌器68が制限温度に到達したか否かを判断する。制限温度に到達していない場合、コントローラー60は、ステップS114において、処理が終了したか否かを判断する。処理が終了していない場合、制御プロセスはステップS111に戻り、紙幣処理機5は、処理を継続する。
【0144】
ステップS113において、除菌器68が制限温度に到達した場合、コントローラー60は、ステップS117において、除菌器68をオフにする。一方、紙幣処理機5は、処理を継続する。ステップS118において、コントローラー60は、処理が終了したか否かを判断し、処理が終了していない場合、制御プロセスはステップS117に戻り、除菌器68をオフにしたまま、紙幣処理機5は、処理を継続する。
【0145】
ステップS114又はステップS118の判断がYesになれば、紙幣処理機5は処理を終了する。
【0146】
図10のステップS17に戻り、ステップS17の判断がNoの場合、つまり、枚数Nが処理可能枚数Np以上の場合、処理を行うと、除菌器68が制限温度を超えると予想される。コントローラー60は、ステップS115において、利用者に処理の開始か、キャンセルかを指定させる(
図6(b)参照)。利用者が処理をキャンセルする場合、つまり、ステップS115の判断がNoの場合、紙幣処理機1は処理を開始しないで、制御プロセスは終了する。
【0147】
利用者が処理の開始を指定した場合、制御プロセスはステップS115からステップS110へ移行し、紙幣処理機5は処理を開始する。処理中に除菌器68の温度が制限温度に到達すれば、前述したように、制御プロセスはステップS113からステップS117へ移行し、除菌器68をオフにした状態で、紙幣処理機5は、処理を継続する。
【0148】
図10のステップS16に戻り、入金処理が第2入金処理である場合、コントローラー60は、ステップS18において、実行が指示された処理に係る紙幣の枚数Nと、処理可能枚数Npの1/2とを比較する。前述したように、第2入金処理において除菌器68は一枚の紙幣につき、2回除菌を行うためである。紙幣処理機5が第2入金処理を行う場合、第1入金処理時に決定される上限数(つまり、Np)よりも少ない上限数(つまり、Np/2)が決定される。
【0149】
ステップS18の判断がYesの場合、つまり、枚数Nが処理可能枚数Npの半分よりも少ない場合、制御プロセスはステップS110へ進む。ステップS18の判断がNoの場合、つまり、枚数Nが処理可能枚数Npの半分以上である場合、制御プロセスはステップS115へ進む。
【0150】
ステップS15に戻り、ステップS15の判断がNoの場合、コントローラー60は、ステップS19において、利用者により実行が指示された処理が、出金処理であるか否かを判断する。ステップS19の判断がYesの場合、制御プロセスは、ステップS119に進む。前述したように、出金処理において除菌器68は紙幣の除菌を行わない。コントローラー60は、ステップS119において出金処理を開始し、ステップS117及びステップS118において、紙幣の除菌を行わずに、出金処理を完了させる。
【0151】
ステップS19に戻り、ステップS19の判断がNoの場合、ここでは、利用者により実行が指示された処理が、精査処理であるとする。制御プロセスは、入金処理の実行時と同様に、ステップS110に進む。前述したように紙幣処理機5は、除菌器68が紙幣の除菌を行いながら、精査処理を実行する(ステップS111~S114、S117、S118)。
【0152】
尚、ステップS117において除菌器68をオフにした後に、紙幣処理機5が処理を行った場合、除菌されていない紙幣が発生する。紙幣処理機5は、例えばインターフェース部66を通じて、そのことを利用者に通知してもよい。
【0153】
(制御の変形例)
尚、処理中に除菌器68が制限温度に到達した場合、紙幣処理機5は、除菌器68の動作を停止させつつ処理を継続する代わりに、処理を中止してもよい。また、紙幣処理機5は、(1)除菌器68の動作を停止させつつ処理を継続する、又は、(2)処理を中止する、を、切り替えてもよい。(1)(2)の切り替えは、利用者がインターフェース部66を通じて決定してもよい。また、予め取得された利用者の情報に基づいて、紙幣処理機5が自動的に切り替えを行ってもよい。また、紙幣処理機5において、(1)又は(2)の何れか一方を予め設定しておいてもよい。
【0154】
また、前述した出金処理では、除菌器68が動作を停止しているが、紙幣処理機5は、出金処理時において、紙幣を出金部62へ払い出す前に、除菌器68によって貨幣を除菌してもよい。出金処理時に紙幣が除菌されれば、紙幣処理機5は、収納部81~85に除菌されていない紙幣が収納されていても、除菌された紙幣を、出金部62へ払い出すことができる。この場合、
図10のステップS19の判断がYesとなると、制御プロセスは、ステップS17に進む。
【0155】
また、収納部81~85に除菌されている紙幣と除菌されていない紙幣とが収納されている場合、紙幣処理機5は、出金処理において、除菌されている紙幣のみを、出金部62へ払い出してもよい。具体的に、紙幣処理機5の記憶部67は、収納部81~85に収納されている紙幣の識別番号を記憶している。記憶部67は、例えば入金処理時における除菌器68のオン/オフに基づいて、
図12に示すように、紙幣の識別番号と対応付けて、当該紙幣が除菌されているか除菌されていないかの情報を記憶する。
【0156】
図13は、出金処理時の紙幣の搬送経路を示している。
図13の上図に示すように、搬送部7は、収納部が繰り出した紙幣を識別部65へ搬送する。識別部65は、紙幣の識別と識別番号の取得とを行う。取得された識別番号と識別番号リスト670とが照合されることによって、当該紙幣が除菌されている紙幣であるか、除菌されていない紙幣であるかが区別される。搬送部7は、除菌されている紙幣を、出金部62へ搬送する(実線の矢印参照)。搬送部7は、除菌されていない紙幣を、一時保留部64へ搬送する(破線の矢印参照)。紙幣処理機5は、除菌されている紙幣のみを、出金部62へ払い出すことができる。
【0157】
図13の下図に示すように、出金処理の終了後、一時保留部64は、収納している未除菌の紙幣を繰り出し、搬送部7は、当該紙幣を識別部65へ搬送する。紙幣は、識別部65及び除菌器68を通過する。除菌器68は、このタイミングで紙幣の除菌を行ってもよい。搬送部7は、除菌器68を通過した紙幣を、元の収納部81~85へ搬送し、元の収納部は、紙幣を収納する。収納部81~85は、除菌された紙幣を収納できる。
【0158】
ステップS17又はS18の判断がNoの場合、紙幣処理機5は、処理の実行を強制的に中止してもよい。
【0159】
また、ステップS115において、利用者は、処理対象の紙幣の枚数を、処理可能枚数Np又はNp/2未満に再設定した上で、処理の開始を指定してもよい。
【0160】
紙幣処理機5は、処理中に取得された除菌器68の温度に基づいて、処理可能枚数を決定してもよい。紙幣処理機5は、除菌器68の制限温度が超えない範囲で、貨幣処理を実行できる。
【0161】
尚、ここに開示する技術は、前述した構造の紙幣整理機1又は紙幣処理機5への適用に限定されない。例えば硬貨を処理する硬貨処理機に、ここに開示する技術を適用してもよい。ここに開示する技術は、様々な構造の貨幣処理機に広く適用可能である。
【0162】
また、ここに開示する技術が適用可能な貨幣処理機は、入金処理を行う入金機であってもよい。また、出金処理を行う出金機であってもよい。
【0163】
除菌器220、68の制御に係るコントローラー20、60は、貨幣処理機の中に設けられる他にも、貨幣処理機の外にあってもよい。
【0164】
また、除菌器220、68は、紫外線照射を行う装置に限定されない。紙幣の除菌を行う装置であって、例えば発熱等の要因によって、連続使用が制限される装置であれば、種々の除菌器を有する貨幣処理機に対し、ここに開示する技術を適用できる。
【符号の説明】
【0165】
1 紙幣整理機(貨幣処理機)
220 除菌器
22 取込部
24 第1集積部
25 第2集積部
26 第3集積部
27 第4集積部
31 第5集積部
32 第6集積部
33 第7集積部
34 第8集積部
4 テーブル
5 紙幣処理機(貨幣処理機)
52 金庫部(金庫)
61 入金部(取込部)
62 出金部(払出部)
68 除菌器