(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129449
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】工作機械及び工作機械の制御方法
(51)【国際特許分類】
B23Q 17/22 20060101AFI20240919BHJP
B23Q 3/157 20060101ALI20240919BHJP
B23B 25/06 20060101ALI20240919BHJP
G05B 19/401 20060101ALI20240919BHJP
【FI】
B23Q17/22 B
B23Q3/157 C
B23B25/06
G05B19/401
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038668
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】000137856
【氏名又は名称】シチズンマシナリー株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡部 修一
(72)【発明者】
【氏名】林 領射
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 敏之
(72)【発明者】
【氏名】星出 春奈
【テーマコード(参考)】
3C002
3C029
3C045
3C269
【Fターム(参考)】
3C002AA01
3C002DD14
3C002EE01
3C002GG02
3C002KK00
3C002KK01
3C002LL09
3C029AA10
3C029AA12
3C045HA07
3C269AB01
3C269BB07
3C269EF15
3C269JJ18
3C269MN09
3C269MN14
3C269MN16
3C269MN32
3C269QD02
(57)【要約】
【課題】無線通信式の計測プローブの関連付けを簡易的に実行できる工作機械を提供する。
【解決手段】計測プローブを保持して切削対象物に当接させて、切削対象物の寸法計測を行う工作機械であって、切削対象物が取り付けられる主軸と、計測プローブを保持可能な複数の保持部と、計測プローブが切削対象物に接触した後に発信した信号を受信する受信機と、複数の保持部の動作を制御する制御部と、を備え、制御部は、複数の保持部のうち一つの保持部を移動させ、受信機が複数の保持部のいずれとも関連付けされていない計測プローブから信号を受信した場合、受信機が受信した信号に基づいて、移動した保持部と受信機に信号を発信した計測プローブとを関連付けることを特徴とする。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測プローブを保持して切削対象物に当接させて、切削対象物の寸法計測を行う工作機械であって、
切削対象物が取り付けられる主軸と、
計測プローブを保持可能な複数の保持部と、
計測プローブが切削対象物に当接した後に発信した信号を受信する受信機と、
複数の前記保持部の動作を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、複数の前記保持部のうち一つの保持部を移動させ、前記受信機が複数の前記保持部のいずれとも関連付けされていない計測プローブから信号を受信した場合、前記受信機が受信した信号に基づいて、移動した前記保持部と、前記受信機に信号を発信した計測プローブとを関連付けることを特徴とする工作機械。
【請求項2】
前記制御部は、計測プローブの関連付け動作の際に、移動した前記保持部と、前記受信機に信号を発信した計測プローブとを関連付けることを特徴とする請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
前記保持部は、切削対象物を切削する工具を保持可能であることを特徴とする請求項1に記載の工作機械。
【請求項4】
切削対象物を切削する工具を保持可能な工具保持部を複数有する刃物台と、
複数の前記工具保持部のうちいずれかの工具保持部を、計測プローブを保持する前記保持部として設定可能な設定部と、
を更に備えることを特徴とする請求項3に記載の工作機械。
【請求項5】
計測プローブを保持して切削対象物に当接させて、切削対象物の寸法計測を行う工作機械の制御方法であって、
前記工作機械は、切削対象物が取り付けられる主軸と、計測プローブを保持可能な複数の保持部と、計測プローブが切削対象物に接触した後に発信した信号を受信する受信機と、を備え、
複数の前記保持部のうち一つの保持部を移動させ、移動させた前記保持部が保持した計測プローブを対象物に当接させる当接工程と、
前記受信機が受信した信号に基づいて、移動させた前記保持部と、前記受信機に信号を発信した計測プローブとを関連付ける関連付け工程と、
を含むことを特徴とする工作機械の制御方法。
【請求項6】
前記対象物は、前記主軸に保持された切削対象物であることを特徴とする請求項5に記載の工作機械の制御方法。
【請求項7】
前記工作機械は、切削対象物を切削する工具を保持可能な工具保持部を複数備え、
前記当接工程の前に、複数の前記工具保持部のうちいずれかの工具保持部を、計測プローブを保持する前記保持部として設定する設定工程を更に含むことを特徴とする請求項5に記載の工作機械の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計測プローブにより計測を行う工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械においては、タッチプローブ等の計測プローブにより機内で切削対象物の寸法計測が行われる。工作機械の機内で計測を行うための計測プローブとしては、無線通信式の計測プローブが代表的である。
【0003】
切削対象物の寸法計測に無線通信式の計測プローブが用いられる場合、計測プローブと計測プローブが発信した信号を受信する受信機の関連付けや、計測プローブと計測プローブを保持する保持部の関連付けの設定が予め行われる必要がある。特許文献1には、計測プローブを識別するためのアイデンティティコードをユーザが手動で設定して、計測プローブと受信機とを関連付ける構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、計測プローブと受信機や保持部との関連付けをユーザが手動で行うことは手間である。更に、ユーザが誤って関連付けを行った場合には、誤った計測プローブが呼び出されて、計測プローブが破損する等の問題が発生し得る。
【0006】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであって、無線通信式の計測プローブの関連付けを簡易的に実行できる工作機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(態様1)
上記課題を解決するため、本発明の態様1に係る工作機械は、計測プローブを保持して切削対象物に当接させて、切削対象物の寸法計測を行う工作機械であって、切削対象物が取り付けられる主軸と、計測プローブを保持可能な複数の保持部と、計測プローブが切削対象物に接触した後に発信した信号を受信する受信機と、複数の前記保持部の動作を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、複数の前記保持部のうち一つの保持部を移動させ、前記受信機が複数の前記保持部のいずれとも関連付けされていない計測プローブから信号を受信した場合、前記受信機が受信した信号に基づいて、移動した前記保持部と、前記受信機に信号を発信した計測プローブとを関連付ける。
【0008】
(態様2)
上記態様1において、前記制御部は、計測プローブの関連付け動作の際に、移動した前記保持部と、前記受信機に信号を発信した計測プローブとを関連付けてもよい。
【0009】
(態様3)
上記態様1において、前記保持部は、切削対象物を切削する工具を保持可能であってもよい。
【0010】
(態様4)
上記態様1において、工作機械は、切削対象物を切削する工具を保持可能な工具保持部を複数有する刃物台と、複数の前記工具保持部のうちいずれかの工具保持部を、計測プローブを保持する前記保持部として設定可能な設定部と、を更に備えてもよい。
【0011】
(態様5)
上記課題を解決するため、本発明の態様6に係る工作機械の制御方法は、計測プローブを保持して切削対象物に当接させて、切削対象物の寸法計測を行う工作機械の制御方法であって、前記工作機械は、切削対象物が取り付けられる主軸と、計測プローブを保持可能な複数の保持部と、計測プローブが切削対象物に接触した後に発信した信号を受信する受信機と、を備え、複数の前記保持部のうち一つの保持部を移動させ、移動させた前記保持部が保持した計測プローブを対象物に当接させる当接工程と、前記受信機が受信した信号に基づいて、移動させた前記保持部と、前記受信機に信号を発信した計測プローブとを関連付ける関連付け工程と、を含む。
【0012】
(態様6)
上記態様5において前記対象物は、前記主軸に保持された切削対象物であってもよい。
【0013】
(態様7)
上記態様5において、前記工作機械は、切削対象物を切削する工具を保持可能な工具保持部を複数備え、前記当接工程の前に、複数の前記工具保持部のうちいずれかの工具保持部を、計測プローブを保持する前記保持部として設定する設定工程を更に含んでもよい。
【0014】
なお、上記各態様の構成は、可能な限り組み合わせて採用し得る。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、無線通信式の計測プローブの関連付けを簡易的に実行できる工作機械を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1実施例に係る工作機械の概略構成を示す外観図である。
【
図2】第1実施例に係る工作機械の内部の概略構成を示すブロック図である。
【
図4】第1実施例に係る計測プローブの関連付け方法のフローチャートである。
【
図5】第2実施例に係る工作機械の内部の概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。なお、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状それらの相対配置などは、発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものである。すなわち、この発明の範囲を以下の実施の形態に限定する趣旨のものではない。
【0018】
<第1実施例>
(工作機械100)
まず、本発明の第1実施例に係る工作機械100の概略構成について説明する。
図1(a)、(b)は、第1実施例に係る工作機械100の概略構成を示す外観図である。
図1(a)は工作機械100の前面側を示し、
図1(b)は工作機械100の後面側を示す。
【0019】
工作機械100の前面側には、スライドして開閉可能なカバー51と、加工動作等を工作機械100に指示するためにユーザが操作する操作部53が設けられている。カバー5
1が開いた状態において、ユーザは工作機械100の内部にアクセスして、切削工具やワーク(切削対象物)、計測プローブを工作機械100に取り付けることが可能である。また、加工時においてカバー51は閉じた状態でロックされ、異物の工作機械100内部への侵入や加工中に発生する切りくずの工作機械100外部への飛散が防止される。
【0020】
操作部53は、ユーザが各種設定を行うためのユーザインターフェースである。ユーザは操作部53を通じて加工プログラムを作成し、工作機械100に加工動作や計測動作を実行させることができる。また、操作部53には表示パネルが設けられ、ユーザは表示パネルを通じて計測結果やエラー発生などを知得できる。
【0021】
工作機械100の後面側には、ワークの寸法計測等に用いられる計測プローブから発信された信号を受信するための複数の受信機43が設けられている。工作機械100の内部で計測プローブがワークに当接して信号を発信すると、その計測プローブに対応する受信機43が信号を受信する。工作機械100は、受信機43が信号を受信したことを検出すると計測プローブの移動を停止して、計測プローブとワークの当接部の位置情報を取得し記憶する。そして、工作機械100は複数の位置情報に基づいてワークの寸法を算出することができる。
【0022】
次に、
図2を参照して、工作機械100の内部構成について説明する。
図2は、工作機械100の内部の概略構成を示すブロック図である。第1実施例の工作機械100は、複数のワーク保持部と、複数の刃物台と、ワーク保持部と刃物台の動作を制御する制御部31と、を備える。なお、
図2は工作機械100の構成を説明するための図であり、各ワーク保持部や工具保持部の配置位置や配置方向を限定するものではない。
【0023】
工作機械100は、主軸でワークを保持するワーク保持部として、第1ワーク保持部21と、第2ワーク保持部23と、を備える。第1ワーク保持部21は、ワークを支持してワークの撓みを軽減するガイドブッシュ211と、ワークを保持してワークと一体的に回転する第1主軸212と、を有する。第1主軸212は正面主軸であり、保持したワークの回転軸線方向に移動可能に構成されている。一方、第2ワーク保持部23は、ワークを保持してワークと一体的に回転する第2主軸231を有する。第2主軸231は背面主軸であり、保持したワークの回転軸線方向を含む水平方向に移動可能に構成されている。
【0024】
第1主軸212と第2主軸231とは互いに反対方向を向いて配置されている。このような構成により、第1主軸212で保持されたワークの一方の端面を加工した後に、ワークを切り落とし、そのワークを第2主軸231で保持してワークの他方の端面を加工することが可能である。
【0025】
工作機械100は、くし刃形の第1刃物台11と、タレット形の第2刃物台13と、くし刃形の第3刃物台15と、を備える。くし刃形の第1刃物台11と第3刃物台15には切削工具を保持可能な複数の工具保持部が列状に配置されている。タレット形の第2刃物台13は、回転可能に構成され、複数の工具保持部が第2刃物台13の回転軸線を中心に円状に配置されている。それぞれの刃物台は、第1主軸212や第2主軸231に対して相対的に移動可能に構成されている。工具保持部に保持された切削工具とワーク保持部に保持されたワークとが相対的に移動して切削工具がワークを切削することで、ワークが所望の形状に加工される。
【0026】
第1刃物台11は、工具保持部111、112、113を有し、主に正面側の第1ワーク保持部21に保持されたワークの切削時に駆動される。第2刃物台13は、工具保持部131、132、133、134を有する。第3刃物台15は、工具保持部151、152、153、154を有し、主に背面側の第2ワーク保持部23に保持されたワークの切
削時に駆動される。それぞれの工具保持部は、同一の切削工具や計測プローブを保持することが可能である。なお、刃物台に設けられる工具保持部の数や配置位置は、
図2に示されるものに限定されず、種々の変更が可能である。
【0027】
工作機械100は、上述の通り複数の受信機43を備える。複数の受信機43は、それぞれ異なる計測プローブ41から信号を受信するように構成されている。
図2には、三つの計測プローブ41が工作機械100に取り付けられている様子が示されている。以下、必要に応じて符号に添え字を付して、三つの計測プローブ41と三つの受信機43を区別して説明する。
図2に示される構成例においては、第1刃物台11の工具保持部111に計測プローブ41aが、第2刃物台13の工具保持部131に計測プローブ41bが、第3刃物台15の工具保持部151に計測プローブ41cがそれぞれ取り付けられている。また、計測プローブ41aが発信した信号は受信機43aが受信し、計測プローブ41bが発信した信号は受信機43bが受信し、計測プローブ41cが発信した信号は受信機43cが受信する。
【0028】
なお、第1実施例においては、一つの計測プローブに対して一つの受信機が設けられているが、複数の計測プローブの信号を識別して受信できる一つの受信機のみが設けられていてもよい。
【0029】
工作機械100の制御装置である制御部31は、操作部53への入力結果等に基づいて、第1刃物台11、第2刃物台13、第3刃物台15、第1ワーク保持部21、第2ワーク保持部23を駆動し、加工動作や計測動作を実行する。ワークの計測動作において、制御部31は受信機43a~43cのいずれかが信号を受信したことを検出すると、信号を受信した受信機43に対応する計測プローブ41とワークの当接部の位置情報を取得する。そして、制御部31は複数の位置情報に基づいてワークの寸法を算出する。
【0030】
(計測プローブ)
次に、
図3を参照して、計測プローブ41についてより詳細に説明する。計測プローブ41は、無線通信式のタッチセンサプローブである。
図3は、計測プローブ41の説明図であり、第1ワーク保持部21に保持されたワーク25に計測プローブ41が当接した様子を概略的に示す。計測プローブ41は、球状のスタイラス411と、信号を発信する発信機412と、工具保持部に係合するアダプタとして機能するシャンク413と、を有する。
【0031】
シャンク413は、第1刃物台11、第2刃物台13や第3刃物台15に設けられた工具保持部に係合可能に構成されている。すなわち、ユーザはワークの加工形状や計測寸法に合わせて、複数の工具保持部の中から最適な位置に設けられた工具保持部を選択して計測プローブ41を取り付けることができる。このような構成により、計測プローブ41とワーク等の干渉を避けると共に、計測動作の作業効率を向上できる。更に、計測プローブ専用の保持部を工作機械に設ける必要がないため、工作機械の大サイズ化や製造コストの増加を防ぐことができる。
【0032】
刃物台が移動して刃物台の工具保持部に保持された計測プローブ41のスタイラス411がワーク25に当接すると、発信機412はスキップ信号Skを発信する。受信機43がスキップ信号Skを受信すると、制御部31は刃物台の移動を停止し、スタイラス411とワーク25の当接部の位置情報を取得する。当接部の位置情報は、刃物台の位置情報やスタイラス411の形状に基づいて取得することが可能である。
【0033】
例えばワーク25の外径を計測する場合、制御部31は、スタイラス411をワーク25の外周面の一端と他端に当接させるように刃物台を駆動し、ワーク25の外周面の一端
の位置情報と他端の位置情報に基づいてワーク25の外径を算出する。そして、計測動作が完了すると操作部53の表示パネルに計測結果が表示される。
【0034】
制御部31は、計測動作の際に計測プローブ41とその計測プローブ41を保持する工具保持部とを関連付けた関連付け情報に基づいて刃物台を駆動する。従って、計測プローブ41によるワークの寸法計測が適切に行われるためには、制御部31は予め計測プローブ41がどの工具保持部に取付けられているか把握している必要がある。また、工作機械100に複数の計測プローブ41が設けられる場合、適切に刃物台を駆動し寸法を計測するために、制御部31はそれぞれの計測プローブ41を区別して計測プローブ41と工具保持部の関連付け情報を記憶する必要がある。言い換えると、計測動作を実行するためには、事前に工作機械100に取り付けられた計測プローブ41が工具保持部に割り当てられる必要がある。
【0035】
第1実施例においては、制御部31は計測プローブ41と工具保持部とを関連付けるため、計測プローブ41が発信するスキップ信号Skのアドレスと工具保持部を関連付けて記憶する。スキップ信号Skのアドレスはそれぞれの計測プローブ41毎に個別に設定されているため、制御部31は複数の計測プローブ41を区別して工具保持部と関連付けて記憶できる。
【0036】
例えば、
図2に示される構成例においては、計測プローブ41aは第1刃物台11の工具保持部111に関連付けられる。同様に、計測プローブ41bは第2刃物台13の工具保持部131に関連付けられ、計測プローブ41cを第3刃物台15の工具保持部151に関連付けられる。このような計測プローブ41と工具保持部との関連付け設定が予め行われることで、制御部31は計測動作の際に各刃物台を正確に駆動し、所望の位置情報を取得できる。
【0037】
しかし、計測プローブ41と工具保持部とを手動で関連付けする必要がある場合、その関連付け作業は手間となる。更に、計測プローブ41が誤った工具保持部に関連付けられた場合、計測プローブがワーク等に干渉して破損するおそれもある。特に、計測プローブ41を複数取り付ける必要がある場合、関連付け作業の手間はより一層増大する上に、誤った関連付けが行われるおそれも増大する。
【0038】
そこで、本発明においては、関連付け動作の手間軽減及び計測プローブの破損防止のため、計測プローブ41と工具保持部の関連付けが略自動的に行われるように工作機械100は構成されている。以下、
図4を参照して、本発明に係る計測プローブ41と工具保持部の関連付け方法について説明する。
【0039】
(関連付け方法)
図4は、計測プローブ41と工具保持部の関連付け方法のフローチャートである。
図4に示されるフローチャートに沿って、
図2に示される構成例を例に、計測プローブ41と工具保持部の関連付け方法について説明する。第1実施例においては、ワークと計測プローブ41が工作機械100に取り付けられた状態で行われる計測プローブ41の関連付け動作の際に、計測プローブ41と工具保持部の関連付けが行われる。
【0040】
計測プローブ41と工具保持部の関連付けにおいては、ユーザはまず計測プローブ41を取り付けた工具保持部をプローブ取付け箇所として設定する設定工程を行う(ステップS01)。第1実施例においては、操作部53がプローブ取付け箇所の設定部としての役割を果たす。プローブ取付け箇所の設定にあたっては、ユーザが操作部53を介して工具保持部を入力する構成としてもよいし、操作部53の表示パネルに予め定められた取付け候補箇所として複数の工具保持部が表示されて、ユーザがその中から選択する構成として
もよい。
【0041】
本構成例の場合、ユーザは設定工程で第1刃物台11の工具保持部111、第2刃物台13の工具保持部131、及び第3刃物台15の工具保持部151をプローブ取付け箇所として設定する。このとき、それぞれのプローブ取付け箇所に対して、複数の計測プローブ41のうちどの計測プローブが取り付けられたかについては設定される必要がない。すなわち、ユーザは計測プローブ41a、41b、41cを区別することなく、単にいずれかの計測プローブ41が取り付けられた箇所として工具保持部111、131、151を設定する。
【0042】
プローブ取付け箇所の設定完了後、計測プローブ41の関連付け動作が開始される(ステップS02)。すると、制御部31は計測プローブ41aをワークに当接させるように第1刃物台11を移動させる当接工程を実行する。ここで、第1刃物台11が移動しても計測プローブ41aがワークに接触せず、受信機43aが信号を受信しなかった場合(ステップS03でNO)、ユーザに対してエラーが報知される(ステップS04)。ユーザへの報知方法としては、光源や音声、表示パネルへの表示など、種々の方法を採用し得る。
【0043】
一方で、計測プローブ41aがワークに接触した場合(ステップS03でYES)、計測プローブ41aの発信機412がスキップ信号Skを発信する。そして、受信機43aはスキップ信号Skを受信して、制御部31は受信機43aがスキップ信号Skを受信したことを検出する(ステップS05)。
【0044】
次に、制御部31は検出したスキップ信号Skのアドレスと工具保持部111とを関連付けて記憶し、工具保持部111に対して計測プローブ41aを関連付ける関連付け工程を実行する(ステップS06)。こうして、計測プローブ41aと工具保持部111の関連付けが完了する。
【0045】
その後は、全ての計測プローブに対して関連付け動作が完了するまで、同様に関連付け動作が実行される。本構成例においては、ステップS01では複数の工具保持部がプローブ取付け箇所として設定されているため、この時点では全ての計測プローブの関連付けは完了していない(ステップS07でNO)。従って、計測プローブ41b、41cと工具保持部についての関連付けが引き続き行われる。そして、ステップS02~S06が繰り返し自動的に行われることで、計測プローブ41bと工具保持部131、計測プローブ41cと工具保持部151のそれぞれの関連付けが行われる。そして、ステップS01でプローブ取付け箇所として設定された全ての工具保持部に対して計測プローブ41が関連付けられると(ステップS07でYES)、制御部31は関連付け動作を終了する。
【0046】
以上の関連付け動作により、工作機械100に取り付けられた計測プローブ41が工具保持部に関連付けられる。そして、計測プログラムに基づいて計測動作が実行される際は、制御部31が上述の関連付け動作により取得した関連付け情報に基づいて各刃物台を駆動する。従って、計測プローブ41と工具保持部の関連付けに際して、ユーザは複数の計測プローブ41を区別して工具保持部に取付けたり、プローブ取付け箇所を設定したりする必要がない。
【0047】
なお、計測プローブ41の関連付け動作は、新たに工具保持部に計測プローブ41を取り付けた場合や計測プローブ41の取付け位置を変更した場合に実行すればよい。すなわち、計測プローブ41の取り付け位置が変わらない限りは、制御部31は取得した関連付け情報に基づいて複数の異なる加工プログラムや計測プログラムを実行できる。
【0048】
以上より、第1実施例の構成と関連付け方法によれば、ユーザが計測プローブを取り付けた工具保持部をプローブ取付け箇所として設定すれば、計測プローブと工具保持部の関連付け動作は自動的に実行される。すなわち、ユーザは計測プローブ取付けの際に、その計測プローブがどの受信機と対応したものであるか、その計測プローブのスキップ信号のアドレスが何であるか、等について把握する必要がない。従って、第1実施例による計測プローブと工具保持部の関連付けは、ユーザが個々の計測プローブを区別することなく制御部31により略自動的に行われるため、簡易的に実行できる。更に関連付け動作に際して、ユーザは計測プローブが取り付けられた工具保持部を選択するだけでよいため、誤った計測プローブが工具保持部と関連付けられるおそれがない。ひいては、計測プローブがワーク等に干渉して破損することを防止できる。
【0049】
<第2実施例>
次に、本発明に係る第2実施例について説明する。第2実施例は、プローブ取付け箇所として選択可能な工具保持部が限定されている点で第1実施例と異なる。以下、第2実施例の説明において、第1実施例と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略し、第2実施例の特徴的な構成についてのみ説明する。
【0050】
図5を参照して、第2実施例に係る工作機械100の内部構成について説明する。
図5は、工作機械100の内部の概略構成を示すブロック図である。第1刃物台11は工具保持部111、112、113、114を有し、第2刃物台13は工具保持部131、132、133、134を有し、第3刃物台15は工具保持部151、152、153、154を有する。なお、
図5は、第2実施例に係る工作機械100の構成を説明するための図であり、各ワーク保持部や工具保持部の配置位置や配置方向を限定するものではない。
【0051】
図5に示される工具保持部は、同一の切削工具や計測プローブ41が取り付け可能に構成されている。しかし、工具保持部が計測プローブ41を取り付け可能に構成されていても、他の部材との位置関係を考慮した場合に計測プローブ41の取り付け位置に制約が生じる場合がある。例えば、計測プローブ41を取り付けた位置によっては、計測動作の際に同じ刃物台に取り付けられた切削工具がワークに干渉するおそれがある。そこで、第2実施例は、
図4に示される関連付け方法のプローブ取付け箇所の設定(ステップS01)の際に、プローブ取付け箇所として選択可能な工具保持部が予め定められている構成とした。
【0052】
第2実施例においては、
図5に斜線で塗りつぶされて示されている第1刃物台11の工具保持部111、114、第2刃物台13の工具保持部131、第3刃物台15の工具保持部151、154が、プローブ取付け箇所の候補として予め定められている。そして、プローブ取付け箇所の設定においては、上述の五つの工具保持部のみが選択可能とされる。例えば、
図5に示されるように、計測プローブ41を第1刃物台11の工具保持部111、114に取り付けた場合、ユーザはプローブ取付け箇所の設定の際に五つの選択肢の中から工具保持部111、114を選択すればよい。
【0053】
以上より、第2実施例の構成と関連付け方法によれば、計測動作に適した工具保持部がプローブ取付け箇所の候補として予め定められているため、第1実施例と比較して測定動作がより効率的に実行されやすくなる。更には、計測動作の際に、切削工具がワークや工具保持部に干渉するおそれも軽減できる。
【0054】
<その他の実施例>
上述の実施例はあくまでも一例であって、本開示はその要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施し得る。例えば、上述の実施例においては、工具保持部が計測プローブを保持する保持部として機能していたが、計測プローブ専用の保持部が設けられてもよい。
【0055】
また、1つの装置が行うものとして説明した処理が、複数の装置によって分担して実行されてもよい。あるいは、異なる装置が行うものとして説明した処理が、1つの装置によって実行されても構わない。コンピュータシステムにおいて、各機能をどのようなハードウェア構成によって実現するかは柔軟に変更可能である。
【符号の説明】
【0056】
31…制御部、41…計測プローブ、43…受信機、100…工作機械、111…工具保持部(保持部)、212…第1主軸(主軸)