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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129457
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
   B62D 24/02 20060101AFI20240919BHJP
   B62D 25/08 20060101ALI20240919BHJP
   B62D 27/04 20060101ALI20240919BHJP
【FI】
B62D24/02 B
B62D25/08 A
B62D27/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038678
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】安田岡本弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】宮丸 範之
(72)【発明者】
【氏名】大久保 和哉
(72)【発明者】
【氏名】高野 祐規
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203AA23
3D203BC34
3D203CB09
3D203CB24
3D203DA85
(57)【要約】
【課題】本発明は、キャビンに対して作用する走行時の振動及び衝撃を抑制できる作業車両を提供する。
【解決手段】本発明は、車体(2)上でキャビンの上下動を抑制する減衰手段(60)を含む懸架装置(6)と、キャビン(3)を上限位置又は下限位置で規制する規制手段(7)とを備え、規制手段(7)は、車体(2)に固定された第一ストッパ(70)と、キャビン(3)に固定された第二ストッパ(71)とを含み、第一ストッパ(70)及び第二ストッパの(71)の何れか一方は、第一クッション部(711)と、第一クッション部(711)よりも柔らかい第二クッション部(712)とを有し、第一クッション部(711)及び第二クッション部(712)は、横並びに配置され、第二クッション部(712)は、第一クッション部(711)よりも先に接触の対象となる相手方に接触する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行可能な車体と、
キャビンと、
前記キャビンの上下動を上限位置及び下限位置の少なくとも一方で規制する規制手段と、を備え、
前記規制手段は、
第一ストッパと、
前記キャビンの上下動に伴って、前記第一ストッパに対して接離可能な第二ストッパと、を含み、
前記第一ストッパ及び前記第二ストッパの少なくとも一方は、
第一クッション部と、
前記第一クッション部よりも柔らかく、前記第一クッション部に対して上下方向と交差する方向で横並びに配置された第二クッション部と、を有し、
前記第二クッション部は、前記キャビンの上下動に伴って、前記第一クッション部よりも先に前記第一ストッパ又は前記第二ストッパに接触するように構成されている作業車両。
【請求項2】
前記第二クッション部は、前記第一ストッパ又は前記第二ストッパに向けて前記第一クッション部よりも突出している請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記第一ストッパ及び前記第二ストッパの一方は、平面状の受け面を有し、
前記第一ストッパ及び前記第二ストッパの他方は、前記第一クッション部及び前記第二クッション部を有し、
前記第一クッション部及び前記第二クッション部は、前記受け面と対向している請求項2に記載の作業車両。
【請求項4】
前記第一クッション部又は前記第二クッション部の一方は、筒状部を有し、
前記第一クッション部又は前記第二クッション部の他方は、前記第一クッション部又は前記第二クッション部の一方の前記筒状部に内嵌されている請求項1乃至3の何れか1項に記載の作業車両。
【請求項5】
前記第一クッション部は、前記筒状部を有し、
前記第二クッション部は、前記第一クッション部の前記筒状部に対して同心又は略同心で内嵌されている請求項4に記載の作業車両。
【請求項6】
前記第一クッション部は、前記筒状部としての第一筒状部であって、先端部と基端部とを有する第一筒状部と、該第一筒状部の基端部に接続された第一基部であって、前記第一筒状部の内周縁から該第一筒状部の内穴の中心側に広がる第一基部とを有し、
前記第二クッション部は、先端と基端とを有する第二筒状部を有し、該第二筒状部の基端側が前記第一筒状部に対して同心又は略同心で内嵌されている請求項5に記載の作業車両。
【請求項7】
前記第二クッション部の先端側は、接触の相手方となる前記第一ストッパ及び前記第二ストッパの少なくとも他方に向けて前記第一クッション部よりも突出し、
前記第二クッション部における前記第一クッション部よりも突出している部分は、基端側から先端に向けて断面積が小さくなっている請求項6に記載の作業車両。
【請求項8】
前記規制手段は、前記第一ストッパを一対備えるとともに、前記第二ストッパを一対備え、
前記一対の第一ストッパは、少なくとも上下方向の異なる高さ位置に配置され、
前記一対の第二ストッパのうちの一方の第二ストッパは、前記一対の第一ストッパのうちの一方の第一ストッパに対し、前記第一クッション部及び前記第二クッション部を下方側から対向させ、
前記一対の第二ストッパのうちの他方の第二ストッパは、前記一対の第一ストッパのうちの他方の第一ストッパに対し、前記第一クッション部及び前記第二クッション部を上方側から対向させている請求項7に記載の作業車両。
【請求項9】
前記規制手段は、
前記キャビンに連結された取付部と、
該取付部に前記第二ストッパを固定する締結部材と、を更に備え、
前記第二クッション部は、前記第二筒状部の基端部に接続された第二基部であって、前記第二筒状部の内周縁から該第二筒状部の内穴の中心側に広がる第二基部を有し、
前記一対の第一ストッパは、上下方向に間隔をあけて互いに対向して配置され、
前記一対の第二ストッパは、それぞれの第一クッション部の第一基部で取付部を挟み込み、
前記締結部材は、前記一対の第二ストッパのそれぞれの前記第一基部、前記第二基部及び前記取付部に挿通された状態で、前記一対の第二ストッパ及び前記取付部を締結している請求項8に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばトラクタ等の作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示された作業車両が知られている。
【0003】
特許文献1に開示された作業車両は、オペレータが搭乗するための搭乗部を備え、該搭乗部の前部及び後部と車体本体との間には防振接続構造がそれぞれ配置されている。
【0004】
この防振接続構造(特許文献1においては、リア側防振接続構造)は、車体側後部取付ステーと、キャビン側後部取付ステーと、第一防振ゴムと、第一防振ゴム及びキャビン側後部取付ステーの間に配置される第一取付カバーと、キャビン側後部取付ステーを挟んで前記第一取付カバーの反対側に配置される第二防振ゴムと、第二防振ゴムを挟んでキャビン側後部取付ステーの反対側に配置される第二取付カバーと、締結ボルト及び締結ナットを備えている。
【0005】
締結ボルトは、車体側後部取付ステー、第一防振ゴム、第一取付カバー、キャビン側後部取付ステー、第二防振ゴム、第二取付カバーの順でこれらに挿通され、当該締結ボルトに締結ナットを締結することにより、二つの防振ゴム(第一防振ゴム及び第二防振ゴム)が上下方向に並んだ防振接続構造が構成される。
【0006】
この構成においては、第一防振ゴム及び第二防振ゴムが上下方向に並び、キャビン側後部取付ステーを挟み込んで固定されているので、キャビンに伝播する振動を良好に低減するとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010-264800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記構成の作業車両では、キャビンに伝搬される振動を十分に低減(吸収)することができない。
【0009】
具体的には、防振ゴムにおける振動や衝撃の吸収性能は、防振ゴムの素材の弾性特性と関係を有する。そのため、上記構成の作業車両では、防振ゴム固有の弾性特性で吸収し得る限られた範囲内での振動(上下動の範囲)しか吸収できない。
【0010】
また、上記作業車両では、二つの防振ゴムで振動を吸収するようにしているが、その二つの防振ゴムが上下方向に並んで配置されるため、振動や衝撃によって作用する荷重が二つの防振ゴムに対して同時に作用する。
【0011】
そのため、キャビンに作用する振動(上下動)に対応して二つの防振ゴムが同時に圧縮乃至復元することになり、単一の防振ゴムで振動を吸収するのと同様、振動や衝撃の吸収が単調なものとなってしまう。
【0012】
その結果、上記構成の作業車両では、走行時の振動がキャビンに対して衝撃力として伝
わる(突き上げ感がある)といった問題がある。
【0013】
そこで、本発明は、キャビンに対して作用する走行時の振動及び衝撃を抑制することのできる作業車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一態様に係る作業車両は、走行可能な車体と、キャビンと、前記キャビンの上下動を上限位置及び下限位置の少なくとも一方で規制する規制手段と、を備え、前記規制手段は、第一ストッパと、前記キャビンの上下動に伴って、前記第一ストッパに対して接離可能な第二ストッパと、を含み、前記第一ストッパ及び前記第二ストッパの少なくとも一方は、第一クッション部と、前記第一クッション部よりも柔らかく、前記第一クッション部に対して上下方向と交差する方向で横並びに配置された第二クッション部と、を有し、前記第二クッション部は、前記キャビンの上下動に伴って、前記第一クッション部よりも先に前記第一ストッパ又は前記第二ストッパに接触するように構成されている。
【0015】
前記第二クッション部は、前記第一ストッパ又は前記第二ストッパに向けて前記第一クッション部よりも突出してもよい。
【0016】
前記第一ストッパ及び前記第二ストッパの一方は、平面状の受け面を有し、前記第一ストッパ及び前記第二ストッパの他方は、前記第一クッション部及び前記第二クッション部を有し、前記第一クッション部及び前記第二クッション部は、前記受け面と対向していてもよい。
【0017】
前記第一クッション部又は前記第二クッション部の一方は、筒状部を有し、前記第一クッション部又は前記第二クッション部の他方は、前記第一クッション部又は前記第二クッション部の一方の前記筒状部に内嵌されてもよい。
【0018】
前記第一クッション部は、前記筒状部を有し、前記第二クッション部は、前記第一クッション部の前記筒状部に対して同心又は略同心で内嵌されてもよい。
【0019】
前記第一クッション部は、前記筒状部としての第一筒状部であって、先端部と基端部とを有する第一筒状部と、該第一筒状部の基端部に接続された第一基部であって、前記第一筒状部の内周縁から該第一筒状部の内穴の中心側に広がる第一基部とを有し、前記第二クッション部は、先端と基端とを有する第二筒状部を有し、該第二筒状部の基端側が前記第一筒状部に対して同心又は略同心で内嵌されてもよい。
【0020】
前記第二クッション部の先端側は、接触の相手方となる前記第一ストッパ及び前記第二ストッパの少なくとも他方に向けて前記第一クッション部よりも突出し、前記第二クッション部における前記第一クッション部よりも突出している部分は、基端側から先端に向けて断面積が小さくなっていてもよい。
【0021】
前記規制手段は、前記第一ストッパを一対備えるとともに、前記第二ストッパを一対備え、前記一対の第一ストッパは、少なくとも上下方向の異なる高さ位置に配置され、前記一対の第二ストッパのうちの一方の第二ストッパは、前記一対の第一ストッパのうちの一方の第一ストッパに対し、前記第一クッション部及び前記第二クッション部を下方側から対向させ、前記一対の第二ストッパのうちの他方の第二ストッパは、前記一対の第一ストッパのうちの他方の第一ストッパに対し、前記第一クッション部及び前記第二クッション部を上方側から対向させていてもよい。
【0022】
前記規制手段は、前記キャビンに連結された取付部と、該取付部に前記第二ストッパを
固定する締結部材と、を更に備え、前記第二クッション部は、前記第二筒状部の基端部に接続された第二基部であって、前記第二筒状部の内周縁から該第二筒状部の内穴の中心側に広がる第二基部を有し、前記一対の第一ストッパは、上下方向に間隔をあけて互いに対向して配置され、前記一対の第二ストッパは、それぞれの第一クッション部の第一基部で取付部を挟み込み、前記締結部材は、前記一対の第二ストッパのそれぞれの前記第一基部、前記第二基部及び前記取付部に挿通された状態で、前記一対の第二ストッパ及び前記取付部を締結していてもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、キャビンに対して作用する走行時の振動及び衝撃を抑制することができるといった優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る作業車両(トラクタ)の外観斜視図である。
図2図2は、同実施形態に係る作業車両(トラクタ)の右側面図である。
図3図3は、同実施形態に係る作業車両(トラクタ)の正面図である。
図4図4は、同実施形態に係る作業車両のキャビン部分と変速装置等を含む要部構成の右側面図である。
図5図5は、同実施形態に係る作業車両のキャビン部分と変速装置等を含む要部構成の左側面図である。
図6図6は、同実施形態に係る作業車両の部分拡大斜視図であって、規制手段の断面を含む部分拡大斜視図である。
図7図7は、同実施形態に係る作業車両の懸架装置及び規制手段を含む要部を斜め下方から見た要部拡大斜視図である。
図8図8は、図7のVIII-VIII断面図である。
図9図9は、図7のIX-IX断面図である。
図10図10は、図8のX部の拡大図である。
図11図11は、本発明の他実施形態に係る作業車両の規制手段の概略断面図である。
図12図12は、本発明の別の実施形態に係る作業車両の規制手段の概略断面図である。
図13図13は、本発明のさらに別の実施形態に係る作業車両の規制手段の概略断面図である。
図14図14は、本発明のさらに別の実施形態に係る作業車両の規制手段の概略断面図である。
図15図15は、本発明のさらに別の実施形態に係る作業車両の規制手段の概略断面図である。
図16図16は、本発明のさらに別の実施形態に係る作業車両の規制手段の概略断面図である。
図17図17は、本発明のさらに別の実施形態に係る作業車両の規制手段の概略断面図である。
図18図18は、本発明のさらに別の実施形態に係る作業車両の規制手段の概略断面図である。
図19図19は、本発明のさらに別の実施形態に係る作業車両の規制手段の概略断面図である。
図20図20は、本発明のさらに別の実施形態に係る作業車両の規制手段の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態に係る作業車両について、図面を参酌しつつ説明する。なお、本発明に係る作業車両は、コンバインや移植機等の農業機械(農業車両)の他、ローダ作業機等の建設機械(建設車両)等を対象としているが、ここではトラクタを一例に説明する。
【0026】
図1は、本実施形態に係る作業車両の全体斜視図であり、図2は、同作業車両の右側面図あり、図3は、同作業車両の正面図である。また、図4は、同作業車両の一部構成を省略した要部の右側面図であり、図5は、同作業車両の一部構成を省略した要部の左側面図である。さらに、図6図10は、同作業車両の特徴部分を含む部分的な斜視図及び断面図である。
【0027】
なお、以下の説明において、作業車両が走行することを前提に、作業車両が前進する方向を前方といい、作業車両が後進(バック)する方向を後方といい、前進及び後方する方向を前後方向ということとする。また、作業車両の前進方向を向いて右側を右方といい、作業車両の前進方向を向いて左側を左方といい、前後方向と直交する方向を幅方向又は左右方向ということとする。これに伴い、各図において、必要に応じ、前方を矢印A1、後方を矢印A2、前後方向を矢印Aとして示し、右方を矢印B1、左方を矢印B2、幅方向又は左右方向を矢印Bとして示している。
【0028】
図1乃至図3に示すように、作業車両(トラクタ)1は、走行可能な車体2と、車体2上に配置されたキャビン3とを備える。
【0029】
トラクタ1は、図2に示すように、車体2を走行可能とすべく、走行装置4と、走行装置4を駆動する駆動装置5とを備える。
【0030】
本実施形態に係るトラクタ1は、上記構成に加え、図4及び図5に示すように、車体2上でキャビン3を支持する懸架装置6であって、キャビン3の上下動を抑制する減衰手段60を含む懸架装置6を備える。また、トラクタ1は、キャビン3の上下動を上限位置及び下限位置の少なくとも何れか一方で規制する規制手段7を備える。
【0031】
図2に戻り、車体2は、車体フレームを有する。走行装置4は、左右一対の前輪4Fと左右一対の後輪4Rを含む装置である。走行装置4は、左右一対の前輪4Fと、左右一対の後輪4Rと、左右一対の前輪4Fを支持する前車軸フレーム40と、左右一対の後輪4Rが取り付けられる後輪デフ装置(図示しない)とを含む。
【0032】
前車軸フレーム40は、トラクタ1の前方A1側に配置され、前車軸フレーム40に支持される左右一対の前輪4Fは、車体2の前方A1側を支持する。これに対し、後輪デフ装置(図示しない)は、車体2の後方A2側に配置され、後輪デフ装置(図示しない)に取り付けられた左右一対の後輪4Rは、車体2の後方A2側を支持する。すなわち、走行装置4は、左右一対の前輪4F及び左右一対の後輪4Rによって、車体2全体を支持する。本実施形態において、前輪4F及び後輪4Rのそれぞれは、タイヤ型のものが採用されている。なお、前輪4Fは、タイヤ型であってもクローラ型であってもよく、後輪4Rも、タイヤ型であってもクローラ型であってもよい。
【0033】
駆動装置5は、原動機50と、原動機50の出力を安定させるフライホイール装置51と、フライホイール装置51を介して原動機50から入力される駆動を変速する変速装置52と、変速装置52に対する原動機50からの入出力を切り替えるクラッチ装置53とを備える。
【0034】
原動機50は、ディーゼルエンジン、電動モータ等であって、この実施形態ではディー
ゼルエンジンで構成されている。本実施形態において、原動機50は車体2の前方A1側に配置されている。
【0035】
フライホイール装置51は、フライホイール(図示しない)と、フライホイールを収容したフライホイールハウジング51aとを備える。フライホイールは、原動機50の出力軸に連結され、フライホイールハウジング51a内で原動機50の出力軸と同心で回転可能に設けられている。
【0036】
変速装置52は、入力軸(図示しない)と出力軸(図示しない)とを含む変速機構であって、複数の歯車で構成される変速機構(図示しない)と、変速機構を収容したミッションケース52aとを備える。本実施形態において、ミッションケース52aには、変速機構に加え、後輪デフ装置も収容されている。これに伴い、左右一対の後輪4Rは、車体2の後方A2側において、後輪デフ装置を挟んで左方B2及び右方B1の両側に配置されている。
【0037】
クラッチ装置53は、入力部(図示しない)と出力部(図示しない)とを有し、入力部と出力部との間でトルク伝達の入り切りを切り替えるクラッチ機構(図示しない)と、クラッチ機構を収容したクラッチケース53aとを備える。このクラッチ機構において、入力部は、フライホイールに接続され、出力部は、変速装置52の入力軸に接続されている。
【0038】
フライホイールハウジング51aは、原動機50の後方A2側に連結されている。クラッチケース53aは、フライホイールハウジング51aに連結されている。ミッションケース52aは、クラッチケース53aの後方A2側に連結されている。
【0039】
本実施形態において、フライホイールハウジング51a、ミッションケース52a、クラッチケース53aは、車体2の骨組みとなる車体フレームを構成する。すなわち、フライホイールハウジング51a、ミッションケース52a、クラッチケース53aは、一体的に連結されることによって剛性の高い車体フレームを構成している。
【0040】
車体2は、原動機50を覆うボンネット20を備えている。上述のように、原動機50が車体2の前方A1側に配置されているため、当該原動機50を覆うボンネット20も車体2の前方A1側に配置されている。さらに、車体2は、一対のフェンダー21を備えている。本実施形態において、一対のフェンダー21のそれぞれは、図1乃至図3に示すように、左右一対の後輪4Rのそれぞれを上方から覆うように配置されている。
【0041】
図2に示すように、車体2の後方A2側の端部には、三点リンク機構等で構成された機器連結部22が設けられている。機器連結部22は、作業装置M(インプルメント)を着脱可能である。作業車両(トラクタ)1は、作業装置Mを機器連結部22に連結することによって、作業装置Mを牽引することができる。作業装置Mは、耕耘する耕耘装置、肥料を散布する肥料散布装置、農薬を散布する農薬散布装置、収穫を行う収穫装置、牧草等の刈取を行う刈取装置、牧草等の拡散を行う拡散装置、牧草等の集草を行う集草装置、牧草等の成形を行う成形装置等である。なお、車体2の後部には、作業装置Mを水平に維持するための水平制御装置が設けられている。
【0042】
図2に示すように、キャビン3は、運転席10及び操作部(図示しない)を収容可能に構成される。
【0043】
キャビン3は、図1及び図2に示すように、床ベース部30と、床ベース部30の四隅から上方に延出する複数(例えば、4本)の支柱31…と、複数の支柱31…によって支
持され且つ運転席10の上方に配置されたルーフ32とを含む。
【0044】
床ベース部30は、例えば、金属製部材である。床ベース部30は、左右方向(幅方向)Bにおいて、両側部が上下方向でフェンダー21と重なるサイズに設定される。具体的には、床ベース部30は、平面視で略矩形状であり、且つ、側面視で後方下部箇所がフェンダー21に沿うように円弧状に上側に突出した一対の膨出部300を有している。一対の膨出部300は、上下方向において一対のフェンダー21と重なる位置にある。一対の膨出部300のそれぞれの下面側は、上面側の膨出に対応して窪んでおり、下方にあるフェンダー21が収まるように形成される。すなわち、キャビン3の後方下部の左右両側には、後輪4Rの上部を覆うフェンダー21が取り付けられている。
【0045】
キャビン3において、複数の支柱31,31の間にガラス、ドア等が設けられる。これにより、キャビン3内の運転席10がガラス及びドア等によって覆われ、雨風を凌げるようになっている。
【0046】
図6に示すように、後方A2側にあるキャビン3の背面には、懸架装置6を連結する第一ブラケット33が取り付けられている。具体的に説明すると、本実施形態において、キャビン3は、前後方向Aに延び且つ左右方向(幅方向)Bに間隔をあけて配置される一対の縦梁部材34であって、床ベース部30を支持する一対の縦梁部材34と、一対の縦梁部材34のそれぞれの後方A2側の端部に立設された一対のフレーム35と、一対のフレーム35の上端部同志を繋ぐ横梁部材36であって、左右方向(幅方向)Bに延びる横梁部材36を備える。これに伴い、第一ブラケット33は、一対のフレーム35のそれぞれに取り付けられている。各第一ブラケット33は、フレーム35から後方A1側に延出している。
【0047】
本実施形態に係るトラクタ1は、図4及び図5に示すように、キャビン3を支持する構成として、懸架装置6に加えてキャビン支持手段8を備える。具体的には、本実施形態に係るトラクタ1は、キャビン3の前方A1側を支持する第一キャビン支持手段8と、キャビン3の後方A2側を支持する第二キャビン支持手段6とを備えている。
【0048】
第一キャビン支持手段8は、車体2に取り付けられたキャビン支持部材80と、キャビン支持部材80に支持される防振部材81とを含む。本実施形態において、キャビン支持部材80は、ミッションケース52aに取り付けられている。第一キャビン支持手段8は、左右方向(幅方向)Bに間隔をあけて二カ所に配置される。
【0049】
二カ所に配置される第一キャビン支持手段8は、前後方向Aに延びるキャビン3の中心線(図示しない)を基準に対称的に配置される。これに伴い、一方の第一キャビン支持手段8のキャビン支持部材80は、ミッションケース52aの前方右側面から斜め上方向に延出する。これに対し、他方の第一キャビン支持手段8のキャビン支持部材80は、ミッションケース52aの前方左側面から斜め上方向に延出する。各第一キャビン支持手段8において、防振部材81はキャビン支持部材80の配置に対応して配置される。
【0050】
各第一キャビン支持手段8において、防振部材81には、マウントゴムが採用されている。マウントゴム81は、無発泡のウレタンゴムである。二カ所の第一キャビン支持手段8のそれぞれにおいて、キャビン支持部材80は、防振部材(マウントゴム)81を介してキャビン3を下方から受け止めて支持している。
【0051】
本実施形態において、キャビン3の後方A2側を支持する第二キャビン支持手段6は、前述の懸架装置である。これに伴い、懸架装置6及び規制手段7は、キャビン3の後方A2側に配置される。
【0052】
具体的に説明する。図6及び図7に示すように、懸架装置6は、減衰手段60を含む。減衰手段60は、キャビン3の上下動(上下方向の振動)を減衰するもので、所謂、ショックアブソーバーである。減衰手段60には、オイルダンパー、エアーダンパー、ガスダンパー(ガススプリング)等の伸縮式が採用される。本実施形態において、減衰手段60として、オイルダンパーが採用される。ショックアブソーバー60は、筒状のシリンダ部600と、シリンダ部600に対して内装されたピストン(図示しない)を含むピストンロッド601を含む。
【0053】
ピストンロッド601は、シリンダ部600の一端から外方に延出したロッド部601aを有する。ロッド部601aの一端側は、シリンダ部600から外部に延在し、ロッド部601aの他端側は、シリンダ部600内部でピストンに接続されている。本実施形態に係る減衰手段60には、オイルダンパーが採用されるため、減衰手段60は、シリンダ部600内にオリフィス(図示しない)を有し、シリンダ部600内にオイルが封入されている。
【0054】
このショックアブソーバー60において、シリンダ部600の他端とピストンロッド601の一端(ロッド部601aの先端部)とが振動に伴って相対的に接離する二カ所に連結される。つまり、シリンダ部600の他端が相対的に接離する二カ所の一方に連結され、ピストンロッド601の一端が相対的に接離する二カ所の他方に連結される。
【0055】
本実施形態において、懸架装置6は、ショックアブソーバー60に加え、コイルスプリング61を含む。すなわち、本実施形態に係る懸架装置6は、いわゆるサスペンションである。
【0056】
コイルスプリング61には、ロッド部601aが内挿されている。コイルスプリング61の一端は、シリンダ部600から延出したロッド部601aに支持され、コイルスプリング61の他端は、シリンダ部600の一端側に支持される。本実施形態において、シリンダ部600の他端は、キャビン3の後方B2側の部位に連結され、ロッド部601aの先端部が車体2(ミッションケース52a)に連結されている。
【0057】
具体的には、シリンダ部600の他端部は、キャビン3の後部に取り付けられた第一ブラケット33に対し、左右方向(幅方向)Bに延びる軸体(採番しない)を介して連結されている。すなわち、シリンダ部600は、第一ブラケット33に対して軸体周りで回転自在に枢結されている。また、ロッド部601aの先端部は、車体2(ミッションケース52a)の上に設けられた後述する第二ブラケット93に対し、幅方向に延びる軸体(採番しない)を介して連結されている。すなわち、ロッド部601aの一端(先端)は、第二ブラケット93に対して軸体周りで回転自在に枢結されている。
【0058】
本実施形態において、懸架装置6は、キャビン3の幅方向に間隔をあけた二か所に設けられている。すなわち、トラクタ1は、キャビン3の幅方向(左右方向)の二か所を懸架装置6(サスペンション)で支持している。
【0059】
本実施形態に係るトラクタ1は、上記の通り、キャビン3の前方A1側と後方A2側との支持態様が異なり、懸架装置6で支持されるキャビン3の後方A2側での振動の吸収が前方A1側よりも大きい。
【0060】
すなわち、キャビン3の前方A1側がソリッドのマウントゴム81で支持されているため、キャビン3の動き(振動)としては、キャビン3の前方A1側(第一キャビン支持手段8)を支点にキャビン3の傾動を許容し、キャビン3の後方A2側で振動を吸収するよ
うにしている。
【0061】
本実施形態に係るトラクタ1は、上述のように、懸架装置6を二か所に備える。これに伴い、本実施形態に係るトラクタ1は、図6に示すように、左右方向(幅方向)Bに間隔をあけた二か所に規制手段7を備えている。この二か所の規制手段7は、同一構成である。これに伴い、ここでは一カ所の規制手段7について説明する。
【0062】
規制手段7は、図8乃至図10に示すように、キャビン3の上下動を上限位置UP及び下限位置LPの少なくとも何れか一方で規制する。
【0063】
具体的に説明すると、規制手段7は、車体2に固定された第一ストッパ70と、キャビン3に固定された第二ストッパ71であって、キャビン3の上下動に伴って第一ストッパ70に対して接離可能な第二ストッパ71とを含む。本実施形態において、規制手段7は、キャビン3に連結された取付部72と、該取付部72に第二ストッパ71を固定する締結部材74とを更に備える。
【0064】
図10に示すように、第一ストッパ70及び第二ストッパ71の少なくとも何れか一方は、第一クッション部711と、該第一クッション部711よりも柔らかい第二クッション部712であって、第一クッション部711に対して上下方向と交差する方向で横並びに配置された第二クッション部712とを有する。本実施形態の場合、第一クッション部711と第二クッション部712とは、別体の部材から構成されている。
【0065】
第一ストッパ70及び第二ストッパ71の少なくとも何れか一方の第二クッション部712は、第一ストッパ70及び第二ストッパ71の少なくとも何れか他方に対して第一クッション部711よりも先に接触するように構成されている。第二クッション部712は、接触の相手方となる第一ストッパ70及び第二ストッパ71の少なくとも何れか他方に向けて第一クッション部711よりも突出している。
【0066】
第一ストッパ70又は第二ストッパ71の何れか一方は、第一ストッパ70又は第二ストッパ71の何れか他方に向く平面状の受け面700を有し、第一ストッパ70又は第二ストッパ71の何れか他方は、第一クッション部711及び第二クッション部712を有する。
【0067】
詳細については後述するが、本実施形態において、第二ストッパ71のみが第一クッション部711及び第二クッション部712を有し、第一ストッパ70のみが受け面700を有する。第二クッション部712は、第一ストッパ70に向けて第一クッション部711よりも突出している。これに伴い、第二ストッパ71は、第二クッション部712が第一クッション部711よりも先に第一ストッパ70の受け面700に接触するようになっている。
【0068】
以下、規制手段7についてより具体的に説明する。本実施形態に係る規制手段7は、キャビン3の上下動を上限位置UP及び下限位置LPの両方で規制する。これに伴い、規制手段7は、第一ストッパ70を一対備えるとともに、第二ストッパ71を一対備える。
【0069】
一対の第一ストッパ70は、少なくとも上下方向の異なる高さ位置に配置される。本実施形態において、一対の第一ストッパ70は、上下方向に間隔をあけて互いに対向して配置される。
【0070】
より具体的に説明すると、第一ストッパ70と第二ストッパ71との間隔D1,D2は、第二ストッパ71の移動代として設定される。本実施形態において、一対の第一ストッ
パ70の間には、一対の第二ストッパ71が配置される。一対の第二ストッパ71は、上下方向において対称的に配置される。この一対の第二ストッパ71の対称配置の基準となる境界位置(面)が、一対の第一ストッパ70の間隔の中間位置にある状況(以下、第二ストッパ71の基準位置という)において、一方の第一ストッパ70と一方の第二ストッパ71との間隔D1は、他方の第一ストッパ70と他方の第二ストッパ71との間隔D2と一致又は略一致するように、一対の第一ストッパ70の間隔が設定される。
【0071】
この第一ストッパ70と第二ストッパ71との間隔D1,D2が、キャビン3の移動代となる。すなわち、一対の第二ストッパ71の対称配置の境界位置(面)が、第二ストッパ71の基準位置にある状況において、一方の第一ストッパ70と一方の第二ストッパ71との間隔D1が、キャビン3の上方側への移動代となり、他方の第一ストッパ70と他方の第二ストッパ71との間隔D2が、キャビン3の下方側への移動代となる。
【0072】
このキャビン3の移動代(上方側への移動代D1と下方側への移動代D2の合計)は、懸架装置6による振幅の最大減衰幅(ショックアブソーバー60の最大伸縮量)の範囲内に設定される。
【0073】
本実施形態において、第二ストッパ71は、第一クッション部711及び第二クッション部712を有するため、第一クッション部711と第二クッション部712の変形量(圧縮変形量)αは、上述した移動代D1,D2に加算され、その合計がキャビン3の最大移動代(最大振幅量)となる。
【0074】
本実施形態において、第一ストッパ70は、車体2の車体フレームを構成するミッションケース52aに対して固定されている。より具体的には、第一ストッパ70は、ミッションケース52aに固定された支持台9によって支持される。
【0075】
支持台9は、図8及び図9に示すように、ベース部90と、ベース部90上に立設された脚部91と、脚部91上に配置された支持部92とを備える。ベース部90及び支持部92は、何れもプレート状であり、脚部91を介して上下方向で面対向させている。本実施形態において、支持台9には、懸架装置6を連結する第二ブラケット93が連設されている(図8参照)。第二ブラケット93は、支持部92から上方に延出している。また、支持台9には、ラテラルロッドRを連結する第一ロッド連結部94が連設されている。本実施形態において、第一ロッド連結部94は、脚部91に連設されている。
【0076】
図10に示すように、支持台9の支持部92には、一対の第一ストッパ70の間隔を一定の間隔(一対の第二ストッパ71を配置でき且つ第二ストッパ71の移動代を確保した間隔)で保持させる間隔保持部95が取り付けられている。本実施形態において、一方の第一ストッパ70は、間隔保持部95と一体的に形成されている。具体的には、一方の第一ストッパ70及び間隔保持部95は、金属プレートをL字状(稜線を境にした二つの片が直角又は略直角をなした形状)に曲げ加工することによって形成される。すなわち、直角又は略直角をなす二つの片のうちの一方の片(水平方向に延びる片)が第一ストッパ70を構成し、直角又は略直角をなす二つの片のうちの他方の片(上下方向に延びる片)が間隔保持部95を構成する。間隔保持部95は、支持部92上で起立した姿勢で該支持部92に固定(ボルト止め)されている。
【0077】
一方(上方)の第一ストッパ70は、下方に向く平面状の受け面700を有する。これに対し、他方(他方)の第一ストッパ70は、上方に向く平面状の受け面700を有する。本実施形態において、支持台9の支持部92がプレート状に形成されるに伴い、支持部92が他方の第一ストッパ70に兼用されている。これに伴い、支持部92の上面が受け面700となっている。一方の第一ストッパ70が、間隔保持部95を介して支持台9(
支持部92)に固定されることで、一対の第一ストッパ70は、互いの受け面700を上下方向で対向させている。
【0078】
取付部72は、第二ストッパ71を配置する平面部(採番しない)を有する。平面部は、上向き又は下向きに形成されている。すなわち、平面部は、少なくとも第一ストッパ70と対向するように形成される。本実施形態において、取付部72は、プレート状に形成され、上下方向の両面に平面部を含む。本実施形態において、取付部72がプレート状にされるに伴い、取付部72を補強する補強部73が設けられる。より詳しくは、本実施形態に係る規制手段7は、取付部72を含む取付部材76を含む。取付部材76は、キャビン3に連結される連結部75と、該連結部75から上下方向と直交する方向に延びるプレート状の取付部72と、取付部72を補強する一対の補強部73とを備える。
【0079】
本実施形態において、連結部75は、図9に示すように、キャビン3の底面に固定される。連結部75の下端には、ラテラルロッドRを連結する第二ロッド連結部750が連設されている。第二ロッド連結部750は、第一ロッド連結部94に対して上下方向で僅かに低い位置に配置される。ラテラルロッドRは、両端部を第一ロッド連結部94及び第二ロッド連結部750に枢結されることで、第一ロッド連結部94から第二ロッド連結部750に向けて僅かに先下りした姿勢で取り付けられる。なお、ラテラルロッドRは、上述の通り先下りした姿勢と、水平方向に延びる姿勢との間で姿勢変更することで、キャビン3の振動(横揺れ)を抑える。
【0080】
これに伴い、取付部72は、図10に示すように、連結部75に対して直接的又は間接的に連結される。本実施形態において、一対の補強部73は、連結部75から左右方向Bの外方に延出し、取付部72の前後方向Aの両端部に連結されている。これにより、取付部72及び一対の補強部73は、一体となって断面H形状を呈し、取付部72は、補強部73を介して連結部75に連結されている。取付部72(平面部)には、上下方向に貫通した貫通孔(採番しない)が設けられている。取付部72の貫通孔は、第二ストッパ71の配置を基準に配置されている。
【0081】
本実施形態において、取付部材76は、取付部72に対して上下方向に間隔をあけて配置されたガイド部77を有する。ガイド部77は、プレート状に形成され、第一クッション部711及び第二クッション部712を遊挿可能な穴径に設定された貫通孔(採番しない)を有する。本実施形態において、ガイド部77の貫通孔は、第一クッション部711を基準に、第一クッション部711の外径よりも大きな穴径に設定されている。ガイド部77は、貫通孔に第一クッション部711を遊挿した状態で、一対の補強部73に固定されている。
【0082】
本実施形態において、ガイド部77は、一方の第二ストッパ71に対応して配置されている。より具体的には、ガイド部77は、キャビン3側(本実施形態においては補強部73)に固定された状態で、一方(上方)の第一ストッパ70に対して間隔をあけて対向している。これにより、ガイド部77は、浮き側に設けられている金属ストッパとして機能する。すなわち、ガイド部77は、第一クッション部711の変形可能範囲を上回るほどの大荷重がキャビン3に加わった時に、D1+αのストローク以上にキャビン3が浮き上がるのを早期に防止する。
【0083】
第一クッション部711及び第二クッション部712は、第一ストッパ70との接触(衝突)で作用する衝撃を吸収する。すなわち、第一クッション部711及び第二クッション部712の名称にも含まれる「クッション」とは、「物をささえる弾力のある物」、「衝撃を少なくするもの」を意味し、第一クッション部711及び第二クッション部712の何れも、「クッション」の意味にある機能を有する。
【0084】
第二クッション部712は、第一クッション部711よりも柔らかい。ここで、「柔らかい」とは、比較の対象となるものに比して硬度が低く、第二クッション部712の硬度よりも第一クッション部711の硬度の方が低いことを意味する。また、弾力のあるものにおいて、弾性の特性を示す弾性率(ヤング率)があり、本実施形態において、「第二クッション部712が第一クッション部711よりも柔らかい」とは、第二クッション部712の弾性率(ヤング率)が第一クッション部711の弾性率(ヤング率)よりも小さいことを意味している。
【0085】
第一クッション部711及び第二クッション部712は、弾性体である。本実施形態において、第一クッション部711は、無発泡のウレタンゴムによって成形されている。これに対し、第二クッション部712は、発泡ウレタンゴムによって成形されている。本実施形態において、第一クッション部711及び第二クッション部712は、共にウレタンによって成形されるが、発泡の有無によって柔らかさを異にしている。すなわち、第二クッション部712は、ウレタンゴムを発泡させることで、無発泡のウレタンゴムによって構成された第一クッション部711よりも柔らかく成形されている。
【0086】
第一クッション部711又は第二クッション部712の何れか一方は、筒状部711aを有し、第一クッション部711又は第二クッション部712の何れか他方は、第一クッション部711又は第二クッション部712の何れか一方の筒状部711aに内嵌される。第一クッション部711又は第二クッション部712の何れか他方は、第一クッション部711又は第二クッション部712の何れか一方の筒状部711aの内周面に対して非接着である。これにより、第一クッション部711及び第二クッション部712のそれぞれは、上下方向の荷重の有無により、独立して圧縮変形及び復元可能である。
【0087】
本実施形態において、第一クッション部711が、筒状部711aを有し、第二クッション部712が、第一クッション部711の筒状部711aに内嵌される。具体的には、第二クッション部712は、第一クッション部711の筒状部711aに対して同心又は略同心で内嵌されている。
【0088】
さらに具体的には、第一クッション部711は、筒状部711aとしての第一筒状部711aであって、先端部と基端部とを有する第一筒状部711aと、該第一筒状部711aの基端部に接続された第一基部711bであって、第一筒状部711aの内周縁から該第一筒状部711aの内穴の中心側に広がる第一基部711bとを有する。本実施形態において、第一クッション部711は、第一基部711bの外面に連設された位置決凸部711cであって、取付部72の貫通孔との嵌合で位置決めする位置決凸部711cを更に有する。
【0089】
本実施形態において、第一筒状部711aは、真円筒状に形成されている。第一基部711b及び位置決凸部711cには、貫通孔(採番しない)が設けられている。第一基部711b及び位置決凸部711cの貫通孔の孔中心は、第一筒状部711aの内穴の中心と同心に設定される。第一基部711b及び位置決凸部711cの貫通孔は、後述するボルト74aのねじ部を挿通可能な穴径に設定される。本実施形態において、筒状のカラー78に挿通された状態でボルト74aを挿通すべく、第一基部711b及び位置決凸部711cの貫通孔の穴径は、カラー78の外径に対応している。
【0090】
さらに、第二クッション部712は、先端と基端とを有する第二筒状部712aを有し、該第二筒状部712aの基端側が第一筒状部711aに対して同心又は略同心で内嵌されている。本実施形態において、第二筒状部712aは、第一筒状部711aと対応するように、真円筒状に形成されている。上述のように、第二筒状部712aは、第一筒状部
711aに内嵌した状態で、外周面が第一筒状部711aの内周面に密接するように、外径が第一筒状部711aの内径に一致している。
【0091】
第二クッション部712の先端側は、接触の相手方となる第一ストッパ70及び第二ストッパ71の少なくとも何れか他方に向けて第一クッション部711よりも突出し、第二クッション部712における第一クッション部711よりも突出している部分は、基端側から先端に向けて断面積が小さくなっている。本実施形態の場合、第二クッション部712の先端側は、接触の相手方となる第一ストッパ70に向けて第一クッション部711よりも突出している。
【0092】
本実施形態において、第二クッション部712が第二筒状部712aを有し、その第二筒状部712aが第一クッション部711(第一筒状部711a)よりも突出しているため、第二筒状部712aの外径が基端側から先端側に向かうにつれて縮径している。
【0093】
より具体的には、第一筒状部711a及び第二筒状部712aのそれぞれは、円筒状に形成されており、第一筒状部711a及び第二筒状部712aの内穴は全長に亘って同径になっている。これに伴い、第二筒状部712aの先端部分(第一クッション部711から突出する部分)は、基端から先端に向けて外径が小さくなることで、外観円錐台形状に形成されている。
【0094】
一対の第二ストッパ71のうちの一方の第二ストッパ71は、一対の第一ストッパ70のうちの一方の第一ストッパ70に対し、第一クッション部711及び第二クッション部712を下方側から対向させている。これに対し、一対の第二ストッパ71のうちの他方の第二ストッパ71は、一対の第一ストッパ70のうちの他方の第一ストッパ70に対し、第一クッション部711及び第二クッション部712を上方側から対向させている。
【0095】
第二クッション部712は、第二筒状部712aの基端部に接続された第二基部712bであって、第二筒状部712aの内周縁から該第二筒状部712aの内穴の中心側に広がる第二基部712bを有する。本実施形態において、第二クッション部712の第二基部712bの貫通孔の孔中心は、第二筒状部712aの内穴の中心と同心に設定される。第二基部712b及の貫通孔は、ボルト74aのねじ部を挿通可能な穴径に設定される。本実施形態において、上述のように、筒状のカラー78に挿通された状態でボルト74aを挿通すべく、第二基部712bの貫通孔の穴径は、カラー78の外径に対応している。
【0096】
第二ストッパ71は、第一クッション部711の第一基部711bを取付部72上に載せて配置される。このような態様により、一対の第二ストッパ71は、それぞれの第一クッション部711の第一基部711bで取付部72を挟み込んでいる。
【0097】
締結部材74は、一対の第二ストッパ71のそれぞれの第一基部711b、第二基部712b及び取付部72に挿通された状態で、一対の第二ストッパ71及び取付部72を締結している。締結部材74は、リベットやボルト・ナットでもよく、本実施形態においては、ボルト74aとナット74bとが採用される。これに伴い、ボルト74aのねじ部(採番しない)が一対の第二ストッパ71の第一基部711b、位置決凸部711c、第二基部712b、及び取付部72のそれぞれの貫通孔(連続する貫通孔)に挿通される。
【0098】
本実施形態において、上述のように筒状のカラー78にねじ部が挿通されるため、一対の第二ストッパ71の第一基部711b、位置決凸部711c、第二基部712b、及び取付部72のそれぞれの貫通孔(連続する貫通孔)に挿通される。
【0099】
ボルト74aの頭部(採番しない)は、一対の第二ストッパ71のうちの一方の第二ス
トッパ71の第一クッション部711内(第一筒状部711a内)に位置し、ナット74bは、他方の第二ストッパ71の第一クッション部711内(第一筒状部711a内)に位置している。
【0100】
本実施形態に係る作業車両1(トラクタ1)は、以上の通りであり、悪路や不整地を走行した際、車体2が地面の形状に応じて傾きつつ(上下しつつ)走行する。これに伴い、車体2上に配置されたキャビン3についても上下動(振動)するが、キャビン3は、懸架装置6によって支持されているため、懸架装置6の減衰手段60によって走行車両の上下動(振動)が吸収され、上下動の激しさが走行車両に比して緩和される。
【0101】
このように、懸架装置6の減衰手段60でキャビン3の上下動(振動)を減衰させることができるが、キャビン3の支持を懸架装置6に頼ると、キャビン3の上下動(振動の振幅)の範囲が定まらず、乗り心地が悪くなるが、本実施形態の作業車両1によれば、キャビン3の上下動を上限位置UP及び下限位置LPの少なくとも何れか一方で規制する規制手段7を備えるため、キャビン3の上下動の範囲が一定範囲内に規制される。
【0102】
そして、上下動(振動)するキャビン3の位置規制を強制的に行うと、規制時にキャビン3に対して衝撃力が作用してしまうが、本実施形態においては、規制手段7は、車体2に固定された第一ストッパ70と、キャビン3に固定された第二ストッパ71であって、キャビン3の上下動に伴って第一ストッパ70に対して接離可能な第二ストッパ71とを含み、第二ストッパ71は、第一クッション部711と、該第一クッション部711よりも柔らかい第二クッション部712であって、第一クッション部711に対して上下方向と交差する方向で横並びに配置された第二クッション部712とを有し、第二クッション部712は、第一ストッパ70に対して第一クッション部711よりも先に接触するため、第一ストッパ70に第二ストッパ71が接触(衝突)するときの衝撃の吸収が単調にならず、キャビン3に対する衝撃が抑制される。
【0103】
以上、本発明の実施形態の一例について説明したが、上記説明からも明らかなように、本発明に係る作業車両1は、走行可能な車体2と、キャビン3と、キャビン3の上下動を上限位置UP及び下限位置LPの少なくとも一方で規制する規制手段7と、を備え、規制手段7は、第一ストッパ70と、キャビン3の上下動に伴って、第一ストッパ70に対して接離可能な第二ストッパ71と、を含み、第一ストッパ70及び第二ストッパ71の少なくとも一方は、第一クッション部711と、該第一クッション部711よりも柔らかく、第一クッション部711に対して上下方向と交差する方向で横並びに配置された第二クッション部712と、を有し、第二クッション部712は、キャビン3の上下動に伴って、第一クッション部711よりも先に第一ストッパ70又は第二ストッパ71に接触するように構成されている。
【0104】
上記構成の作業車両1によれば、起伏のある地面上を走行すると、車体2は、地面の形状に応じて傾きつつ(上下しつつ)走行する。これに伴い、車体2上に配置されたキャビン3についても上下動する。作業車両1が懸架装置6を備える場合には、キャビン3は、懸架装置6によって支持されているため、懸架装置6の減衰手段60によって走行車両の上下動(振動)が吸収され、上下動の激しさが走行車両に比して緩和される。
【0105】
本発明に係る作業車両1は、懸架装置6の有無に関係なく、車体2上でキャビン3が上下動(車体2上でキャビン3が振幅)する状況下において、キャビン3は、規制手段7によって、上下方向の移動の範囲が制限される。すなわち、キャビン3の上下動の上限及び下限の少なくとも何れか一方が規制手段7によって決定される。このキャビン3の上下動の範囲の制限は、キャビン3の上下動に伴って走行車両に固定された第一ストッパ70と、キャビン3に固定された第二ストッパ71との接触(衝突)によって達成される。
【0106】
上記構成の作業車両1において、上述のように、第一ストッパ70と第二ストッパ71とが接触(衝突)する際、第一クッション部711よりも先に第二クッション部712が相手方となる第一ストッパ70又は第二ストッパ71と接触して圧縮され、次いで第一クッション部711が相手方となる第一ストッパ70又は第二ストッパ71と接触して圧縮される。すなわち、第一クッション部711及び第二クッション部712が上下方向と交差する方向で横並びに配置され且つ第二クッション部712が第一クッション部711よりも先に相手方と接触するため、上下方向の押圧(圧縮)が第一クッション部711及び第二クッション部712に対して同時に作用することなく、柔らかい第二クッション部712から第一クッション部711に順々に作用する。
【0107】
従って、第一ストッパ70と第二ストッパ71とが接触(衝突)する際、第二クッション部712が衝撃を吸収したのちに第一クッション部711が衝撃を吸収する。第二クッション部712は第一クッション部711よりも柔らかいため、衝撃の吸収率が大きい状態から小さい状態に切り替わることになり、キャビン3に生じる衝撃が漸減的に吸収されるため、大きな衝撃を感じることが抑制される。また、第一クッション部711と第二クッション部712が上下方向と交差する方向で横並びに配置されているため、第一クッション部711が圧縮される状態で第二クッション部712も圧縮されることになり、衝撃の吸収率が高められる。
【0108】
また、第二クッション部712は、第一ストッパ70又は第二ストッパ71に向けて第一クッション部711よりも突出しているので、第二クッション部712の接触の対象となる相手方に対して第一クッション部711よりも近い部分を有することになる。そのため、第一ストッパ70と第二ストッパ71とが相対的に接近した状態において、第二クッション部712が第一クッション部711よりも先に相手方に接触して圧縮される。
【0109】
また、第一ストッパ70又は第二ストッパ71の一方は、平面状の受け面700を有し、第一ストッパ70及び第二ストッパ71の他方は、第一クッション部711及び第二クッション部712を有し、第一クッション部711及び第二クッション部712は、受け面700と対向しているので、第二クッション部712が第一クッション部711よりも相手方の受け面700に近い部分を有することになる。そのため、相手方の受け面700を平面状にするだけで(相手方の構造を複雑にせずとも)、第一ストッパ70と第二ストッパ71とが相対的に接近した状態において、第二クッション部712が第一クッション部711よりも先に相手方の受け面700に接触して圧縮される。
【0110】
さらに、第一クッション部711又は第二クッション部712の一方は、筒状部711aを有し、第一クッション部711又は第二クッション部712の他方は、第一クッション部711又は第二クッション部712の一方の筒状部711aに内嵌されているので、第一クッション部711及び第二クッション部712が相互に位置決めされる。さらに、筒状部711aに内嵌される第一クッション部711又は第二クッション部712の何れか他方は、一方の筒状部711aに拘束されることになるため、自由な圧縮変形が防止される。これにより、第一クッション部711及び第二クッション部712の圧縮(変形)が安定的なものとなる結果、キャビン3の上下動に伴う衝撃の吸収も安定する。
【0111】
また、第一クッション部711は、筒状部711aを有し、第二クッション部712は、第一クッション部711の筒状部711aに対して同心又は略同心で内嵌されている。このように、第一クッション部711の筒状部711aに第二クッション部712が同心又は略同心で内嵌されると、第一クッション部711よりも柔らかい第二クッション部712が、上下方向に延びる中心を一致させた状態で自身よりも固い第一クッション部711に拘束される。これにより、第二クッション部712の自由な変形(圧縮変形)が抑制
されるため、キャビン3の上下動に伴う衝撃の吸収がより安定的になる。
【0112】
また、第一クッション部711は、筒状部711aとしての第一筒状部711aであって、先端部と基端部とを有する第一筒状部711aと、該第一筒状部711aの基端部に接続された第一基部711bであって、第一筒状部711aの内周縁から該第一筒状部711aの内穴の中心側に広がる第一基部711bとを有し、第二クッション部712は、先端と基端とを有する第二筒状部712aを有し、該第二筒状部712aの基端側が第一筒状部711aに対して同心又は略同心で内嵌されている。
【0113】
このように、第一クッション部711の第一筒状部711aに第二クッション部712の第二筒状部712aが同心又は略同心で内嵌されると、第一クッション部711よりも柔らかい第二クッション部712における第二筒状部712aが、上下方向に延びる中心を一致させた状態で自身よりも固い第一クッション部711の第一筒状部711aに拘束される。
【0114】
これにより、相手方との接触による圧縮状態において、第二クッション部712の第二筒状部712aの径方向外方側への変形(膨らみ)が抑制されるため、キャビン3の上下動に伴う衝撃の吸収がより安定的になる。また、第二クッション部712の第二筒状部712aは、自身の内穴側が拘束されないため、これによって圧縮時の変形(弾性変形)が許容されるため、キャビン3に作用する衝撃の吸収を担保することができる。
【0115】
また、第二クッション部712の先端側は、接触の相手方となる第一ストッパ70及び第二ストッパ71の少なくとも他方に向けて第一クッション部711よりも突出し、第二クッション部712における第一クッション部711よりも突出している部分は、基端側から先端に向けて断面積が小さくなっている。
【0116】
上記構成によれば、断面積の小さいところほど剛性が低くなるため、第二クッション部712が相手方と接触して圧縮される際に、断面積の小さな先端側が優先的に圧縮変形する。すなわち、第二クッション部712は、先端から基端側に順々に圧縮変形する。これにより、キャビン3に作用する衝撃が瞬間的且つ単調的に吸収されることが抑制される。
【0117】
特に、規制手段7は、第一ストッパ70を一対備えるとともに、第二ストッパ71を一対備え、一対の第一ストッパ70は、少なくとも上下方向の異なる高さ位置に配置され、一対の第二ストッパ71のうちの一方の第二ストッパ71は、一対の第一ストッパ70のうちの一方の第一ストッパ70に対し、第一クッション部711及び第二クッション部712を下方側から対向させ、一対の第二ストッパ71のうちの他方の第二ストッパ71は、一対の第一ストッパ70のうちの他方の第一ストッパ70に対し、第一クッション部711及び第二クッション部712を上方側から対向させている。
【0118】
上記構成によれば、一方の第二ストッパ71が一方の第一ストッパ70に対して下側から対向しているため、一方の第一ストッパ70に一方の第二ストッパ71が接触することで、キャビン3の上限位置UPを決定する。これに対し、他方の第二ストッパ71が他方の第一ストッパ70に対して上側から対向するため、他方の第一ストッパ70に他方の第二ストッパ71が接触することで、キャビン3の下限位置LPを決定する。この下限位置LP及び上限位置UPにおいて、第一ストッパ70と第二ストッパ71とが接触(衝突)する状況になり得るが、第二クッション部712が第一クッション部711よりも先に相手方に接触し、次いで第一クッション部711が相手方に接触することで、キャビン3の上下動における下限位置LP及び上限位置UPでの衝撃が緩和される。
【0119】
また、規制手段7は、キャビン3に連結された取付部72と、該取付部72に第二スト
ッパ71を固定する締結部材74と、を更に備え、第二クッション部712は、第二筒状部712aの基端部に接続された第二基部712bであって、第二筒状部712aの内周縁から該第二筒状部712aの内穴の中心側に広がる第二基部712bを有し、一対の第一ストッパ70は、上下方向に間隔をあけて互いに対向して配置され、一対の第二ストッパ71は、それぞれの第一クッション部711の第一基部711bで取付部72を挟み込み、締結部材74は、一対の第二ストッパ71のそれぞれの第一基部711b、第二基部712b及び取付部72に挿通された状態で、一対の第二ストッパ71及び取付部72を締結している。
【0120】
上記構成によれば、一対の第二ストッパ71がそれぞれの第一基部711bで取付部72を挟んだ状態で、締結部材74で締結されるため、上下方向に一列に並んだ状態で配置される。この一対の第二ストッパ71は、第一クッション部711及び第二クッション部712を対向させる、すなわち、上下で対向する一対の第一ストッパ70の間に配置される。従って、コンパクトな構成にしつつもキャビン3の上限位置UP及び下限位置LPを決定することができる。また、上記の作用により、キャビン3の上下動に伴う衝撃の緩和が十分にできる。
【0121】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更可能であることは勿論である。
【0122】
上記実施形態において、キャビン3の前方A1側がキャビン支持部材80及び防振部材81によって支持され、防振部材81にマウントゴムが採用されたが、これに限定されない。例えば、キャビン3の前方A1側についても、キャビン3の後方A2側と同様の懸架装置6及び規制手段7を採用しても勿論よい。
【0123】
上記実施形態において、減衰手段としてのショックアブソーバー60と、コイルバネとを有するサスペンションが懸架装置6を構成したが、これに限定されない。懸架装置6は、例えば、車体2とキャビン3との間にリンク機構(四節平行リンク等)を配置し、このリンク機構を構成するリンクに減衰手段60(ショックアブソーバー60)を接続してリンクの傾動(キャビン3の振動)を抑制するようにしたものであってもよい。
【0124】
上記実施形態において、第一クッション部711及び第二クッション部712は、発泡の有無によって柔らかさに違いを持たせているが、これに限定されない。例えば、第一クッション部711及び第二クッション部712が、異なる発泡率に設定されることで硬さに違いを持たせる(第二クッション部712が第一クッション部711よりも柔らかくする)ようにしてもよい。また、第一クッション部711及び第二クッション部712の硬さ(柔らかさ)の相違は、発泡の有無や発泡率の相違で設定する以外に、素材そのものの特性で異ならせるようにしてもよい。
【0125】
第一クッション部711及び第二クッション部712は、同一の材料で成形してもよいし、異なる材料で成形してもよい。第一クッション部711及び第二クッション部712を同一の材料で成形する場合、第一クッション部711と第二クッション部712とを発泡率の異なる部位にして一体成形してもよい。従って、上記実施形態において、第一筒状部711aの内周面と第二クッション部712(第二筒状部712aの外周面)とを非接着にしたが、これらを接着しても勿論よい。但し、上記実施形態と同様に、第一クッション部711と第二クッション部712の変形の独立性を担保するには、これらを非接着にすることが好ましい。
【0126】
上記実施形態において、第一筒状部711a及び第二筒状部712aが何れも真円筒状に成形されることで、同心又は略同心とされたが、これに限定されるものではなく、第一
筒状部711a及び第二筒状部712aの何れか一方が、径方向において偏肉に形成され、中心が同心にならない態様であってもよい。
【0127】
上記実施形態において、第一クッション部711及び第二クッション部712の筒状部(第一筒状部711a、第二筒状部712a)が真円筒状にされたが、これに限定されない。例えば、これらに筒状部711a,712aを形成する場合には、筒状部711a,712aが四角筒状等の多角筒状に形成されてもよい。
【0128】
上記実施形態において、第一ストッパ70が平面状の受け面700を有し、第二ストッパ71が第一クッション部711及び第二クッション部712を有したが、これに限定されない。例えば、図11に示すように、第一ストッパ70及び第二ストッパ71の何れもが第一クッション部701,711及び第二クッション部702,712を有してもよい。また、図12に示すように、第一ストッパ70及び第二ストッパ71のそれぞれが平面状の受け面700,710を有するとともに、第一クッション部701,711及び第二クッション部702,712を有してもよい。何れの場合も、第二クッション部702,712は、接触の相手方に対して第一クッション部701,711よりも先に接触するように構成されることが前提である。また、このように、第一ストッパ70及び第二ストッパ71の何れもが第一クッション部701,711及び第二クッション部702,712を有する場合、第一ストッパ70の第二クッション部702と第二ストッパ71の第二クッション部702の柔らかさ(発泡率)を異ならせ、異なる特性を持たせてもよい。このようにすれば、柔らかさの違う(発泡率の違いによる特性が異なる)第一ストッパ70及び第二ストッパ71の第二クッション部702,712の組み合わせにより、第一ストッパ70と第二ストッパ71とが接触乃至衝突する際の衝撃の緩和を調整することができる。
【0129】
上記実施形態において、規制手段7が一対の第一ストッパ70及び一対の第二ストッパ71を備えたが、これに限定されない。例えば、規制手段7は、図13に示すように、上限位置UPで規制を行うように下方に向けた受け面700を有する第一ストッパ70と、第一クッション部711及び第二クッション部712を有する第二ストッパ71とを備えたものでもよい。また、規制手段7は、図14に示すように、下限位置LPで規制を行うように上方に向けた受け面700を有する第一ストッパ70と、第一クッション部711及び第二クッション部712を有する第二ストッパ71とを備えたものでもよい。
【0130】
上記実施形態において、第一クッション部711の第一筒状部711aに第二クッション部712の第二筒状部712aを内嵌することで、第一筒状部711aが第二筒状部712aの外側に配置されたが、これに限定されない。例えば、図12及び図15に示すように、第二クッション部702,712の第二筒状部702a,712aに第一クッション部701,711の第一筒状部701a,711aを内嵌することで、第二筒状部702a,712aが第一筒状部701a,711aの外側に配置されてもよい。
【0131】
上記実施形態において、第一クッション部711及び第二クッション部712の何れも筒状部(第一筒状部711a、第二筒状部712a)を有したが、これに限定されない。例えば、図16に示す如く、筒状部に内嵌される部材(第一クッション部711、第二クッション部712)が中実に成形されてもよい。このように中実にすると、締結部材での固定では締結部材の存在がクッション性能を阻害するため、接着等の態様での取付をすることが好ましい。
【0132】
上記実施形態において、第一クッション部711の筒状部711a(第一筒状部711a)に第二クッション部712(第二筒状部712a)を内嵌することで、上下方向と直交する方向から見た断面において、第一クッション部711と第二クッション部712と
が横並びに配置された態様となっているが、この横並びは断面におけるものに限定されず、上下方向と直交する方向から見た外観視において、第一クッション部711と第二クッション部712とが横並びに配置された態様でもあってもよい。ようは、第一クッション部711の周りに複数の第二クッション部712が密接した状態で配置されたり、第二クッション部712の周りに複数の第一クッション部711が密接した状態で配置されたりした場合、筒状部711aを形成したのと同様の態様となる。従って、ここで上下方向と直交する方向で横並びとは、外観視のみに限定されず、断面視において横並びであることも含まれることがもちろんのことである。
【0133】
上記実施形態において、第二クッション部712の先端側は、接触の相手方となる第一ストッパ70及び第二ストッパ71の少なくとも何れか他方に向けて第一クッション部711よりも突出し、第二クッション部712における第一クッション部711よりも突出している部分は、基端側から先端に向けて断面積が小さくなるように形成されたが、これに限定されない。例えば、図17に示すように、第二クッション部712における第一クッション部711よりも突出している部分は、基端側から先端に向けて断面積が同一又は略同一であってもよい。
【0134】
上記実施形態において、第二クッション部712が第一クッション部711よりも相手方に向けて突出することで、キャビン3の上下動(振動)に伴って第一ストッパ70と第二ストッパ71とが接触する際に、第二クッション部712が第一クッション部711よりも先に接触するようにしたが、これに限定されない。例えば、図18に示すように、第二クッション部712の先端と第一クッション部711の先端が上下方向の高さが同レベルに設定されたり、第一クッション部711の先端が第二クッション部712の先端よりも相手方に向けて突出したりしていてもよい。この場合、接触の相手方において、第一クッション部711と対向する領域よりも、第二クッション部712と対向する領域の方が、相手方にある第二クッション部712に向けて突出していればよい。このようにすれば、接触の対象となる相手方に対して第一クッション部711よりも先に第二クッション部712が接触乃至圧縮されるため、上記実施形態と同様の作用及び効果を奏し得る。
【0135】
また、上記実施形態において、第二クッション部712における第一クッション部711よりも突出している部分は、基端側から先端に向けて外径が小さくなるようにすることで、基端側から先端に向けて断面積が小さくなるように形成されたが、これに限定されない。例えば、第二クッション部712の第二筒状部712aが円筒状にされる場合、外径を基端側から先端に向けて一定にし、内径を基端から先端に向けて大きくしてもよい。また、第二クッション部712の第二筒状部712aが円筒状にされる場合、外径を基端側から先端に向けて小さくするとともに、内径を基端から先端に向けて大きくしてもよい。
【0136】
上記実施形態において、第一クッション部711の第一筒状部711aに第二クッション部712(第二筒状部712a)を内嵌したが、これに限定されない。例えば、図19及び図20に示すように、第一クッション部711及び第二クッション部712が、何れも中実に成形され、これらを上下方向と直交する方向で横並びに配置してもよい。この場合、図19に示すように、第一クッション部711及び第二クッション部712が離れた配置にされてもよいし、図20に示すように、第一クッション部711及び第二クッション部712が密接していてもよい。
【0137】
なお、図15乃至図20には、本発明の他実施形態に係る規制手段7の例として、上限位置UPでの規制を対象とした第一ストッパ70及び第二ストッパ71を示しているが、これらの態様は、下限位置LPでの規制を対象とした第一ストッパ70及び第二ストッパ71としてもよい。また、上記実施形態と同様、上限位置UP及び下限位置LPの規制を対象とする一対の第一ストッパ70及び一対の第二ストッパ71としてもよい。この場合
図15乃至図20の態様を組み合わせても勿論よい。
【符号の説明】
【0138】
1 :作業車両(トラクタ)
2 :車体
3 :キャビン
4 :走行装置
4F :前輪
4R :後輪
6 :懸架装置(第二キャビン支持手段)
7 :規制手段
60 :減衰手段(ショックアブソーバー)
61 :コイルスプリング
70 :第一ストッパ
71 :第二ストッパ
72 :取付部
73 :補強部
74 :締結部材
74a :ボルト
74b :ナット
75 :連結部
76 :取付部材
600 :シリンダ部
601 :ピストンロッド
601a :ロッド部
700 :受け面
701 :第一クッション部
702 :第二クッション部
711 :第一クッション部
711a :筒状部(第一筒状部)
711b :第一基部
712 :第二クッション部
712a :第二筒状部(筒状部)
712b :第二基部
UP :上限位置
LP :下限位置
図1
図2
図3
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