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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129408
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】回転伝達装置
(51)【国際特許分類】
   F16D 41/08 20060101AFI20240919BHJP
   F16D 27/12 20060101ALI20240919BHJP
   F16D 41/067 20060101ALI20240919BHJP
   F16D 41/06 20060101ALI20240919BHJP
   F16D 27/14 20060101ALI20240919BHJP
【FI】
F16D41/08 Z
F16D27/12 B
F16D41/067
F16D41/06 B
F16D27/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038595
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(72)【発明者】
【氏名】石川 慎太朗
(57)【要約】
【課題】入力軸と外輪の間での回転の伝達を遮断した空転状態のときに外輪が高速回転する用途で使用したときに係合子のミス係合が生じにくい回転伝達装置を提供する。
【解決手段】電磁石11を、外輪4の外周を囲むように外輪4の径方向外側に配置し、ロータ12を、電磁石11と軸方向に対向するように外輪4の径方向外側に配置し、外輪4と一体に回転するように外輪4の内周に回り止め嵌合する接続軸10を設け、接続軸10の軸端に設けた軸受収容孔23に、入力軸5の軸端に設けた延長軸部24を回転可能に支持する振れ止め用軸受25を装着した。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外輪(4)と、
前記外輪(4)の径方向内側に配置された入力軸(5)と、
前記入力軸(5)の外周に装着され、前記外輪(4)を回転可能に支持する中間軸受(6)と、
前記外輪(4)の内周と前記入力軸(5)の外周との間に組み込まれた係合子(7)と、
前記係合子(7)を保持し、前記入力軸(5)の外周と前記外輪(4)の内周との間に前記係合子(7)を係合させる係合位置と、前記入力軸(5)の外周と前記外輪(4)の内周との間への前記係合子(7)の係合を解除する係合解除位置との間で周方向に移動可能に支持された係合子保持器(8)と、
環状の電磁石(11)と、
前記電磁石(11)と軸方向に対向して配置され、前記外輪(4)と一体に回転するように前記外輪(4)に固定されたロータ(12)と、
前記電磁石(11)に通電したときに前記ロータ(12)に吸着されるように前記ロータ(12)を間に挟んで前記電磁石(11)と軸方向に対向して配置され、前記係合子保持器(8)に回り止めされたアーマチュア(13)と、を有する回転伝達装置において、
前記電磁石(11)を、前記外輪(4)の外周を囲むように前記外輪(4)の径方向外側に配置し、
前記ロータ(12)を、前記電磁石(11)と軸方向に対向するように前記外輪(4)の径方向外側に配置し、
前記外輪(4)と一体に回転するように前記外輪(4)の内周に回り止め嵌合する接続軸(10)を設け、
前記接続軸(10)の軸端に設けた軸受収容孔(23)に、前記入力軸(5)の軸端に設けた延長軸部(24)を回転可能に支持する振れ止め用軸受(25)を装着したことを特徴とする回転伝達装置。
【請求項2】
前記接続軸(10)の外周と前記外輪(4)の内周との間の嵌合が、前記接続軸(10)と前記外輪(4)の相対的な軸方向移動を許容しながら両者を回り止めする嵌合である請求項1に記載の回転伝達装置。
【請求項3】
前記接続軸(10)の前記外輪(4)への挿入端の外周に、前記接続軸(10)を前記外輪(4)から抜け止めするフランジ部(21)を形成した請求項2に記載の回転伝達装置。
【請求項4】
前記接続軸(10)の前記外輪(4)への挿入端の外周に、前記接続軸(10)を前記外輪(4)から抜け止めする止め輪(61)を装着した請求項2に記載の回転伝達装置。
【請求項5】
前記振れ止め用軸受(25)は、径方向から見て、前記外輪(4)の内周の前記中間軸受(6)から軸方向に遠い端の位置(P)と重なるように配置されている請求項1から4のいずれかに記載の回転伝達装置。
【請求項6】
前記軸受収容孔(23)の前記中間軸受(6)に軸方向に近い端部内周に、前記延長軸部(24)の根元部分を回転可能に支持する第2の振れ止め用軸受(26)を装着した請求項5に記載の回転伝達装置。
【請求項7】
前記係合子保持器(8)を前記係合解除位置に弾性的に保持するスイッチばね(9)を更に有し、
前記係合子保持器(8)は、前記係合子(7)を収容するポケット(33)が形成された筒状の部材であり、
前記スイッチばね(9)は、前記係合子保持器(8)の前記ポケット(33)よりも軸方向一方側の部分に形成された第1ばね係合部(34)に係合する第1スイッチばね(9a)と、前記係合子保持器(8)の前記ポケット(33)よりも軸方向他方側の部分に形成された第2ばね係合部(35)に係合する第2スイッチばね(9b)とからなる請求項1から4のいずれかに記載の回転伝達装置。
【請求項8】
前記第1ばね係合部(34)と前記第2ばね係合部(35)は、軸方向から見て互いに180°反対の位置関係となるように配置されている請求項7に記載の回転伝達装置。
【請求項9】
前記アーマチュア(13)を前記ロータ(12)から遠ざかる側の軸方向に付勢する離反ばね(49)を更に有し、
前記離反ばね(49)の軸方向一端は、前記アーマチュア(13)に当接し、前記離反ばね(49)の軸方向他端は、前記入力軸(5)と一体回転するように設けたばね受け部材(50)で支持されている請求項1から4のいずれかに記載の回転伝達装置。
【請求項10】
前記ばね受け部材(50)は、前記ロータ(12)の径方向内側に配置されている請求項9に記載の回転伝達装置。
【請求項11】
前記電磁石(11)と前記外輪(4)は、前記アーマチュア(13)に対して軸方向の同じ側に配置されている請求項1から4のいずれかに記載の回転伝達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、回転の伝達と遮断の切り換えに用いられる回転伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
入力軸と外輪の間で回転が伝達する締結状態と、入力軸と外輪の間での回転の伝達が遮断される空転状態とを切り換えることが可能な回転伝達装置として、例えば特許文献1に記載のものが知られている。
【0003】
特許文献1に記載の回転伝達装置は、ローラクラッチ部と電磁クラッチ部とを軸方向に並んで配置したものである。ローラクラッチ部は、外輪と、外輪の径方向内側に配置された入力軸と、外輪を回転可能に支持するように入力軸の外周に装着された中間軸受と、外輪の内周と入力軸の外周との間に組み込まれたローラと、入力軸の外周と外輪の内周との間にローラを係合させる係合位置と、入力軸の外周と外輪の内周との間へのローラの係合を解除する係合解除位置との間で周方向に移動可能に支持されたローラ保持器とを有する。また、電磁クラッチ部は、環状の電磁石と、電磁石と軸方向に対向して配置されたロータと、電磁石に通電したときにロータに吸着されるようにロータを間に挟んで電磁石と軸方向に対向して配置されたアーマチュアとを有する。ここで、ロータは、外輪と一体に回転するように外輪に固定され、アーマチュアは、ローラ保持器に回り止めされている。
【0004】
特許文献1の回転伝達装置は、電磁石に通電すると、アーマチュアがロータに吸着することで、アーマチュアに回り止めされたローラ保持器が係合解除位置から係合位置に移動し、入力軸の外周と外輪の内周との間にローラが係合し、入力軸と外輪の間で回転が伝達する締結状態となる。一方、電磁石への通電を停止すると、アーマチュアがロータから離反することで、ローラ保持器が係合位置から係合解除位置に移動し、入力軸の外周と外輪の内周との間へのローラの係合が解除され、入力軸と外輪との間での回転の伝達が遮断される空転状態となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-90356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の回転伝達装置は、入力軸の外周と外輪の内周との間にローラ(係合子)を係合させることでトルクを伝達するので、伝達可能なトルクが大きいという利点があるが、ローラクラッチ部と電磁クラッチ部とが軸方向に並んで配置されているので、回転伝達装置の軸方向寸法が長く、軸方向に長い設置スペースが必要であるという問題がある。
【0007】
そこで、本願の発明者は、回転伝達装置の設置スペースを軸方向に短くするため、電磁クラッチ部の電磁石を、ローラクラッチ部の外輪の外周を囲むように外輪の径方向外側に配置し、かつ、電磁クラッチ部のロータを、電磁石と軸方向に対向するように外輪の径方向外側に配置し、そのロータを外輪と一体に回転するように外輪に固定した構成の回転伝達装置を発案した。
【0008】
この構成の回転伝達装置は、電磁クラッチ部の電磁石が、ローラクラッチ部の外輪の外周を囲むように外輪の径方向外側に配置され、電磁クラッチ部のロータも、ローラクラッチ部の外輪の径方向外側に配置されているので、電磁クラッチ部とローラクラッチ部とを軸方向に並んで配置した特許文献1の従来の回転伝達装置よりも、回転伝達装置の設置スペースを軸方向に短く抑えることができる。
【0009】
しかしながら、この構成の回転伝達装置は、入力軸と外輪の間での回転の伝達を遮断した空転状態のときに外輪が高速回転する用途(例えば、車両の原動機から車輪への動力伝達経路の途中において原動機の側に入力軸を接続し、車輪の側に外輪を接続して使用する用途)で使用したときに、外輪の振れ回りによりローラのミス係合が生じるおそれがあるという問題に発明者は気付いた。
【0010】
すなわち、特許文献1のように、電磁クラッチ部とローラクラッチ部とを軸方向に並んで配置する場合は、入力軸の外周に、外輪を回転可能に支持する軸受と、ロータを回転可能に支持する軸受とを別々に設けることができる。つまり、外輪とロータは、入力軸に対し、別個の軸受でそれぞれ回転可能に支持することができる。そのため、入力軸と外輪の間での回転の伝達を遮断した空転状態のときに、外輪が高速回転しても、外輪の振れ回りは生じにくく、ローラのミス係合が生じにくい。これに対し、電磁クラッチ部の電磁石を、ローラクラッチ部の外輪の外周を囲むように外輪の径方向外側に配置し、かつ、電磁クラッチ部のロータを、電磁石と軸方向に対向するように外輪の径方向外側に配置し、そのロータを外輪と一体に回転するように外輪に固定した構成を採用した場合、外輪とロータは、入力軸に対し、入力軸の外周に装着した単一の軸受(中間軸受)で回転可能に支持されることになる。そのため、入力軸と外輪の間での回転の伝達を遮断した空転状態のときに、外輪が高速回転すると、外輪の質量の僅かなアンバランスにより、入力軸に対する外輪の振れ回りが生じやすく、その振れ回りによってローラのミス係合が生じやすいという問題に発明者は気付いた。
【0011】
この発明が解決しようとする課題は、設置スペースを軸方向に短く抑えることができ、しかも入力軸と外輪の間での回転の伝達を遮断した空転状態のときに外輪が高速回転する用途で使用したときに係合子のミス係合が生じにくい回転伝達装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するため、この発明では、以下の構成の回転伝達装置を提供する。
[構成1]
外輪と、
前記外輪の径方向内側に配置された入力軸と、
前記入力軸の外周に装着され、前記外輪を回転可能に支持する中間軸受と、
前記外輪の内周と前記入力軸の外周との間に組み込まれた係合子と、
前記係合子を保持し、前記入力軸の外周と前記外輪の内周との間に前記係合子を係合させる係合位置と、前記入力軸の外周と前記外輪の内周との間への前記係合子の係合を解除する係合解除位置との間で周方向に移動可能に支持された係合子保持器と、
環状の電磁石と、
前記電磁石と軸方向に対向して配置され、前記外輪と一体に回転するように前記外輪に固定されたロータと、
前記電磁石に通電したときに前記ロータに吸着されるように前記ロータを間に挟んで前記電磁石と軸方向に対向して配置され、前記係合子保持器に回り止めされたアーマチュアと、を有する回転伝達装置において、
前記電磁石を、前記外輪の外周を囲むように前記外輪の径方向外側に配置し、
前記ロータを、前記電磁石と軸方向に対向するように前記外輪の径方向外側に配置し、
前記外輪と一体に回転するように前記外輪の内周に回り止め嵌合する接続軸を設け、
前記接続軸の軸端に設けた軸受収容孔に、前記入力軸の軸端に設けた延長軸部を回転可能に支持する振れ止め用軸受を装着したことを特徴とする回転伝達装置。
【0013】
この構成を採用すると、電磁石が外輪の外周を囲むように外輪の径方向外側に配置されているので、電磁石と外輪とを軸方向に並んで配置したものに比べて、回転伝達装置の軸方向長さが短くなり、回転伝達装置の設置スペースを軸方向に短く抑えることができる。また、外輪を回転可能に支持する中間軸受を入力軸の外周に装着するとともに、外輪と一体に回転するように外輪の内周に回り止め嵌合する接続軸を設け、その接続軸の軸端に設けた軸受収容孔に、入力軸の軸端に設けた延長軸部を回転可能に支持する振れ止め用軸受を装着しているので、入力軸の軸心に対する外輪の軸心の位置精度を確保しやすい。そのため、入力軸と外輪の間での回転の伝達を遮断した空転状態のときに、外輪が高速回転しても、入力軸に対する外輪の振れ回りが生じにくく、係合子のミス係合が生じにくい。
【0014】
[構成2]
前記接続軸の外周と前記外輪の内周との間の嵌合が、前記接続軸と前記外輪の相対的な軸方向移動を許容しながら両者を回り止めする嵌合である構成1に記載の回転伝達装置。
【0015】
この構成を採用すると、外輪の質量から接続軸の質量を切り離すことができるので、外輪の質量を軽量化することができ、外輪の振れ回りを特に効果的に抑制することが可能となる。
【0016】
[構成3]
前記接続軸の前記外輪への挿入端の外周に、前記接続軸を前記外輪から抜け止めするフランジ部を形成した構成2に記載の回転伝達装置。
【0017】
この構成を採用すると、接続軸に動力伝達経路の下流側の部品を組み付けた後、その接続軸が外輪から抜け落ちる事態を防止することが可能となる。
【0018】
[構成4]
前記接続軸の前記外輪への挿入端の外周に、前記接続軸を前記外輪から抜け止めする止め輪を装着した構成2に記載の回転伝達装置。
【0019】
この構成を採用すると、接続軸に動力伝達経路の下流側の部品を組み付けた後、その接続軸が外輪から抜け落ちる事態を防止することが可能となる。
【0020】
[構成5]
前記振れ止め用軸受は、径方向から見て、前記外輪の内周と前記接続軸の外周との間の嵌合部分の前記中間軸受から軸方向に遠い端の位置と重なるように配置されている構成1から4のいずれかに記載の回転伝達装置。
【0021】
この構成を採用すると、振れ止め用軸受と中間軸受の間の軸方向距離が長くなるので、外輪を入力軸に対して傾かせるようなモーメント荷重に対する支持剛性が高くなり、外輪の振れ回りを効果的に抑制することが可能となる。
【0022】
[構成6]
前記軸受収容孔の前記中間軸受に軸方向に近い端部内周に、前記延長軸部の根元部分を回転可能に支持する第2の振れ止め用軸受を装着した構成5に記載の回転伝達装置。
【0023】
この構成を採用すると、入力軸の軸端に設けた延長軸部を、振れ止め用軸受と第2の振れ止め用軸受の2つの軸受で支持するので、入力軸の軸心に対する外輪の軸心の位置精度を確保することができる。
【0024】
[構成7]
前記係合子保持器を前記係合解除位置に弾性的に保持するスイッチばねを更に有し、
前記係合子保持器は、前記係合子を収容するポケットが形成された筒状の部材であり、
前記スイッチばねは、前記係合子保持器の前記ポケットよりも軸方向一方側の部分に形成された第1ばね係合部に係合する第1スイッチばねと、前記係合子保持器の前記ポケットよりも軸方向他方側の部分に形成された第2ばね係合部に係合する第2スイッチばねとからなる構成1から6のいずれかに記載の回転伝達装置。
【0025】
この構成を採用すると、係合子保持器を係合解除位置に弾性保持するスイッチばねが、複数のばね(第1スイッチばねと第2スイッチばね)で構成されているので、大きいばね力で係合子保持器を係合解除位置に保持することができる。そのため、係合子保持器が入力軸の外周と外輪の内周との間への係合子の係合を解除する係合解除位置にある状態で、大きい加速度をもって入力軸が加速または減速したときに、その入力軸の加速または減速に伴って、係合子保持器が入力軸に対して周方向移動するのを防止することができ、外輪の内周と入力軸の外周との間に係合子がミス係合するのを防止することができる。
【0026】
[構成8]
前記第1ばね係合部と前記第2ばね係合部は、軸方向から見て互いに180°反対の位置関係となるように配置されている構成7に記載の回転伝達装置。
【0027】
この構成を採用すると、第1スイッチばねのばね力と第2スイッチばねのばね力とが、軸方向から見て互いに180°反対に離れた位置で係合子保持器に作用するので、係合子保持器の軸心が、入力軸の軸心からずれるのを防止することができ、係合子保持器の動作を安定したものとすることができる。
【0028】
[構成9]
前記電磁石から遠ざかる側の軸方向に前記アーマチュアを付勢する離反ばねを更に有し、
前記アーマチュアは、前記係合子保持器と一体回転するように前記係合子保持器に回り止めされ、
前記離反ばねの軸方向一端は、前記アーマチュアに当接し、前記離反ばねの軸方向他端は、前記入力軸と一体回転するように設けたばね受け部材で支持されている構成1から8のいずれかに記載の回転伝達装置。
【0029】
この構成を採用すると、入力軸と一体回転するばね受け部材で離反ばねが支持されているので、空転状態のときに離反ばねが回転摺動により摩耗するのを防止することができ、入力軸と外輪の間での回転の伝達を遮断した空転状態のときに外輪が高速回転する用途で使用しても十分な耐久性を確保することが可能となる。
【0030】
[構成10]
前記ばね受け部材は、前記ロータの径方向内側に配置されている構成9に記載の回転伝達装置。
【0031】
この構成を採用すると、ばね受け部材がロータの径方向内側に配置されているので、回転伝達装置がコンパクトなものとなる。
【0032】
[構成11]
前記電磁石と前記外輪は、前記アーマチュアに対して軸方向の同じ側に配置されている構成1から10のいずれかに記載の回転伝達装置。
【発明の効果】
【0033】
この発明の回転伝達装置は、電磁石が外輪の外周を囲むように外輪の径方向外側に配置されているので、電磁石と外輪とを軸方向に並んで配置したものに比べて軸方向長さが短く、回転伝達装置の設置スペースを軸方向に短く抑えることができる。また、外輪を回転可能に支持する中間軸受を入力軸の外周に装着するとともに、外輪と一体に回転するように外輪の内周に回り止め嵌合する接続軸を設け、その接続軸の軸端に設けた軸受収容孔に、入力軸の軸端に設けた延長軸部を回転可能に支持する振れ止め用軸受を装着しているので、入力軸の軸心に対する外輪の軸心の位置精度を確保しやすい。そのため、入力軸と外輪の間での回転の伝達を遮断した空転状態のときに、外輪が高速回転しても、入力軸に対する外輪の振れ回りが生じにくく、係合子のミス係合が生じにくい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】この発明の第1実施形態にかかる回転伝達装置を示す断面図
図2図1のローラクラッチ部の近傍を拡大して示す図
図3図2の入力軸の軸端に設けられた延長軸部の近傍を拡大して示す図
図4図2のIV-IV線に沿った断面図
図5図2のV-V線に沿った断面図
図6】この発明の第2実施形態を図3に対応して示す図
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1に、この発明の第1実施形態にかかる回転伝達装置を示す。この回転伝達装置は、ローラクラッチ部1と、ローラクラッチ部1の締結状態と空転状態を切り替えるための電磁クラッチ部2と、ローラクラッチ部1および電磁クラッチ部2を収容するハウジング3とを有する。
【0036】
ローラクラッチ部1は、外輪4と、外輪4の径方向内側に配置された入力軸5と、外輪4を回転可能に支持するように入力軸5の外周に装着された中間軸受6と、外輪4の内周と入力軸5の外周との間に組み込まれたローラ7と、入力軸5の外周と外輪4の内周との間にローラ7を係合させる係合位置と、入力軸5の外周と外輪4の内周との間へのローラ7の係合を解除する係合解除位置との間で周方向に移動可能に支持されたローラ保持器8と、ローラ保持器8を係合解除位置に弾性的に保持するスイッチばね9と、外輪4と一体に回転するように外輪4の内周に回り止め嵌合する接続軸10とを有する。
【0037】
入力軸5には、図示しない動力伝達経路の上流側の部材が接続され、接続軸10には、図示しない動力伝達経路の下流側の部材が接続される。動力伝達経路は、例えば、車両の原動機(エンジン、電動モータ等)から車輪に動力を伝達する経路であり、この場合、入力軸5には、動力伝達経路の原動機の側の部材が接続され、接続軸10には、動力伝達経路の車輪の側の部材が接続される。
【0038】
一方、電磁クラッチ部2は、外輪4の径方向外側に配置された環状の電磁石11と、電磁石11と軸方向に対向して配置された環状のロータ12と、電磁石11に通電したときにロータ12に吸着されるようにロータ12を間に挟んで電磁石11と軸方向に対向して配置された環状のアーマチュア13とを有する。
【0039】
ハウジング3は、電磁石11の径方向外側を囲むように配置された筒部14と、筒部14の軸方向一端から径方向内方に延びる内向きフランジ部15とを有する。内向きフランジ部15の内周には、入力軸5を回転可能に支持する入力側軸受16が装着されている。
【0040】
外輪4は、電磁石11の内周に装着した出力側軸受18で回転可能に支持されている。ここでは、外輪4を回転可能に支持する出力側軸受18を電磁石11の内周に装着したが、出力側軸受18は、ハウジング3の内周に装着するようにしてもよい。外輪4の内周には、入力軸5に対して外輪4を回転可能に支持する中間軸受6が装着されている。入力軸5と接続軸10は、入力軸5の軸端と接続軸10の軸端とが軸方向に対向するように、軸方向に並んで同軸に配置されている。
【0041】
図3に示すように、接続軸10の外周と外輪4の内周は、接続軸10と外輪4の相対的な軸方向移動を許容しない嵌合(例えば、締め代をもったスプライン嵌合)ではなく、接続軸10と外輪4の相対的な軸方向移動を許容しながら両者を回り止めするようにスプライン嵌合している。スプライン嵌合は、接続軸10の外周に周方向に等ピッチに形成された軸方向に延びる複数のスプライン歯19を、外輪4の内周に周方向に等ピッチに形成された軸方向に延びる複数のスプライン溝20に嵌め込む嵌合形態であり、接続軸10と外輪4の相対的な軸方向移動を許容するように、スプライン歯19の歯面とスプライン溝20の側面との間に微小な隙間をもって両者が嵌合している。ここでは、接続軸10と外輪4の相対的な軸方向移動を許容しながら両者を回り止めする嵌合形態としてスプライン嵌合を例に挙げて説明したが、断面D形に形成した接続軸10の外周と断面D形に形成した外輪4の内周とを嵌合させるようにしてもよく、二面幅形状に形成した接続軸10の外周と二面幅形状に形成した外輪4の内周とを嵌合させるようにしてもよい。
【0042】
接続軸10の外輪4への挿入端の外周にはフランジ部21が形成されている。外輪4の内周には、フランジ部21と軸方向に対向する段差部22が形成されている。このフランジ部21と段差部22の接触により、接続軸10は外輪4から抜け止めされている。
【0043】
接続軸10の軸端には、円筒状の軸受収容孔23が形成されている。入力軸5の軸端には、軸受収容孔23に挿入される延長軸部24が一体に形成されている。軸受収容孔23には、延長軸部24を回転可能に支持する振れ止め用軸受25と第2の振れ止め用軸受26とが装着されている。
【0044】
振れ止め用軸受25は、軸受収容孔23の内周に嵌合する軸受外輪27と、延長軸部24の外周に嵌合する軸受内輪28と、軸受外輪27の内周と軸受内輪28の外周とに転がり接触する転動体29とを有する転がり軸受である。軸受外輪27は、径方向から見て、外輪4の内周の接続軸10との嵌合部分の中間軸受6から軸方向に遠い端の位置Pと重なるように配置されている。第2の振れ止め用軸受26は、軸受収容孔23の中間軸受6に軸方向に近いの端部内周に装着され、延長軸部24の根元部分を回転可能に支持している。振れ止め用軸受25と第2の振れ止め用軸受26の間には、両者の間の軸方向間隔を保持するための間座30が組み込まれている。
【0045】
図2図4に示すように、入力軸5の外周には、複数のカム面31が周方向に等間隔に設けられている。外輪4の内周には、カム面31と半径方向に対向する円筒面32が設けられている。図4に示すように、カム面31は、円筒面32との間で周方向中央から周方向両端に向かって次第に狭小となるくさび空間を形成する面であり、例えば、円筒面32と半径方向に対向する平坦面である。各カム面31と円筒面32の間に1個ずつローラ7が組み込まれている。
【0046】
ローラ保持器8は、径方向に貫通する複数のポケット33(図2参照)が周方向に間隔をおいて形成された筒状の部材であり、その各ポケット33にローラ7が収容されている。ローラ保持器8は、ローラ7をカム面31の周方向中央から周方向に移動させることでカム面31と円筒面32の間にローラ7を係合させる係合位置と、ローラ7をカム面31の周方向中央に移動させることでカム面31と円筒面32の間へのローラ7の係合を解除する係合解除位置との間で、入力軸5に対して周方向に移動可能に支持されている。
【0047】
図2に示すように、スイッチばね9は、ローラ保持器8のポケット33よりも軸方向一方側(図では左側)の部分に形成された第1ばね係合部34(図4参照)に係合する第1スイッチばね9aと、ローラ保持器8のポケット33よりも軸方向他方側(図では右側)の部分に形成された第2ばね係合部35(図5参照)に係合する第2スイッチばね9bとからなる。
【0048】
図4に示すように、第1スイッチばね9aは、鋼線をC形に巻いたC形環状部36と、C形環状部36の両端からそれぞれ径方向外方に延出する一対の延出部37とからなる。C形環状部36は、入力軸5の軸方向一方側の端面に形成された円形の第1ばね収容凹部38に嵌め込まれている。一対の延出部37は、第1ばね収容凹部38から径方向外方に貫通するように入力軸5の軸方向一方側の端面に形成された第1径方向溝39に挿入されている。
【0049】
第1スイッチばね9aの延出部37は、第1径方向溝39の径方向外端から突出しており、その延出部37の第1径方向溝39からの突出部分が、ローラ保持器8の軸方向一端に形成された第1ばね係合部34に係合している。第1ばね係合部34は、第1径方向溝39と同じ周方向幅をもつ凹部である。第1スイッチばね9aの延出部37は、第1径方向溝39の内面と、第1ばね係合部34の内面とにそれぞれ接触しており、その接触部分に作用する周方向の力によってローラ保持器8を係合解除位置に弾性保持している。すなわち、ローラ保持器8を図4に示す係合解除位置から入力軸5に対して周方向に相対変位して係合位置に移動したときに、第1スイッチばね9aの弾性復元力によってローラ保持器8が係合解除位置に戻る方向に付勢されるようになっている。
【0050】
図5に示すように、第2スイッチばね9bも、第1スイッチばね9aと同様に、鋼線をC形に巻いたC形環状部40と、C形環状部40の両端からそれぞれ径方向外方に延出する一対の延出部41とからなる。C形環状部40は、入力軸5の軸方向他方側の端面に形成された円形の第2ばね収容凹部42に嵌め込まれている。一対の延出部41は、第2ばね収容凹部42から径方向外方に貫通するように入力軸5の軸方向他方側の端面に形成された第2径方向溝43に挿入されている。
【0051】
第2スイッチばね9bの延出部41は、第2径方向溝43の径方向外端から突出しており、その延出部41の第2径方向溝43からの突出部分が、ローラ保持器8の軸方向他端に形成された第2ばね係合部35に係合している。第2ばね係合部35は、第2径方向溝43と同じ周方向幅をもつ凹部である。第2スイッチばね9bの延出部41は、第2径方向溝43の内面と、第2ばね係合部35の内面とにそれぞれ接触しており、その接触部分に作用する周方向の力によってローラ保持器8を係合解除位置に弾性保持している。すなわち、ローラ保持器8を図5に示す係合解除位置から入力軸5に対して周方向に相対変位して係合位置に移動したときに、第2スイッチばね9bの弾性復元力によってローラ保持器8が係合解除位置に戻る方向に付勢されるようになっている。
【0052】
図4図5に示すように、ローラ保持器8の第1ばね係合部34と第2ばね係合部35は、軸方向から見て互いに180°反対の位置関係となるように位置している。これにより、第1スイッチばね9aからローラ保持器8にばね力が作用する部分の周方向位置と、第2スイッチばね9bからローラ保持器8にばね力が作用する部分の周方向位置とが、軸方向から見てローラ保持器8の中心を挟んで反対側となるようになっている。
【0053】
図2に示すように、アーマチュア13は、入力軸5の外周で入力軸5に対して回転可能かつ軸方向に移動可能に支持されている。アーマチュア13は、磁性材料(鉄、珪素鋼など)で形成された円盤状の部材である。アーマチュア13は、内向きフランジ部15と軸方向に対向して配置されている。また、アーマチュア13に対して軸方向の同じ側(内向きフランジ部15と対向する側とは反対側。図では右側)に電磁石11(図1参照)と外輪4とが配置されている。
【0054】
図1に示すように、電磁石11は、磁性材料からなる環状のフィールドコア44と、フィールドコア44に巻回されたソレノイドコイル45とを有する。フィールドコア44は、アーマチュア13に向かって軸方向に開放するC形の断面形状を有する。フィールドコア44は、ハウジング3の筒部14の内周に嵌合して固定されている。ここで、電磁石11は、外輪4の外径寸法よりも大きい内径寸法をもつように形成され、外輪4の外周を囲むように外輪4の径方向外側に配置されている。
【0055】
ロータ12は、電磁石11と軸方向に対向するように外輪4の径方向外側に配置されている。ロータ12は、電磁石11の径方向内側に対向する内筒部46と、電磁石11の径方向外側に対向する外筒部47と、アーマチュア13と電磁石11の軸方向の対向面間を通って内筒部46と外筒部47の間を連結する円環板部48とを有する。内筒部46は、外輪4の外周に締め代をもって嵌合している。この内筒部46の嵌合によって、ロータ12は、外輪4と一体に回転するように外輪4に固定されている。ロータ12の内筒部46と外筒部47と円環板部48は、磁性材料(鉄、珪素鋼など)で一体に形成されている。
【0056】
ここで、電磁石11(ソレノイドコイル45)に通電すると、フィールドコア44とロータ12とアーマチュア13とを通る磁気回路が形成されることで、アーマチュア13がフィールドコア44に向かって軸方向に吸引され、ロータ12の円環板部48に接触するようになっている。
【0057】
ロータ12の径方向内側には、アーマチュア13を電磁石11から遠ざかる側(図1では左側)の軸方向に付勢する離反ばね49が設けられている。離反ばね49は、入力軸5と同軸に配置された環状のばね部材であり、アーマチュア13とばね受け部材50との間で軸方向に圧縮した状態で組み込まれている。離反ばね49としては、例えば、ウェーブワッシャ、皿ばね、圧縮コイルばね等を使用することができる。離反ばね49の軸方向一端は、アーマチュア13の電磁石11と対向する側(図1では右側)の側面に当接し、離反ばね49の軸方向他端は、ばね受け部材50で支持されている。
【0058】
図2に示すように、ばね受け部材50は、離反ばね49から受ける軸方向の反力によって中間プレート51(後述)に押し付けられ、空転状態のときに、ばね受け部材50と中間プレート51の間に作用する摩擦力によって、ばね受け部材50が入力軸5と一体回転するようになっている。ここでは、中間プレート51とは別体に形成したばね受け部材50で離反ばね49を支持したものを例に挙げて説明したが、ばね受け部材50と中間プレート51とを一体の部材としてもよく、ばね受け部材50を入力軸5と一体の部材としてもよい。
【0059】
アーマチュア13は、入力軸5の外周に装着した止め輪52で、電磁石11から遠ざかる側(図2では左側)の軸方向移動が規制されている。また、アーマチュア13は、離反ばね49のばね力で止め輪52に押し付けられている。
【0060】
アーマチュア13は、中間プレート51を介してローラ保持器8に回り止めされている。すなわち、アーマチュア13は、中間プレート51に形成された軸方向突起53とアーマチュア13に形成された軸方向孔54の係合によって、中間プレート51に対して軸方向に移動可能な状態で中間プレート51に回り止めされ、中間プレート51は、中間プレート51の外周に形成された係合凸部55とローラ保持器8に形成された係合凹部56の係合によってローラ保持器8に回り止めされている。
【0061】
上記の回転伝達装置の動作例を説明する。
【0062】
図1に示す電磁石11への通電を停止しているとき、入力軸5が外輪4に対して自由に相対回転することができる係合解除状態(空転状態)となる。すなわち、電磁石11に通電していないとき、アーマチュア13が離反ばね49のばね力によってロータ12から離反し、アーマチュア13は、ロータ12に対して自由に回転可能な状態となる。このとき、ローラ保持器8は、スイッチばね9で係合解除位置に保持されるので、入力軸5を回転させても、図2図4に示す入力軸5の外周のカム面31と外輪4の内周の円筒面32との間にローラ7は係合せず、入力軸5と外輪4の間での回転の伝達が遮断される空転状態となる。
【0063】
一方、図1に示す電磁石11に通電した状態では、入力軸5と外輪4の間で回転が伝達する締結状態となる。すなわち、電磁石11に通電したとき、アーマチュア13はロータ12に吸着され、アーマチュア13がロータ12に摩擦接触した状態となる。このとき、入力軸5を回転させると、電磁石11に摩擦接触するアーマチュア13が、中間プレート51を介してローラ保持器8に回り止めされているので、ローラ保持器8は回転が制限され、そのローラ保持器8に対して入力軸5が相対回転する。その結果、ローラ保持器8が、スイッチばね9のばね力に抗し係合解除位置から係合位置に移動し、図2図4に示す入力軸5の外周のカム面31と外輪4の内周の円筒面32との間にローラ7が係合するので、入力軸5と外輪4の間で回転が伝達する締結状態となる。
【0064】
この回転伝達装置は、図1に示すように、外輪4の外径寸法よりも大きい内径寸法をもつように電磁石11を形成し、その電磁石11を外輪4の外周を囲むように外輪4の径方向外側に配置しているので、電磁石11と外輪4とを軸方向に並んで配置したものに比べて、回転伝達装置の軸方向長さが短くなり、回転伝達装置の設置スペースを軸方向に短く抑えることができる。
【0065】
ところで、図2において、接続軸10の軸端の軸受収容孔23と、入力軸5の軸端の延長軸部24とを設けない構成の回転伝達装置を想定する。この場合、外輪4とロータ12(図1参照)は、入力軸5に対し、入力軸5の外周に装着した単一の軸受(中間軸受6)で回転可能に支持されることになるため、入力軸5と外輪4の間での回転の伝達を遮断した空転状態のときに、外輪4が高速回転すると、外輪4の質量の僅かなアンバランスにより、入力軸5に対する外輪4の振れ回りが生じやすく、その振れ回りによってローラ7のミス係合が生じやすいという問題がある。
【0066】
この問題に関し、この実施形態の回転伝達装置は、図2に示すように、外輪4を回転可能に支持する中間軸受6を入力軸5の外周に装着するとともに、外輪4と一体に回転するように外輪4の内周に回り止め嵌合する接続軸10を設け、その接続軸10の軸端に設けた軸受収容孔23に、入力軸5の軸端に設けた延長軸部24を回転可能に支持する振れ止め用軸受25を装着しているので、入力軸5の軸心に対する外輪4の軸心の位置精度を確保しやすい。そのため、入力軸5と外輪4の間での回転の伝達を遮断した空転状態のときに、外輪4が高速回転しても、入力軸5に対する外輪4の振れ回りが生じにくく、係合子のミス係合が生じにくい。
【0067】
また、この回転伝達装置は、図3に示すように、接続軸10の外周と外輪4の内周との間の嵌合として、接続軸10と外輪4の相対的な軸方向移動を許容しながら両者を一体回転するように回り止めするスプライン嵌合を採用しているので、外輪4の質量から接続軸10の質量が切り離され、外輪4の質量を軽量化することができる。そのため、外輪4の振れ回りを特に効果的に抑制することが可能である。
【0068】
また、この回転伝達装置は、図3に示すように、接続軸10の外輪4への挿入端の外周に、接続軸10を外輪4から抜け止めするフランジ部21が形成されているので、接続軸10に動力伝達経路の下流側の部品を組み付けた後、その接続軸10が外輪4から抜け落ちる事態を防止することが可能である。
【0069】
また、この回転伝達装置は、図3に示すように、径方向から見て、外輪4の内周と接続軸10の外周との間の嵌合部分の中間軸受6から軸方向に遠い端の位置Pと重なるように振れ止め用軸受25が配置されているので、振れ止め用軸受25と中間軸受6の間の軸方向距離が長い。そのため、外輪4を入力軸5に対して傾かせるようなモーメント荷重に対する支持剛性が高くなり、外輪4の振れ回りを効果的に抑制することが可能となっている。
【0070】
また、この回転伝達装置は、図3に示すように、入力軸5の軸端に設けた延長軸部24を、振れ止め用軸受25と第2の振れ止め用軸受26の2つの軸受で支持しているので、入力軸5の軸心に対する外輪4の軸心の位置精度を確保することが可能となっている。
【0071】
また、この回転伝達装置は、ローラ保持器8を係合解除位置に弾性保持するスイッチばね9が、図2に示すように複数のばね(第1スイッチばね9aと第2スイッチばね9b)で構成されているので、大きいばね力でローラ保持器8を係合解除位置に保持することができる。そのため、ローラ保持器8が入力軸5の外周と外輪4の内周との間へのローラ7の係合を解除する係合解除位置にある状態で、大きい加速度をもって入力軸5が加速または減速したときに、その入力軸5の加速または減速に伴って、ローラ保持器8が入力軸5に対して周方向移動するのを防止することができる。したがって、高速回転で使用しても外輪4の内周と入力軸5の外周との間にローラ7がミス係合するのを防止することができ、空転状態のときに外輪4が高速回転する用途に好適である。
【0072】
また、この回転伝達装置は、図4図5に示すように、第1スイッチばね9aのばね力と第2スイッチばね9bのばね力とが、軸方向から見て互いに180°反対に離れた位置でローラ保持器8に作用するので、ローラ保持器8の軸心が、入力軸5の軸心からずれるのを防止することができ、ローラ保持器8の動作が安定している。
【0073】
また、この回転伝達装置は、図2に示すように、空転状態のときに入力軸5と一体回転するばね受け部材50で離反ばね49が支持されているので、空転状態のときに離反ばね49が回転摺動により摩耗するのを防止することができ、高速回転で使用しても十分な耐久性を確保することが可能である。
【0074】
また、この回転伝達装置は、図1に示すように、ばね受け部材50がロータ12の径方向内側に配置されているので、回転伝達装置がコンパクトである。
【0075】
図6に、この発明の第2実施形態を示す。第1実施形態では、図3に示すように、接続軸10を外輪4から抜け止めするため、接続軸10の外輪4への挿入端の外周にフランジ部21を形成したが、第2実施形態では、図6に示すように、接続軸10の外輪4への挿入端の外周に形成した止め輪溝60に止め輪61を装着し、その止め輪61で接続軸10を外輪4から抜け止めしている。また、第1実施形態では、図3に示すように、振れ止め用軸受25と第2の振れ止め用軸受26で延長軸部24を回転可能に支持したが、第2実施形態では、図6に示すように、振れ止め用軸受25のみで延長軸部24を回転可能に支持するように構成している。
【0076】
この第2実施形態の回転伝達装置も、第1実施形態と同様、図6に示すように、接続軸10の外輪4への挿入端の外周に、接続軸10を外輪4から抜け止めする止め輪61が装着されているので、接続軸10に動力伝達経路の下流側の部品を組み付けた後、その接続軸10が外輪4から抜け落ちる事態を防止することが可能である。
【0077】
また、この第2実施形態の回転伝達装置は、第1実施形態と同様、径方向から見て、外輪4の内周の接続軸10との嵌合部分の中間軸受6から軸方向に遠い端の位置Pと重なるように振れ止め用軸受25が配置されているので、振れ止め用軸受25と中間軸受6の間の軸方向距離が長い。そのため、外輪4を入力軸5に対して傾かせるようなモーメント荷重に対する支持剛性が高くなり、外輪4の振れ回りを効果的に抑制することが可能となっている。その他の作用効果も第1実施形態と同様である。
【0078】
上記各実施形態では、外輪4の内周と入力軸5の外周との間に係合子としてローラ7を組み込んだ例を挙げて説明したが、この発明は、係合子としてボールやスプラグなどを使用した回転伝達装置にも同様に適用することができる。
【0079】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0080】
4 外輪
5 入力軸
6 中間軸受
7 ローラ(係合子)
8 ローラ保持器(係合子保持器)
9 スイッチばね
9a 第1スイッチばね
9b 第2スイッチばね
10 接続軸
11 電磁石
12 ロータ
13 アーマチュア
21 フランジ部
23 軸受収容孔
24 延長軸部
25 振れ止め用軸受
26 第2の振れ止め用軸受
33 ポケット
34 第1ばね係合部
35 第2ばね係合部
49 離反ばね
50 ばね受け部材
61 止め輪
P 位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6