IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ジェイ・エム・エスの特許一覧 ▶ 医療法人あかね会の特許一覧

<>
  • 特開-靭帯切開術用の補助具 図1
  • 特開-靭帯切開術用の補助具 図2
  • 特開-靭帯切開術用の補助具 図3
  • 特開-靭帯切開術用の補助具 図4
  • 特開-靭帯切開術用の補助具 図5
  • 特開-靭帯切開術用の補助具 図6
  • 特開-靭帯切開術用の補助具 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129378
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】靭帯切開術用の補助具
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/3211 20060101AFI20240919BHJP
   A61B 17/56 20060101ALI20240919BHJP
【FI】
A61B17/3211
A61B17/56
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038548
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】000153030
【氏名又は名称】株式会社ジェイ・エム・エス
(71)【出願人】
【識別番号】523091442
【氏名又は名称】医療法人あかね会
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(72)【発明者】
【氏名】蜂須賀 裕己
(72)【発明者】
【氏名】山本 敬史
(72)【発明者】
【氏名】福瀧 修司
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160FF60
4C160LL30
4C160LL70
(57)【要約】
【課題】靭帯切開術を行う場合に靭帯の切離を開始する部分を直接視認しやすい靭帯切開術用の補助具を提供すること。
【解決手段】靭帯切開用の補助具1は、長手方向に所定長さ延びると共に長手方向に直交する断面の断面形状が凹状に形成される凹状本体部2と、凹状本体部2の長手方向Dの一端側D1において凹状本体部2の長手方向に直交する断面の断面形状が凹状に開放して開口して形成され凹状本体部2の長手方向Dの途中の断面の開口面積Saよりも大きい開口面積Sb,Scを有する一端側開口部3と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
靭帯切開術用の補助具であって、
長手方向に所定長さ延びると共に長手方向に直交する断面の断面形状が凹状に開放して形成される凹状本体部と、
前記凹状本体部の長手方向の一端において前記凹状本体部の長手方向に直交する断面の断面形状が凹状に開放して開口して形成され前記凹状本体部の長手方向の途中の断面の開口面積よりも大きい開口面積を有する一端側開口部と、を備える靭帯切開用の補助具。
【請求項2】
前記靭帯切開術用の補助具の長手方向の他端側に形成され他端側の先端に向かうに従って傾斜する他端側傾斜部を更に備える請求項1に記載の靭帯切開用の補助具。
【請求項3】
前記一端側開口部は、前記靭帯切開術用の補助具の長手方向の一端側の先端に向かうに従って下り傾斜して開口する一端側傾斜開口部を有する請求項1又は2に記載の靭帯切開用の補助具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、靭帯切開術用の補助具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、手根管症候群の治療方法として、横手根靭帯を切離することにより手根管を開放させ、正中神経を圧迫する要因を取り除く手根管開放術がある。手根管症候群は、掌の内部の横手根靭帯が肥大することなどによって正中神経が圧迫され、指がしびれたり、痛んだりするなどの症状が生じる。例えば、手根管開放術(靭帯切開術)に用いられる手根管開放術用の補助具として、細幅の棒状の把持部と、把持部の一端から延びる平板状の挿入部と、を備えるものが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の手根管開放術用の補助具において、挿入部の一方の面の幅方向のほぼ中央には、挿入部の長手方向に沿ってガイド溝が形成されている。この手根管開放術用の補助具を用いて手根管開放術を行う場合、患者の掌を切開して、切開部分から横手根靭帯と正中神経との間に補助具の挿入部を挿入した後に、手術用ナイフをガイド溝に沿って挿入して横手根靭帯を切離する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-299800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の手根管開放術用の補助具を用いる場合には、患者の掌に形成した切開部分から横手根靭帯と正中神経との間の狭い領域に補助具の挿入部を挿入するため、十分な視野が得られずに術野を確保することが難しく、横手根靭帯の切離を開始する部分を直接視認することが難しい。従って、靭帯切開術を行う場合に靭帯の切離を開始する部分を直接視認しやすいことが求められている。
【0006】
本発明は、靭帯切開術を行う場合に靭帯の切離を開始する部分を直接視認しやすい靭帯切開術用の補助具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、靭帯切開術用の補助具であって長手方向に所定長さ延びると共に長手方向に直交する断面の断面形状が凹状に開放して形成される凹状本体部と、前記凹状本体部の長手方向の一端において前記凹状本体部の長手方向に直交する断面の断面形状が凹状に開放して開口して形成され前記凹状本体部の長手方向の途中の断面の開口面積よりも大きい開口面積を有する一端側開口部と、を備える靭帯切開用の補助具に関する。
【0008】
また、前記凹状本体部の長手方向の他端側に形成され他端側の先端に向かうに従って傾斜する他端側傾斜部を更に備えることが好ましい。
【0009】
また、前記一端側開口部は、前記凹状本体部の長手方向の一端側の先端に向かうに従って下り傾斜して開口する一端側傾斜開口部を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、靭帯切開術を行う場合に靭帯の切離を開始する部分を直接視認しやすい靭帯切開術用の補助具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の靭帯切開術用の補助具の斜視図である。
図2】本発明の靭帯切開術用の補助具の側面図である。
図3図1の靭帯切開術用の補助具を長手方向に沿って切断した縦断面図である。
図4】靭帯切開術用の補助具を長手方向の一方側の先端側から見た図である。
図5】靭帯切開術用の補助具を患者の掌に装着する手順を示す図である。
図6】靭帯切開術用の補助具を患者の皮膚と靭帯との間に挿入した状態を示す図である。
図7】靭帯切開術用の補助具を用いて剪刀を挿入する状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の靭帯切開術用の補助具1の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。本実施形態の靭帯切開術用の補助具1は、患者の掌内の横手根靭帯を切離する手根管開放術に用いられる。靭帯切開術用の補助具1は、患者の掌に形成した小切開から皮膚と横手根管靭帯との間に挿入されることで、患者の掌に装着される(図5参照)。
【0013】
本実施形態において、図1に示すように、靭帯切開術用の補助具1が延びる方向を長手方向Dとし、靭帯切開術用の補助具1を患者の掌に装着した場合(図5参照)において、長手方向Dの手前側(一方側)を第1側D1とし、長手方向Dの奥側(他方側)を第2側D2とする。また、図1に示す靭帯切開術用の補助具1を長手方向Dに見た場合において、図4に示すように、靭帯切開術用の補助具1の横方向を幅方向Wとし、上下方向を高さ方向Hとする。
【0014】
図1図3に示すように、靭帯切開術用の補助具1は、断面視U字状で下方に向けて開放する板材により形成され、長手方向Dに所定長さ延びる。靭帯切開術用の補助具1は、長手方向Dに沿って移動されることで患者の掌に形成した小切開を通して皮膚と横手根靭帯との間に挿入される。靭帯切開術用の補助具1は、小切開を通して皮膚と横手根靭帯との間にスムーズに挿入できるように、外面が滑らかな曲線及び直線から形成される。
【0015】
本実施形態において、靭帯切開術用の補助具1のU字の開放部分は、長手方向Dの全域に亘って形成され、長手方向Dに貫通する。靭帯切開術用の補助具1の長手方向Dの長さLは、例えば、全長5cm程度に形成される。靭帯切開術用の補助具1の材料としては、手術中に破損しないように、曲げても折損しにくい材料が用いられる。靭帯切開術用の補助具1の材料には、例えば、樹脂材料が用いられる。靭帯切開術用の補助具1を樹脂材料で形成することで、製造コストを低減でき、手術に要するコストを低減できる。
【0016】
靭帯切開術用の補助具1は、断面視U字状に形成され直線状に所定長さ延びるU字本体部2(凹状本体部)と、U字本体部2の長手方向Dの第1側D1の端部に設けられる一端側導入開口部3(一端側開口部)と、U字本体部2の長手方向Dの第2側D2の端部に設けられる他端側開口部4と、を備える。
【0017】
U字本体部2は、図3及び図4に示すように、長手方向に直交する断面の断面形状が凹状で下方に向けて開放した断面視U字状の筒状に形成され、長手方向Dに所定長さ延びる。U字本体部2の外面は、滑らかな曲線及び直線から形成される。U字本体部2の開放側の下端部には、一対の底辺21が形成される。一対の底辺21は、幅方向Wに離れて平行に配置され、それぞれ、長手方向Dに直線状に延びる。
【0018】
図3及び図4に示すように、U字本体部2の開口22は、下方が開放するU字状に形成され、U字本体部2の長手方向Dの途中において長手方向Dに直交する方向に切断した断面が、長手方向Dの全域に亘って略同じ開口面積Saで延びる。U字本体部2の開口22は、高さ方向Hの大きさが、幅方向Wの大きさよりも大きく形成される。
【0019】
一端側導入開口部3は、図1及び図2に示すように、靭帯切開術用の補助具1の長手方向の第1側D1の端部において、U字本体部2の長手方向Dの第1側D1の外側に向けて開口して形成される。一端側導入開口部3は、靭帯切開術用の補助具1の長手方向の第1側D1の端部において、U字本体部2の長手方向に直交する断面の断面形状が凹状に開放して開口して形成される。一端側導入開口部3は、U字本体部2の長手方向Dの第1側D1の端部に連続して形成される。一端側導入開口部3は、膨出部31と、一対の三角形状部32と、一端部側U字傾斜開口33(一端側傾斜開口部)と、を有する。
【0020】
膨出部31は、U字本体部2から長手方向Dの第1側D1の先端側に連続して形成され、幅方向Wの中央において、U字本体部2よりも上方に曲面状に膨出する。膨出部31の開口の開口面積は、図3に示すように、U字本体部2の長手方向Dの第1側D1の端部から第1側D1に向かうに従って徐々に大きくなり、膨出部31の長手方向Dの第1側D1の端部において最も大きくなる。図3及び図4に示すように、膨出部31の長手方向Dの第1側D1の端部においてU字本体部2の長手方向Dに直交する方向に切断した断面の開口34の開口面積Sbは、U字本体部2の長手方向Dの途中において長手方向Dに直交する方向に切断した断面の開口22の開口面積Saよりも大きい。
【0021】
図1及び図2に示すように、一対の三角形状部32は、膨出部31の幅方向Wの両端部から、靭帯切開術用の補助具1の長手方向Dの第1側D1の先端に向かって三角形状に突出して形成される。一対の三角形状部32は、膨出部31の長手方向Dの第1側D1から先端側に向かうに従って下り傾斜すると共に、長手方向Dの第1側D1の先端側に向かうに従って幅方向Wの外側に広がるように形成される。
【0022】
一対の三角形状部32は、それぞれ、下り傾斜辺321と、先端頂部322と、底辺323と、を有する。
【0023】
下り傾斜辺321は、先端に向かうに従って下り傾斜で形成される。下り傾斜辺321は、斜め上方を向いて傾斜して形成される。底辺323は、三角形状部32の底辺を構成し、U字本体部2の底辺21に連続して長手方向Dの第1側D1に直線状に延びる。底辺323は、U字本体部2の底辺21と同一平面上に位置するように形成される。これにより、靭帯切開術用の補助具1を安定して配置することができる。なお、本実施形態では、底辺323を、U字本体部2の底辺21と同一平面上に位置するように形成したが、これに限られない。底辺323を、先端側に向かうに従って上り傾斜に形成してもよい。
【0024】
先端頂部322は、下り傾斜辺321の先端と底辺323の先端との接続部分に形成される。先端頂部322は、長手方向Dの第1側D1の先端側に曲面状に突出するR(アール)形状に形成される。一対の三角形状部32の先端頂部322は、靭帯切開術用の補助具1の長手方向Dの第1側D1の先端に配置され、図1に示すように、幅方向Wに離れて配置される。
【0025】
図1及び図2に示すように、一端部側U字傾斜開口33は、靭帯切開術用の補助具1の長手方向Dの第1側D1の端部において、下方が開放するU字状に形成され、靭帯切開術用の補助具1の長手方向Dの第1側D1の先端に向かうに従って下り傾斜して開口すると共に、靭帯切開術用の補助具1の長手方向Dの第1側D1の先端側に向かうに従って幅方向Wの両側の外側に広がるように開口する。一端部側U字傾斜開口33は、一対の三角形状部32の下り傾斜辺321の上端面と膨出部31の先端側の端部の先端面311とが、U字状に連続して形成される。
【0026】
一端部側U字傾斜開口33は、図3に示すように、膨出部31の長手方向Dの第1側D1の端部において長手方向Dに直交する方向に切断した断面の開口34に対して傾斜して形成されている。これにより、一端部側U字傾斜開口33の開口面積Scは、膨出部31における開口34の開口面積Sbよりも大きく形成される。
【0027】
他端側開口部4は、図1図3に示すように、靭帯切開術用の補助具1の長手方向Dの第2側D2の先端に形成される。他端側開口部4は、他端側下り傾斜部41と、一対の他端円弧状突出部42と、を有する。
【0028】
他端側下り傾斜部41は、図1及び図2に示すように、U字本体部2の長手方向Dの第2側D2の端部の上端から第2側D2の外側の先端側に下り傾斜で連続して形成される。他端側下り傾斜部41は、U字本体部2の長手方向Dの第2側D2の先端において、長手方向Dの第2側D2の先端に向かうに従って下り傾斜して、上方及び下方が開放する形状に形成される。他端側下り傾斜部41は、靭帯切開術用の補助具1を側方から見た場合に、靭帯切開術用の補助具1の長手方向Dの第2側D2の先端に向かうに従って下り傾斜する下り傾斜辺411(他端側傾斜部)を有する。下り傾斜辺411は、下方に僅かに凹んで湾曲して下り傾斜する。
【0029】
一対の他端円弧状突出部42は、図1に示すように、U字本体部2の長手方向Dの第2側D2の端部において、長手方向Dの第2側D2の先端側に曲面状に突出するR(アール)形状に形成され、幅方向Wに離れて対向して配置される。
【0030】
次に、手根管開放術において、靭帯切開術用の補助具1を使用する手順について説明する。手根管開放術は、手根管症候群を治療する外科的治療方法である。手根管症候群は、患者の掌11の内部の横手根靭帯14が肥大することなどによって、正中神経が圧迫されることにより、指がしびれたり、痛んだりするなどする。手根管開放術は、横手根靭帯14を切離することにより手根管を開放させ、正中神経を圧迫する要因を取り除くことができる。
【0031】
まず、図5の左図に示すように、患者の掌11の手首側の部分において幅方向の中央付近の皮膚12を幅方向に所定長さ切開して小切開13を形成する。そして、図5の右図及び図6に示すように、靭帯切開術用の補助具1を、小切開13から皮膚12と横手根靭帯14との間に挿入する。この場合、靭帯切開術用の補助具1を、U字本体部2の開放部分を下に向けた状態で、他端側開口部4側から、小切開13に挿入して、長手方向Dに移動させる。
【0032】
靭帯切開術用の補助具1は、挿入方向の先端側の他端側開口部4に下り傾斜辺411が形成されることで挿入方向の先端が滑らかな下り傾斜で形成されており、かつ、U字本体部2の外面が滑らかな曲線及び直線により形成される。そのため、靭帯切開術用の補助具1を小切開13に挿入する際、体内の神経や腱や皮下組織等を傷めずに、靭帯切開術用の補助具1を小切開13にスムーズに挿入することができる。これにより、図6に示すように、靭帯切開術用の補助具1を、掌11の小切開13から、皮膚12と横手根靭帯14(靭帯)との間に容易に挿入することができる。
【0033】
靭帯切開術用の補助具1を長手方向Dに移動させて他端側開口部4側から小切開13に挿入した場合に、一端側導入開口部3が小切開13の入口まで移動されると、一端側導入開口部3の膨出部31がU字本体部2よりも上方に曲面状に膨出するため、一端側導入開口部3が小切開13の入口部分に引っ掛かる。これにより、一端側導入開口部3が小切開13の入口部分に引っ掛かって、掌11の小切開13の入口から掌11の内部に入ることが抑制される。
【0034】
続けて、図7に示すように、靭帯切開術用の補助具1の一端側導入開口部3が上向きになるように掌11を反らせた状態で、一端側導入開口部3の一端部側U字傾斜開口33から、剪刀100を挿入する。そして、剪刀100を靭帯切開術用の補助具1の内側に沿って移動させて、剪刀100により横手根靭帯14を切離することができる。これにより、図6に示す場合において、手根骨15と横手根靭帯14との間の手根管16を通る正中神経17の圧迫を容易に開放することできる。
【0035】
ここで、一端側導入開口部3の開口面積Sb,Scは、図6及び図7に示すように、U字本体部2の長手方向Dの途中の開口22の開口面積Saよりも大きい。より具体的には、一端側導入開口部3は、膨出部31を設けることにより、膨出部31の端部において長手方向Dに直交する方向に切断した断面の開口34の開口面積Sbを、U字本体部2の開口22の開口面積Saよりも大きく形成している。更に、膨出部31の端部から先端側に向かうに従って下り傾斜する一端部側U字傾斜開口33を設けることにより、一端部側U字傾斜開口33の開口面積Scを、膨出部31の端部において長手方向Dに直交する方向に切断した断面の開口34の開口面積Sbよりも大きく形成している。
【0036】
そのため、一端側導入開口部3を靭帯切開術用の補助具1の長手方向Dの第1側D1の端部に設けることで、鏡を用いて視認しなくても、靭帯切開術用の補助具1のU字本体部2の奥側まで視認しやすく、十分な視野が得られて術野を確保しやすい。よって、横手根靭帯14の切離を開始する部分を直接視認することができるため、剪刀100により横手根靭帯14を容易に切離することができる。更に、一端側導入開口部3の一端部側U字傾斜開口33が傾斜して形成されることで大きい開口面積Scを有するため、横手根靭帯14の切離を開始する部分をより直接視認しやすい。
【0037】
また、一端側導入開口部3を設けることで、手根管開放術に用いる剪刀100を挿入可能な空間を大きく形成できるため、一端側導入開口部3から、例えば、図7に示す剪刀100の他、手術用ナイフや内視鏡などの細幅で形成された医療用器具を容易に挿入できる。特に、一端側導入開口部3の一端部側U字傾斜開口33の開口面積Scが膨出部31における開口34の開口面積Sbよりも大きく形成されるため、大きな開口面積Scを有する一端部側U字傾斜開口33から、医療用器具(剪刀100、手術用ナイフ、内視鏡など)をより容易に挿入できる。
【0038】
また、従来、図6に示す場合において、靭帯切開術用の補助具を横手根靭帯14の内側の手根管16に挿入して、横手根靭帯14を切離する手根管開放術が行われることがあった。これに対して、本実施形態においては、靭帯切開術用の補助具1を皮膚12と横手根靭帯14との間に挿入して手根管開放術を行うことができる。そのため、横手根靭帯14の内側の手根管16に靭帯切開術用の補助具1を挿入せずに手根管開放術を行うことができるため、手根管16の内圧を上昇させずに、手根管開放術を行うことができる。
【0039】
次に、剪刀100により横手根靭帯14を切離した後に、靭帯切開術用の補助具1を患者の掌11の小切開13から引き出すことで取り外す。この場合、靭帯切開術用の補助具1は、一端側導入開口部3の膨出部31よりも長手方向Dの第2側D2には、U字本体部2から長手方向Dに交差する方向に突出するものが存在せずに、外面が滑らかな曲線及び直線から形成される。そのため、靭帯切開術用の補助具1を取り外す際に、引っ掛かることなく、靭帯切開術用の補助具1を患者の掌11からスムーズに引き出すことができる。
【0040】
以上説明した本実施形態の靭帯切開術用の補助具1によれば、以下のような効果を奏する。
【0041】
本発明の靭帯切開術用の補助具1を、断面形状が凹状に形成され所定長さ延びるU字本体部2と、U字本体部2の長手方向Dの一端側D1において断面形状が凹状に開放して開口して形成されU字本体部2の長手方向Dの途中の断面の開口面積Saよりも大きい開口面積Sb,Scを有する一端側導入開口部3と、を備えて構成した。
【0042】
そのため、一端側導入開口部3において大きい開口面積Sb,Scが形成されているため、横手根靭帯14の切離を開始する部分を直接視認しやすい。これにより、横手根靭帯14の切離を開始する部分を直接視認することができる。また、一端側導入開口部3において大きい開口面積Sb,Scが形成されているため、一端側導入開口部3から、剪刀100を容易に挿入できる。これにより、剪刀100により横手根靭帯14を容易に切離することできる。
【0043】
また、靭帯切開術用の補助具1を用いることで、剪刀100を一端側導入開口部3から容易に挿入できる。また、剪刀100をU字本体部2に沿って移動させて横手根靭帯14を容易に切離できるため、従来の手根管開放術において用いられる専用の剪刀や手術用ナイフではなく、一般的な手術用の剪刀や手術用ナイフを用いることができる。そのため、手術に要するコストを低減できる。
【0044】
靭帯切開術用の補助具1を小切開13から挿入した場合に、一端側導入開口部3が掌11の小切開13の入口部分に引っ掛かるため、靭帯切開術用の補助具1の一端側導入開口部3が、小切開13の入口から掌11の内部に入ることが抑制される。これにより、図6に示すように、患者の小切開13から皮膚12と横手根靭帯14(靭帯)との間に靭帯切開術用の補助具1を挿入する際に、靭帯切開術用の補助具1を患者の掌11に容易に装着できる。
【0045】
また、所定長さ延びるU字本体部2を設けることで、靭帯切開術用の補助具1を横手根靭帯14の手前側から奥側に亘ってU字本体部2を配置するように挿入できる。これにより、横手根靭帯14の手前側から奥側にU字本体部2に沿って剪刀100を移動させやすいため、横手根靭帯14の切離が容易となる。
【0046】
また、靭帯切開術用の補助具1は、凹状に所定長さ延びるU字本体部2と、U字本体部2の長手方向Dの第1側D1の端部側に開口して形成される一端側導入開口部3と、を備えて構成される。そのため、靭帯切開用の補助具1が簡易な形状で形成されるため、製造コストを低減でき、手術に要するコストを低減できる。
【0047】
また、靭帯切開術用の補助具1を、靭帯切開術用の補助具1の長手方向Dの第2側D2の端部側に形成され第2側D2の端部側の先端に向かうに従って下り傾斜する下り傾斜辺411を備えて構成した。これにより、靭帯切開術用の補助具1の挿入方向の先端側に下り傾斜辺411を備えることで、挿入方向の先端側が下り傾斜で形成されているため、靭帯切開術用の補助具1を、皮膚12と横手根靭帯14(靭帯)との間にスムーズに挿入することができる。
【0048】
また、一端側導入開口部3を、靭帯切開術用の補助具1の長手方向Dの第1側D1の端部側の先端に向かうに従って下り傾斜して開口する一端部側U字傾斜開口33を有して構成した。これにより、一端部側U字傾斜開口33が大きな開口面積Scを有するため、一端部側U字傾斜開口33により、横手根靭帯14の切離を開始する部分をより直接視認しやすい。また、一端部側U字傾斜開口33により、医療用器具(剪刀100、手術用ナイフ、内視鏡など)をより容易に挿入できる。
【0049】
以上、本発明の靭帯切開術用の補助具1の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
【0050】
前記実施形態においては、靭帯切開術用の補助具1を使用する場合に剪刀100を用いたが、これに限らない。剪刀100の他、例えば、手術用ナイフや内視鏡などの医療用器具を用いてもよい。
【0051】
前記実施形態では、靭帯切開術用の補助具1を、手根管開放術において靭帯を切離するために用いたが、これに限らない。例えば、靭帯切開術用の補助具を、肘部管症候群の開放術や、足根管症候群の開放術などにおいて、靭帯を切離するために用いてもよい。靭帯切開術用の補助具の長さや大きさは、開放術の種類や靭帯の種類や大きさなどによって、適宜設定できる。
【0052】
前記実施形態では、靭帯切開術用の補助具の凹状本体部を、断面視U字状で所定長さ延びる形状に形成したが、これに限らない。例えば、靭帯切開術用の補助具の凹状本体部を、断面視C字状に形成してもよく、断面視半円形状や楕円形状に形成してもよく、下方が開放した断面視四角形状に形成してもよい。
【0053】
前記実施形態では、靭帯切開術用の補助具1の凹状に開放した部分は、靭帯切開術用の補助具1の長手方向の全域に亘って設けられているが、これに限らない。靭帯切開術用の補助具1の凹状に開放した部分は、例えば、長手方向の途中において、壁状の仕切りなどで区切られていてもよく、長手方向の全域に亘って設けられていなくてもよい。
【0054】
前記実施形態において、靭帯切開術用の補助具1を使用する際に、靭帯切開術用の補助具1の一端側導入開口部3からのみ剪刀(医療用器具)を挿入して使用したが、これに限らない。靭帯切開術用の補助具1の一端側導入開口部3及び他端側開口部4の両方から医療用器具(剪刀、手術用ナイフ、内視鏡など)を挿入して使用してもよい。例えば、患者の掌の靭帯の手前側と奥側との2箇所に小切開を形成して、手前側の小切開から靭帯切開術用の補助具1を挿入して、手前側の小切開と奥側の小切開とを連通させる。そして、この状態で、靭帯切開術用の補助具1を使用する際に、一端側導入開口部3から例えば剪刀(医療用器具)を挿入して使用すると共に、他端側開口部4から例えば内視鏡(医療用器具)を挿入して使用してもよい。
【0055】
前記実施形態において、靭帯切開術用の補助具1の長手方向Dの第2側D2の端部側の上部側の辺に、第2側D2の端部側の先端に向かうに従って下り傾斜する下り傾斜辺411を設けたが、これに限らない。靭帯切開術用の補助具1の長手方向Dの第2側D2の端部側の底部側の辺に、第2側D2の端部側の先端に向かうに従って上り傾斜する上り傾斜辺を設けてもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 靭帯切開術用の補助具
2 U字本体部(凹状本体部)
3 一端側導入開口部(一端側開口部)
12 皮膚
14 横手根靭帯(靭帯)
22 開口
33 一端部側U字傾斜開口(一端側傾斜開口部)
411 下り傾斜辺(他端側傾斜部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7