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  • 特開-空調システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129426
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】空調システム
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/54 20180101AFI20240919BHJP
   F24F 11/38 20180101ALI20240919BHJP
   F24F 11/76 20180101ALI20240919BHJP
【FI】
F24F11/54
F24F11/38
F24F11/76
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038635
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】593063161
【氏名又は名称】株式会社NTTファシリティーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】白川 拓也
(72)【発明者】
【氏名】宇田川 陽介
(72)【発明者】
【氏名】二渡 直樹
(72)【発明者】
【氏名】舘林 恵介
【テーマコード(参考)】
3L260
【Fターム(参考)】
3L260AA11
3L260BA27
3L260BA54
3L260CA12
3L260FA20
3L260FC35
3L260FC40
(57)【要約】
【課題】 故障した空調装置により冷房されている領域に設置されているICT機器によるサービスが停止してしまうことを抑制可能な空調システムの一例を開示する。
【解決手段】 空調システム1は、故障領域の上限処理量を故障が検出された時以前の上限処理量に比べて小さくする。これにより、当該空調システム1では、故障領域の温度が過度に上昇してしまうことが抑制され得るので、故障領域に設置されているICT機器によるサービスが停止してしまうことが抑制され得る。なお、故障機とは、複数の空調装置ACのうち故障が検出された空調装置であり、その他の空調装置を正常機という。故障領域とは、故障機により空調風が供給されるサーバ室をいう。正常領域とは、正常機により空調風が供給されるサーバ室をいう。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの情報通信技術用機器が設置された第1領域、及び少なくとも1つの情報通信技術用機器が設置された第2領域の空調を行う空調システムにおいて、
第1領域に空調風を供給する空調装置と、
第2領域に空調風を供給する空調装置と
複数の前記空調装置それぞれに設けられ、当該空調装置に故障が発生したか否か示す情報を検出する故障検出器と、
複数の前記空調装置それぞれの運転及び上限処理量を制御可能な制御装置であって、複数の前記故障検出器の情報信号が入力される制御装置とを備え、
前記上限処理量は、同一領域内に設置された1つ又は複数の情報通信技術用機器によって処理可能な情報処理量の上限であり、
前記複数の空調装置のうち故障が検出された空調装置を故障機とし、その他の空調装置を正常機とし、故障機により空調風が供給される領域を故障領域としたとき、
前記制御装置は、故障機を停止させるとともに、故障領域の上限処理量を故障が検出された時以前の上限処理量に比べて小さくする制御モードが実行可能である空調システム。
【請求項2】
正常機により空調風が供給される領域を正常領域としたとき、
前記制御モードの実行時においては、前記制御装置は、正常領域の上限処理量を当該制御モードの実行以前に比べて大きくする請求項1に記載の空調システム。
【請求項3】
複数の前記空調装置は、蒸気圧縮式冷凍機を利用して冷熱を生成可能であり、
複数の前記故障検出器は、膨張弁の開度示す情報及び蒸発器出口側の冷媒過熱度示す情報のうち少なくとも一方を検出可能であり、
さらに、前記故障検出器又は前記制御装置は、前記膨張弁の開度及び前記冷媒過熱度を利用して故障が発生したか否か判断する請求項1に記載の空調システム。
【請求項4】
前記故障検出器又は前記制御装置は、予め決められたスケジュールに従って故障が発生したか否か判断する請求項3に記載の空調システム。
【請求項5】
第1領域の空気温度を検出する第1温度センサ及び第2領域の空気温度を検出する第2温度センサを備え、
前記制御装置は、前記制御モードの実行時において、故障領域の空気温度が予め決められた温度を超えた場合には、故障機を再稼働させる第2の制御モードが実行可能である請求項1ないし4のいずれか1項に記載の空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複数の領域の空調を実行する空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、冷媒回路から漏洩した冷媒を検知する冷媒漏洩センサと、冷媒の漏洩を検知した場合に、第1空調装置と第2空調装置の運転を制御する管理装置と備え、当該管理装置は、冷媒の漏洩が検知された空調装置の運転を停止し、その他の空調装置の運転を継続または起動する空調システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-39608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の発明では、冷媒漏洩が検知された空調装置の運転を停止させるので、当該空調装置が空調を担当する領域の温度が上昇してしまう。このため、当該領域に設置されている情報通信技術用機器(以下、ICT機器という。)によるサービスが停止してしまう懸念がある。本開示は、当該点に鑑みた、空調システムの一例を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
少なくとも1つのICT機器が設置された第1領域、及び少なくとも1つのICT機器が設置された第2領域の空調を行う空調システムは、例えば、以下の構成要件のうち少なくとも1つを備えることが望ましい。
【0006】
すなわち、当該構成要件は、第1領域に空調風を供給する空調装置(AC)と、第2領域に空調風を供給する空調装置(AC)と複数の空調装置(AC)それぞれに設けられ、当該空調装置(AC)に故障が発生したか否か示す情報を検出する故障検出器(b1、b2)と、複数の空調装置(AC)それぞれの運転及び上限処理量を制御可能な制御装置(Is)であって、複数の故障検出器(b1、b2)の情報信号が入力される制御装置(Is)とを備え、制御装置(Is)は、故障機を停止させるとともに、故障領域の上限処理量を故障が検出された時以前の上限処理量に比べて小さくする制御モードが実行可能であることが望ましい。
【0007】
なお、上限処理量は、同一領域内に設置された1つ又は複数のICT機器によって処理可能な情報処理量の上限である。故障機とは、複数の空調装置(AC)のうち故障が検出された空調装置であり、その他の空調装置を正常機という。故障領域とは、故障機により空調風が供給される領域をいう。
【0008】
これにより、空調システムでは、故障領域の温度が過度に上昇してしまうことが抑制され得るので、故障領域に設置されているICT機器によるサービスが停止してしまうことが抑制され得る。
【0009】
因みに、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的構成等との対応関係を示す一例であり、本開示は上記括弧内の符号に示された具体的構成等に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態に係る空調システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の「発明の実施形態」は、本開示の技術的範囲に属する実施形態の一例を示すものである。つまり、特許請求の範囲に記載された発明特定事項等は、下記の実施形態に示された具体的構成や構造等に限定されない。
【0012】
少なくとも符号が付されて説明された部材又は部位は、「1つの」等の断りがされた場合を除き、少なくとも1つ設けられている。つまり、「1つの」等の断りがない場合には、当該部材は2以上設けられていてもよい。
【0013】
(第1実施形態)
<1.空調システムの概要(図1参照)>
本実施形態は、少なくとも2つの領域A1、A2内の冷房を行う空調システムに本開示に係る空調システムの一例が適用されたものである。領域A1、A2それぞれは、少なくとも1つのICT機器が設置されたサーバ室である。以下、領域A1を第1サーバ室A1と記し、領域A2を第2サーバ室A2と記す。
【0014】
空調システム1は、少なくともサーバ室と同数の空調装置AC1、AC2、及び統合監視装置Is等を備える。各空調装置AC1、AC2は、蒸気圧縮式冷凍機を利用して冷熱を生成可能な冷凍機である。
【0015】
以下、複数の空調装置AC1、AC2を総称する場合、又は複数の空調装置AC1、AC2のうちいずれかを意図する場合には、「空調装置AC」と記し、空調装置AC1を第1空調装置AC1と記し、空調装置AC2を第2空調装置AC2と記す。
【0016】
なお、第1空調装置AC1は、第1サーバ室A1に冷風を供給する。第2空調装置AC2は、第2サーバ室A2に冷風2供給する。各空調装置ACは、圧縮機a1、凝縮器a2、膨張弁a3及び蒸発器a4等を有して構成されている。
【0017】
圧縮機a1は冷媒を圧縮する。凝縮器a2は、圧縮機a1から吐出された高圧の気相冷媒を冷却する・凝縮する。膨張弁a3は、凝縮器a2から排出された液相冷媒を減圧・膨張させる。蒸発器a4は、減圧された液相冷媒を蒸発させ冷風を生成する。
【0018】
各空調装置ACには故障検出器b1、b2が設けられている。故障検出器b1、b2は、当該空調装置ACに故障が発生したか否か示す情報を検出する。具体的には、当該故障検出器b1、b2は、空調装置ACに冷媒漏れが発生したか否かを検出するための情報を検出する。
【0019】
故障検出器b1は、蒸発器出口側の冷媒過熱度示す情報を出力可能である。故障検出器b2は、膨張弁の開度示す情報を出力可能である。なお、本実施形態では、故障検出器b1、b2が検出した情報は、統合監視装置Isに入力される。
【0020】
統合監視装置Isは、膨張弁の開度及び冷媒過熱度のうち少なくとも一方の値が予め決められた閾値を超えたときに、対応する空調装置ACにて冷媒漏れ等の故障が発生したものとみなす。
【0021】
統合監視装置Isは、各空調装置ACの運転及び上限処理量を制御可能な制御装置の一例である。上限処理量は、同一領域(本実施形態では、サーバ室)内に設置された1つ又は複数のICT機器によって処理可能な情報処理量の上限をいう。つまり、上限処理量は、同一領域内に設置された1つ又は複数のICT機器によって処理可能な情報処理量の最大量以下の所定量である。
【0022】
統合監視装置Isには、第1温度センサS1及び第2温度センサS2の検出信号が入力されている。第1温度センサS1は、蒸発器a4の吸気側にて第1サーバ室A1内の空気温度を検出する。第2温度センサS2は、蒸発器a4の吸気側にて第2サーバ室A2内の空気温度を検出する。
【0023】
なお、統合監視装置Isは、CPU、ROM及びRAM等を有するコンピュータにて構成されている。上記の故障判断、各空調装置ACの運転制御及び上限処理量の制御等は、ROM等の不揮発性記憶部に予め記憶されているソフトウェアに従って実行される。
【0024】
<2.故障発生時の制御>
統合監視装置Isは、いずれかの空調装置ACにて故障は発生したと判断したときには、第1故障時制御モード及び第2故障時制御モードのうちいずれかを実行する。なお、統合監視装置Isは、予め決められたスケジュールに従って(例えば、毎日午前4時に)故障が発生したか否か判断する。
【0025】
<第1故障時制御モード>
第1故障時制御モードでは、統合監視装置Isは、故障機を停止させ、かつ、故障領域の上限処理量を故障が検出された時以前の上限処理量に比べて小さくするとともに、正常領域の上限処理量を当該制御モードの実行以前に比べて大きくする。
【0026】
なお、故障機とは、複数の空調装置ACのうち故障が検出された空調装置をいう。故障機以外の空調装置を正常機という。故障領域とは、故障機により空調風が供給されるサーバ室をいう。正常領域とは、正常機により空調風が供給されるサーバ室をいう。
【0027】
そして、統合監視装置Isは、第1故障時制御モードを実行すると、冷媒漏れ等の故障が発生した旨の警報を発報する。これと同時に、統合監視装置Isは、空調装置ACの保守を行う者(保守会社も含む。)に対して、冷媒漏れ等の故障が発生した空調装置ACに関する情報を送信するとともに、故障機の調査及び修理を促す。
【0028】
<第2故障制御モード>
統合監視装置Isは、第1故障制御モードの実行時において、故障領域の空気温度が予め決められた温度を超えた場合には、故障機を再稼働させる。例えば、第1空調装置AC1に故障が発生した場合には、統合監視装置Isは、第1空調装置AC1を停止させる。
【0029】
このとき、故障領域である第1サーバ室A1における上限処理量が故障発生前に比べて小さくなっている。しかし、第1サーバ室A1に設置された全てのICT機器が停止しない限り、第1サーバ室A1内の空気温度が上昇する。
【0030】
このため、統合監視装置Isは、第1サーバ室A1の空気温度が予め決められた温度を超えた場合には、第1空調装置AC1を再稼働させて、第1サーバ室A1の冷房を再開する。
【0031】
<3.本実施形態に係る空調システムの特徴>
本実施形態に係る空調システム1では、故障領域の上限処理量を故障が検出された時以前の上限処理量に比べて小さくする。これにより、当該空調システム1では、故障領域の温度が過度に上昇してしまうことが抑制され得るので、故障領域に設置されているICT機器によるサービスが停止してしまうことが抑制され得る。
【0032】
なお、故障領域の上限処理量は小さくなるものの、統合監視装置Isは、正常領域の上限処理量を当該第1故障制御モードの実行以前に比べて大きくするので、サービスの提供能力が大きく低下することが抑制され得る。
【0033】
統合監視装置Isは、第1故障制御モードの実行時において、故障領域の空気温度が予め決められた温度を超えた場合には、故障機を再稼働させる。これにより、故障領域に設置されたICT機器によるサービスの提供を継続でき得る。延いては、サービスを提供する際の信頼性が向上する。
【0034】
空調システム1は、膨張弁の開度示す情報及び蒸発器出口側の冷媒過熱度示す情報のうち少なくとも一方の情報に基づいて冷媒漏れの発生を判断する。これにより、空調装置AC内の全ての冷媒が漏れる前に冷媒漏れの発生を検出でき得る。
【0035】
したがって、全ての冷媒が漏れた後に、修理や冷媒補充をする場合に比べて、修理や冷媒補充に要する総工数を削減でき得るとともに、大気中に放出される冷媒量を少なくできる。
【0036】
(その他の実施形態)
上述の実施形態では、統合監視装置Isが空調装置ACにて冷媒漏れ等の故障が発生したか否かを判断した。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、故障検出器b1、b2又は空調装置ACにて故障が発生したか否かの判断が実行され、故障が発生したと判断されたときには、故障が発生した旨及びその状況が統合監視装置Isに通知される構成であってもよい。
【0037】
上述の実施形態では、第1空調装置AC1と第2空調装置AC2とが別々であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、1つの空調機に複数の蒸気圧縮式冷凍機が搭載された構成であってもよい。
【0038】
上述の実施形態に係る故障検出器b1、b2は、冷媒漏れを検知するものであった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、圧縮機の故障や膨張弁の故障を検知可能な故障検出器であってもよい。
【0039】
上述の実施形態に係る統合監視装置Isは、第1故障制御モードの実行時において、故障領域の空気温度が予め決められた温度を超えた場合には、故障機を再稼働させた。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、故障領域の上限処理量を更に小さくし、かつ、正常領域の上限処理量を更に大きくしてもよい。
【0040】
上述の実施形態に係る統合監視装置Isは、第1故障制御モード時に故障領域の上限処理量を故障が検出された時以前の上限処理量に比べて小さくし、かつ、正常領域の上限処理量を当該制御モードの実行以前に比べて大きくした。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、正常領域の上限処理量を当該制御モードの実行以前と同じ処理量に維持してもよい。
【0041】
上述の実施形態では、故障検出器b1、b2、第1温度センサS1及び第2温度センサS2の検出信号が直接的に統合監視装置Isに入力される構成であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、イーサネット(登録商標)等のプロトコルに従った通信によって統合監視装置Isに検出信号が入力される構成であってもよい。
【0042】
さらに、本開示は、上述の実施形態に記載された開示の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されない。したがって、上述した複数の実施形態のうち少なくとも2つの実施形態が組み合わせられた構成、又は上述の実施形態において、図示された構成要件もしくは符号を付して説明された構成要件のうちいずれかが廃止された構成であってもよい。
【符号の説明】
【0043】
1… 空調システム A1…領域(第1サーバ室) A2… 領域(第2サーバ室)
AC1… 第1空調装置 AC2…第2空調装置
a1… 圧縮機 a2…凝縮器 a3… 膨張弁 a4… 蒸発器
b1、b2… 故障検出器 Is…統合監視装置
S1… 第1温度センサ S2…第2温度センサ
図1