IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社クボタの特許一覧

<>
  • 特開-作業機及び作業機の制御方法 図1
  • 特開-作業機及び作業機の制御方法 図2
  • 特開-作業機及び作業機の制御方法 図3
  • 特開-作業機及び作業機の制御方法 図4
  • 特開-作業機及び作業機の制御方法 図5
  • 特開-作業機及び作業機の制御方法 図6
  • 特開-作業機及び作業機の制御方法 図7
  • 特開-作業機及び作業機の制御方法 図8
  • 特開-作業機及び作業機の制御方法 図9
  • 特開-作業機及び作業機の制御方法 図10
  • 特開-作業機及び作業機の制御方法 図11
  • 特開-作業機及び作業機の制御方法 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129458
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】作業機及び作業機の制御方法
(51)【国際特許分類】
   A01B 63/10 20060101AFI20240919BHJP
【FI】
A01B63/10 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038679
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】安田岡本弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】大原 慎司
(72)【発明者】
【氏名】寳来 昂平
(72)【発明者】
【氏名】黒下 佳彦
【テーマコード(参考)】
2B304
【Fターム(参考)】
2B304KA08
2B304KA20
2B304LA06
2B304LB05
2B304LB15
2B304MA03
2B304MA20
2B304MD03
2B304PD19
2B304QA03
2B304QA22
2B304QB13
2B304RA08
(57)【要約】
【課題】駆動部材を下降させて目標位置に達した際のショックを低減させつつも、効率性を向上する。
【解決手段】作業機は、作動油によって動作する油圧アクチュエータと、油圧アクチュエータによって上昇又は下降される駆動部材と、を有する駆動装置と、油圧アクチュエータを制御する制御弁と、制御弁を制御して、駆動部材を所定の目標位置まで移動させる制御装置と、を備え、制御装置は、駆動部材の実際の位置である実際位置と目標値との偏差及び油圧アクチュエータを動作させる作動油の目標流量に基づく第1制御によって制御弁を制御する第1モードと、偏差が零から所定の偏差までの目標流量を第1制御よりも低くする第2制御によって制御弁を制御する第2モードと、に切り替え可能である。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動油によって動作する油圧アクチュエータと、前記油圧アクチュエータによって上昇又は下降される駆動部材と、を有する駆動装置と、
前記油圧アクチュエータを制御する制御弁と、
前記制御弁を制御して、前記駆動部材を所定の目標位置まで移動させる制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記駆動部材の実際の位置である実際位置と目標値との偏差及び前記油圧アクチュエータを動作させる作動油の目標流量に基づく第1制御によって前記制御弁を制御する第1モードと、前記偏差が零から所定の偏差までの前記目標流量を前記第1制御よりも低くする第2制御によって前記制御弁を制御する第2モードと、に切り替え可能である作業機。
【請求項2】
前記制御装置は、前記第2モードに切り替えられた場合であっても、前記駆動部材を上昇する際には、前記第1制御によって前記制御弁を制御する請求項1に記載の作業機。
【請求項3】
前記制御装置の前記第1モード及び前記第2モードの切り替えを操作するための切替具を備え、
前記制御装置は、前記切替具の操作に応じて、前記第1モードと前記第2モードとに切り替える請求項1に記載の作業機。
【請求項4】
前記油圧アクチュエータを駆動させる作動油の最大流量を変更するための操作具を備え、
前記制御装置は、前記操作具で変更された最大流量に基づいて、前記制御弁を制御する請求項1に記載の作業機。
【請求項5】
前記駆動装置は、作業装置を昇降可能な昇降装置であり、
前記油圧アクチュエータは、リフトシリンダであり、
前記駆動部材は、前記リフトシリンダの動作によって駆動されるリフトアームである請求項1~4のいずれか1項に記載の作業機。
【請求項6】
前記制御装置は、前記第2モードに切り替えられた場合、前記駆動部材を下降する際には、前記第2制御によって前記制御弁を制御する請求項1に記載の作業機。
【請求項7】
作動油によって動作する油圧アクチュエータと、前記油圧アクチュエータによって上昇又は下降される駆動部材と、を有する駆動装置と、前記油圧アクチュエータを制御する制御弁と、前記制御弁を制御して、前記駆動部材を所定の目標位置まで移動させる制御装置と、を備えた作業機の制御方法であって、
前記制御装置が、前記駆動部材の実際の位置である実際位置と目標値との偏差及び前記油圧アクチュエータを動作させる作動油の目標流量に基づく第1制御によって前記制御弁を制御する第1モードと、前記偏差が零から所定の前記偏差までの前記目標流量を前記第1制御よりも低くする第2制御によって前記制御弁を制御する第2モードと、を切り替えるステップを含んでいる作業機の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばトラクタ等の作業機及び作業機の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示された作業車両の昇降装置は、走行機体に連結された作業機を油圧シリンダの伸縮によって昇降させる作業車両の昇降装置であって、作業機を伸縮によって昇降作動させる油圧シリンダと、油圧シリンダを介して前記作業機の昇降を制御する電磁弁と、該作業機の昇降高さを検出する検出手段と、前記電磁弁への電流供給制御によって上記作業機の下降を制御する制御部とを備え、制御部は、目標の昇降高さと、ロータリ耕耘装置の昇降高さとの差が大きい程、電磁弁に供給する電流の電流値又はデューティ比を大きくして、ロータリ耕耘装置の昇降高さとの差が小さい程、電磁弁に供給する電流の電流値又はデューティ比を小さくする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-212710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の作業車両の昇降装置では、ロータリ耕耘装置の昇降時におけるショックを低減して、スムーズな昇降作業を行っている。
【0005】
しかしながら、特許文献1の作業車両の昇降装置における制御のみであると、ロータリ耕耘装置の昇降時におけるショックの低減と、作業の効率性と、の両立が困難な場合がある。
【0006】
本発明は、このような従来技術の問題点を解決すべくなされたものであって、駆動部材を下降させて目標位置に達した際のショックを低減させつつも、効率性を向上できる作業機、及び作業機の制御方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る作業機は、作動油によって動作する油圧アクチュエータと、前記油圧アクチュエータによって上昇又は下降される駆動部材と、を有する駆動装置と、前記油圧アクチュエータを制御する制御弁と、前記制御弁を制御して、前記駆動部材を所定の目標位置まで移動させる制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記駆動部材の実際の位置である実際位置と目標値との偏差及び前記油圧アクチュエータを動作させる作動油の目標流量に基づく第1制御によって前記制御弁を制御する第1モードと、前記偏差が零から所定の偏差までの前記目標流量を前記第1制御よりも低くする第2制御によって前記制御弁を制御する第2モードと、に切り替え可能である。
【0008】
前記制御装置は、前記第2モードに切り替えられた場合であっても、前記駆動部材を上昇する際には、前記第1制御によって前記制御弁を制御してもよい。
【0009】
前記作業機は、前記制御装置の前記第1モード及び前記第2モードの切り替えを操作するための切替具を備え、前記制御装置は、前記切替具の操作に応じて、前記第1モードと前記第2モードとに切り替えてもよい。
【0010】
前記作業機は、前記油圧アクチュエータを駆動させる作動油の最大流量を変更するための操作具を備え、前記制御装置は、前記操作具で変更された最大流量に基づいて、前記制御弁を制御してもよい。
【0011】
前記駆動装置は、作業装置を昇降可能な昇降装置であり、前記油圧アクチュエータは、リフトシリンダであり、前記駆動部材は、前記リフトシリンダの動作によって駆動されるリフトアームであってもよい。
【0012】
前記制御装置は、前記第2モードに切り替えられた場合、前記駆動部材を下降する際には、前記第2制御によって前記制御弁を制御してもよい。
【0013】
本発明の一態様に係る作業機の制御方法は、作動油によって動作する油圧アクチュエータと、前記油圧アクチュエータによって上昇又は下降される駆動部材と、を有する駆動装
置と、前記油圧アクチュエータを制御する制御弁と、前記制御弁を制御して、前記駆動部材を所定の目標位置まで移動させる制御装置と、を備えた作業機の制御方法であって、前記制御装置が、前記駆動部材の実際の位置である実際位置と目標値との偏差及び前記油圧アクチュエータを動作させる作動油の目標流量に基づく第1制御によって前記制御弁を制御する第1モードと、前記偏差が零から所定の前記偏差までの前記目標流量を前記第1制御よりも低くする第2制御によって前記制御弁を制御する第2モードと、を切り替えるステップを含んでいる。
【発明の効果】
【0014】
上記作業機、及び作業機の制御方法によれば、駆動部材を下降させて目標位置に達した際のショックを低減させつつも、効率性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】作業機の側面図である。
図2】作業機の制御システムを示す図である。
図3】昇降装置を示す左後方斜視図である。
図4】昇降装置の昇降動作を示す左側面図である。
図5】第1制御マップの一例を示す図である。
図6】第3制御マップの一例を示す図である。
図7】第1制御マップと第2制御マップとの対比を示す図である。
図8】切替具の一例を示す図である。
図9】第2制御マップの変形例を示す図である。
図10】補正後の第3制御マップの一例を示す図である。
図11】制御装置が行う第1モード及び第2モードの一連の流れを示す図である。
図12】変形例における第1制御マップと第2制御マップとを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0017】
まず、図1図2を用いて作業機1について説明する。図1は、本実施形態に係る作業機1の側面図を示している。図2は、作業機1が備えている制御システムを示す図である。図1に示すように、作業機1は、機体2と、作業装置3と、走行装置4と、原動機5と、保護機構6と、駆動装置8と、を備えている。
【0018】
本発明の実施形態において、作業機1の運転席7に着座した運転者が向く方向(図1の矢印A1の方向)を前方といい、その反対方向(図1の矢印A2の方向)を後方という。運転者の右側(図3の矢印B2の方向)を右方といい、運転者の左側(図3の矢印B1の方向)を左方という。また、作業機1の前後方向(図1の矢印A3の方向)に直交する方向である水平方向(図3の矢印B3の方向)を車体幅方向(あるいは、幅方向)という。
【0019】
作業装置3は、例えばインプルメントであり、機体2の後部に連結され、様々な作業を行うことができる。作業装置3の種類は特に限定されず、例えば、芋や人参の掘り取りを行う掘り取り装置、肥料を散布する肥料散布装置(施肥装置)及び農薬を散布する農薬散布装置等の散布作業装置、圃場に種まきを行う播種装置、収穫を行う収穫装置、牧草等の刈取を行う刈取装置、牧草等の拡散を行う拡散装置、牧草等の集草を行う集草装置、牧草等の成形を行う成形装置、並びに圃場に対する対地作業を行う対地作業装置等である。なお、図1では、作業装置3としてプラウを機体2の後部に連結した例を示している。
【0020】
走行装置4は、機体2に推進力を付与する装置である。図1に示す例において、走行装置4は、前輪4a及び後輪4bを有する車輪型の装置であるが、クローラ型の装置であってもよい。
【0021】
駆動装置(昇降装置)8は、作業装置3を機体2に連結し、且つ機体2に対して当該作業装置3を昇降することができる。昇降装置8は、機体2の後部に設けられている。昇降装置8は、例えば、3点リンク機構等で構成されている。昇降装置8には、作業装置3が着脱可能である。作業装置3を昇降装置8に連結することで、機体2は、作業装置3を移動できる。
【0022】
原動機5は、ディーゼルエンジン、電動モータ等であって、この実施形態ではディーゼ
ルエンジンで構成されている。原動機5の後部には、フライホイールハウジングが設けられている。また、原動機5が出力した動力は、機体2の下部に配置されたミッションケース9に伝達される。
【0023】
図1に示すように、作業機1は、機体2の上部に設けられた運転席7と、操作装置10とを備えている。運転席7は、保護機構(例えばキャビンやキャノピ等)6内に配置されている。操作装置10は、例えば運転席7の周囲に設置されており、運転席7に着座した作業者(オペレータ)が作業機1に装備された機械、装置、器具、部材等(例えば、作業装置3、走行装置4、原動機5等)の操作に関係する装置、部材等が集まった部位を含む。操作装置10は、少なくともステアリング等で構成された操舵装置を含む。
【0024】
図2に示すように、作業機1に、搭載された複数の機器は、CAN、ISOBUS、LIN、FlexRayなどの車載ネットワークN1で接続されている。車載ネットワークN1に接続された機器は、原動機5、操作装置10、制御装置11、表示装置12、スタータスイッチ13、及びスタータリレー14等である。
【0025】
表示装置12は、例えば、液晶ディスプレイ等の表示部12aを有し、当該表示部12aに作業機1の各種の情報を表示する。表示装置12は、運転席7の周囲の任意の位置(例えば、前方位置、側方位置など)に設置されている。本実施形態において、表示装置12は、運転席7の前方に設けられたメータパネル内に設けられたモニタ(ダッシュボードモニタ)である。
【0026】
表示装置12は、操作装置10に含まれるジョグダイヤル41によって操作される。ジョグダイヤル41は、回転操作が可能であり、回転操作を行うことにより、表示部12aに表示される複数の選択項目のうちの選択項目候補を変更する。また、ジョグダイヤル41は、押圧操作が可能であり、押圧操作することにより選択項目を決定する。
【0027】
制御装置11は、ECU(電子制御装置)から構成され、CPU、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、及びその他の電子部品と電気回路を含んでいる。制御装置11の不揮発性メモリには、CPUが各部を制御するためのソフトウェアプログラム及び各種データが記憶されている。即ち、制御装置11は作業機1のコントローラである。
【0028】
制御装置11は、作業機1に関する様々な制御を行う。例えば、制御装置11は、操作装置10から入力された信号(操作信号)に基づいて、作業装置3、走行装置4、原動機5等の操作を行う。図2に示すように、制御装置11は、記憶部11aを有している。記憶部11aは、不揮発性のメモリ等であって、様々な情報を記憶する記憶装置である。記憶部11aは、例えば、様々なアプリケーションソフト(Application software)を記憶している。なお、記憶部11aは、制御装置11の外部に設けられ、車載ネットワークN1に接続された記憶装置(ハードディスクドライブ:HDD、ソリッド・ステート・ドライブ:SSDなど)としてもよい。
【0029】
スタータスイッチ13は、原動機5を始動させるためのスイッチである。運転席周りに設けられたキーシリンダに、オペレータがエンジンキーを挿入し、当該エンジンキーの回転操作を行うと、スタータスイッチ13は、スタータリレー14に原動機始動の信号(始動信号)を出力する。
【0030】
スタータリレー14は、原動機5の始動を行う部品である。スタータリレー14に始動信号が入力されると、当該スタータリレー14は、原動機5の始動を行う。なお、原動機駆動の1つである原動機始動は、エンジンキーをキーシリンダに挿入してスタータリレー14をオンするような機械式(キーシリンダ式)に限定されず、無線通信によって原動機始動を許可又は禁止にするスマートエントリー式であってもよい。
【0031】
以下、昇降装置8について詳しく説明する。図3図4に示すように、昇降装置8は、ミッションケース9に接続されている。図3は、昇降装置8を示す左後方斜視図である。図4は、昇降装置8の昇降動作を示す左側面図である。図3図4に示すように、昇降装置8は、リフトアーム(駆動部材)21と、トップリンク22と、ロアリンク23と、リフトロッド24と、リフトシリンダ(油圧アクチュエータ)26とを有している。
【0032】
図3に示すように、リフトアーム21は、第1リフトアーム21Lと第2リフトアーム21Rとを含む。第1リフトアーム21Lは、機体幅方向の一方(左方)に配置されてい
る。第2リフトアーム21Rは、機体幅方向の他方(右方)に配置されている。第1リフトアーム21L及び第2リフトアーム21Rは、機体2に揺動自在に設けられている。具体的には、第1リフトアーム21L及び第2リフトアーム21Rは、前端部がミッションケース9の上部に枢支されており、後方に向けて延びている。
【0033】
トップリンク22は、第1リフトアーム21Lと第2リフトアーム21Rとの間に配置され、前端部がミッションケース9の上部に枢支されている。ロアリンク23は、第1ロアリンク23Lと第2ロアリンク23Rとを含む。第1ロアリンク23L及び第2ロアリンク23Rの前端部は、ミッションケース9の下部に枢支されている。リフトロッド24は、第1リフトロッド24Lと第2リフトロッド24Rとを含む。第1リフトロッド24Lは、上端部が第1リフトアーム21Lの後端部に接続されており、下端部が第1ロアリンク23Lの長さ方向の中途部に接続されている。第2リフトロッド24Rは、上端部が第2リフトアーム21Rの後端部に接続されており、下端部が第2ロアリンク23Rの長さ方向の中途部に接続されている。
【0034】
図3図4に示すように、トップリンク22の後端部とロアリンク23の後端部には、作業装置3を連結可能なジョイント25が設けられている。トップリンク22の後端部とロアリンク23の後端部に作業装置3を連結することにより、作業装置3は作業機1の後部に昇降可能に連結される。ゆえに、作業装置3は、リフトロッド24及びロアリンク23を介して、リフトアーム21に連結される。
【0035】
図3図4に示すように、リフトシリンダ26は、作動油によって動作する油圧アクチュエータ(油圧シリンダ)である。図2に示すように、リフトシリンダ26は、単動型のシリンダであり、筒状のシリンダチューブ26aと、一端側がシリンダチューブ26aに対して摺動可能に挿入されたピストンロッド26bと有している。シリンダチューブ26a内は、該シリンダチューブ26aの軸心に沿う方向(軸心方向)に移動可能に収容されたピストンによって、ボトム側油室とロッド側油室とで仕切られている。このため、ボトム側油室に作動油が供給されると、リフトシリンダ26が伸長する。一方、ボトム側油室から作動油が排出されると、リフトシリンダ26が収縮する。
【0036】
リフトシリンダ26は、第1リフトシリンダ26Lと第2リフトシリンダ26Rとを含んでいる。第1リフトシリンダ26Lは、一端部が第1リフトアーム21Lに接続され、他端部がミッションケース9の左下部に接続されている。第2リフトシリンダ26Rは、一端部が第2リフトアーム21Rに接続され、他端部がミッションケース9の右下部に接続されている。リフトシリンダ26の駆動によって、第1リフトアーム21Lと第2リフトアーム21Rは、上下方向に揺動する。
【0037】
なお、駆動装置8は、作動油によって動作する油圧アクチュエータ26と、油圧アクチュエータ26の駆動によって上昇又は下降される駆動部材21と、を有していればよく、昇降装置8に限定されない。
【0038】
図2に示すように、作業機1は、油圧ポンプPと、制御弁30と、を備えている。油圧ポンプPは、原動機5が発生させた動力によって作動する。油圧ポンプPは、作動油タンクTに貯留された作動油を吐出する。油圧ポンプPは、定容量型のギヤポンプや斜板等のポンプ容量制御機構を備えた可変容量型油圧ポンプによって構成されている。
【0039】
制御弁30は、油圧アクチュエータ26を制御する。制御弁30は、制御装置11から出力される制御電流によって励磁して開度を任意に変更する。これにより、制御弁30は、油圧アクチュエータ26を動作させる作動油を調整することができる。制御弁30は、例えば、比例流量制御タイプの電磁制御弁であり、制御装置11から出力される制御電流の電流値Iが大きくなるにつれて、油圧アクチュエータ26に供給する作動油の流量が増加する。
【0040】
本実施形態において、制御弁30は、リフトシリンダ26の伸長を制御する第1制御弁(上昇用制御弁)30aと、リフトシリンダ26の収縮を制御する第2制御弁(下降用制御弁)30bと、を含んでいる。第1制御弁30a及び第2制御弁30bは、第1リフトアーム21Lと第2リフトアーム21Rとの両方に接続されており、当該第1リフトアーム21L及び第2リフトアーム21Rを同時に伸長、又は収縮させる。
【0041】
第1制御弁30aは、油圧ポンプPとボトム側油室とを接続する油路に設けられており、開度を変更することで、当該油圧ポンプPが吐出した作動油をボトム側油室に供給することができる。
【0042】
第2制御弁30bは、ボトム側油室と作動油タンクTとを接続する油路に設けられており、開度を変更することで、ボトム側油室の作動油を作動油タンクTに排出することができる。
【0043】
従って、制御装置11が第1制御弁30aに制御電流を出力し、第1制御弁30aの開度が変更されると、油圧ポンプPが吐出した作動油がボトム側油室に供給され、リフトシリンダ26が伸長することで、リフトアーム21は上昇する。一方、制御装置11が第2制御弁30bに制御電流を出力し、第2制御弁30bの開度が変更されると、ボトム側油室の作動油が作動油タンクTに排出され、リフトシリンダ26が収縮可能になる。このため、作業装置3及び/又はリフトアーム21の重さにより、リフトシリンダ26が収縮して、リフトアーム21は下降する。
【0044】
なお、制御弁30は、リフトシリンダ(油圧アクチュエータ)26を制御することができればよく、その油圧システムは、上述した構成に限定されない。例えば、上述した一例では、ボトム側油室には、第1制御弁30a及び第2制御弁30bが接続されているが、第2制御弁30bを、油圧ポンプPとロッド側油室とを接続する油路に設け、開度を変更することで、当該油圧ポンプPが吐出した作動油をロッド側油室に供給するようにしてもよい。
【0045】
また、上述した実施形態においては、第1制御弁30a及び第2制御弁30bのそれぞれの開度を変更して、リフトシリンダ26を制御しているが、制御弁30として、リフトシリンダ26を伸長させる第1位置、リフトシリンダ26の駆動を停止する第2位置、リフトシリンダ26を収縮させる第3位置に切替可能な3位置の電磁切換弁を採用してもよい。
【0046】
さらに、上述した実施形態においては、第1制御弁30a及び第2制御弁30bによって、リフトシリンダ26を動作させる作動油を直接調整しているが、第1制御弁30a及び第2制御弁30bは、リフトシリンダ26に接続された制御バルブにパイロット油を作用させ、当該制御バルブがリフトシリンダ26を動作させる作動油を調整してもよいし、油圧システムの構成は上述した構成に限定されない。
【0047】
操作装置10は、駆動装置(昇降装置)8を操作(作業装置3を昇降操作)するための第1操作具42を有している。第1操作具42は、リフトアーム21の位置の目標値を操作することができる操作装置10である。制御装置11は、第1操作具42の操作に応じて、リフトアーム21の実際の位置である実際位置と、目標値と、の偏差ΔDが零になるように制御弁30を制御する。
【0048】
図2に示すように、作業機1は、リフトアーム21の実際の位置を検出するための検出装置15を備えている。検出装置15は、リフトシリンダ26の位置を演算するためのセンサである。検出装置15は、制御装置11と接続されており、検出した信号(検出信号)を制御装置11に出力する。
【0049】
本実施形態において、検出装置15は、リフトアーム21の角度を検出するセンサ(リフトアームセンサ)であって、制御装置11は、リフトアーム21の位置として、リフトアーム21の角度に基づいて、制御弁30を制御する。即ち、制御装置11は、実際位置(リフトアーム21の実際の角度)と、目標値(リフトアーム21の目標角度)と、の偏差ΔDが零になるように、制御弁30を制御し、リフトシリンダ26を動作させる。リフトアームセンサ15は、例えば、ポテンショメータ等の回転変位形の可変抵抗器である。リフトアームセンサ15は、検出した角度の信号(角度信号)を制御装置11に出力する。
【0050】
なお、リフトアームセンサ15は、リフトアーム21の角度を検出できればよく、これに限定されない。また、検出装置15は、リフトアーム21の実際の位置を検出するためのパラメータを検出することができればよく、例えばリフトシリンダ26の伸長(ストローク)を検出するリフトシリンダセンサであってもよい。斯かる場合、制御装置11は、リフトアーム21の位置として、リフトシリンダ26の伸長量に基づいて、制御弁30を制御する。即ち、制御装置11は、実際位置(リフトシリンダ26の実際の伸長量)と、目標値(リフトシリンダ26の目標伸長量)と、の偏差ΔDが零になるように、制御弁30を制御し、リフトシリンダ26を動作させる。
【0051】
また、制御装置11は、リフトアーム21の位置として、リフトアーム21の所定の位置(例えば後端部)の鉛直方向の高さに基づいて、制御弁30を制御してもよい。斯かる場合、制御装置11は、検出装置15が検出したパラメータ(リフトアーム21の実際の角度やリフトシリンダ26の実際の伸長量)と、所定の演算式に基づいて、リフトアーム21の後端部の鉛直方向の高さを演算する。また、制御装置11は、実際位置(例えばリフトアーム21の後端部の高さ)と、目標値(例えばリフトアーム21の後端部の目標高さ)と、の偏差ΔDが零になるように、制御弁30を制御し、リフトシリンダ26を動作させる。
【0052】
以下の説明においては、第1操作具42が、目標値としてリフトアーム21の角度を操作し、制御装置11が、実際位置(リフトアーム21の実際の角度)と、目標値(リフトアーム21の目標角度)と、の偏差ΔDが零になるように、制御弁30を制御する場合を例に説明する。
【0053】
第1操作具42は、例えばポジションレバー42aである。ポジションレバー42aは、作業装置3の昇降を操作するレバーであって、揺動操作を行うことができる。ポジションレバー42aには、当該ポジションレバー42aの操作量を検出するためのポテンショメータが設けられている。制御装置11は、当該ポテンショメータから出力された操作信号に基づいて、リフトアーム21の目標値(目標角度)を定義することができる。ポジションレバー42aの操作量が大きくなると、制御装置11は、当該操作量に応じて、目標値を高く定義する。一方、ポジションレバー42aの操作量が小さくなると、制御装置11は、当該操作量に応じて、目標値を小さく定義する。
【0054】
なお、第1操作具42は、ポジションレバー42aに限定されず、当該ポジションレバー42aとは別に、作業装置3の昇降を操作する昇降操作具42bであってもよい。昇降操作具42bは、タクタイルスイッチ等の押し釦スイッチや、シーソースイッチ等である。昇降操作具42bは、制御装置11と接続されており、当該制御装置11に操作信号を出力する。制御装置11は、昇降操作具42bの操作量(例えば操作時間又は操作回数)に応じて、目標値を定義する。本実施形態において、昇降操作具42bは、リフトアーム21の目標値を高く操作する上昇操作具42b1と、リフトアーム21の目標値を低く操作する下降操作具42b2と、を含んでいる。つまり、上昇操作具42b1が操作されると、制御装置11は、当該操作に応じて、目標値を高く定義する。一方、下降操作具42b2が操作されると、制御装置11は、当該操作に応じて、目標値を小さく定義する。
【0055】
図1に示すように、ポジションレバー42aは、保護機構6の内部に設けられており、昇降操作具42bは、保護機構6の外部(例えば昇降装置8の側方、リヤフェンダ)に設けられている。
【0056】
また、上述した例において、制御装置11が第1操作具42の操作量に応じて任意の目標値を定義する場合を例に説明したが、作業機1は、リフトアーム21の位置の上限値を操作する上限操作具43と、リフトアーム21の位置の下限値を操作する下限操作具44と、を備え、第1操作具42は、リフトアーム21の位置の上限値又は下限値までリフトアーム21を昇降させたりするポンパスイッチ45を含んでいてもよい。
【0057】
なお、作業機1が上限操作具43及び下限操作具44を備えている場合、制御装置11は、第1操作具42としてポジションレバー42aや昇降操作具42bの操作に応じて、制御弁30を制御する際にも、リフトアーム21の位置の上限値以下、下限値以上の範囲でリフトアーム21を動作させる。
【0058】
制御装置11は、第1操作具42から出力された操作信号に応じて、制御弁30に制御電流を出力することにより、制御弁30を制御する。例えば、制御装置11は、操作信号と、第1制御マップM1と、第3制御マップM2と、に基づいて制御弁30への制御電流の電流値Iを逐次に決定する。第1制御マップM1及び第3制御マップM2は、記憶部1
1aに予め記憶されている。
【0059】
なお、リフトアーム21を上昇させる場合、目標値のほうが実際位置よりも高くなるため、偏差ΔDは、正数となり、リフトシリンダ26を下降させる場合、目標値のほうが実際位置よりも低くなるため、偏差ΔDは、負数となるが、以下の説明においては、説明の都合上、偏差ΔDを目標値と実際位置との差の絶対値であるとして説明する。
【0060】
また、第1制御マップM1及び第3制御マップM2は、リフトアーム21を上昇させる場合とリフトアーム21を下降させる場合とで、それぞれ共通であってもよいし、異なっていてもよい。
【0061】
図5は、第1制御マップM1の一例を示す図である。第1制御マップM1は、実際位置と目標値との偏差ΔDと、油圧アクチュエータ26を動作させる作動油の目標流量TFと、の関係を示すマップ(グラフ)である。図5に示すグラフにおいて、横軸は、実際位置と目標値との偏差ΔDを示しており、縦軸は、油圧アクチュエータ26を動作させる作動油の目標流量TFを示している。図5に示す第1制御マップM1の例では、実際位置と目標値との偏差ΔDが大きくなるにつれて、目標流量TFは、急激に増加してから徐々に増加するよう変化する。
【0062】
なお、図5に示す第1制御マップM1は一例であって、目標流量TFは、実際位置と目標値との偏差ΔDが大きくなるにつれて、徐々に増加してから急激に増加するように変化してもよいし、比例して増加して略直線を描くように変化してもよい。
【0063】
図6は、第3制御マップM2の一例を示す図である。第3制御マップM2は、予め定められた制御弁30(例えば標準制御弁)に出力する制御電流の電流値Iと、当該制御弁30からの作動油の流量(供給量DF)と、の関係を示すマップ(グラフ)である。標準制御弁は、中央品の制御弁30である。つまり、第3制御マップM2は、標準制御弁の設計データ上又は理論データ上の流量特性SCに基づいて定義されている。標準流量特性SCは、標準制御弁の流量特性であり、例えば、設計データ上又は理論データ上の流量特性としている。このため、標準流量特性SCは、標準制御弁の設計上又は理論上の流量特性である。
【0064】
なお、標準流量特性SCは、複数の制御弁30について測定された各流量特性の測定データを平均化又は標準化などの演算処理を行うことで取得された流量特性としてもよい。つまり、標準流量特性SCは、複数の実測データに基づく流量特性としてもよい。また、標準流量特性SCとして、製造会社等が提示する制御弁30の標準的な製品スペックデータが示す流量特性としてもよい。
【0065】
図6に示すグラフにおいて、横軸は、制御電流の電流値Iを示しており、縦軸は、供給量DFを示している。図6に示す第3制御マップM2の例では、制御電流の電流値Iが大きくなるにつれて、供給量DFは、徐々に増加してから急激に増加するよう変化する。
【0066】
なお、図6に示す第3制御マップM2は一例であって、所定の制御弁30の設計データ上又は理論データ上の流量特性に基づいて定義されていればよい。
【0067】
従って、制御装置11は、まず実際位置と目標値との偏差ΔDを演算すると、リフトアーム21の動作方向(上昇又は下降)に応じて、第1制御マップM1及び第3制御マップM2を取得する。制御装置11は、当該偏差ΔDと第1制御マップM1とに基づいて、目標流量TFを取得する。制御装置11は、目標流量TFを取得すると、当該目標流量TFと第3制御マップM2とに基づいて制御電流の電流値Iを取得する。これにより、制御装置11は、取得した電流値Iを制御弁30に出力することで制御弁30を制御する。
【0068】
ここで、制御装置11は、偏差ΔDが徐々に小さくなるに連れて電流値Iを徐々に小さくする。また、制御装置11は、偏差ΔDが零になると、制御弁30への制御電流の電流値Iを零にする。このように、制御装置11は、第1操作具42の操作に応じて、制御弁30を制御して、リフトシリンダ26を駆動させることができる。
【0069】
制御装置11は、第1モードと第2モードに切替可能である。制御装置11は、第1モードと第2モードとで択一的にモードを切り替える。第1モードは、制御装置11が、実際位置と目標値との偏差ΔD及び目標流量TFに基づく第1制御によって制御弁30を制御するモードである。第2モードは、制御装置11が、偏差ΔDが零から所定の偏差ΔDまでの目標流量TFを第1制御よりも低くする第2制御によって制御弁30を制御するモードである。
【0070】
具体的には、制御装置11は、第1モードにおいて、第1制御マップM1に基づいて、制御弁30を制御する(第1制御)。制御装置11は、第2モードに切り替えられた場合、駆動部材(リフトアーム)21を下降する際には、図7に示すように、第1制御マップM1に比べて、偏差ΔDが零から所定の偏差ΔDまでの目標流量TFを低くした第2制御マップM4に基づいて、制御弁30を制御する(第2制御)。
【0071】
第2制御マップM4は、例えば、記憶部11aに予め記憶されている。図7では、第1制御マップM1を破線で記載し、第2制御マップM4を実線で記載する。図7に示すグラフにおいて、図5と同様に、横軸は、実際位置と目標値との偏差ΔDを示しており、縦軸は、油圧アクチュエータ26を動作させる作動油の目標流量TFを示している。
【0072】
なお、制御装置11は、第2モードに切り替えられた場合であっても、駆動部材(リフトアーム)21を上昇する際には、第1制御によって制御弁30を制御する。つまり、制御装置11は、第1モードにおいては、リフトアーム21を上昇させる場合と下降させる場合の両方で第1制御マップM1に基づいて制御弁30を制御するが、第2モードにおいては、リフトアーム21を上昇させる場合と下降させる場合とで異なるマップ(第1制御マップM1及び第2制御マップM4のいずれか一方)に基づいて制御弁30を制御する。即ち、制御装置11は、リフトアーム21を下降する場合には、モードの切替によって制御弁30の制御を変更するが、リフトアーム21を上昇する場合には、モードの切替によって制御弁30の制御を変更しない。
【0073】
まず、制御装置11のモードの切替について詳しく説明する。図2に示すように、作業機1は、制御装置11の第1モード及び第2モードの切り替えを操作するための切替具50を備えている。切替具50は、制御装置11のモードを切り替える操作を行うための操作装置10である。制御装置11は、切替具50の操作信号を取得し、当該操作信号に基づいて、第1モードと第2モードとに切り替える。
【0074】
図8に示すように、本実施形態において、切替具50は、表示装置12の表示部12aに表示される表示画像である。つまり、表示装置12及びジョグダイヤル41が操作装置10を兼用する。ジョグダイヤル41を操作することで、表示装置12は、表示部12aに切替具50を表示する操作画面MD2を表示する。図8に示す例において、切替具50は、スイッチを模した表示画像であり、状態表示部50aを含んでいる。
【0075】
状態表示部50aは、第2モードが有効であるか否かを表示する表示画像である。状態表示部50aは、第2モードが有効である場合(即ち第1モードが無効である場合)と、第2モードが無効である場合(即ち第1モードが有効である場合)と、で表示形態を異ならせる。具体的には、状態表示部50aは、第2モードが無効である場合、「OFF」という文字列を表示し、且つランプを模した画像をグレーアウトさせる。状態表示部50aは、第2モードが有効である場合、「ON」という文字列を表示し、且つランプを模した画像の色彩を変更する(例えば緑色)。
【0076】
なお、切替具50は、表示形態を異ならせることで、ジョグダイヤル41によって操作が可能であることを表示してもよい。例えば、切替具50は、操作が可能である場合、不可能である場合に比べて、外形の太さ及び色彩を異ならせる。
【0077】
作業者は、ジョグダイヤル41を操作して、切替具50が操作可能である状態にして、作業者がジョグダイヤル41を押圧操作することで、切替具50の切替操作を行うことができる。ジョグダイヤル41を押圧操作して操作した切替具50の操作信号は、表示装置12から制御装置11に出力される。
【0078】
このため、制御装置11が第1モードである場合に、ジョグダイヤル41を回転操作して切替具50を選択し、且つ当該ジョグダイヤル41を押圧操作して、切替具50が操作されると、制御装置11は、当該操作信号を取得して、第2モードに切り替わる。一方、制御装置11が第2モードである場合に、ジョグダイヤル41を回転操作して切替具50を選択し、且つ当該ジョグダイヤル41を押圧操作して、切替具50が操作されると、制御装置11は、当該操作信号を取得して、第1モードに切り替わる。
【0079】
なお、上述した実施形態において、切替具50は、操作を受け付ける表示画像であって、ジョグダイヤル41によって間接的に操作される操作具51であるが、少なくとも制御装置11のモードの切替操作ができればよく、その構成は上述した構成に限定されない。例えば、切替具50は、ジョグダイヤル41を介さずに、作業者によって直接操作される物理的なタクタイルスイッチで構成されていてもよい。
【0080】
また、切替具50で切替操作されたモードは、記憶部11aに記憶(保持)される。このため、スタータリレー14をオフした場合であっても、制御装置11は、記憶部11aに記憶されているモードを取得することができ、スタータリレー14をオン(オフ)する都度、切替具50を操作しなくてもよい。
【0081】
また、切替具50は、第1操作具42が操作され、リフトアーム21を下降させる場合には、操作を受け付けなくてもよい。言い換えると、切替具50は、第1操作具42が操作され、リフトアーム21を上昇させる場合や、第1操作具42が操作されておらず、リフトアーム21が停止している場合に操作を受け付ける。斯かる場合、制御装置11は、第1操作具42の操作信号を取得し、実際位置と目標値との差が正数であって、リフトアーム21を上昇させると判断すると、表示装置12に対して、切替具50の操作が可能である旨の信号(許可信号)を出力する。一方、制御装置11は、実際位置と目標値との差が負数であって、リフトアーム21を下降させると判断すると、表示装置12に対して、切替具50の操作が不可能である旨の信号(禁止信号)を出力する。
【0082】
表示装置12は、制御装置11から許可信号が出力された場合に切替具50を表示可能にして、禁止信号が出力された場合には、切替具50の表示をグレーアウトしたり、操作画面MD2への画面遷移を行わないことで当該切替具50を操作不能にしたりして、切替具50の操作を受け付けない。
【0083】
第2制御マップM4は、第1制御マップM1に比べて、少なくとも偏差ΔDが零から所定の偏差ΔDまでの目標流量TFが低く定義されている。詳しくは、第2制御マップM4は、偏差ΔDが零である場合には、第1制御マップM1と目標流量TFが同値である。また、第2制御マップM4は、偏差ΔDが零を超過し、所定値未満の範囲において、第1制御マップM1に比べて目標流量TFが低く、偏差ΔDが所定値以上においては、第1制御マップM1の目標流量TFと同値又は第1制御マップM1に比べて低く定義されている。
【0084】
本実施形態において、所定値は、第1制御マップM1で定義されている偏差ΔDの最大値(最大偏差ΔDmax)である。即ち、第2制御マップM4は、偏差ΔDが零又は最大偏差ΔDmaxである場合に、第1制御マップM1と目標流量TFが一致する。
【0085】
図7に示す第2制御マップM4の例では、偏差ΔDが零よりも大きく、最大偏差ΔDmaxよりも小さい範囲(偏差ΔDが零から最大偏差ΔDmaxまでの範囲)において、実際位置と目標値との偏差ΔDが大きくなるにつれて、目標流量TFは、第1制御マップM1の目標値未満の範囲で偏差ΔDに比例して目標流量TFが増加する。
【0086】
このため、作業者が第1操作具42を操作して、目標値を実際位置よりも低く操作すると、第2モードの制御装置11が取得する目標流量TFは、第2制御マップM4に従い、偏差ΔDが増加するにつれて増加する。また、リフトアーム21が下降して、目標値が実際位置に近づく、即ち偏差ΔDが零に近づくと、第2モードの制御装置11が取得する目標流量TFは、偏差ΔDが零に近づくにつれて減少する。
【0087】
また、偏差ΔDが零から所定の偏差ΔDまでの範囲において、第1モードに比べて第2モードでは、同じ偏差ΔDにおける目標流量TFが小さいため、制御装置11は、第1モードに比べて、第2モードで取得する制御電流の電流値Iが小さくなる。これによって、第2モードにおいては、駆動部材21を下降させる際に、当該駆動部材21の下げ終わりにおける駆動速度を第1モードよりも低下させることができる。
【0088】
なお、図7に示す第2制御マップM4は一例であって、第2制御マップM4は、少なくとも偏差ΔDが零から所定の偏差ΔDまでの目標流量TFが低く定義されていればよく、図9に示す変形例のように、実際位置と目標値との偏差ΔDが大きくなるにつれて、目標流量TFが徐々に増加してから急激に増加するように変化してもよい。さらに、本実施形態においては、制御装置11は、第1モード及び第2モードのみに切替可能であるが、第
1モード及び第2モードに加えて他のモードに切替可能であってもよい。斯かる場合、他のモードでは、第1制御マップM1及び第2制御マップM4に代えて、これらのマップと少なくとも偏差ΔDが零から所定の偏差ΔDまでの目標流量TFが低く定義されたマップを取得する。
【0089】
また、上述した実施形態においては、制御装置11が、記憶部11aに予め記憶された第2制御マップM4を取得する場合を例に説明したが、制御装置11は、第1モードから第2モードに切り替わる都度、所定の演算式に基づいて第1制御マップM1から第2制御マップM4を演算するような構成であってもよい。
【0090】
また、図2に示すように、作業機1は、油圧アクチュエータ26を駆動させる作動油の最大流量MFを変更するための操作具51を備えていてもよい。ここで、最大流量MFとは、制御装置11の制御によって制御弁30が供給することができる作動油の流量の最大値のことである。操作具51は、最大流量MFを操作する操作装置10である。操作具51は、制御装置11と通信可能であって、当該操作具51の操作信号は、制御装置11に出力される。制御装置11は、操作具51から出力された操作信号を取得し、操作具51で変更された最大流量MFに基づいて、制御弁30を制御する。
【0091】
操作具51は、例えば、複数の切換位置を備えるダイヤルスイッチである。操作具51の切換位置には、それぞれ最大流量MFが割り当てられている。記憶部11aは、操作具51から出力される操作信号と、最大流量MFとの関係を示す流量マップを記憶しており、制御装置11は、当該流量マップと、操作具51から出力された操作信号に基づいて最大流量MFを取得する。例えば、本実施形態の流量マップでは、最大流量MFは、操作具51の操作量に比例している。操作具51の操作量が100%である場合の最大流量MFが最も高く、操作量が0%である場合の最大流量MFが最も低く定義されている。
【0092】
制御装置11は、最大流量MFを取得すると、当該最大流量MFに基づいて、第3制御マップM2における最大流量MFを補正する。具体的には、第3制御マップM2のうち、取得した最大流量MFよりも高い供給量DFである部分を最大流量MFと同値に補正する。これにより、図10に示すように、操作具51で操作された最大流量MFに応じて、第3制御マップM2が補正される。図10に示す例において、操作量が100%である補正前の第3制御マップM2を実線で記載し、操作量が50%である補正後の第3制御マップM2´を一点鎖線で記載している。
【0093】
以下、制御装置11による第1モード及び第2モードの一連の流れを説明する。図11は、制御装置11が行う第1モード及び第2モードの一連の流れを示す図である。図11に示す一連の処理は、制御装置11の記憶部11aに予め記憶されたソフトウェアプログラムに基づいて、CPUにより実行される。まず、制御装置11は、現在のモードが第1モードであるか否かを確認する(S1)。制御装置11は、第1モードであると確認すると(S1:Yes)、第1制御マップM1を取得する(S2)。
【0094】
制御装置11は、第1操作具42が操作されているか否かを判断する(S3)。制御装置11は、第1操作具42から出力された操作信号に基づいて、第1操作具42が操作されていると判断した場合(S3:Yes)、目標値を演算する(S4)。
【0095】
制御装置11は、実際位置と目標値とに基づいて、偏差ΔDを演算する(S5)。制御装置11は、実際位置と目標値とに基づいて、リフトアーム21を下降させるか否かを判断する(S6)。制御装置11は、リフトアーム21を下降させる場合(S6:Yes)、偏差ΔDと第1制御マップM1とに基づいて、目標流量TFを取得する(S7)。制御装置11は、目標流量TFを取得すると(S7)、当該目標流量TFと第3制御マップM2とに基づいて制御電流の電流値Iを取得する(S8)。これにより、制御装置11は、取得した電流値Iを制御弁30に出力することで制御弁30を制御して、リフトアーム21を下降させる(S9)。
【0096】
また、制御装置11は、リフトアーム21を上昇させる場合(S6:No)、偏差ΔDと第1制御マップM1とに基づいて、目標流量TFを取得する(S10)。制御装置11は、目標流量TFを取得すると(S10)、当該目標流量TFと第3制御マップM2とに基づいて制御電流の電流値Iを取得する(S11)。これにより、制御装置11は、取得
した電流値Iを制御弁30に出力することで制御弁30を制御して、リフトアーム21を上昇させる(S12)。
【0097】
一方、制御装置11は、第1モードではなく第2モードであると確認すると(S1:No)、第1制御マップM1及び第2制御マップM4を取得する(S13)。次に、制御装置11は、第1操作具42が操作されているか否かを判断する(S14)。制御装置11は、第1操作具42から出力された操作信号に基づいて、第1操作具42が操作されていると判断した場合(S14:Yes)、目標値を演算する(S15)。
【0098】
制御装置11は、実際位置と目標値とに基づいて、偏差ΔDを演算する(S16)。制御装置11は、実際位置と目標値とに基づいて、リフトアーム21を下降させるか否かを判断する(S17)。制御装置11は、リフトアーム21を下降させる場合(S17:Yes)、偏差ΔDと第2制御マップM4とに基づいて、目標流量TFを取得する(S18)。制御装置11は、S18の処理を行うと、目標流量TFと第3制御マップM2とに基づいて制御電流の電流値Iを取得する(S19)。これにより、制御装置11は、取得した電流値Iを制御弁30に出力することで制御弁30を制御して、リフトアーム21を下降させる(S20)。
【0099】
一方、制御装置11は、リフトアーム21を上昇させる場合(S17:No)、偏差ΔDと第1制御マップM1とに基づいて、目標流量TFを取得する(S21)。制御装置11は、目標流量TFを取得すると(S21)、当該目標流量TFと第3制御マップM2とに基づいて制御電流の電流値Iを取得する(S22)。これにより、制御装置11は、取得した電流値Iを制御弁30に出力することで制御弁30を制御して、リフトアーム21を上昇させる(S23)。
【0100】
また、制御装置11は、第1操作具42は操作されていないと判断した場合(S3:No、S14:No)、制御装置11がリフトアーム21を上昇させる場合(S12、S23)、切替具50が操作されているか否かを確認する(S24)。制御装置11は、切替具50から出力された操作信号に基づいて、当該切替具50が操作されていると判断すると(S24,Yes)、現在のモードから他方のモードに切り替える(S25)。なお、制御装置11は、切換後のモードを記憶部11aに記憶させる。
【0101】
なお、上述した実施形態の制御装置11は、第2モードにおいて駆動部材21を下降する場合には第2制御マップM4に基づいて制御弁30を制御していたが、少なくとも駆動部材21の下降動作が終了する際の駆動速度を第1モードより遅くすることができればよい。即ち、制御装置11は、駆動部材21を下降する場合において、実際位置と目標値との偏差ΔDの増減を監視し、偏差ΔDが増加傾向にあるときには、第1制御マップM1に基づいて制御弁30の制御を行い、偏差ΔDが減少傾向にあるときには、第2制御マップM4に基づいて制御弁30の制御を行うような構成であってもよい。
【0102】
斯かる場合、制御装置11は、減少傾向に切り換わった際の偏差ΔD(変化点ΔCD)に応じて、異なる第2制御マップM4を取得する。具体的には、制御装置11は、変化点ΔCDに対応する目標流量TFが、第1制御マップM1における変化点ΔCDに対応する目標流量TFと同値であって且つ偏差ΔDが変化点ΔCDよりも低い範囲、即ち零から所定の偏差ΔD(変化点CD)までの目標流量TFが低く定義された第2制御マップM4を取得する。制御装置11は、例えば、所定の演算式に基づいて第2制御マップM4を演算し、第2制御マップM4を取得する。例えば、制御装置11は、第1制御マップM1を補正することで、当該第1制御マップM1における偏差ΔDが零以上、変化点ΔCD以下の範囲で、目標流量TFを減少させる補正を行い、第2制御マップM4を演算する。
【0103】
図12は、変形例における第1制御マップM1と第2制御マップM4とを示す図である。図12では、第1制御マップM1を破線で記載し、第2制御マップM4を実線で記載する。図12に示すグラフにおいて、図5図7と同様に、横軸は、実際位置と目標値との偏差ΔDを示しており、縦軸は、油圧アクチュエータ26を動作させる作動油の目標流量TFを示している。
【0104】
図12に示すように、この変形例における第2制御マップM4においても、第1制御マップM1に比べて、少なくとも偏差ΔDが零から所定の偏差ΔDまでの目標流量TFが低く定義されている。詳しくは、第2制御マップM4は、偏差ΔDが零である場合には、第1制御マップM1と目標流量TFが同値である。また、第2制御マップM4は、偏差ΔDが変化点ΔCDである場合にも、第1制御マップM1と目標流量TFが同値になっている。
【0105】
このため、作業者が第1操作具42を操作して、目標値を実際位置よりも低く操作すると、第2モードの制御装置11が取得する目標流量TFは、第1制御マップM1に従い、偏差ΔDが増加するにつれて増加する。また、偏差ΔDが減少傾向になると、第2制御マップM4に従い、第2モードの制御装置11が取得する目標流量TFは、偏差ΔDが零に近づくにつれて減少する。
【0106】
従って、偏差ΔDが減少傾向に切り換わったときに目標流量TFが変動することがないため、駆動部材21のショックを抑制することができる。
【0107】
本発明の一態様に係る作業機1は、作動油によって動作する油圧アクチュエータ26と、油圧アクチュエータ26によって上昇又は下降される駆動部材21と、を有する駆動装置8と、油圧アクチュエータ26を制御する制御弁30と、制御弁30を制御して、駆動部材21を所定の目標位置まで移動させる制御装置11と、を備え、制御装置11は、駆動部材21の実際の位置である実際位置と目標値との偏差ΔD及び油圧アクチュエータ26を動作させる作動油の目標流量TFに基づく第1制御によって制御弁30を制御する第1モードと、偏差ΔDが零から所定の偏差ΔDまでの目標流量TFを第1制御よりも低くする第2制御によって制御弁30を制御する第2モードと、に切り替え可能である。
【0108】
この構成によれば、制御装置11を第2モードに切り替えることで、駆動部材21を下降させる際に、当該駆動部材21の下げ終わりにおける駆動速度を低下させることができる。このため、駆動部材21が目標位置に達した際のショックを低減させる場合と、効率性を優先する場合と、で適宜モードを切り替えることができる。
【0109】
また、制御装置11は、第2モードに切り替えられた場合であっても、駆動部材21を上昇する際には、第1制御によって制御弁30を制御する。
【0110】
この構成によれば、駆動部材21を上昇させる場合の効率性を低下させることなく、駆動部材21を下降させる際のショック低減、及び効率性を向上させることができる。
【0111】
また、作業機1は、制御装置11の第1モード及び第2モードの切り替えを操作するための切替具50を備え、制御装置11は、切替具50の操作に応じて、第1モードと第2モードとに切り替える。
【0112】
この構成によれば、作業者は、状況に応じて適切に第1モード及び第2モードの切り替えを行うことができる。
【0113】
また、作業機1は、油圧アクチュエータ26を駆動させる作動油の最大流量MFを変更するための操作具51を備え、制御装置11は、操作具51で変更された最大流量MFに基づいて、制御弁30を制御する。
【0114】
この構成によれば、駆動部材21が目標位置に達した際のショックを低減させる場合と、効率性を優先する場合と、で適宜モードを切り替えることに加えて、作業装置3の重量等に応じても当該作業装置3の下降速度を変更することができる。
【0115】
また、駆動装置8は、作業装置3を昇降可能な昇降装置8であり、油圧アクチュエータ26は、リフトシリンダ26であり、駆動部材21は、リフトシリンダ26の動作によって駆動されるリフトアーム21である。
【0116】
この構成によれば、上述した特有の効果を奏することかでき、制御装置11は、第2モードにおいて、作業装置3を下降させる際において、当該作業装置3の下げ終わりにおける駆動速度を低下させることができる。このため、作業装置3の下げ終わりに、当該作業装置3にショックが生じることを抑制できる。
【0117】
また、制御装置11は、第2モードに切り替えられた場合、駆動部材21を下降する際には、第2制御によって制御弁30を制御する。
【0118】
この構成によれば、制御装置11を第2モードに切り替えることで、駆動部材21を下降させる際のショック低減を実現できる。
【0119】
また、作業機1の制御方法は、作動油によって動作する油圧アクチュエータ26と、油
圧アクチュエータ26によって上昇又は下降される駆動部材21と、を有する駆動装置8と、油圧アクチュエータ26を制御する制御弁30と、制御弁30を制御して、駆動部材21を所定の目標位置まで移動させる制御装置11と、を備えた作業機1の制御方法であって、制御装置11が、第1モード又は第2モードに切り替える第1ステップと、制御装置11が、駆動部材21の実際の位置である実際位置と目標値との偏差ΔD及び油圧アクチュエータ26を動作させる作動油の目標流量TFに基づく第1制御によって制御弁30を制御する第1モードと、偏差ΔDが零から所定の偏差ΔDまでの目標流量TFを第1制御よりも低くする第2制御によって制御弁30を制御する第2モードと、に切り替えるステップを含んでいる。
【0120】
この構成によれば、制御装置11を第2モードに切り替えることで、駆動部材21を下降させる際に、当該駆動部材21の下げ終わりにおける駆動速度を低下させることができる。このため、駆動部材21が目標位置に達した際のショックを低減させる場合と、効率性を優先する場合と、で適宜モードを切り替えることができる。
【0121】
以上、本発明について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0122】
1 :作業機
3 :作業装置
8 :駆動装置(昇降装置)
11 :制御装置
21 :駆動部材(リフトアーム)
26 :油圧アクチュエータ(リフトシリンダ)
30 :制御弁
50 :切替具
51 :操作具
MF :最大流量
TF :目標流量
ΔD :偏差
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12