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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129411
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】ポジショナ
(51)【国際特許分類】
   F15B 9/07 20060101AFI20240919BHJP
   F16K 37/00 20060101ALI20240919BHJP
   G01B 7/30 20060101ALI20240919BHJP
【FI】
F15B9/07
F16K37/00 D
G01B7/30 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038606
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】小松 雅弘
【テーマコード(参考)】
2F063
3H001
3H065
【Fターム(参考)】
2F063AA35
2F063BA06
2F063GA52
2F063ZA01
3H001AA02
3H001AA07
3H001AB06
3H001AC03
3H001AD04
3H001AE04
3H001AE12
3H001AE14
3H001AE23
3H065AA01
3H065AA05
3H065BA01
3H065BA06
3H065BB12
3H065BB18
3H065BC02
3H065BC05
(57)【要約】
【課題】ポジショナ本体の姿勢を変えることなく制御対象のバルブの動作形式に対応する。
【解決手段】ポジショナは、ハウジング13bに装着されたヒンジ機構20と、ヒンジ機構20によって回転自在に軸支されたシャフト9の回転角度を測定する角度センサ100bと、ハウジング13bの外部に設けられ、バルブステムの動きに連動してシャフト9を回転させるフィードバックレバー18とを備える。ヒンジ機構20は、シャフト9を回転自在に軸支すると共に、シャフト9およびフィードバック機構18の回転軸Aの方向を任意に変更可能である。
【選択図】 図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポジショナのハウジングに装着されたヒンジ機構と、
前記ヒンジ機構によって回転自在に軸支されたシャフトの回転角度を測定するように構成された角度センサと、
前記ハウジングの外部に設けられ、バルブステムの動きに連動して前記シャフトを回転させるように構成されたフィードバック機構とを備え、
前記ヒンジ機構は、前記シャフトを回転自在に軸支すると共に、前記シャフトおよび前記フィードバック機構の回転軸の方向を任意に変更可能であることを特徴とするポジショナ。
【請求項2】
請求項1記載のポジショナにおいて、
前記ヒンジ機構は、
前記シャフトを回転自在に軸支するシャフトホルダと、
前記ハウジングに固定され、前記シャフトおよび前記フィードバック機構の回転軸と交差する軸を回動軸として回動可能なように前記シャフトホルダを支持するブラケットとを備えることを特徴とするポジショナ。
【請求項3】
請求項2記載のポジショナにおいて、
前記ヒンジ機構は、前記シャフトホルダの回動を任意の角度で制止するための制止機構をさらに備えることを特徴とするポジショナ。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のポジショナにおいて、
前記角度センサは、
磁気抵抗効果素子を含むセンサ回路と、
前記フィードバック機構と反対側の前記シャフトの先端に固定され、発生する磁界が前記シャフトの回転軸を中心として前記センサ回路の周囲を回転するように構成された磁界発生部と、
前記センサ回路の出力電圧を検出するように構成された電圧検出部と、
前記電圧検出部によって検出された電圧に基づいて前記磁界の回転角度を算出するように構成された回転角度算出部とを備えることを特徴とするポジショナ。
【請求項5】
請求項4記載のポジショナにおいて、
前記角度センサは、
前記磁気抵抗効果素子の薄膜抵抗パターンが形成されたセンサ面に対する前記磁界の回転面の傾斜角度の値を前記回転角度算出部に対して設定するように構成された角度設定部をさらに備え、
前記回転角度算出部は、前記電圧検出部によって検出された電圧と前記角度設定部によって設定された傾斜角度とに基づいて、前記磁界の回転角度を算出することを特徴とするポジショナ。
【請求項6】
請求項4記載のポジショナにおいて、
前記回転角度によらず前記磁界が前記センサ回路の磁気抵抗効果素子に対して飽和している状態であることを特徴とするポジショナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルブの開度を制御するポジショナに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、化学プラント等においては、その流量プロセスに用いられるバルブに対してポジショナを設け、ポジショナによってバルブの開度を制御するようにしている。例えば図12に示すコントロールバルブ110は、バルブ本体101と、ポジショナ102と、操作器103とを備えている。操作器103は、ポジショナ102から供給される出力空気圧に応じてバルブステム(弁棒)104を上下動させて、バルブの開度を調節する。
【0003】
ポジショナ102は、上位装置から送られてくる設定開度とバルブからフィードバックされてくる実開度との偏差を求め、この偏差に応じた電気信号を制御信号として生成する制御演算部と、制御演算部が生成した制御信号を空気圧信号に変換する電空変換部と、電空変換部からの空気圧信号を増幅し出力空気圧として操作器103に供給する空気圧信号増幅部(パイロットリレー)とを備えている(特許文献1参照)。
【0004】
ポジショナ102では、バルブの実開度をバルブステム104の上下動の変位量として検出する変位検出部として角度センサ100が用いられている。角度センサ100は、フィードバックレバー106を介してバルブステム104の変位量に応じて回転する回転体を有している。この角度センサ100の回転体の回転角度に応じた電気信号がバルブの実開度を示す信号として制御演算部にフィードバックされる。
【0005】
図13は角度センサ100の構成を示す図である。フィードバックレバー106の一端が角度センサ100のシャフト9に固定されている。磁石3,4は、シャフト9の先端に固定された回転体2に取り付けられ、シャフト9と回転体2の回転に伴って回転軸Aを中心として回転する。
【0006】
角度センサ100は、回転体2に取り付けられた磁石3,4による磁界の回転角度を測定する。角度測定には、磁気抵抗効果素子やホール素子などを用いたセンサ回路1が使用される。図13の5は磁石3,4による磁界の向きを示し、6はセンサ回路1の測定面を示している。一般的には、図13に示すようにセンサ回路1の測定面と磁界の回転面とが平行となるように設置される。
【0007】
バルブは、直動式弁と回転弁に大別できる。図12に示したコントロールバルブ110は直動式弁である。直動式弁の場合、ポジショナの角度センサは、バルブステムの変位量に応じて回転する回転体の鉛直面上での回転角度を測定する。回転弁の場合、ポジショナの角度センサは、水平面上でのバルブステムの回転角度を測定する。
【0008】
例えばアズビル株式会社製のポジショナAVP300は、鉛直面上での回転角度を測定をする前提の構造となっている。このため、水平面上での回転角度測定のためにはポジショナ全体を横転させる必要があった。
【0009】
しかしながら、ポジショナを横転させると、ポジショナの表示器の向きも変わってしまうため、表示器の向きのみを元の向きに戻せるような工夫が必要となり、ポジショナの構造が複雑化するという課題があった。また、ポジショナを横転させると、内部の空気回路や圧力ゲージの部品にかかる重力の向きが変わってしまうため、これら空気回路や圧力ゲージに特性が変化し、再調整が必要になる場合があった。
【0010】
また、ポジショナを横転させることなく、水平面上での回転角度を測定するために角度センサの向きを変更する方法が考えられる。しかしながら、角度センサはポジショナ内部に固定されているため、ポジショナのカバーを開けて角度センサの向きを変える作業をする必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2013-104454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、ポジショナ本体の姿勢を変えることなく制御対象のバルブの動作形式に容易に対応することが可能なポジショナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のポジショナは、ポジショナのハウジングに装着されたヒンジ機構と、前記ヒンジ機構によって回転自在に軸支されたシャフトの回転角度を測定するように構成された角度センサと、前記ハウジングの外部に設けられ、バルブステムの動きに連動して前記シャフトを回転させるように構成されたフィードバック機構とを備え、前記ヒンジ機構は、前記シャフトを回転自在に軸支すると共に、前記シャフトおよび前記フィードバック機構の回転軸の方向を任意に変更可能であることを特徴とするものである。
また、本発明のポジショナの1構成例において、前記ヒンジ機構は、前記シャフトを回転自在に軸支するシャフトホルダと、前記ハウジングに固定され、前記シャフトおよび前記フィードバック機構の回転軸と交差する軸を回動軸として回動可能なように前記シャフトホルダを支持するブラケットとを備えることを特徴とするものである。
また、本発明のポジショナの1構成例において、前記ヒンジ機構は、前記シャフトホルダの回動を任意の角度で制止するための制止機構をさらに備えることを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明のポジショナの1構成例において、前記角度センサは、磁気抵抗効果素子を含むセンサ回路と、前記フィードバック機構と反対側の前記シャフトの先端に固定され、発生する磁界が前記シャフトの回転軸を中心として前記センサ回路の周囲を回転するように構成された磁界発生部と、前記センサ回路の出力電圧を検出するように構成された電圧検出部と、前記電圧検出部によって検出された電圧に基づいて前記磁界の回転角度を算出するように構成された回転角度算出部とを備えることを特徴とするものである。
また、本発明のポジショナの1構成例において、前記角度センサは、前記磁気抵抗効果素子の薄膜抵抗パターンが形成されたセンサ面に対する前記磁界の回転面の傾斜角度の値を前記回転角度算出部に対して設定するように構成された角度設定部をさらに備え、前記回転角度算出部は、前記電圧検出部によって検出された電圧と前記角度設定部によって設定された傾斜角度とに基づいて、前記磁界の回転角度を算出することを特徴とするものである。
また、本発明のポジショナの1構成例は、前記回転角度によらず前記磁界が前記センサ回路の磁気抵抗効果素子に対して飽和している状態であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ヒンジ機構によってシャフトおよびフィードバック機構の回転軸の方向を任意の方向に変更することができるので、制御対象のバルブの動作形式に応じて回転軸の方向を変更することが容易になる。本発明では、ポジショナ本体の取付姿勢を変えることなく、1つの角度センサによって磁界の回転角度(シャフトおよびフィードバックレバーの回転角度)を測定することができる。本発明では、ポジショナの表示器や角度センサの向きを変える必要がなく、またポジショナを横転させる必要がないので、ポジショナの再調整も不要となる。
【0016】
また、本発明では、ヒンジ機構をシャフトホルダとブラケットとから構成することにより、シャフトおよびフィードバック機構の回転軸と交差する軸を回動軸としてシャフトホルダを回動させることができ、シャフトおよびフィードバック機構の回転軸の方向を任意に変更することができる。
【0017】
また、本発明では、ヒンジ機構に制止機構を設けることにより、任意の方向に調整した回転軸の方向を保持することができる。
【0018】
また、本発明では、磁界の回転角度によらず磁界がセンサ回路の磁気抵抗効果素子に対して飽和している状態とすることにより、センサ回路と磁界発生部との距離の変化を考慮せずに、磁界の回転角度を算出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、AMR素子で構成されたブリッジ回路の回路図である。
図2図2は、本発明の参考例に係るポジショナの構造を示す模式図である。
図3図3は、本発明の参考例に係るポジショナの構造を示す模式図である。
図4図4は、角度センサにおける回転体の回転に伴う磁石の軌道の例を示す図である。
図5図5は、本発明の参考例に係る角度センサを配置したポジショナの要部断面図である。
図6図6は、本発明の実施例に係るポジショナの要部断面図である。
図7図7は、本発明の実施例に係るポジショナの要部断面図である。
図8図8は、本発明の実施例に係るポジショナのヒンジ機構の構造を説明する図である。
図9図9は、本発明の実施例に係るポジショナのヒンジ機構の構造を説明する図である。
図10図10は、本発明の実施例に係る角度センサの電気系の構成を示すブロック図である。
図11図11は、本発明の実施例に係る角度センサを実現するコンピュータの構成例を示すブロック図である。
図12図12は、コントロールバルブの1例を示す図である。
図13図13は、従来の角度センサの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[従来例]
まず、本発明の実施例について説明する前に、従来の角度センサについて詳細に説明する。磁界によって電気抵抗が変化する異方性磁気抵抗効果(AMR:Anisotropic Magneto Resistive effect)素子で構成されたセンサ回路であるブリッジ回路1aを図1に示す。ブリッジ回路1aは、第1のAMR素子10-1と第2のAMR素子10-2とを直列に接続した第1の直列回路10-5と、第3のAMR素子10-3と第4のAMR素子10-4とを直列に接続した第2の直列回路10-6とを並列に接続したものである。
【0021】
図1の両向き矢印で示すように、向かい合うAMR素子10-1と10-4の感磁方向(抵抗値が最小になる磁界の方向)が同一であり、向かい合うAMR素子10-2と10-3の感磁方向が同一である。また、隣り合うAMR素子の感磁方向は直交する。
【0022】
角度センサの磁石による磁界の回転面と、4つのAMR素子10-1~10-4の薄膜抵抗パターンが形成されたセンサ面(AMR素子10-1~10-4の感磁方向と平行な面であり、図1の紙面と平行な面)とが平行な場合、図示しない電源からブリッジ回路1aに一定の電流Iを流すと、中点電位差(第1の直列回路10-5の中点と第2の直列回路10-6の中点との電位差)V(θ)は、磁界の回転角度θによって式(1)のようになる。
【0023】
【数1】
【0024】
式(1)から中点電位差V(θ)は、振幅がVで、磁界が1回転する間に2周期となる周期関数となる。磁界の回転角度θは、中点電位差V(θ)から式(2)のように求まる。
【0025】
【数2】
【0026】
半周期を超えると、中点電位差V(θ)に対し回転角度θが一意に決まらなくなるため、従来の角度センサの角度測定範囲は90度以内となる。
【0027】
[参考例]
以上のような従来の構成に対し、発明者は、ポジショナのハウジングに、軸方向が異なる複数のポートを形成しておくことにより、制御対象のバルブの動作形式に応じてフィードバックレバーの回転軸の方向を変更できるようにすることを提案した(特願2022-036257)。
【0028】
以下、特願2022-036257で提案した構成を参考例として説明する。図2(A)は本発明の参考例に係るポジショナの構造を示す断面模式図、図2(B)は図2(A)のポジショナを矢印Bの方向から見た模式図である。ただし、図2(B)では、構造を見易くするために回転体2の内部を透視して記載している。
【0029】
参考例では、フィードバックレバー18の一端が角度センサ100aのシャフト9に固定されている。磁石3,4は、シャフト9の先端に固定された回転体2に取り付けられ、シャフト9と回転体2の回転に伴って回転軸Aを中心として回転する。角度センサ100aのブリッジ回路1aは、センサホルダ11に固定されている。
【0030】
そして、参考例では、AMR素子10-1~10-4の薄膜抵抗パターンが形成されたセンサ面6aに対する磁界の回転面7の傾斜角度αが45°の整数倍となるように、ブリッジ回路1aと回転体2と磁石3,4とシャフト9とセンサホルダ11とを配置する。回転軸Aの延長線は、図1に示す菱形(正方形)のブリッジ回路1aの中心を通る。
【0031】
図2(A)の12はポジショナの表示部を示している。図2(A)、図2(B)の例では、回転軸Aが水平方向、すなわち直動式弁に使用されるポジショナのようにフィードバックレバー18の回転軸が水平方向であり、角度センサ100aはシャフト9および回転体2の鉛直面上での回転角度を測定する。
【0032】
回転軸Aが鉛直方向、すなわち回転弁に使用されるポジショナのようにフィードバックレバー18の回転軸が鉛直方向の場合の参考例のポジショナの断面模式図を図3(A)に示し、図3(A)のポジショナを矢印Bの方向から見た模式図を図3(B)に示す。図3(A)、図3(B)の例では、角度センサ100aはシャフト9および回転体2の水平面上での回転角度を測定する。
【0033】
図2(A)、図3(A)によれば、回転軸Aが水平方向、鉛直方向のいずれの場合でも、表示部12の向きが同じであることが分かる。このように、参考例では、回転軸Aの方向を容易に90°変更できることを特徴とする。
【0034】
ここで、参考例のようにセンサ面6aと磁界の回転面7とが平行でない場合の磁界の回転角度の求め方について説明する。AMR素子10-1~10-4の出力は、磁気飽和状態では磁石3,4との距離によらず不変で、磁界の角度のみに依存する。したがって、図2(A)、図2(B)、図3(A)、図3(B)のようにセンサ面6aに対して磁界の回転面7が傾く場合、測定範囲中で磁石3,4が最もAMR素子10-1~10-4から離れる位置でもAMR素子10-1~10-4が磁気飽和状態となるだけの磁界強度を保っていれば、磁石3,4の回転軌道による距離の変化を考慮しなくて良い。
【0035】
回転体2の回転に伴って磁石3,4は、磁界の回転面7の面内において真円の軌道を描く。ここで、磁界の回転角度をφ、磁界の回転面7とセンサ面6aとのなす角をα、センサ面6a上での磁界の回転角度をθとすると、上述のとおり磁石3,4との距離を考慮する必要が無いため、磁石3,4の回転を真円ではなく楕円軌道として考えることができる。具体的には、磁石3,4の軌道は、磁石3,4の回転半径をRとすると、短径R、長径R/cosαとなる図4の楕円8の軌道として考えることができる。
【0036】
ブリッジ回路1aと回転体2と磁石3,4とシャフト9とセンサホルダ11とは、ブリッジ回路1aの中点電位差V(θ)がゼロとなる方向(基準位置)が、磁界の回転面7(図4の軌道8の面)とセンサ面6aとの交線(図4のL)と一致するように配置される。図1図4では基準位置をθで示している。図1の例では、基準位置θは、AMR素子10-2,10-3の感磁方向と平行で、AMR素子10-1,10-4の感磁方向と直交する方向である。
【0037】
図4より、式(3)~式(6)が得られる。
cosφ=cosθ ・・・(3)
sinφ=sinθ/cosα ・・・(4)
tanφ=sinφ/cosφ=(sinθ/cosα)/cosθ
=tanθ/cosα ・・・(5)
φ=tan-1(tanθ/cosα) ・・・(6)
【0038】
ここで、式(7)より、式(8)が得られる。
【0039】
【数3】
【0040】
【数4】
【0041】
また、sin2θ=V(θ)/Vなので、式(9)が得られる。
【0042】
【数5】
【0043】
したがって、ブリッジ回路1aの出力から磁界の回転角度φを求めることができる。ここでα=-45°またはα=45°なので、cos(45°)=cos(-45°)=1/√2であり、回転軸Aの方向の変更によって磁界の回転角度φとセンサ出力V(θ)/Vとの関係は変化しない。
【0044】
【数6】
【0045】
2値のαをそれぞれα1=(2n+1)π/4、α2=(2n-1)π/4(nは整数)と表すことができる。上式でcos(α1)とcos(α2)はnを適切に選ぶ必要がある。不適切な場合は符号が逆転してcos(α1)=-cos(α2)となる。
【0046】
図2(B)、図3(B)に示す角度センサ100aの電源23は、ブリッジ回路1aに一定の電流Iを供給する。角度センサ100aの電圧検出部21は、ブリッジ回路1aの中点電位差V(θ)を検出する。
【0047】
角度センサ100aの回転角度算出部22は、電圧検出部21によって検出された中点電位差V(θ)に基づいて、センサ面6a上での磁界の回転角度θを算出し、回転角度θと既知の角度αとに基づいて、式(8)により磁界の回転角度φを算出する。
【0048】
次に、フィードバックレバーの回転軸Aの方向を変更可能な参考例のポジショナの構造について説明する。図5(A)、図5(B)は参考例の角度センサ100aを配置したポジショナの要部断面図であり、図5(A)は回転軸Aが水平方向の場合を示し、図5(B)は回転軸Aが鉛直方向の場合を示している。
【0049】
上記のとおり、角度センサ100aのブリッジ回路1aは、センサホルダ11に固定されている。センサホルダ11は、ベース17を介してポジショナのハウジング13に固定される。
【0050】
また、ポジショナのハウジング13には、シャフト9を回転自在に軸支するシャフトホルダ14を装着するための開口部であるポート15-1,15-2が少なくとも2つ設けられている。図5(A)、図5(B)の例では、ポート15-1は回転軸Aを水平方向にする場合の開口部、ポート15-2は回転軸Aを鉛直方向にする場合の開口部である。シャフトホルダ14は、ポート15-1またはポート15-2に装着され、ねじ留めされる。
【0051】
ポート15-1とポート15-2は、互いの中心軸C1,C2が直交するようにハウジング13に形成されている。これら中心軸C1,C2の交点に、ブリッジ回路1aの中心が位置するようにブリッジ回路1aが配置される。
【0052】
図5(A)のように、ポート15-1にシャフトホルダ14を装着したとき、ポート15-1の中心軸C1とシャフト9の回転軸Aとが一致し、回転軸Aの延長線がブリッジ回路1aの中心を通る。シャフトホルダ14を装着しないポート15-2には、防爆キャップ16が装着され閉鎖される。
【0053】
一方、図5(B)のように、ポート15-2にシャフトホルダ14を装着したとき、ポート15-2の中心軸C2とシャフト9の回転軸Aとが一致し、回転軸Aの延長線がブリッジ回路1aの中心を通る。シャフトホルダ14を装着しないポート15-1には、防爆キャップ16が装着され閉鎖される。
【0054】
ポジショナの制御対象のバルブが直動式弁の場合、バルブステムの上下動は回転軸Aを中心とするフィードバックレバー18の回転運動に変換されて、シャフトホルダ14によって軸支されたシャフト9の回転に伴って回転体2がシャフトホルダ14内で回転し、磁石3,4がブリッジ回路1aの周囲を回転する。ポジショナの制御対象のバルブが回転弁の場合には、バルブステムの回転運動は回転軸Aを中心とするフィードバックレバー18の回転運動に変換される。
【0055】
以上のように、参考例では、フィードバックレバー18の回転軸Aの方向を、ブリッジ回路1aのセンサ面6aの法線と平行な面(図5(A)、図5(B)の紙面)上で90°変更することが容易になる。
これに対して、本発明の実施例では、回転軸Aの方向をより細かい任意の方向に変更可能な構成を提案する。
【0056】
[実施例]
図6図7は本発明の実施例に係るポジショナの要部断面図であり、図1図2(A)、図2(B)、図3(A)、図3(B)、図4図5(A)、図5(B)と同様の構成には同一の符号を付してある。図6はフィードバックレバー18の回転軸Aが水平方向の場合を示し、図7は回転軸Aが鉛直方向の場合を示している。
【0057】
本実施例の角度センサ100bは、ブリッジ回路1a(センサ回路)と、フィードバックレバー18(フィードバック機構)と反対側のシャフト9の先端に固定された回転体2と、回転体2に取り付けられ、シャフト9と回転体2の回転に伴って回転軸Aを中心として回転する磁界発生部となる磁石3,4と、ブリッジ回路1aの出力電圧を検出する電圧検出部(不図示)と、電圧検出部によって検出された電圧に基づいて磁界の回転角度を算出する回転角度算出部(不図示)とを備えている。
【0058】
参考例と同様に、ブリッジ回路1aは、センサホルダ11に固定されている。センサホルダ11は、ベース17を介してポジショナのハウジング13bに固定される。センサホルダ11とベース17には、ブリッジ回路1aと電源との間、およびブリッジ回路1aと電圧検出部との間を接続するための配線(不図示)が設けられている。
【0059】
また、ポジショナのハウジング13bには、シャフト9を回転自在に軸支すると共に、フィードバックレバー18の回転軸Aの方向を、ブリッジ回路1aのセンサ面の法線(図6図7のE)と平行な面(図6図7の紙面)上で任意に変更することが可能なヒンジ機構20が固定されている。
【0060】
ヒンジ機構20は、ヒンジ機構20自体の構造およびハウジング13bの構造によって制限される角度範囲内で回転軸Aの方向を任意に変更することが可能である。この角度範囲内のいずれの角度においても、回転軸Aの延長線は、図1に示した平面視菱形(正方形)のブリッジ回路1aの中心を通る。
【0061】
シャフト9の先端には回転体2が固定され、回転体2には磁石3,4が取り付けられている。一方、回転体2と反対側のシャフト9の端にはフィードバックレバー18が取り付けられる。
【0062】
ポジショナの制御対象のバルブが直動式弁の場合、バルブステムの上下動は回転軸Aを中心とするフィードバックレバー18の回転運動に変換され、ヒンジ機構20によって軸支されたシャフト9の回転に伴って回転体2が回転し、磁石3,4がブリッジ回路1aの周囲を回転する。ポジショナの制御対象のバルブが回転弁の場合には、バルブステムの回転運動は回転軸Aを中心とするフィードバックレバー18の回転運動に変換される。
【0063】
図8(A)、図8(B)、図9(A)、図9(B)はヒンジ機構20の構造を説明する図である。図8(A)は回転軸Aが水平方向の場合を示し、図8(B)は回転軸Aが鉛直方向の場合を示している。なお、図8(A)、図8(B)では、回転体2内の磁石3,4の記載を省略している。
【0064】
ヒンジ機構20は、シャフト9を回転自在に軸支するシャフトホルダ200と、シャフトホルダ200を支持するブラケット201と、シャフトホルダ200の回動を制止する制止機構とから構成される。シャフトホルダ200とブラケット201とは、例えば樹脂からなる。
【0065】
シャフトホルダ200は、シャフト9を回転自在に軸支する軸受部2000と、軸受部2000の両側からそれぞれ突出するように軸受部2000と一体で成形された継手部2001,2002とから構成される。回転体2は、シャフト9の回転に伴って、継手部2001と2002の間の空間内で回転する。
【0066】
ブラケット201は、シャフトホルダ200がフィードバックレバー18の回転軸Aと交差する軸(本実施例では直交する軸)を回動軸Dとして回動可能なようにシャフトホルダ200を支持する。ブラケット201は、ヒンジ機構20をポジショナのハウジング13bに固定するための台座2010と、台座2010の中央部から突出するように台座2010と一体で成形された円筒状の突起部2011と、台座2010の両側からそれぞれ突出するように台座2010と一体で成形された支持アーム部2012,2013とから構成される。
【0067】
ブラケット201は、シャフトホルダ200を両側から挟持するような構造となっている。シャフトホルダ200とブラケット201を組み合わせたとき、支持アーム部2012が継手部2001の外側の壁面と擦れ合い、支持アーム部2013が継手部2002の外側の壁面と擦れ合う。
【0068】
回動軸Dと平行な方向に沿って継手部2001を貫通するように形成された貫通孔2003と、回動軸Dと平行な方向に沿って支持アーム部2012を貫通するように形成された貫通孔2014には、ヒンジピン203が挿入される。同様に、回動軸Dと平行な方向に沿って継手部2002を貫通するように形成された貫通孔2004と、回動軸Dと平行な方向に沿って支持アーム部2013を貫通するように形成された貫通孔2015には、ヒンジピン204が挿入される。
【0069】
シャフトホルダ200とブラケット201を組み合わせてヒンジピン203,204を挿入したとき、ヒンジピン203,204の中心軸および貫通孔2003,2004,2014,2014,2015の中心軸は、回動軸Dと一致する。
【0070】
こうして、シャフトホルダ200は、回転軸A上の位置と、回動軸D上の位置と、軸A,Dに垂直な軸上の位置とが規制された状態で、回動可能なようにシャフトホルダ200によって支持される。
【0071】
ブラケット201の突起部2011の内部には、台座2010側の端部が開口する円柱状の空間2016が形成されている。ポジショナのハウジング13bに固定されているセンサホルダ11とブリッジ回路1aとは、ヒンジ機構20をハウジング13bに固定するために、台座2010の底面をハウジング13bに近づけたときに、台座2010の底面の開口を通って空間2016内に収容されるようになっている。
【0072】
ヒンジ機構20の台座2010をハウジング13bに固定する方法としては、例えばねじ止めなどの方法がある。ヒンジ機構20がハウジング13bに固定されたとき、センサ面が回動軸Dと平行になるようにブリッジ回路1aが配置される。ヒンジ機構20がハウジング13bに固定された状態で、シャフト9の回転に伴って回転体2が回転すると、磁石3,4がブリッジ回路1aの周囲を回転する。本実施例においても、磁界の回転角度によらず磁界がブリッジ回路1aのAMR素子10-1~10-4に対して飽和している状態とする。
【0073】
本実施例のポジショナを制御対象のバルブに取り付けるときに、フィードバックレバー18の回転軸Aの向きが決まる。このため、ポジショナを制御対象のバルブに取り付けた状態でポジショナの取付姿勢が所望の向きになるように、シャフトホルダ200を回動させる必要がある。そして、所望の角度まで回動させたところでシャフトホルダ200の回動を制止する必要がある。
【0074】
本実施例では、制止機構として、ねじ202を用いている。具体的には、支持アーム部2013には、回動軸Dと平行な方向に沿って支持アーム部2013を貫通するようにねじ孔2017が形成されている。シャフトホルダ200を所望の角度まで回動させた状態でねじ202を支持アーム部2013のねじ孔2017に螺合させたとき、ねじ202の先端が当たる継手部2002の位置にねじ孔2005を穿つようにすればよい。ねじ202をねじ孔2017に螺合させ、さらに継手部2002のねじ孔2005に螺合させることによって、シャフトホルダ200の回動を制止することが可能となる。
【0075】
なお、本実施例では、制止機構として、ねじ202とねじ孔2005,2017を用いたが、別の構造の制止機構を用いてもよいことは言うまでもない。
【0076】
本実施例の角度センサ100bの電気系の構成を図10に示す。本実施例では、ヒンジ機構20によって回転軸Aの方向を任意に変更することが可能であるため、磁界の回転角度φを求めるためには、ポジショナを制御対象のバルブに取り付けてシャフトホルダ200を所望の回動角度で制止した後に、ブリッジ回路1aのセンサ面に対する磁界の回転面の傾斜角度αをポジショナに対して設定する必要がある。
【0077】
例えば傾斜角度αを示す目盛りをシャフトホルダ200とブラケット201に刻印しておくことにより、ポジショナの取り付け作業を行う作業者が傾斜角度αを認識することが可能となる。作業者は、ポジショナの取り付け作業後に、ポジショナの操作ボタンを操作して傾斜角度αの値を入力する。
図10に示す角度設定部24は、作業者が入力した傾斜角度αの値を回転角度算出部22に対して設定する。
【0078】
参考例と同様に、電源23は、ブリッジ回路1aに一定の電流Iを供給する。電圧検出部21は、ブリッジ回路1aの中点電位差V(θ)を検出する。
【0079】
回転角度算出部22は、電圧検出部21によって検出された中点電位差V(θ)に基づいて、センサ面上での磁界の回転角度θを算出し、回転角度θと角度設定部24によって設定された傾斜角度αとに基づいて、式(8)により磁界の回転角度φ(シャフト9およびフィードバックレバー18の回転角度)を算出する。この際、回転角度算出部22は、予め登録されている、中点電位差V(θ)と磁界の回転角度θとの関係を示す近似関数を用いて、中点電位差V(θ)から磁界の回転角度θを算出すればよい。
【0080】
角度センサ100bをポジショナに使用する場合、回転角度算出部22は、磁界の回転角度φに応じた信号を、バルブの実開度を示す信号としてポジショナの制御演算部に渡すようにすればよい。
【0081】
以上のように、本実施例では、ヒンジ機構20によってフィードバックレバー18の回転軸Aの方向を、ブリッジ回路1aのセンサ面の法線と平行な面(図6図7の紙面)上で任意の方向に変更することが容易になるので、ポジショナ本体の取付姿勢を変えることなく、1つの角度センサ100bによって磁界の回転角度φ(シャフト9およびフィードバックレバー18の回転角度)を測定することができる。本実施例では、ポジショナの表示器やブリッジ回路1aの向きを変える必要がなく、またポジショナを横転させる必要がないので、ポジショナの再調整も不要となる。
【0082】
本実施例で説明した回転角度算出部22と角度設定部24は、CPU(Central Processing Unit)、記憶装置および外部とのインタフェースを備えたコンピュータと、これらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。このコンピュータの構成例を図11に示す。
【0083】
コンピュータは、CPU400と、記憶装置401と、インタフェース装置(I/F)402とを備えている。I/F402には、電圧検出部21のハードウェア等が接続される。CPU400は、記憶装置401に格納されたプログラムに従って本実施例で説明した処理を実行する。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明は、ポジショナに適用することができる。
【符号の説明】
【0085】
1a…ブリッジ回路、2…回転体、3,4…磁石、9…シャフト、10-1~10-4…AMR素子、11…センサホルダ、13b…ハウジング、17…ベース、18…フィードバックレバー、20…ヒンジ機構、21…電圧検出部、22…回転角度算出部、23…電源、24…角度設定部、100b…角度センサ、200…シャフトホルダ、201…ブラケット、202…ねじ,203,204…ヒンジピン、2000…軸受部、2001,2002…継手部、2003,2004,2014,2015…貫通孔、2010…台座、2011…突起部、2012,2013…支持アーム部、2016…空間。
図1
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