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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024012942
(43)【公開日】2024-01-31
(54)【発明の名称】物品搬送設備
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/43 20240101AFI20240124BHJP
【FI】
G05D1/02 P
G05D1/02 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022114788
(22)【出願日】2022-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】000003643
【氏名又は名称】株式会社ダイフク
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】上田 俊人
(72)【発明者】
【氏名】伊井 太津喜
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 彰
(72)【発明者】
【氏名】西川 智晶
(72)【発明者】
【氏名】位田 章太
【テーマコード(参考)】
5H301
【Fターム(参考)】
5H301AA02
5H301AA09
5H301BB05
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301DD07
5H301DD15
5H301EE02
(57)【要約】
【課題】制御系に通信障害や故障等の異常が生じた場合であっても、分岐箇所及び合流箇所の少なくとも一方を含む特定区間を走行する搬送車を適切に制御する。
【解決手段】上位制御装置Ct及び区間制御装置Czを含む制御系が実行する制御モードとして、通常制御モードと代替制御モードとが設定されている。通常制御モードは、特定区間Zにおける搬送車Vの制御が、当該特定区間Zを担当する区間制御装置Czによって行われるモードであり、代替制御モードは、特定区間Zにおける搬送車Vの制御が、当該特定区間Zを担当する区間制御装置Czに代わって上位制御装置Ctによって行われるモードである。区間制御装置Czと上位制御装置Ctとの通信に異常がある場合、及び、区間制御装置Czと搬送車Vとの通信に異常がある場合の少なくとも一方の場合に、制御モードが代替制御モードとなる。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を搬送する搬送車と、
前記搬送車が走行する経路であって、分岐箇所及び合流箇所の少なくとも一方を含む特定区間を備えた走行経路と、
複数の前記特定区間のそれぞれに対応して設けられ、前記特定区間を走行する前記搬送車の制御を行う区間制御装置と、
前記搬送車及び複数の前記区間制御装置を制御する上位制御装置と、を備え、
前記搬送車と複数の前記区間制御装置と前記上位制御装置とが通信可能に構成された物品搬送設備であって、
前記上位制御装置及び前記区間制御装置を含む制御系が実行する制御モードとして、通常制御モードと代替制御モードとが設定され、
前記通常制御モードは、前記特定区間における前記搬送車の制御が、当該特定区間を担当する前記区間制御装置によって行われるモードであり、
前記代替制御モードは、前記特定区間における前記搬送車の制御が、当該特定区間を担当する前記区間制御装置に代わって前記上位制御装置によって行われるモードであり、
前記上位制御装置と前記区間制御装置との通信及び前記区間制御装置と前記搬送車との通信が正常である場合、前記制御モードが前記通常制御モードとなり、
前記区間制御装置と前記上位制御装置との通信に異常がある場合、及び、前記区間制御装置と前記搬送車との通信に異常がある場合の少なくとも一方の場合に、前記制御モードが前記代替制御モードとなる、物品搬送設備。
【請求項2】
前記区間制御装置と前記上位制御装置との通信に異常があり、且つ、前記区間制御装置と前記搬送車との通信に異常がある場合に、前記制御モードが前記代替制御モードとなる、請求項1に記載の物品搬送設備。
【請求項3】
前記代替制御モードから前記通常制御モードへの移行が、前記上位制御装置から前記区間制御装置への制御指示が出力され、それに応じて前記区間制御装置から前記上位制御装置への応答があったことを条件として行われ、
前記代替制御モードにおいて、前記上位制御装置は、前記区間制御装置から前記応答があるまでの間、前記特定区間における前記搬送車の制御を継続する、請求項1に記載の物品搬送設備。
【請求項4】
複数の前記特定区間のうち、前記上位制御装置及び前記搬送車の少なくとも一方との通信に異常がある前記区間制御装置が設けられた前記特定区間では、前記代替制御モードが実行され、
複数の前記特定区間のうち、前記上位制御装置及び前記搬送車の双方との通信が正常である前記区間制御装置が設けられた前記特定区間では、前記通常制御モードが実行される、請求項1に記載の物品搬送設備。
【請求項5】
前記搬送車を複数備え、
前記区間制御装置は、自らが担当する前記特定区間を通過するための通過要求信号を送信してきた前記搬送車の走行を制御するように構成され、
前記上位制御装置は、前記代替制御モードが実行されている前記特定区間を通過する場合における前記通過要求信号の送信先を当該上位制御装置とする旨を、複数の前記搬送車に通知し、
複数の前記搬送車のそれぞれは、前記代替制御モードが実行されている前記特定区間を通過する場合には前記上位制御装置に前記通過要求信号を送信し、前記代替制御モードが実行されていない前記特定区間を通過する場合には当該特定区間を担当する前記区間制御装置に前記通過要求信号を送信する、請求項4に記載の物品搬送設備。
【請求項6】
前記搬送車は、前記上位制御装置及び前記区間制御装置のそれぞれに対して、規定の通信周期で信号を送信するように構成され、
前記搬送車と前記上位制御装置との前記通信周期である第1通信周期が、前記搬送車と前記区間制御装置との前記通信周期である第2通信周期よりも長く設定されている、請求項1に記載の物品搬送設備。
【請求項7】
前記通常制御モードが実行されている前記特定区間では、当該特定区間を担当する前記区間制御装置によって前記搬送車の走行が制御されると共に、前記上位制御装置によって前記区間制御装置の制御を補助する補助制御が実行され、
前記上位制御装置は、前記補助制御では、通過要求信号を送信した前記搬送車である対象搬送車から前記区間制御装置へのその後の応答がない場合に、前記特定区間における前記対象搬送車の存否を前記区間制御装置に対して通知する、請求項1に記載の物品搬送設備。
【請求項8】
前記制御モードとして、前記通常制御モードと前記代替制御モードとに加えて、単独制御モードが設定され、
前記単独制御モードは、前記特定区間における前記搬送車の制御が、前記上位制御装置による前記補助制御無しで、当該特定区間を担当する前記区間制御装置の単独で行われるモードである、請求項7に記載の物品搬送設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品を搬送する搬送車と、分岐箇所及び合流箇所の少なくとも一方を含む特定区間を備えた走行経路と、前記特定区間を走行する前記搬送車の制御を行う区間制御装置と、を備えた物品搬送設備に関する。
【背景技術】
【0002】
このような物品搬送設備の一例が、搬送台車システムとして、特開2006-221309号公報(特許文献1)に開示されている。以下、背景技術の説明において括弧内に示された符号は、特許文献1のものである。
【0003】
特許文献1に開示されたシステムでは、搬送車(6)の走行ルート(4)を複数のゾーンに区分して、ゾーン毎にゾーンコントローラ(20~22)を設けて、各ゾーン内の搬送車(6)を制御している。各ゾーンコントローラ(20~22)は、合流部(8)や分岐部(9)などにおいて、複数の搬送車(6)同士が互いに干渉しないように各搬送車(6)を制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-221309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、特許文献1に開示されたシステムでは、各ゾーンコントローラ(20~22)は、自らが担当するゾーンにおける搬送車(6)の制御を行う。しかしながら、ゾーンコントローラに通信障害や故障等のトラブルが生じた場合には、当該ゾーンコントローラが担当するゾーンでは、搬送車(6)の制御が適切に行われず、その結果、複数の搬送車(6)同士が干渉するような事態を招き得る。
【0006】
上記実状に鑑みて、制御系に通信障害や故障等の異常が生じた場合であっても、分岐箇所及び合流箇所の少なくとも一方を含む特定区間を走行する搬送車を適切に制御することが可能な技術の実現が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
物品を搬送する搬送車と、
前記搬送車が走行する経路であって、分岐箇所及び合流箇所の少なくとも一方を含む特定区間を備えた走行経路と、
複数の前記特定区間のそれぞれに対応して設けられ、前記特定区間を走行する前記搬送車の制御を行う区間制御装置と、
前記搬送車及び複数の前記区間制御装置を制御する上位制御装置と、を備え、
前記搬送車と複数の前記区間制御装置と前記上位制御装置とが通信可能に構成された物品搬送設備であって、
前記上位制御装置及び前記区間制御装置を含む制御系が実行する制御モードとして、通常制御モードと代替制御モードとが設定され、
前記通常制御モードは、前記特定区間における前記搬送車の制御が、当該特定区間を担当する前記区間制御装置によって行われるモードであり、
前記代替制御モードは、前記特定区間における前記搬送車の制御が、当該特定区間を担当する前記区間制御装置に代わって前記上位制御装置によって行われるモードであり、
前記上位制御装置と前記区間制御装置との通信及び前記区間制御装置と前記搬送車との通信が正常である場合、前記制御モードが前記通常制御モードとなり、
前記区間制御装置と前記上位制御装置との通信に異常がある場合、及び、前記区間制御装置と前記搬送車との通信に異常がある場合の少なくとも一方の場合に、前記制御モードが前記代替制御モードとなる。
【0008】
本構成によれば、上位制御装置と区間制御装置との通信及び区間制御装置と搬送車との通信が正常である場合には、制御モードが通常制御モードとなることにより、特定区間における搬送車の制御を区間制御装置によって適切に行うことができる。このように、通信が正常である通常の状態では、特定区間における搬送車の制御が当該区間制御装置によって行われるため、上位制御装置の処理負荷も軽減できる。一方で、区間制御装置と上位制御装置との通信に異常がある場合、及び、区間制御装置と搬送車との通信に異常がある場合の少なくとも一方の場合には、制御モードが代替制御モードとなることにより、特定区間における搬送車の制御が、当該特定区間を担当する区間制御装置に代わって上位制御装置によって行われる。従って、区間制御装置が、通信異常によって、自らが担当する特定区間における搬送車の制御を行えない場合であっても、上位制御装置が搬送車を適切に制御することができる。以上より、本構成によれば、制御系に通信障害や故障等の異常が生じた場合であっても、分岐箇所及び合流箇所の少なくとも一方を含む特定区間を走行する搬送車を適切に制御することが可能となる。
【0009】
本開示に係る技術のさらなる特徴と利点は、図面を参照して記述する以下の例示的かつ非限定的な実施形態の説明によってより明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】物品搬送設備の平面図
図2】制御ブロック図
図3】特定区間を走行する搬送車の制御を示す図
図4】各制御モードを示す図
図5】通常制御モード(例1)を示す図
図6】通常制御モード(例2)を示す図
図7】代替制御モードを示す図
図8】単独制御モードを示す図
図9】休止モードを示す図
図10】搬送車の通信周期を示すタイミングチャート
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、物品搬送設備の実施形態について図面を参照して説明する。
【0012】
図1及び図2に示すように、物品搬送設備100は、物品を搬送する搬送車Vと、搬送車Vが走行する経路であって、分岐箇所及び合流箇所の少なくとも一方を含む特定区間Zを備えた走行経路Rと、複数の特定区間Zのそれぞれに対応して設けられ、特定区間Zを走行する搬送車Vの制御を行う区間制御装置Czと、搬送車V及び複数の区間制御装置Czを制御する上位制御装置Ctと、を備えている。搬送車Vと複数の区間制御装置Czと上位制御装置Ctとは、互いに通信可能に構成されている。
【0013】
本実施形態では、物品搬送設備100は、搬送車Vを複数備えている。複数の搬送車Vのそれぞれは、上位制御装置Ctから与えられた搬送指令に基づいて自らのタスクを実行するように構成されている。搬送車Vとしては、床面に沿って走行する無人搬送車や、天井付近を走行する天井搬送車などを例示することができる。
【0014】
物品搬送設備100で取り扱われる物品としては、様々なものがある。例えば、物品搬送設備100が半導体製造工場に用いられる場合には、ウェハを収容するウェハ収容容器(いわゆるFOUP:Front Opening Unified Pod)や、レチクルを収容するレチクル収容容器(いわゆるレチクルポッド)などが、物品とされる。この場合、搬送車Vは、ウェハ収容容器やレチクル収容容器などの物品を、走行経路Rに沿って各工程間に亘って搬送する。
【0015】
走行経路Rは、直線経路及び曲線経路を含むと共に、複数の経路が交差する交差部を含む。交差部は、1つの経路が複数の経路に分岐する分岐箇所と、複数の経路が合流する合流箇所と、を含む。上述のように、特定区間Zは、このような分岐箇所及び合流箇所の少なくとも一方を含む。特定区間Zは、1つ以上の分岐箇所、1つ以上の合流箇所、又は、それらの組み合わせを含む。図1に示す例では、特定区間Zは、走行経路Rにおける、複数の分岐箇所および複数の合流箇所を含む範囲に設定されている。特定区間Zの範囲は、任意に定めることができる。
【0016】
上位制御装置Ctは、複数の搬送車Vおよび複数の区間制御装置Czを制御するように構成されている。例えば、上位制御装置Ctは、各搬送車Vに対して、物品の搬送元と搬送先とを指定した搬送指令を行うように構成されている。上位制御装置Ctは、各搬送車Vと通信可能に構成されており、各搬送車Vの現在位置を把握可能となっている。また、上位制御装置Ctは、各区間制御装置Czと通信可能に構成されており、各区間制御装置Czから各特定区間Zに関する状況報告(交通状況などの報告)を受けることにより、各特定区間Zの状況を把握可能となっている。
【0017】
各区間制御装置Czは、自らが担当する特定区間Zにおいて、当該特定区間Zを走行する搬送車Vの制御を行うように構成されている。具体的には、区間制御装置Czは、自らが担当する特定区間Zにおいて複数の搬送車Vを互いに干渉しないように走行させる。例えば図3は、分岐箇所と合流箇所とを含む特定区間Zにおいて、当該特定区間Zを2台の搬送車V(一方を第1搬送車V1、他方を第2搬送車V2とする。)が走行している状態を示している。区間制御装置Czは、第1搬送車V1と第2搬送車V2とが同一の合流箇所を通過する予定である場合に、両者を異なるタイミングで通過させる。図3に示す例では、区間制御装置Czは、第1搬送車V1を先に合流箇所を通過させ、第2搬送車V2を減速或いは停止させるなどして第1搬送車V1よりも後に合流箇所を通過させるように、両者の走行を制御している。本実施形態では、区間制御装置Czは、自らが担当する特定区間Zを通過するための通過要求信号Sr(図5等参照)を送信してきた搬送車Vの走行を制御するように構成されている。詳細は後述する。
【0018】
上位制御装置Ct及び区間制御装置Czは、例えば、マイクロコンピュータ等のプロセッサ、メモリ等の周辺回路等を備えている。そして、これらのハードウェアとコンピュータ等のプロセッサ上で実行されるプログラムとの協働により、各処理または各機能が実現される。物品搬送設備100は、これら上位制御装置Ct及び区間制御装置Czを少なくとも含む制御系を備えている。この制御系は、上位制御装置Ct及び区間制御装置Cz以外にも、他の制御装置を含んでいてもよい。
【0019】
図4に示すように、物品搬送設備100では、特定区間Zを走行する搬送車Vを制御するための複数の制御モードが存在する。すなわち、上位制御装置Ct及び区間制御装置Czを含む制御系が実行する制御モードとして、通常制御モードと代替制御モードとが設定されている。本実施形態では、制御モードとして、通常制御モードと代替制御モードとに加えて、単独制御モードが設定されている。さらに、制御モードとして、上記の各モードに加えて、休止モードが設定されている。
【0020】
通常制御モードにおける制御主体は、区間制御装置Czであり、上位制御装置Ctが補助的に制御を行う。代替制御モードにおける制御主体は、上位制御装置Ctであり、区間制御装置Czは制御に関与しない。単独制御モードにおける制御主体は、区間制御装置Czであり、上位制御装置Ctは制御に関与しない。休止モードでは、区間制御装置Cz及び上位制御装置Ctの双方が制御に関与しない。詳細は後述するが、休止モードでは、例えば、作業者Wが搬送車Vを制御する(図9参照)。以下、各制御モードについて詳細に説明する。
【0021】
図5及び図6は、通常制御モードでの特定区間Zにおける搬送車Vの制御を示している。
【0022】
図5に示すように、通常制御モードは、特定区間Zにおける搬送車Vの制御が、当該特定区間Zを担当する区間制御装置Czによって行われるモードである。上位制御装置Ctと区間制御装置Czとの通信及び区間制御装置Czと搬送車Vとの通信が正常である場合、制御モードが通常制御モードとなる。すなわち、区間制御装置Czが制御主体となると共に上位制御装置Ctが区間制御装置Czを補助する通常制御モードでは(図4参照)、区間制御装置Czが、上位制御装置Ct及び搬送車Vの双方に対して通信可能な状態であることが求められる。
【0023】
図5(a)に示すように、本実施形態では、搬送車Vは、特定区間Z(詳細には特定区間Zにおける分岐箇所又は合流箇所。以下同じ。)よりも上流側において、当該特定区間Zの制御主体に対して、通過の許可を求めるための通過要求信号Srを送信するように構成されている。通常制御モードでは、搬送車Vは、これから通過しようとする特定区間Zに対応して設けられた区間制御装置Czに対して、通過要求信号Srを送信する。
【0024】
そして、通過要求信号Srを受信した区間制御装置Czは、当該通過要求信号Srを送信した搬送車Vの通過を許可する場合には、当該搬送車Vに対して、通過を許可するための通過許可信号Spを送信する。
【0025】
本実施形態では、区間制御装置Czは、通過要求信号Srを送信した搬送車V(後続搬送車)よりも先に通過要求信号Srを送信した他の搬送車V(先行搬送車)が存在し、当該他の搬送車V(先行搬送車)が特定区間Zを通過し終えていない場合には、後に通過要求信号Srを送信した搬送車V(後続搬送車)の特定区間Zの通過を許可しない。区間制御装置Czは、通過要求信号Srを送信した搬送車V(後続搬送車)に先行する他の搬送車V(先行搬送車)が存在していない場合、或いは他の搬送車V(先行搬送車)が存在していたとしてもそれが既に特定区間Zを通過し終えている場合には、後に通過要求信号Srを送信した搬送車V(後続搬送車)の特定区間Zの通過を許可する。
【0026】
区間制御装置Czからの通過許可信号Spを受信した搬送車Vは、特定区間Zを走行する。詳細な図示は省略するが、搬送車Vは、通過許可信号Spを受信できなかった場合、すなわち区間制御装置Czから特定区間Zの通過許可を与えられなかった場合は、特定区間Zよりも上流側で停止し、区間制御装置Czから特定区間Zの通過許可を与えられるまで待機する。
【0027】
図5(b)に示すように、搬送車Vは、特定区間Zを通過した後は、区間制御装置Czに対して、通過の完了を通知するための通過完了信号Scを送信する。通過完了信号Scを受信した区間制御装置Czは、次の搬送車Vを特定区間Zに受け入れ可能な状態となる。
【0028】
本実施形態では、通常制御モードが実行されている特定区間Zでは、当該特定区間Zを担当する区間制御装置Czによって搬送車Vの走行が制御されると共に、上位制御装置Ctによって区間制御装置Czの制御を補助する補助制御が実行される。図6は、通常制御モードにおいて上位制御装置Ctが区間制御装置Czを補助する例を、例2として示している。なお、上記説明で参照した図5は、通常制御モードにおいて上位制御装置Ctによる区間制御装置Czの補助がされない例を、例1として示すものである。以下、図6を参照して例2について説明する。
【0029】
図6(a)に示すように、搬送車Vは、区間制御装置Czに対して通過要求信号Srを送信する。通過要求信号Srを受信した区間制御装置Czは、当該通過要求信号Srを送信した搬送車Vの通過を許可する場合には、当該搬送車Vに対して通過許可信号Spを送信する。
【0030】
ここで、図6(b)に示すように、通過要求信号Srを送信した搬送車Vである対象搬送車Vから区間制御装置Czへのその後の応答がない場合がある。通信不良や故障等を原因としてこのようなことが起こり得る。搬送車Vとの間で特定区間Zの通過要求や通過許可のやり取りを主として行う区間制御装置Czにとっては、搬送車Vからの応答がない場合には、当該搬送車Vの存否が不明の状態に陥る。
【0031】
本実施形態では、区間制御装置Czは、対象搬送車Vから通過要求信号Srを受信した後、予め定められた規定期間が経過するまでに当該対象搬送車Vから通過完了信号Sc(応答)がない場合に、上位制御装置Ctに問い合わせを行う。この「規定期間」は、特定区間Zの距離や搬送車Vの走行速度などに基づいて適宜定められる。
【0032】
図6(c)に示すように、問い合わせを受けた上位制御装置Ctは、対象搬送車Vから取得した当該対象搬送車Vの現在位置情報Ivに基づいて特定区間Zにおける対象搬送車Vの存否を確認し、確認結果を区間制御装置Czに対して通知する。すなわち、上位制御装置Ctは、補助制御では、通過要求信号Srを送信した搬送車Vである対象搬送車Vから区間制御装置Czへのその後の応答がない場合に、特定区間Zにおける対象搬送車Vの存否を区間制御装置Czに対して通知する。上記構成により、搬送車Vから区間制御装置Czへの応答がない場合であっても、区間制御装置Czと上位制御装置Ctとの協働により、特定区間Zにおける搬送車Vの制御を、より一層適切に行うことができる。
【0033】
区間制御装置Czは、特定区間Zに対象搬送車Vが存在する旨の通知を上位制御装置Ctから受けた場合には、次の搬送車Vを特定区間Zに受け入れない。一方、区間制御装置Czは、対象搬送車Vが既に特定区間Zから退出している(存在していない)旨の通知を上位制御装置Ctから受けた場合には、次の搬送車Vを受け入れ可能な状態となる。
【0034】
図7は、代替制御モードでの特定区間Zにおける搬送車Vの制御を示している。
【0035】
図7に示すように、代替制御モードは、特定区間Zにおける搬送車Vの制御が、当該特定区間Zを担当する区間制御装置Czに代わって上位制御装置Ctによって行われるモードである。区間制御装置Czと上位制御装置Ctとの通信に異常がある場合、及び、区間制御装置Czと搬送車Vとの通信に異常がある場合の少なくとも一方の場合に、制御モードが代替制御モードとなる。すなわち、区間制御装置Czが、上位制御装置Ct及び搬送車Vの少なくとも一方に対して通信不能な状態である場合には、区間制御装置Czが関わる通信に異常があるか、或いは区間制御装置Cz自体の異常が認められる。そのため、このような場合には制御モードが代替制御モードとなり、区間制御装置Czに代わって、上位制御装置Ctが特定区間Zにおける搬送車Vの制御を行う。本実施形態では、区間制御装置Czと上位制御装置Ctとの通信に異常があり、且つ、区間制御装置Czと搬送車Vとの通信に異常がある場合に、制御モードが代替制御モードとなる。これにより、区間制御装置Czが関わる通信に異常が生じた旨の判定、或いは区間制御装置Cz自体が故障している旨の判定を確実性高く行うことができる。本例では、上記のように区間制御装置Czに関わる通信に異常がある場合に、上位制御装置Ctと搬送車Vとの通信が正常であることを更なる条件として、制御モードが代替制御モードとなる。
【0036】
代替制御モードの活用により、上位制御装置Ctが単独で特定区間Zにおける搬送車Vの制御を行うことができる。例えば、上記のような通信異常とは異なる原因、すなわち区間制御装置Czがメンテナンス中であることや、区間制御装置Czの納品遅れなどを原因として、区間制御装置Czが無い場合であっても、上位制御装置Ctの制御により搬送車Vを走行させることなどが可能となる。この他にも、例えば、物品搬送設備100を立ち上げる前などに、特定区間Zにおいて搬送車Vを試験的に走行させる場合においても、代替制御モードの活用によって上位制御装置Ctのみで搬送車Vを制御することが可能となる。
【0037】
本実施形態では、上位制御装置Ctは、代替制御モードが実行されている特定区間Zを通過する場合における通過要求信号Srの送信先を当該上位制御装置Ctとする旨を、複数の搬送車Vに通知する。これにより、走行経路Rの各所を走行している複数の搬送車Vのそれぞれにおいて、各特定区間Zを通過する場合に必要な通過要求信号Srの送信先を適切に設定することができる。従って、搬送車Vが、各特定区間Zを通過しようとする場合に、通過の認否を判断する権限を有する制御装置に対して円滑に通過の許可を求めることができる。
【0038】
本実施形態では、各特定区間Zにおける搬送車Vの通過の認否を判断する権限を有する制御装置は、代替制御モードが実行されている特定区間Zでは上位制御装置Ctであり、通常制御モードが実行されている特定区間Zでは当該特定区間Zの制御を担当する区間制御装置Czである。すなわち、複数の搬送車Vのそれぞれは、代替制御モードが実行されている特定区間Zを通過する場合には上位制御装置Ctに通過要求信号Srを送信する。一方、複数の搬送車Vのそれぞれは、代替制御モードが実行されていない特定区間Z(例えば通常制御モードが実行されている特定区間Z)を通過する場合には当該特定区間Zを担当する区間制御装置Czに通過要求信号Srを送信する。
【0039】
図7(a)に示すように、代替制御モードでは、搬送車Vは、特定区間Zよりも上流側において、上位制御装置Ctに対して、通過要求信号Srを送信する。そして、通過要求信号Srを受信した上位制御装置Ctは、当該通過要求信号Srを送信した搬送車Vの通過を許可する場合には、当該搬送車Vに対して、通過許可信号Spを送信する。
【0040】
図7(b)に示すように、上位制御装置Ctからの通過許可信号Spを受信した搬送車Vは、特定区間Zを走行する。そして、搬送車Vは、特定区間Zを通過した後は、上位制御装置Ctに対して、通過完了信号Scを送信する。通過完了信号Scを受信した上位制御装置Ctは、次の搬送車Vを特定区間Zに受け入れ可能な状態となる。
【0041】
特定区間Zにおいて代替制御モードが実行されている間に、異常が認められていた区間制御装置Czに対して修繕等の必要な処置が行われるなどして、区間制御装置Czが復旧可能な状態となれば、当該特定区間Zでの制御モードが代替制御モードから通常制御モードに移行する。本実施形態では、代替制御モードから通常制御モードへの移行が、上位制御装置Ctから区間制御装置Czへの制御指示が出力され、それに応じて区間制御装置Czから上位制御装置Ctへの応答があったことを条件として行われる。なお、代替制御モードにおいて、上位制御装置Ctは、区間制御装置Czから上記の応答があるまでの間、特定区間Zにおける搬送車Vの制御を継続する。そして、区間制御装置Czによる上記の応答があった場合に、上位制御装置Ctが特定区間Zにおける搬送車Vの制御を停止すると共に区間制御装置Czが当該制御を開始する。これにより、代替制御モードから通常制御モードへの移行を円滑に行うことができ、その結果、特定区間Zにおける搬送車Vの制御が行われない期間が生じることを避けることができる。
【0042】
以上のようにして、特定区間Zにおいて代替制御モードが実行される。上述のように、複数の特定区間Zのうち、上位制御装置Ct及び搬送車Vの少なくとも一方との通信に異常がある区間制御装置Czが設けられた特定区間Zでは、代替制御モードが実行される。そして本実施形態では、複数の特定区間Zのうち、上位制御装置Ct及び搬送車Vの双方との通信が正常である区間制御装置Czが設けられた特定区間Zでは、通常制御モードが実行される。
【0043】
図8は、単独制御モードでの特定区間Zにおける搬送車Vの制御を示している。
【0044】
図8に示すように、単独制御モードは、特定区間Zにおける搬送車Vの制御が、上位制御装置Ctによる補助制御無しで、当該特定区間Zを担当する区間制御装置Czの単独で行われるモードである。上位制御装置Ctの補助が無い場合であっても、単独制御モードの活用により、区間制御装置Czが単独で特定区間Zにおける搬送車Vの制御を行うことができる。例えば、上位制御装置Ctがメンテナンス中であることや、上位制御装置Ctの納品遅れなどを原因として、上位制御装置Ctが無い場合であっても、区間制御装置Czの制御により搬送車Vを走行させることなどが可能となる。この他にも、例えば、物品搬送設備100を立ち上げる前などに、特定区間Zにおいて搬送車Vを試験的に走行させる場合においても、単独制御モードの活用によって区間制御装置Czのみで搬送車Vを制御することが可能となる。
【0045】
図8(a)に示すように、単独制御モードでは、搬送車Vは、特定区間Zよりも上流側において、区間制御装置Czに対して、通過要求信号Srを送信する。そして、通過要求信号Srを受信した区間制御装置Czは、当該通過要求信号Srを送信した搬送車Vの通過を許可する場合には、当該搬送車Vに対して、通過許可信号Spを送信する。
【0046】
図8(b)に示すように、区間制御装置Czからの通過許可信号Spを受信した搬送車Vは、特定区間Zを走行する。そして、搬送車Vは、特定区間Zを通過した後は、区間制御装置Czに対して、通過完了信号Scを送信する。通過完了信号Scを受信した区間制御装置Czは、次の搬送車Vを特定区間Zに受け入れ可能な状態となる。
【0047】
図9は、休止モードでの特定区間Zにおける搬送車Vの制御を示している。
【0048】
図9に示すように、休止モードは、特定区間Zにおける搬送車Vの制御を、上位制御装置Ct及び区間制御装置Czの双方が行わないモードである。例えば、休止モードでは、特定区間Zにおける搬送車Vの制御が、作業者Wによって行われる。図9(a)、(b)に示すように、作業者Wによる操作端末Cwの操作によって搬送車Vに操作信号Smが送信され、当該操作信号Smに基づいて搬送車Vが制御される。本例における休止モードでは、操作端末Cwから搬送車Vに対して一方的に操作信号Smが送信され、上述の通過要求信号Srや通過完了信号Scは、搬送車Vから送信されない。但し、これは例示に過ぎず、搬送車Vから操作端末Cwに信号が送信される構成を排除するものではない。
【0049】
この休止モードを活用することにより、上位制御装置Ct及び区間制御装置Czに対するメンテナンス等の作業を行うことができる。そして、このような作業が行われているなかでも、例えば作業者Wが操作端末Cwを用いることで、特定区間Zにおける搬送車Vの制御が可能となる。
【0050】
以上では、搬送車Vが、上位制御装置Ctまたは区間制御装置Czに対して、通過要求信号Srや通過完了信号Scを送信する構成について説明した。本実施形態では、搬送車は、上位制御装置Ct及び区間制御装置Czのそれぞれに対して、規定の通信周期で信号を送信するように構成されている。すなわち、搬送車Vは、上位制御装置Ctまたは区間制御装置Czに対して信号を送信し、それについての応答がない場合には、再度信号を送信する。このように、搬送車Vが信号を送信して次の信号を送信するまでの期間が、通信周期である。
【0051】
例えば、搬送車Vが特定区間Zの通過許可を求める場合に送信する通過要求信号Srについては、その通信周期が短いほど、搬送車Vが単位時間当たりに通過許可を与えられる機会を多く確保できるので好ましい。一方で、これには、通過要求信号Srを受信する側の制御装置(上位制御装置Ct又は区間制御装置Cz)の処理負荷が大きくなるという問題があり、走行経路Rの全体を統括して管理している上位制御装置Ctの場合はその問題が顕著となる。
【0052】
そこで、図10に示すように、本実施形態では、搬送車Vと上位制御装置Ctとの通信周期である第1通信周期T1が、搬送車Vと区間制御装置Czとの通信周期である第2通信周期T2よりも長く設定されている。
【0053】
これにより、搬送車Vと上位制御装置Ctとの単位時間当たりの通信回数を、搬送車Vと区間制御装置Czとの単位時間当たりの通信回数よりも少なくすることができる。そのため、搬送車Vと上位制御装置Ctとの間で通信することが必要となった場合であっても、上位制御装置Ctの処理負荷が大きくなり過ぎないようにできる。反対に、搬送車Vと区間制御装置Czとの単位時間当たりの通信回数を、搬送車Vと上位制御装置Ctとの単位時間当たりの通信回数よりも多くすることができるため、例えば搬送車Vが区間制御装置Czから通過許可を与えられる機会を多く確保し易くなる。
【0054】
〔その他の実施形態〕
次に、物品搬送設備のその他の実施形態について説明する。
【0055】
(1)上記の実施形態では、代替制御モードから通常制御モードへの移行が、上位制御装置Ctから区間制御装置Czへの制御指示が出力され、それに応じて区間制御装置Czから上位制御装置Ctへの応答があったことを条件として行われる例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、区間制御装置Czからの応答を待つことなく代替制御モードから通常制御モードへの移行が行われてもよい。
【0056】
(2)上記の実施形態では、複数の特定区間Zのうち、上位制御装置Ct及び搬送車Vの双方との通信が正常である区間制御装置Czが設けられた特定区間Zでは、通常制御モードが実行される例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、上位制御装置Ct及び搬送車Vの双方との通信が正常である区間制御装置Czが設けられた特定区間Zであっても、通常制御モードではなく、代替制御モードを実行するようにしてもよい。
【0057】
(3)上記の実施形態では、上位制御装置Ctは、代替制御モードが実行されている特定区間Zを通過する場合における通過要求信号Srの送信先を当該上位制御装置Ctとする旨を、複数の搬送車Vに通知し、複数の搬送車Vのそれぞれは、代替制御モードが実行されている特定区間Zを通過する場合には上位制御装置Ctに通過要求信号Srを送信する例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、上位制御装置Ctは、搬送車Vに対する予めの通知を行わなくてもよい。搬送車Vは、代替制御モードが実行されている特定区間Zを担当していた区間制御装置Czに対して一旦通過要求信号Srを送信し、区間制御装置Czからの応答がない場合に(代替制御モードの実行中なので当然応答はない)、上位制御装置Ctに通過要求信号Srを送信するようにしてもよい。
【0058】
(4)上記の実施形態では、搬送車Vと上位制御装置Ctとの通信周期である第1通信周期T1が、搬送車Vと区間制御装置Czとの通信周期である第2通信周期T2よりも長く設定されている例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、第1通信周期T1と第2通信周期T2とは、同等であってもよい。
【0059】
(5)上記の実施形態では、制御モードとして、通常制御モードと代替制御モードとに加えて、単独制御モードと休止モードとが設定されている例について説明した。しかし、単独制御モードと休止モードとは必須のモードではない。
【0060】
(6)なお、上述した実施形態で開示された構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示された構成と組み合わせて適用することも可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎない。従って、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。
【0061】
〔上記実施形態の概要〕
以下、上記において説明した物品搬送設備について説明する。
【0062】
物品を搬送する搬送車と、
前記搬送車が走行する経路であって、分岐箇所及び合流箇所の少なくとも一方を含む特定区間を備えた走行経路と、
複数の前記特定区間のそれぞれに対応して設けられ、前記特定区間を走行する前記搬送車の制御を行う区間制御装置と、
前記搬送車及び複数の前記区間制御装置を制御する上位制御装置と、を備え、
前記搬送車と複数の前記区間制御装置と前記上位制御装置とが通信可能に構成された物品搬送設備であって、
前記上位制御装置及び前記区間制御装置を含む制御系が実行する制御モードとして、通常制御モードと代替制御モードとが設定され、
前記通常制御モードは、前記特定区間における前記搬送車の制御が、当該特定区間を担当する前記区間制御装置によって行われるモードであり、
前記代替制御モードは、前記特定区間における前記搬送車の制御が、当該特定区間を担当する前記区間制御装置に代わって前記上位制御装置によって行われるモードであり、
前記上位制御装置と前記区間制御装置との通信及び前記区間制御装置と前記搬送車との通信が正常である場合、前記制御モードが前記通常制御モードとなり、
前記区間制御装置と前記上位制御装置との通信に異常がある場合、及び、前記区間制御装置と前記搬送車との通信に異常がある場合の少なくとも一方の場合に、前記制御モードが前記代替制御モードとなる。
【0063】
本構成によれば、上位制御装置と区間制御装置との通信及び区間制御装置と搬送車との通信が正常である場合には、制御モードが通常制御モードとなることにより、特定区間における搬送車の制御を区間制御装置によって適切に行うことができる。このように、通信が正常である通常の状態では、特定区間における搬送車の制御が当該区間制御装置によって行われるため、上位制御装置の処理負荷も軽減できる。一方で、区間制御装置と上位制御装置との通信に異常がある場合、及び、区間制御装置と搬送車との通信に異常がある場合の少なくとも一方の場合には、制御モードが代替制御モードとなることにより、特定区間における搬送車の制御が、当該特定区間を担当する区間制御装置に代わって上位制御装置によって行われる。従って、区間制御装置が、通信異常によって、自らが担当する特定区間における搬送車の制御を行えない場合であっても、上位制御装置が搬送車を適切に制御することができる。以上より、本構成によれば、制御系に通信障害や故障等の異常が生じた場合であっても、分岐箇所及び合流箇所の少なくとも一方を含む特定区間を走行する搬送車を適切に制御することが可能となる。
【0064】
前記区間制御装置と前記上位制御装置との通信に異常があり、且つ、前記区間制御装置と前記搬送車との通信に異常がある場合に、前記制御モードが前記代替制御モードとなる、と好適である。
【0065】
本構成によれば、区間制御装置が関わる通信に異常が生じた旨の判定を確実性高く行うことができる。
【0066】
前記代替制御モードから前記通常制御モードへの移行が、前記上位制御装置から前記区間制御装置への制御指示が出力され、それに応じて前記区間制御装置から前記上位制御装置への応答があったことを条件として行われ、
前記代替制御モードにおいて、前記上位制御装置は、前記区間制御装置から前記応答があるまでの間、前記特定区間における前記搬送車の制御を継続する、と好適である。
【0067】
本構成によれば、代替制御モードから通常制御モードへの移行を円滑に行うことができる。そして、特定区間における搬送車の制御が行われない期間が生じることを避けることができる。
【0068】
複数の前記特定区間のうち、前記上位制御装置及び前記搬送車の少なくとも一方との通信に異常がある前記区間制御装置が設けられた前記特定区間では、前記代替制御モードが実行され、
複数の前記特定区間のうち、前記上位制御装置及び前記搬送車の双方との通信が正常である前記区間制御装置が設けられた前記特定区間では、前記通常制御モードが実行される、と好適である。
【0069】
本構成によれば、複数の特定区間のそれぞれの状況に応じて適切な制御モードを実行することができる。
【0070】
前記搬送車を複数備え、
前記区間制御装置は、自らが担当する前記特定区間を通過するための通過要求信号を送信してきた前記搬送車の走行を制御するように構成され、
前記上位制御装置は、前記代替制御モードが実行されている前記特定区間を通過する場合における前記通過要求信号の送信先を当該上位制御装置とする旨を、複数の前記搬送車に通知し、
複数の前記搬送車のそれぞれは、前記代替制御モードが実行されている前記特定区間を通過する場合には前記上位制御装置に前記通過要求信号を送信し、前記代替制御モードが実行されていない前記特定区間を通過する場合には当該特定区間を担当する前記区間制御装置に前記通過要求信号を送信する、と好適である。
【0071】
本構成によれば、走行経路の各所を走行している複数の搬送車のそれぞれにおいて、各特定区間を通過する場合に必要な通過要求信号の送信先を適切に設定することができる。従って、搬送車が、各特定区間を通過しようとする場合に、通過の認否を判断する権限を有する制御装置に対して円滑に通過の許可を求めることができる。
【0072】
前記搬送車は、前記上位制御装置及び前記区間制御装置のそれぞれに対して、規定の通信周期で信号を送信するように構成され、
前記搬送車と前記上位制御装置との前記通信周期である第1通信周期が、前記搬送車と前記区間制御装置との前記通信周期である第2通信周期よりも長く設定されている、と好適である。
【0073】
本構成によれば、搬送車と上位制御装置との単位時間当たりの通信回数を、搬送車と区間制御装置との単位時間当たりの通信回数よりも少なくすることができる。従って、搬送車と上位制御装置との間で通信することが必要となった場合であっても、上位制御装置の処理負荷が大きくなり過ぎないようにできる。
【0074】
前記通常制御モードが実行されている前記特定区間では、当該特定区間を担当する前記区間制御装置によって前記搬送車の走行が制御されると共に、前記上位制御装置によって前記区間制御装置の制御を補助する補助制御が実行され、
前記上位制御装置は、前記補助制御では、通過要求信号を送信した前記搬送車である対象搬送車から前記区間制御装置へのその後の応答がない場合に、前記特定区間における前記対象搬送車の存否を前記区間制御装置に対して通知する、と好適である。
【0075】
本構成によれば、区間制御装置と上位制御装置との協働により、特定区間における搬送車の制御を、より一層適切に行うことができる。
【0076】
前記制御モードとして、前記通常制御モードと前記代替制御モードとに加えて、単独制御モードが設定され、
前記単独制御モードは、前記特定区間における前記搬送車の制御が、前記上位制御装置による前記補助制御無しで、当該特定区間を担当する前記区間制御装置の単独で行われるモードである、と好適である。
【0077】
本構成によれば、上位制御装置の補助が無い場合であっても、区間制御装置単独で特定区間における搬送車の制御を行うことができる。例えば、上位制御装置がメンテナンス中であることや、上位制御装置の納品遅れなどを原因として、上位制御装置が無い場合であっても、区間制御装置の制御により搬送車を走行させることなどが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本開示に係る技術は、物品を搬送する搬送車と、分岐箇所及び合流箇所の少なくとも一方を含む特定区間を備えた走行経路と、前記特定区間を走行する前記搬送車の制御を行う区間制御装置と、を備えた物品搬送設備に利用することができる。
【符号の説明】
【0079】
100 :物品搬送設備
Ct :上位制御装置
Cz :区間制御装置
V :搬送車
R :走行経路
Z :特定区間
Sr :通過要求信号
T1 :第1通信周期
T2 :第2通信周期
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10