(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129416
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】接合構造
(51)【国際特許分類】
E04B 1/58 20060101AFI20240919BHJP
E04B 1/41 20060101ALI20240919BHJP
【FI】
E04B1/58 600A
E04B1/41 502A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038616
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】日向 大樹
(72)【発明者】
【氏名】高谷 真次
(72)【発明者】
【氏名】久田 昌典
(72)【発明者】
【氏名】皆川 宥子
(72)【発明者】
【氏名】久保田 淳
(72)【発明者】
【氏名】島 啓志
【テーマコード(参考)】
2E125
【Fターム(参考)】
2E125AA13
2E125AA53
2E125AB11
2E125AC01
2E125AE16
2E125AF01
2E125AF05
2E125AG04
2E125AG13
2E125AG58
2E125AG60
2E125BA44
2E125BD01
2E125BE07
2E125CA81
(57)【要約】
【課題】せん断に対する抵抗力を向上させ、且つ施工面でも好ましい接合構造等を提供する。
【解決手段】接合構造1は、梁2と木質壁3とを接合するものである。接合構造1では、梁2から突出する鉄筋4が、木質壁3に形成された孔31に挿入され、孔31に接着材5またはモルタルが充填される。鉄筋4は、孔31において、鋼管6に通して配置される。鋼管6の一部は、梁2に形成された凹部21に配置され、凹部21には充填材7が充填される。鋼管6内には固化材8が充填される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質材と構造部材との接合構造であって、
前記構造部材から突出する鋼棒が、前記木質材に形成された孔に挿入され、
前記孔に接着材またはモルタルが充填され、
前記鋼棒は、前記孔において、筒体に通して配置されたことを特徴とする接合構造。
【請求項2】
前記筒体の一部が前記構造部材に形成された凹部に配置され、
前記凹部に充填材が充填されたことを特徴とする請求項1記載の接合構造。
【請求項3】
前記筒体の一部が前記構造部材に埋設されたことを特徴とする請求項1記載の接合構造。
【請求項4】
前記筒体は機械式継手であり、
前記機械式継手の前記構造部材に埋設される部分に固化材が充填され、
前記機械式継手の前記孔に配置される部分には、固化材が充填されないことを特徴とする請求項3記載の接合構造。
【請求項5】
前記筒体に固化材が充填されたことを特徴とする請求項1記載の接合構造。
【請求項6】
前記筒体はナットであり、
前記鋼棒は、前記ナットに螺合するネジ鉄筋であることを特徴とする請求項1記載の接合構造。
【請求項7】
前記構造部材は板状部分を有し、
前記ネジ鉄筋が前記板状部分に通され、
前記ナットと、前記ネジ鉄筋に螺合する別のナットとで前記板状部分を挟み込むことで、前記ネジ鉄筋が前記構造部材に固定されたことを特徴とする請求項6記載の接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部材同士の接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
木質材からなる柱、梁、壁等に鉄筋等の鋼棒を定着する既往技術として、GIR(Glued In Rod)接合が知られている。GIR接合は、木質材の孔に、他の部材から突出する鉄筋等の鋼棒を挿入し、接着材を充填して接合する技術である(例えば、特許文献1等)。
【0003】
GIR接合した木質材に曲げ応力が作用すると、引張側では鉄筋等が引張力を負担し、圧縮側では木質材が圧縮力を負担することで、曲げ応力に抵抗する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
GIR接合の課題として、せん断に対する抵抗力が小さいことが挙げられる。そのため、上記の曲げ応力に付随してせん断力が作用する場合には、せん断変形した鉄筋等が木質材にめり込むことで、木質材に損傷が生じる恐れがある。
【0006】
その対策として、木質材と他の部材との界面に、ダボ等のせん断抵抗要素を設けることも考えられる。しかしながら、GIR接合とは別にせん断抵抗要素を設けると部品数が増え、施工の手間も大きくなる。
【0007】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、せん断に対する抵抗力を向上させ、且つ施工面でも好ましい接合構造等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するための本発明は、木質材と構造部材との接合構造であって、前記構造部材から突出する鋼棒が、前記木質材に形成された孔に挿入され、前記孔に接着材またはモルタルが充填され、前記鋼棒は、前記孔において、筒体に通して配置されたことを特徴とする接合構造である。
【0009】
本発明では、GIR接合における鉄筋等の鋼棒を筒体に通して配置することで、鋼棒を実質的に太径化し、せん断に対する抵抗力を向上させることができる。そのため、せん断抵抗要素をGIR接合部と別個に設ける必要が無く、部品数が少なくて済み、施工面でも好ましい。
【0010】
前記筒体の一部が前記構造部材に形成された凹部に配置され、前記凹部に充填材が充填されることが望ましい。あるいは、前記筒体の一部が前記構造部材に埋設されてもよい。
これらの構成により、筒体と構造部材との一体性が向上し、より高い耐力が期待できる。
【0011】
前記筒体は機械式継手であり、前記機械式継手の前記構造部材に埋設される部分に固化材が充填され、前記機械式継手の前記孔に配置される部分には、固化材が充填されないことも望ましい。
これにより、既製品である機械式継手を用いて接合構造を容易に形成できる。また木質材側では、鋼棒の引張時の伸び区間を確保して鋼棒の引張時の破断を防止できる。
【0012】
前記筒体に固化材が充填されることが望ましい。あるいは、前記筒体がナットであり、前記鋼棒は、前記ナットに螺合するネジ鉄筋であることも望ましい。
これにより、鋼棒と筒体との位置関係を保持し、筒体を精度良く配置できる。
【0013】
前記構造部材は板状部分を有し、前記ネジ鉄筋が前記板状部分に通され、前記ナットと、前記ネジ鉄筋に螺合する別のナットとで前記板状部分を挟み込むことで、前記ネジ鉄筋が前記構造部材に固定されることが望ましい。
これにより、ネジ鉄筋を構造部材に容易に固定でき、且つネジ鉄筋の鉛直性も確保しやすく、施工精度の面でも好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、せん断に対する抵抗力を向上させ、且つ施工面でも好ましい接合構造等を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0017】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る接合構造1を示す図である。この接合構造1では、梁2とその上方の木質壁3とが接合される。梁2は、RC(鉄筋コンクリート)造やSRC(鉄骨鉄筋コンクリート)造等のコンクリートによる構造部材である。木質壁3は、木質材による壁部材である。木質材としては、CLT(Cross Laminated Timber)やLVL(Laminated Veneer Lumber)などを用いることができるが、これに限ることはない。CLT、LVLについては既知であり、説明を省略する。
【0018】
接合構造1は、前記のGIR接合により梁2と木質壁3を接合するものである。接合構造1では、梁2から上方に突出する鋼棒である鉄筋4が、木質壁3の孔31に挿入され、孔31に接着材5が充填される。鉄筋4は異形鉄筋であり、接着材5としてはエポキシ樹脂等が用いられるが、これに限ることはない。接着材5は鉄筋4および木質壁3への接着性を有するものであればよく、モルタル等を用いることも可能である。
【0019】
孔31は、木質壁3の梁2側の小口面から上方に延びるように鉛直方向に形成される。孔31は、その軸方向と直交する断面(以下、単に断面という)が略円形であり、梁2側の端部は拡幅部311となっている。拡幅部311は、孔31において、拡幅部311以外の一般部よりも拡幅した部分である。孔31は、木質材を小口面から削孔することで形成でき、一般部に対応する径で木質壁3を削孔した後、削孔箇所の小口面側の端部を、拡幅部311に対応する径で削孔すればよい。
【0020】
梁2の上面には凹部21が設けられる。前記の鉄筋4は、凹部21から突出し、梁2と木質壁3とに跨るように鉛直方向に配置される。
【0021】
本実施形態では凹部21に鋼管6が載置され、鉄筋4は、この鋼管6に通して配置される。鋼管6は鋼製の筒体であり、鋼管6の軸方向の一部は凹部21内に収容されるが、鋼管6の残りの部分は孔31の拡幅部311内に配置される。凹部21内には充填材7が充填され、鋼管6内には固化材8が充填される。充填材7と固化材8は、例えばモルタルであるが、これに限ることはない。また鋼管6の代わりに、充分な強度を有する材料からなる筒体を用いることもできる。充填材7は、梁2の上面に対応する高さまで充填される。
【0022】
鋼管6の断面は略円形であり、孔31の拡幅部311の径は鋼管6の外径と同程度である。そのため、鋼管6は、木質壁3に接するように拡幅部311に隙間無く配置されるが、若干の隙間はあっても良い。接着材5は、孔31の一般部に充填され、木質壁3と鉄筋4の隙間を埋める。
【0023】
接合構造1は、木質壁3の幅方向に間隔を空けて複数設けられる。木質壁3の幅方向は、
図1の左右方向に対応する。梁2と木質壁3の間の隙間には、モルタル等の間詰材9が充填される。
【0024】
接合構造1を形成する際は、まず
図2(a)の矢印に示すように、梁2の凹部21から突出する鉄筋4に鋼管6を挿通させ、
図2(b)に示すように、鋼管6を凹部21に載置する。その後、必要に応じて、鋼管6の位置を木質壁3の位置に合わせて修正し、凹部21と鋼管6内に充填材7と固化材8を充填する。
【0025】
次に、
図2(c)の矢印に示すように木質壁3を上方から建て込み、
図2(d)に示すように、孔31の拡幅部311に鋼管6を収容し、孔31の一般部に鉄筋4を収容するように木質壁3を配置する。この後、梁2と木質壁3の間の隙間に間詰材9を充填し、孔31の一般部に接着材5を充填することで、
図1に示す接合構造1が形成される。
【0026】
なお、
図1では、接合構造1によって梁2と木質壁3の下端部とを接合しているが、梁2は木質壁3の上方にも配置され、接合構造1は、当該梁2と木質壁3の上端部との接合にも用いられる。その構成は、
図1を上下反転したものとなる。
【0027】
このように、本実施形態では、GIR接合における鉄筋4を鋼管6に通して配置することで、鉄筋4を実質的に太径化し、せん断に対する抵抗力を向上させることができる。また鋼管6と木質壁3との接触面積は大きいので、せん断力の作用時に鋼管6から木質壁3に伝わる力が分散され、鋼管6の木質壁3へのめり込みも生じにくい。本実施形態では、このようにGIR接合のせん断に対する抵抗力を向上させた結果、せん断抵抗要素をGIR接合部と別個に設ける必要も無くなり、部品数が少なくて済み、施工面でも好ましい。
【0028】
また本実施形態では、鋼管6の一部が梁2に形成された凹部21に配置され、凹部21に充填材7が充填されるので、鋼管6と梁2との一体性が向上し、高い耐力が期待できる。また、鋼管6内の固化材8により鉄筋4と鋼管6との位置関係を保持し、鋼管6を精度良く配置できる。
【0029】
なお本実施形態では、鋼管6内に固化材8としてモルタルを充填するため、鋼管6や鉄筋4とモルタルとの付着が生じるが、鉄筋4に加わる引張力に比べてその付着力は非常に小さい。そのため、鉄筋4の引張時には、モルタルの充填区間において鉄筋4が伸び、鉄筋4の伸びが微小区間に集中して鉄筋4が破断することもない。鉄筋4の周囲や鋼管6の内側にビニール等の付着防止材を配置することでモルタルとの付着を除去し、鉄筋4の引張時の破断を確実に防止することもできる。
【0030】
しかしながら、本発明は上記の実施形態に限定されない。例えば上記の実施形態では木質壁3を1枚の板材で構成したが、木質壁3は、
図3に示す一対の木質板30を前後に組み合わせて形成してもよい。前記の孔31は、これらの木質板30の対向面に形成した溝31a同士を組み合わせて形成できる。
【0031】
また
図4の接合構造1aに示すように、前記の凹部21を有しない梁2aに、鋼管6の軸方向の一部を埋設してもよい。これによっても鋼管6と梁2aとの一体性を高めることができ、高い耐力が期待できる。
【0032】
この場合、梁2aの配筋時に鉄筋4と鋼管6の配置を行うが、固化材8の充填を行うか、梁2aのコンクリートを打設するまで鋼管6の位置を精度良く保つ必要がある。そのため、上記の鋼管6に代えて、
図5(a)に示すように、側面に複数のネジ孔を有する鋼管6aを用い、これらのネジ孔に螺合したネジ61の先端で鉄筋4を押さえつけることで、鉄筋4と鋼管6aの位置関係を保持することも望ましい。これにより鋼管6aを精度良く配置でき、作業も簡単である。
図5(b)は鋼管6aを上から見た図であり、本実施形態では鋼管6aの周方向に複数本(図の例では3本)のネジ61が配置される。
【0033】
鋼管6a内への固化材8の充填は、鉄筋4の配筋前に行っても良い。この場合、鋼管6aの下面は、固化材8の漏れを防止するため蓋(不図示)等の閉塞材によって塞いでおく。また、ネジ61の出っ張り等によって木質壁3の孔31の拡幅部311と鋼管6aとの間に隙間が生じる場合には、この隙間に接着材を充填すると良い。全てのネジ61を、鋼管6aの梁2aへの埋設部分に配置するか、あるいは、木質壁3の建て込み前に、鋼管6aの拡幅部311に配置される部分のネジ61を取り外すことができれば、接着材の充填処理は不要である。
【0034】
その他、鋼管6aの代わりに
図6(a)に示す機械式継手6bを用いてもよい。機械式継手6bは、鉄筋同士を接合するために用いられる筒状の既製品であるが、この例では、機械式継手6bの内部に、連続する1本の鉄筋4が通される。機械式継手6bには鋼管6aと同様のネジ61が設けられ、前記と同様、鉄筋4と機械式継手6bの位置関係の保持に用いることが可能である。図中符号62は、機械式継手6b内にグラウト等の固化材8を注入するための注入口である。
【0035】
機械式継手6bの軸方向の両端部は、ゴムシール等のシール材63(後述の
図6(b)参照)で閉じられているため、鉄筋4の配筋前に機械式継手6b内に固化材8を充填することが可能であるが、
図6(b)に示すように、固化材8は、機械式継手6bの梁2aへの埋設部分のみ充填し、木質壁3の孔31の拡幅部311に配置される残りの部分では、固化材8の充填を省略することができる。これにより、木質壁3側では当該部分を鉄筋4の引張時の伸び区間とし、鉄筋4の引張時の破断を防止できる。
【0036】
また、以上の例では梁2、2aと木質壁3とを接合しているが、本発明の接合構造で接合される部材はこれに限らない。例えば柱と梁、柱同士、梁同士など、その他の構造部材同士を接合するものであってもよい。また本発明の接合構造で接合される部材は、少なくとも一方が木質材であればよく、他方の部材は、前記の梁2、2aのようにコンクリートによるものに限らず、木質材によるものであってもよいし、鋼製のものであってもよい。
図7は、木質材による梁2b同士の接合に、
図4の接合構造1aを適用した例である。
【0037】
その他、鉄筋4を通す筒体も、前記の鋼管6、6aや機械式継手6bに限らない。以下、異なる筒体を用いる例を、第2の実施形態として説明する。第2の実施形態は第1の実施形態と異なる点について説明し、同様の構成については図等で同じ符号を付すなどして説明を省略する。また第1の実施形態で説明した構成は、必要に応じて第2の実施形態で説明する構成と組み合わせて用いることが可能である。
【0038】
[第2の実施形態]
図8(a)は、本発明の第2の実施形態に係る接合構造10を示す図である。接合構造10は、梁20と木質壁3を接合するものであるが、鋼棒として鉄筋4の代わりにネジ鉄筋40が用いられ、ネジ鉄筋40が鋼製の筒体である高ナット60に通され、高ナット60のネジ孔に螺合する点で第1の実施形態と異なる。高ナット60は、長尺のナットである。
【0039】
梁20は鉄骨梁であり、本実施形態ではH形鋼が用いられる。梁20の上下には、板状のフランジ22、23(板状部分)が設けられる。ネジ鉄筋40の下端部は上部フランジ22を貫通し、上部フランジ22から下方に突出する。当該突出部分には別のナット70が締め込まれ、高ナット60とナット70によって上部フランジ22を挟み込むことで、ネジ鉄筋40が梁20の上部フランジ22に固定される。
【0040】
高ナット60は、木質壁3の孔31の拡幅部311内に配置される。高ナット60の断面は略正六角形状であり、拡幅部311の断面は略円形であるため、
図8(b)に示すように、高ナット60の断面の幅は拡幅部311の径と同程度であるものの、高ナット60と拡幅部311の間には隙間が生じる。応力伝達を可能とするため、この隙間には接着材5が充填される。高ナット60の周囲にビニール等の付着防止材を巻き付け、接着材5との付着を除去してもよい。これは、前記した鋼管6aや機械式継手6bと拡幅部311との間の隙間に接着材を充填する場合も同様である。
【0041】
接合構造10を構築するには、まず、
図9(a)に示すように、梁20の上部フランジ22にネジ鉄筋40を通し、上部フランジ22の上下から、高ナット60とナット70をそれぞれネジ鉄筋40に螺合させ、高ナット60とナット70とで上部フランジ22を挟み込む。これにより、ネジ鉄筋40が上部フランジ22に固定される。次に、
図9(b)の矢印に示すように木質壁3を上方から建て込み、
図9(c)に示すように、孔31の拡幅部311に高ナット60が収容され、孔31の一般部にネジ鉄筋40が収容されるように、木質壁3を梁20の上部フランジ22上に配置する。その後、孔31に接着材5を充填することで、
図8(a)に示す接合構造10を形成できる。
【0042】
第2の実施形態の接合構造10でも、高ナット60によりネジ鉄筋40が実質的に太径化され、第1の実施形態と同様の効果が得られる。また高ナット60をネジ鉄筋40に螺合することで、ネジ鉄筋40と高ナット60の位置関係が保持され、高ナット60を精度良く配置できる。さらに、ネジ鉄筋40は、高ナット60とナット70により梁20に容易に固定でき、ネジ鉄筋40を上部フランジ22に溶接する必要もなく、溶接時の熱が梁20の構造性能に影響することもない。またネジ鉄筋40の鉛直性も安定して保つことができ、施工精度の面でも好ましい。
【0043】
加えて、第2の実施形態では高ナット60をネジ鉄筋40に螺合して配置できるので、第1の実施形態と比較しても作業が容易である。一方、第1の実施形態では鋼管6、6aや機械式継手6bによってせん断力が直接梁2、2a等に伝達されるので、せん断への抵抗力がより高いという利点がある。
【0044】
なお、高ナット60は、梁20の上部フランジ22上に単に載置するものに限らず、
図10(a)の接合構造10aに示すように、上部フランジ22に座掘りによって凹部221を形成したうえで、高ナット60を凹部221に載置し、凹部221にモルタル等の充填材222を充填してもよい。これにより、高ナット60と梁20の一体性が向上する。
【0045】
また高ナット60から上方に突出するネジ鉄筋40の先端部に、
図10(b)に示すようにナット等による定着部41を設け、接着材5への定着性を向上させてもよい。これは第1の実施形態の鉄筋4についても同様である。
【0046】
また上記の例では木質壁3を鉄骨梁と接合したが、例えば、前記したコンクリート製の梁2aの上に、上面に板状部分を有する鉄骨架台を固定し、接合構造10、10aにより、木質壁3を鉄骨架台の当該板状部分に接合することも可能である。
【0047】
その他、
図11の接合構造10bに示すように、コンクリートによる梁2aの上面に、ネジ鉄筋40に螺合した高ナット60を載置することもできる。接合構造10bを施工する際は、梁2aから突出するネジ鉄筋40の突出部分に高ナット60を螺合させた後、木質壁3を上方から建て込めばよい。その後の工程は、
図2(d)等で説明したものと同様である。この場合、高ナット60は凹部21を有しない梁2aの上面に載置されるだけであり、施工は更に容易になる。係る配置は、第1の実施形態のように鋼管6を用いる場合にも適用可能である。
【0048】
以上、添付図面を参照しながら、本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0049】
1、1a、10、10a、10b:接合構造
2、2a、2b、20:梁
3:木質壁
4:鉄筋
5:接着材
6、6a:鋼管
6b:機械式継手
7、222:充填材
8:固化材
21、221:凹部
31:孔
40:ネジ鉄筋
60:高ナット
70:ナット
311:拡幅部