(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129410
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】積層インダクタ
(51)【国際特許分類】
H01F 27/00 20060101AFI20240919BHJP
H01F 17/00 20060101ALI20240919BHJP
H01F 27/29 20060101ALI20240919BHJP
H01F 17/04 20060101ALI20240919BHJP
H01F 30/10 20060101ALI20240919BHJP
H01F 37/00 20060101ALI20240919BHJP
【FI】
H01F27/00 R
H01F17/00 D
H01F27/29 123
H01F17/04 A
H01F30/10 D
H01F37/00 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038603
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100187584
【弁理士】
【氏名又は名称】村石 桂一
(72)【発明者】
【氏名】友廣 俊
(72)【発明者】
【氏名】坂野 好子
【テーマコード(参考)】
5E070
【Fターム(参考)】
5E070AA05
5E070AB03
5E070CB13
5E070CB17
5E070EA01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】第1コイルと第2コイルとの間で電気特性の差異が小さい積層インダクタを提供する。
【解決手段】本開示の積層インダクタ1は、磁性層が積層された素体10と、素体10の内部に設けられ、複数の第1コイル導体層を積層方向に含む第1コイル21と、複数の第2コイル導体層を積層方向に含む第2コイル22と、第1コイル21に電気的に接続された第1外部電極及び第2外部電極とを備える。第1外部電極および第2外部電極は、素体10の底面に配置され、第2コイル22は積層方向において第1コイル21よりも素体の底面から離れた位置に設けられる。第1コイル21は、延伸方向が積層方向と直交するコイル導体からなるメインコイル要素21aと、メインコイル要素21aと電気的に直列に接続され、メインコイル要素21aにより生じる磁束の方向と逆向きの磁束を生じさせるサブコイル要素21bと、からなる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性層が積層された素体と、
前記素体の内部に設けられ、複数の第1コイル導体層を積層方向に含む第1コイルと、複数の第2コイル導体層を前記積層方向に含む第2コイルと、
前記第1コイルに電気的に接続された第1外部電極及び第2外部電極と、を備え、
前記第1外部電極および第2外部電極は、前記素体の底面に配置され、
前記第2コイルは、前記積層方向において前記第1コイルよりも前記素体の底面から離れた位置に設けられ、
前記第1コイルは、前記積層方向と延伸方向が直交するコイル導体からなるメインコイル要素と、
前記メインコイル要素と電気的に直列に接続され、前記メインコイル要素により生じる磁束の方向と逆向きの磁束を生じさせるサブコイル要素と、
からなる、積層インダクタ。
【請求項2】
前記サブコイル要素は、前記積層方向から見て 、前記メインコイル要素の一部と重複している、請求項1に記載の積層インダクタ。
【請求項3】
前記メインコイル要素は複数のコイル導体層を備えている、請求項1に記載の積層インダクタ。
【請求項4】
前記サブコイル要素の一端は、前記第1外部電極と直接接続されており、
前記サブコイル要素の他端は、スルーホールを介して前記メインコイル要素と電気的に接続されている、請求項1に記載の積層インダクタ。
【請求項5】
前記積層方向における前記サブコイル要素と前記メインコイル要素との間の距離は、前記積層方向における前記第1コイル導体層間の層間距離よりも長くなっている、請求項1に記載の積層インダクタ。
【請求項6】
前記サブコイル要素は、前記素体の底面に設けられている、請求項1に記載の積層インダクタ。
【請求項7】
前記第1コイルのメインコイル要素の巻回数は、前記第2コイルの巻回数よりも多くなっている、請求項1に記載の積層インダクタ。
【請求項8】
前記第2コイルに電気的に接続された第3外部電極及び第4外部電極を備え、
前記第3外部電極及び第4外部電極は、前記素体の底面に配置されている、請求項1に記載の積層インダクタ。
【請求項9】
前記素体の底面には、前記第1~第4外部電極を除く表面を被覆する絶縁層が形成されている、請求項8に記載の積層インダクタ。
【請求項10】
前記メインコイル要素の一端と直接接続される、第1スルーホールと、
前記メインコイル要素の他端と直接接続される、第2スルーホールと、
前記第2コイルの一端と直接接続される第3スルーホールと、
前記第2コイルの他端と直接接続される第4スルーホールと、を備え、
前記第1スルーホールは、一端が前記メインコイル要素と直接接続され、他端が前記サブコイル要素と直接接続されており、
前記第2スルーホールは、前記第2外部電極と直接接続されており、
前記第3スルーホールは、前記第2コイルに電気的に接続された第3外部電極と直接接続されており、
前記第4スルーホールは、前記第2コイルに電気的に接続された第4外部電極と直接接続されている、請求項1に記載の積層インダクタ。
【請求項11】
前記第1スルーホールの前記積層方向の長さよりも前記第2スルーホールの前記積層方向の長さが長く、
前記第2スルーホールの前記積層方向の長さよりも前記第3スルーホールの前記積層方向の長さが長く、
前記第3スルーホールの前記積層方向の長さよりも前記第4スルーホールの前記積層方向の長さが長くなっている、請求項10に記載の積層インダクタ。
【請求項12】
前記第1コイルのインダクタンス値は、前記第2コイルのインダクタンス値に対して±10%の範囲内である、請求項1に記載の積層インダクタ。
【請求項13】
前記第1コイルの直流抵抗値は、前記第2コイルの直流抵抗値に対して±20%の範囲内である、請求項1に記載の積層インダクタ。
【請求項14】
前記第1コイルによって生じる磁束の方向は、前記第2コイルによって生じる磁束の方向と逆方向である、請求項1に記載の積層インダクタ。
【請求項15】
前記第1外部電極と電気的に接続される前記メインコイル要素の一端は、前記第1外部電極の内部側の点と前記第2外部電極の内部側の点とを結ぶ仮想線よりも前記素体の内部側に配置されている、請求項1に記載の積層インダクタ。
【請求項16】
前記メインコイル要素と前記サブコイル要素とを直接接続するスルーホールは、平面透視で前記素体の角部から離間して設けられている、請求項1に記載の積層インダクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、積層インダクタに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、機器の高機能化により電圧変換回路のDC-DCコンバータは大電流化および高効率化が進んでおり、これらの機器に使われるパワーインダクタの定格電流も高まっている。大電流化および高効率化の手法としては、複数のインダクタからの出力電流を加算して大電流化するマルチフェーズ方式が採用されつつある。
【0003】
上記インダクタの一例を示す特許文献1には、磁性粒子を含有する磁性層を含む素体と、素体に内蔵された第1コイルおよび第2コイルと、素体の底面に設けられ、各コイルの端部のいずれか1つにそれぞれ電気的に接続された第1~第4外部電極とを有してなる積層型電子部品が開示されている(特許文献1の
図6Aおよび
図6B参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
複数のコイルを駆動するマルチフェーズ方式のDC-DCコンバータにおいて、インダクタに内蔵された複数のコイルは、電気特性の差異が小さいことが望ましいとされている。
【0006】
特許文献1に記載の積層型電子部品は、上側に位置する第1コイルの巻回数と下側に位置する第2コイルの巻回数は同じだが、第1コイルを電気的に接続するスルーホールと、第2コイルを電気的に接続するスルーホールとで、長さが異なっている。そのため、第2コイルに接続されるスルーホールの方が第1コイルに接続されるスルーホールよりも長くなり直流抵抗値およびインダクタンス値に差異が生じている。また、上側に位置する第1コイルの配線構造または巻回数に基づく巻回態様と下側に位置する第2コイルの巻回態様とが異なることがある。そのため、インダクタンス値に差異が生じ得る場合がある。つまり、特許文献1に記載の積層型電子部品は、第1コイルと第2コイルとの間で電気特性に差異が生じ得る場合があった。
【0007】
本開示の主たる目的は、第1コイルと第2コイルとの間で電気特性の差異が小さい積層インダクタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の積層インダクタは、
磁性層が積層された素体と、
前記素体の内部に設けられ、複数の第1コイル導体層を積層方向に含む第1コイルと、複数の第2コイル導体層を前記積層方向に含む第2コイルと、
前記第1コイルに電気的に接続された第1外部電極及び第2外部電極と、を備え、
前記第1外部電極および第2外部電極は、前記素体の底面に配置され、
前記第2コイルは、前記積層方向において前記第1コイルよりも前記素体の底面から離れた位置に設けられ、
前記第1コイルは、延伸方向が積層方向と直交するコイル導体からなるメインコイル要素と、
前記メインコイル要素と電気的に直列に接続され、前記メインコイル要素により生じる磁束の方向と逆向きの磁束を生じさせるサブコイル要素と、
からなる。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、第1コイルと第2コイルとの間で電気特性の差異が小さい積層インダクタを提供することができる。具体的には、本開示の積層インダクタの第1コイルは、延伸方向が積層方向と直交するコイル導体からなるメインコイル要素と、メインコイル要素と電気的に直列に接続され、メインコイル要素により生じる磁束の方向と逆向きの磁束を生じさせるサブコイル要素と、を有している。そのため、メインコイル要素の巻回数は、サブコイル要素が設けられている分、より多く巻回することができ、第1コイルおよび第2コイルの間のスルーホールの長さおよび巻回態様に起因する、直流抵抗値の差異およびインダクタンス値の差異を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、第1実施形態の積層インダクタの一例を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態の積層インダクタの内部構造の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図3A】
図3Aは、
図2に示す内部構造から第1コイル、第1スルーホールおよび第2スルーホールを抜き出した斜視図である。
【
図3B】
図3Bは、
図2に示す内部構造から第2コイル、第3スルーホールおよび第4スルーホールを抜き出した斜視図である。
【
図6A】
図6Aは、第1実施形態のメインコイル要素の配線方向を説明する説明図である。
【
図6B】
図6Bは、第1実施形態のサブコイル要素の配線方向を説明する説明図である。
【
図7】
図7は、メインコイル要素の磁束とサブコイル要素の磁束との関係を説明する説明図である。
【
図8】
図8は、第2実施形態の積層インダクタの内部構造の分解斜視図である。
【
図9A】
図9Aは、第2実施形態のメインコイル要素の配線方向を説明する説明図である。
【
図9B】
図9Bは、第2実施形態のサブコイル要素の配線方向を説明する説明図である。
【
図10】
図10は、第3実施形態の積層インダクタの内部構造の一例を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の積層インダクタについて説明する。なお、本開示は、以下の構成に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更されてもよい。また、以下において記載する個々の好ましい構成を複数組み合わせたものもまた本開示である。
【0012】
本開示の積層インダクタは、例えば、DC-DCコンバータに用いられる。本開示の積層インダクタは、DC-DCコンバータ以外の用途にも適用可能である。
【0013】
本明細書中、要素間の関係性を示す用語(例えば、「平行」、「直交」等)及び要素の形状を示す用語は、文字どおりの厳密な態様のみを意味するだけではなく、実質的に同等な範囲、例えば、数%程度の差異を含む範囲も意味する。なお、本明細書では、素体を構成する磁性層および導体層が積層される方向を「積層方向」とする。
【0014】
以下に示す図面は模式図であり、その寸法、縦横比の縮尺等は実際の製品と異なる場合がある。
【0015】
<積層インダクタの第1実施形態>
まず、本開示の積層インダクタの第1実施形態について
図1~7を参照しながら説明する。
図1は、第1実施形態の積層インダクタの一例を模式的に示す斜視図、
図2は、第1実施形態の積層インダクタの内部構造の一例を模式的に示す斜視図、
図3Aは、
図2に示す内部構造から第1コイル、第1スルーホールおよび第2スルーホールを抜き出した斜視図、
図3Bは、
図2に示す内部構造から第2コイル、第3スルーホールおよび第4スルーホールを抜き出した斜視図、
図4は、
図2に示す内部構造の分解斜視図、
図5は、
図4のV-V線の矢視方向の断面図、
図6Aは、第1実施形態のメインコイル要素の配線方向を説明する説明図、
図6Bは、第1実施形態のサブコイル要素の配線方向を説明する説明図、
図7は、メインコイル要素の磁束とサブコイル要素の磁束との関係を説明する説明図である。なお、積層インダクタ及び各構成要素の形状及び配置等は、図示する例に限定されない。
【0016】
図1及び
図2に示す積層インダクタ1は、素体10と、第1コイル21と、第2コイル22と、第1外部電極31と、第2外部電極32と、第3外部電極33と、第4外部電極34と、第1スルーホール41と、第2スルーホール42と、第3スルーホール43と、第4スルーホール44と、を備える。また、付加的な構成として、素体10の底面に絶縁層70が設けられている。以下、各構成要素について詳述する。
【0017】
-素体-
素体10は、例えば、六面を有する直方体形状又は略直方体形状である。素体10は、角部及び稜線部に丸みが付けられていてもよい。角部は、素体10の三面が交わる部分であり、稜線部は、素体10の二面が交わる部分である。
【0018】
図1及び
図2には、積層インダクタ1及び素体10における長さ方向、幅方向、高さ方向を、それぞれL方向、W方向、T方向として示している。長さ方向Lと幅方向Wと高さ方向Tとは互いに直交する。積層インダクタ1の実装面は、例えば、長さ方向Lと幅方向Wに平行な面(LW面)である。
【0019】
図1に示す素体10は、高さ方向Tに相対する第1主面11及び第2主面12と、高さ方向Tに直交し長さ方向Lに相対する第1端面13及び第2端面14と、長さ方向L及び高さ方向Tに直交する幅方向Wに相対する第1側面15及び第2側面16とを有する。
図1に示す例では、素体10の第1主面11が素体10の底面に相当する。
【0020】
素体10は、磁性層S(
図4参照)を含む。また、素体10は、積層構造を有することが好ましい。具体的には、素体10は、複数の磁性層Sを積層方向(例えば高さ方向T)に含むことが好ましい。本実施形態では、
図4に示すように少なくとも1層の磁性層Sを含む磁性層グループG1~G10を積層させることによって構成されてよい。なお、素体10が有する積層構造の各層の境界が消失していてもよい。また、各磁性層グループ層は、同一のパターンを複数積層して構成されていてよい。
【0021】
磁性層グループG1は、同一パターンを複数積層して形成した磁性層Sを有しており、素体10の第2主面12を構成する。磁性層グループG2の積層数は、1層でもよいが、一例として、磁性層Sの積層数を2層とすることが挙げられる。
【0022】
磁性層グループG2は、同一パターンを複数積層して形成した磁性層Sを有している。磁性層グループG2の積層数は1層でもよく、一例として、磁性層Sの積層数を4層とすることが挙げられる。当該磁性層Sそれぞれには、第2コイル22の一部を構成する第2コイル導体層52が設けられており、磁性層グループG2の複数層の第2コイル導体層52によって第2コイル22の一つの巻回(90°×4;つまり、平面視で略囲まれていることを意図している。)を構成する。より具体的には、第2コイル導体層52は、磁性層Sの外周縁に沿って配置されている。また、第2コイル導体層52の端部同士は離間され、巻回構造が構成されている。
【0023】
磁性層グループG3は、同一パターンを複数積層して形成した磁性層Sを有している。磁性層グループG3の積層数は、磁性層グループG2の積層数よりも少なくてもよい(一例として1層)。当該磁性層Sには、磁性層グループG2の第2コイル導体層52と磁性層グループG4の第2コイル導体層52とを接続するための導体層80(ビア導体)と、第2コイル導体層52と第4外部電極34とを電気的に接続するための第4スルーホール44と、が設けられている。第4スルーホール44は、後述する第4外部電極の配置に対応して磁性層Sの隅部に配置されている。なお、本明細書でいう「隅部」とは、閉領域における角の位置(例えば、矩形領域の角の部分)を意図している。導体層80は、第2コイル導体層52の巻回の長さを長くしてインダクタンス値を高める観点から第4スルーホール44の近傍に配置されている。
【0024】
磁性層グループG4は、同一パターンを複数積層して形成した磁性層Sを有している。なお、磁性層グループG4の積層数は1層でもよく、磁性層グループG2の積層数と同程度とすることが好ましい(一例として4層)。当該磁性層Sには第2コイルの一部を構成する第2コイル導体層52が設けられており、複数層の第2コイル導体層52によって第2コイル22の他の巻回(90°×3;つまり、平面視でC字状またはU字状の態様を意図している。)を構成する。第2コイル導体層52における導体層80と直接接続される端部には、後述する回避部60(
図3A参照)を有している。つまり、磁性層グループG4の第2コイル導体層52には、回避部60が1箇所で設けられている。また、第2コイル導体層52における後述する第3スルーホール43と直接接続される端部は、後述する第3外部電極33の配置に対応して磁性層Sの隅部に配置されている。
【0025】
磁性層グループG5は、同一パターンを複数積層(一例として2層)して形成した磁性層Sを有している。なお、磁性層グループG5の積層数は1層でもよい。当該磁性層Sには、第2コイル導体層52と第3外部電極33とを電気的に接続するための第3スルーホール43および第2コイル導体層52と第4外部電極34とを電気的に接続するための第4スルーホール44がそれぞれ隅部に設けられている。
【0026】
磁性層グループG6は、同一パターンを複数積層して形成した磁性層Sを有している。磁性層グループG6の積層数は1層でもよく、磁性層グループG4の積層数と同程度とすることが好ましい(一例として4層)。当該磁性層Sそれぞれには、第1コイル21の一部を構成するメインコイル導体層51aが設けられており、磁性層グループG6の複数層のメインコイル導体層51aによって第1コイル21の一つの巻回(90°×4)を構成する。より具体的には、メインコイル導体層51aは、第3スルーホール43および第4スルーホール44を回避部60(
図3B参照)で回避しつつ、磁性層Sの外周縁に沿って配置され、メインコイル導体層51aの端部同士は離間されて巻回構造が構成されている。回避部60は、第3スルーホール43および第4スルーホール44を回避するための構成であり、磁性層グループG6のメインコイル導体層51aには、回避部60が2箇所で設けられている。
【0027】
磁性層グループG7は、同一パターンを複数積層して形成した磁性層Sを有している。磁性層グループG7の積層数は1層でもよく、磁性層グループG3の積層数と同程度とすることが好ましい。当該磁性層Sには、磁性層グループG6のメインコイル導体層51aと磁性層グループG8のメインコイル導体層51aとを接続するための導体層80(ビア導体)と、メインコイル導体層51aと第2外部電極32とを電気的に接続するための第2スルーホール42と、第3外部電極33との電気的接続のための第3スルーホール43と、第4外部電極34との電気的接続のための第4スルーホール44と、が設けられている。第2スルーホール42、第3スルーホール43、第4スルーホール44は、それぞれ磁性層Sの隅部に配置されており、メインコイル導体層51aと直接接続される導体層80は、第2スルーホール42に隣接して配置されている。
【0028】
磁性層グループG8は、同一パターンを複数積層して形成した磁性層Sを有している。なお、磁性層グループG8の積層数は1層でもよく、磁性層グループG6の積層数と同程度とすることが好ましい(一例として4層)。当該磁性層Sには、第1コイル21の一部を構成するメインコイル導体層51aが設けられている。磁性層グループ8の複数層のメインコイル導体層51aによって第1コイル21の他の巻回(90°×3より大きく、90°×4より小さい)を構成する。より具体的には、メインコイル導体層51aは、第2スルーホール42、第3スルーホール43および第4スルーホール44を回避部60(
図3B参照)で回避しつつ磁性層Sの外周縁に沿って配置され、メインコイル導体層51aの端部同士は離間されて巻回構造が構成されている。つまり、磁性層グループG8のメインコイル導体層51aには、回避部60が3箇所設けられている。本開示のメインコイル導体層51aは、第1コイル21の巻回の長さを長くしてインダクタンス値を高める観点から、メインコイル導体層51aにおけるビア導体80と直接接続する端部と、第1スルーホール41と直接接続する端部と、が近接して配置されている。これにより、後述するサブコイル導体層51bが設けられている分、メインコイル導体層51aを巻回することができる。
【0029】
磁性層グループG9は、同一パターンを複数積層して形成した磁性層Sを有している。磁性層グループG9の積層数は1層でもよく、磁性層グループG7より多い方が好ましい(一例として4層)。当該磁性層Sには隅部において第2スルーホール42、第3スルーホール43および第4スルーホール44が設けられている。一方、第1スルーホール41は、磁性層Sの隅部には設けられていない。より具体的には、第1スルーホール41は、磁性層Sの隅部からサブコイル導体層51bの長さ分、離れて配置されている。
【0030】
磁性層グループG10は、同一パターンを複数積層して形成した磁性層Sを有している。なお、磁性層グループG10の積層数は1層でもよく、磁性層グループG8の積層数と同程度とすることが好ましい(一例として2層)。当該磁性層Sには、第1コイルの一部を構成するサブコイル導体層51b、第2スルーホール42、第3スルーホール43および第4スルーホール44が設けられている。具体的には、磁性層Sの隅部において、第2外部電極32、第3外部電極33および第4外部電極34に対応する位置に、第2スルーホール42、第3スルーホール43および第4スルーホール44が設けられている。また、第1外部電極31に対応する位置には、サブコイル導体層51bが設けられている。サブコイル導体層51bは第2スルーホール42に向けて、磁性層Sの外縁と平行に延在している。
【0031】
以上のように、素体10が磁性層グループG1~G10を備える積層構造を有すると、積層インダクタ1の設計の自由度がより高くなる。例えば、素体10の底面(第1主面11)に第1外部電極31、第2外部電極32、第3外部電極33及び第4外部電極34を備える積層インダクタ1を製造する場合、底面側への第1コイル21及び第2コイル22の引き出しが行いやすくなる。
【0032】
磁性層Sは、磁性材料で構成される磁性粒子を含む。磁性粒子は、Fe、Co、Ni及びこれらを少なくとも1種含む合金等の金属磁性材料の粒子(金属磁性粒子)又はフェライト粒子であってよい。磁性粒子は、好ましくはFe粒子又はFe合金粒子である。Fe合金としては、Fe-Si系合金、Fe-Si-Cr系合金、Fe-Si-Al系合金、Fe-Si-B-P-Cu-C系合金、Fe-Si-B-Nb-Cu系合金等が好ましい。
【0033】
上述の金属磁性材料からなる金属磁性粒子の表面は、絶縁被膜で覆われていることが好ましい。金属磁性粒子の表面が絶縁被膜で覆われていると、金属磁性粒子間の絶縁性を高くすることができる。金属磁性粒子の表面に絶縁被膜を形成する方法としては、ゾル-ゲル法、メカノケミカル法等を用いることができる。絶縁被膜を構成する材料は、P、Si等の酸化物が好ましい。また、絶縁被膜は金属磁性粒子の表面が酸化されることで形成された酸化膜であってもよい。絶縁被膜の厚みは、好ましくは1nm以上50nm以下、より好ましくは1nm以上30nm以下、さらに好ましくは1nm以上20nm以下である。例えば、積層インダクタの試料を研磨することで得られた断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影し、得られたSEM写真から、金属磁性粒子の表面を覆う絶縁被膜の厚みを測定することができる。
【0034】
磁性層S中の金属磁性粒子の平均粒径は、好ましくは1μm以上30μm以下、より好ましくは1μm以上20μm以下、さらに好ましくは1μm以上10μm以下である。磁性層中の金属磁性粒子の平均粒径は、以下に説明する手順で測定することができる。積層インダクタの試料を切断して得られた断面について、複数箇所(例えば5箇所)の領域(例えば130μm×100μm)をSEMで撮影し、得られたSEM画像を画像解析ソフト(例えば、画像解析ソフトウェアWinROOF2021(三谷商事株式会社製))を用いて解析し、金属磁性粒子の円相当径を求める。得られた円相当径の平均値を金属磁性粒子の平均粒径とする。
【0035】
また、素体10を形成する際には、熱処理が施される。この場合、素体10に含まれる金属磁性体粒子は表面に酸化膜を有する。この酸化膜は、金属磁性体粒子に由来するものであり、熱処理により形成される。素体10において、隣接する金属磁性体粒子は酸化膜を介して互いに接合している。
【0036】
素体10は、第1コイル21と第2コイル22との間に非磁性層を含んでもよい。第1コイル21と第2コイル22との間に非磁性層を設けることにより、第1コイル21と第2コイル22との間の絶縁性を高めることができ、両者の短絡を防止することができる。
【0037】
非磁性層は、非磁性材料として、ガラスセラミック材料及び非磁性フェライト材料等を含んでよい。非磁性層は、非磁性材料として非磁性フェライト材料を含むことが好ましい。非磁性フェライト材料としては、FeがFe2O3に換算して非磁性層全体基準で40mol%以上49.5mol%以下、CuがCuOに換算して非磁性層全体基準で6mol%以上12mol%以下、残部がZnOである組成を有する非磁性フェライト材料を用いることができる。非磁性材料は、必要に応じて添加物としてMn3O4、Co3O4、SnO2、Bi2O3及びSiO2等を含有していてもよく、微量な不可避不純物を含有していてもよい。非磁性層は、好ましくはZn-Cu系フェライトを含有する。
【0038】
非磁性層の厚みは、以下に説明する手順で測定することができる。積層インダクタの試料を垂直になるように立てて、試料の周りを樹脂で固める。このときLT面が露出するようにする。研磨機で試料のW方向の約1/2の深さで研磨を終了し、LT面に平行な断面を露出させる。研磨による内部導体の垂れを除去するために、研磨終了後、イオンミリング(株式会社日立ハイテク社製イオンミリング装置IM4000)により研磨表面を加工する。研磨した試料における非磁性層の略中央部をSEMで撮影し、得られたSEM写真から非磁性層の略中央部の厚みを測定し、これを非磁性層の厚みと定義する。
【0039】
素体10は、第1コイル21を構成する複数のメインコイル導体層51aの間、又は、第2コイル22を構成する複数の第2コイル導体層52の間に非磁性部を含んでもよい。その場合、非磁性部は、メインコイル導体層51a及び第2コイル導体層52のうち、隣接するコイル導体層間の少なくとも1箇所に設けられる。隣接するコイル導体層間に非磁性部を設けることにより、磁束がコイル導体層間へ漏れ、インダクタンス値が低下することを防ぐことができる。
【0040】
非磁性層及び非磁性部は、同じ組成を有することが好ましい。例えば、非磁性層及び非磁性部は、Zn-Cu系フェライトで構成されることが好ましい。
【0041】
素体10の内部には、第1コイル21及び第2コイル22が設けられている。第1コイル21及び第2コイル22は磁気的に結合していることが好ましい。たとえば、第1コイル21と第2コイル22間の結合係数は、0.1以上0.8以下である。なお、素体10の内部には、第1コイル21及び第2コイル22のみを含む2つのコイルが設けられていてもよく、第1コイル21及び第2コイル22を含む3つ以上のコイルが設けられていてもよい。
【0042】
-第1コイル-
第1コイル21は、延伸方向が積層方向と直交するメインコイル導体層51aからなるメインコイル要素21aと、メインコイル要素21aと電気的に直列に接続されサブコイル導体層51bからなるサブコイル要素21bと、を備えている。
【0043】
(メインコイル要素)
メインコイル要素21aは、複数のメインコイル導体層51aを積層方向(例えば高さ方向T)に含む。隣接するメインコイル導体層51a同士は、ビア導体80を介して接続されている。なお、メインコイル要素21aは、2つの異なる磁性層グループに形成されたメインコイル導体層51aを積層方向に含むことにより、巻回数を1.75より大きくしてよい(
図3参照)。なお、巻回数は図示例である2つのメインコイル導体層51aに限定されず、メインコイル導体層51aを含む磁性層グループを積層方向に積層させることによって巻回数を増やしてもよい。
【0044】
メインコイル導体層51aの厚みおよび幅は、各々、同じであることが好ましいが、異なっていても良い。また、メインコイル導体層51aの厚みおよび幅は、後述する第2コイル導体層52の厚みおよび幅と同等であることが好ましいが、異なっていても良い。
【0045】
メインコイル導体層51aは、その材料の一例として、Ag、Cuおよび/またはPd等の金属導体であってよい。メインコイル導体層51aは、例えば上述の磁性層Sに導電性ペーストを印刷することによって形成されてよい。
【0046】
図3Aは、
図2に示す内部構造からメインコイル要素21a、サブコイル要素21b、第1スルーホール41及び第2スルーホール42を抜き出した斜視図である。
【0047】
メインコイル要素21aは、第2スルーホール42、第3スルーホール43及び第4スルーホール44を回避するために積層方向(例えば高さ方向T)からの平面視で第2スルーホール42、第3スルーホール43及び第4スルーホール44のそれぞれの内側に配置される回避部60と、回避部60に接続される直線部65と、を含んでよい。回避部60を設けることによって、第2スルーホール42、第3スルーホール43及び第4スルーホール44がメインコイル導体層51aと干渉しないように適切にメインコイル要素21aから外部電極に向けて配線を引き出すことができる。
【0048】
なお、メインコイル要素21aの回避部60は、少なくとも第2スルーホール42を回避するために積層方向(例えば高さ方向T)からの平面視で第2スルーホール42の内側に配置されていればよい。すなわち、メインコイル要素21aは、少なくとも第2スルーホール42を回避するための回避部60を含んでいればよく、第3スルーホール43及び第4スルーホール44のうちの少なくとも一方を回避するための回避部60を含んでいなくてもよい。なお、図示例において、メインコイル要素21aの底面側の巻回部分には、第2スルーホール42、第3スルーホール43および第4スルーホール44を回避するため回避部60を3か所に設けている。また、メインコイル要素21aの上面側の巻回部分には、第3スルーホール43および第4スルーホール44を回避するため回避部60を2箇所に設けている。つまり、回避部60は、メインコイル要素21aにおいて底面側の巻回部分に多く設けている。
【0049】
メインコイル要素21aは、底面に近い側の端部は、第1スルーホール41と直接接続されており、底面から遠い側の端部は、第2スルーホール42と直接接続されている。
【0050】
(サブコイル要素)
サブコイル要素21bは、メインコイル要素21aと電気的に直列に接続されている。より具体的には、サブコイル要素21bの一端は、第1外部電極と直接接続されており、サブコイル要素21bの他端は、第1スルーホール41を介してメインコイル要素21aと電気的に接続されてよい。このような構成によれば、サブコイル要素21bとメインコイル要素21aとの間を適切に電気的に接続することができる。
【0051】
好ましいサブコイル要素21bの態様として、サブコイル要素21bは、積層方向から見て 、メインコイル要素21aの一部と重複していてよい。具体的には、
図6Aおよび
図6Bに示すように、第1コイル21を積層方向から平面透視したときに、メインコイル要素21aとサブコイル要素21bとが重複する重複領域Aを有していてよい。サブコイル要素21bを設けることにより、メインコイル要素21aを積層方向からの平面視で素体10の隅部で留めずに、隅部からサブコイル要素21bの長さ分、長くすることができる。
【0052】
さらに好ましいサブコイル要素21bの態様として、サブコイル要素21bはメインコイル要素と同軸で巻回されるものであり、サブコイル要素21bの底面側の一部分には、後述する絶縁層70が設けられていることが好ましい。これにより、積層インダクタ1を実装基板に実装する際は、サブコイル要素21bが直接に実装基板と接触せずに、サブコイル要素21bと直接接続された第1外部電極31によって積層インダクタ1を電気的に接続することができる。
【0053】
-第2コイル-
第2コイル22は、第1コイル21よりも素体10の底面(第1主面11)から離れた位置に設けられている。
【0054】
第2コイル22は、複数の第2コイル導体層52を積層方向(例えば高さ方向T)に含む。隣接する第2コイル導体層52同士は、ビア導体を介して接続されている。なお、第2コイル22は、2つの異なる磁性層グループに形成された第2コイル導体層52を積層方向に含むことにより、巻回数を1.75としてよい(
図3B参照)。なお、巻回数は図示例である2つの第2コイル導体層52に限定されず、メインコイル導体層51aを含む磁性層グループを積層方向に積層させることによって巻回数を増やしてもよい。また、第2コイル導体層52の積層数は、メインコイル導体層51aの積層数と同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0055】
第2コイル導体層52の厚みおよび幅は、各々、同じであることが好ましいが、異なっていても良い。また、第2コイル導体層52の厚みおよび幅は、メインコイル導体層51aの厚みおよび幅と同等であることが好ましいが、異なっていても良い。
【0056】
第2コイル導体層52は、その材料の一例として、Ag、Cuおよび/またはPd等の金属導体であってよい。また、第2コイル導体層52の材料は、メインコイル導体層51aと同種の材料を用いてもよいし、異種の材料を用いてもよい。第2コイル導体層52は、例えば上述の磁性層Sに導電性ペーストを印刷することによって形成されてよい。
【0057】
図3Bは、
図2に示す内部構造から第2コイル22、第3スルーホール43及び第4スルーホール44を抜き出した斜視図である。
【0058】
図3Bに示すように、第2コイル導体層52は、第4スルーホール44を回避するために積層方向(例えば高さ方向T)からの平面視で第4スルーホール44のそれぞれの内側に配置される回避部60と、回避部60に接続される直線部65と、を含んでよい。回避部60を設けることによって、第4スルーホール44と干渉しないように適切に第2コイル22から外部電極に向けて配線を引き出すことができる。なお、図示例において、第2コイル22の底面側の巻回部分には、第4スルーホール44を回避するため回避部60を1か所設けている。また、第2コイル22の上面側の巻回部分には、回避部60を設けていない。つまり、第2コイル22に設けられる回避部60の数は、第1コイル21に設けられる回避部60の数よりも少なくなっている。
【0059】
-第1コイルと第2コイルの電気的特性について-
上述したとおり、第2コイル22に設けられる回避部60の数は、メインコイル要素21aに設けられる回避部60の数よりも少ない。そのため、仮に、第1コイル21のメインコイル要素21aを積層方向からの平面視で素体10の隅部で留めると、第1コイル21の巻回部の内周の面積は、回避部60の数が影響して、第2コイル22の巻回部の内周の面積よりも小さくなる。また、第1コイルの底面からの距離は、第2コイル22の底面からの距離よりも短くなる。すなわち、第1コイル21の第1スルーホール41および第2スルーホール42の高さは、第2コイル22の第3スルーホール43および第4スルーホール44の高さより低い。その結果、第1コイル21のインダクタンス値は、第2コイル22のインダクタンス値よりも小さくなり、第1コイル21の直流抵抗値は、第2コイル22の直流抵抗値より小さくなる。
【0060】
本開示は、上述した第1コイル21と第2コイル22との間のインダクタンス値の差異および直流抵抗値の差異を低減するため、「サブコイル要素21b」が設けられている。つまり、第1コイル21のメインコイル要素21aは、積層方向からの平面視で素体10の隅部で留めずに、隅部からサブコイル要素21bの長さ分、長くなっている。その結果、第1コイル21のメインコイルの巻回の長さをより長くし、巻回数を増やすことができる。
【0061】
ここで、本開示におけるサブコイル要素21bの電気的特性とメインコイル要素21aの電気的特性について
図6A,Bおよび
図7を参照しながら説明する。
【0062】
図6Aに示すようにメインコイル要素21aに、反時計回りに電流が流れた場合、メインコイル要素21aの内側には、
図7に示すように底面から上面に向かう方向の磁束が発生する。一方で、
図6Bに示すようにサブコイル要素21bにメインコイル要素21aから第1スルーホール41を介して電流が流れた場合、メインコイル要素21aとサブコイル要素21bとの重複領域Aでは、メインコイル要素21aの電流の方向は、サブコイル要素21bの電流の方向と逆向きとなる。その結果、サブコイル要素21bの周囲に磁束が発生し、発生した磁束の方向は、サブコイル要素21bの内側(素体10の中央側)でメインコイル要素21aより生じる磁束の方向と逆向きとなり、磁束は相殺されてインダクタンス値を大きくすることはできない(
図7参照)。しかし、メインコイル要素21aは素体10内部に配置されているのに対して、サブコイル要素21bはメインコイル要素21aから離れて素体10表面に配置されている。その結果、サブコイル要素21bで生じるインダクタンス値は、メインコイル要素21aで生じるインダクタンス値より小さくなり、結果として第1コイル21のインダクタンス値は増加する。また、第1コイル21は第2コイル22より、メインコイル要素21aの重複領域Aとサブコイル要素21bの重複領域Aとの分、直流抵抗値を大きくすることができる。
【0063】
したがって、メインコイル要素21aとサブコイル要素21bとが離れていることが好ましい。具体的には、メインコイル要素21aとサブコイル要素21bとを電気的に接続する第1スルーホール41によって、メインコイル要素21aとサブコイル要素21bとを離間させることが好ましい。さらに具体的には、積層方向におけるサブコイル要素21bとメインコイル要素21aとの間の距離D1は、積層方向におけるメインコイル導体層51a間の層間距離D2よりも長くなっていてよい(
図5参照)。このような構成によれば、メインコイル要素21aの磁束とサブコイル要素21bの磁束とが互いに影響を及ぼすことをより低減することができる。
【0064】
また、サブコイル要素21bとメインコイル要素21aとをより離間させるために、サブコイル要素21bを素体10の底面に露出するように設けてもよい。このような構成によれば、さらに互いの磁束の影響を低減することができる。
【0065】
本開示のとおり、第1コイル21のメインコイルの巻回の長さをより長くして、巻回数を増やすことができるため、第1コイル21のインダクタンス値と第2コイル22のインダクタンス値との差異を低減することができる。さらに、第1コイル21にサブコイル要素21bを設けることにより、第1コイル21の巻回の長さがより長くなるため、直流抵抗値の差を低減させることもできる。
【0066】
より具体的には、本開示の積層インダクタ1は、サブコイル要素を備えているため、インダクタンス値が第1コイル21と第2コイル22との間で±10%の範囲内とすることができる。ここで、インダクタンス値は、外部電極間をインピーダンスアナライザで測定するものとする。
【0067】
本開示の好適な積層インダクタの態様として、第1コイル21のメインコイル要素21aの巻回数は、第2コイル22の巻回数よりも多くなっていてよい。
図2に示す積層インダクタでは、第1コイル21のメインコイル要素21aの巻回数は1.80であり、第2コイル22の巻回数は、1.75である。つまり、第1コイル21のメインコイル要素の巻回数が第2コイル22の巻回数より多く、サブコイル要素21bもあるため、第1コイル21は、巻回に用いるコイル導体をより多く用いている。このような構成によれば、積層方向において第1コイル21よりも素体10の底面から離れた位置に第2コイル22を設けて第2コイル22の直流抵抗値が増大しても、第1コイル21により多くのコイル導体を用いているため、第1コイル21と第2コイル22との直流抵抗値の差を低減することができる。ここで、直流抵抗値は、外部電極間をデジタルマルチメータで測定するものとする。
【0068】
また、本開示の積層インダクタ1は、サブコイル要素を備えているため、直流抵抗値が第1コイル21と第2コイル22との間で±20%の範囲内とすることができる。
【0069】
-外部電極-
外部電極は、第1外部電極31、第2外部電極32、第3外部電極33および第4外部電極34を含んでいる。第1外部電極31及び第2外部電極32は、素体10の底面(第1主面11)に設けられ、第1コイル21に電気的に接続されている。第3外部電極33及び第4外部電極34は、素体10の底面(第1主面11)に設けられ、第2コイル22に電気的に接続されている。積層インダクタ1では、素体10の底面(第1主面11)を実装面とすることができる。すなわち、積層インダクタ1の底面での実装が可能となる。
【0070】
第1外部電極31は、第1コイル21に対する出力電極として作用する。第1外部電極31は、素体10の第1主面11のみに設けられていてもよいが、素体10の第1主面11と、第1端面13及び第2側面16の少なくとも一方とに跨って設けられていてもよい。
【0071】
第2外部電極32は、第1コイル21に対する入力電極として作用する。第2外部電極32は、素体10の第1主面11のみに設けられていてもよいが、素体10の第1主面11と、第2端面14及び第2側面16の少なくとも一方とに跨って設けられていてもよい。
【0072】
第3外部電極33は、第2コイル22に対する入力電極として作用する。第3外部電極33は、素体10の第1主面11のみに設けられていてもよいが、素体10の第1主面11と、第2端面14及び第1側面15の少なくとも一方とに跨って設けられていてもよい。
【0073】
第4外部電極34は、第2コイル22に対する出力電極として作用する。第4外部電極34は、素体10の第1主面11のみに設けられていてもよいが、素体10の第1主面11と、第1端面13及び第1側面15の少なくとも一方とに跨って設けられていてもよい。
【0074】
上記のとおり外部電極が構成されているため、積層インダクタ1は、第2外部電極32から電流が供給されることにより、第1コイル21には
図2の斜視図で示した第1コイル21を積層方向からの平面視で見て反時計回りに電流が流れることとなる。また、第3外部電極33から電流が供給されることにより、第2コイル22には
図2の斜視図で示した第2コイル22を平面視で見て時計回りに電流が流れることとなる。つまり、第1コイル21に流れる電流の向きと、第2コイル22に流れる電流の向きは逆向きとなっている。そして、第1コイル21によって生じる磁束の方向は、第2コイル22によって生じる磁束の方向と逆方向となっている。当該構成を別の表現で言い換えると、出力側の電極(第1外部電極31および第4外部電極34)から視て第1コイル21の巻回方向と第2コイル22の巻回方向とが逆向きとなっている。これにより、マルチフェーズ方式のDC-DCコンバータに用いるインダクタとしての最適な特性を得ることができる。
【0075】
好適な外部電極の配置として、積層インダクタ1の出力電極を構成する第2外部電極32及び第3外部電極33は、素体10の外縁を構成する一辺に沿って配置されている。言い換えると、第2外部電極32と第3外部電極33とは、積層方向からの平面視で素体10の対角線上に沿って配置されていない。このように外部電極を配置することにより、出力電極および入力電極を素体の同じ側面に揃えることができ、積層インダクタ1への基板上の配線を簡略化できる。
【0076】
第1外部電極31、第2外部電極32、第3外部電極33及び第4外部電極34は、各々、Ag,Cuおよび/またはPd等の導電性材料から構成されてよい。さらに好ましくは、これら外部電極の表面にNi,Sn,CuおよびAuから成る群から選択される1種以上の材料のめっき層が設けられてよい。上記材料のめっき層を設けることにより、実装基板に対して適切に実装することができる。
【0077】
第1外部電極31、第2外部電極32、第3外部電極33及び第4外部電極34の厚みは、各々、5μm以上100μm以下であることが好ましく、例えば、10μm以上50μm以下であってよい。
【0078】
第1外部電極31等の外部電極の厚みは、「非磁性層の厚み」で説明した手順で測定することができる。つまり、上述した方法によって試料の研磨を行い、外部電極の部分をSEMで撮影する。得られたSEM写真において外部電極の略中央部を1箇所測定し、外部電極の厚みと定義する。
【0079】
-スルーホール-
スルーホールは、第1スルーホール41、第2スルーホール42、第3スルーホール43および第4スルーホール44を含んでいる。第1スルーホール41、第2スルーホール42、第3スルーホール43及び第4スルーホール44は、素体10の内部に設けられている。
【0080】
第1スルーホール41は、第1コイル21において、素体10の底面(第1主面11)に最も近いメインコイル要素21aの端部とサブコイル要素21bとを、積層方向から見て第1スルーホール41と第1外部電極31が重ならない位置で接続する。第1スルーホール41は、積層方向(例えば高さ方向T)に沿って延びていてよい。第1スルーホール41は、積層構造を有してもよい。
【0081】
また、第1スルーホール41は、積層方向からの平面透視で第1外部電極31から離間して設けられてよい。そのため、本開示の積層インダクタ1にサブコイル要素21bを設けても第1スルーホール41によってメインコイル要素21aとサブコイル要素21bとを適切に接続することができる。
【0082】
第2スルーホール42は、第1コイル21において、メインコイル要素21aの他方の端部と第2外部電極32とを接続する。第2スルーホール42は、積層方向(例えば高さ方向T)に沿って延びていることが好ましい。第2スルーホール42は、積層構造を有してもよい。
【0083】
第3スルーホール43は、第2コイル22の端部のうち、素体10の底面(第1主面11)に最も近い第2コイル導体層52の端部と第3外部電極33とを接続する。第3スルーホール43は、積層方向(例えば高さ方向T)に沿って延びていることが好ましい。第3スルーホール43は、積層構造を有してもよい。
【0084】
第4スルーホール44は、第2コイル22の他方の端部と第4外部電極34とを接続する。第4スルーホール44は、積層方向(例えば高さ方向T)に沿って延びていることが好ましい。第4スルーホール44は、積層構造を有してもよい。
【0085】
ここで、好適な第1スルーホール41~第4スルーホール44の配置として、積層インダクタ1の出力電極と電気的に接続される第2スルーホール42及び第3スルーホール43は、素体10の外縁を構成する一辺に沿って配置されている。言い換えると、第2スルーホール42と第3スルーホール43とは、積層方向からの平面視で素体10の対角線上に沿って配置されていない。このようにスルーホールを配置することにより、出力電極および入力電極を同じ方向に揃えることができる。
【0086】
また、スルーホールの積層方向の長さは、第1スルーホール41の長さよりも第2スルーホール42の長さが長く、第2スルーホール42の長さよりも第3スルーホール43の長さが長く、第3スルーホール43の長さよりも第4スルーホール44の長さが長くなっていることが好ましい。このようなスルーホールの長さ関係であるため、積層方向において第1コイル21よりも素体10の底面から離れた位置に設けられた第2コイル22を適切に外部電極と電気的に接続することができる。
【0087】
また、スルーホールに関連する好適な実施態様として、第4スルーホール44は、3つの回避部60と隣接するように設けられてよく、第3スルーホール43は、2つの回避部60と隣接するように設けられてよく、第2スルーホール42は、1つの回避部60と隣接するように設けられてよく、第1スルーホール41は、回避部60と隣接せずに設けられてよい。このようにスルーホールが回避部60によって回避することにより、積層インダクタ1の小型化に寄与している。
【0088】
また、スルーホールに関連する好適な実施態様として、第1スルーホール41上には、第1コイル21の巻回の下側のコイル導体と直接接続し、第2スルーホール42上には、第1コイル21の巻回の上側のコイル導体と直接接続し、第3スルーホール43上には、第2コイル22の巻回の下側のコイル導体と直接接続し、第4スルーホール44上には、第2コイル22の巻回の上側のコイル導体と直接接続してよい。このようにスルーホールがコイル導体と直接接続することにより、積層インダクタ1の小型化に寄与している。
【0089】
-絶縁層-
好適な素体10の態様として、素体10の第1主面11(底面)には、第1~第4外部電極を除く表面を被覆する絶縁層70が形成されていてよい。絶縁層70は、素体10の第1主面11に対して積層される層であり(
図4参照)、一例としてフォトレジストが挙げられる。また、絶縁層70には、四隅の角部に対応する位置に開口が設けられており、その開口には、第1外部電極31、第2外部電極32、第3外部電極33および第4外部電極34が埋められている。
【0090】
このように本開示の積層インダクタ1において、絶縁層70を備え、第1コイル21のサブコイル要素21bが絶縁層70で被覆されていると、積層インダクタ1を実装する実装基板との間で短絡することを防止することができる。
【0091】
<積層インダクタの第2実施形態>
次に、第2実施形態の積層インダクタについて
図8,
図9Aおよび9Bを参照しながら説明する。
図8は、第2実施形態の積層インダクタの内部構造の分解斜視図、
図9Aは、第2実施形態のメインコイル要素の配線方向を説明する説明図、
図9Bは、第2実施形態のサブコイル要素の配線方向を説明する説明図である。第2実施形態の積層インダクタは、メインコイル要素21aおよびサブコイル要素21bの形態が上述の第1実施形態の積層インダクタと異なっている。以下の説明では、上述の実施形態で説明した積層インダクタと異なる点を中心に説明する。
【0092】
本実施形態では、
図4に示す磁性層グループG1~G7は、第1実施形態の積層インダクタで説明したとおりである。
【0093】
磁性層グループG8において、第1コイル21の巻回の長さを更に長くしてインダクタンス値を高める観点から、メインコイル導体層51aの端部は、積層方向からの平面透視で第1外部電極31の内部側の点と第2外部電極32の内部側の点とを結ぶ仮想線Cよりも素体10の内部側に延びている。
【0094】
磁性層グループG9において、第1スルーホール41は、メインコイル導体層51aと直接接続するため、積層方向からの平面透視で仮想線Cよりも素体10の内部側に配置されている。
【0095】
磁性層グループG10において、サブコイル導体層51bの一端は、第1スルーホール41と直接接続されるため、第1スルーホール41の位置に対応して、積層方向からの平面透視で仮想線Cよりも素体10の内部側に延びている。
【0096】
このように構成された積層インダクタの場合、メインコイル要素21aとサブコイル要素21bとの間の重複領域Aは、
図9Aおよび
図9Bに示すとおり、仮想線Cよりも素体10の内部側にも設けることができる。
【0097】
以上説明したとおり、本実施形態の積層インダクタ1は、第1外部電極31と電気的に接続されるメインコイル要素21aの一端が第1外部電極31の内部側の点と第2外部電極32の内部側の点とを結ぶ仮想線Cよりも素体10の内部側に配置されている。従って、第1コイル21のメインコイルの巻回の長さを更に長くして、巻回数を増やすことができるため、第1コイル21のインダクタンス値と第2コイル22のインダクタンス値との差異をより低減することができる。さらに、第1コイル21にサブコイル要素21bを設けることにより、第1コイル21の巻回の長さがより長くなるため、素体10の底面から離れた位置に設けられた第2コイル22の配線長に基づく直流抵抗値の差をより低減させることもできる。
【0098】
<積層インダクタの第3実施形態>
次に、第3実施形態の積層インダクタについて
図10を参照しながら説明する。
図10は、本開示の積層インダクタの内部構造の一例を模式的に示す斜視図である。
【0099】
本開示の積層インダクタ1は、素体10の内部に、上述した積層インダクタで説明した第1コイル21および第2コイル22に加えて、第3コイル23から第6コイル26を含んでよい。なお、第3コイル23および第5コイル25は、第1コイル21と実質的に同じ構造であり、第4コイル24および第6コイル26は、第2コイル22と実質的に同じ構造である。つまり、第2コイル22は、積層方向において第1コイル21よりも素体10の底面から離れた位置に設けられ、第4コイル24は、積層方向において第3コイル23よりも素体10の底面から離れた位置に設けられ、第6コイル26は、積層方向において第5コイル25よりも素体10の底面から離れた位置に設けられている。また、第3コイル23および第4コイル24は、第1コイル21および第2コイル22に隣接して設けられ、第5コイル25および第6コイル26は、第3コイル23および第2コイル22に隣接して設けられている。言い換えると、第3コイル23および第4コイル24ならびに第5コイル25および第6コイル26は、第1コイル21および第2コイル22に対し、積層インダクタの積層方向に対して垂直な方向に設けられている。
【0100】
本開示の積層インダクタ1は、第3コイルに電気的に接続された第5外部電極35及び第6外部電極36を備えてよい。そして、第3コイルの端部のうち、底面に最も近い第3コイル導体層の端部と第5外部電極35とが第5スルーホール45によって接続されてよい。また、第3コイル導体層の他方の端部と第6外部電極36とが第6スルーホール46によって接続されてよい。
【0101】
本開示の積層インダクタ1、第4コイルに電気的に接続された第7外部電極37及び第8外部電極38を備えてよい。第4コイルは、積層方向において、第3コイルよりも素体10の底面から離れた位置に設けられてよい。そして、第4コイルの端部のうち、底面に最も近い第4コイル導体層の端部と第7外部電極37とが第7スルーホール47によって接続されてよい。また、第4コイル導体層の他方の端部と第8外部電極38とが第8スルーホール48によって接続されてよい。
【0102】
第5コイル25および第6コイル26の場合も上記した第3コイル23および第4コイル24と同様であり、説明を省略する。
【0103】
本実施形態のように、素体10内に複数のコイルを積層方向と垂直に複数隣接して設けることにより、DC-DCコンバータの大電流化および高効率化に寄与することができる。
【0104】
なお、今回開示した実施態様は、すべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本開示の技術的範囲は、上記した実施態様のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、本開示の技術的範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0105】
本開示の積層インダクタの態様は、以下のとおりである。
<1>磁性層が積層された素体と、
前記素体の内部に設けられ、複数の第1コイル導体層を積層方向に含む第1コイルと、複数の第2コイル導体層を前記積層方向に含む第2コイルと、
前記第1コイルに電気的に接続された第1外部電極及び第2外部電極と、を備え、
前記第1外部電極および第2外部電極は、前記素体の底面に配置され、
前記第2コイルは、前記積層方向において前記第1コイルよりも前記素体の底面から離れた位置に設けられ、
前記第1コイルは、延伸方向が積層方向と直交するコイル導体からなるメインコイル要素と、
前記メインコイル要素と電気的に直列に接続され、前記メインコイル要素により生じる磁束の方向と逆向きの磁束を生じさせるサブコイル要素と、
からなる、積層インダクタ。
<2>前記サブコイル要素は、前記積層方向から見て 、前記メインコイル要素の一部と重複している、<1>に記載の積層インダクタ。
<3>メインコイル要素は複数のコイル導体層を備えている、<1>または<2>に記載の積層インダクタ。
<4>前記サブコイル要素の一端は、前記第1外部電極と直接接続されており、
前記サブコイル要素の他端は、スルーホールを介して前記メインコイル要素と電気的に接続されている、<1>~<3>のいずれか1つに記載の積層インダクタ。
<5>前記積層方向における前記サブコイル要素と前記メインコイル要素との間の距離は、前記積層方向における前記第1コイル導体層間の層間距離よりも長くなっている、<1>~<4>のいずれか1つに記載の積層インダクタ。
<6>前記サブコイル要素は、前記素体の底面に設けられている、<1>~<5>のいずれか1つに記載の積層インダクタ。
<7>前記第1コイルのメインコイル要素の巻回数は、前記第2コイルの巻回数よりも多くなっている、<1>~<6>のいずれか1つに記載の積層インダクタ。
<8>前記第2コイルに電気的に接続された第3外部電極及び第4外部電極を備え、
前記第3外部電極及び第4外部電極は、前記素体の底面に配置されている、<1>~<7>のいずれか1つに記載の積層インダクタ。
<9>前記素体の底面には、前記第1~第4外部電極を除く表面を被覆する絶縁層が形成されている、<8>に記載の積層インダクタ。
<10>前記メインコイル要素の一端と直接接続される、第1スルーホールと、
前記メインコイル要素の他端と直接接続される、第2スルーホールと、
前記第2コイルの一端と直接接続される第3スルーホールと、
前記第2コイルの他端と直接接続される第4スルーホールと、を備え、
前記第1スルーホールは、一端が前記メインコイル要素と直接接続され、他端が前記サブコイル要素と直接接続されており、
前記第2スルーホールは、前記第2外部電極と直接接続されており、
前記第3スルーホールは、前記第3外部電極と直接接続されており、
前記第4スルーホールは、前記第4外部電極と直接接続されている、<1>~<9>のいずれか1つに記載の積層インダクタ。
<11>前記第1スルーホールの前記積層方向の長さよりも前記第2スルーホールの前記積層方向の長さが長く、
前記第2スルーホールの前記積層方向の長さよりも前記第3スルーホールの前記積層方向の長さが長く、
前記第3スルーホールの前記積層方向の長さよりも前記第4スルーホールの前記積層方向の長さが長くなっている、<10>に記載の積層インダクタ。
<12>前記第1コイルのインダクタンス値は、前記第2コイルのインダクタンス値に対して±10%の範囲内である、<1>~<11>のいずれか1つに記載の積層インダクタ。
<13>前記第1コイルの直流抵抗値は、前記第2コイルの直流抵抗値に対して±20%の範囲内である、<1>~<12>のいずれか1つに記載の積層インダクタ。
<14>前記第1コイルによって生じる磁束の方向は、前記第2コイルによって生じる磁束の方向と逆方向である、<1>~<13>のいずれか1つに記載の積層インダクタ。
<15>前記第1外部電極と電気的に接続される前記メインコイル要素の一端は、前記第1外部電極の内部側の点と前記第2外部電極の内部側の点とを結ぶ仮想線よりも前記素体の内部側に配置されている、<1>~<14>のいずれか1つに記載の積層インダクタ。
<16>前記メインコイル要素と前記サブコイル要素とを直接接続するスルーホールは、平面透視で前記素体の角部から離間して設けられている、<1>~<15>のいずれか1つに記載の積層インダクタ。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本開示の積層インダクタは、素体に複数のコイルが内蔵され、そのコイル間の電気特性の差異が小さい電子部品として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0107】
1 積層インダクタ
10 素体
11 第1主面
12 第2主面
13 第1端面
14 第2端面
15 第1側面
16 第2側面
21 第1コイル
21a メインコイル要素
21b サブコイル要素
22 第2コイル
23 第3コイル
24 第4コイル
25 第5コイル
26 第6コイル
31 第1外部電極
32 第2外部電極
33 第3外部電極
34 第4外部電極
35 第5外部電極
36 第6外部電極
37 第7外部電極
38 第8外部電極
41 第1スルーホール
42 第2スルーホール
43 第3スルーホール
44 第4スルーホール
45 第5スルーホール
46 第6スルーホール
47 第7スルーホール
48 第8スルーホール
51 第1コイル導体層
51a メインコイル導体層
51b サブコイル導体層
52 第2コイル導体層
60 回避部
65 直線部
70 絶縁層
80 ビア導体
A 重複領域
C 仮想線
G1~G10 磁性層グループ
D1 サブコイル要素とメインコイル要素の間の距離
D2 メインコイル導体層間の層間距離
S 磁性層