(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129442
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】空調用フレキシブルダクト
(51)【国際特許分類】
F24F 13/02 20060101AFI20240919BHJP
【FI】
F24F13/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038660
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】591029921
【氏名又は名称】フジモリ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003340
【氏名又は名称】弁理士法人湧泉特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】尾形 真幸
(72)【発明者】
【氏名】小池 甲一
【テーマコード(参考)】
3L080
【Fターム(参考)】
3L080AD01
3L080AD04
3L080AE01
(57)【要約】
【課題】薄肉ながらも保温性及び不燃性を確保でき、狭隘な階間スペース等に設置可能な空調用フレキシブルダクトを提供する。
【解決手段】空調用フレキシブルダクト10の柔軟な筒形状の保温層13の内周面に筒形状の内層11を設け、外周面に筒形状の外層12を設ける。保温層13は、長さ20mm以上の無機系繊維22が相互係合された柔軟なシート状体20を含む。保温層13が厚み2mm~10mm、みかけ密度80kg/m
3~200kg/m
3となるよう、無機系繊維22が相互係合されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
柔軟な筒形状の保温層と、前記保温層の内周面に設けられるとともに筒形状に保形された内層と、前記保温層の外周面を覆う筒形状の外層とを備えた空調用フレキシブルダクトであって、
前記保温層が、長さ20mm以上の無機系繊維が相互係合された柔軟なシート状体を含み、
前記保温層が厚み2mm~10mm、みかけ密度80kg/m3~200kg/m3となるよう、前記無機系繊維が相互係合されていることを特徴とする空調用フレキシブルダクト。
【請求項2】
前記無機系繊維が、ガラス長繊維又はセラミック繊維からなる請求項1に記載の空調用フレキシブルダクト。
【請求項3】
前記無機系繊維が、バインダーレスで相互係合されている請求項1又は2に記載の空調用フレキシブルダクト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅等の建物の空調に用いられるフレキシブルダクトに関し、特に住宅の狭隘な階間スペース等に設置するのに適した空調用フレキシブルダクトに関する。
【背景技術】
【0002】
住宅等の建物の空調用フレキシブルダクトにおいては、内部に通される温調空気の熱が逃げたり外面に結露が生じたりしないよう、かつフレキシブル性が確保されるよう柔軟な保温層が設けられている。更に、住宅等の建物に設置されるため、火災が起きたとき燃えにくい不燃性が求められる。このような性能を有する保温層の材質として、例えばグラスウール及びバインダーが用いられている。グラスウールは、長さ10mm~20mm程度の無機系短繊維であり、これにバインダーが添加されることによってシート状に成形され、更に丸められて筒状に成形されている。一般的な保温層の厚さは25mm程度、密度は15kg/m3~25kg/m3程度である。
【0003】
特許文献1の空調用フレキシブルダクトは、グラスウールからなる筒状の保温層を有している。保温層の内周面に不織布からなる内層が設けられている。保温層の外周面は、樹脂フィルムからなる外層で覆われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年の住宅は快適性を求めて天井高を高くしたいとのニーズがある。一方、高さ制限やコスト面で住宅全体の高さを高くできないこともある。そのような事情から1階と2階の間の階間と呼ばれるスペースを狭くする傾向がある。しかし、そこは空調用フレキシブルダクト等の空調用ダクトだけでなく電気配線や空調機器本体等が設置されるスペースでもある。また、階間等には建物躯体の梁が通っているために、空調用フレキシブルダクトを梁下に通したり、梁に設けた貫通穴に通したりしなければならない場合もある。
【0006】
このような階間等における設置スペースの狭隘化に対応するため、空調用フレキシブルダクトの薄肉化ひいては小径化が求められている。そこで、例えば空調用フレキシブルダクトの一般的な保温層(すなわちグラスウール等の無機系短繊維及びバインダーからなる密度15kg/m3~25kg/m3程度の保温層)を、密度はそのままにして厚みを単に小さくすることが考えられる。しかし、そうすると、保温性が低下して熱効率が悪化したり結露が生じたりするおそれがある。
一方、グラスウール等の無機系短繊維及びバインダーからなる保温層を圧縮することで厚みを小さくすると、保温性は確保できたとしても、硬いボード状になり、丸めて筒状に出来なくなる等、ダクトの製造に支障を来す。
本発明は、かかる事情に鑑み、薄肉ながらも保温性及び不燃性を確保でき、階間、梁下、梁貫通穴等の狭隘スペースに設置可能な空調用フレキシブルダクトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は、柔軟な筒形状の保温層と、前記保温層の内周面に設けられるとともに筒形状に保形された内層と、前記保温層の外周面を覆う筒形状の外層とを備えた空調用フレキシブルダクトであって、
前記保温層が、長さ40mm以上の無機系繊維が相互係合された柔軟なシート状体を含み、
前記保温層が厚み2mm~10mm、みかけ密度80kg/m3~200kg/m3となるよう、前記無機系繊維が相互係合されていることを特徴とする。
【0008】
当該空調用フレキシブルダクトにおいては、外径が、内部流路の内径+内層及び外層の合計厚みの2倍+4mm~20mm程度となる。階間、梁下等のダクト設置スペースの高さは、前記外径以上であればよい。
保温層は無機系繊維にて構成されているから不燃性を確保できる。前記無機系繊維が長さ40mm以上であるため、無機系繊維を絡ませる等して相互係合させることができる。相互係合度合を調整することによって、保温層の厚みを2mm~10mm、みかけ密度を80kg/m3~200kg/m3とすることができる。これによって、フレキシブル性を損なうことなく薄肉にでき、薄肉であっても保温性を確保できる。
みかけ密度とは、無機系繊維からなる保温層の実部だけでなく無機系繊維どうし間の空間をも含む保温層のみかけの単位体積あたりの保温層の重量を言う。
【0009】
好ましくは、前記無機系繊維が、ガラス長繊維又はセラミック繊維(ex.セラミックウール)からなる。好ましくは、保温層は、ガラス長繊維を絡ませたガラスフェルトやセラミック繊維を絡ませたセラミックウールからなる。
前記無機系繊維は、好ましくはバインダーレス(接着剤無し)で相互係合されている。バインダーレスの相互係合として、無機系繊維をニードルパンチ加工によって絡ませることが挙げられる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る空調用フレキシブルダクトによれば、保温層が薄肉ながらも保温性及び不燃性を確保できる。保温層を薄肉にすることによって、空調用フレキシブルダクトの外径を小さくでき、狭隘なスペースに設置可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る空調用フレキシブルダクトを、住宅の階間に配管された状態で示す断面図である。
【
図2】
図2は、前記空調用フレキシブルダクトの保温層の詳細構造を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を図面にしたがって説明する。
図1は、住宅1(建物)の上階2と下階3の間の階間4を示したものである。各階2,3の天井高さを高くするために、階間4は狭隘になっている。階間4の高さH
4は 例えばH
4=300mm~500mm程度であり、空調用フレキシブルダクト10の配管等に利用可能な有効高さは100mm~300mm程度である。
図1に示すように、階間4(ダクト設置スペース)に空調用フレキシブルダクト10が配管されている。なお、図示は省略するが、階間4には、空調用フレキシブルダクト10の他、空調機本体、吹き出しユニット、換気ユニット、電気配線等が配置されている。空調機本体と吹き出しユニットと換気ユニットとが空調用フレキシブルダクト10によって繋がっている。空調用フレキシブルダクト10は、
図1の紙面と直交する方向へ長く延びている。空調用フレキシブルダクト10の長さは、好ましくは1m~20m程度である。空調用フレキシブルダクト10の外径φ
10は、階間高さH
4より小さく、例えばφ
10=65mm~215mm程度である。
【0013】
図1に示すように、空調用フレキシブルダクト10は、内層11と、外層12と、保温層13を備えている。内層11は、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維等の不織布によって構成されている。不織布に代えて、ポリエチレン(PE)、ポリプロプレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂フィルムを用いてもよい。内層11の厚みは例えばミクロンメートルオーダーであり、保温層13の厚みと比べると十分に小さい。
図1において、内層11の厚みは誇張されている。図示は省略するが、内層11は、保形コイルによって筒状に保形されている。内層11によって、空調用フレキシブルダクト10の内部流路14が画成されている。内部流路14の内径φ
14は、例えばφ
14=50mm~200mm程度である。内部流路14に空調空気が通される。
【0014】
空調用フレキシブルダクト10の外周面は、外層12によって構成されている。外層12は、内層11を包む筒形状に形成されている。外層12の材質は、ポリエチレン(PE)、ポリプロプレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂フィルムである。なお、外層12が、アルミニウム等の金属層を含んでいてもよい。外層12の厚みは例えば1mm以下であり、保温層13の厚みと比べると十分に小さい。
図1において、外層12の厚みは誇張されている。
【0015】
内層11及び外層12の間に保温層13が挟まれている。言い換えると、内層11及び外層12の間に環状隙間15が形成され、該環状隙間15に保温層13が装填されている。保温層13は柔軟な筒形状になっている。保温層13の内周面に内層11が設けられている。保温層13の外周面が外層12によって覆われている。
【0016】
保温層13は、柔軟なシート状体20によって構成されている。シート状体20の幅寸法は、空調用フレキシブルダクト10の周長と対応する。シート状体20の長さは、空調用フレキシブルダクト10の長さと対応する。シート状体20が幅方向に丸められることで、筒形状の保温層13となっている。シート状体20の幅方向の両側の縁部21どうしは、互いに重ねられていてもよく、突き当てられていてもよい。
【0017】
図2に示すように、シート状体20は、多数の無機系繊維22が絡まり合って相互係合されることによって構成されている。好ましくは、無機系繊維22はバインダーレス(非接着)で相互係合されている。言い換えると、無機系繊維22は、バインダーレスで相互係合可能な長さを有している。好ましくは、無機系繊維22の長さは、20mm以上であり、より好ましくは20mm~100mm程度であるが、これに限らず、数十cmであってもよく、数m~数百mであってもよい。
【0018】
シート状体20ひいては保温層13の厚みt13は、t13=2mm~10mm程度である。シート状体20ひいては保温層13のみかけ密度は80kg/m3~200kg/m3程度である。言い換えると、シート状体20ひいては保温層13が厚みt13=2mm~10mm程度、みかけ密度80kg/m3~200kg/m3程度となるよう、無機系繊維22が十分に絡まり合って相互係合されている。
【0019】
具体的には、無機系繊維22は、ガラス長繊維からなる。シート状体20ひいては保温層13は、ガラス長繊維を絡ませたガラスフェルトによって構成されている。
【0020】
空調用フレキシブルダクト10は、例えば、次のようにして製造される。
無機系繊維22をニードルパンチ加工によって絡めて、厚み2mm~10mm、密度80kg/m3~200kg/m3のシート状体20を作成する。無機系繊維22が長さ40mm以上であるため、無機系繊維22を好ましくはバインダーレスで絡ませる等して相互係合させることができる。相互係合度合を調整することによって、シート状体20の厚みを2mm~10mm、みかけ密度を80kg/m3~200kg/m3とすることができる。シート状体20をこのような高密度にしても、硬いボード状になることはない。これによって、フレキシブル性を損なうことなく薄肉にでき、薄肉であっても保温性を確保可能な保温層用シート状体20を得ることができる。
このようにして作成したシート状体20を筒形状に丸めて保温層13とし、その内周面に内層11を設け、外周面には外層12を被せることによって、空調用フレキシブルダクト10が得られる。
【0021】
作製された空調用フレキシブルダクト10においては、保温層13の厚みが小さい分だけ外径を小さくできる。これによって、高さが低く狭隘な階間4にも空調用フレキシブルダクト10を容易に配置できる。梁下、梁貫通穴などにも空調用フレキシブルダクト10を容易に通すことができる。
保温層13は無機系繊維22にて構成されているから不燃性を確保できる。
【0022】
本発明は、前記実施形態に限定されず、その趣旨に反しない限りにおいて種々の改変をなすことができる。
例えば、無機系繊維22が、セラミック繊維であってもよい。シート状体20ひいては保温層13は、セラミック繊維を好ましくはバインダーレスで絡ませて相互係合させたセラミックウールによって構成されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は、例えば住宅等の建物の空調設備に適用できる。
【符号の説明】
【0024】
1 住宅(建物)
4 階間(ダクト設置スペース)
10 空調用フレキシブルダクト
11 内層
12 外層
13 保温層
14 内部流路
15 環状隙間
20 シート状体
22 無機系繊維