(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129467
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】変位測定装置
(51)【国際特許分類】
G01B 7/16 20060101AFI20240919BHJP
G01L 1/22 20060101ALI20240919BHJP
G01L 1/00 20060101ALN20240919BHJP
【FI】
G01B7/16 R
G01L1/22 B
G01L1/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038690
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】592252027
【氏名又は名称】山内 常生
(71)【出願人】
【識別番号】594184159
【氏名又は名称】丹羽 章二
(74)【代理人】
【識別番号】100095577
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 富雅
(74)【代理人】
【識別番号】100100424
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 知公
(72)【発明者】
【氏名】山内 常生
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 章二
【テーマコード(参考)】
2F049
2F063
【Fターム(参考)】
2F049AA12
2F063AA02
2F063AA25
2F063BA15
2F063CA09
2F063CB00
2F063DA02
2F063DA05
2F063DC08
2F063DD03
2F063EC04
2F063EC13
2F063KA01
2F063LA04
(57)【要約】 (修正有)
【課題】第1導体と第2導体の抵抗値の変化から、物理量の微小な変化を測定する新規な変位測定装置を提案する。
【解決手段】この発明の変位測定装置は、外力の作用による変形に対応し抵抗値が変化する第1導体と、第1導体に沿わせて配置される外力の作用による変形に対応し抵抗値が変化する第2導体と、第1導体の第1-1部分と第1-2部分との間の第1抵抗値と、第2導体の前記第2-1部分と前記第2-2部分との間の第2抵抗値を測定する抵抗値測定部と、を備え、抵抗値測定部で得られた、第1抵抗値と第2抵抗値とより、第1-1部分と第1-2部分の変位と、第2-1部分と第2-2部分との変位を特定する変位量特定部と、を備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外力の作用による変形に対応し抵抗値が変化する第1導体と、前記第1導体に沿わせて配置される外力の作用による変形に対応し抵抗値が変化する第2導体と、
前記第2導体に備えられる緩衝部であって、前記第2導体に外力がかかったときにその外力を吸収して前記第2導体の第2-1部分と第2-2部分との距離を一定に保つ、緩衝部と、
前記第1導体の第1-1部分と第1-2部分との間の第1抵抗値、及び前記第2導体の前記第2-1部分と前記第2-2部分との間の第2抵抗値を測定する抵抗値測定部と、を備え、
前記抵抗値測定部で得られた、前記第1抵抗値及び前記第2抵抗値より、前記第1-1部分と前記第1-2部分の変位を特定する変位量特定部と、を備える、変位測定装置。
【請求項2】
前記第1導体と前記第2導体とは同一材料で形成される、請求項1に記載の変位測定装置。
【請求項3】
外力の作用による変形に対応し抵抗値が変化する第1導体と、前記第1導体に沿わせて配置される外力の作用による変形に対応し抵抗値が変化する第2導体と、
前記第1導体の第1-1部分と第1-2部分との間の第1抵抗値及び、前記第2導体の前記第2-1部分と前記第2-2部分との間の第2抵抗値を測定する抵抗値測定部と、を備え、
前記抵抗値測定部で得られた前記第1抵抗値及び前記第2抵抗値より、前記第1導体の第1-1部分と前記第1-2部分の変位を特定する変位量特定部と、を備える、変位測定装置。
【請求項4】
前記第1導体と前記第2導体とは異なる材料で形成される、請求項3に記載の変位測定装置。
【請求項5】
前記第1導体と前記第2導体の抵抗値の変化を周波数に変換して出力する周波数変換部を備え、該周波数変換部より出力される周波数の変化に基づき、前記第1導体と前記第2導体の抵抗値の変化を求め、
該抵抗値の変化より前記第1導体の変位量を特定する変位量特定部と、を備える、請求項3に記載の変位測定装置。
【請求項6】
前記変位量特定部は、
前記第1導体と第1基準抵抗とを、前記第2導体と第2基準抵抗とをそれぞれ直列に接続した回路に電圧を印加する電圧印加部を備え、前記電圧印加部より電圧が印加される時に生じる、第1電圧(前記第1基準抵抗に生じる)と第2電圧(前記第2基準抵抗に生じる)との変化に基づき、前記第1導体と前記第2導体の抵抗値の変化を求め、
前記第1導体と前記第2導体の抵抗値の変化より、前記第1導体の変位量を特定する請求項3に記載の変位測定装置
【請求項7】
請求項3に記載の変位測定装置を用いる変位測定方法であって、
前記第1導体の第1-1部分と前記第2導体の第2-1部分とを前記測定対象の第1部位に固定し、前記第1導体の第1-2部分と前記第2導体の第2-2部分とを前記測定対象の第2部位に固定して、ここに、前記第1導体及び前記第2導体は前記測定対象に追従して変化させ、
前記測定対象が第1状態のときの第1導体の第1-1抵抗値と前記測定対象が第2状態のときの第1導体の第1-2抵抗値との差、及び、前記測定対象が第1状態のときの第2導体の第2-1抵抗値と前記測定対象が第2状態のときの第2導体の第2-2抵抗値との差から、前記変位量特定部が前記測定対象の第1状態と第2状態とにおける前記第1部位と前記第2部位との間の距離の変位量を特定する変位測定方法。
【請求項8】
前記測定対象は圧縮されたコンクリートであり、
前記第1状態は前記コンクリートのデフォルト圧縮状態であり、
前記第2状態は前記第1導体と交差する方向へ前記コンクリートにスリットを形成した後の前記コンクリートの状態である、請求項7に記載の変位測定方法。
【請求項9】
請求項3に記載の変位測定装置を用い、トンネルの岩盤を測定対象とする変位測定方法であって、
外力の作用による変形量に対応して抵抗値が変化する前記第1導体に、外力の作用による変形量に対応して抵抗値が変化する前記第2導体を沿わせて、前記岩盤に掘削した小口径のボーリング孔に埋入し第1状態とし、
前記岩盤へ前記第1導体と前記第2導体が埋入された状態での前記第1導体の第1-1抵抗値と前記第2導体の第2-1抵抗値を測定し、
オーバーコアリングにより前記岩盤から、前記第1導体と第2導体を埋入した部分とを分離し、
前記分離した部分を第2状態として前記第1導体の第1-2抵抗値と前記第2導体の第2-2抵抗値を測定し、
前記第1-1抵抗値と前記第1-2抵抗値の差、前記第2-1抵抗値と前記第2-2抵抗値との差から前記変位量特定部で前記岩盤の変形量を特定する変位測定方法。
【請求項10】
絶縁基板、帯状の第1金属箔及び帯状の第2金属箔を備え、
前記絶縁基板の表面において、前記第1金属箔に前記第2金属箔が沿わせて配置されるひずみセンサ。
【請求項11】
前記第1金属箔は前記絶縁基板の一面側に配置され、前記第2金属箔は前記絶縁基板の反対面側に配置される、請求項10に記載のひずみセンサ。
【請求項12】
請求項3に記載の変位測定装置であって、
請求項10~11のいずれかに記載の前記ひずみセンサを備え、前記第1導体と前記第2導体がそれぞれ前記ひずみセンサの前記第1金属箔と前記第2金属箔を含む、変位測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は変位測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
物理量の変化に対応して変わる電気抵抗や電気容量の変化を、周波数の変化に変換し高精度の変位測定を行う技術が特許文献1に紹介されている。
コンクリート構造物、特にプレストレスコンクリート構造物(以下、「PC構造物」という)の劣化状況を測定するための変位測定装置が特許文献2及び特許文献3に紹介されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開WO2021-145428号公報
【特許文献2】特許第6757007号公報
【特許文献3】特開2007-170955号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明は、物理量の微小な変形量を測定する技術(例えば特許技術1)に関わり、第1導体と第2導体の抵抗値の変化を利用し測定対象物の微小な変位を測定する技術であって、この微小な変位を測定する技術は、特許文献2及び特許文献3等で紹介された変位測定装置に適用できる。
【0005】
外力の作用による変形量に対応して抵抗値が変化する第1導体と第2導体とを、互いに沿わせて配置するとき、第1導体の電気抵抗率をρ1、断面積をA1、抵抗温度係数をα1とすれば、第1導体の抵抗値の変化ΔR1は次式のようになる。
ΔR1=ρ1*ΔL/A1+α1*Δt (1)
ここに、ΔLは第1導体の軸方向の長さの変化量、Δtは環境温度の変化であり、電気抵抗率ρ1、断面積A1、抵抗温度係数α1は既知の値である。
第2導体の電気抵抗率をρ2、断面積をA2、抵抗温度係数をα2とすれば、第2導体の抵抗値の変化ΔR2は次式のようになる。
ΔR2=ρ2*ΔL/A2+α2*Δt (2)
ここに、ΔLは第2導体の軸方向の長さの変化量、Δtは環境温度の変化であり、電気抵抗率ρ2、断面積A2、抵抗温度係数α2は既知の値である。
この明細書において、導体には、断面積が均一の線状体を用いることができるが、これに限定されるものではない。絶縁基板上に形成された帯状の金属箔でもよい。この金属箔は、汎用のひずみゲージのように、折り返されていてもよい。
2つの導体を沿わせて配置するこの発明では、絶縁基板の一方の面に第1金属箔と第2金属箔を形成してもよいし、絶縁基板の一方の面に第1金属箔を形成し、他方の面に第2金属箔を形成してもよい。
帯状の第1金属箔と第2金属箔とは異なる材料で形成することができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、その第1局面は次のように規定される。即ち、
外力の作用による変形に対応し抵抗値が変化する第1導体と、前記第1導体に沿わせて配置される外力の作用による変形に対応し抵抗値が変化する第2導体と、
前記第2導体に備えられる緩衝部であって、前記第2導体に外力がかかったときにその外力を吸収して前記第2導体の第2-1部分と第2-2部分との距離を一定に保つ、緩衝部と、
前記第1導体の第1-1部分と第1-2部分との間の第1抵抗値、及び前記第2導体の前記第2-1部分と前記第2-2部分との間の第2抵抗値を測定する抵抗値測定部と、を備え、
前記抵抗値測定部で得られた、前記第1抵抗値及び前記第2抵抗値より、前記第1-1部分と前記第1-2部分の変位を特定する変位量特定部と、を備える、変位測定装置。
【0007】
第1の局面において、互いに沿わせて配置された前記第1導体と前記緩衝部を備える前記第2導体に外力を作用させた場合、前記第1導体の変位量をΔLとすると、前記第2導体は緩衝部の作用で外力が吸収され変位量は0である。つまり、
前記式1より、ΔR1は、
ΔR1=ρ1*ΔL/A1+α1*Δt (3)
前記式2より、ΔR2は、
ΔR2=α2*Δt (4)
となる。前記式4においてα2は既知の値であるから、前記式4にΔR2を代入することで環境温度の変化Δtが求められる。また、前記式3のα1、ρ1、A1は既知の値であるから、前記式3にΔR1と前記式4で求めたΔtを代入することで、前記第1導体の変位量ΔLが求められる。
【0008】
前記第1導体と前記第2導体の抵抗温度係数α1とα2には差があるし、前記の2つの導体の熱伝導率にも差があることから、温度変化の激しい環境では、互いに沿わせて配置された第1導体と第2導体の温度は過渡的に異なる温度となり、その温度差の影響で精度のよい温度補正が行えない。
【0009】
そこで、この発明の第2の局面は次のように規定される。即ち、
前記第1導体と前記第2導体とが同一材料で形成される、請求項1に記載の変位測定装置。
【0010】
第2の局面においては、前記第1導体と前記第2導体が同一の材料で形成されており、前記式4は
ΔR2=α1*Δt (5)
となり、前記式3と前記式5との減算を行うと次のようになり、
ΔR1-ΔR2=ρ1*ΔL/A1
Δtの項が消去され、温度変化の影響を受けることなく高精度の測定ができる。
【0011】
第1導体と沿わせて配置する緩衝部を備える第2導体を用いてコンクリート内や地中において変位を測定するには、コンクリート内や地中に埋入する際に緩衝部を備える第2導体をパイプに入れるか緩衝物で全体を覆う等の対策を行い、第2導体に加わる外力が吸収されるようにする必要がある。
【0012】
そこで、この発明では第3の局面は次のように規定される。即ち、
外力の作用による変形に対応し抵抗値が変化する第1導体と、前記第1導体に沿わせて配置される外力の作用による変形に対応し抵抗値が変化する第2導体と、
前記第1導体の第1-1部分と第1-2部分との間の第1抵抗値、及び前記第2導体の前記第2-1部分と前記第2-2部分との間の第2抵抗値を測定する抵抗値測定部と、を備え、
前記抵抗値測定部で得られた、前記第1抵抗値及び前記第2抵抗値より、前記第1-1部分と前記第1-2部分の変位と、前記第2-1部分と第2-2部分との変位を特定する変位量特定部と、を備える、変位測定装置。
【0013】
第3の局面において、
測定対象の第1部位に前記第1-1部分と前記第2-1部分を、測定対象の第2部位に前記第1-2部分と前記第2-2部分を固定する。この固定された状態で、前記第1部位と前記第2部位の長さがΔL変化したとする。この時の前記第1導体の抵抗値の変化がΔR1であり、第2抵抗体の抵抗値の変化がΔR2であったとすると、
前記式1と前記式2で、ρ1、ρ2、A1,A2,α1、α2は既知の値であるから、式1に第1導体の抵抗値の変化ΔR1を代入し、式2に第2導体の抵抗値の変化ΔR2を代入し、式1及び式2を二元一次連立方程式として汎用的な手法で解けば、第1導体における第1-1部分と第1-2部分との距離の変化ΔL1(第2導体における第2-1部分と第2-2部分との距離の変化ΔL2に等しい)が特定され、もって測定対象の第1部位と第2部位との変位が特定される。
併せて、測定対象の温度変化(環境温度の変化)Δtも特定される。
【0014】
第3の局面では、第1導体に沿わせて第2導体が配置されていれば、導体全体が測定対象に固定されていても測定対象の変位量が特定できるから、コンクリートの表面や地表の変位量だけでなく、コンクリートの内部や地中の微小な変位量が特定できる。
第3の局面で用いる第1導体の素材と第2導体の素材は異なる材質とすることが好ましい(第4局面)。
【0015】
前記の変位測定装置を用いた変位測定方法に関わり、この発明では第5の局面は次のように規定される。即ち、
前記第1導体と前記第2導体の抵抗値の変化を周波数に変換して出力する周波数変換部を備え、該周波数変換部より出力される周波数の変化に基づき、前記第1導体と前記第2導体の抵抗値の変化を求め、
これらの抵抗値の変化より前記第1導体と第2導体の変位量を特定する変位量特定部と、を備える、請求項3に記載の変位測定装置。
【0016】
このように規定される第5局面の変位測定装置によれば、第1導体と第2導体をセンサ部分として、その抵抗、即ちインピーダンスの変化にともない周波数を変化させる発振回路を構成する。ここに、センサ部分の長さは測定対象の膨張又は収縮に応じて変化する。
発振回路の出力する周波数と第1導体と第2導体のセンサ部の抵抗値の変化との関係が予め求められていれば、発振回路が出力する周波数変化より第1導体と第2導体のセンサ部分の抵抗値の変化を特定できる。
【0017】
さらに、第1導体と第2導体のセンサ部分の抵抗値の変化、及び、第1導体と第2導体の変形量との関係が予め求められていれば、周波数の変化に基づくセンサ部分の抵抗値の変化から、第1導体と第2導体のセンサ部分の変形量、すなわち、センサ部分の距離の変化を求めることができる。
第1導体と第2導体のセンサ部分が測定対象の第1部位と第2部位とに固定されたとき、測定対象の膨張又は収縮に対応するセンサ部分の距離の変化は第1部位と第2部位との変位に相当する。
【0018】
この発明の第6局面は次のように規定される。即ち、第3局面に規定の変位測定装置において、変位量特定部は、
第1導体と第1基準抵抗とを、第2導体と第2基準抵抗とをそれぞれ直列に接続した回路に電圧を印加する電圧印加部を備え、電圧印加部より電圧が印加される時に生じる、第1電圧(第1基準抵抗に生じる)と第2電圧(第2基準抵抗に生じる)との変化に基づき、第1導体と第2導体の抵抗値の変化を求め、
第1導体と第2導体の抵抗値の変化より、第1導体と第2導体の変位量を特定する。
このように規定される第6局面に規定の変位測定装置によれば、直列に接続された第1導体と第1基準抵抗、及び、第2導体と第2基準抵抗に一定の電圧を印加すれば、センサ部分としての第1導体と第2導体の抵抗値の変化にともない、第1基準抵抗と、第2基準抵抗に生じる電圧が変化する。
電圧の変化が求まれば抵抗値の変化が特定でき(印加する電圧が一定であれば抵抗値の変化に比例して電圧が変化する)、第1導体の抵抗値の変化と変形量の関係、及び第2導体の抵抗値の変化と変形量の関係が予め求められていれば、センサ部分の抵抗値の変化から、第1導体と第2導体のセンサ部分の変形量、すなわち、センサ部分の距離の変化を求めることができる。この場合、第1基準抵抗と第2基準抵抗の抵抗値を同じにすることが好ましく、両者を1つの基準抵抗として供用することがより好ましい。
ここに、センサ部分の長さは測定対象の膨張又は収縮に応じて変化する。
【0019】
この発明の第7局面は、既述の変位測定装置を用いた変位測定方法に関わり、は次のように規定される。即ち、
第3局面に記載の変位測定装置を用いる変位測定方法であって、
前記第1導体の第1-1部分と前記第2導体の第2-1部分とを前記測定対象の第1部位に固定し、前記第1導体の第1-2部分と前記第2導体の第2-2部分とを前記測定対象の第2部位に固定して、ここに、前記第1導体は前記測定対象に追従して変化させ、
前記測定対象が第1状態のときの第1導体の第1-1抵抗値と前記測定対象が第2状態のときの第1導体の第1-2抵抗値との差、及び、前記測定対象が第1状態のときの第2導体の第2-1抵抗値と前記測定対象が第2状態のときの第2導体の第2-2抵抗値との差から、前記変位量特定部が前記測定対象の第1状態と第2状態とにおける前記第1部位と前記第2部位との間の距離の変位量を特定する。
【0020】
このように規定される第7の局面における変位測定方法によれば、測定対象に外力が作用し測定対象が変形した場合、測定対象の第1部位と第2部位の間の変位量を測定することができる。
【0021】
第7局面の変位測定方法は、PC構造物の現有応力測定に適用できる。
その一つである応力開放法の適用例として第8局面が提案される。即ち、
前記測定対象は圧縮されたコンクリートであり、
前記第1状態は前記コンクリートのデフォルト圧縮状態であり、
前記第2状態は前記第1導体と交差する方向へ前記コンクリートにスリットを形成した後の前記コンクリートの状態である。
【0022】
第8の局面において、圧縮されている第1状態のコンクリートの第1部位と第2部位の近傍にスリットが形成され、圧縮力が開放された第2状態に移行すると、応力解放に伴ってコンクリートが変形し、その変形に対応して第1導体の抵抗値と第2導体の抵抗値が変化し、その変化に対応して発振回路の出力周波数が変化する。発振回路の周波数の変化から、第1導体の抵抗値の変化1Aと、第2導体の抵抗値の変化2Aが特定される。その抵抗値の変化1Aと抵抗値の変化2Aから変位量特定部によりスリット近傍におけるコンクリートの変形量が求められる。その変形量より逆解析でPC構造物の現有応力値が求められる。
【0023】
基準抵抗を第1導体や第2導体に直列に接続して電圧を印加すれば、第1導体や第2導体の抵抗値の変化に対応して基準抵抗に電圧変化が生じる。この電圧変化を測定しその電圧変化から抵抗値の変化を求め、さらに、スリット近傍におけるコンクリートの変形量を求めてもよい。
【0024】
圧縮されている状態のコンクリートの圧縮力が作用している方向に第1部位と第2部位を設けコンクリートの変形量を測定する場合、2つの部位の間で圧縮力の作用している方向に第1のスリットを形成し、そのスリット内に第1導体と第2導体を互いに沿わせて埋入して第1状態とする。第1部位と第2部位の近傍において第1スリットと交差する方向へ第2のスリットを形成すると、圧縮力が開放されてコンクリートが変形し応力が解放された第2状態に移行する。第1状態から第2状態に移行することで生じた変形に対応して第1導体の抵抗値の変化1Bと、第2導体の抵抗値の変化2Bが測定される。その抵抗値の変化1Bと抵抗値の変化2Bから前記変位量特定部によりスリット近傍におけるコンクリートの変形量が求められる。その変形量より逆解析でPC構造物の現有応力値が求められる。
基準抵抗を第1導体や第2導体に直列に接続して電圧を印加して電圧変化を測定してその電圧変化から抵抗値の変化を求め、さらに、スリット近傍におけるコンクリートの変形量を求めてもよい。
【0025】
岩盤等の現有応力測定法への適用例として、第9局面の発明を提案する。即ち、
請求項7に記載の変位測定方法を適用する、トンネルの岩盤を測定対象とする変位測定方法であって、
外力の作用による変形量に対応して抵抗値が変化する前記第1導体に、外力の作用による変形量に対応して抵抗値が変化する前記第2導体を沿わせて、岩盤に掘削した小口径のボーリング孔に埋入し第1状態とし、
前記岩盤へ前記第1導体と前記第2導体が埋入された状態での前記第1導体の第1-1抵抗値と前記第2導体の第2-1抵抗値を測定し、
オーバーコアリングにより前記岩盤から、前記第1導体と第2導体を埋入した部分とを分離し、
前記分離した部分を第2状態として前記第1導体の第1-2抵抗値と前記第2導体の第2-2抵抗値を測定し、
前記第1-1抵抗値と前記第1-2抵抗値の差、前記第2-1抵抗値と前記第2-2抵抗値との差から前記変位量特定部で前記岩盤の変形量を特定する。
【0026】
第9の局面において、応力が作用している第1状態の岩盤内に埋入された第1導体と第2導体をオーバーコアリングにより周りの岩盤と切り離す。オーバーコアリングにより応力が開放されると岩盤が変形して応力が開放された第2状態に移行する。この時、応力解放に伴ってコアとして切り離された岩盤の変形量に対応して第1導体と第2導体の抵抗値が変化する。その抵抗値の変化より変位特定部により切り出された岩盤の変形量が求められる。その変形量より逆解析で岩盤に作用していた現有応力値が求められる。
【0027】
トンネルの例えば切羽近傍の岩盤を測定対象とする場合、岩盤に掘削した小口径のボーリング孔に第1導体と第2導体を沿わせて埋入しモルタルで固定する。その後、第1導体の抵抗値の変化と第2導体の抵抗値の変化を長期間測定すれば、測定される抵抗値の変化から、変位量特定部により切羽近傍の岩盤の長期間の変位量が測定でき、変形する岩盤のモニタリングができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1はこの発明の一の実施形態の変位測定装置の構成を示す図である。
【
図2】
図2はこの発明の他の実施形態の変位測定装置の構成を示す図である。
【
図3】
図3は
図2の変位測定装置を用いて行う応力解放法を説明する概念図である。
【
図4】
図4は同じくコア応力開放法を説明する概念図である。
【
図5】
図5はこの発明の他の実施形態の変位測定装置の構成を示す図である。
【
図6】
図6は同じく他の実施形態の変位測定装置の構成を示す図である。
【
図7】
図7はこの発明の実施形態のひずみセンサの構成を示す模式図であり、
図7(A)は平面図、
図7(B)は
図7(A)でのB-B矢視線断面図である。
【
図8】
図8は他の実施形態のひずみセンサの構成を示す模式図であり、
図8(A)は平面図、
図8(B)は
図8(A)でのB-B矢視線断面図である。
【0029】
この発明の実施形態の変位測定装置1の構成を
図1に示す。
この変位測定装置50はセンサ用出力装置1及びセンサ部100から構成される。
このセンサ用出力装置1は発振回路部5、波形調整部7、波形解析部10、周波数補正部20及び特定部30から構成され、発振回路を利用して第1導体と第2導体の変位量を特定する。
【0030】
発振回路部5は第1のインピーダンス部として第1導体101、第2のインピーダンス部としてのキャパシタ(コンデンサ)CA及びコンパレータとから構成される汎用的な発振回路である。第1導体101には導線が用いられ、その第1-1部分101aが測定対象(PC構造物)の第1部位Aに固定され、その第1-2部分101bが測定対象の第2部位Bに固定される。第1-1部分101aと第1-2部分101bとはテンションのかかった状態でそれぞれ測定対象の第1部位Aと第2部位Bとに固定される。従って、測定対象の第1部位Aと第2部位Bとの変位(伸長若しくは収縮)応じて、第1-1部位101aと第1-2部分101bとの距離が変化する。これにより、第1導体101全体の抵抗値も変化する。
【0031】
この発振回路部5では、第1導体に沿わせて第2導体102を配置した。第1導体101には第1導体と同一材料の導線が用いられ、その第2-1部分102aが測定対象の第1部位Aに固定され、その第2-2部分102bが測定対象の第2部位Bに固定される。符号102cは緩衝部であり、例えばコイルで形成される。この緩衝部102cがあることで、測定対象の第1部位Aと第2部位Bとが変位(伸長若しくは収縮)して第2-1部分102aと第2-2部分102bとの距離が変化しても、その変化に応じて第2導体102の抵抗値は変化せずに、一定である。
第1導体101と第2導体102とはスイッチSW1により切り替えられる。
この例では、第1導体と第2導体は導線に限定されるものではなく、その伸びに応じて電気抵抗値が変化するものであれば、特に限定されない。
【0032】
第1導体101を選択した発振回路部5の状態が測定モードであり、第2導体102を選択した発振回路部5の状態が基準モードである。
この例では発振回路としてコンパレータを用いるRC回路を採用したが、当業者であればOPアンプを使用する、ないしは、インバータやNANDゲートを組み合わせる構成を容易に想定できよう。
【0033】
波形調整部7は、測定モードの出力と基準モードの出力との波形(矩形波)に変化を与える。この例では、スイッチSW1に同期させてスイッチSW2を切り替えることで、それぞれ出力波形の振幅に変化を与えている。
波形解析部10は矩形波の周波数を特定する。即ち、矩形波の立ち上がりから立下りまでのクロック数をカウントする。クロックとしては1MHz以上を用いることができる。クロック数から矩形波(即ち1/2波長)の時間が特定されるので、周波数が計算できる。勿論、連続した複数の矩形波に含まれるクロック数をカウントしてもよい。
【0034】
波形解析部10で特定されたデジタルデータとして周波数は出力補正部としての周波数補正部20の周波数保存部23に保存される。
波形解析部10の出力は単なる周波数に関するデータであるので、それが測定モードに由来するものか、若しくは基準モードに由来するものかを、データのみから特定することはできない。そこで、この例では、スイッチSW1の切替えのタイミング(時刻t1)をタイミング発生部21からの信号で制御する。タイミング発生部21から切替え信号を出力したタイミング(時刻t1)は周波数保存部23に送られて、波形解析部10から送られるデータに関連付けて保存される。これにより、周波数保存部23に保存される周波数に関するデータは、それが得られた時刻と紐づけられる。
【0035】
周波数減算部25は測定モードでの周波数(時刻t1)から、スイッチSW1を切替えた直後での基準モードでの周波数(時刻t2)を減算する。そして、次にスイッチSW1を切替えた直後の測定モードでの周波数(時刻t3)から、再度スイッチSW1を切り替えた直後の基準モードでの周波数(時刻t4)を減算する。以後、これを繰り返す。
【0036】
測定対象の第1部位Aと第2部位Bとが変化しても、緩衝部102cの作用により、第2導体102の電気抵抗は変化しないので、基準モードでの周波数の変化は、周囲環境(特に温度)変化に起因する。かかる周囲環境の変化は第1導体101も同様に被るので、第2導体102から得られた周波数変化で第1導体101からの周波数を補正することで、周囲環境の変化が補正される。
【0037】
特定部30は、周波数補正部20で補正された周波数の変化を、予め求めておいた校正データに照らして、電気抵抗変化として特定する。
更には、第1導体101における第1-1部分101aと第1-2部分101bとの距離と抵抗との関係を予め求めておけば、電気抵抗変化から第1-1部分101aと第1-2部分101bとの距離の変化が特定される。この距離の変化は測定対象の第1部位Aと第2部位Bとの変位に該当する。
【0038】
この発明の他の実施形態の変位測定装置60の構成を
図2に示す。
なお、
図1と同一の採用を奏する要素には同一の符号を付してその説明を省略する。
この変位測定装置60はセンサ用出力装置1及びセンサ部200から構成される。
【0039】
センサ部200において第1導体101には導線が用いられ、その第1-1部分101aが測定対象の第1部位Aに固定され、その第1-2部分101bが測定対象の第2部位Bに固定される。第1-1部分101aと第1-2部分101bとはテンションのかかった状態でそれぞれ測定対象の第1部位Aと第2部位Bとに固定される。従って、測定対象の第1部位Aと第2部位Bとの変位(伸長若しくは収縮)に応じて、第1-1部分101aと第1-2部分101bとの距離が変化する。これにより、第1導体101全体の抵抗値も変化する。
【0040】
この発振回路部5では、第1導体101に沿わせて第2導体102が配置される。第2導体102には第1導体と異なる材料の導線が用いられ、その第2-1部分102aが測定対象の第1部位Aに固定され、その第2-2部分102bが測定対象の第2部位Bに固定される。従って、測定対象の第1部位Aと第2部位Bとの変位(伸長若しくは収縮)に応じて、第2-1部分102aと第2-2部分102bとの距離が変化する。これにより、第2導体102全体の抵抗値も変化する。
【0041】
第1導体101を選択した発振回路部5の状態が測定モードとし、第2導体102を選択した発振回路部5の状態が基準モードとして、各モードにおける周波数変化を測定する。
この周波数変化から各導体の抵抗値変化ΔRが特定されるので、第3の局面で指摘したように、式1に第1導体101の抵抗値変化ΔR1を代入し、式2に第2導体の抵抗値変化ΔR2を代入し、式1及び式2を二元一次連立方程式として汎用的な手法で解けば、第1導体における第1-1部分101aと第1-2部分101aとの距離の変化ΔL1(第2導体における第2-1部分102aと第2-2部分102bとの距離の変化ΔL2に等しい)が特定され、もって測定対象の第1部位Aと第2部位Bとの変位が特定される。
併せて、測定対象の温度変化Δtも特定される。
【0042】
この例では、第1導体と第2導体は導線に限定されるものではなく、その伸びに応じて電気抵抗値が変化するものであれば、特に限定されなく、汎用のひずみゲージの如くに絶縁物上に隣り合わせてフォトエッチングで金属箔を形成すれば小型化ができ、対象物のひずみ変化が検出できる。
【0043】
図2の変位測定装置60を応力解放法に適用する例を
図3に示す。
図3において、
図2と同一の要素には同一の符号を付してその説明を省略する。
図3において符号300は測定対象たるPC構造物を示し、符号301はスリットである。
測定対象300の表面に第1部位Aと第2部位Bとが固定される。両者の間の距離はL
ABである。
【0044】
第1部位Aにアーチ状のブリッジ303の一端が片持ちはりの状態で固定される。ブリッジ303の自由端と第1部位Bとの間に第1導体101が架設される。即ち、第1導体101の一端は第1部位Bに直接固定され、その他端はブリッジ303の自由端に固定される。
第1導体101において変形する部位の長さ、換言すれば第1部位Aに固定される第1-1部分101aと第2部位Bに固定される第1-2部分101bとの距離はLabで表される。
【0045】
ブリッジ303は、第1導体101より剛性が強く、第1部位Aと第2部位Bとの相対的な変位が全て第1導体101の変形に反映される。
またブリッジ303は、第1部位A及び第2部位B間に架設した状態で、その内側へスリット301を形成する際、その治具との干渉を避ける高さが必要である。
【0046】
上記の事例では、スリット301を第1部位Aと第2部位Bの中間に穿設した。
しかし、スリットの穿設に伴う応力解放の前後で第1部位Aと第2部位Bとの
間の変形量が検出できる位置に少なくとも1つのスリット301を穿設すれば、
逆解析で現有応力が推定できる。
【0047】
図3の第1導体101は、
図2の発振回路5に組み込まれるように、導体を介してスイッチSW1とコンパレータとの間に配置される。スリット301を形成する前のデフォルトの状態において、第1導体101からの発振周波数を記録する。
次に、スリット301を穿設した後の導体101からの発振周波数を記録し、前者の周波数と後者の周波数とを比較する。周波数の差より、第1導体101における電気抵抗の変化ΔR1が特定される。
【0048】
同様にして、図示しない、第2導体102からの周波数変化に基づきその電気抵抗の変化ΔR2が特定される。
これらの値を既述の連立方程式に代入することで、第1導体101(第2導体102)の変形量が特定される。そして、この特定した変形量より、測定対象物の物性値と第1部位Aおよび第2部位Bと穿設したスリット301との位置関係を考慮し、逆解析で測定対象物の現有応力を求める。
【0049】
ここに、第1導体101において第1-1部分101aと第1-2部分101bとの距離Labを第1部位Aと第2部位Bとの距離LABより小さくすることで、第1部位Aと第2部位Bとの間で測定されるひずみの変化量がLAB/Lab倍に増幅されている。
【0050】
上記の例では、スリット301を穿設するときの応力開放の状態(即ち第1部位Aと第2部位Bとの変位の状態)を動的に観察することもできる。
上記において、第1部位Aと第2部位Bを設けるベースを、スリット形成用治具との干渉が無くなるように測定対象300から突出させれば、ブリッジ303を第1部位A及び第2部位Bと同一平面に配置可能である。
上記において、スリット301を第1部位Aと第2部位Bの中間に設けたが、第1部位Aの左に設けても第2部位Bの右に設けても、双方に設けてもよい。
【0051】
図2の変位測定装置60をコア応力解放法に適用する例を
図4に示す。
図4において、
図2と同一の要素には同一の符号を付してその説明を省略する。
図4において符号400は測定対象たるPC構造物を示す。また図中の破線はオーバーコアリングの位置を示す。
【0052】
この例では、
図4の拡大図に示すように第1導体101と第2導体102とが折り返した状態で、かつ直線状にPC構造物400に埋設されている。
埋設された状態で第1導体101及び第2導体102から得られる周波数と、オーバーコアリングした後に得られる第1導体及び第2導体から得られる周波数とを比較することで、応力開放後のコアの変形量を得ることができることは
図3の例と同様である。そして、このコアの変形量より、応力解放を行ったコアの大きさと物性値ならびに第1導体と第2導体との位置関係を考慮し、逆解析で測定対象物の現有応力を求める。
【0053】
図4の例では、PC構造物の紙面の左右方向(Z方向)の応力を推定できることとなる。第1導体101と第2導体102とを紙面の上下方向に配置すればPC構造物のY方向の応力を推定できる。第1導体101と第2導体102とを紙面垂直方向に配置すればPC構造物のX方向の応力を推定できる。
【0054】
この発明の他の実施形態の変位測定装置70の構成を
図5に示す。
図5では、発振回路と発振回路への信号の入力部分のみを示し、
図3と同じ部分は省力した。
図5において、
図2と同一の要素には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0055】
この変位測定装置70はセンサ用出力装置1及びセンサ部700Aを備えている。なお、
図1と同じ動作をする要素には同一の符号を付してその説明を省略する。センサ部700Aは、電圧印加部71、発振回路部5を備える。
図2の発振回路5では、第1導体と第2導体がフィードバック抵抗であったが、
図5の例では固定抵抗Rがフィードバック抵抗である。
【0056】
図5におけるセンサ部では、第1導体101と直列に第1基準抵抗(701)を接続し接続点をP1点とし第1キャパシタCA1を接続する。第2導体102と直列に第2基準抵抗(702)を接続し接続点をP2点とし第2キャパシタCA2を接続する。そして、2つの基準抵抗の一方の端を回路のグランドである0Vに接続する。この0Vを以下では単にグランドという。電圧印加部71より一定の電圧を第1導体と第2導体の他の端子に印加すると、接続点P1とグランド、及び、接続点P2とグランドとの間に第1電圧V1と第2電圧V2が発生する。第1導体と第2導体の抵抗値が変化するとその変化に対応して流れる電流が変化し、接続点P1と接続点P2に発生する第1電圧V1と第2電圧V2が変化する。第1導体と第2導体の抵抗値が増えれば流れる電流が減少して電圧V1とV2が低くなり、抵抗値が減れば流れる電流が増加して電圧V1とV2が高くなる。
予め第1導体と第2導体の抵抗値変化と、第1電圧V1と第2電圧V2の電圧変化との関係を求めておけば、電圧の変化より抵抗値の変化がわかる。
【0057】
図2における発振回路部5は第1のインピーダンス部として第1導体101、第2導体102、及び、第2のインピーダンス部としてのキャパシタ(コンデンサ)CA及びコンパレータとから構成される汎用的な発振回路であり、フィードバック抵抗である第1導体101と第2導体102はSW1により切り替えられてコンパレータの入力に接続され、その入力に接続されたキャパシタの他の端子はグランドに接続されている。
図5で示した実施例ではフィードバック抵抗は固定抵抗でP1点とP2点に接続されたキャバシタCA1とCA2をSW1で切り分けて発振回路の入力と接続する。
【0058】
図2で示した回路では、入力部分のキャパシタの端子はグランドに接続されておりキャパシタの電荷はフィードバック抵抗を介して充放電され、キャパシタの電圧変化(電荷の変化に対応して変わる)により、コンパレータの出力がHレベルとLレベルになり回路の発振が継続する。つまり、
図2で示した回路ではフィードバック抵抗が変化するとキャパシタ内の電荷が充放電される条件(時間)が変わり、その充放電される時間の違いに対応して発振回路の周波数が変化する。
【0059】
他方、
図5で示した実施例の回路では、フィードバック抵抗は固定抵抗であり、キャパシタCA1、CA2の接続先がグランドではなく、第1電圧V1と第2電圧V2となっている。この回路では、接続先の電圧が変わることでキャパシタCA1、CA2の電荷が充放電される条件(時間)が変わり、その充放電される時間の違いに対応して発振回路の周波数が変化する。
予めキャパシタCA1やCA2が接続される接続先の電圧変化と発振回路の出力周波数との関係を求めておけば、周波数の変化より接続先の電圧変化がわかる。
【0060】
図2で示した実施例では、測定モードと基準モードに対応して第1導体と第2導体をSW1で切り分けていたが、
図5で示した実施例では、キャパシタCA1とCA2をSW1で切り替える。そして、測定された周波数変化より予め求めた周波数変化と電圧変化との関係に基づいて電圧の変化を求める。さらに、予め求めた電圧変化と抵抗値変化の関係に基づいて抵抗値の変化を求める。
抵抗値の変化が特定できれば、予め求めた抵抗値の変化と変位量の変化との関係に基づいて測定対象の変位量が特定できる。
【0061】
図5で示した実施例は、P1点とP2点に接続されたキャパシタCA1とCA2をSWで1切り替える構成である。
図6で示すセンサ部では、電圧印加部71より印加する電圧をSW1で切り変えて第1導体101と第2導体102に印加する。
図6において、
図5と同一の動作を奏する要素には同一の符号を付してその説明を省略する。
図6の回路では、第1導体101と第2導体102を接続して接続点をP3点とし、P3点に第3基準抵抗703を接続してその第3基準抵抗の他の端子をグランドにする。そして、P3点と発振回路の入力の間にキャパシタCA3を接続し、P3点の電圧変化を、下記で説明する如くに周波数の変化として測定し、変位量を求める。
【0062】
SW1により第1導体101に電圧印加部71より電圧を印加した状態において、第1導体101の抵抗値の変化に対応してCA3が接続されている第3基準抵抗703に電圧変化が生じ、発振回路から出力される周波数が変化する。また、SW1により第2導体102に電圧印加部71より電圧を印加した状態おいて、第2導体102の抵抗値の変化に対応して第3基準抵抗に電圧変化が生じ、発振回路から出力される周波数が変化する。
【0063】
あらかじめ、1)出力周波数と電圧変化、2)電圧変化と抵抗値の変化、3)抵抗値の変化と第1導体の変位量、及び、第2導体の変位量の関係が求められていれば、周波数の変化より第1導体と第2導体の変位量が求められる。この実施例のように基準抵抗とキャパシタを共用すれば、部品間で生じる誤差が軽減できより高精度で第1導体と第2導体の変位量を測定することができる。
【0064】
図5及び
図6の例は、
図2の変位測定装置の変形態様ということができる。
図5及び
図6の例を、
図1の構成、即ち、第2導体に緩衝部を備えたものにも適用できる。この場合、第1導体と第2導体とは同一素材とすることが好ましい。
また、
図5及び
図6の例では第1導体や第2導体の抵抗値の変化を発振回路の周波数の変化として検出する方法について記載した。しかしながら、抵抗値の微小な変化はホイートストンブリッジ回路等で電圧変化として検出することもできる。また、第1導体と第2導体を流れる電流の変化として検出すこともでき、さらに、抵抗測定装置で第1導体と第2導体の抵抗値の変化を直接測定してもよい。
【0065】
上記した如く、第1導体と第2導体の抵抗値の変化を直接測定する場合や、周波数の変化や電圧の変化として測定する場合、測定装置固有の温度変化の影響が残る場合がある。かかる場合には、高精度の基準抵抗、基準周波数、基準電圧の測定を行い、その測定値を利用して測定装置固有の温度変化の影響を取り除くと、高精度の測定が行えることは言うまでもないことである。
【0066】
上記の例では、第1導体と第2導体とはそれぞれPC構造物に固定されていたが、
図3及び
図4と同様な使用態様もある。
第1導体と第2導体とを帯状の導電性の金属箔とすれば、汎用的なひずみセンサに適用できる。即ち、
図7に示すひずみセンサ1000では、絶縁基板1001上に、それぞれ独立した、換言すれば相互に接触しない第1金属箔条1100と第2金属箔条1200とを形成する。第1金属箔条1100と第2金属箔条1200とは材料が異なるものとする。第1金属箔条1100と第2金属箔条1200の各一端に、電圧印加部71が接続されて定電圧が印加される。それらの他端は、第1基準抵抗701及び第2基準抵抗702側に接続される。
図8のひずみセンサ2000では、絶縁基板1001の一方の面に第1金属箔条1100を形成し、他方の面に第2金属箔条1200を形成した例を示す。
第1金属箔条1100及び第2金属箔条1200は汎用的な手法、例えばフォトエッチングにより、絶縁基板1001の任意の位置に形成できる。
図7及び
図8に示したひずみセンサは、温度補償機能を備えたものとなる。
【0067】
この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
【0068】
この発明の変位測定装置や変位測定方法は、センサ部を測定対象に固定して、センサ部が測定対象の変位に追従して変形すれば、PC構造物以外の測定対象にも適用できる。例えば、金属構造物、機械装置、運輸機械、精密機械等に適用されるひずみ測定装置やその測定方法として用いることができる。
【0069】
また、第1導体や第2導体が伸長により破断するまで(30%程度の伸長量)高精度で変位の測定ができるため、地滑り地の変動や堤体、道路や工事現場等の変位の測定装置や測定方法として用いることができる。
【0070】
以下の事項を開示する。
この発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、その第11局面は次のように規定される。即ち、
変形することにより抵抗値が変化する第1導体と、
前記第1導体の第1-1部分と第1-2部分との間の抵抗値を周波数に変換して出力する第1周波数変換部と、を備え、
前記第1-1部分と前記第1-2部分の距離が変位したときの前記第1周波数変換部が出力する周波数の変化に基づき、前記第1-1部分と前記第1-2部分との距離の変位を特定する第1変位量特定部と、を備えてなる、変位測定装置。
【0071】
このように規定される第11局面の変位測定装置によれば、第1導体の第1-1部分から第1-2部分をセンサ部として、その抵抗、即ちインピーダンスの変化にともない周波数を変化させる第1の発振回路を構成する。ここに、第1-1部分と第1-2部分との距離は測定対象の膨張又は収縮に応じて変化する。
第1の発振回路の出力する周波数と第1導体における第1-1部分から第1-2部分までの部分の抵抗の変化との関係を予め求めておけば、第1の発振回路が出力する周波数変化より第1-1部分から第1-2部分までの部分の抵抗変化を特定できる。第1導体においてその変形量と抵抗値の変化との関係が予め求められておれば、周波数の変化に基づき第1-1部分と第1-2部分との間の距離の変化を求めることができる。測定対象の膨張又は収縮に対応し、第1-1部分と第1-2部分が測定対象の第1部位と第2部位とに固定されたとき、当該距離の変化は第1部位と第2部位との変位に相当する。
この明細書において、導体には、断面積が均一の線状体を用いることができるが、これに限定されるものではない。例えば、フィルム状のもの、プレート状のもの、棒状のもの、塊状のものなど任意の形状のものを用いることができる。
【0072】
第1導体の抵抗値が温度により変化するものであるとき、その温度の影響を補正することが好ましい。
そこでこの発明では、温度補正のための第2導体を第1導体に沿わせて測定対象に配置する。即ち、第2導体の第2-1部分と第2-2部分とを測定対象の第1部位と第2部位へ固定する。ここに、第2導体に緩衝部を設けて、測定対象の第1部位と第2部位とが変位しても、その変位が緩衝部に緩衝されて、第2導体の第2-1部分と第2-2部分との距離の変化として現れないとき、この第2導体から得られる周波数の変化は温度の変化に起因するものと考えられる。よって、当該周波数の変化を用いて、第1の発振回路が出力する周波数変化を補正できる。
ここに、第2導体は第1導体と同一の材料で形成することが好ましい。電気抵抗の温度変化が等しいからである。
【0073】
第2導体と第1導体とを次のように異なる材料で形成することもできる。
第1導体は下記式1の特性を有する。
ΔR1=ρ1*ΔL/A1+α1*Δt (1)
ここに、未知数としてのΔR1は第1導体の抵抗値変化、ΔLは第1導体の軸方向の変化、Δtは温度変化であり、既知数としてのρ1は第1導体の材料の電気抵抗率、A1は第1導体の断面積、α1は第1導体の材料の抵抗温度係数である。
【0074】
第2導体は下記式2の特性を有する。
ΔR2=ρ2*ΔL/A2+α2*Δt (2)
ここに、未知数としてのΔR2は第2導体の抵抗値変化、ΔLは第2導体の軸方向の変化、Δtは温度変化であり、既知数としてのρ2は第2導体の材料の電気抵抗率、A2は第2導体の断面積、α2は第2導体の材料の抵抗温度係数である。
【0075】
第1周波数変換部は前記第1-1部分と前記第1-2部分との間の抵抗値を周波数に変換して出力する。
第2周波数変換部は前記第2-1部分と前記第2―2部分との間の抵抗値を周波数に変換して出力する。
【0076】
ここに、第1周波数変換部から出力される周波数の変化から第1導体の抵抗値変化ΔR1を求めて式1へ代入し、第2周波数変換部から出力される周波数の変化から第2導体の抵抗値変化ΔR2を求めて式2へ代入し、これらの連立法的式を解くことで、ΔLとΔtが特定される。
上記の式(1)、(2)では第1導体の電気抵抗ρ1と第2導体の電気抵抗ρ2とを異なるものとするため、第1導体と第2導体とを異種材料としたが、第1導体の断面積A1と第2導体の断面積A2とを異ならせることで、第1導体と第2導体とを同一材料製とすることができる。
【0077】
上記の変位測定装置は、PC構造物の現有応力測定に適用できる。
その一つである応力開放法の適用例として他の局面が提案される。即ち、
第10局面に記載の変位測定装置を用いる変位測定方法であって、
前記第1導体の第1-1部分と前記第2導体の第2-1部分とを前記測定対象の第1部位に固定し、前記前記第1導体の第1-2部分と前記第2導体の第2-2部分とを前記測定対象の第2部位に固定して、ここに、前記第1導体は前記測定対象に追従して変化させ、
前記測定対象が第1状態のときの前記第1周波数変換部から出力される第1―1周波数と、前記測定対象が第2状態のときの前記第1周波数変換部から出力される第1-2周波数との差から、前記第1変位量特定部は前記測定対象の第1状態と第2状態とにおける前記第1-1部分と前記第1-2部分との距離の変位量を特定し、
ここに、前記第1状態のときの前記第2周波数変換から出力される第2-1周波数と前記第2状態のとき前記第2周波数変換部から出力される第2-2周波数とに基づき、前記補正部が前記変位量を補正する、変位測定方法において、
前記測定対象は圧縮されたコンクリートであり、
前記第1状態は前記コンクリートのデフォルト圧縮状態であり、
前記第2状態は前記第1導体と交差する方向へ前記コンクリートにスリットを形成した後の前記コンクリートの状態である、変位測定方法。
【0078】
PC構造物の現有応力測定法の一つであるコア応力開放法への適用例として、更に他の局面の発明を提案する。即ち、
前記測定対象は圧縮されたコンクリートであり、
変形することにより抵抗値が変化する第1導体を圧縮されているコンクリート製の測定対象へ埋入させ、
前記測定対象へ前記第1導体が埋入された状態での前記第1導体の第1抵抗値に対応する第1周波数を測定し、
前記測定対象から前記第1導体を埋入した部分を分離し、
前記分離した部分を第2状態としてそこに埋入されている前記第1導体の第2抵抗値に対応する第2周波数を特定し、
前記第1周波数と前記第2周波数に基づき、前記分離した部分の変位を測定する変位測定方法。
【符号の説明】
【0079】
1 センサ用出力装置
50、60、70 変位測定装置
100,200,700A,700B センサ部
71 電圧印加部
101 第1導体
102 第2導体
101a 第1導体の第1-1部分
101b 第1導体の第1-2部分
102a 第2導体の第2-1部分
102b 第2導体の第2-2部分
300、400 測定対象
301 スリット
A 第1部位
B 第2部位
701、702、703 基準抵抗
1000,2000 ひずみセンサ
1001 絶縁基板
1100、1200金属箔条