(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129429
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】空調システム
(51)【国際特許分類】
F24F 11/54 20180101AFI20240919BHJP
F24H 1/00 20220101ALI20240919BHJP
F24H 1/18 20220101ALI20240919BHJP
F24F 140/20 20180101ALN20240919BHJP
【FI】
F24F11/54
F24H1/00 631A
F24H1/18 G
F24F140:20
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038638
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】593063161
【氏名又は名称】株式会社NTTファシリティーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】二渡 直樹
(72)【発明者】
【氏名】宇田川 陽介
(72)【発明者】
【氏名】白川 拓也
(72)【発明者】
【氏名】舘林 恵介
【テーマコード(参考)】
3L122
3L260
【Fターム(参考)】
3L122AA02
3L122AA26
3L260AA11
3L260AB02
3L260AB06
3L260BA04
3L260BA74
3L260CB37
3L260EA07
3L260EA13
3L260FA16
3L260FB01
3L260FB21
3L260FB55
3L260FC36
(57)【要約】
【課題】 水冷式チラー等の液体を介して空調を行う場合には、空冷式チラーに比べると、構築費が大きい点を考慮した空調システムの一例を開示する。
【解決手段】 空調システム1は、通常冷房制御には、液冷空調及びプレヒートを停止させた状態で、空冷空調にてサーバ室の冷房を実行する。空調システム1は、排熱回収時には、液冷空調を実行するとともに、空冷空調による冷房能力Waを非排熱回収時に比べて小さくする。これにより、当該空調システム1では、液体で回収した排熱を放熱するための冷却塔、当該液体を循環させるポンプ及び配管等を廃止でき得る。延いては、空調システム1の製造原価を低減しつつ、排熱を有効利用することが可能となり得る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷房時に室内から吸熱した熱を他の機器に供給可能な空調システムにおいて、
少なくとも1つの熱交換器を有して構成され、室内から熱を吸収する吸熱装置と、
前記吸熱装置で吸熱された熱(以下、排熱という。)を外部空間に放熱する場合と液体を介して前記他の機器に供給する場合とを切替可能な放熱装置と、
少なくとも前記放熱装置の切替作動を制御可能な制御部と
を備える空調システム。
【請求項2】
前記放熱装置は、
室外空気中に排熱を放熱するための空冷放熱器、及び
排熱を前記液体に吸熱させるための液冷放熱器を有して構成され、
前記空冷放熱器を利用した空調を空冷空調とし、前記液冷放熱器を利用した空調を液冷空調としたとき、
前記制御部は、前記液冷空調の実行時には、当該液冷空調の実行時前に比べて前記空冷空調による冷房能力を小さくする
請求項1に記載の空調システム。
【請求項3】
前記吸熱装置は、
室内空気と熱媒体とを熱交換して吸熱する空冷吸熱器であって、当該熱媒体が前記空冷放熱器との間で循環する複数の空冷吸熱器、及び
室内空気と熱媒体とを熱交換して吸熱する液冷吸熱器であって、当該熱媒体が前記液冷放熱器との間で循環する1つ又は複数の液冷吸熱器を有して構成され、
前記液冷空調の実行を排熱回収としたとき、前記制御部は、排熱回収時には、吸熱状態となる前記空冷吸熱器の台数を非排熱回収時に比べて減少させる請求項2に記載の空調システム。
【請求項4】
吸熱運転中の前記液冷吸熱器に対して予め決められた距離以内にある前記空冷吸熱器を周辺吸熱器としたとき、
前記制御部は、排熱回収時には、吸熱運転中の前記周辺吸熱器が発揮する冷房能力を低下させることを特徴とする請求項3に記載の空調システム。
【請求項5】
前記周辺吸熱器が発揮する冷房能力を周辺能力とし、当該周辺能力を低下させる制御を回収制御としたとき、
前記制御部は、回収制御においては、前記液冷空調の冷房能力が予め決められた能力に到達するまで周辺能力を低下させる制御が可能である請求項4に記載の空調システム。
【請求項6】
前記液冷放熱器を冷却する前の前記液体の温度を検出する温度センサを備え、
前記制御部は、前記温度センサの検出温度が予め決められた温度以上となった場合に、回収制御を停止させる請求項5に記載の空調システム。
【請求項7】
前記制御部は、回収制御を停止させた後、周辺能力を当該回収制御の実行直前の状態まで段階的に上昇させる請求項6に記載の空調システム。
【請求項8】
排熱回収された排熱を利用して加熱された温水が蓄えられる温水槽と、
前記温水槽に未加熱水を供給するための給水器とを備え、
前記制御部は、前記液冷空調の実行時に、前記温度センサの検出温度が予め決められた温度以上となった場合に、前記温水槽内の水を排出するとともに、前記給水器から未加熱水を前記温水槽に供給する請求項6に記載の空調システム。
【請求項9】
前記制御部は、前記空冷空調による現実の冷房能力が当該制御部の指令冷房能力に対して不足する場合には、前記液冷空調による冷房能力を利用して当該不足を補う請求項8に記載の空調システム。
【請求項10】
請求項6に記載の予め決められた温度を停止温度としたとき、
前記制御部は、前記液冷空調の実行時に、前記温度センサの検出温度が停止温度より高い予め決められた温度に到達したときには、前記液冷空調を停止させる請求項6ないし9のいずれか1項に記載の空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、冷房時に室内から吸熱した熱を他の機器に供給可能な空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、水冷式チラー、空冷式チラー及びヒートポンプ式給湯器を備え、運転パターンによって空冷式チラー、水冷式チラーの運転順位を変更している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、当該熱源機を用いて空調及び給湯を行う空調システムでは、冷房時に室内から吸熱した熱(以下、低温排熱という。)を給湯器等の他の機器に供給する。このとき、空調は継続的な運転が必要であるのに対して、給湯器等に低温排熱を供給する運転は、概ね、特定の時間帯(例えば、深夜の時間帯)のみ実行される。
【0005】
ところで、水冷式チラー等の液体を介して空調を行う場合には、放熱用冷却塔等の熱源設備が必要であるため、一般的に、空冷式チラーに比べると、設備構築費が大きい。本開示は、当該点を考慮した空調システムの一例を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
冷房時に室内から吸熱した熱を他の機器に供給可能な空調システムは、例えば、以下の構成要件を備えることが望ましい。すなわち、当該構成要件は、少なくとも1つの熱交換器(5A、5B)を有して構成され、室内から熱を吸収する吸熱装置(5)と、吸熱装置(5)で吸熱された熱(以下、排熱という。)を外部空間に放熱する場合と液体を介して他の機器(2)に供給する場合とを切替可能な放熱装置(6)と、少なくとも放熱装置(6)の切替作動を制御可能な制御部(7)とである。
【0007】
これにより、当該空調システムでは、排熱を他の機器(2)に供給しない場合に、当該排熱を外部空間に放熱することが可能となる。したがって、当該空調システムでは、液体で回収した排熱を外気に放熱するための冷却塔、当該液体を循環させるポンプ及び配管等を廃止でき得る。延いては、空調システムの製造原価を低減しつつ、排熱を有効利用することが可能となり得る。
【0008】
因みに、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的構成等との対応関係を示す一例であり、本開示は上記括弧内の符号に示された具体的構成等に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係る空調システムを示す図である。
【
図2】第1実施形態に係る廃熱回収制御を示すフローチャートである。
【
図3】第1実施形態に係る応急制御を示すフローチャートである。
【
図4】第2実施形態に係る廃熱回収制御を示すフローチャートである。
【
図5】第3実施形態に係る廃熱回収制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の「発明の実施形態」は、本開示の技術的範囲に属する実施形態の一例を示すものである。つまり、特許請求の範囲に記載された発明特定事項等は、下記の実施形態に示された具体的構成や構造等に限定されない。
【0011】
少なくとも符号が付されて説明された部材又は部位は、「1つの」等の断りがされた場合を除き、少なくとも1つ設けられている。つまり、「1つの」等の断りがない場合には、当該部材は2以上設けられていてもよい。
【0012】
(第1実施形態)
<1.空調システムの概要(
図1参照)>
本実施形態に係る空調システム1は、サーバ室内を冷房するとともに、冷房時に当該サーバ室から吸収した熱(以下、排熱という。)を給湯装置2に供給可能である。なお、サーバ室内には、少なくとも1つの情報通信技術用機器(図示せず。)が設置されている。
【0013】
情報通信技術用機器は、少なくとも情報処理を実行する情報処理ユニット(例えば、CPUやGPU等)を有する。このため、空調システム1は、サーバ室内の室温が予め決められた温度範囲となるように、当該サーバ室を冷房する。
【0014】
本実施形態に係る給湯装置2は、温水槽3、給湯器4、給水弁3A及び排水弁3B等を少なくとも有する。温水槽3は、給湯器4にて加熱される前の水が貯留する。給湯器4は、温水槽3から供給された水を再加熱して利用者に供給可能である。
【0015】
つまり、給湯器4は、利用者が望む温度まで昇温させた水を供給する。なお、給湯器4は、ヒートポンプ式給湯器、電気ヒータを利用した給湯器又は燃焼式給湯器等であって、その加熱方式は不問である。
【0016】
給水弁3Aは、温水槽3に給水する場合と当該給水を停止する場合とを制御するバルブである。排水弁3Bは、温水槽3内の水を排水する場合と当該排水を停止する場合とを制御するバルブである。
【0017】
そして、温水槽3に貯留されている水の量(以下、水量という。)が、予め決められた水量未満となると、給水弁3Aが開いて未加熱水が当該温水槽3に給水される。そして、水量が予め決められた水量を超えたときに、給水弁3Aが閉じて当該給水が停止する。
【0018】
給水弁3A及び排水弁3Bは、水量を検出する水量センサ(図示せず。)の検出信号に基づいて給湯装置2の制御部(図示せず。)により制御される。なお、当該制御部は、制御部7と連係して給水弁3A及び排水弁3Bの開閉を制御することも可能である。
【0019】
空調システム1は、吸熱装置5、放熱装置6及び制御部7等を少なくとも備える。吸熱装置5は、室内から熱を吸収する。放熱装置6は、吸熱装置5で吸熱された熱、つまり排熱を放出する。
【0020】
具体的には、放熱装置6は、外部空間(本実施形態では、サーバ室外空気中)に放熱する場合と、当該排熱を液体を介して給湯装置2(本実施形態では、温水槽3の水)に供給する場合とを切替可能である。つまり、給湯装置2は、「他の機器」の一例である。
【0021】
放熱装置6は、1つ又は複数(本実施形態では、複数)の空冷放熱器6A、及び1つ又は複数(本実施形態では、1つ)の液冷放熱器6B等を有して構成されている。各空冷放熱器6Aは、室外空気中に排熱を放熱する熱交換器を有する。
【0022】
液冷放熱器6Bは、排熱を液体に吸熱させる熱交換器を有する。当該液冷放熱器6Bで排熱を吸熱した液体は、熱交換器8に送られる。そして、当該液体と温水槽3に貯留されている水とが熱交換器8で熱交換される。
【0023】
つまり、温水槽3に貯留されている水は、液冷放熱器6B及び熱交換器8を介して排熱により加熱(以下、「プレヒート」ともいう。)される。なお、ポンプ9Aは、液冷放熱器6Bと熱交換器8との間で液体を循環させる。ポンプ9Bは、熱交換器8と温水槽3との間で水を循環させる。
【0024】
吸熱装置5は、少なくとも1つ(本実施形態では、複数)の室内熱交換器を有している。具体的には、当該吸熱装置5は、空冷放熱器6Aと同数の空冷吸熱器5A、及び液冷放熱器6Bと同数の液冷吸熱器5B等を有して構成されている。
【0025】
各空冷吸熱器5Aは、室内空気と熱媒体とを熱交換して吸熱するとともに、対応する空冷放熱器6Aとの間で当該熱媒体が循環する熱交換器である。液冷吸熱器5Bは、室内空気と熱媒体とを熱交換して吸熱するとともに、液冷放熱器6Bとの間で当該熱媒体が循環する熱交換器である。
【0026】
なお、各空冷放熱器6A及び空冷吸熱器5Aは、蒸気圧縮機冷凍機等の冷熱を生成する熱源機の構成機器である。同様に、液冷放熱器6B及び液冷吸熱器5Bは、蒸気圧縮機冷凍機等の冷熱を発生する熱源機の構成機器である。
【0027】
制御部7は、放熱装置6の切替作動制御、及びポンプ9A、9Bの作動制御が実行可能である。放熱装置6の切替作動とは、複数の空冷放熱器6Aの放熱量と液冷放熱器6Bの放熱量との割合を変更することをいう。換言すれば、熱装置6の切替作動とは、空冷空調による冷房能力Waと液冷空調による冷房能力Wlとの割合を変更することをいう。
【0028】
制御部7は、CPU、ROM及びRAM等を有するコンピュータにて構成されている。放熱装置6の切替作動制御、及びポンプ9A、9Bの作動制御を実行するためのソフトウェアは、ROM等の不揮発性記憶部に予め記憶されている。
【0029】
制御部7は、第1水温センサ10及び第2水温センサ11の出力信号が入力されている。第1水温センサ10は、温水槽3に貯留されている水の温度(以下、貯水温度という。)を検出する。
【0030】
第2水温センサ11は、液冷放熱器6Bに流入する液体、つまり液冷放熱器6Bを冷却する前の液体の温度(以下、液体温度という。)を検出する。制御部7は、貯水温度及び液体温度を利用して上記の切替作動及びポンプ9A、9Bの制御を実行する。
【0031】
なお、制御部7は、空冷空調を実行したときの冷房能力、及び液冷空調を実行したときの冷房能力も制御する。具体的には、制御部7は、サーバ室内の空気の温度が予め決められた範囲内にとなるように、空冷空調実行時の冷房能力及び液冷空調実行時の冷房能力を制御する。
【0032】
空冷空調とは、複数の空冷放熱器6Aのうち少なくとも1つの空冷放熱器6Aを利用した冷房運転をいう。液冷空調とは、液冷放熱器6Bを利用した冷房運転空調をいう。そして、空冷空調は、液冷空調を実行することなく、空冷空調のみでサーバ室内を冷房可能な冷房能力を発揮可能である。
【0033】
このため、液冷空調は、原則として、空冷空調のみで十分な冷房能力を得ることができない状況(以下、応急時という。)が発生した場合に備えた予備の空調機である。応急時とは、例えば、空冷空調による現実の冷房能力が制御部7の指令冷房能力に対して不足した場合等である。
【0034】
指令冷房能力とは、例えば、サーバ室内の空気の温度(以下、室温という。)を予め決められた範囲内に維持するための冷房能力いう。例えば、室温が低下させる必要があるときに、制御部7が現時の冷房能力を増大させる指令を発した場合には、その「増大させる指令」が「指令冷房能力」である。
【0035】
このため、例えば、制御部7が「空冷空調を実行するための機器(以下、空調機器という。)のいずれかに故障が発生した」と判断したときも「空冷空調による現実の冷房能力が制御部7の指令冷房能力に対して不足したとき」となる。つまり、「故障時」も「応急時」となる。
【0036】
なお、制御部7には、例えば、空冷吸熱器5A又は空冷放熱器6A内の冷媒圧力や圧縮機(図示せず。)の吐出圧等の空調機器の状態を示す信号が入力されている。そして、制御部7は、それらの信号を利用して、「応急時」であるか否かを判断する。
【0037】
<2.切替作動制御等の詳細>
<2.1 通常冷房制御(非プレヒート時)>
通常冷房制御とは、プレヒートを実行することなく、サーバ室の冷房を実行する制御モードである。制御部7は、通常冷房制御の実行時には、液冷空調及びプレヒートを停止させた状態で、空冷空調にてサーバ室の冷房を実行する。
【0038】
以下、液冷空調の停止状態を「非廃熱回収」ともいう。液冷空調が実行され、液冷吸熱器5Bにより排熱が回収されている状態を「排熱回収」ともいう。したがって、本実施形態では、廃熱回収が実行されているときには、プレヒートが実行される。
【0039】
なお、非廃熱回収時には、制御部7は、少なくともポンプ9A、9Bを停止させる。したがって、通常冷房制御の実行時には、サーバ室から回収した低温の廃熱は、温水槽3の貯留水に供給されることなく、空冷放熱器6Aから外気中に放出される。
【0040】
また、通常冷房制御の実行時においても、必要とする冷房能力が小さい場合には、複数の空冷放熱器6Aのうち少なくとも1つの空冷放熱器6Aによる冷房運転が停止し得る。つまり、通常冷房制御は、複数の空冷放熱器6Aの少なくとも1つを用いて必要な冷房能力を発揮する制御モードである。
【0041】
<2.2 廃熱回収制御>
廃熱回収制御とは、廃熱回収を実行する制御モードである。制御部7は、排熱回収制御の実行時には、液冷空調を実行するとともに、空冷空調による冷房能力Waを非排熱回収時に比べて小さくする。
【0042】
すなわち、制御部7には、貯水温度が予め決められた温度(以下、設定温度という。)が以下となっときに、通常冷房制御を停止し、廃熱回収制御を実行する。このとき、制御部7は、複数の空冷放熱器6Aのうち少なくとも1つの空冷放熱器6Aを利用した冷房運転を停止させた状態で、液冷空調を実行する。
【0043】
具体的には、
図2に示されるように、制御部7は、貯水温度が設定温度以下であるか否かを判断する(S1)。貯水温度が設定温度より高い場合には(S1:NO)、制御部7は、通常冷房制御を継続する。
【0044】
貯水温度が設定温度以下の場合には(S1:YES)、制御部7は、複数の空冷放熱器6Aのうち少なくとも1つの空冷放熱器6Aを利用した冷房運転を停止させた状態で、液冷空調を実行する(S2)。例えば、制御部7は、1つの空冷放熱器6Aを利用した冷房運転を停止させた後、液冷空調を実行する。
【0045】
次に、制御部7は、液体温度が予め決められた温度(以下、第1閾値という。)以上であるか否かを判断する(S3)。液体温度が第1閾値より低い場合には(S3:NO)、制御部7は、廃熱回収を継続する。
【0046】
液体温度が第1閾値以上の場合には(S3:YES)、制御部7は、液冷空調を停止させるとともに、停止させていた空冷放熱器6Aによる冷房を実行可能な状態とすることにより、廃熱回収を停止させて通常冷房制御に移行する(S4)。
【0047】
<2.3 応急時冷房制御>
応急時冷房制御とは、制御部7が「応急時」であると判断して予備機運転指令を発したときに実行され、予備機運転指令が解除されたときに終了する制御モードである。具体的には、
図3に示されるように、予備機運転指令が発せられると、制御部7は、予備機である液冷空調を実行して、不足する冷房能力を補う(S5)。
【0048】
次に、制御部7は、液体温度が予め決められた温度(以下、第2閾値という。)以上であるか否かを判断する(S6)。なお、第2閾値は、例えば、第1閾値と同じ値、使用温度範囲の上限温度(以下、単に「上限温度」という。)、又は任意の値等である。
【0049】
液体温度が第2閾値より低い場合には(S6:NO)、制御部7は、現状を維持する。液体温度が第2閾値以上の場合には(S6:YES)、制御部7は、温水槽3に設けられた排水弁3Bを開いて温水槽3に貯留されている水を排出させる(S7)。
【0050】
なお、温水槽3の水量が、予め決められた水量未満となると、給湯装置2の制御部は、給水弁3Aを開く。これにより、未加熱水が当該温水槽3に給水されるため、液体温度が低下していく。
【0051】
次に、制御部7は、貯水温度又は液体温度(本実施形態では、貯水温度)が予め決められた温度(本実施形態では、設定温度と同じ温度)以下であるか否かを判断する(S8)。貯水温度が設定温度より高い場合には(S8:NO)、制御部7は、上記の排水を継続させる。
【0052】
貯水温度が設定温度以下の場合には(S8:YES)、制御部7は、上記の排水を停止させた後(S9)、液体温度が第2閾値以上であるか否かを判断する(S6)。なお、予備機運転指令が解除された場合には、制御部7は、急時冷房制御を停止し、急時冷房制御が実行される直前の制御モードに復帰する。
【0053】
<3.本実施形態に係る空調システムの特徴>
本実施形態に係る空調システム1では、非廃熱回収時に排熱を外部空間に放熱することが可能となる。したがって、当該空調システム1では、液体で回収した排熱を放熱するための冷却塔、当該液体を循環させるポンプ及び配管等を廃止でき得る。延いては、空調システム1の製造原価を低減しつつ、排熱を有効利用することが可能となり得る。
【0054】
さらに、制御部7は、排熱回収時には、空冷空調による冷房能力を非排熱回収時に比べて小さくする。これにより、空調システム1の消費エネルギが適正化され得る。
(第2実施形態)
本の実施形態に係る空調システムは、廃熱回収制御が第1実施形態と異なり、廃熱回収制御以外は第1実施形態と同じである。以下の説明は、第1実施形態に係る空調システムとの相違点に関する説明である。
【0055】
<本実施形態に係る廃熱回収制御(
図4参照)>
制御部7は、貯水温度が設定温度以下であるか否かを判断する(S11)。貯水温度が設定温度より高い場合には(S11:NO)、制御部7は、通常冷房制御を継続する。
【0056】
貯水温度が設定温度以下の場合には(S11:YES)、制御部7は、複数の空冷放熱器6Aのうち少なくとも1つの空冷放熱器6Aを利用した冷房運転を停止させた状態で、液冷空調を開始する(S12)。
【0057】
このとき、制御部7は、吸熱運転中の周辺吸熱器5Aが発揮する冷房能力(以下、周辺能力という。)を低下させる制御(以下、回収制御という。)を実行する(S13)。なお、周辺吸熱器5Aとは、吸熱運転中の液冷吸熱器5Bに対して予め決められた距離以内にある空冷吸熱器5Aをいう。
【0058】
具体的には、回収制御の実行時には、制御部7は、周辺吸熱器5Aの設定温度を予め決められた値だけ上昇させる(S13)。周辺吸熱器5Aの設定温度とは、当該周辺吸熱器5Aに対する指令冷房能力を決定するためのパラメータである。
【0059】
次に、制御部7は、液体温度が第1閾値以上であるか否かを判断する(S14)。液体温度が第1閾値より低い場合には(S14:NO)、制御部7は、回収制御を実行しながら廃熱回収を継続する。
【0060】
液体温度が第1閾値以上の場合には(S14:YES)、制御部7は、周辺吸熱器5Aの設定温度を予め決められた値だけ低下させる(S15)。なお、本実施形態に係る制御部7は、S14においては、設定温度の値がS13を実行する直前の値に戻される。
【0061】
次に、制御部7は、液冷空調を停止させるとともに、停止させていた空冷放熱器6Aによる冷房を実行可能な状態とすることにより、廃熱回収を停止させて通常冷房制御に移行する(S16)。
【0062】
<本実施形態に係る空調システムの特徴>
制御部7は、吸熱運転中の周辺吸熱器5Aが発揮する冷房能力を低下させる制御を実行する。これにより、空調システム1の製造原価を低減しつつ、排熱を有効利用することが可能となり得る。
【0063】
(第3実施形態)
本の実施形態に係る空調システムは、廃熱回収制御が第1実施形態と異なり、廃熱回収制御以外は、第1実施形態と同じである。以下の説明は、第1実施形態に係る空調システムとの相違点に関する説明である。
【0064】
<本実施形態に係る廃熱回収制御の概要>
本実施形態に係る回収制御においては、液冷空調の冷房能力が予め決められた能力に到達するまで回収制御を実行し、液体温度が予め決められた温度(以下、停止温度という。)以上となった場合に、回収制御を停止させる。
【0065】
このとき、制御部7は、回収制御を停止させた後、周辺能力を当該回収制御の実行直前の状態まで段階的に上昇させる。そして、制御部7は、液体温度が停止温度より高い予め決められた温度(例えば、上限温度)に到達したときに、液冷空調を停止させる。
【0066】
<本実施形態に係る廃熱回収制御の詳細(
図5参照)>
制御部7は、貯水温度が設定温度以下であるか否かを判断する(S21)。貯水温度が設定温度より高い場合には(S21:NO)、制御部7は、通常冷房制御を継続する。
【0067】
貯水温度が設定温度以下の場合には(S21:YES)、制御部7は、複数の空冷放熱器6Aのうち少なくとも1つの空冷放熱器6Aを利用した冷房運転を停止させた状態で、液冷空調を開始する(S22)。
【0068】
このとき、制御部7は、周辺吸熱器5Aの設定温度を予め決められた値だけ上昇させる(S23)。次に、制御部7は、液冷空調の圧縮機の回転数が予め決められた上限回転数以上であるか否かを判断する(S24)。
【0069】
圧縮機の回転数が上限回転数より小さい場合には(S24:NO)、制御部7は、S23を実行する。つまり、制御部7は、液冷空調の冷房能力が予め決められた能力に到達するまで、周辺能力を段階的に低下させながら回収制御を実行する。
【0070】
そして、圧縮機の回転数が上限回転数以上の場合には(S24:YES)、制御部7は、液体温度が予め決められた閾値(以下、第3閾値という。)以上であるか否かを判断する(S25)。なお、第3閾値は、例えば、第1閾値から所定値Aを減算した値等である。
【0071】
液体温度が第3閾値より低い場合には(S25:NO)、制御部7は、回収制御及び廃熱回収を継続する。液体温度が第3閾値以上の場合には(S25:YES)、制御部7は、周辺能力を当該回収制御の実行直前の状態まで段階的に上昇させる(S26)。
【0072】
具体的には、S26では、制御部7は、周辺吸熱器5Aの設定温度を段階的に低下させる。このとき、本実施形態に係る制御部7は、設定温度の値がS23を実行する直前の値まで段階的に戻される。
【0073】
次に、制御部7は、液冷温度が停止温度以上であるか否かを判断する(S27)。液体温度が停止温度より低い場合には(S27:NO)、制御部7は、現状を維持する。液体温度が停止温度以上となった場合には(S27:YES)、制御部7は、回収制御及び廃熱回収を停止させる(S28)。
【0074】
(その他の実施形態)
上述の実施形態に係る空調システムでは、常時、貯水温度が設定温度以下であるか否かの判断(例えば、
図2のS1)が実行される構成であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、当該判断が予め決められたスケジュールに従って実行される構成であってもよい。
【0075】
上述の実施形態では、制御部7が「応急時」であると判断して予備機運転指令を発した。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、「応急時」であるか否かを制御部7以外の他の制機器により判断する構成であってもよい。
【0076】
上述の実施形態では、排熱回収時に、吸熱状態となる空冷吸熱器5Aの台数を非排熱回収時に比べて減少させた。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、吸熱状態となる空冷吸熱器5Aの台数を減少させることなく、圧縮機の回転数や送風機の送風量を低下させて空冷空調による冷房能力を低下させてもよい。
【0077】
上述の実施形態では、空冷空調を行う空調装置が2台以上であり、液冷空調を行う空調装置が1台の構成であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、空冷空調を行う空調装置が1台であり、液冷空調を行う空調装置が2台以上の構成、空冷空調を行う空調装置と液冷空調を行う空調装置と同数である構成であってもよい。
【0078】
上述の実施形態では、液冷空調の廃熱を給湯装置2に供給した。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、給湯装置2以外の他の機器に液冷空調の廃熱を供給する構成であってもよい。
【0079】
上述の実施形態では、空冷空調用の放熱器と液冷空調用の放熱器とが独立して設けられた放熱装置6だった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、空冷空調用の放熱器と液冷空調用の放熱器と共用化され、冷媒流れを切り替えることにより、放熱装置の切替作動を制御する構成であってもよい。
【0080】
さらに、本開示は、上述の実施形態に記載された開示の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されない。したがって、上述した複数の実施形態のうち少なくとも2つの実施形態が組み合わせられた構成、又は上述の実施形態において、図示された構成要件もしくは符号を付して説明された構成要件のうちいずれかが廃止された構成であってもよい。
【符号の説明】
【0081】
1… 空調システム 2…給湯装置 3… 温水槽
3A… 給水弁 3B…排水弁 4… 給湯器
5… 吸熱装置 5A…熱交換器 5A… 空冷吸熱器
5B… 液冷吸熱器 6…放熱装置 6A… 空冷放熱器
6B… 液冷放熱器 7…制御部 8… 熱交換器
9A… ポンプ 9B…ポンプ 10… 第1水温センサ
11… 第2水温センサ