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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129445
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】螺旋管測定方法及び製管装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 63/32 20060101AFI20240919BHJP
   F16L 11/24 20060101ALI20240919BHJP
【FI】
B29C63/32
F16L11/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038664
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003340
【氏名又は名称】弁理士法人湧泉特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白瀧 滉司
(72)【発明者】
【氏名】末吉 博樹
【テーマコード(参考)】
3H111
4F211
【Fターム(参考)】
3H111BA15
3H111CA03
3H111CA05
3H111EA17
3H111EA18
4F211AG08
4F211AH43
4F211AP06
4F211AP11
4F211AQ01
4F211AR07
4F211AR12
4F211SA05
4F211SC03
4F211SD06
4F211SJ13
4F211SJ15
4F211SJ27
4F211SP43
4F211SP48
(57)【要約】
【課題】製管中の螺旋管の管径を作業者に負担をかけることなく把握可能な測定方法を提供する。
【解決手段】螺旋状の推進方向LDへ推進される製管装置3によって、帯状部材90を螺旋管9に製管する。帯状部材90の内周側面92には、帯長方向へ一定の配置ピッチPで印字等の標示95が配置されている。そのうち第1標示95Aを、製管装置3に設けられた第1センサ31によって検知する。第1センサ31に対し幅方向WDへ離れた第2センサ32によって第2標示95Bを検知する。第1センサ31による検知と第2センサ32による検知との間の製管装置3の移動距離を移動距離計33によって計測する。移動距離の計測値に基づいて、螺旋管9の管径を算出する
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
螺旋状の推進方向へ推進される製管装置によって螺旋管を製管する際に前記螺旋管の管径又は周長を測定する螺旋管測定方法であって、
前記螺旋管を構成する帯状部材の内周側面に帯長方向へ一定の配置ピッチで配置された標示のうち第1標示を、前記製管装置に設けられた第1センサによって検知する工程と、
前記第1センサに対し前記推進方向と直交する幅方向へ離れて前記製管装置に設けられた第2センサによって、前記標示のうち第2標示を検知する工程と、
前記第1センサによる検知と前記第2センサによる検知との間の前記製管装置の移動距離を移動距離計によって計測する工程と、
前記移動距離の計測値に基づいて、前記螺旋管の管径又は周長を算出する工程と、
を備えたことを特徴とする螺旋管測定方法。
【請求項2】
前記第1標示と前記第2標示とが前記螺旋管の互いに隣接又は離れた巻き部分に配置され、
前記配置ピッチと前記移動距離の計測値とに基づいて、前記算出を行なう請求項1に記載の螺旋管測定方法。
【請求項3】
前記第1標示と前記第2標示とが互いに同一標示であり、
前記第1センサによる前記同一標示の検知後、前記製管装置が前記螺旋管の周方向へ1周したとき、前記第2センサによる前記同一標示の検知がなされ、
前記移動距離計によって、前記螺旋管の周長が計測される請求項1に記載の螺旋管測定方法。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項に記載の螺旋管測定方法に用いる製管装置であって、
前記螺旋管の延伸前端部に配置された装置フレームと、
前記装置フレームに設けられ、前記帯状部材のうち前記延伸前端部に連なる未製管の後続帯部を挟み付けて前記螺旋管に組み込むとともに前記装置フレームを螺旋状の推進方向へ移動させる少なくとも一対の駆動ローラと、
前記装置フレームに設けられ、前記第1標示を検知する第1センサと、
前記第1センサに対し前記推進方向と直交する幅方向へ離れて前記装置フレームに設けられ、前記第2標示を検知する第2センサと、
前記第1センサによる検知と前記第2センサによる検知との間の前記装置フレームの移動距離を計測する移動距離計と、
を備えたことを特徴とする製管装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯状部材からなる螺旋管の測定方法等に関し、特に、螺旋管を製管しながら管径又は周長を測定する方法及び該方法に用いる製管装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、老朽化した下水道管等の既設管の内周に更生管をライニングすることによって、既設管を更生することは公知である(特許文献1等参照)。更生管として、帯状部材を螺旋状に巻回して製管された螺旋管が知られている。特許文献1には、帯状部材から螺旋管状の更生管を製管する自走式の製管装置が開示されている。自走式の製管装置は、更生管の延伸方向の前方の管端部に配置され、帯状部材における未製管の後続帯部を更生管に組み込みながら螺旋方向へ推進される。
【0003】
製管の際は、管径が基準値を下回らないようにする必要がある。基準値を下回っていると、流路断面積が小さ過ぎて、所要の排水流量が得られない。一般的には、作業者が、製管された更生管の縦径と横径をメジャーで測定して平均値が基準値を下回っていないかを確認している。
【0004】
特許文献1の製管装置には、ワイヤが付設されている。ワイヤが更生管の管端部の外周の螺旋方向に沿って掛け回されている。更生管を拡径気味に製管してワイヤに張り付かせる。ワイヤの長さを調節することによって、更生管の周長ひいては管径を調整できる。
特許文献2には、帯状部材の内周側面(更生管の内周面となる面)に、帯長方向に沿って目盛を設けることで、更生管の管径変化を把握することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-084728号公報
【特許文献2】特開2017-209978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
作業者が、その都度、管径をメジャーで計測するのは煩雑である。帯状部材に付された目盛から管径の変化を読み取るのも同様に煩雑である。ワイヤ付きの製管装置においても、例えば、既設管のカーブ部分などでは製管ピッチが変化するため、ワイヤだけでは実際の管径が分かりにくい。
本発明は、かかる事情に鑑み、製管中の螺旋管の管径又は周長を作業者に負担をかけることなく確実に把握できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は、螺旋状の推進方向へ推進される製管装置によって螺旋管を製管する際に前記螺旋管の管径又は周長を測定する螺旋管測定方法であって、
前記螺旋管を構成する帯状部材の内周側面に帯長方向へ一定の配置ピッチで配置された標示のうち第1標示を、前記製管装置に設けられた第1センサによって検知する工程と、
前記第1センサに対し前記推進方向と直交する幅方向へ離れて前記製管装置に設けられた第2センサによって、前記標示のうち第2標示を検知する工程と、
前記第1センサによる検知と前記第2センサによる検知との間の前記製管装置の移動距離を移動距離計によって計測する工程と、
前記移動距離の計測値に基づいて、前記螺旋管の管径又は周長を算出する工程と、
を備えたことを特徴とする。
【0008】
螺旋管の周長は、第1標示と第2標示との帯長方向に沿う距離(以下「標示間距離」と称す)及び前記移動距離を変数または未知数として含む一次関数式で表すことが出来る。標示間距離は、標示の配置ピッチの倍数(0倍、1倍を含む)である。したがって、配置ピッチが既知であれば、ひいては標示間距離が既知であれば、前記移動距離を計測することによって、螺旋管の周長を算出できる。周長を円周率で除することにより管径を算出できる。前記移動距離は第1センサと第2センサと移動距離計を用いて自動計測できるから、作業者の負担が軽減される。
なお、第1センサと第2センサとは、前記幅方向への離間に加えて、前記推進方向へずれて配置されていてもよく、この場合、そのずれ量をも加味して、螺旋管の周長を算出する。
【0009】
好ましくは、前記第1標示と前記第2標示とが前記螺旋管の互いに隣接又は離れた巻き部分に配置され、
前記配置ピッチと前記移動距離の計測値とに基づいて、前記算出を行なう。
この場合、好ましくは、第1センサが、第1標示が在る巻き部分の内周面と対面するとき、第2センサは第2標示が在る巻き部分の内周面と対面するように、第1センサと第2センサとが前記幅方向へ互いに離間される。
例えば、第1標示と第2標示とが互いに隣接する巻き部分に配置されている場合、螺旋管の周長は、前記配置ピッチ又はその倍数である前記標示間距離に対して、前記移動距離だけ大きいか小さい。(ただし、第1センサと第2センサとが前記推進方向へずれている場合、螺旋管の周長は、そのずれ量と前記移動距離との和又は差分だけ、前記配置ピッチ又は前記標示間距離より大きいか小さい。)したがって、前記配置ピッチ又は前記標示間距離と、前記移動距離(及び前記ずれ量)を、引き算又は足し算すれば、螺旋管の周長が得られる。更には管径を算出できる。
【0010】
好ましくは、前記第1標示と前記第2標示とが互いに同一標示であり、
前記第1センサによる前記同一標示の検知後、前記製管装置が前記螺旋管の周方向へ1周したとき、前記第2センサによる前記同一標示の検知がなされ、前記移動距離計によって、前記螺旋管の周長が計測される。
この場合、第1センサが、前記同一標示が在る巻き部分の内周面と対面するとき、第2センサは螺旋管の延伸方向の後方側へ1つずれた巻き部分の内周面と対面するように、第1センサと第2センサとが前記幅方向へ互いに離間される。螺旋管の周長は、第1センサによる前記同一標示の検知から第2センサによる前記同一標示の検知までの製管装置の1周分の移動距離と等しい。(ただし、第1センサと第2センサとが前記推進方向へずれている場合、螺旋管の周長は、そのずれ量と前記移動距離との和又は差分と等しい。)したがって、移動距離計による前記移動距離の計測値がそのまま螺旋管の周長を表すか、または計測した移動距離に前記ずれ量を足し算又は引き算することで螺旋管の周長が得られる。
【0011】
本発明装置は、前記螺旋管測定方法に用いる製管装置であって、
前記螺旋管の延伸前端部に配置された装置フレームと、
前記装置フレームに設けられ、前記帯状部材のうち前記延伸前端部に連なる未製管の後続帯部を挟み付けて前記螺旋管に組み込むとともに前記装置フレームを螺旋状の推進方向へ移動させる少なくとも一対の駆動ローラと、
前記装置フレームに設けられ、前記第1標示を検知する第1センサと、
前記第1センサに対し前記推進方向と直交する幅方向へ離れて前記装置フレームに設けられ、前記第2標示を検知する第2センサと、
前記第1センサによる検知と前記第2センサによる検知との間の前記装置フレームの移動距離を計測する移動距離計と、
を備えたことを特徴とする。
前記移動距離計の計測値から螺旋管の周長を算出でき、ひいては管径を算出できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、製管中の螺旋管の管径又は周長を作業者に負担をかけることなく確実に把握でき、管径又は周長の管理を的確に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係る製管装置によって螺旋管測定方法を実施しながら既設管の内周に更生管(螺旋管)をライニングする既設管更生施工の様子を示す断面図である。
図2(a)】図2(a)は、前記更生管を構成する帯状部材の一例を示す断面図である。
図2(b)】図2(b)は、図1の円部IIbの拡大断面図である。
図3図3は、前記製管装置にて製管中の更生管の斜視図である。
図4図4は、前記製管装置に設けられた計測ユニットの回路構成図である。
図5図5(a)は、前記製管装置の計測ユニットによる螺旋管測定方法の一例を第1標示検知工程で示す、更生管の内周面の平面図である。図5(b)は、同図(a)に続く第2標示検知工程を示す平面図である。
図6図6(a)は、前記製管装置の計測ユニットによる螺旋管測定方法の他の一例を第2標示検知工程で示す、更生管の内周面の平面図である。図6(b)は、同図(a)に続く第1標示検知工程を示す平面図である。
図7図7は、前記製管装置の計測ユニットによる螺旋管測定方法を、第1標示検知工程及び第2標示検知工程を同時に実行する例で示す平面図である。
図8図8は、本発明の第2実施形態を示し、製管装置の計測ユニットの回路構成図である。
図9図9(a)は、前記第2実施形態に係る製管装置の計測ユニットによる螺旋管測定方法を第1センサによる検知工程で示す、更生管の内周面の平面図である。図9(b)は、同図(a)の後の第2センサによる検知工程を示す平面図である。
図10図10は、本発明の第3実施形態を示し、図10(a)は、製管装置の計測ユニットによる螺旋管測定方法を第1センサによる検知工程で示す、更生管の内周面の平面図である。図10(b)は、同図(a)の後の第2センサによる検知工程を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面にしたがって説明する。
<第1実施形態(図1図7)>
図1は、老朽化した既設管1を更生する様子を示したものである。既設管1としては、下水道管、上水道管、農業用水管、ガス管等が挙げられる。既設管1の内壁に更生管9がライニングされている。更生管9は、長尺の帯状部材90によって構成された螺旋管である。帯状部材90は、地上のドラム5から発進人孔4を経て既設管1に導入され、更生管9(螺旋管)に製管されている。製管後、既設管1の内周と更生管9の間には裏込め材(図示せず)が充填される。
【0015】
図2(a)に示すように、帯状部材90は、合成樹脂からなる帯本体91と、これを補強する鋼製の補強帯材96とを含む。帯本体91の帯幅方向の両縁部にはそれぞれ凹凸断面の第1嵌合部93及び第2嵌合部94が設けられている。図2(a)に例示の帯状部材90は、既設管1の主にカーブ部分用であり、帯本体91には帯幅方向へ伸縮可能なベローズ97が設けられている。
なお、帯状部材の断面形状は適宜改変できる。例えば、補強帯材96を省略してもよい。ベローズ97は無くてもよい。
【0016】
図1に示すように、更生管9(螺旋管)においては、帯状部材90が螺旋状に巻回されている。図2(b)に示すように、螺旋状に巻回された帯状部材90の一周違いに隣接する嵌合部93,94どうしが凹凸嵌合によって接合されている。
【0017】
図3及び図5に示すように、帯状部材90の内周側面92には、文字、記号、図形、マーク、線などの標示95が帯長方向(更生管9の螺旋巻き方向)へ一定の配置ピッチPで設けられている。標示95は、例えば、帯状部材90の製造会社名、ロゴ、材料名、生産ロット、型式などの識別表記を含む。便宜上、図においては標示95を模式的に示す。標示95は、インク、塗料等による印字によって表されているが、凹凸を有する刻印によって形成されていてもよい。各標示95は、帯状部材90の帯長方向へ一定長さを有している。標示95は、帯状部材90の内周側面92における帯幅方向の中央部に配置されているが、これに限らず、帯幅方向の端部に配置されていてもよい。
【0018】
好ましくは、標示配置ピッチPは、更生管9の目標直径D(最適直径又は好適直径を含む)に対し、下式(A)を満たす。
D/2<P/π<2D (A)
より好ましくは、標示配置ピッチPは、更生管9の目標周長(πD)と同程度の大きさ(例えば目標周長の±10%程度以内)に設定されている。
【0019】
図1及び図3に示すように、製管時の帯状部材90は、延伸途中ないしは先に製管済みの更生管9を構成する部分と、該更生管9に連なる未製管の後続帯部90aとを含む。更生管9の管軸に沿う延伸方向EDの前方の管端部(以下「延伸前端部9e」と称す)に製管装置3が配置されている。後続帯部90aが、発進人孔4から更生管9の内部を通って、製管装置3に導入されるとともに、更生管9の延伸前端部9eに連なっている。
【0020】
図3に示すように、製管装置3は、装置フレーム3aと、駆動部10と、管端ガイド21,22と、計測ユニット30を含む。図3において二点鎖線にて模式的に示すように、装置フレーム3aは、製管装置3の駆動部10及び管端ガイド21,22等の構成要素を保持又は収容するフレームであり、延伸前端部9eから内周側へ少し離れるように装置フレーム3aに支持されている。装置フレーム3aは、前後方向(推進方向LD)を更生管3の螺旋状の巻回方向へ向け、幅方向WDを延伸方向ED(管軸方向)に略沿わせ、高さ方向HDを管径方向へ向けて、延伸前端部9eの周方向の一箇所に配置されている。
【0021】
装置フレーム3aに駆動部10が設けられている。駆動部10は、少なくとも一対の駆動ローラ11,12とモータ等の回転駆動機構(図示省略)を含み、延伸前端部9eの内周側に配置されている。駆動ローラ11,12の軸線は、装置フレーム3aひいては製管装置3の幅方向WDへ向けられている。一対の駆動ローラ11,12によって、後続帯部90aが厚み方向の両側から挟み付けられている。前記回転駆動機構によって駆動ローラ11,12が回転駆動されることにより、後続帯部90aが斜めに押し込まれて、後続帯部90aの第2嵌合部94が延伸前端部9eの第1嵌合部93と嵌合される。これによって、後続帯部90aが更生管9に組み込まれ、更生管9が延伸される。同時に、製管装置3が推進方向LDへ推進される。
一対の駆動ローラ11,12によって、後続帯部90aの第2嵌合部94と延伸前端部9eの第1嵌合部93とが直接に挟み付けられて嵌合されるようになっていてもよい。
【0022】
図3に示すように、装置フレーム3aの高さ方向HDの底部には、管端ガイド21,22が推進方向LDの前後に離れて設けられている。前側の管端ガイド21は、更生管9の延伸前端部9eにおける後続帯部90aとの連続部分9fより推進前方に配置されており、更生管9の延伸前端部9eを内周側から押さえる押さえ部23と、外周側から受ける受け部25を有している。押さえ部23には、延伸前端部9eとの摩擦抵抗力を調節可能なブレーキ機構27が設けられている。受け部25が、延伸前端部9eに推進方向LDへスライド可能に係止されている。
【0023】
後側の管端ガイド部22は、前側の管端ガイド21に対して更生管9のひと巻き分、延伸方向EDの前方へずれて、後続帯部90aとの連続部分9fの直近かつ推進後方に配置されている。後側の管端ガイド部22は、延伸前端部9eを内周側から押さえる押さえローラ24と、外周側から受ける受け部26を有している。受け部26が、延伸前端部9eに推進方向LDへスライド可能に係止されている。
【0024】
図3に示すように、装置フレーム3aには計測ユニット30が設けられている。計測ユニット30は、後続帯部90aとの連続部分9fと押えローラ24との間に配置されているが、本発明はこれに限らない。計測ユニット30は、第1センサ31と、第2センサ32と、移動距離計33を含む。第1センサ31及び第2センサ32は、更生管9の内周面と対面するように配置され、それぞれ標示95を検知可能である。センサ31,32として、例えば反射型光電センサが用いられている。なお、これに限らず、センサ31,32として撮像素子を用いてもよい。
【0025】
図4に示すように、第1センサ31と第2センサ32とは、製管装置3の推進方向LDと直交する幅方向WDへ互いに離れている。幅方向WDに沿うセンサ31,32どうしの離間距離D30は、好ましくは、帯状部材90の有効帯幅W(全幅から嵌合部93,94どうしの重なり幅を差し引いた寸法(図5(a)))と同等であり、更生管9の螺旋ピッチと近似する大きさである。推進方向LDにおけるセンサ31,32の位置は互いに揃えられている。
【0026】
詳しくは、図4に示すように、第1センサ31は、延伸前端部9eにおける後続帯部90aとの連続部分9fに対して延伸後方(図4において右方)に隣接する二周目巻き部分9ebと対面するように配置されている。第2センサ32は、第1センサ31よりも延伸方向EDの前方(図4において左方)に配置され、延伸前端部9eにおける後続帯部90aとの連続部分9fを含む先頭巻き部分9eaと対面されている。
【0027】
図4に示すように、第1センサ31と第2センサ32との中間に移動距離計33が配置されている。なお、移動距離計33の配置場所は、第1センサ31と第2センサ32との間に限らず、これらセンサ31,32の間の部分の外部に配置されていてもよい。移動距離計33は、製管装置3の移動距離を計測するものであり、例えば、距離計測部33aと、接触端子33bとを含む。距離計測部33aは、ロータリーエンコーダーによって構成され、その入力軸に円盤形状の接触端子33bが設けられている。接触端子33bの外周が更生管9の内周面と接触している。製管装置3が移動されると、接触端子33bが更生管9の内周面上を転動(回転)され、その回転量ひいては製管装置3の移動距離が距離計測部33aによって計測される。
【0028】
図4に示すように、センサ31,32及び移動距離計33からの出力信号線が、処理部34に接続されている。処理部34は、マイクロコンピュータ等によって構成され、各センサ31,32による検知信号及び移動距離計33による計測信号に基づき、更生管9の延伸前端部9eの管径を算出する。処理部34にモニター等の表示部35が接続されている。算出された管径の値が表示部35に表示される。
処理部34及び表示部35は、装置フレーム3aに設けられていてもよく、装置フレーム3aと離れてケーブル等で接続されていてもよい。
【0029】
製管装置3による更生管9(螺旋管)の製管中、更生管9の管径が、次のようにして測定される。
図5は、製管した更生管9の周長Lが標示配置ピッチPより短い場合を例示したものである。この場合、図5(a)に示すように、製管装置3が製管しながら推進方向LDへ推進されることで、センサ31,32のうち、先ず第1センサ31が、先頭巻き部分9eaと隣接する二周目巻き部分9ebの標示95(以下「第1標示95A」と称す)を検知する。
【0030】
処理部34は、移動距離計33によって、第1標示95Aの検知地点(以下「第1検知地点」と称す)からの製管装置3の移動距離を計測する。好ましくは、第1検知地点は、第1標示95Aにおける推進方向に沿う終端95Aeとする。すなわち、第1センサ31による第1標示95Aの検知が終わった時点からの移動距離を計測する。
【0031】
図5(b)に示すように、製管装置3の推進によって、やがて第2センサ32が先頭巻き部分9eaの標示95(以下「第2標示95B」と称す)を検知する。第2標示95Bは、第1標示95Aに対して、帯状部材90の帯長方向(更生管9の螺旋巻き方向)へ標示配置ピッチPだけ離れて隣接している。
【0032】
処理部34は、移動距離計33による、第1検知地点95Aeから第2標示95Bの検知地点(以下「第2検知地点」と称す)までの製管装置3の移動距離計測値L1を内蔵揮発メモリに一時記憶する。好ましくは、第2検知地点は、第2標示95Bにおける推進方向に沿う終端95Beとする。すなわち、第2センサ32による第2標示95Bの検知が終わる時までの移動距離を計測して記憶する。
【0033】
続いて、処理部34は、下式(1)の演算を行なうことによって、更生管9の延伸前端部9eの周長Lを求める。
=P-L1 (1)
さらに、下式(2)により、更生管9の延伸前端部9eの管径Dを求める。
=L/π (2)
下式(3)により。管径Dを直接求めてもよい。
=(P-L1)/π (3)
【0034】
一方、図6に示すように、製管した更生管9の周長Lが標示配置ピッチPより長い場合、図6(a)に示すように、先に、第2センサ32が先頭巻き部分9eaの第2標示95Bを検知する。図6(b)に示すように、続いて、第1センサ31が二周目巻き部分9ebの第1標示95Aを検知する。
【0035】
そして、移動距離計33によって、第2検知地点95Beから第1検知地点95Aeまでの製管装置3の移動距離L1’が計測される。
処理部34は、下式(1’)及び(2’)又は(3’)により管径Dを算出する。
=P+L1’ (1’)
=L/π (2’)
=(P+L1)/π (3’)
【0036】
図7に示すように、製管した更生管9の周長Lが標示配置ピッチPとちょうど一致している場合、第1センサ31が第1標示95Aを検知するのと同時に、第2センサ32が第2標示95Bを検知する。
移動距離計33による移動距離計測値はL1(L1’)=0である。
処理部34は、L1=0を式(1)又は(3)に代入するか、L1’=0を式(1’)又は(3’)に代入して、管径Dを算出する。
【0037】
このようにして、製管装置3が1周~数周する度に、二周目巻き部分9ebの標示95を第1標示95Aとし、先頭巻き部分9eaの標示95を第2標示95Bとして、計測ユニット30によって更生管9の延伸前端部9eの管径Dを測定する。
管径Dの測定結果は、表示部35に表示される。併せて周長Lが表示されるようにしてもよい。
【0038】
これによって、更生管9の製管中に管径を自動的に確実に測定して作業者に報知できる。好ましくは、±1mm以下の精度で管径を求めることができる。作業者がメジャーで管径を測定する必要が無く、作業者への負担を軽減できる。既設管1のカーブ部分等における製管時にベローズ97が伸縮したとしても、管径を確実に測定できる。作業者は、表示部35の表示によって、製管した更生管9の管径を確認して、管径が基準値(許容下限値)を下回らないかどうかを判断する。処理部34の判定によって、管径算出値が基準値を下回りそうな場合ないしは下回った場合、アラームが発報されるようにしてもよい。
【0039】
管径が基準値を下回りそうな場合ないしは下回った場合は、例えば、管端ガイド21のブレーキ機構27によるブレーキ力を高める。これによって、後続帯部90aの供給速度に対して製管装置3の推進速度が遅くなり、延伸前端部9eを拡径製管できる。この結果、更生管9の管径を所望範囲に維持でき、更生管9の所要排水流量が確保できる。
管径が大き過ぎる場合は、ブレーキを緩める等して縮径操作を行なう。これによって、管径を適切な大きさに保持できる。
【0040】
次に、本発明の他の実施形態を説明する。以下の実施形態において既述の形態と重複する構成に関しては図面に同一符号を付して説明を省略する。
<第2実施形態(図8図9)>
図8に示すように、本発明の第2実施形態においては、第1センサ31と第2センサ32の配置が第1実施形態(図4)とは逆になっている。詳しくは、第1センサ31が延伸方向EDの前側(図8において左側)に配置され、第2センサ32が延伸方向EDの後側(図8において右側)に配置されている。センサ31,32どうしの離間距離Dが、帯状部材90の有効帯幅Wと同等である点は、第1実施形態(図4)と同様である。
【0041】
図9に示すように、第2実施形態においては、標示98が、帯状部材90の帯幅方向へ真っ直ぐ延びる線状になっている。なお、標示98が、第1実施形態(図3図5図7)の標示95と同様に、帯状部材90の製造会社名、材料名、生産ロットなどの識別表記によって構成され、帯状部材90の帯長方向へ延びていてもよい、
【0042】
第2実施形態においては、第1標示と第2標示とが互いに同一標示98Cである。
図9(a)に示すように、標示98Cが先頭の巻き部分9ecに在るとき、第1センサによって標示98Cが検知される。このとき、標示98Cは「第1標示」を構成する。
移動距離計33によって、第1センサ31による標示98Cの検知後の製管装置3の移動距離が計測される。具体的には、製管装置3が単位距離だけ推進される都度、移動距離計33から計測パルスが処理部34へ出力される。計測パルス数に単位距離を乗じることで移動距離が求まる。
【0043】
図9(b)に示すように、第1センサ31による標示98Cの検知後、製管装置3が製管しながら更生管9の周方向へ1周すると、製管装置3が延伸方向の前方(図9において左方)へひと巻き分ずれて、新たな先頭の巻き部分9edが形成される。標示98Cが在る巻き部分9ecは、二周目の巻き部分になる。該標示98Cが第2センサ32によって検知される。このとき、標示98Cは「第2標示」を構成する。
【0044】
処理部34は、第1センサ31による標示98Cの検知から第2センサ32による標示98Cの検知までの、移動距離計33による移動距離計測値を取得する。具体的には、第1センサ31による標示98Cの検知時から第2センサ32による標示98Cの検知時までの移動距離計33による計測パルス数に単位距離を乗じることで、移動距離を求める。この移動距離は、更生管9の延伸前端部9eの周長Lと対応する。言い換えると、移動距離計33によって更生管9の延伸前端部9eの周長Lが計測される。
【0045】
さらに、処理部34は、次式(4)によって延伸前端部9eの管径Dを算出して、表示部35に表示させる。
=L/π (4)
【0046】
続いて、新たな先頭の巻き部分9edの標示98Dを第1センサ31が検知する。その後、製管装置3が1周した時点で、第2センサ32が同じ標示98Dを検知する。そして、第1センサ31による標示98Dの検知から第2センサ32による標示98Dの検知までの移動距離を移動距離計33によって計測し、処理部34によって管径を算出する。
このようにして、更生管9の製管中、標示95ごとにセンサ31,32による検知及び移動距離計33による計測を行なうことによって、1周製管する都度、製管した1周分の管径を測定することができる。
【0047】
<第3実施形態(図10)>
図10(a)に示すように、本発明の第3実施形態は、第2実施形態(図8図9)の変形例であり、幅方向Wに離れたセンサ31,32どうしが、推進方向LDへずれて配置されている。例えば、第2センサ32が、第1センサ31より推進方向LDの後方へ距離L2だけずれている。第2センサ32は、駆動ローラ11,12用のモータボックス(図示せず)に取り付けられていてもよい。
【0048】
センサ31,32どうしが推進方向LDへずれている場合、そのずれ量L2を加味して、更生管9の周長及び管径の演算を行なう。
具体的には、第1センサ31による標示98Cの検知後(図10(a))、製管装置3が製管しながら更生管9の周方向へちょうど1周し、更に、図10(b)に示すように、ずれ量L2と同じ距離だけ推進されたとき、第2センサ32によって同一標示98Cが検知される。したがって、移動距離計33による移動距離の計測値L3は、更生管9の周長Lとずれ量L2とを合算した値となる。
【0049】
このため、処理部34は、下式(5)の演算を行なうことによって、更生管9の周長Lを求める。
=L3-L2 (5)
さらに、式(2)により、更生管9の延伸前端部9eの管径D(=L/π)を求める。
なお、第2センサ32が、第1センサ31より推進方向LDの前方(図10において上側)へ距離L2’だけずれている場合は、式(5)に代えて、下式(5’)の演算を行なうことによって、更生管9の周長Lを求める。
=L3+L2’ (5’)
【0050】
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨に反しない範囲において種々の改変をなすことができる。
例えば、帯状部材90の帯長方向(螺旋巻き方向)に沿う、標示95,98の配置ピッチは、更生管9の目標周長L0とは無関係の大きさでもよく、例えば1メートルでもよく、1メートルの倍数であってもよい。
【0051】
第1実施形態(図4図7)において、帯状部材90の帯長方向(螺旋巻き方向)に沿って、第1標示95Aと第2標示95Bとの間にn個(nは1以上の整数)の他の標示95が存在していてもよい。この場合、式(1)、(3)、(1’)、(3’)中のP(標示配置ピッチ)を、(n+1)×Pに置換して演算を行なうとよい。(n+1)×Pは、帯長方向(螺旋巻き方向)に沿う第1標示95Aから第2標示95Bまでの標示間距離を表す。
【0052】
第2実施形態(図8図9)において、第1センサ31による同一標示98Cの検知後、製管装置3が一周するまでの間に、第2センサ32がm個の非同一標示98を横切ってもよい。
第2センサ32によるこれらm個の標示検知信号をスルー(無視)し、(m+1)番目の標示検知信号を同一標示98Cと判定するようにしてもよい。
或いは、第1センサ31による同一標示98Cの検知地点を起点とする製管装置3の移動距離を移動距離計33によって計測しながら、その計測値が更生管9の予想周長の近傍範囲(例えば予想周長の±10%程度以内)になったときだけ、第2センサ32による検知が実行されるようにしてもよい。予想周長は、前記目標周長でもよく、直前に測定した周長でもよい。
第1センサ31による同一標示98Cの検知時に、当該同一標示98Cにマーキングを塗布等で付加するマーキング機構を製管装置3に搭載することによって、第2センサ32が前記マーキングを検知するようにしてもよい。
【0053】
帯状部材90の内周側面92には、本発明の螺旋管計測用の標示95,98を構成しない一般識別標示(製造会社名、材料名、生産ロット、型式などを含む)が、標示95,98とは異なるピッチで設けられていてもよい。言い換えると、帯状部材90の内周側面92に前記一般識別標示とは別途に螺旋管計測用の標示95,98を所定の標示配置ピッチPで設けてもよい。
【0054】
第1実施形態(図4)において、更生管9(螺旋管)における第1標示95Aが在る巻き部分9eaと、第2標示95Bが在る巻き部分9ebとの間に、1又は複数の他の巻き部分が介在されていてもよい。第1センサ31と第2センサ32とが、幅方向WDへ更生管9(螺旋管)の螺旋ピッチの複数倍離れていてもよい。
【0055】
第1実施形態(図4)において、第2実施形態(図8)と同様に、第2センサ32が、第1センサ31よりも延伸方向EDの後方側(図4において右方)に配置されていてもよい。
第1実施形態(図4)において、第3実施形態(図10)と同様に、 センサ31,32どうしが推進方向LDへずれて配置されていてもよい。この場合、そのずれ量を加味して、螺旋管測定を行なう。
【0056】
移動距離計34は、製管装置3の移動距離を計測可能であればよく、必ずしも装置フレーム3aに設けられている必要は無く、例えば既設管1内又は人孔4等に設置されたレーザー距離計であってもよい。
【0057】
本発明は、既設管にライニングされる更生管以外の螺旋管にも適用可能である。
製管装置が、螺旋管の延伸前端部を内周側から規制するリンクローラ等の内周規制体を備えていてもよい。
製管装置が、螺旋管の延伸前端部を外周側から規制するワイヤ等の外周規制体を備えていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、例えば老朽化した下水道管の更生技術に適用可能である。
【符号の説明】
【0059】
ED 延伸方向
LD 推進方向
WD 幅方向
1 既設管
3 製管装置
3a 装置フレーム
9 更生管(螺旋管)
9e 延伸前端部(管端部)
9f 連続部分
10 駆動部
21,22 管端ガイド
27 ブレーキ機構
30 計測ユニット
31 第1センサ
32 第2センサ
33 移動距離計
34 処理部
35 表示部
90 帯状部材
90a 後続帯部
92 内周側面
95 標示
95A 第1標示
95B 第2標示
95Ae 第1検知地点(第1センサによる検知地点)
95Be 第2検知地点(第2センサによる検知地点)
98 標示
98C 同一標示

図1
図2(a)】
図2(b)】
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10