(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129386
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】冷凍装置
(51)【国際特許分類】
F25D 21/14 20060101AFI20240919BHJP
F25B 39/02 20060101ALI20240919BHJP
F28F 17/00 20060101ALI20240919BHJP
F28F 13/18 20060101ALI20240919BHJP
F25D 21/08 20060101ALI20240919BHJP
【FI】
F25D21/14 Z
F25B39/02 J
F25B39/02 V
F28F17/00 501A
F28F13/18 B
F25D21/08 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038559
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梅本 大輝
(72)【発明者】
【氏名】大城 智史
(72)【発明者】
【氏名】谷 知子
【テーマコード(参考)】
3L046
3L048
【Fターム(参考)】
3L046AA04
3L046BA04
3L046CA07
3L046MA04
3L048AA01
3L048BA01
3L048BB02
3L048BC02
3L048CA01
3L048CD02
3L048CE00
3L048FA05
3L048GA02
(57)【要約】
【課題】冷凍装置において、熱交換器の表面の排水効果が使用期間の経過により低下することで冷却効率が低下するのを抑制することにより、安定した冷却効果が得られるようにする。
【解決手段】対象物を冷蔵又は冷凍する冷凍装置であって、内部に冷媒が流通し、空気と接触して冷媒と空気とを熱交換することにより、空気を冷却する熱交換器と、熱交換器の上方に配置され、熱交換器の表面に付着した空気中の水分の熱交換器の表面に対する接触角を減少させる添加剤を保持する供給部材と、供給部材の上方に配置され、空気が熱交換器と供給部材とを通過するように、空気を送風する送風機構とを備える。供給部材が水分と接触することにより、供給部材から熱交換器の表面に対して添加剤が供給される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を冷蔵又は冷凍する冷凍装置であって、
内部に冷媒が流通し、空気と接触して前記冷媒と空気とを熱交換することにより、空気を冷却する熱交換器と、
前記熱交換器の上方に配置され、前記熱交換器の表面に付着した空気中の水分の前記熱交換器の表面に対する接触角を減少させる添加剤を保持する供給部材と、
前記供給部材の上方に配置され、空気が前記熱交換器と前記供給部材とを通過するように、空気を送風する送風機構と、を備え、
前記供給部材が水分と接触することにより、前記供給部材から前記熱交換器の前記表面に対して前記添加剤が供給される、冷凍装置。
【請求項2】
前記供給部材が、前記熱交換器の上面と接触している、請求項1に記載の冷凍装置。
【請求項3】
前記熱交換器は、
水平方向に間隔をあけて配置された複数のフィンと、
前記複数のフィンと接続され、内部を前記冷媒が流通する少なくとも1つの冷媒管と、を有し、
前記供給部材は、前記冷媒管の長手方向に延びる長尺状であり、
鉛直方向から見て、前記供給部材の幅方向の少なくとも一部が、前記複数のフィンの前記幅方向の両端よりも内側で、前記冷媒管と重ねて配置されている、請求項1に記載の冷凍装置。
【請求項4】
鉛直方向から見て、前記供給部材の全体が、前記冷媒管と重ねて配置されている、請求項3に記載の冷凍装置。
【請求項5】
前記供給部材の長手方向から見て、前記供給部材は、鉛直方向の最大寸法が水平方向の最大寸法よりも大きい、請求項4に記載の冷凍装置。
【請求項6】
前記熱交換器の下方に配置されて前記熱交換器と接触する空気を加熱するヒーターと、
前記熱交換器と前記ヒーターとの間に配置されて前記ヒーターを覆うヒーターカバーと、を備え、
前記ヒーターカバーは、
鉛直方向における前記ヒーターとの重なり領域以外の位置に配置されて、前記ヒーターカバーの最上位よりも下方に突出する突出部を有する突出領域、又は、前記重なり領域以外の位置に配置されて前記ヒーターカバーの最上位よりも下方に位置する端部を有する端部領域の少なくともいずれかを有する、請求項1に記載の冷凍装置。
【請求項7】
前記ヒーターは長尺状であり、
前記ヒーターカバーは、板体であり、
前記突出領域の前記突出部、又は、前記端部領域の前記端部は、前記ヒーターの長手方向に延びている、請求項6に記載の冷凍装置。
【請求項8】
前記供給部材は、
非イオン界面活性剤を含む前記添加剤と、
前記添加剤を保持する保持体と、
前記添加剤が外部の水分と接触可能に前記保持体を支持する支持体と、を有し、
前記保持体から前記外部の水分に対して前記添加剤を供給する、請求項1~7のいずれか1項に記載の冷凍装置。
【請求項9】
前記保持体は、ガラス、活性炭、ゼオライト、アモルファスシリカ、ポーラスコンクリートのうちの少なくとも1つを含む、多孔質体である、請求項8に記載の冷凍装置。
【請求項10】
前記非イオン界面活性剤は、オキシアルキレンアルキルエーテル系界面活性剤である、請求項8に記載の冷凍装置。
【請求項11】
前記支持体は、水不溶性樹脂を含み、
前記保持体は、前記水不溶性樹脂中に分散された複数の多孔質粒子を含む、請求項8に記載の冷凍装置。
【請求項12】
前記保持体は、比表面積が400m2/g以上900m2/g以下の範囲の値である、請求項8に記載の冷凍装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、冷凍装置に関し、特に冷凍装置が備える熱交換器の排水性を向上させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されるように、蒸発器である熱交換器の着霜量を低減して、冷却効率の低下抑制を図った冷凍装置が知られている。この蒸発器は、表面に発生した凝縮水を表面から飛散もしくは落下させることを容易にする被膜を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載の冷凍装置では、使用期間の経過に伴い、被膜が劣化することで熱交換器の表面の排水効果が低下する。これにより、冷却効率の低下を抑制することが困難となり、安定した冷却効果が得られなくなる。
【0005】
そこで本開示は、冷凍装置において、熱交換器の表面の排水効果が使用期間の経過により低下することで冷却効率が低下するのを抑制することにより、安定した冷却効果が得られるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る冷凍装置は、対象物を冷蔵又は冷凍する冷凍装置であって、内部に冷媒が流通し、空気と接触して前記冷媒と空気とを熱交換することにより、空気を冷却する熱交換器と、前記熱交換器の上方に配置され、前記熱交換器の表面に付着した空気中の水分の前記熱交換器の表面に対する接触角を減少させる添加剤を保持する供給部材と、前記供給部材の上方に配置され、空気が前記熱交換器と前記供給部材とを通過するように、空気を送風する送風機構と、を備え、前記供給部材が水分と接触することにより、前記供給部材から前記熱交換器の前記表面に対して前記添加剤が供給される。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一態様によれば、冷凍装置において、熱交換器の表面の排水効果が使用期間の経過により低下することで冷却効率が低下するのを抑制できる。これにより、安定した冷却効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る冷凍装置の概要図である。
【
図2】
図2は、
図1の熱交換器の一部及び供給部材の斜視図である。
【
図3】
図3は、
図1の熱交換器及び供給部材の冷媒管の長手方向から見た部分図である。
【
図4】
図4は、
図1の供給部材の内部構造を模式的に示す図である。
【
図5】
図5は、
図1のヒーター及びヒーターカバーの拡大図である。
【
図6】
図6は、従来の熱交換器のフィンに付着した水分と霜を示す図である。
【
図7】
図7は、
図1の熱交換器のフィンに付着した水分が排水される様子を示す断面図である。
【
図8】
図8は、第1変形例に係るヒーターカバーを示す図である。
【
図9】
図9は、第2変形例に係るヒーターカバーを示す図である。
【
図10】
図10は、第3変形例に係るヒーターカバーを示す図である。
【
図11】
図11は、第4変形例に係るヒーターカバーを示す図である。
【
図12】
図12は、第5変形例に係るヒーターカバーを示す図である。
【
図13】
図13は、第6変形例に係るヒーターカバーを示す図である。
【
図14】
図14は、第2実施形態に係る冷凍装置の概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る冷凍装置1の概要図である。
図1に示される冷凍装置1は、対象物を冷蔵又は冷凍する。本実施形態の冷凍装置1は、一例として、冷蔵室、製氷室、切替室、冷凍室、及び、野菜室を含む複数の貯蔵室R1~R5を備える。本実施形態の貯蔵室R1~R5には、一例としてトレイT2~T5が配置されている。また冷凍装置1は、内部に冷媒が流通し、空気と接触して冷媒と空気とを熱交換することにより、空気を冷却する熱交換器(エバポレーター又は冷却器とも称する。)3と、熱交換器3を通過した冷媒を圧縮する圧縮機4と、冷凍装置1の内部の空気を流通させる送風機構5と、所定のタイミングで熱交換器3に接触する空気を加熱する加熱機構6とを備える。また冷凍装置1は、熱交換器3に対して配置された供給部材7を備える。冷凍装置1の構成要素3~7は、冷凍装置1の内部空間Sに配置されている。冷凍装置1は、内部空間Sと各貯蔵室R1~R5との空気を連通する複数の連通路E1~E4を備える。なお冷凍装置1は、冷凍機能及び冷蔵機能のいずれか一方のみを有していてもよい。冷凍装置1は、主として冷蔵機能を有する冷蔵庫であってもよい。
【0010】
本実施形態の熱交換器3は、水分を含有する空気と接触する複数のフィン30と、複数のフィン30と接続され、内部を冷媒が流通する少なくとも1つの冷媒管31とを有するフィンアンドチューブ式である。冷媒管31は、フィン30に対して直接的又は間接的に接続される。冷媒管31の一部は、少なくともフィン30と熱的に接触して配置されていることが好ましい。熱交換器3は、複数のフィン30を介して空気を冷媒と熱交換することで、空気を冷却する。一例として、複数のフィン30は、鉛直方向に延び且つ水平方向に間隔をあけて配置されている。また一例として、フィン30は、熱伝導性に優れるアルミニウム等の金属を含む。フィン30の材質は、これに限定されない。
【0011】
圧縮機4は、冷媒流路を介して熱交換器3と接続される。冷媒は、冷媒流路を通じて熱交換器3と圧縮機4との間で循環する。送風機構5は、空気が熱交換器3と供給部材7とを通過するように空気を送風する。また送風機構5は、各貯蔵室R1~R5に向けて空気を送風する。送風機構5は、供給部材7の上方に配置される。本実施形態の送風機構5は、ファン50と、ファン50の駆動源51とを有する。
【0012】
加熱機構6は、空気を加熱することで、熱交換器3の表面に付着した霜を融解することにより除霜(デフロスト)する。言い換えると冷凍装置1は、除霜機構として加熱機構6を備える。加熱機構6は、熱交換器3の下方に配置されて熱交換器3と接触する空気を加熱するヒーター60と、熱交換器3とヒーター60との間に配置されてヒーター60を覆うヒーターカバー61とを有する。なお本実施形態では、一例として、加熱機構6が除霜機構として駆動する際、送風機構5は駆動されない。
【0013】
供給部材7は、熱交換器3の上方に配置される。供給部材7は、後述する添加剤70を保持する。添加剤70は、供給部材7から熱交換器3の表面に対して供給される。この添加剤70は、熱交換器3の表面に付着した空気中の水分の熱交換器3の表面に対する接触角を減少させる。これにより供給部材7は、フィン30を含む熱交換器3の表面に付着した霜が除霜される際、霜の融解により前記表面に形成される水膜を薄膜化して、排水効果を向上させる。本実施形態では、供給部材7から前記表面に付着した水分に対し、添加剤70が自由落下により供給される。供給部材7は、前記表面に付着した水分に対して添加剤70を徐放する。本書で言う徐放とは、非イオン化界面活性剤を含む添加剤70を一度に全部放出せずに、時間経過と共に継続的に放出することを指す。供給部材7は、空気中の水分と接触することにより、水分中に添加剤70を分散させながら水分と共に添加剤70を外部に放出する。本実施形態の供給部材7は、一例として、熱交換器3の上面と接触している。なお供給部材7は、熱交換器3の上面以外の表面と接触していてもよいし、熱交換器3と離隔していてもよい。
【0014】
図2は、
図1の熱交換器3の一部及び供給部材7の斜視図である。
図3は、
図1の熱交換器3及び供給部材7の冷媒管31の長手方向から見た部分図である。
図3では、フィン30と冷媒管31との接続位置における冷媒管31の径方向両端を通る複数の鉛直線Xを示している。
図2及び
図3に示すように、供給部材7は、冷媒管31の長手方向に延びる長尺状である。鉛直方向から見て、供給部材7の幅方向の少なくとも一部が、複数のフィン30の幅方向の両端よりも内側で、冷媒管31と重ねて配置されている。これにより、隣接するフィン30の間を通って熱交換器3の周囲を流通する空気の流れが供給部材7により阻害されるのが抑制される。よって、熱交換器3の周囲を流通する空気の圧力損失が増加するのを抑制できる。従って、優れた熱交換効率が得られる。
【0015】
図3に示すように、本実施形態では、一例として、鉛直方向から見て、供給部材7の全体が、冷媒管31と重ねて配置されている。また、供給部材7の長手方向から見て、供給部材7は、鉛直方向の最大寸法が、水平方向の最大寸法よりも大きい。これにより、供給部材7が熱交換器3の周囲を流通する空気の流れを阻害するのを一層抑制しつつ、供給部材7の内部体積を増大させて、供給部材7に豊富な添加剤70を保持させることができる。従って、長期間にわたり供給部材7から熱交換器3の表面に対して添加剤70を供給できる。
【0016】
供給部材7は、冷凍装置1に対して着脱自在に配置されている。これにより本実施形態では、供給部材7を容易に交換できる。また冷凍装置1は、供給部材7を保持するホルダーを備えていてもよい。
【0017】
図4は、
図1の供給部材7の内部構造を模式的に示す図である。
図4に示すように、供給部材7は、添加剤70を保持する保持体71と、保持体71を支持する支持体72とを備える。本実施形態の供給部材7では、複数の保持体71が支持体72中に分散配置された状態で、支持体72が保持体71を支持している。添加剤70は、界面活性剤を含む。主として供給部材7は、添加剤70に含まれる界面活性剤と、保持体71と、支持体72とにより構成される。
【0018】
一例として、保持体71は球状粒子である。本実施形態の保持体71は、ガラス、活性炭、ゼオライト、アモルファスシリカ、ポーラスコンクリートのうちの少なくとも1つを含む。このうち例えば、多孔質ガラス等のガラスが好適であり、アモルファスシリカが一層好適である。また、別の例の保持体71は、無機成分を含む。本実施形態の保持体71は、支持体72中に分散された複数の多孔質体を含む。多孔質体を用いることで、保持体71は、多孔質体が有する多数の細孔の内部に豊富な添加剤70を保持できる。多孔質体は、例えば多孔質粒子である。言い換えると、一例として保持体71は、後述する支持体72が含む水不溶性樹脂中に分散された複数の多孔質粒子を含む。
【0019】
保持体71の外径、吸油量、細孔径、比表面積、及び、保持体71の重量M1の支持体72の重量M2に対する重量比M1/M2は、例えば、供給部材7に要求される添加剤70の徐放性能に基づいて適宜設定される。保持体71が球状粒子である場合、保持体71の外径は、一例として、粒径が1μm以上10μm以下の範囲の値である。球状粒子である保持体71としては、例えば、AGCエスアイテック(株)製の機能性フィラー「サンスフェア」シリーズが挙げられるが、これに限定されない。
【0020】
また保持体71のJIS K 5101-13-1:2004に準拠する吸油量は、一例として200ml/100g以上600ml/100g以下の範囲の値(例えば400ml/100g)である。保持体71の細孔径は、一例として0.5nm以上20nm以下の範囲の値(例えば11nm)である。また保持体71の比表面積は、400m2/g以上900m2/g以下の範囲の値(例えば700m2/g)である。また、重量比M1/M2は、一例として0.27以上の値である。
【0021】
ここで例えば、重量M1を増大させると供給部材7の添加剤保持量を増大できる。これにより、供給部材7の複数の保持体71同士の接触部に外部から水分を浸透させ、供給部材7の内部の奥に位置する保持体71に保持された添加剤70を前記接触部を通じて無駄なく水分に徐放し易くできる。重量比M1/M2が0.27以上であれば、このような効果が良好に得られる。また例えば、重量比M1/M2を、0.27以上1.00以下の範囲の値とすることで、供給部材7の形状を保持し易くできる。また、供給部材7から添加剤70が一度に過度に放出されないように保持体71の表面積を低減させた場合等には、重量比M1/M2を1.00以上の範囲の値に設定してもよい。
【0022】
本実施形態の支持体72は、添加剤70が外部の水分と接触可能に保持体71を保持する。支持体72は、一例として水不溶性樹脂を含む。水不溶性樹脂は、水不溶性を有する任意の樹脂材料を含む。この水不溶性樹脂は、例えば、支持体72の主成分である。言い換えると水不溶性樹脂は、供給部材7の母材樹脂である。水不溶性樹脂は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、及び、アクリル変性ポリエチレンのうちの少なくとも1つである。
【0023】
支持体72の内部では、複数の保持体71が互いに接触している。複数の保持体71と支持体72との界面の一部には、水分が通過可能な間隙が存在する。これにより、供給部材7に対して外部から水分が接触すると、水分は供給部材7の表面から前記間隙に浸透する。水分は、複数の保持体71同士の接触部を通じて、供給部材7の内部の各保持体71まで浸透する。
【0024】
添加剤70は、冷凍装置1の内部を流通する空気中の水分に対し、保持体71から添加される。添加剤70は、水分と共に熱交換器3の表面に供給される。添加剤70は、水分を改質する。本実施形態の添加剤70は、界面活性剤として非イオン界面活性剤を含む。添加剤70は、熱交換器3の表面に付着した水分の表面張力を低下させることにより、熱交換器3の表面に対する水分の接触角を減少させる。これにより添加剤70は、熱交換器3の表面に形成される液膜を薄膜化する。言い換えると添加剤70は、熱交換器3の表面の濡れ性を向上させる。
【0025】
前記非イオン界面活性剤としては、例えばオキシアルキレンアルキルエーテル系界面活性剤が好適である。オキシアルキレンアルキルエーテル系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールのうちの少なくとも1を例示できるが、これに限定されない。
【0026】
前記非イオン界面活性剤は、支持体72に含まれる水不溶性樹脂に対する接触角が90°以下の範囲の値である。これにより、前記非イオン界面活性剤と水不溶性樹脂とは、良好な親和性を有する。また、供給部材7の製造時において、前記非イオン化界面活性剤と水不溶性樹脂とを混練する場合、前記非イオン化界面活性剤を水不溶性樹脂になじませ易くできる。このため、供給部材7を成形し易くできる。
【0027】
添加剤70は、界面活性剤の濃度が適切に保たれる範囲内において、その他の成分が含まれていてもよい。その他の成分としては、水溶性有機溶剤を例示できる。有機溶剤としては、アルコール類、ケトン類、エーテル類等が挙げられる。低級アルコールとしては、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等を例示できる。本実施形態の添加剤70は、一例として、前記非イオン界面活性剤のみを含有する。
【0028】
供給部材7は、空気中の水分と接触することにより、保持体71から熱交換器3の表面に対して添加剤70を徐放する。本実施形態の供給部材7は、熱交換器3の表面に対し、所定期間(例えば、数カ月から数年程度の期間)にわたり添加剤70が供給されるように、保持体71から添加剤70を徐放する。
【0029】
供給部材7が空気中の水分と接触すると、供給部材7の表層に位置する保持体71から、熱交換器3の表面に対して、水分と共に添加剤70が供給される。これにより、表層の保持体71の添加剤70の濃度が低下する。前記表層は、添加剤70が欠乏した欠乏層となる。その後、供給部材7の内部に位置する保持体71から、供給部材7の表層に位置する保持体71に向けて添加剤70が移動することで、表層の保持体71の添加剤70の濃度が上昇する。この表層の保持体71に保持された添加剤70が、水分と共に熱交換器3の表面に対して再び供給される。この繰り返しにより、供給部材7から水分に対して添加剤70が少量ずつ供給(添加)される。
【0030】
また別の例として、供給部材7は、以下の構成を備えていてもよい。非イオン界面活性剤は、オキシアルキレンアルキルエーテル系界面活性剤を含む。保持体71は、細孔径11nm、細孔容積2mL/gの多孔質ガラスの球状粒子を含む。支持体72は、水不溶性樹脂としてアクリル変性ポリエチレン樹脂(EMMA)(住友化学(株)製「アクリフト」)を含む。供給部材7中、非イオン界面活性剤、保持体71、及び支持体72の重量%は、一例として、同順に56%、22%、22%である。また一例として、供給部材7の総重量は、0.5gである。
【0031】
次に供給部材7の製造方法を例示する。添加剤70、保持体71、及び支持体72を加熱混練することにより、樹脂組成物が製造される。この加熱混練は、例えば、2軸押出式混練機を用いて70℃以上180℃以下の温度範囲の加熱条件下で実行される。これにより、例えばストランド状の樹脂組成物が製造される。ストランドを切断することで、ペレットが得られる。ペレットを射出成形することで、所望形状の供給部材7が得られる。供給部材7は、前述した円筒状の他、例えば板状、短冊状、直方体状、立方体状、球状、又は楕円状の形状を有していてもよい。
【0032】
図5は、
図1のヒーター60及びヒーターカバー61の拡大図である。
図5では、紙面に対する垂直方向がヒーター60の長手方向である。一例として、ヒーター60は、長尺状である。ヒーターカバー61は、ヒーター60の長手方向に延びる板体である。ヒーター60は、鉛直方向から見て、全体がヒーターカバー61に覆われている。本実施形態のヒーターカバー61は、鉛直方向におけるヒーター60との重なり領域以外の位置に配置されてヒーターカバー61の最上位よりも下方に突出する突出部を有する突出領域、又は、重なり領域以外の位置に配置されてヒーターカバー61の最上位よりも下方に位置する端部を有する端部領域の少なくともいずれかを有する。
【0033】
一例として、ヒーターカバー61は、ヒーター60の長手方向から見て、ヒーター60の水平方向両側に配置された一対の端部領域61a、61bを有する。端部領域61a、61bは、端部61c、61dを有する。本実施形態の端部61c、61dは、ヒーター60の最上位よりも上方に位置しているが、下方に位置していてもよい。端部61c、61dは、ヒーター60の長手方向に延びている。ヒーター60の長手方向から見て、ヒーターカバー61の一対の端部領域61a、61bに挟まれた中央領域61eは、水平方向に延びている。ヒーター60の長手方向から見て、端部領域61a、61bは、中央領域61eの水平方向両端から、下り勾配に傾斜して延びている。
【0034】
熱交換器3からの排水がヒーターカバー61に落下した場合、添加剤70により改質された水分により、ヒーターカバー61の上面にはフィン30の表面と同様に薄い水膜が形成される。これにより、ヒーターカバー61の排水効果を向上できる。また、ヒーターカバー61が端部領域61a、61bを有することで、熱交換器3からの排水がヒーターカバー61に落下しても、ヒーターカバー61から落下した水分をヒーター60に接触させることなく、端部領域61a、61bの端部61c、61dから下方に落下させることができる。また、ヒーター60の長手方向から見て、端部領域61a、61bが中央領域61eの水平方向両端から下り勾配に傾斜して延びているため、ヒーターカバー61の上面に水分が滞留しにくく、ヒーターカバー61から速やかに排水できる。
【0035】
このため例えば、除霜の際にヒーターカバー61の上面に付着した水分が、無駄に加熱され又は蒸発されることで生じる熱損失を抑制できる。従って、ヒーター60の駆動が水分により阻害されるのを防止して、ヒーター60を安定して駆動できる。また、加熱機構6の消費電力量を抑制できるため、冷凍装置1の省エネルギー効果に寄与できる。よって、冷凍装置1の安定した排水効果及び除霜効果が得られる。なおヒーターカバー61は、ヒーター60の長手方向から見て、水平方向に非対称の形状を有していてもよい。またヒーターカバー61は、ヒーター60の長手方向から見て、幅方向への傾斜が幅方向端に向かうほど増大していてもよい。
【0036】
ここで
図6は、従来の熱交換器のフィンに付着した水分と霜を示す図である。冷凍装置の運転時には、冷凍装置の内部の空気が熱交換器の周囲を流通することにより、冷媒と熱交換されて冷気となる。冷気は、冷凍装置の各貯蔵室に送られて対象物を冷蔵又は冷凍する。このとき、水分を含む空気が熱交換器と接触することにより、空気中の水分が熱交換器のフィン等の表面に付着する(
図6(a))。この水分は、霜となって熱交換器3の表面に堆積する。例えば冷凍装置の駆動期間が一定期間に達すると、冷凍装置の除霜機構が作動し、熱交換器の表面が除霜される。しかしながら、若干の霜や水分は残留する(
図6(b))。残留した水分は、再冷却により凍結する。これにより従来の冷凍装置では、除霜と再冷却とが繰り返し行われることで、熱交換器の表面に霜が堆積する(
図6(c))。
【0037】
図7は、
図1の熱交換器3のフィン30に付着した水分が排水される様子を示す図である。冷凍装置1では、空気中の水分が、供給部材7と接触して供給部材7の内部に浸透する。供給部材7の保持体71に保持された添加剤70は、水分に対して添加される。添加剤70を含む水分は、自由落下により供給部材7から落下し、熱交換器3の表面に付着する(
図7(a))。熱交換器3の表面に付着する水滴は、例えば10μm以下の範囲の大きさであるが、これに限定されない。熱交換器3の表面に付着した水分は、凍結すると霜となる。
【0038】
一例として、冷凍装置1の駆動期間が一定期間に達すると、加熱機構6が作動し、加熱機構6により加熱された空気が熱交換器3の表面に接触する。これにより、熱交換器3の表面に付着した霜が融解する。霜が融解して生じた水分には、添加剤70が含まれている。添加剤70は、熱交換器3の表面に対する水分の接触角を低減することにより、水分の表面張力を減少させ、熱交換器3の表面の濡れ性を向上させる。これにより熱交換器3の表面には、薄い水膜が形成される。この薄い水膜は、容易に蒸発するか、或いは、熱交換器3の表面から容易に滑落する。また、隣接する水膜同士は、互いに結合することで熱交換器3の表面から容易に滑落する。その結果、熱交換器3の排水効果及び除霜効果が向上する(
図7(b))。これにより、冷凍装置1が除霜後に再冷却するように駆動される際、熱交換器3の表面の水分残留量が大幅に低減される(
図7(c))。従って、冷凍装置1を繰り返し除霜及び再冷却するように駆動しても、熱交換器3の表面に霜が堆積するのが抑制される。
【0039】
以上のように、本実施形態によれば、供給部材7から熱交換器3の表面に対して添加剤70が供給される。これにより、熱交換器3の表面に対する水分の接触角が減少し、前記表面に薄い水膜が形成される。よって、水分の蒸発が促進されると共に、隣接する水分の液滴が結合して前記表面から滑落し易くなる。その結果、熱交換器3の表面からの排水効果及び除霜効果が向上する。これにより、優れた熱交換効率で熱交換器3を駆動できる。また、熱交換器3を除霜する際の消費電力量及び除霜時間を低減できると共に、除霜後に再冷却する際の消費電力量及び再冷却期間を低減できる。その結果、除霜効率及び再冷却効率を向上できる。よって、冷凍装置1の省エネルギー効果に寄与できる。また、各貯蔵室R1~R5に収容された冷蔵及び冷凍対象物が除霜時に昇温するのを抑制できる。よって、当該対象物を長期にわたり高品質で保存できる。
【0040】
ここで、本実施形態による排水効果は、例えば、従来の熱交換器の表面に形成される被膜等とは異なり、供給部材7の添加剤70が水分の前記接触角を減少させるように水分を改質することで得られる。このため、冷凍装置1の使用期間の経過により排水効果が低下することはない。従って、冷凍装置1において安定した冷却効果が得られる。
【0041】
また本実施形態では、供給部材7が熱交換器3の上方に配置され、送風機構5が供給部材7の上方に配置される。このため、供給部材7に保持された添加剤70は、主として自由落下により熱交換器3に対して供給される。よって、添加剤70は送風機構5には付着しにくい。従って、添加剤70が送風機構5に付着するのを防止することにより、送風機構5を安定して駆動できる。また本実施形態では、送風機構5により、熱交換器3の周囲の空気が、冷凍装置1の下方から上方に向けて内部空間Sを流通する。従って、当該空気が各貯蔵室R1~R5に送られる際、添加剤70が空気と共に各貯蔵室R1~R5内に入り込みにくくすることができる。以下、本実施形態のヒーターカバーの各変形例について、ヒーターカバー61との差異を中心に説明する。
【0042】
(変形例)
図8は、第1変形例に係るヒーターカバー62を示す図である。
図8に示されるヒーターカバー62は、ヒーター60と鉛直方向に重なる部分が上方に突出して折れ曲がる中央領域62eと、一対の端部領域62a、62bとを有する。端部領域62a、62bは、端部62c、62dを有する。ヒーターカバー62は、幅方向中央から端部62c、62dの各々まで直線状に延びている。ヒーターカバー62は、ヒーターカバー61と同様の効果を奏する。
【0043】
図9は、第2変形例に係るヒーターカバー63を示す図である。
図9に示されるヒーターカバー63は、ヒーター60と鉛直方向に重なる部分が上方に突出して折れ曲がる中央領域63eと、一対の端部領域63a、63bとを有する。端部領域63a、63bは、端部63c、63dを有する。ヒーターカバー63は、ヒーターカバー61と同様の効果を奏する。
【0044】
図10は、第3変形例に係るヒーターカバー64を示す図である。
図10に示されるヒーターカバー64は、一対の突出領域64a、64bを有する。突出領域64a、64bは、突出部64c、64dを有する。ヒーターカバー64の一対の突出領域64a、64bに挟まれた中央領域64eは、水平方向に延びている。
【0045】
ヒーターカバー64では、一対の突出領域64a、64b、鉛直方向におけるヒーター60との重なり領域以外の位置に配置されているため、ヒーターカバー64に付着した水分がヒーター60で無駄に加熱され又は蒸発されることで生じる熱損失を抑制できる。またヒーターカバー64は、一例として、ヒーター60の長手方向一方から他方に向けて上面が傾斜している。このため、一対の突出領域64a、64bに付着した水分をヒーターカバー64から落下させ易くできる。
【0046】
図11は、第4変形例に係るヒーターカバー65を示す図である。
図11に示されるヒーターカバー65は、ヒーター60と鉛直方向に重なる部分が上方に突出して折れ曲がる中央領域65eと、一対の突出領域65a、65bを有する。突出領域65a、65bは、突出部65c、65dを有する。またヒーターカバー65は、一例として、ヒーター60の長手方向一方から他方に向けて上面が傾斜している。ヒーターカバー65は、ヒーターカバー64と同様の効果を奏する。
【0047】
図12は、第5変形例に係るヒーターカバー66を示す図である。
図12に示されるヒーターカバー66は、一対の端部領域66a、66bを有する。端部領域66a、66bは、端部66c、66dを有する。ヒーターカバー62は、端部66c、66dのうち、一方から他方まで、上方に向けて緩やかに膨出する弓状に延びている。ヒーターカバー66は、ヒーターカバー61と同様の効果を奏する。
【0048】
図13は、第6変形例に係るヒーターカバー67を示す図である。
図13に示されるヒーターカバー67は、ヒーター60と鉛直方向に重なる部分が下方に突出して折れ曲がる中央領域67eと、一対の突出領域67a、67bを有する。突出領域67a、67bは、突出部67c、67dを有する。またヒーターカバー67は、一例として、ヒーター60の長手方向一方から他方に向けて上面が傾斜している。ヒーターカバー67は、ヒーターカバー64と同様の効果を奏する。
【0049】
本開示のヒーターカバーは、一例として、前記突出領域又は前記端部領域の少なくともいずれかを有することが好適である。このため、ヒーターカバーの構造としては複数の構造を採用できる。第1~第6変形例に示したヒーターカバー62~67のいずれでも、熱交換器3の表面から排水される水がヒーターカバー62~67に接触した際、ヒーターカバー62~67から落下する水滴が、突出領域の突出部、又は、端部領域の端部から、下方に向けて落下する。突出部及び端部は、ヒーターと鉛直方向に重ならない位置に配置されている。このため、水がヒーターと接触するのが防止される。その結果、ヒーターを安定して駆動できる。またヒーターカバー64、65、67のように、本開示のヒーターカバーは、その上面での水の不要な滞留を抑制可能な範囲内において、ヒーターの長手方向一方から他方に向けて上面を傾斜させることで、ヒーターカバーから水分を落下させ易く構成されてもよい。以下、第2実施形態について、第1実施形態との差異を中心に説明する。
【0050】
(第2実施形態)
図14は、第2実施形態に係る冷凍装置101の概要図である。冷凍装置101は、例えば製氷室、冷凍室、切替室、及び野菜室の少なくともいずれかを含む複数の貯蔵室R1~R5を備える。また冷凍装置101は、各貯蔵室R1~R5のうち、所定の第1グループに属する貯蔵室(一例として貯蔵室R3~R5)に送られる冷気を熱交換より発生させる第1熱交換器103と、第1熱交換器103から冷気を第1グループの各貯蔵室R3~R5に向けて送風する第1送風機構105と、第1熱交換器103を除霜する加熱機構106と、第1熱交換器103に対応して配置された第1供給部材107とを備える。また冷凍装置1は、第1熱交換器103と加熱機構106とが配置された内部空間S1と、各貯蔵室R3~R5との空気を連通する連通路E5~E7を備える。
【0051】
また冷凍装置101は、各貯蔵室R1~R5のうち、前記第1グループ以外の第2グループの貯蔵室(一例として貯蔵室R1、R2)に送られる冷気を熱交換により発生させる第2熱交換器113と、第2熱交換器113から冷気を第2グループの各貯蔵室R1、R2に向けて送風する第2送風機構115と、第2熱交換器113に対して配置された第2供給部材117とを備える。また冷凍装置1は、第2熱交換器113が配置された内部空間S2と、各貯蔵室R1、R2との空気を連通する連通路E8~E11を備える。一例として本実施形態では、第1熱交換器103は冷凍用熱交換器であり、第2熱交換器113は冷蔵用熱交換器である。
【0052】
加熱機構106は、第1実施形態の加熱機構6と同様の構成を有する。また供給部材107、117は、第1実施形態の供給部材7と同様の構成を有する。第2熱交換器113に対しては、加熱機構は備えられていない。第2送風機構115は、第2熱交換器113に対して空気を流通させることにより、第2熱交換器113を除霜する。即ち第2送風機構115は、冷凍装置101の除霜機構の一部を兼ねている。
【0053】
第1供給部材107は、第1熱交換器103の上方に配置される。第1送風機構105は、第1供給部材107の上方に配置される。第2供給部材117は、第2熱交換器113の上方に配置される。第2送風機構115は、第2供給部材117の上方に配置される。第1熱交換器103に対する第1供給部材107の配置、及び、第2熱交換器113に対する第2供給部材117の配置は、第1実施形態の熱交換器3に対する供給部材7の配置と同様である。冷凍装置101のように、本開示の冷凍装置は、例えば、冷蔵室用途と冷凍室用途の2つの熱交換器を備えていてもよい。
【0054】
冷凍装置101の駆動時には、第2供給部材117に保持された添加剤70が、第2熱交換器113の表面に対して供給される。冷凍装置101において、第2熱交換器113を除霜する際、第2送風機構115が駆動される。これにより冷凍装置101では、貯蔵室R1、R2内から排出される空気と内部空間S1内の第2熱交換器113の周囲の空気とが、連通路E8~E11を通じて循環する。この状態で、例えば空気の流通、及び、貯蔵室R1、R2内から排出される空気と第2熱交換器113の周囲の空気との温度差を利用して、第2熱交換器113の表面が除霜される。第2熱交換器113の表面は、霜が融解して生じた水分に含まれる添加剤70により、薄い水膜が形成されることで、排水が促進される。これにより、第2熱交換器113の表面の排水効果及び除霜効果が向上する。
【0055】
また、第2熱交換器113の上方に第2供給部材117が配置され、第2供給部材117の上方に第2送風機構115が配置されている。このため、第2熱交換器113の除霜中に第2送風機構115が駆動していても、第2供給部材117に保持された添加剤70は、自由落下により第2熱交換器113の表面に対して適切に供給される。よって、例えば冷凍装置101の内部空間S1において、第2熱交換器113から第2送風機構115に向けて下方から上方に空気が流通しても、第2供給部材117から放出された添加剤70が第2送風機構115に接触するのが防止される。これにより、第2送風機構115を安定して駆動できる。また、第2供給部材117の添加剤70が、第2送風機構115の駆動により空気と共に各貯蔵室R1、R2内に入り込むのが防止される。
【0056】
また冷凍装置101の駆動時には、第1供給部材107の添加剤70が、第1熱交換器103の表面に対して供給される。冷凍装置101において、第1熱交換器103を除霜する際、第1実施形態の冷凍装置1と同様に、第1送風機構105が停止された状態で加熱機構106が駆動される。これにより、内部空間S1の加熱機構106により加熱された空気が第1熱交換器103の表面に接触する。第1熱交換器103の表面は、霜が融解して生じた水分に含まれる添加剤70により、薄い水膜が形成されることで、排水が促進される。これにより第1熱交換器103は、熱交換器3と同様に除霜される。
【0057】
以上のように、冷凍装置101においても、冷凍装置1と同様に良好な排水効果及び除霜効果が奏される。従って、冷凍装置101において、熱交換器103、113の表面の排水効果が使用期間の経過により低下することで冷却効率が低下するのを抑制できる。その結果、安定した冷却効果が得られる。
【0058】
(開示項目)
以下の項目のそれぞれは、好ましい実施形態の開示である。
[項目1]
対象物を冷蔵又は冷凍する冷凍装置であって、
内部に冷媒が流通し、空気と接触して前記冷媒と空気とを熱交換することにより、空気を冷却する熱交換器と、
前記熱交換器の上方に配置され、前記熱交換器の表面に付着した空気中の水分の前記熱交換器の表面に対する接触角を減少させる添加剤を保持する供給部材と、
前記供給部材の上方に配置され、空気が前記熱交換器と前記供給部材とを通過するように、空気を送風する送風機構と、を備え、
前記供給部材が水分と接触することにより、前記供給部材から前記熱交換器の前記表面に対して前記添加剤が供給される、冷凍装置。
【0059】
上記構成によれば、供給部材から熱交換器の表面に対して添加剤が供給される。これにより、熱交換器の表面に対する水分の接触角が減少し、前記表面に薄い水膜が形成される。よって、水分の蒸発が促進されると共に、隣接する水分の液滴が結合して前記表面から滑落し易くなる。その結果、熱交換器の表面からの排水効果が向上する。これにより、優れた熱交換効率で熱交換器を駆動できる。また、熱交換器を除霜する際の消費電力量及び除霜時間を低減できると共に、除霜後に再冷却する際の消費電力量及び再冷却期間を低減できる。その結果、除霜効率及び再冷却効率を向上できる。よって、冷凍装置の省エネルギー効果に寄与できる。また例えば、冷凍装置の各貯蔵室に収容された冷蔵及び冷凍対象物が除霜時に昇温するのを抑制できる。よって、当該対象物を長期にわたり高品質で保存できる。
【0060】
ここで上記構成による排水効果は、例えば、従来の熱交換器の表面に形成される被膜等とは異なり、供給部材の添加剤が水分の前記接触角を減少させるように水分を改質することで得られるものである。このため、冷凍装置の使用期間の経過により排水効果が低下することはない。従って、冷凍装置において安定した冷却効果が得られる。
【0061】
また上記構成では、供給部材が熱交換器の上方に配置され、送風機構が供給部材の上方に配置される。このため、供給部材に保持された添加剤は、主として自由落下により熱交換器に対して供給される。よって、添加剤は送風機構には付着しにくい。従って、添加剤が送風機構に付着するのを防止することにより、送風機構を安定して駆動できる。また例えば、送風機構により、熱交換器の周囲の空気が、冷凍装置の下方から上方に向けて流通し、冷凍装置の各貯蔵室に送られる場合でも、添加剤が空気に混入して各貯蔵室内に入り込みにくくすることができる。
【0062】
[項目2]
前記供給部材が、前記熱交換器の上面と接触している、項目1に記載の冷凍装置。
【0063】
上記構成によれば、供給部材と熱交換器との間の鉛直方向距離を短縮し、供給部材から熱交換器に対して供給剤を自由落下により供給し易くできる。これにより、熱交換器に対して効率的に添加剤を拡散して供給できる。よって、熱交換器の表面からの排水効果及び除霜効果を促進できる。その結果、優れた熱交換効率が得られる。また、供給部材と熱交換器との間のスペースをなくすことで、冷凍装置の小型化及びコンパクト化を図れる。
【0064】
[項目3]
前記熱交換器は、
水平方向に間隔をあけて配置された複数のフィンと、
前記複数のフィンと接続され、内部を前記冷媒が流通する少なくとも1つの冷媒管と、を有し、
前記供給部材は、前記冷媒管の長手方向に延びる長尺状であり、
鉛直方向から見て、前記供給部材の幅方向の少なくとも一部が、前記複数のフィンの前記幅方向の両端よりも内側で、前記冷媒管と重ねて配置されている、項目1又は2に記載の冷凍装置。
【0065】
上記構成によれば、熱交換器の周囲の空気が冷媒管の内部を流通する冷媒と熱交換されることにより、熱交換器の複数のフィンの表面に水分が付着して霜が形成される場合でも、供給部材から供給される添加剤により、フィンの表面に対する水分の接触角を減少させることができる。その結果、複数のフィンからの排水効果及び除霜効果を向上できる。
【0066】
[項目4]
鉛直方向から見て、前記供給部材の全体が、前記冷媒管と重ねて配置されている、項目3に記載の冷凍装置。
【0067】
上記構成によれば、熱交換器の周囲を流通する空気の流れが供給部材により阻害されるのを抑制できる。これにより、冷凍装置の内部の空気を所望の方向に流通させ易くできる。また、熱交換器の周囲を流通する空気の圧力損失の増加を抑制できる。その結果、優れた熱交換効率が得られる。
【0068】
[項目5]
前記供給部材の長手方向から見て、前記供給部材は、鉛直方向の最大寸法が水平方向の最大寸法よりも大きい、項目1~4のいずれか1項に記載の冷凍装置。
【0069】
上記構成によれば、供給部材が熱交換器の周囲を流通する空気の流れを阻害するのを一層抑制しつつ、供給部材の内部体積を増大させて、供給部材に豊富な添加剤を保持させることができる。従って、長期間にわたり供給部材から熱交換器の表面に対して添加剤を供給できる。
【0070】
[項目6]
前記熱交換器の下方に配置されて前記熱交換器と接触する空気を加熱するヒーターと、
前記熱交換器と前記ヒーターとの間に配置されて前記ヒーターを覆うヒーターカバーと、を備え、
前記ヒーターカバーは、
鉛直方向における前記ヒーターとの重なり領域以外の位置に配置されて、前記ヒーターカバーの最上位よりも下方に突出する突出部を有する突出領域、又は、前記重なり領域以外の位置に配置されて前記ヒーターカバーの最上位よりも下方に位置する端部を有する端部領域の少なくともいずれかを有する、項目1~5のいずれか1項に記載の冷凍装置。
【0071】
上記構成によれば、ヒーターカバーが前記突出領域又は前記端部領域を有することで、熱交換器の表面からの排水がヒーターカバーに落下しても、ヒーターカバーから落下した水分がヒーターに接触するのを防止できる。また、ヒーターカバーに付着した水分がヒーターで無駄に加熱され又は蒸発されることで生じる熱損失を抑制できる。また、ヒーターカバーが前記端部領域を有する場合、ヒーターカバーに付着した水分を端部領域の端部から下方に落下させることができる。よって、ヒーターの駆動が水分により阻害されるのを防止して、ヒーターを安定して駆動できる。従って、ヒーターにより安定した除霜効果が得られる。
【0072】
[項目7]
前記ヒーターは長尺状であり、
前記ヒーターカバーは、板体であり、
前記突出領域の前記突出部、又は、前記端部領域の前記端部は、前記ヒーターの長手方向に延びている、項目6に記載の冷凍装置。
【0073】
上記構成によれば、ヒーターを長尺状に構成することで、ヒーターを用いた除霜時に冷凍装置の内部の空気を効率よく加熱できる。また、ヒーターカバーを板体で構成することで、ヒーターカバーを所望形状に構成し易くできる。また、突出領域の突出部、又は、端部領域の端部がヒーターの長手方向に延びていることにより、熱交換器からの排水がヒーターカバーに落下しても、ヒーターの長手方向に延びる前記突出部又は前記端部を用いることで、水分がヒーターに接触するのを良好に防止できる。
【0074】
[項目8]
前記供給部材は、
非イオン界面活性剤を含む前記添加剤と、
前記添加剤を保持する保持体と、
前記添加剤が外部の水分と接触可能に前記保持体を支持する支持体と、を有し、
前記保持体から前記外部の水分に対して前記添加剤を徐供給する、項目1~7のいずれか1項に記載の冷凍装置。
【0075】
上記構成によれば、例えば、熱交換器の表面に対し、保持体から非イオン界面活性剤を含む添加剤が供給されることで、前記表面の濡れ性を向上させて、前記表面に形成される水分の接触角を一層低減し易くできる。これにより、前記表面上に薄い水膜を形成し、前記表面の乾燥速度を安定して向上できる。また、添加剤を保持体に保持し、保持体を支持体により支持することで、供給部材における保持体の位置を安定して維持しつつ、前記表面に対して添加剤を一層供給し易くできる。
【0076】
[項目9]
前記保持体は、ガラス、活性炭、ゼオライト、アモルファスシリカ、ポーラスコンクリートのうちの少なくとも1つを含む、多孔質体である、項目8に記載の冷凍装置。
【0077】
上記構成によれば、保持体が多孔質体であることにより、保持体の多数の孔の内部に添加剤を保持できる。これにより、保持体の添加剤保持量を増大できる。また、保持体の材料選択の幅が拡大されるため、保持体の設計自由度を向上できる。
【0078】
[項目10]
前記非イオン界面活性剤は、オキシアルキレンアルキルエーテル系界面活性剤である、項目8又は9に記載の冷凍装置。
【0079】
上記構成によれば、非イオン界面活性剤としてオキシアルキレンアルキルエーテル系界面活性剤を用いることにより、熱交換器の表面の濡れ性を一層向上できる。よって、冷凍装置の排水効果及び除霜効果を一層向上できる。
【0080】
[項目11]
前記支持体は、水不溶性樹脂を含み、
前記保持体は、前記水不溶性樹脂中に分散された複数の多孔質粒子を含む、項目8~10のいずれか1項に記載の冷凍装置。
【0081】
上記構成によれば、水不溶性樹脂を含む支持体を用いることで、支持体と保持体との間に、前記添加剤の流通経路を形成し易くできる。また、複数の多孔質粒子が有する細孔の内部において豊富な添加剤を保持できる。また、例えば形状及び粒径が揃えられた複数の多孔質粒子を用いることで、各多孔質粒子の添加剤の保持量を増大且つ均一化できる。これにより、供給部材から熱交換器の表面に対して、添加剤を長期にわたり安定して供給できる。
【0082】
[項目12]
前記保持体は、比表面積が400m2/g以上900m2/g以下の範囲の値である、項目8~11のいずれか1項に記載の冷凍装置。
【0083】
上記構成によれば、保持体の比表面積を高度に増大できる。これにより保持体は、広い表面に添加剤を被着させることで、豊富な添加剤を保持できる。よって、供給部材から熱交換器の表面に対して、非イオン界面活性剤を長期にわたり供給し易くできる。
【0084】
本開示は、上記各実施形態及び上記変形例に限定されず、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で、その構成及び方法を、変更、追加、組み合わせ、又は削除できる。冷凍装置1、101が備える熱交換器3、103、113の形式は、フィンアンドチューブ式に限定されず、マイクロチャネル式(扁平管式)等の他の形式もよい。マイクロチャネル式(扁平管式)であれば、例えば、熱交換器の表面に付着した水分の前記表面に対する接触角を低減することにより、前記表面に薄い水膜を効率よく形成して、熱交換効率を一層向上できる。
【符号の説明】
【0085】
1、101 冷凍装置
3 熱交換器
5 送風機構
7 供給部材
30 フィン
31 冷媒管
60 ヒーター
61~67 ヒーターカバー
61c、61d、62c、62d、63c、63d、66c、66d 端部
61a、61b、62a、62b、63a、63b、66a、66b 端部領域
64c、64d、65c、65d、67c、67d 突出部
64a、64b、65a、65b、67a、67b 突出領域
70 添加剤
71 保持体
72 支持体
103 第1熱交換器(熱交換器)
105 第1送風機構(送風機構)
107 第1供給部材(供給部材)
113 第2熱交換器(熱交換器)
115 第1送風機構(送風機構)
117 第2供給部材(供給部材)