(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129400
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】光電気混載基板およびそれを用いた光電気混載モジュール、アクティブオプティカルケーブル
(51)【国際特許分類】
G02B 6/12 20060101AFI20240919BHJP
G02B 6/42 20060101ALI20240919BHJP
H05K 3/28 20060101ALI20240919BHJP
【FI】
G02B6/12 301
G02B6/42
H05K3/28 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038578
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079382
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 征彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123928
【弁理士】
【氏名又は名称】井▲崎▼ 愛佳
(74)【代理人】
【識別番号】100136308
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 優子
(72)【発明者】
【氏名】舘 直樹
(72)【発明者】
【氏名】田中 直幸
(72)【発明者】
【氏名】寺地 誠喜
【テーマコード(参考)】
2H137
2H147
5E314
【Fターム(参考)】
2H137AB12
2H137AC04
2H137BA55
2H137BA56
2H137BB02
2H137BB12
2H137BB25
2H137BB33
2H137DA39
2H137EA04
2H137EA05
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2H147AB04
2H147AB05
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2H147EA17C
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2H147FA20
2H147FC01
2H147GA16
5E314AA32
5E314BB06
5E314BB11
5E314CC01
5E314DD07
5E314FF06
5E314GG21
(57)【要約】
【課題】光素子を実装する際に反りが生じにくく、しかも高速通信が可能な光電気混載基板およびそれを用いた光電気混載モジュールを提供することを目的とする。
【解決手段】フレキシブルプリント基板1と、上記フレキシブルプリント基板1の第1の面1aに設けられた光素子実装用のパッド6と、上記フレキシブルプリント基板1の第2の面1bに積層形成された光導波路2とを有し、上記フレキシブルプリント基板1の第1の面1aに、光電気混載基板の反りを抑制するための反り抑制層7を部分的に設けるようにした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光電混載基板であって、
フレキシブルプリント基板と、上記フレキシブルプリント基板の第1の面に設けられた光素子実装用のパッドと、上記フレキシブルプリント基板の第2の面に積層形成された光導波路とを有し、
ここで、
上記フレキシブルプリント基板の第1の面に、光電気混載基板の反りを抑制するための反り抑制層が部分的に設けられている、光電気混載基板。
【請求項2】
請求項1に記載の光電混載基板であって、
上記光導波路がコア層とクラッド層を有しており、上記クラッド層がエポキシ系樹脂からなる、光電気混載基板。
【請求項3】
請求項1または2に記載の光電混載基板であって、
上記光導波路の厚み(Q)に対する上記反り抑制層の厚み(R)の比(R/Q)が、0.1以上2以下である、光電気混載基板。
【請求項4】
請求項1または2に記載の光電混載基板であって、
上記反り抑制層が、線膨張係数が30ppm/℃以上120ppm/℃以下の樹脂からなる、光電気混載基板。
【請求項5】
請求項1または2に記載の光電混載基板を用いた光電気混載モジュールであって、
上記光電気混載基板と、光素子とを有し、
ここで、
上記光電気混載基板の光素子実装用のパッドに上記光素子が接続されることにより実装されている、光電気混載モジュール。
【請求項6】
請求項5に記載の光電気混載モジュールを用いたアクティブオプティカルケーブルであって、
上記光電気混載モジュールと、光ケーブルとを有し、
ここで、上記光電気混載モジュールと上記光ケーブルとは接続されている、アクティブオプティカルケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光信号伝送と電気信号伝送とが可能な光電気混載基板および光電気混載モジュールに関するものであり、より詳しくは、加熱による反りが抑制された、高速通信性を有する光電気混載基板およびそれを用いた光電気混載モジュール、アクティブオプティカルケーブルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の電子機器等においては、伝送情報量の増加に伴い、電気配線に加えて、光配線が併用された光電気混載基板が用いられている。そして、昨今は、さらに多くの情報(例えば、信号)をより早く伝送できるものの開発が産業界から要求されている。これらの要求に対し、例えば、特許文献1のフレキシブル光電気混載基板が提案されている。
【0003】
しかし、特許文献1のものは、光導波路と外部との光結合効率の劣化が防止されているものの、光素子を実装する際には光電気混載基板が高温(例えば200℃)に晒されることがあり、その際に光電気混載基板自体に反りが生じやすいという問題がある。
より詳しく説明すると、高温に晒されると、
図9に模式図を示すように、長リボン状の光電気混載基板は、それを構成するフレキシブルプリント基板1と光導波路2との線膨張係数の異なりにより、一点鎖線で示すように光導波路2を内側にして矢印で示す方向に撓む(反る)傾向がみられる。光素子を実装する際に光電気混載基板が反ると、実装精度が低下するおそれがあり好ましくない。このため、光素子実装時の高温による反りをいかに防ぐかが重要な課題となっている。
なお、図において、符号3は金属層、4はベース層、5は電気配線、6は光素子実装用のパッド、8はカバーレイを示す。また、符号9はアンダークラッド層、10はコア、11はオーバークラッド層、10aはミラー面を示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示はこのような事情に鑑みなされたもので、光素子を実装する際に反りが生じにくく、高速通信が可能な光電気混載基板およびそれを用いた光電気混載モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本開示は、以下の[1]~[6]を提供する。
[1]フレキシブルプリント基板と、上記フレキシブルプリント基板の第1の面に設けられた光素子実装用のパッドと、上記フレキシブルプリント基板の第2の面に積層形成された光導波路とを有し、上記フレキシブルプリント基板の第1の面に、光電気混載基板の反りを抑制するための反り抑制層が部分的に設けられている光電気混載基板。
[2]上記光導波路がコア層とクラッド層を有しており、上記クラッド層がエポキシ系樹脂からなる[1]の光電気混載基板。
[3]上記光導波路の厚み(Q)に対する上記反り抑制層の厚み(R)の比(R/Q)が、0.1以上2以下である[1]または[2]の光電気混載基板。
[4]上記反り抑制層が、線膨張係数が30ppm/℃以上120ppm/℃以下の樹脂からなる[1]~[3]のいずれかの光電気混載基板。
[5][1]~[4]のいずれかの光電気混載基板と、光素子とを有し、上記光電気混載基板の光素子実装用のパッドに上記光素子が接続されることにより実装されている光電気混載モジュール。
[6][5]に記載の光電気混載モジュールを用いたアクティブオプティカルケーブルであって、上記光電気混載モジュールと、光ケーブルとを有し、上記光電気混載モジュールと上記光ケーブルとは接続されている、アクティブオプティカルケーブル。
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた。その結果、フレキシブルプリント基板と、上記フレキシブルプリント基板の第1の面に設けられた光素子実装用のパッドと、上記フレキシブルプリント基板の第2の面に積層形成された光導波路とを有する光電気混載基板であって、上記フレキシブルプリント基板の第1の面に、光電気混載基板の反りを抑制するための反り抑制層を部分的に設けるようにすると、光素子を実装する際等の高温(例えば200℃)によって、上記光導波路が積層形成された側を内側にして上記光電気混載基板が撓む(言い換えると、反る)ことを抑制できることを見出した。
【発明の効果】
【0008】
本開示の光電気混載基板によれば、フレキシブルプリント基板と、上記フレキシブルプリント基板の第1の面に設けられた光素子実装用のパッドと、上記フレキシブルプリント基板の第2の面に積層形成された光導波路とを有し、上記フレキシブルプリント基板の第1の面に、光電気混載基板の反りを抑制するための反り抑制層が部分的に設けられているため、光素子を実装する際の高温に晒されたとしても反りが生じにくくなっており、光素子を光電気混載基板に精度よく実装することができる。光電気混載基板に光素子が精度よく実装された光電気混載モジュールはその通信性が損なわれないため、本開示の光電気混載モジュールは信頼性および高速通信性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本開示の一実施の形態である光電気混載基板の概略を示す縦断面である。
【
図2】
図2は、上記光電気混載基板の縦断面を部分的に拡大した図である。
【
図3】
図3は、上記光電気混載基板を表面(フレキシブルプリント基板の第1の面)側から見た構成を示す図である。
【
図6】
図6Aは上記光電気混載基板の製法を説明する図、
図6Bは上記光電気混載基板に光素子が実装された光電気混載モジュールを説明する図である。
【
図7】
図7A,
図7Bは、いずれも上記光電気混載基板の変形例を説明する図である。
【
図8】
図8A,
図8Bは、いずれも上記光電気混載基板のさらに他の変形例を説明する図である。
【
図9】
図9は、従来例の光電気混載基板を説明する縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
つぎに、本開示の実施の形態を、図面に基づいて詳しく説明する。本開示を説明するに当たり、具体例を挙げて説明するが、本開示の趣旨を逸脱しない限り以下の内容に限定されるものではなく、適宜変更して実施することができる。
【0011】
図1は、本開示の一実施の形態である光電気混載基板を長手方向に切断した縦断面を示したものである。
図2は、その部分的な拡大図である。この光電気混載基板は、金属層3の上に絶縁性を有するベース層4が形成され、上記ベース層4の表面に電気配線5が形成されてなるフレキシブルプリント基板(以下「基板」ということがある)1と、上記基板1の第1の面1aに設けられた光素子実装用のパッド6と、上記基板1の第2の面1bに積層形成された光導波路2とを有し、上記基板1の第1の面1aの光素子の実装予定部分12を除いた全面に、光電気混載基板の反りを抑制するための反り抑制層7が設けられている(
図3を参照)。
まず、上記基板1と光導波路2について説明し、ついで、上記反り抑制層7について説明する。
【0012】
[フレキシブルプリント基板1]
上記基板1は、
図2に示すように、可撓性を有するプリント基板であり、金属層3の上に、透光性および絶縁性を有し、ポリイミド等の樹脂からなるベース層4が形成されており、その表面(上記基板1の第1の面1a)に、光素子を電気的および物理的に接続(つまり、実装)するための光素子実装用のパッド6に形成されるパッド5aやアース用電極(図示せず)等を含む電気配線5が形成され、これらのうち、上記パッド5a等を除く電気配線5が、上記ベース層4と同一のポリイミド等の樹脂からなるカバーレイ8によって絶縁保護された構成になっている。なお、上記カバーレイ8によって被覆されないパッド5a等の表面は、金やニッケル等からなる電解メッキ層5bで被覆され、光素子実装用のパッド6に形成される。
【0013】
上記金属層3は、金属の薄膜からなるものであり、上記金属としては、ステンレス鋼(SUS)、銅、42アロイ等を用いることができ、寸法精度および強度等の観点から、好ましくはSUS、銅であり、さらに好ましくはSUSである。
また、上記金属層3の厚みは、1μm以上50μm以下であることが好ましく、3μm以上30μm以下であることがより好ましい。とりわけ、上記金属層3がSUSからなる場合の好ましい厚みは10μm以上30μm以下である。上記金属層3が銅からなる場合の好ましい厚みは3μm以上10μm以下である。上記金属層3の厚みが上記範囲内にあると、耐久性と反り抑制効果とのバランスに優れる。
【0014】
上記ベース層4は、例えば、ポリイミド,ポリエーテルニトリル,ポリエーテルスルホン,ポリエチレンテレフタレート,ポリエチレンナフタレート,ポリ塩化ビニル等の合成樹脂、シリコーン系ゾルゲル材料を用いてなるものであり、なかでも、ポリイミドを用いることが好ましい。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。また、上記ベース層4の厚みは、1μm以上100μm以下に設定されることが好ましく、3μm以上50μm以下であることがより好ましく、5μm以上15μm以下であることがさらに好ましい。上記ベース層4の厚みが上記範囲内にあると、絶縁性の確保と反り抑制効果とのバランスに優れる。
【0015】
上記基板1の長手方向の長さL(
図3参照)は、特に限定するものではないが、5mm以上1000mm以下であることが好ましく、10mm以上800mm以下であることがより好ましく、15mm以上700mm以下であることがさらに好ましい。上記基板1の長手方向の長さLが上記範囲内にあると、より反り抑制効果に優れる傾向がみられる。
【0016】
[光導波路2]
一方、上記金属層3の裏面(上記基板1の第2の面1b)に積層形成された光導波路2は、アンダークラッド層9と、上記アンダークラッド層9の表面(
図1および
図2においては下面)に所定パターンで形成された光路用のコア10と、このコア10を被覆した状態で上記アンダークラッド層9の表面と一体化するオーバークラッド層11とで構成されている。上記コア10の屈折率は、上記アンダークラッド層9およびオーバークラッド層11の屈折率よりも大きくなっている。なお、上記基板1と上記光導波路2との間のうち、光素子実装用のパッド6に対応する部分等、一定の強度が求められる部分に補強層(図示せず)を設けてもよい。
【0017】
上記光導波路2のコア10、アンダークラッド層9およびオーバークラッド層11は、いずれも線膨張係数が30ppm/℃以上120ppm/℃以下の樹脂で形成されることが好ましく、30ppm/℃以上90ppm/℃以下の樹脂で形成されることがより好ましく、30ppm/℃以上70ppm/℃以下の樹脂で形成されることがさらに好ましい。上記光導波路2の各層の線膨張係数が上記範囲内であると、光電気混載基板の反りをより抑制できる傾向がみられる。なお、各層の線膨張係数は互いに異なっていてもよいし、同じであってもよい。
【0018】
上記光導波路2のコア10、アンダークラッド層9およびオーバークラッド層11の形成材料としては、例えば、エポキシ系樹脂(例えば、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、脂環型エポキシ樹脂等)、ポリイミド系樹脂、アクリル系樹脂等があげられ、なかでも、透明性、耐熱性、微細パターニング性の点からエポキシ系樹脂が好ましく用いられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0019】
上記光導波路2の厚み(Q)は、10μm以上200μm以下であることが好ましく、60μm以上150μm以下であることがより好ましく、80μm以上120μm以下であることがさらに好ましく、90μm以上110μm以下であることが特に好ましい。上記光導波路2の厚み(Q)が上記範囲の上限を超えると、光電気混載基板の反り量が多くなる傾向がみられるためである。なお、上記光導波路2の厚み(Q)は、アンダークラッド層9、コア10、オーバークラッド層11を含む全体の厚みを意味する。
【0020】
上記光導波路2の各層(アンダークラッド層9、コア10、およびオーバークラッド層11)の厚みは、それぞれ2μm以上80μm以下であることが好ましく、20μm以上70μm以下であることがより好ましく、30μm以上60μm以下であることがさらに好ましい。上記光導波路2の各層の厚みが上記範囲内にあると、上記光導波路2の寸法精度と光電気混載基板の反りの抑制効果とのバランスに優れる傾向がみられる。なお、各層の厚みは互いに異なっていてもよいし、同じであってもよい。
【0021】
そして、上記光電気混載基板の光素子実装箇所に対応する光導波路2の部分が、コア10の延びる方向に対して45°の傾斜面に形成されている。この傾斜面は、光の反射面(ミラー面10a,10b)になっており、コア10内を伝播されてきた光の向きを90°変えて光素子の受光部に入射させたり、逆に光素子の発光部から出射された光の向きを90°変えてコア10内に入射させたりする役割を果たす。
【0022】
また、本開示の光電気混載基板は、この光電気混載基板を表面(具体的には、基板1の第1の面1a)から見た構成(詳細は、
図3を参照)を示すように、上記基板1の表面(上記光導波路2に接する面とは反対側の面)の大部分が反り抑制層7によって被覆されている。なお、
図3においては、上記光導波路2と上記反り抑制層7との位置関係を分かりやすくするため、その右半分の反り抑制層7を破りその下の構成が見えるように示すとともに、上記光導波路2に斜線を引いて示している(斜線の意味は、
図7A,
図7Bにも共通する。)。そして、
図3において、符号Lは上記基板1の長手方向の長さを示し、符号Wは上記基板1の幅を示している。また、符号L
1は上記光導波路2の長手方向の長さを示し、符号W
1は上記光導波路2の幅を示している。さらに、符号L
2は上記反り抑制層7の長手方向の長さを示し、符号W
2は上記反り抑制層7の幅を示している。なお、この実施の形態では、上記基板1、上記光導波路2および上記反り抑制層7の長手方向の長さおよび幅は同一である。
【0023】
[反り抑制層7]
上記反り抑制層7は、上記のとおり、上記基板1の第1の面1aに設けられるものであり、光素子の実装予定部分12(上記光素子実装用のパッド6を含む所定領域)を除いて、上記基板1の全面を被覆している。
【0024】
上記反り抑制層7は、上記光導波路2のアンダークラッド層9およびオーバークラッド層11と線膨張係数が同等(線膨張係数の差が20ppm/℃以内)の樹脂で形成することが好ましい。なかでも、上記反り抑制層7は、線膨張係数が30ppm/℃以上120ppm/℃以下の樹脂で形成されることが好ましく、30ppm/℃以上90ppm/℃以下の樹脂で形成されることがより好ましく、30ppm/℃以上70ppm/℃以下の樹脂で形成されることがさらに好ましい。上記反り抑制層7の線膨張係数が上記範囲内であると、光電気混載基板の反りをより抑制できる傾向がみられる。
また、上記反り抑制層7の形成材料としては、例えば、エポキシ系樹脂があげられ、耐熱性、微細パターニング性の点から好ましく用いられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。なかでも、上記反り抑制層7は、上記アンダークラッド層9およびオーバークラッド層11と同一の樹脂で形成することがより好ましい。これは工程上、同じ材料であることが作業性を考慮すると好ましく、また積層時の密着性等を考慮した結果、反り抑制のために同じ線膨張係数のエポキシ材料を選定した。
【0025】
上記反り抑制層7の厚み(R)は、特に限定するものではないが、10μm以上200μm以下であることが好ましく、50μm以上150μm以下であることがより好ましく、80μm以上120μm以下であることがさらに好ましい。
とりわけ、上記反り抑制層7の厚み(R)は、上記光導波路2の厚み(Q)と同程度であることが好ましい。すなわち、上記光導波路2の厚み(Q)に対する上記反り抑制層7の厚み(R)の比(R/Q)が0.1以上2以下にあることが好ましく、0.5以上1.5以下にあることがより好ましく、0.8以上1.2以下にあることがさらに好ましい。上記比(R/Q)が上記範囲内であると、光電気混載基板の反りをより抑制できる傾向がみられる。
【0026】
上記反り抑制層7の面積は、上記基板1の表面の面積の50%以上あることが好ましく、70%以上あることがより好ましく、さらに好ましくは90%以上である。
【0027】
また、上記反り抑制層7の面積は、上記基板1の裏面(第2の面1b)に形成された光導波路の面積の60%以上あることが好ましく、80%以上あることがより好ましく、さらに好ましくは90%以上であり、100%であることがより一層好ましい。
【0028】
つぎに、上記光電気混載基板を製造する方法について説明する。
[フレキシブルプリント基板1の形成]
まず、上記金属層3を形成するための金属シート材M〔
図4A参照〕を準備し、上記金属シート材Mの表面に、感光性絶縁樹脂を塗布し、フォトリソグラフィ法等により、所定パターンのベース層4を形成する。
【0029】
つぎに、
図4Bに示すように、上記電気配線5と実装用パッド5aとを、例えば、セミアディティブ法,サブトラクティブ法等により形成する。上記電気配線5と実装用パッド5aの厚みは、例えば、いずれも1μm以上30μm以下に設定されることが好ましい。
【0030】
ついで、
図4Cに示すように、上記電気配線5の部分に、ポリイミド樹脂等からなる感光性絶縁樹脂を塗布し、フォトリソグラフィ法により、カバーレイ8を形成する。上記カバーレイ8の厚みは、例えば、1μm以上30μm以下に設定されることが好ましい。
また、上記実装用パッド5a等のカバーレイ8が形成されなかった箇所の上に電解メッキ層5bを形成する。このようにして、上記基板1を形成する。なお、上記基板1の第1の面1aには、上記のとおり上記パッド5aおよび電解メッキ層5bが形成されており、これらが光素子実装用のパッド6になっている。
【0031】
[金属層3の形成]
その後、
図4Dに示すように、上記金属シート材Mにエッチング等を施すことにより、その金属シート材Mに、貫通孔13を含む所定形状を付与する。このようにして、上記金属シート材Mを金属層3に形成する。
【0032】
[光導波路2の形成]
そして、上記基板1の裏面(第2の面1b)に光導波路2(
図1参照)を形成するために、まず、
図5Aに示すように、上記基板1の裏面(第2の面1b、図では下面)に、アンダークラッド層9の形成材料である感光性樹脂を塗布し、フォトリソグラフィ法等により、アンダークラッド層9に形成する。なお、光導波路2の形成時(上記アンダークラッド層9,下記コア10,下記オーバークラッド層11の形成時)は、上記基板1の裏面は上に向けられる。
【0033】
つぎに、
図5Bに示すように、アンダークラッド層9の表面(図では下面)に、コア10の形成材料である感光性ドライフィルムを積層するか、または感光性樹脂を塗布し、フォトリソグラフィ法により、コア10を形成する。上記コア10の屈折率は、上記アンダークラッド層9および下記オーバークラッド層11の屈折率よりも大きくなっている。
【0034】
そして、
図5Cに示すように、上記コア10を被覆するよう、上記アンダークラッド層9の表面(図では下面)に、オーバークラッド層11の形成材料を塗布し、フォトリソグラフィ法により、オーバークラッド層11を形成する。その後、
図6Aに示すように、上記コア10の特定部分を、上記アンダークラッド層9および上記オーバークラッド層11とともに、例えば、ダイシングやレーザ加工等により、コア10の延びる方向(長手方向)に対して45°傾斜した傾斜面に形成する。それら傾斜面に位置する上記コア10の特定部分が光反射面(ミラー面10a)となる。このようにして、上記金属層3の裏面に、ミラー面10aを備えた光導波路2を形成する。
【0035】
[反り抑制層7の形成]
ついで、
図6Aに示すように、上記光素子の実装予定部分12を除いた上記基板1の第1の面1aの全面に、反り抑制層7の形成材料を塗布し、フォトリソグラフィ法等により、反り抑制層7を形成する。このように、上記反り抑制層7は、生産効率および光導波路の寸法精度を確保する点から、上記光導波路2を積層形成した後に形成することが好ましい。
【0036】
このようにして、基板の第1の面1aに設けられた光素子実装用のパッド6と、上記基板1の第2の面1bに積層形成された光導波路2とを有し、上記基板1の第1の面1aのほぼ全面に、光電気混載基板の反りを抑制するための反り抑制層7が設けられている光電気混載基板を得ることができる。
【0037】
上記光電気混載基板は、例えば、
図6Bに示すように、その端部にコネクタ等が取り付けられ(図示せず)、光素子実装用のパッド6を介して光素子14が、通常、高温(例えば200℃)下で実装される。なお、本開示において、上記光素子14には、電気光変換素子および光電気変換素子のいずれも含まれる。
【0038】
この構成によると、上記基板1の第1の面1aのほぼ全面に、光電気混載基板の反りを抑制するための反り抑制層7が設けられているため、光素子14を実装する際の高温に晒されたとしても反りが生じにくくなっており、光素子14をフレキシブルである光電気混載基板に精度よく実装することができる。光電気混載基板に光素子14が精度よく実装された光電気混載モジュールは、その通信性が損なわれないため、信頼性および高速通信性の向上が図られている。
【0039】
上記実施の形態では、
図3に示すように上記基板1のほぼ全面(光素子の実装予定部分12以外の部分を除く)が反り抑制層7によって被覆されている。言い換えると、上記反り抑制層7は、上記基板1を挟んで対峙する上記光導波路2のほぼ全面に対応する部分を被覆している。しかし、上記反り抑制層7は、
図7Aに示すように、上記基板1を挟んで対峙する上記光導波路2の長手方向の端部ぎりぎりに対応する部分まで被覆しなくてもよい。その場合、上記光導波路2の長手方向の長さL
1に対する上記反り抑制層7の長手方向の長さL
2の比(L
2/L
1)が0.55以上1以下であることが好ましく、0.7以上1以下であることがより好ましく、0.8以上1以下であることがさらに好ましく、0.9以上1以下であることが一層好ましい。また、上記反り抑制層7は、上記光導波路2の幅方向の端部ぎりぎりに対応する部分まで被覆しなくてもよい。この場合、上記光導波路2の幅W
1に対する上記反り抑制層7の幅W
2の比(W
2/W
1)が0.6以上1以下であることが好ましく、0.7以上1以下であることがより好ましく、0.8以上1以下であることがさらに好ましく、0.9以上1以下であることが一層好ましい。
これらの比が上記範囲にあると、製造コストと反り量の低減のバランスに優れる傾向がある。
【0040】
さらに、上記反り抑制層7は、
図7Bに示すように、その幅方向に一続きでなく、分断されていてもよい。この場合、上記反り抑制層7の分断された幅W
3の合計を、上記反り抑制層7の幅W
2とする。ただし、上記反り抑制層7は、その長手方向に一続きに形成されていることが好ましい。
【0041】
つぎに、反り抑制層7を設ける部位のバリエーションを
図8Aに示して説明する。
この実施の形態では、基板1が長手方向の端部の両方に光導波路2のミラー面10aを有するものであり、光素子実装用のパッド6近傍(光素子14の実装予定部分)およびレシーバまたはドライバと接続するための接続端子15近傍(レシーバまたはドライバと当接する予定部分)以外の部分(
図8Aにおいて斜線で示す部分)が、反り抑制層7によって被覆されている。
すなわち、この実施の形態では、基板1の第1の面の、光素子14等の実装予定部以外の部分に反り抑制層7が設けられている。
もちろん、本開示の光電気混載基板は、
図8Bに示すように、長手方向の端部の一方にのみ光導波路2のミラー面10aを有するものであってもよい。この場合、ミラー面10aを有しない方の端部は、通常、コネクタ等が実装される。
なお、
図8A,
図8Bにおいて、符号13は光導波路2の貫通孔であり、符号5は基板1に設けられた電気配線である。
【実施例0042】
以下に実施例を挙げて本開示をさらに具体的に説明するが、本開示趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本開示の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0043】
まず、下記に示す材料(光導波路2および反り抑制層7の形成材料)を準備した。
【0044】
<光導波路2の形成材料>
(1)コア10の形成材料として、以下の成分を混合し調製した。なお、調整する工程においては、はじめに以下に記載される光カチオン重合開始剤を混ぜて混合液を得た。その後、得られた混合液に光カチオン重合開始剤を添加した。このときの樹脂の線膨張係数は63ppm/℃であった。
〔エポキシ系樹脂〕
・VG3101L(プリンテック社製):30重量部
・YX-7180H40(三菱ケミカル社から購入):20重量部(固形分)
・jER-1002(三菱ケミカル社製):30重量部
・オグソールPG-100(大阪ガスケミカル社製):20重量部
〔光カチオン重合開始剤〕
・CPI-101A(サンアプロ社製):2重量部
〔酸化防止剤〕
・Songnox1010(共同薬品社製):0.5重量部
・HCA(三光社製):1.5重量部
【0045】
(2)アンダークラッド層9およびオーバークラッド層11の形成材料として、以下の成分を混合し調製した。なお、調整する工程においては、はじめに以下に記載される光カチオン重合開始剤を混ぜて混合液を得た。その後、得られた混合液に光カチオン重合開始剤を添加した。ここのときの樹脂の線膨張係数は63ppm/℃であった。
〔エポキシ系樹脂〕
・VG3101L(プリンテック社製):20重量部
・YX-7180H40(三菱ケミカル社から購入):20重量部(固形分)
・jER-1002(三菱ケミカル社製):30重量部
・EHPE3150(ダイセル社製):30重量部
〔光カチオン重合開始剤〕
・CPI-101A(サンアプロ社製):2重量部
〔酸化防止剤〕
・Songnox1010(共同薬品社製):0.5重量部
・HCA(三光社製):1.5重量部
【0046】
<反り抑制層>
(1)反り抑制層A:アンダークラッド層およびオーバークラッド層と同じエポキシ系樹脂を用いた(線膨張係数:63ppm/℃)。
(2)反り抑制層B:フィラーを入れてエポキシの線膨張係数を調整(線膨張係数:42ppm/℃)。
【0047】
上記材料を用いて、以下のとおり実施例1~37および比較例1~6を作製した。
【0048】
[実施例1]
前記実施の形態で説明したとおりに、
図3に示す幅Wが2.99mm、長さLが280mmであり、その第1の面1aに光素子実装用のパッド6を有するフレキシブルプリント基板1を準備し、上記基板1の第2の面1bの全面に、光導波路2を積層形成した。
そして、上記基板1の第1の面1aの全面(上記光導波路2が形成された箇所に対応する箇所)に、上記光素子実装用のパッド6の近傍(光素子14の実装予定部分12)を除いて100μmの厚みを有する反り抑制層7(反り抑制層A)を形成した。
なお、上記基板1は、20μmの厚みを有するSUS(ステンレス鋼、日鉄ケミカル&マテリアル社製)からなる金属層3の上に10μmの厚みを有するポリイミドからなるベース層4を介して6μmの厚みを有するCu(銅)を用いて電気配線5、パッド5aが形成されたものである。
そして、上記光導波路2は、コア10の厚みが20μmであり、全体の厚みが100μmに形成されたものである。
また、上記反り抑制層7は、上記光導波路2のアンダークラッド層9およびオーバークラッド層11と同じ材料で形成されたものである。
【0049】
[実施例2~37および比較例1~6]
表1~6に示すように、基板1の長さ、光導波路2の厚み(Q)、反り抑制層7の種類、反り抑制層7の厚み(R)を設定し、実施例1と同様にして目的とする光電気混載基板を作製した。
【0050】
そして、得られた実施例1~37および比較例1~6の光電気混載基板に対し、反り量(mm)を下記のとおりに測定し、下記の指標に基づいて評価を行った。得られた評価については、後記の表1~6に記載した。さらに、測定した反り量(mm)の具体的な値については、後記の表7に併せて記載した。
【0051】
<反り量>
・測定方法
実施例1~37および比較例1~6の光電気混載基板を260℃の雰囲気下で1分間加熱した後、室温(23℃)になるまで静置した。加熱後の光電気混載基板について、それぞれその長手方向の端部を固定した状態で水平面に置いた。そして、その水平面から上記光電気混載基板が浮き上がって離れた箇所が生じた場合、水平面からそのもっとも離れた箇所までの距離を測定した。
なお、上記測定に際し、基板の第1の面(反り抑制層が形成された側の面)を内側にして撓む(反る)場合を-(マイナス)を付けて示し、基板の第2の面(光導波路が形成された側の面)を内側にして撓む(言い換えると、反る)場合には数値のみを示した。
<評価>
反り抑制の効果は、測定された反り量(mm)と、光電気混載基板の全体に対する目視観察を行った結果とを総合的に判定したものである。
判定の結果、反り抑制の効果があったものは○(マル)、反り抑制の効果がなかったものは×(バツ)と表中に示した。
【0052】
【0053】
【0054】
【0055】
【0056】
【0057】
【0058】
【0059】
上記の結果から、実施例1~37の光電気混載基板は、いずれも反り量が低減されていることがわかる。とりわけ基板1の長さが長くなるほど、反り量が増加する傾向がみられるが、実施例35~37と比較例6とを対比してわかるとおり、本開示の光電気混載基板は基板1の長さが増加しても反り量の低減が充分に図られていることがわかる。
以下に、補足が必要な実施例、比較例について説明する。
【0060】
[実施例1~7、比較例1]
実施例5は、-(マイナス)側の振切れがあったものの、備考に記載のとおり、比較例1と比べて、反り抑制の効果を有していた。
なお、比較例1は、備考に記載のとおり、実施例1~7と比べて目視でも違いがわかるほどの大きな反りがみられ、その反り量は、-(マイナス)側の振切れが生じるものであった。
【0061】
[実施例8~14、比較例2]
実施例9~12は、-(マイナス)側の振切れがあったものの、備考に記載のとおり、比較例2と比べて、反り抑制の効果を有していた。
なお、比較例2は、備考に記載のとおり、実施例8~14と比べて目視でも違いがわかるほどの大きな反りがみられ、その反り量は、-(マイナス)側の振切れが生じるものであった。
【0062】
[実施例35~37、比較例6]
実施例36は-(マイナス)側に振切れし、実施例37は+(プラス)側に振切れした。
なお、表6の備考に示すように、比較例6における反り量が、全実施例および比較例のなかで最大であった。
【0063】
つぎに、実施例1および比較例1の光電気混載基板の光素子実装用のパッド6に光素子14をそれぞれ200℃でフリップチップボンディング(超音波フリップチップ実装機 AFM―15、TDK社製)によって実装し、光電気混載モジュールを作製した。
その結果、光素子14の実装時に光電気混載基板の反りを抑制できた実施例1の光電気混載モジュールの方が比較例1のものより、光素子が精度よく実装されているだけでなく、ハンドリング性もよいことが確認できた。
本開示の光電気混載基板は、高熱下で反りが生じにくいため、各種素子の実装精度が向上し、高速通信を可能とする光電気混載基板およびそれを用いた光電気混載モジュールとして好適に利用できる。