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特開2024-129422コンクリート組成物の製造方法及び混合材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129422
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】コンクリート組成物の製造方法及び混合材
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/02 20060101AFI20240919BHJP
   C04B 18/10 20060101ALI20240919BHJP
   C04B 22/06 20060101ALI20240919BHJP
【FI】
C04B28/02
C04B18/10 B
C04B22/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038629
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】塚本 康誉
【テーマコード(参考)】
4G112
【Fターム(参考)】
4G112MA00
4G112PA26
4G112PB03
(57)【要約】
【課題】多孔質炭化物を混練することのできるコンクリートの製造方法、混合材を提供する。
【解決手段】コンクリート組成物の製造方法は、多孔質炭化物にアルカリ水溶液を含浸させ、アルカリ水溶液が含浸された多孔質炭化物を乾燥させてアルカリ水溶液の成分を析出させ、アルカリ水溶液の析出物が担持された多孔質炭化物を、セメント、水、骨材、混和剤と共に混練する、ことを含む。混合材は、多孔質炭化物と水酸化カルシウムとを含み、水酸化カルシウムが多孔質炭化物の孔内及び表面に析出している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質炭化物にアルカリ水溶液を含浸させ、
前記アルカリ水溶液が含浸された多孔質炭化物を乾燥させて前記アルカリ水溶液の成分を析出させ、
前記アルカリ水溶液の析出物が担持された多孔質炭化物を、セメント、水、骨材、混和剤と共に混練する、コンクリート組成物の製造方法。
【請求項2】
前記アルカリ水溶液に加え、表面改質剤、遅延剤、及び収縮低減剤のいずれか一つ以上を含む溶液に前記多孔質炭化物を含浸させる、請求項1に記載のコンクリート組成物の製造方法。
【請求項3】
前記アルカリ水溶液に代えて、表面改質剤、遅延剤、及び収縮低減剤のいずれか一つ以上を含む水溶液を用いる、請求項1に記載のコンクリート組成物の製造方法。
【請求項4】
前記アルカリ水溶液が水酸化カルシウム水溶液である、請求項1又は2に記載のコンクリート組成物の製造方法。
【請求項5】
前記乾燥により、前記多孔質炭化物の孔内及び表面に水酸化カルシウムの結晶を析出させる、請求項4に記載のコンクリート組成物の製造方法。
【請求項6】
前記乾燥を、大気圧下又は減圧下で行う、請求項1に記載のコンクリート組成物の製造方法。
【請求項7】
前記多孔質炭化物がバイオ炭である、請求項1に記載のコンクリート組成物の製造方法。
【請求項8】
多孔質炭化物と水酸化カルシウムとを含み、前記水酸化カルシウムが前記多孔質炭化物の孔内及び表面に析出している、混合材。
【請求項9】
前記多孔質炭化物がバイオ炭である、請求項8に記載の混合材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は多孔質炭化物を混練するコンクリートの製造方法に関する。また、本発明はコンクリートに混練する多孔質炭化物を含む混合材に関する。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化対策として日本政府の地球温暖化対策推進本部は、2030年度の温室効果ガスの排出量を2013年度比で26%削減するという目標を掲げている。このような背景から地球温暖化ガスである二酸化炭素を削減する取り組みが各方面で進められている。
【0003】
建築資材として大量に消費されるコンクリートは製造過程で二酸化炭素を大量に排出することが指摘されている。具体的に、1トンのセメントを製造する時に排出される二酸化炭素は約770kgとされており、1mのコンクリートに約350kgのセメントが使われるとすると、コンクリート1m当たり約270kgの二酸化炭素が排出されるとの試算がある。
【0004】
ところで、脱炭素社会実現の観点から化石資源を消費するのではなく、再生可能な生物由来の有機性資源で発電を行うバイオマス発電が注目されている。例えば、大気中の二酸化炭素をバイオマスとして回収し、エネルギー変換後にその副生成物を有効利用する木質バイオマスのカスケード利用が提案されている(非特許文献1参照)。バイオマス発電の副生成物の有効利用という観点から、例えば、バイオマス燃焼灰を混合セメント組成物に含有させる技術が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-154583号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】“木質バイオマスのカスケード利用による分散型炭素貯留技術”、インターネット<URL:https://www.challenge-zero.jp/jp/casestudy/257>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
木質バイオマスガス化発電では、例えば、木材(チップやペレット)をガス化炉にて高温で蒸し焼きにし、高温で加熱分解させることより可燃性ガスを発生させ、ガスエンジンにて発電が行われている。木材を高温で蒸し焼きにした後に残される灰はバイオ炭と呼ばれている。バイオ炭は微細孔を有する多孔質体であり、保水性や吸水性が高いことが知られている。
【0008】
バイオ炭をコンクリートの混和物として用いる場合、バイオ炭の特性である吸水性が問題となる。すなわち、コンクリートを製造する際に混和材としてバイオ炭を用いると、バイオ炭が水を吸水し、さらに化学混和剤を吸着してしまうので、コンクリートの調合設計が困難になるという問題がある。
【0009】
このような問題に鑑み、本発明は、バイオ炭のような多孔質炭化物を混練することのできるコンクリートの製造方法を提供することを目的の一つとする。また、本発明は、コンクリートの混合材として用いることのできる多孔質炭化物を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態に係るコンクリート組成物の製造方法は、多孔質炭化物にアルカリ水溶液を含浸させ、アルカリ水溶液が含浸された多孔質炭化物を乾燥させてアルカリ水溶液の成分を析出させ、アルカリ水溶液の析出物が担持された多孔質炭化物を、セメント、水、骨材、混和剤と共に混練する、ことを含む。
【0011】
本発明の一実施形態において、アルカリ水溶液に加え、表面改質剤、遅延剤、及び収縮低減剤のいずれか一つ以上を含む溶液に多孔質炭化物を含浸させてもよく、アルカリ水溶液に代えて、表面改質剤、遅延剤、及び収縮低減剤のいずれか一つ以上を含む水溶液を用いてもよい。
【0012】
本発明の一実施形態において、アルカリ水溶液が水酸化カルシウム水溶液であってもよい。
【0013】
本発明の一実施形態において、乾燥により、多孔質炭化物の孔内及び表面に水酸化カルシウムの結晶を析出させることが好ましく、乾燥が大気圧下又は減圧下で行われてもよい。
【0014】
本発明の一実施形態において、多孔質炭化物がバイオ炭であってもよい。
【0015】
本発明の一実施形態に係る混合材は、多孔質炭化物と水酸化カルシウムとを含み、水酸化カルシウムが多孔質炭化物の孔内及び表面に析出している。
【0016】
本発明の一実施形態において、多孔質炭化物がバイオ炭であってもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一実施形態によれば、多孔質炭化物にアルカリ水溶液の成分を担持させることで、コンクリートの混練時に吸水性を低減させ、化学混和剤の吸着を低減させることができる。アルカリ水溶液の成分を担持する多孔質炭化物は、コンクリートのアルカリ性を高めることができ、コンクリートの強度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係るコンクリート組成物の製造方法を説明する図である。
図2】本発明の一実施形態に係る、(A)混合材を説明する図、(B)コンクリート構造体を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を、図面等を参照しながら説明する。但し、本発明は多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に例示する実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の長さ、幅、厚さ、大きさ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号(又は数字の後にa、bなどを付した符号)を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。さらに各要素に対する「第1」、「第2」と付記された文字は、各要素を区別するために用いられる便宜的な標識であり、特段の説明がない限りそれ以上の意味を有しない。
【0020】
以下の説明において、特に断りのない限り、本開示に係るコンクリート組成物は、骨材として細骨材のみを含むモルタルと、細骨材及び粗骨材をともに含むコンクリートとの双方を含むものとする。また、コンクリート組成物とは、文脈に応じて、硬化前の粘性を有するコンクリート(フレッシュコンクリート)を指す場合と、硬化後の粘性を有しないコンクリート(硬化コンクリート)を指す場合とがある。
【0021】
本発明の一実施形態に係るコンクリート組成物の製造方法は、コンクリート組成物に添加する混和材を作製する段階と、作製された混和材を添加してコンクリート組成物を混練する段階とを含む。
【0022】
1.コンクリート組成物の製造方法
図1は、本実施形態に係るコンクリート組成物の製造方法を示す。本実施形態に係るコンクリート組成物の製造方法は、コンクリート組成物を混練するときに添加する混合材を作製する工程と、作製された混合材を、水、セメント、骨材、及び混和剤と共に混練する工程とを含む。本実施形態に係る混合材は多孔質炭化物を用いて作製される。
【0023】
混合材を作製するために、含浸液を調製する(S200)。含浸液は、多孔質炭化物を改質するための溶液である。本実施形態において、多孔質炭化物の改質とは、多孔質炭化物の保水性、吸水性を低下させることを意図している。
【0024】
含浸液は、セメントの成分に含まれる元素を含む水溶液、又はコンクリートに添加される成分を含む水溶液、若しくはセメントの成分に含まれる元素及びコンクリートに添加される成分を含む水溶液であることが好ましい。また、含浸液は、コンクリートのアルカリ性を低下させないためにアルカリ性を有する溶液であることが好ましい。含浸液は、アルカリ水溶液を用いて調製される。アルカリ水溶液として、例えば、水酸化物の水溶液を用いることができ、具体的には水酸化カルシウム水溶液を用いることができる。また、含浸液として、コンクリートの表面改質剤を含む水溶液、遅延剤を含む水溶液、収縮低減剤を含む溶液が用いられてもよい。また、含浸液として、アルカリ水溶液に、表面改質剤、遅延剤、及び尿素やグルコールエーテル系誘導体といった収縮低減剤から選ばれたいずれか一種又は複数種の混和剤が添加された水溶液が用いられてもよい。
【0025】
含浸液の濃度、アルカリ度に限定はない。アルカリ水溶液は、例えば、pH=9~13程度を有していることが好ましい。例えば、含浸液として水酸化カルシウム水溶液を用いるとき、その飽和水溶液が用いられてもよい。
【0026】
そして、多孔質炭化物を含浸液に浸漬する処理を行う(S202)。この浸漬処理は、多孔質炭化物の孔内にアルカリ水溶液を浸透させるために行われる。多孔質炭化物として、例えば、バイオ炭が用いられる。バイオ炭とは、木炭、竹炭、おが炭、ヤシ炭、もみ殻炭といった生物資源を材料とした炭化物であり、燃焼しない水準に管理された酸素濃度の下、350℃を超えるの温度でバイオマスを加熱して作られる固形物である。
【0027】
多孔質炭化物は微細な細孔を有するが、大気中で保存されていると細孔の中にも空気が入っているため、含浸液に浸漬しても細孔内に溶液が浸透し難い状態となっている。そこで、多孔質炭化物の細孔に含浸液を浸透させるために、この処理は減圧下で行われてもよい。例えば、減圧容器に含浸液が入った容器をセットし、多孔質炭化物を含浸液に浸漬させた後、減圧容器を真空排気することで、細孔の空気が脱気され、含浸液を細孔内に浸透させることができる。また、耐圧容器に含浸液が入った容器をセットし、多孔質炭化物を含浸液に浸漬させた後、耐圧容器を大気圧以上の圧力に加圧することで、細孔の中に含浸液を強制的に浸透させるようにしてもよい。
【0028】
また、多孔質炭化物を含浸液に浸漬させた後、数分間から数位時間に亘って煮沸させてもよい。このような処理によっても、多孔質炭化物の細孔の中に含浸液を浸透させることができる。
【0029】
次に、含浸液から多孔質炭化物を取り出して、多孔質炭化物を濡れた状態から乾燥する処理が行われる(S204)。多孔質炭化物の乾燥は、大気圧下で自然乾燥させても良いし、天日干ししてもよいし、温風を吹き付けて乾燥させてもよい。含浸液から取り出された多孔質炭化物を乾燥機に入れて、40~100℃で乾燥させてもよい。また、含浸液から取り出された多孔質炭化物を減圧下で乾燥させてもよい。
【0030】
含浸液から取り出された多孔質炭化物を乾燥させ、含浸液に含まれ成分が多孔質炭化物の表面及び細孔の中に析出させる。例えば、含浸液として水酸化カルシウム水溶液を用いた場合、乾燥によって表面及び細孔の中に水酸化カルシウムの結晶を析出させることができる。このようにして表面及び細孔に含浸液の成分が析出された多孔質炭化物から成る混合材が作製される(S206)。
【0031】
上記のようにして準備された混合材を、水、セメント、骨材(粗骨材、細骨材)、混和剤などと共に混練することでコンクリート組成物の製造が行われる(S208)。
【0032】
なお、本実施形態で作製される混合材は、粘性のあるフレッシュコンクリートの状態であればいつでも添加することができる。例えば、コンクリート組成物の混練時のみでなく、アジテータ車で搬送する段階で混合材が添加されてもよい。
【0033】
本実施形態に係るコンクリート組成物の製造方法によれば、多孔質炭化物に含浸液であるアルカリ水溶液や、含浸液に含まれる表面改質剤を含浸させ、乾燥過程で多孔質炭化物の表面及び細孔の中にその析出物を生成することで、コンクリート組成物を混練するときに添加される水の吸水、混和剤の吸着を抑えつつ炭素をコンクリートに固定することができる。
【0034】
含浸液としてアルカリ水溶液を用いた場合には、コンクリートのアルカリ性を高めることができ、コンクリートの強度増進を図ることができる。含浸液に表面改質剤を含ませた場合には、コンクリートの耐久性を高めることができ、含浸液に遅延剤を含ませた場合には、セメント化学反応に作用してコンクリートの凝結遅延を引き起こすことができ、打設可能な時間を延ばすことができる。また、含浸液に収縮低減剤を含ませた場合には、コンクリートの乾燥収縮量を低減することができる。
【0035】
2.多孔質炭化物
図2(A)は、上記のようにして作製された混合材100の構造を模式的に示す。混合材100は、多孔質炭化物102と析出物104とを含む。別言すれば、混合材100は、含浸液の析出物104が担持された多孔質炭化物102によって形成される。
【0036】
多孔質炭化物102は細孔1022を有している。多孔質炭化物102として、バイオマスを低酸化濃度で加熱して炭化することによって得られるバイオ炭を用いることができるが、炭化物の多孔質材であればこれに限定されるものではない。多孔質炭化物102は、固定炭素が概ね20~90%、揮発成分は5~60%、灰分は0.1~50%の粉末形状であってもよい。
【0037】
多孔質炭化物102の大きさ、形状に限定はなく、例えば、平均粒径は1μm以上50mm以下、又は1μm以上1mm以下のものを用いることができる。
【0038】
図2(A)に示すように、多孔質炭化物102は細孔1024有する。細孔1024は、孔径によってマクロ孔、メソ孔、及びミクロ孔に分類することができる。マクロ孔は、多孔質炭化物102の表面1021に繋がる孔である。多孔質炭化物102の内部において、マクロ孔が細分化されてメソ孔が形成されており、メソ孔が細分化されてミクロ孔が形成される。マクロ孔のサイズは、概略50nm~40μmであり、メソ孔のサイズは、概略2nm~50nmであり、ミクロ孔のサイズは、概略0.5nm~2nmである。
【0039】
多孔質炭化物102の表面1021及び細孔1022には、含浸液に浸漬された状態から乾燥処理が行われたことにより、析出物104が付着している。析出物104は、多孔質炭化物102の表面1021の全面を覆うように付着していてもよいし、表面1021に部分的に付着していてもよい。また、析出物104は、多孔質炭化物102の細孔1022の中に析出していることが好ましい。析出物104は、多孔質炭化物102の細孔1022を埋めるように、また、細孔1022を塞ぐように析出していることが好ましい。
【0040】
含浸液として水酸化カルシウム水溶液を用いた場合、析出物104として水酸化カルシウムの結晶が析出する。また、含浸液に表面改質剤、遅延剤、収縮低減剤などが含まれる場合、これらの成分が析出物104として析出する。
【0041】
3.コンクリート構造体
図2(B)は、本実施形態に係るコンクリート組成物の製造方法を経て作製されたコンクリート構造体200の構造を模式的に示す。コンクリート構造体200は、セメント202、粗骨材204、細骨材206、及び混合材100を含む。また、図示されないが、コンクリート構造体200には混和剤が含まれていてもよい。また、コンクリート構造体200には、フライアッシュ、高炉スラグ微粉末、膨張材などの混和材が含まれていてもよい。
【0042】
混合材100は、図2(A)に模式的に示すような構造を有するが、析出物104の一部又は全部がコンクリート組成物の混練時に水の中に溶解してもよい。この場合、コンクリート構造体200には多孔質炭化物102が含まれるが、多孔質炭化物102の表面1021や細孔1022の中に析出物104が残存しないこともある。
【0043】
本実施形態に係る混合材100は、多孔質炭化物102を用いつつ、その表面1021及び細孔1022に含浸液の析出物104が付着した構造を有することで、コンクリート組成物の混練時に混合させても、水や化学混和剤の吸着を防ぐことができ、コンクリートの調合設計を乱すことなく相当量の炭素をコンクリートに固定することができる。
【0044】
別言すれば、本実施形態に係るコンクリート組成物の製造方法は、コンクリート組成物の混練時に多孔質炭化物102を添加してコンクリート構造体の中に炭素を固定するための製造方法であって、多孔質炭化物の表面1021及び細孔1022内に含浸液の析出物104を付着させる処理を伴うことで、混練時に多孔質炭化物102の吸水や化学混和剤の吸着を防ぐことができ、炭素を固定しつつ、設計された調合比率通りのコンクリート組成物を提供することができる。
【0045】
4.各要素の説明
以下に、本実施形態のコンクリート組成物の製造方法、混合材に係る各要素の詳細を説明する。
【0046】
4-1.セメント
セメントはコンクリート組成物を構成する主成分であり、一般的には、水と水和、重合することで硬化する粉体を指す。本実施形態において使用されるセメントに限定はないが、例えば、ポルトランドセメント、高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメントなどの公知のセメント又はそれらの混合物を使用することができる。
【0047】
セメントの量はコンクリート組成物を製造する際の混合比率において、適宜設定することができる。しかしセメントの含有量が高すぎると自己収縮が大きくなるため、ひび割れしやすくなり、低すぎると他の混合物を均一結合させることができず強度が不足しやすくなる。したがって、コンクリート組成物1m3あたり250~450kgの含有量となるように混合されることが好ましい。
【0048】
4-2.水
水は、凝結補助剤としてセメントの硬化を補助する成分である。また、コンクリート組成物の流動性を調整し、鉄筋の間に流し込みしやすくする成分である。水は、コンクリート組成物を製造する際の混合比率において、含有量が高すぎると乾燥時の収縮が大きくなりひび割れしやすくなり、低すぎるとコンクリート組成物の流動性が低下し、打設しにくくなる。したがって、水は、コンクリート組成物1m当たり150~185kgの含有量となるように混合されることが好ましい。使用する水としては、水道水、工業用水、回収水、地下水などを使用することができる。
【0049】
4-3.骨材
骨材は、セメント、水と一緒にコンクリートの調合に必要な砂利や砂である。骨材の割合を適宜調製することにより、コンクリートの収縮を低減し、発熱を抑制し、剛性を与え、耐磨耗性を与えることができる。骨材は粒径により粗骨材と細骨材とに分類され、例えば平均粒径が5.0mm以上のものを粗骨材、5.0mm以下のものを細骨材と呼ばれている。骨材としては、川砂、海砂、砕砂、人工細骨材、スラグ細骨材、再生骨材、珪砂、川砂利、陸砂利、砕石、人工粗骨材、スラグ粗骨材、及び再生粗骨材砂、などを使用することができる。
【0050】
骨材は、コンクリート組成物を製造する際の混合比率において、含有量が高すぎると骨材分離が生じやすく荒々しいコンクリートとなるが、低すぎるとコンクリートの流動性が低下する。したがって、骨材は、コンクリート組成物1mあたり1000~2500kg含有するように混合されることが好ましい。
【0051】
4-4.混和材
混和材は、セメントとともに混合されるコンクリートを構成する成分の1つであり、コンクリート組成物の品質を向上させるために混合される。一般的には高炉スラグ微粉末、火山灰、フライアッシュ、シリカフュームなどが利用される。また、本実施形態で説明される多孔質炭化物も混和材に分類されてもよい。
【0052】
混和材は、コンクリート組成物を製造する際の混合比率において、含有量が高すぎると中性化抵抗性が低下する。したがって、混和材は、コンクリート組成物1mあたり0.1~300kg含有するように混合されることが好ましい。また、混和材は、セメントに対して0.1~5wt%、または0.1~2.5wt%の混合比率とすることが好ましい。
【0053】
4-5.混和剤
混和剤(化学混和剤)は、ワーカビリティーの改善、強度や耐久性の向上、凝結速度の調整(乾燥収縮ひび割れ予防)などを目的にした薬剤の総称である。混和剤として、AE剤(空気連行機能)、減水剤、高性能減水剤(減水機能)、AE減水剤(空気連行及び減水機能)、高性能AE減水剤(空気連行、減水、及びスランプ保持機能)、流動化剤(スランプ増大機能)、硬化促進剤(水和促進機能)、遅延剤、超遅延剤(水和抑制機能)、水中不分離性混和剤・増粘剤(増粘機能)、収縮低減剤(収縮低減機能)、鉄筋コンクリート用防錆剤(防錆機能)、防水剤(防水機能)、発泡剤、起泡剤(発泡、起泡機能)などが例示される。これらの混和剤は1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0054】
以上のように、本実施形態に係るコンクリート組成物の製造方法によれば、コンクリート組成物を混練するときに多孔性炭化物を添加しても、多孔性炭化物の表面及び細孔の中にコンクリートに含まれる成分と同じ成分の析出物が付着していることにより、吸水、混和剤の吸着を防ぐことができ、コンクリートの調合設計を容易にすることができ、コンクリート組成物の品質を一定に保つことができる。
【0055】
本実施形態に係る混合材によれば、水酸化カルシウムのようなアルカリ結晶を析出させた場合には、コンクリートのアルカリ性を高めることができ強度の増進を図ることができる。また、多孔質炭化物に表面改質材の成分を析出させた場合には、コンクリートの耐久性を高めることができ、遅延剤の成分を析出させた場合には、セメント化学反応に作用してコンクリートの凝結遅延を引き起こすことができ、収縮低減剤の成分を析出させた場合には、コンクリートの乾燥収縮量を低減することができる。
【符号の説明】
【0056】
100:混合材、102:多孔質炭化物、1021:表面、1022:細孔、104:析出物、200:コンクリート構造体、202:セメント、204:粗骨材、206:細骨材
図1
図2