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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129412
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】コーヒー飲料
(51)【国際特許分類】
   A23F 5/24 20060101AFI20240919BHJP
【FI】
A23F5/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038607
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】596126465
【氏名又は名称】アサヒ飲料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】西郷 亮子
(72)【発明者】
【氏名】石井 陽子
【テーマコード(参考)】
4B027
【Fターム(参考)】
4B027FB22
4B027FB24
4B027FC01
4B027FC02
4B027FC10
4B027FK02
4B027FQ06
4B027FQ17
4B027FQ19
(57)【要約】
【課題】コーヒー飲料の苦みの質とコーヒー風味の質の好ましさを向上しつつ、気分のリフレッシュ感を高める技術を提供する。
【解決手段】本発明のコーヒー飲料は、オイゲノール含有量が5~55ppbである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オイゲノール含有量が5~55ppbである、コーヒー飲料。
【請求項2】
2-メトキシ-3-メチルピラジンの含有量が25~70ppbである、コーヒー飲料。
【請求項3】
4-ビニルグアイアコールの含有量が0.5~0.9ppmである、コーヒー飲料。
【請求項4】
オイゲノール、2-メトキシ-3-メチルピラジン及び4-ビニルグアイアコールの中から選ばれる1種又は2種以上を含み、
以下の要件(i)~(iii)のいずれかを満たす、コーヒー飲料;
(i)オイゲノールの含有量が5~55ppbであり、2-メトキシ-3-メチルピラジンの含有量が1~70ppbである、
(ii)オイゲノールの含有量が5~55ppbであり、4-ビニルグアイアコールの含有量が0.2~0.9ppmである、
(iii)オイゲノールの含有量が5~55ppbであり、2-メトキシ-3-メチルピラジンの含有量が1~70ppbであり、4-ビニルグアイアコールの含有量が0.2~0.9ppmである。
【請求項5】
容器詰めされた、請求項1乃至4いずれか一項に記載のコーヒー飲料。
【請求項6】
オイゲノール含有量が5~55ppbとなるように調製する工程を含む、コーヒー飲料の製造方法。
【請求項7】
2-メトキシ-3-メチルピラジンの含有量が25~70ppbとなるように調製する工程を含む、コーヒー飲料の製造方法。
【請求項8】
4-ビニルグアイアコールの含有量が0.5~0.9ppmとなるように調製する工程を含む、コーヒー飲料の製造方法。
【請求項9】
オイゲノール、2-メトキシ-3-メチルピラジン、及び4-ビニルグアイアコールの中から選ばれる1種又は2種以上を含むコーヒー飲料の製造方法であって、
以下の要件(i)~(iii)のいずれか一つを満たすように調製する工程を含む、コーヒー飲料の製造方法;
(i)オイゲノールの含有量が5~55ppbであり、2-メトキシ-3-メチルピラジンの含有量が1~70ppbである、
(ii)オイゲノールの含有量が5~55ppbであり、4-ビニルグアイアコールの含有量が0.2~0.9ppmである、
(iii)オイゲノールの含有量が5~55ppbであり、2-メトキシ-3-メチルピラジンの含有量が1~70ppbであり、4-ビニルグアイアコールの含有量が0.2~0.9ppmである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーヒー飲料に関する。より詳細には、本発明は、コーヒー飲料およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コーヒー飲料は独特な苦みおよび香味を呈し、嗜好性の高い飲料として広く親しまれている。また、コーヒー豆に含まれるカフェインやタンニン等の作用により、コーヒー飲料を飲用することで気分をリフレッシュさせる効果があることが知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
一方、コーヒー風味を有する飲料に用いられる香気成分として、オイゲノール、2-メトキシ-3-メチルピラジン、4-ビニルグアイアコール等が知られる。
例えば、特許文献2には、嗜好性・持続性が高く、アロマテラピーなどの作用・機能を得るために、コーヒー飲料に対して、0.01~0.6ppm程度のオイゲノールや、0.01~4ppm程度の4-ビニルグアイアコールを添加することが開示されている。また、特許文献3には、コーヒー感及び発酵感に優れたビールテイスト飲料に関し、4-ビニルグアイアコールの含有量を100~500μg/L、2-エチルピラジンの含有量を5~40μg/L、2,3-ジメチルピラジンの含有量を5~40μg/Lとすることが開示されている。また、特許文献4には、コーヒー風味炭酸飲料において、4-ビニルグアヤコールの含有量を0.01~5ppmとすることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-191656号公報
【特許文献2】特開2006-020526号公報
【特許文献3】特開2018-148862号公報
【特許文献4】特開2021-087357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本件発明者らは、オイゲノール、2-メトキシ-3-メチルピラジン、4-ビニルグアイアコールといった香気成分を特定量用いることで、コーヒーの香味の中でもコーヒー飲料の苦みの質およびコーヒー風味の質の好ましさを向上できることを見出すとともに、コーヒー飲料による気分のリフレッシュ感を高めるという新たな効果も発揮されることを見出し、本発明を完成させた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、以下に示す、コーヒー飲料、およびこれに関する技術が提供される。
【0007】
[1] オイゲノール含有量が5~55ppbである、コーヒー飲料。
[2] 2-メトキシ-3-メチルピラジンの含有量が25~70ppbである、コーヒー飲料。
[3] 4-ビニルグアイアコールの含有量が0.5~0.9ppmである、コーヒー飲料。
[4] オイゲノール、2-メトキシ-3-メチルピラジン及び4-ビニルグアイアコールの中から選ばれる1種又は2種以上を含み、
以下の要件(i)~(iii)のいずれかを満たす、コーヒー飲料;
(i)オイゲノールの含有量が5~55ppbであり、2-メトキシ-3-メチルピラジンの含有量が1~70ppbである、
(ii)オイゲノールの含有量が5~55ppbであり、4-ビニルグアイアコールの含有量が0.2~0.9ppmである、
(iii)オイゲノールの含有量が5~55ppbであり、2-メトキシ-3-メチルピラジンの含有量が1~70ppbであり、4-ビニルグアイアコールの含有量が0.2~0.9ppmである。
[5] 容器詰めされた、[1]乃至[4]いずれか一つに記載のコーヒー飲料。
[6] オイゲノール含有量が5~55ppbとなるように調製する工程を含む、コーヒー飲料の製造方法。
[7] 2-メトキシ-3-メチルピラジンの含有量が25~70ppbとなるように調製する工程を含む、コーヒー飲料の製造方法。
[8] 4-ビニルグアイアコールの含有量が0.5~0.9ppmとなるように調製する工程を含む、コーヒー飲料の製造方法。
[9] オイゲノール、2-メトキシ-3-メチルピラジン、及び4-ビニルグアイアコールの中から選ばれる1種又は2種以上を含むコーヒー飲料の製造方法であって、
以下の要件(i)~(iii)のいずれか一つを満たすように調製する工程を含む、コーヒー飲料の製造方法;
(i)オイゲノールの含有量が5~55ppbであり、2-メトキシ-3-メチルピラジンの含有量が1~70ppbである、
(ii)オイゲノールの含有量が5~55ppbであり、4-ビニルグアイアコールの含有量が0.2~0.9ppmである、
(iii)オイゲノールの含有量が5~55ppbであり、2-メトキシ-3-メチルピラジンの含有量が1~70ppbであり、4-ビニルグアイアコールの含有量が0.2~0.9ppmである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、コーヒー飲料の苦味の質およびコーヒー風味の質の好ましさを向上しつつ、気分のリフレッシュ感を高めることができる技術が提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明する。
なお、本明細書中、数値範囲の説明における「a~b」との表記は、特に断らない限り、a以上b以下のことを表す。また、「ppm」は「mg/L」と同義であり、「ppb」は「μg/L」と同義である。
【0010】
<コーヒー飲料>
本実施形態のコーヒー飲料(以下、単に「飲料」とも称する)は、オイゲノール、2-メトキシ-3-メチルピラジン、および4-ビニルグアイアコールの中から選ばれる1種または2種以上を含み、これらの含有量を特定の数値範囲とするものである。
これにより、コーヒー飲料の苦味の質およびコーヒー風味の質の好ましさを向上できる。またさらに、本実施形態のコーヒー飲料によれば、コーヒー飲料が有するリフレッシュ感をさらに高めることで、「前向きな気持ちになれる」「一日の始まりを感じる」「気持ちをON(オン)にしてくれる」といった気持ちや気分の切り替えが感じられるといった新たな効果を得ることができる。
【0011】
かかる理由の詳細は明らかではないが、オイゲノール、2-メトキシ-3-メチルピラジン、および4-ビニルグアイアコールがそれぞれ有する香気が、コーヒー飲料全体の香味を適度に高めるとともに、カフェイン様のスッキリ感、嗜好性を向上することで、コーヒー飲料の苦味の質およびコーヒー風味の質の好ましさを向上できるとともに、リフレッシュ効果をより高められると推測される。また、コーヒー飲料の苦味の質およびコーヒー風味の質の好ましさとリフレッシュ感の相乗効果により、「前向きな気持ちになれる」「一日の始まりを感じる」「気持ちをON(オン)にしてくれる」といった効果も感じられると考えられる。
【0012】
なお、「苦味の質の好ましさ」とは、コーヒー飲料を飲用した際に、コーヒー特有の苦みの強さが適度であるとともに、苦味の後残りや雑味に似たイヤな苦味が感じられにくいことを意図する。
「コーヒー風味の質の好ましさ」とは、コーヒー飲料を飲用した際に、コーヒー特有の香味が感じられるとともに、香味の強さが適度であって、かつ、強いクセや個性が抑えられた好ましい香りと味わいが感じられることを意図する。
【0013】
コーヒー飲料は、具体的には、以下の通りである。
第1の実施形態のコーヒー飲料は、オイゲノール含有量が5~55ppbである。
第2の実施形態のコーヒー飲料は、2-メトキシ-3-メチルピラジンの含有量が25~70ppbである。
第3の実施形態のコーヒー飲料は、4-ビニルグアイアコールの含有量が0.5~0.9ppmである。
第4の実施形態のコーヒー飲料は、オイゲノール、2-メトキシ-3-メチルピラジン及び4-ビニルグアイアコールの中から選ばれる1種又は2種以上を含み、
以下の要件(i)~(iii)のいずれかを満たす;
(i)オイゲノールの含有量が5~55ppbであり、2-メトキシ-3-メチルピラジンの含有量が1~70ppbである、
(ii)オイゲノールの含有量が5~55ppbであり、4-ビニルグアイアコールの含有量が0.2~0.9ppmである、
(iii)オイゲノールの含有量が5~55ppbであり、2-メトキシ-3-メチルピラジンの含有量が1~70ppbであり、4-ビニルグアイアコールの含有量が0.2~0.9ppmである。
【0014】
以下、コーヒー飲料の詳細について説明する。
【0015】
本実施形態において、コーヒー飲料は、コーヒー豆から抽出または溶出した成分(コーヒー分)を原料とする飲料及びこれにその他の成分が加えられている飲料であり、飲んだときにコーヒー風味が感じられる飲料をいい、1977年に制定された「コーヒー含有飲料等の表示に関する公正競争規約」にも記載されているように、コーヒー豆を原料とした飲料及びこれに糖類、乳製品、乳化された食用油脂その他の可食物を加え容器に密封した飲料のことを指す。また、本実施形態においては、コーヒー豆使用量が生豆換算で1重量%未満の飲料であっても、飲んだときにコーヒー風味が感じられる飲料については、コーヒー飲料として扱う。
【0016】
上記のコーヒー豆としては、特に限定されず、アラビカ種、ロブスタ種、リベリカ種などの栽培樹種が挙げられる。また、コーヒー豆の品種としては、特に限定されず、モカ、ブラジル、コロンビア、グアテマラ、ブルーマウンテン、コナ、マンデリン、およびキリマンジャロなどが挙げられる。コーヒー豆は1種でもよいし、2種以上をブレンドして用いてもよい。
コーヒー豆の焙煎温度や焙煎環境等の条件は、特に限定されず、通常の方法を採用できる。また、焙煎コーヒー豆を用いた抽出方法としては、特に限定されないが、例えば、ドリップ式、サイフォン式、ボイリング式、ジェット式、および連続式などが挙げられる。
【0017】
焙煎コーヒー豆の焙煎度は、L値として、30以下が好ましく、26以下がより好ましく、22以下がさらに好ましく、20以下がことさらに好ましい。L値の下限は、特に限定されないが、良好なコーヒー風味を得る観点から、例えば、好ましくは15以上である。
L値は、コーヒー豆の焙煎度合を色で表したものであり、L値100を白、L値0を黒とする。すなわち、コーヒー豆の焙煎が進むほどL値は小さくなることを意図する。
【0018】
ここで、本実施形態のコーヒー飲料にコーヒー分を含有させる方法としては、特に限定されず当業者が適宜設定することができる。例えば、粉砕した焙煎豆を水や温水を用いて抽出した溶液(コーヒー抽出液)や、コーヒー抽出液を濃縮したコーヒーエキス、コーヒー抽出液を乾燥させたインスタントコーヒー等を用いて、これらのうち1種または2種以上を飲料中に添加するといった方法等を挙げることができる。
粉砕した焙煎豆としては、粗挽き、中挽き、細挽き等が挙げられ、特に限定されない。
【0019】
一方、「飲用乳の表示に関する公正競争規約」によれば、2017年現在、重量百分率で乳固形分3.0%以上の成分を含有するものについては、乳飲料として扱われることになる。本実施形態に係るコーヒー飲料については、コーヒー豆を原料とした飲料であるため、重量百分率で乳固形分3.0%以上の成分を含有するものであったとしても、コーヒー飲料として扱うこととする。
【0020】
コーヒー飲料中のコーヒー可溶性固形分の含有量の下限値は、コーヒー特有の香味を得るため、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは0.7質量%以上である。
一方、コーヒー飲料中のコーヒー可溶性固形分の含有量の上限値は、香り、酸味、苦み、後味等のコーヒー特有の香味のバランスを良好に保持するため、好ましくは2.2質量%以下であり、より好ましくは1.8質量%以下であり、さらに好ましくは1.4質量%以下である。
【0021】
コーヒー飲料中のカフェインの含有量は、0~200mg/100mlが好ましく、5~100mg/100mlがより好ましく、10~80mg/100mlがさらに好ましく、20~60mg/100mlがことさらに好ましい。
当該カフェインの含有量を、上記下限値以上とすることにより、苦味の質を向上し、リフレッシュ感が得られ、コーヒーらしい味わいが得られやすくなる。一方、当該カフェインの含有量を、上記上限値以下とすることにより、苦みの質およびコーヒー風味の質の好ましさを良好にし、リフレッシュ感を良好に保持できる。
【0022】
コーヒー飲料中のカフェインの濃度(含有量)は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって定量できる。
【0023】
以下、本実施形態の飲料に含まれる成分、および物性・特性について説明する。
【0024】
[オイゲノール]
オイゲノールは、CAS番号97-53-0の香気成分の一種である。
第1の実施形態において、オイゲノール含有量が5~55ppbである。これにより、コーヒー飲料の苦味の質およびコーヒー風味の質の好ましさを向上しつつ、気分のリフレッシュ感を高めることができる。
オイゲノールの含有量の上限値は、好ましくは50ppb以下であり、より一層コーヒー風味の質の好ましさを向上させる点から、より好ましくは40ppb以下である。
【0025】
[2-メトキシ-3-メチルピラジン]
2-メトキシ-3-メチルピラジンは、CAS番号2847-30-5の香気成分の一種である。
【0026】
第2の実施形態において、2-メトキシ-3-メチルピラジン含有量は25~70ppbとする。
これにより、コーヒー飲料の苦味の質およびコーヒー風味の質の好ましさを向上しつつ、気分のリフレッシュ感を高めることができる。
【0027】
第2の実施形態において、2-メトキシ-3-メチルピラジンの含有量の下限値は、より一層コーヒー飲料の苦味の質およびコーヒー風味の質の好ましさを向上する点から、25ppb以上である。
一方、2-メトキシ-3-メチルピラジンの含有量の上限値は、より一層コーヒー飲料の美味しさを高め、リフレッシュ効果を向上する点から、好ましくは55ppb以下である。
【0028】
[4-ビニルグアイアコール]
4-ビニルグアイアコールは、CAS番号7786-61-0の香気成分の一種である。これにより、コーヒー飲料の苦味の質およびコーヒー風味の質の好ましさを向上しつつ、気分のリフレッシュ感を高めることができる。
【0029】
第3の実施形態において、4-ビニルグアイアコール含有量は0.5~0.9ppmである。
4-ビニルグアイアコールの含有量の下限値は、より一層コーヒー風味の質の好ましさを向上し、リフレッシュ効果を得やすくする点から、0.5ppm以上である。
一方、4-ビニルグアイアコールの含有量の上限値は、好ましくは0.8ppm以下である。
【0030】
上記各香気成分は、オイゲノール、2-メトキシ-3-メチルピラジン、4-ビニルグアイアコールの単体の化合物として飲料に添加されてもよく、オイゲノール、2-メトキシ-3-メチルピラジン、及び4-ビニルグアイアコールを含む原料または混合物として飲料に添加してもよい。
【0031】
第4の実施形態において、以下の要件(i)~(iii)のいずれかを満たすことが好ましい。すなわち、オイゲノール、2-メトキシ-3-メチルピラジン、及び4-ビニルグアイアコールはそれぞれ、コーヒー飲料の苦味の質およびコーヒー風味の質の好ましさを向上しつつ、リフレッシュ効果を高める機能を有するため、これらを併用することで、単独での含有量が低くても、全体として当該機能を保持できる。
(i)オイゲノールの含有量が5~55ppbであり、2-メトキシ-3-メチルピラジンの含有量が1~70ppbである、
(ii)オイゲノールの含有量が5~55ppbであり、4-ビニルグアイアコールの含有量が0.2~0.9ppmである、
(iii)オイゲノールの含有量が5~55ppbであり、2-メトキシ-3-メチルピラジンの含有量が1~70ppbであり、4-ビニルグアイアコールの含有量が0.2~0.9ppmである。
【0032】
第4の実施形態において、好ましくは、
(i’)オイゲノールの含有量が5~40ppbであり、2-メトキシ-3-メチルピラジンの含有量が5~55ppbである。
(ii’)オイゲノールの含有量が5~40ppbであり、4-ビニルグアイアコールの含有量が0.2~0.7ppmである、
(iii’)オイゲノールの含有量が5~40ppbであり、2-メトキシ-3-メチルピラジンの含有量が5~55ppbであり、4-ビニルグアイアコールの含有量が0.2~0.7ppmである。
これにより、コーヒー飲料の苦味の質およびコーヒー風味の質の好ましさを向上しつつ、リフレッシュ効果を高められる。
【0033】
上記実施形態の飲料に含まれる各香気成分の含有量は、ガスクロマトグラフ質量分析計(GC/MS)を用いた、SPME(Solid Phase Micro Extraction)法により定量することができる。
【0034】
上記実施形態の飲料は、本発明の効果が得られる限りにおいて、上記以外の香気成分、乳成分、甘味料、酸味料、乳化剤(カゼインナトリウム等)、pH調整剤(炭酸水素ナトリウム(重曹)、炭酸カリウム等)、果汁、各種栄養成分、着色料、希釈剤、酸化防止剤、および増粘安定剤等を含んでもよい。
【0035】
(乳成分)
乳成分とは、飲料にミルク風味やミルク感を付与するために添加する成分であり、乳としては、例えば、生乳、牛乳、加工乳、全粉乳、脱脂粉乳、生クリーム、濃縮乳、部分脱脂乳、練乳、粉乳、および発酵乳等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0036】
本実施形態において、乳成分を含む場合、飲料中の乳固形分量は0.1~5.0質量%であることが好ましく、0.5~4.0質量%であることがより好ましく、1.0~3.0質量%であることがさらに好ましい。
【0037】
なお、乳固形分とは、乳脂肪分と無脂乳固形分とを合わせたものいう。
乳固形分量の測定方法は、全国飲用牛乳公正取引協議会事務局編「飲用乳の検査法」(平成28年5月改訂)による飲用乳の無視乳固形分の試験方法に従い算出する。具体的には、乳固形分(質量%)=〔総固形分量(g)〕-〔乳以外の固形分量(g)〕-〔乳以外の脂質量(g)〕の式に当てはめて算出できる。
【0038】
(甘味料)
上記の甘味料としては、例えば、果糖、ショ糖、ブドウ糖、グラニュー糖、乳糖、および麦芽糖等の糖類、キシリトール、およびD-ソルビトール等の低甘味度甘味料、タウマチン、ステビア抽出物、グリチルリチン酸二ナトリウム、アセスルファムカリウム、スクラロース、アスパルテーム、サッカリン、ネオテーム、およびサッカリンナトリウム等の高甘味度甘味料などが挙げられる。これらは1種のみを用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
【0039】
[pH]
上記実施形態の飲料の20℃におけるpHは、4.0以上、8.0以下であることが好ましく、5.0以上、7.0以下であることがより好ましく、5.5以上、6.5以下であることがさらに好ましい。
【0040】
なお、pHの測定は、市販のpH測定器を用いるなどして行うことができる。pHの調整は、例えば、pH調整剤を用いることなどにより行うことができる。
【0041】
[ブリックス値]
上記実施形態の飲料のブリックス値(Bx)は、コーヒー飲料らしい嗜好性を得る点から、好ましくは、0.3°以上12°以下であり、より好ましくは、0.5°以上10°以下であり、さらに好ましくは、1.0°以上7°以下である。
ブリックス値は、飲料全量に対する可溶性固形分の合計含有量を示す。ブリックス値は、たとえば、デジタル屈折計Rx-5000α(アタゴ社製)を用いて、20℃における糖用屈折計の示度を測定することができる。
【0042】
[容器]
上記実施形態の飲料に用いられる容器としては、ガラス、紙、プラスチック(ポリエチレンテレフタレート等)、アルミ、およびスチール等の単体もしくはこれらの複合材料又は積層材料からなる密封容器が挙げられる。また、容器の種類は、特に限定されるものではないが、たとえば、ペットボトル、アルミ缶、スチール缶、紙パック、チルドカップ、瓶等が挙げられる。飲料の風味を保持する観点から、スチール缶であることが好ましく、軽量で再栓可能な観点からは、蓋つきのペットボトル、スチール缶およびアルミ缶が好ましい。
【0043】
飲料の容量としては、特に限定されないが、100~2000gが好ましく、飲み切りやすい点からは、100~500gがより好ましい。
【0044】
上記実施形態の飲料が容器詰めされた場合の加熱滅菌処理の方法は、特に限定されないが、日本国内においては食品衛生法の規定に従って、加熱滅菌処理される。具体的には、高温で短時間殺菌した後、無菌条件下で殺菌処理された保存容器に充填する方法(UHT殺菌法)と、調合液を缶等の保存容器に充填した後、レトルト処理を行うレトルト殺菌法が挙げられる。
【0045】
[飲料の種類]
上記実施形態のコーヒー飲料は、乳を含まないブラックコーヒー飲料(有糖または無糖のいずれであってもよい)であってもよく、必要に応じて、1種または2種以上の乳分を含有した乳入りコーヒー飲料であってもよい。本実施形態の飲料による効果をより顕著に得る点からは、ブラックコーヒー飲料であることが好ましい
【0046】
また、上記実施形態の飲料は、炭酸ガス、窒素ガス等により発泡された飲料であってもよく、発泡されていない飲料であってもよい。上記実施形態の飲料による効果を得る点からは、発泡されていない飲料であることが好ましい。
なお、発泡させる方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
【0047】
また、上記実施形態の飲料は、濃縮タイプまたはストレートタイプのいずれであってもよいが、希釈されずにそのまま飲用されるストレートタイプの飲料であることが好ましい。
いわゆる、レディ・トゥ・ドリンク(Ready To Drink;RTD)と呼ばれる飲料であることが好ましい。
【0048】
また、上記実施形態の飲料は、非アルコール飲料であることが好ましい。非アルコール飲料とは、アルコールを実質的に含有しない飲料をいい、具体的にはエタノールなどのアルコールの含有量が1.0体積/体積%未満である飲料を意味する。
【0049】
[販売温度]
上記実施形態の飲料は、加温販売用、常温用、またはコールド用のいずれであってもよく、販売時期に応じて適宜設定することができる。なお、コールド用とは、飲料の液温を常温よりも低くしたものであり、4~15℃程度に冷却したものを意図する。
【0050】
<コーヒー飲料の製造方法>
本実施形態のコーヒー飲料の製造方法は、オイゲノール、2-メトキシ-3-メチルピラジン、及び4-ビニルグアイアコールの中から選ばれる1種又は2種以上を含むコーヒー飲料において、オイゲノール、2-メトキシ-3-メチルピラジン、及び4-ビニルグアイアコールをそれぞれ所定の含有量となるように調製する工程を含む。
【0051】
コーヒー飲料の製造方法は、具体的には、以下の通りである。
第1の実施形態のコーヒー飲料の製造方法は、オイゲノール含有量が5~55ppbとなるように調製する工程を含む。
第2の実施形態のコーヒー飲料の製造方法は、2-メトキシ-3-メチルピラジンの含有量が25~70ppbとなるように調製する工程を含む。
第3の実施形態のコーヒー飲料の製造方法は、4-ビニルグアイアコールの含有量が0.5~0.9ppmとなるように調製する工程を含む。
第4の実施形態のコーヒー飲料の製造方法は、オイゲノール、2-メトキシ-3-メチルピラジン及び4-ビニルグアイアコールの中から選ばれる1種又は2種以上を含み、
以下の要件(i)~(iii)のいずれか一つを満たすように調製する工程を含む;
(i)オイゲノールの含有量が5~55ppbであり、2-メトキシ-3-メチルピラジンの含有量が1~70ppbである、
(ii)オイゲノールの含有量が5~55ppbであり、4-ビニルグアイアコールの含有量が0.2~0.9ppmである、
(iii)オイゲノールの含有量が5~55ppbであり、2-メトキシ-3-メチルピラジンの含有量が1~70ppbであり、4-ビニルグアイアコールの含有量が0.2~0.9ppmである。
【0052】
これにより、コーヒー飲料の苦味の質およびコーヒー風味の質の好ましさを向上できる。また、飲料としては、上述した飲料と同じものを用いることができる。
【0053】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例0054】
以下、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0055】
(1)香気成分の定量
飲料中の各香気成分の濃度(ppm、ppb)について、GC/MS測定に供し、以下に示す手順及び分析条件にて測定を行った。
[手順]
分析対象である飲料10mLを、あらかじめ3gのNaClを入れた20mLバイアルに入れ、密栓した。
各バイアルを50℃で5分間振盪した後、SPME用ファイバー(DVB/CAR/PDMS,Stableflex 23Ga(Gray)50/30μm:SIGMA-ALDRICH社製)をバイアル中のヘッドスペースに露出させた。
50℃で30分間、揮発性成分をファイバーに吸着させた後、注入口で3分間脱着させ、GC/MSにより分析を行った。検量線は標準添加法にて作成し、内標としてシクロヘキサノールを用いた。
[GC/MSの分析条件]
GC:Agilent Technologies社製 7890A
MS:Agilent Technologies社製 5975C
カラム:AgilentTechologies社製 DB-WAX UI 30m×0.25mm、膜厚0.25μm
圧力一定モード:122KPa、注入法:スプリットレス。キャリアガス:He
注入口温度:240℃。トランスファーライン:240℃
オーブン温度:40℃(5min)→5℃/min→240℃(5min)
MS条件:スキャンモード
定量イオン:オイゲノール(CAS 97-53-0)m/z164
2‐メトキシ-3-メチルピラジン(CAS 2847-30-5)m/z124
および4-ビニルグアイアコール(CAS 7786-61-0)m/z107
【0056】
(2)飲料の物性
・pH;pH測定器HM-30R(東亜ディーケーケー社製)を用いて、20℃におけるpHを測定した。
・ブリックス;デジタル屈折計Rx-5000α(アタゴ社製)を用いて、20℃における糖用屈折計の示度を測定した。
【0057】
(3)官能評価
官能評価に熟練した4~6名の開発者が各飲料を試飲し、以下の評価基準(7段階;1~7点)従い、「おいしさ」「前向きな気持ちになる」「一日の始まりを感じる」「気持ちをON(オン)にしてくれる」「苦みの強さ」「苦みの質の好ましさ」「コーヒー風味の質の好ましさ」それぞれについて評価を実施し、その平均値を求めた。対照は、比較例1のベース液とし、4点とした。
【0058】
・評価基準
「おいしさ」
7点・・・非常においしい
6点・・・おいしい
5点・・・ややおいしい
4点・・・同等
3点・・・あまりおいしくない
2点・・・おいしくない
1点・・・非常においしくない
【0059】
「前向きな気持ちになる」「一日の始まりを感じる」「気持ちをON(オン)にしてくれる」
7点・・・非常にそう思う
6点・・・そう思う
5点・・・ややそう思う
4点・・・同等
3点・・・ややそう思わない
2点・・・そう思わない
1点・・・全くそう思わない
【0060】
「苦みの強さ」
7点・・・非常に強い
6点・・・強い
5点・・・やや強い
4点・・・同等
3点・・・やや弱い
2点・・・弱い
1点・・・非常に弱い
【0061】
「苦みの質の好ましさ」「コーヒー風味の質の好ましさ」
7点・・・非常に良い
6点・・・良い
5点・・・やや良い
4点・・・同等
3点・・・やや良くない
2点・・・良くない
1点・・・非常に良くない
【0062】
(4)ベース液の調製
表1に示す原料を用い、ベース液を調製した。具体的には、まずコーヒー豆(アラビカ種、L値17)を温水(90℃)で抽出し抽出液を得た。これに、インスタントコーヒー粉末、重曹をさらに混合した後、容器に充填しレトルト殺菌をかけ、ベース液を得た。
得られたベース液の分析値を表1に示す。
【0063】
【表1】
【0064】
(5)実施例および比較例
上記(4)で得られたベース液を用い、表2~7に示す濃度となるようにオイゲノール、2-メトキシ-3-メチルピラジン、及び4-ビニルグアイアコールをそれぞれ配合し、各コーヒー飲料を得た。
得られた各コーヒー飲料(20℃)について上記(3)の官能評価を行った。評価者の人数(n)および評価結果を表2~7にそれぞれ示す。また、評価を行わなかった項目は「-」とした。
また、オイゲノールを単独で用いた試験では、「渋味の強さ」「コーヒー風味の強さ」の評価項目についても、「苦みの強さ」と同様の評価基準にしたがい官能評価を行った(表2)。
【0065】
【表2】
【0066】
【表3】
【0067】
【表4】
【0068】
【表5】
【0069】
【表6】
【0070】
【表7】