(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129381
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】通路壁用ブロック及びその通路壁用ブロックを用いたトンネル内通路のかさ上げ工法
(51)【国際特許分類】
E21F 17/00 20060101AFI20240919BHJP
【FI】
E21F17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038553
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】391013416
【氏名又は名称】ゴトウコンクリート株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082658
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 儀一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221615
【弁理士】
【氏名又は名称】竹本 祐子
(72)【発明者】
【氏名】松林 秀佳
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本発明はトンネル内の交通を遮断規制することなく作業員の安全性を確保しながら施工でき、トンネル内通路の一定の美観を担保し、施工に掛かる時間を短縮するとともに、施工性が良く、またトンネル側壁と干渉することなくトンネル内通路をかさ上げすることができ、さらにトンネルと強固に固定することができる通路壁用ブロック及びその通路壁用ブロックを用いたトンネル内通路のかさ上げ工法を提供する。
【解決手段】トンネル内幅方向端部に設置されるトンネル内通路を形成するトンネル内通路壁用ブロック1であって、前記通路壁用ブロック1は、略垂直に立ち上がる通路壁部2と、該通路壁部2の下端より略直角方向へ折曲し、かつ略水平方向に延出する通路壁固定部3とにより略L字状をなして構成され、前記通路壁部2は、前記通路壁固定部3の延出方向と同じ方向に向かって突出する固定筋4が設けられたことを特徴とする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル内幅方向端部に設置されるトンネル内通路を形成するトンネル内通路壁用ブロックであって、
前記通路壁用ブロックは、略垂直に立ち上がる通路壁部と、該通路壁部の下端より略直角方向へ折曲し、かつ略水平方向に延出する通路壁固定部とにより略L字状をなして構成され、
前記通路壁部は、前記通路壁固定部の延出方向と同じ方向に向かって突出する固定筋が設けられた、
ことを特徴とする通路壁用ブロック。
【請求項2】
前記固定筋は、前記通路壁部の下端側で長手方向両端側に一対の取付孔が設けられ、該取付孔に取付けられてなる、
ことを特徴とする請求項1記載の通路壁用ブロック。
【請求項3】
トンネル内幅方向端部にトンネル側壁と間隔をあけて形成されるトンネル内通路のかさ上げ工法において、
略垂直に立ち上がる通路壁部と、該通路壁部の下端よりトンネル側壁側に向かって略直角方向へ折曲し、かつ略水平方向に延出する通路壁固定部とにより略L字状をなし、前記通路壁部に前記通路壁固定部の延出方向と同じ方向に向かって突出する固定筋が設けられて構成された通路壁用ブロックを前記トンネルの進行方向に接続して敷設し、
前記トンネル側壁には、前記固定筋と連結できる位置であって、道路面側に向かい突出するよう連結筋を取り付け、
前記固定筋と前記連結筋とを連結して前記通路壁用ブロックの固定作業を行い、コンクリートを打設して前記トンネル内通路をかさ上げする、
ことを特徴とするトンネル内通路のかさ上げ工法。
【請求項4】
前記固定筋と前記連結筋は、重ね接手であるいは機械式接手で連結できる構成とした、
ことを特徴とする請求項3記載のトンネル内通路のかさ上げ工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル内に設けられたトンネル内通路、いわゆる監視員用通路の施工に使用される通路壁用ブロック及びその通路壁用ブロックを用いたトンネル内通路のかさ上げ工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トンネル内にはトンネル覆工コンクリート側壁に沿って道路面よりも少し高い位置にトンネル内通路7、いわゆる監視員用通路が設置されている。この監視員用通路は、監視員がトンネル内の点検等を行う場合やトンネル内での事故等によりやむなく一般人が避難する場合などにトンネル内を安全に歩行するために設けられている。
【0003】
しかしながら、既設の監視員用通路の中には、
図8に示すように高さの低い監視員用通路があり、この監視員用通路には監視員や一般人が通行する際に走行車と接触する危険性があり、安全面で課題があった。
【0004】
この課題に対して、既設の監視員用通路の高さをかさ上げすることにより安全に歩行できるようリニューアル工事が進められている。この工事の方法としては、例えば
図9に示すように、境界ブロック上端部にアンカー筋を略垂直に立てて、アンカー筋の左右に型枠を組み、その型枠内にコンクリートを投入し、現場打ちで擁壁を設ける工法が用いられている。しかし、この工法では打設コンクリートの性状や作業者の熟練度によって外観が大きく左右され、また型枠を組んだり、コンクリートを打設するなどの作業量が多く、施工時間が長くなるとの課題があった。
【0005】
この課題に対し、近年では、
図10に示すように、プレキャストコンクリート製品のL型擁壁を進行方向に向かって複数連結した状態で並べて設置する工法が行われている(特開2012-87554号公報)。しかし、既設の監視員用通路の幅は一定ではなく、このL型擁壁を既設の監視員用通路上に設置したときに、該L型擁壁の底板が前記幅より長いことがあるため、トンネル側壁に干渉してしまい施工ができないとの問題が生じている。また、このL型擁壁の重量が重いので、施工性が悪いとの課題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記従来の課題に対処すべく創案されたものであって、トンネル内の交通を遮断規制することなく作業員の安全性を確保しながら施工でき、トンネル内通路の一定の美観を担保し、施工に掛かる時間を短縮するとともに、施工性が良く、また既設のトンネル内通路の幅に左右されずに収まる大きさであるためトンネル側壁と干渉することなくトンネル内通路をかさ上げすることができ、さらにトンネルと強固に固定することができるため倒壊の危険性が低く、安全性が高い通路壁用ブロック及びその通路壁用ブロックを用いたトンネル内通路のかさ上げ工法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
トンネル内幅方向端部に設置されるトンネル内通路を形成するトンネル内通路壁用ブロックであって、
前記通路壁用ブロックは、略垂直に立ち上がる通路壁部と、該通路壁部の下端より略直角方向へ折曲し、かつ略水平方向に延出する通路壁固定部とにより略L字状をなして構成され、
前記通路壁部は、前記通路壁固定部の延出方向と同じ方向に向かって突出する固定筋が設けられた、
ことを特徴とし、
または、
前記固定筋は、前記通路壁部の下端側で長手方向両端側に一対の取付孔が設けられ、該取付孔に取付けられてなる、
ことを特徴とし、
または、
トンネル内幅方向端部にトンネル側壁と間隔をあけて形成されるトンネル内通路のかさ上げ工法において、
略垂直に立ち上がる通路壁部と、該通路壁部の下端よりトンネル側壁側に向かって略直角方向へ折曲し、かつ略水平方向に延出する通路壁固定部とにより略L字状をなし、前記通路壁部に前記通路壁固定部の延出方向と同じ方向に向かって突出する固定筋が設けられて構成された通路壁用ブロックを前記トンネルの進行方向に接続して敷設し、
前記トンネル側壁には、前記固定筋と連結できる位置であって、道路面側に向かい突出するよう連結筋を取り付け、
前記固定筋と前記連結筋とを連結して前記通路壁用ブロックの固定作業を行い、コンクリートを打設して前記トンネル内通路をかさ上げする、
ことを特徴とし、
または、
前記固定筋と前記連結筋は、重ね接手であるいは機械式接手で連結できる構成とした、
ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、トンネル内の交通を遮断規制することなく作業員の安全性を確保しながら施工でき、トンネル内通路の一定の美観を担保し、施工に掛かる時間を短縮するとともに、施工性が良く、また既設のトンネル内通路の幅に左右されずに収まる大きさであるためトンネル側壁と干渉することなくトンネル内通路をかさ上げすることができ、さらにトンネルと強固に取り付けることができるため倒壊の危険性が低く、安全性が高いとの優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】通路壁用ブロックの構成を説明する説明図である。
【
図2】固定筋あるいは連結筋を説明する説明図である。
【
図3】通路壁用ブロックに固定筋を取り付けた場合の構成を説明する説明図である。
【
図4】トンネル側壁と通路壁用ブロックとの連結方法を説明する説明図(1)である。
【
図5】トンネル側壁と通路壁用ブロックとの連結方法を説明する説明図(2)である。
【
図6】本発明の構築手順の概略を説明する説明図である。
【
図8】既設現況の状態の構成を説明する説明図である。
【
図9】従来例の構成を説明する説明図(1)である。
【
図10】従来例の構成を説明する説明図(2)である。
【
図11】高さ調整具つき通路壁用ブロックの構成を説明する説明図(1)である。
【
図12】高さ調整具つき通路壁用ブロックの構成を説明する説明図(2)である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を図に示す実施例に基づいて説明する。
図1は、本発明の通路壁用ブロック1を示した図である。
図1(a)は本発明を背面からみた斜視図であり、(b)は本発明の正面図、(c)は本発明の平面図、(d)は本発明の右側面図である。
【0012】
図1から理解されるように、本発明の通路壁用ブロック1は略垂直に立ち上がる通路壁部2と、該通路壁部2の下端より略直角方向へ折曲し、かつ略水平方向に向けて延出する通路壁固定部3とにより略L字状をなして構成されている。
【0013】
前記通路壁部2は所定の厚みを有する略長方形状をしており(
図1の(a)及び(b)参照)、前記通路壁固定部3は所定の厚みを有し、該通路壁固定部3の長手方向両端は基端から先端側に向かって狭まった略台形状をして形成されている(
図1の(a)及び(c)参照)。なお、この通路壁用ブロック1は、現場または工場などであらかじめ作製された、いわゆるプレキャストコンクリート製品が使用される。
【0014】
ここで、通路壁固定部3は前記通路壁部2の長手方向両端側からは延出しておらず、該長手方向両端から所定の間隔をあけて通路壁固定部3が設けられている。そして、この通路壁部2の長手方向両端側にあけられた所定の間隔には、後述する固定筋4を取り付けるため取付孔が空けられ、その取付孔内に取付部材5がそれぞれ埋め込まれている。前記取付部材5としては、例えばめねじアンカーや打込みアンカーなどであるが、本発明ではめねじアンカーを用いることが好ましい。
【0015】
なお、本実施例においては、通路壁部2の長手方向両端側に1本ずつ、計2本の取付部材5が埋め込まれているが、この埋め込まれる取付部材5の数は2本に限定されるものでなく、例えば通路壁部2の長手方向両端側に2本ずつ、計4本としても良いし、現場の状況にあわせて適宜判断されるものである。また、本実施例では、取付部材5を埋め込むための取付孔が通路壁固定部3と同じ高さであって、通路壁部2の長手方向両端側に設けられているが、この箇所に限定されるものでなく、例えば既設のトンネル内通路7の幅が大きい場合は、通路壁部2の長手方向両端側の他に前記通路壁固定部3の先端に数か所取付部材5を埋め込むための取付孔を設けるなど、現場の状況によって適時判断されるものである。
【0016】
次に、
図2に示す符号4は固定筋である。固定筋4の一方側は、該固定筋4の外周にねじ切り加工がされたねじ切り部分6を有しており、このねじ切り部分6を前記取付部材5にねじ込んで締結できるようになっている。
【0017】
図3は、通路壁用ブロック1の取付部材5に固定筋4を取り付けた状態を示した図である。
図1と同様に、
図3(a)は背面からの斜視図であり、(b)は正面図、(c)は平面図、(d)は右側面図を示している。
図3から理解されるように、固定筋4を取付部材5に取付けた状態において、前記固定筋4は通路壁固定部3の延出方向と同じ方向に向かって突出し、
図3では一対の固定筋4が設けられている。そして、前記一対の固定筋4は、前記通路壁固定部3が水平方向に延出する長さより長くなるよう前記固定筋4の長さを調整している(
図3(c)及び(d)参照)。
【0018】
ところで、本発明の通路壁用ブロック1は、既設のトンネル内通路7、いわゆる監視員用通路に用いられる製品としては、必要最低限の大きさで作製されているため従来の製品より小型化されており、その分重量も軽くなっている。その結果、従来の製品を用いて施工する場合はトンネル内でクレーン車を使用する必要があったが、本発明はクレーン車の使用の他に、フォークリフトを使用して施工することができるため、大型重機用のスペースを確保する必要がなく、早くて安全に施工することができるのである。また、従来の製品のように、L型擁壁の底板が既設のトンネル内通路7の幅方向の長さより長いことでトンネル側壁8と干渉してしまうとの不都合も生じない。
【0019】
一方で、本発明が小型化され軽量化されたことに伴い、本発明の通路壁用ブロック1の転倒防止や安定性の担保を目的に、既設のトンネル内通路7に前記通路壁用ブロック1を強固に固定する必要がある。そこで、本発明は、通路壁用ブロック1を既設のトンネル内通路7と強固に固定するため、トンネル側壁8に連結筋9を取り付け、その連結筋9と前記通路壁用ブロック1の固定筋4とを連結し、コンクリート15を打設して一体化することで強固に固定することとした。
【0020】
前記連結筋9の取り付けは、まずトンネル側壁8に固定孔を設け、この固定孔に固定部材10が埋め込まれる。この固定部材10は、例えばめねじアンカーや打込みアンカーなどトンネル側壁8にしっかりと固定される取り外しが困難な部材が用いられる。そして、前記固定部材10に連結筋9のねじ切り部分6がねじ込まれると、
図4乃至
図6から理解されるとおり、道路面12側に略水平に伸長した状態となる。なお、連結筋9の構成は、上述した固定筋4との構成と同様であり、連結筋9の一方側にねじ切り部分6が形成されている(
図2参照)。
【0021】
また、固定部材10が埋め込まれる固定孔の位置決定は、前記通路壁用ブロック1に設けた取付部材5を埋め込む取付孔と向かい合う位置であって、連結筋9と固定筋4との連結ができる位置に固定部材10を埋め込むための固定孔がトンネル側壁8にあけられる。
【0022】
ここで、トンネル側壁8から道路面12側に向かって略水平方向に突出する連結筋9と、通路壁用ブロック1からトンネル側壁8側に向かって略水平方向に突出する固定筋4とを連結する方法については、
図4に示すように連結筋9と固定筋4とを重ね合わせて連結する重ね接手(継手)で、あるいは
図5に示すように連結筋9と固定筋4とをカプラー11などを用いた機械式接手(継手)で連結することが考えられるが、これら連結方法に何ら限定されるものではない。
【0023】
以上において、
図4乃至
図7に基づいて、本発明の通路壁用ブロック1を用いた既設のトンネル内通路7のかさ上げ工法につき説明する。
【0024】
図から理解されるとおり、トンネルの幅方向端部に既設のトンネル内通路7が形成されている。トンネル側壁8と道路面12との間であって、前記トンネル側壁8と所定の間隔をおいて水路用部材13が敷設されている。
【0025】
そして、前記水路用部材13とトンネル側壁8との間には、既設のトンネル内通路7が形成されており、本発明の通路壁用ブロック1は、この既設のトンネル内通路7の上に設置され、トンネルの進行方向に向かって複数の通路壁用ブロック1が接続した状態で敷設する。
【0026】
通路壁用ブロック1は、略垂直に立ち上がる通路壁部2と、該通路壁部2の下端より略直角方向へ折曲し、かつ略水平方向に向けて延出する通路壁固定部3とにより略L字状をなして構成されている。そして、トンネル側壁8と間隔をあけて該トンネル側壁8側に向かって通路壁固定部3が延出するよう敷設される。
【0027】
そして、通路壁部2の長手方向両端側からは通路壁固定部3の延出方向と同じ方向に向かって一対の固定筋4が取り付けられている。固定筋4の取り付けは、予め通路壁用ブロック1に固定筋4を取り付けるための取付部材5が埋め込まれており、この取付部材5に固定筋4のねじ切り部分6ををねじ込むことで、通路壁用ブロック1に固定筋4を容易に取り付けることができる。
【0028】
なお、前記固定筋4の取り付けは、運搬の効率面や破損の防止から施工現場で取り付けられることを想定しているが、通路壁用ブロック1を既設のトンネル内通路7上に載置する前に固定筋4を取り付け、該固定筋4が取り付けられた状態の通路壁用ブロック1を既設のトンネル内通路7上に載置することが好ましい。
【0029】
図6から理解されるとおり、この固定筋4はコンクリート15を打設した際に通路壁固定部3と共に埋設される位置に取り付けられている必要があり、その位置に取付部材5が埋め込まれている。
図6においては、通路壁固定部3の上下方向略中間位置に相当する高さで、該通路壁固定部3と間隔を有して固定筋4が取付けられている。なお、固定筋4の取付位置については、何ら限定されるものではなく、通路壁用ブロック1が強固に固定され、腐食等の影響を受けにくい位置であればよい。
【0030】
もっとも、施工現場に合わせて通路壁用ブロック1の通路壁部2に取付部材5を埋め込む位置を事前に決め、その決めた位置に取付部材5が埋め込まれた状態で、現場に運搬されるため、現場では固定筋4をその取付部材5にねじ込んで取り付けることとなる。そのため、手間を省きつつ、時間を短縮することができ、もって施工期間を短縮にもつながる。
【0031】
次いで、トンネル側壁8に連結筋9を取り付けるための固定部材10をトンネル側壁8内に埋め込む。埋め込み方については、例えばドリルなど穿孔機材を使用して固定孔をあける。そして、固定部材10をその固定孔に挿入して、ハンマーなどを用いてトンネル側壁8内に埋め込む。そして、トンネル側壁8内に埋め込んだ固定部材10に連結筋9のねじ切り部分6をねじ込んで固定する。
【0032】
ここで、固定部材10の埋設位置は、固定部材10に連結筋9がねじ込まれた状態で前記固定筋4と連結できる位置に埋め込まれることが好ましい。
図6においては、重ね接手で連結されるため、
図4に示すように、固定筋4の高さと同程度の高さであって、突出した固定筋4の左右側一方と略平行に当接する位置に連結筋9が配置されるよう前記固定部材10がトンネル側壁8に埋め込まれる。
【0033】
なお、
図6では固定筋4と連結筋9とを重ね接手で連結しているが、
図5に示すように機械式接手で連結してもよい。その場合、トンネル側壁8に埋め込む固定部材10の位置は、固定筋4の高さと同程度の高さであって、連結筋9を取り付けた場合に該固定筋4と略一直線状となる位置に固定部材10が埋め込まれる。そして、固定筋4の先端と、連結筋9の先端とをカプラー11などを用いて連結する。
【0034】
トンネルの進行方向に向かって複数の通路壁用ブロック1を接続して敷設し、上記連結方法によりトンネル側壁8の連結筋9と連結した後、連結した固定筋4と連結筋9の上に、トンネルの進行方向に向かって伸長する縦配筋14を載置して(
図4(b)及び
図5(b)参照)、針金などを用いて固定する。そして、
図6に示されるとおり、その上からコンクリート15を打設するが、この場合、コンクリート15は前記通路壁用ブロック1を構成する通路壁固定部3の上端面が埋まる高さまで打設される。すなわち、固定筋4や連結筋9、縦配筋14が打設したコンクリート15中に完全に埋設されるのである。
【0035】
もっとも、施工現場の状況によっては固定筋4と連結筋9とを重ね接手あるいは機械式接手などで連結できない場合もある。この場合でも前記固定筋4と連結筋9、縦配筋14がコンクリート15中に完全に埋設されるようコンクリート15が打設されるため、この打設されたコンクリート15により固定筋4と連結筋9とが一体化される。その結果、通路壁用ブロック1が既設のトンネル内通路7に固定される強度は、固定筋4と連結筋9とを連結した場合と何ら遜色ないものとなる。
【0036】
そして、
図7から理解されるとおり、打設したコンクリート15が硬化した後、通路壁用ブロック1とトンネル側壁8とで囲われた空間、すなわち埋設空間16に配水管や多孔陶管などの設備部材17を設置し、該設置した設備部材17を中詰め砂18で完全に埋設する。
【0037】
次いで、前記設備部材17を中詰め砂18で埋設した後、通路壁用ブロック1を構成する通路壁部2とコンクリート側壁8との間であって、前記中詰め砂18の上からとシールコンクリート19を打設する。このシールコンクリート19の上端面は、前記通路壁部2の上端面と同じ高さ、つまりフラット面となるよう打設する。
その後、前記通路壁部2の上端面から略垂直に立ち上がるガードパイプ20を設置する(
図7参照)。
【0038】
上記工法により、既設のトンネル内通路7を容易にかさ上げすることができるのである。かさ上げした結果、走行車と接触する危険性がなくなり、安全面が向上する。
【0039】
また、本発明の通路壁用ブロック1は、従来の製品より重量が軽く、フォークリフトでも施工が可能であるため、作業効率がよく施工期間を短縮にもつながる。もちろん従来通り、クレーンで吊り上げて施工することも可能であるが、例えば、トンネル内の天井部の壁にクレーンの先端が接触してしまいトンネルの覆工板を傷つけてしまう危険性がある場合や、またトンネル内の天井部までの高さが低くクレーンの使用ができないような場合に、フォークリフトを用いて施工できる本発明は施工性が高いといえるでのある。
【0040】
また、本発明の通路壁用ブロック1は軽量ではあるが、トンネル側壁8と一体化するように強固に固定し、施工されているため倒壊の危険性が低く、安全性が高くなる。さらには、大型の建設重機を使用せずに済むため、トンネル内を全線通行止めにすることなく、作業員の安全性を確保しながら施工することも可能である。
【0041】
ところで、
図11は通路壁用ブロック1の高さを調整することができる高さ調整具付き通路壁用ブロック21を示している。
図11(a)は高さ調整具付き通路壁用ブロック21の平面図、
図11(b)は正面図、
図11(c)は背面図、
図11(d)は左側面図である。また、
図12は高さ調整具付き通路壁用ブロック21の斜視図を示しており、
図12(a)は正面からの斜視図、
図12(b)は背面からの斜視図である。
【0042】
前記高さ調整具付き通路壁用ブロック21は、上述した通路壁用ブロック1に高さを調整するための高さ調整具22が取り付けられている。本実施例では、通路壁部2の長手方向両端側から間隔を有して内側に窪んだ凹部23が2カ所設けられている。前記凹部23は、内側に窪むにつれて狭まった略四角錐台状をしており、通路壁固定部3が延出する方向とは逆側の面、すなわち道路面12側であって、前記通路壁部2の下方側に設けられている。(
図11(b)及び
図12(a)参照)。
【0043】
そして、この凹部23の下端面略中央には、下方向に略垂直に貫通する貫通孔24が設けられている。この貫通孔24には、ねじ山が形成されたプレート(図示せず)が埋め込まれて構成されている。このねじ山が形成されたプレート(図示せず)が埋め込まれた貫通孔24にボルトなどの高さ調整具22を差し込み、該高さ調整具22を回転させると前記高さ調整具付き通路壁用ブロック21の下端面から前記高さ調整具22の先端が貫通して突出する(
図11(b)(c)(d)参照)。この突出した高さ調整具22の先端が設置面、実施例では既設のトンネル内通路7と接することで、前記高さ調整具付き通路壁用ブロック21と既設のトンネル内通路7との間にすき間ができ、高さ調整具付き通路壁用ブロック21を持ち上げることができる。
【0044】
よって、前記高さ調整具22を回転させてねじ込むことで、該高さ調整具22の先端が下端面から突出する長さを調整でき、高さ調整具付き通路壁用ブロック21の高さを調整することができるのである。
【0045】
また、
図11(a)(c)及び
図12(b)から理解されるように、通路壁固定部3の先端側略中央位置にも略四角錐台状をした切り欠き部25が設けられている。この切り欠き部25の下端面にも、前述同様、下方向に略垂直に貫通する貫通孔24が設けられており、この貫通孔24には、ねじ山が形成されたプレート(図示せず)が埋め込まれている。
【0046】
前記切り欠き部25においても、ねじ山が形成されたプレート(図示せず)が埋め込まれた貫通孔24にボルトなどの高さ調整具22を差し込み、該高さ調整具22を回転させることで前記高さ調整具付き通路壁用ブロック21の下端面から前記高さ調整具22の先端が貫通して突出する。そして、前述のとおり、この高さ調整具22の先端が下端面から突出する長さを、高さ調整具22のねじ込み加減で調整することができ、もって高さ調整具付き通路壁用ブロック21の高さを調整することにつながる。
【0047】
次いで、高さ調整具付き通路壁用ブロック21を持ち上げることで、該高さ調整具付き通路壁用ブロック21と既設のトンネル内通路7との間に生じたすき間は、固定筋4と連結筋9、縦配筋14を配置した後に打設するコンクリート15がすき間に回り込んで、前記固定筋4と連結筋9、縦配筋14と共に前記高さ調整具22の突出部分もコンクリート15中に埋設され、一体化される。
【0048】
なお、
図11及び
図12に示した高さ調整具付き通路壁用ブロック21は、高さ調整具22が差し込まれる貫通孔24が3カ所設けられているが、これに限定されるものではなく、施工現場において適宜判断されるものであり、貫通孔24が3カ所以上設けられてもよい。
【0049】
このように、高さ調整具22のねじ込み加減により高さ調整具付き通路壁用ブロック21の高さを簡単に調整することができるため、設置時の高さ調整を早く行うことができ、また施工時間を短縮することにもつがなるのである。
【符号の説明】
【0050】
1 通路壁用ブロック
2 通路壁部
3 通路壁固定部
4 固定筋
5 取付部材
6 ねじ切り部分
7 既設のトンネル内通路
8 トンネル側壁
9 連結筋
10 固定部材
11 カプラー
12 道路面
13 水路用部材
14 縦配筋
15 コンクリート
16 埋設空間
17 設備部材
18 中詰め砂
19 シールコンクリート
20 ガードパイプ
21 高さ調整具つき通路壁用ブロック
22 高さ調整具
23 凹部
24 貫通孔
25 切り欠き部