(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129485
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】ワイパ制御装置
(51)【国際特許分類】
H02P 29/02 20160101AFI20240919BHJP
B60S 1/08 20060101ALI20240919BHJP
H02P 27/06 20060101ALI20240919BHJP
【FI】
H02P29/02
B60S1/08 D
H02P27/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038718
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】刑部 博人
(72)【発明者】
【氏名】三戸 龍馬
【テーマコード(参考)】
3D225
5H501
5H505
【Fターム(参考)】
3D225AA01
3D225AC01
3D225AD09
3D225AE57
3D225AG01
5H501AA20
5H501BB08
5H501CC04
5H501DD08
5H501EE08
5H501HB08
5H501HB16
5H501JJ03
5H501JJ17
5H501JJ18
5H501JJ26
5H501KK06
5H501LL23
5H501LL35
5H501MM03
5H505AA16
5H505BB06
5H505CC04
5H505DD03
5H505EE08
5H505EE41
5H505EE49
5H505HB01
5H505JJ03
5H505JJ17
5H505JJ18
5H505JJ26
5H505JJ28
5H505KK06
5H505LL24
5H505LL41
5H505MM03
(57)【要約】
【課題】サージに対する信頼性を向上させる。
【解決手段】ワイパ制御装置1は、駆動部12と制御部11とを備える。駆動部12は、バッテリ3の正極および負極とモータ21の端子TU,TV,TWとを接続するスイッチング素子41~46を有する三相ブリッジ回路を備える。制御部11は、スイッチング素子41~46のそれぞれについてオン状態とオフ状態とを切り替える。制御部11は、バッテリ3の検出電圧値が予め設定された過電圧判定値を超えると、ベクトル制御を用いて、q軸電流が0となるように、スイッチング素子41~46のオン状態とオフ状態とを切り替えてモータ21への通電を制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイパブレード(23)を駆動するモータ(21)を備えるワイパ(2)を制御するワイパ制御装置(1)であって、
直流電源(3)の正極および負極と前記モータの複数の端子(TU,TV,TW)とを接続する複数のスイッチング素子(41,42,43,44,45,46)を有する三相ブリッジ回路を備えて前記モータに三相交流電流を供給するように構成された駆動部(12)と、
前記駆動部の複数の前記スイッチング素子のそれぞれについてオン状態とオフ状態とを切り替えることにより前記モータを制御するように構成された制御部(11)と、
前記直流電源の電圧値を検出電圧値として検出するように構成された電圧検出部(13)とを備え、
前記制御部は、
前記検出電圧値が予め設定された過電圧判定値を超えると、ベクトル制御を用いて、q軸電流が0となるように、複数の前記スイッチング素子のそれぞれについて前記オン状態と前記オフ状態とを切り替えて前記モータへの通電を制御するように構成されたq軸電流通電部(S10~S80)を備えるワイパ制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のワイパ制御装置であって、
前記q軸電流通電部は、前記モータへの通電を開始してから予め設定された継続時間が経過した場合に、前記モータへの通電を停止するように構成されるワイパ制御装置。
【請求項3】
ワイパブレード(23)を駆動するモータ(21)を備えるワイパ(2)を制御するワイパ制御装置(1)であって、
前記モータの複数の端子(TU,TV,TW)のそれぞれについて、前記端子と直流電源(3)の正極側との間に配置される複数のハイサイドスイッチング素子(41,42,43)と、前記端子と前記直流電源の負極側との間に配置される複数のローサイドスイッチング素子(44,45,46)とを有する三相ブリッジ回路を備えて前記モータに三相交流電流を供給するように構成された駆動部(12)と、
複数の前記ハイサイドスイッチング素子および複数の前記ローサイドスイッチング素子のそれぞれについてオン状態とオフ状態とを切り替えることにより前記モータを制御するように構成された制御部(11)と、
前記直流電源の電圧値を検出電圧値として検出するように構成された電圧検出部(13)とを備え、
複数の前記ハイサイドスイッチング素子のうちの1つを通電対象ハイサイドスイッチング素子とし、
複数の前記ローサイドスイッチング素子のうち、前記通電対象ハイサイドスイッチング素子に接続されている前記端子とは異なる2つの前記端子に接続されている2つの前記ローサイドスイッチング素子をそれぞれ、第1通電対象ローサイドスイッチング素子および第2通電対象ローサイドスイッチング素子として、
前記制御部は、
前記検出電圧値が予め設定された過電圧判定値を超えると、前記通電対象ハイサイドスイッチング素子を前記オン状態に固定して、前記第1通電対象ローサイドスイッチング素子および前記第2通電対象ローサイドスイッチング素子の何れか一方が前記オン状態となるように前記第1通電対象ローサイドスイッチング素子および前記第2通電対象ローサイドスイッチング素子の前記オン状態と前記オフ状態とを順次切り替えて前記モータへの通電を制御するように構成された固定通電部(S110~S160,S170,S175,S180~S210)を備えるワイパ制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載のワイパ制御装置であって、
前記固定通電部(S110~S160,S175,S180~S210)は、複数の前記ハイサイドスイッチング素子の中から、前記通電対象ハイサイドスイッチング素子を順次切り替えるように構成されるワイパ制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ワイパ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ブラシ付きDCモータにより駆動するワイパを制御するワイパ制御装置において、サージが発生した場合に、ワイパ制御装置を構成する回路が破損するのを抑制する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明者の詳細な検討の結果、三相交流モータにより駆動するワイパを制御するワイパ制御装置においても、サージが発生した場合に、ワイパ制御装置を構成する回路が破損するおそれがあるという課題が見出された。
【0005】
本開示は、サージに対する信頼性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、ワイパブレード(23)を駆動するモータ(21)を備えるワイパ(2)を制御するワイパ制御装置(1)である。
本開示のワイパ制御装置は、駆動部(12)と、制御部(11)と、電圧検出部(13)とを備える。
【0007】
駆動部は、直流電源(3)の正極および負極とモータの複数の端子(TU,TV,TW)とを接続する複数のスイッチング素子(41,42,43,44,45,46)を有する三相ブリッジ回路を備えてモータに三相交流電流を供給するように構成される。
【0008】
制御部は、駆動部の複数のスイッチング素子のそれぞれについてオン状態とオフ状態とを切り替えることによりモータを制御するように構成される。
電圧検出部は、直流電源の電圧値を検出電圧値として検出するように構成される。
【0009】
制御部は、q軸電流通電部(S10~S80)を備える。q軸電流通電部は、検出電圧値が予め設定された過電圧判定値を超えると、ベクトル制御を用いて、q軸電流が0となるように、複数のスイッチング素子のそれぞれについてオン状態とオフ状態とを切り替えてモータへの通電を制御するように構成される。
【0010】
このように構成された本開示のワイパ制御装置は、サージが発生して直流電源の電圧値が過電圧判定値を超えた場合に、q軸電流が0となるようにモータへの通電を制御するため、モータを回転させることなく、サージに起因した過電流をモータに流すことができる。これにより、本開示のワイパ制御装置は、サージが発生したときに、ワイパ制御装置を構成する回路の素子に素子耐圧を超える電圧が印加されてしまう事態の発生を抑制することができ、ワイパ制御装置を構成する回路の破損を抑制することできるため、サージに対する信頼性を向上させることができる。なお、本開示のワイパ制御装置は、サージが発生したときにモータを回転させないため、車両の走行中に突然ワイパブレードが動作を開始して運転者の視界を遮ってしまうという事態の発生を抑制することができる。
【0011】
本開示の別の態様は、ワイパブレード(23)を駆動するモータ(21)を備えるワイパ(2)を制御するワイパ制御装置(1)であって、駆動部(12)と、制御部(11)と、電圧検出部(13)とを備える。
【0012】
駆動部は、モータの複数の端子(TU,TV,TW)のそれぞれについて、端子と直流電源(3)の正極側との間に配置される複数のハイサイドスイッチング素子(41,42,43)と、端子と直流電源の負極側との間に配置される複数のローサイドスイッチング素子(44,45,46)とを有する三相ブリッジ回路を備えてモータに三相交流電流を供給するように構成される。
【0013】
制御部は、複数のハイサイドスイッチング素子および複数のローサイドスイッチング素子のそれぞれについてオン状態とオフ状態とを切り替えることによりモータを制御するように構成される。
【0014】
制御部は、固定通電部(S110~S160,S170,S175,S180~S210)を備える。固定通電部は、検出電圧値が予め設定された過電圧判定値を超えると、通電対象ハイサイドスイッチング素子をオン状態に固定して、第1通電対象ローサイドスイッチング素子および第2通電対象ローサイドスイッチング素子の何れか一方がオン状態となるように第1通電対象ローサイドスイッチング素子および第2通電対象ローサイドスイッチング素子のオン状態とオフ状態とを順次切り替えてモータへの通電を制御するように構成される。
【0015】
通電対象ハイサイドスイッチング素子は、複数のハイサイドスイッチング素子のうちの1つである。第1通電対象ローサイドスイッチング素子および第2通電対象ローサイドスイッチング素子は、複数のローサイドスイッチング素子のうち、通電対象ハイサイドスイッチング素子に接続されている端子とは異なる2つの端子に接続されている2つのローサイドスイッチング素子のそれぞれである。
【0016】
このように構成された本開示のワイパ制御装置は、サージが発生して直流電源の電圧値が過電圧判定値を超えた場合に、モータの正回転と逆回転とを交互に繰り返すことにより、サージに起因した過電流をモータに流すことができる。これにより、本開示のワイパ制御装置は、サージが発生したときに、ワイパ制御装置を構成する回路の素子に素子耐圧を超える電圧が印加されてしまう事態の発生を抑制することができ、ワイパ制御装置を構成する回路の破損を抑制することできるため、サージに対する信頼性を向上させることができる。なお、本開示のワイパ制御装置は、サージが発生したときにモータの正回転と逆回転とを交互に繰り返すことによりワイパブレードの移動範囲を必要最小限に抑えることができるため、車両の走行中に突然ワイパブレードが動作を開始して運転者の視界を遮ってしまうという事態の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】ワイパ制御装置およびワイパの構成を示すブロック図である。
【
図3】第1実施形態のサージ対応処理を示すフローチャートである。
【
図4】第1実施形態のモータ制御方法を示すタイミングチャートである。
【
図5】第2実施形態のサージ対応処理を示すフローチャートである。
【
図6】第2実施形態のモータ制御方法を示すタイミングチャートである。
【
図7】第3実施形態のサージ対応処理を示すフローチャートである。
【
図8】第3実施形態のモータ制御方法を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[第1実施形態]
以下に本開示の第1実施形態を図面とともに説明する。
図1に示すように、本実施形態のワイパ制御装置1は、車両のウィンドシールドガラスを払拭するワイパ2を制御する。
【0019】
ワイパ2は、モータ21と、ワイパ出力軸22と、ワイパブレード23とを備える。
モータ21は、三相交流モータである。モータ21の回転駆動力は、図示しない減速機構を介してワイパ出力軸22に伝達される。ワイパ出力軸22の回転駆動力は、図示しないリンク機構を介してワイパブレード23に伝達される。これにより、ワイパブレード23は、ウィンドシールドガラス上を左右に往復移動する。
【0020】
ワイパ制御装置1は、制御部11と、駆動部12と、電圧検出部13と、フィルタ14とを備える。
制御部11は、CPU31、ROM32およびRAM33等を備えたマイクロコンピュータを中心に構成された電子制御装置である。マイクロコンピュータの各種機能は、CPU31が非遷移的実体的記録媒体に格納されたプログラムを実行することにより実現される。この例では、ROM32が、プログラムを格納した非遷移的実体的記録媒体に該当する。また、このプログラムの実行により、プログラムに対応する方法が実行される。なお、CPU31が実行する機能の一部または全部を、一つあるいは複数のIC等によりハードウェア的に構成してもよい。また、制御部11を構成するマイクロコンピュータの数は1つでも複数でもよい。
【0021】
駆動部12は、バッテリ3から電力供給を受けて、モータ21の各相U,V,W間(すなわち、U-V間、V-W間、W-U間)にバッテリ電圧VBを印加することでステータコイルへの通電を行い、モータ21を回転させる回路である。
【0022】
モータ21の各相U,V,Wのステータコイルは、Y結線されている。そして、この結線部とは反対側の3つの端子TU,TV,TWに駆動部12が接続されている。駆動部12は、6つのスイッチング素子41,42,43,44,45,46で形成される3相フルブリッジ回路を備える。
【0023】
スイッチング素子41,42,43は、いわゆるハイサイドスイッチとして、バッテリ3の正極側とモータ21の各相U,V,Wとの間に配置されている。スイッチング素子44,45,46は、いわゆるローサイドスイッチとして、バッテリ3の負極側とモータ21の各相U,V,Wとの間に配置されている。
【0024】
このため、駆動部12において、相が互いに異なる一つのハイサイドスイッチと一つのローサイドスイッチとをオン状態にすることで、モータ21の何れかの相U,V,W間にバッテリ電圧VBが印加される。
【0025】
そして、オン状態にするスイッチング素子を切り替えることで、バッテリ電圧VBを印加する端子TU,TV,TWおよびバッテリ電圧VBの印加方向を切り替えることができ、スイッチング素子のオン時間を制御することで、モータ21に流れる電流を制御することができる。
【0026】
制御部11は、駆動部12内のスイッチング素子41~46をオン状態またはオフ状態にすることで、モータ21の各相U,V,Wのステータコイルに電流を流し、モータ21を回転させる。
【0027】
電圧検出部13は、バッテリ電圧VBを検出し、検出結果を示す電圧検出信号を制御部11へ出力する。
フィルタ14は、バッテリ3と駆動部12のハイサイドスイッチ(すなわち、スイッチング素子41~43)との間の電流経路上に配置され、駆動部12におけるスイッチングにより発生したノイズを除去する。
【0028】
図2に示すように、モータ21は、ロータ51と、3個のステータ52,53,54と、3個のホールIC55,56,57とを備える。
ロータ51は、永久磁石を回転自在に支持する。ステータ52,53,54は、ロータ51の周囲に等角度間隔で配置される。ステータ52,53,54はそれぞれ、U,V,W相の巻線が巻回される。
【0029】
ホールIC55,56,57は、ホール素子が組み込まれた集積回路であり、ロータ51と一体に回転する永久磁石の磁極を検出して、磁極の極性に対応した信号レベルを有する検出信号を出力する。ホールIC55,56,57は、ロータ51の周囲に等角度間隔で配置される。
【0030】
制御部11は、周知のベクトル制御によりモータ21の駆動を制御する。制御部11は、ROM32に格納されたプログラムをCPU31が実行することにより実現される機能ブロックとして、電流指令値生成部、三相/二相変換部、電流制御部、二相/三相変換部およびPWM変調部を備える。PWMは、Pulse Width Modulationの略である。
【0031】
電流指令値生成部は、ワイパブレード23を駆動するのに必要な指令値として、d-q軸座標系でのd軸電流指令値およびq軸電流指令値を生成し、電流制御部へ出力する。d-q軸座標系は、ロータ51の永久磁石の磁束方向をd軸とし、d軸に直交しロータ51にトルクを発生させる方向をq軸とする周知の回転座標系である。
【0032】
三相/二相変換部は、駆動部12からモータ21の各相U,V,Wに流れる電流(以下、三相電流)を検出し、ホールIC55~57からの検出信号に基づき、三相電流をd軸電流およびq軸電流に変換する。d軸電流は、モータ21に流れる電流のうち、回転磁界を発生させる成分である。q軸電流は、モータ21に流れる電流のうち、モータ21にトルクを発生させる成分である。
【0033】
電流制御部は、三相/二相変換部にて変換されたd軸電流およびq軸電流と、電流指令値生成部にて生成されたd軸電流指令値およびq軸電流指令値との偏差に基づき、d軸電圧指令値およびq軸電圧指令値を算出し、二相/三相変換部へ出力する。d軸電圧指令値は、d軸電流をd軸電流指令値に制御するのに要する電圧指令値である。q軸電圧指令値は、q軸電流をq軸電流指令値に制御するのに要する電圧指令値である。
【0034】
二相/三相変換部は、電流制御部にて算出されたd軸電圧指令値およびq軸電圧指令値を座標変換することで三相電圧指令値を生成し、PWM変調部へ出力する。
PWM変調部は、三相電圧指令値に従い、モータ21の各相U,V,Wの端子TU,TV,TWに出力する実電圧をPWM制御する。この結果、PWM変調部から、駆動部12を構成するスイッチング素子41~46へ、各相U,V,Wの電圧をPWM制御するための制御信号が出力されて、スイッチング素子41~46のオン状態とオフ状態とが切り替えられ、モータ21の各相U,V,Wに供給される電力が制御される。
【0035】
次に、制御部11が実行するサージ対応処理の手順を説明する。サージ対応処理は、ワイパ制御装置1の動作中において繰り返し実行される処理である。
サージ対応処理が実行されると、制御部11のCPU31は、
図3に示すように、S10にて、電圧検出部13が検出した電圧値(以下、検出電圧値Vd)が予め設定された過電圧判定値J1を超えているか否かを判断する。ここで、検出電圧値Vdが過電圧判定値J1以下である場合には、CPU31は、S10の処理を繰り返すことにより、検出電圧値Vdが過電圧判定値J1を超えるまで待機する。
【0036】
そして、検出電圧値Vdが過電圧判定値J1を超えると、CPU31は、S20にて、q軸電流が0となる電流進角(すなわち、90°固定の電流進角)でモータ21への通電を行う。具体的には、CPU31は、
図2のベクトルV1またはベクトルV2で示すように、電流進角βを90°固定にすることにより、d-q軸座標系において、d軸電流指令値およびq軸電流指令値を示す電流ベクトルをq軸に対して直交させる。これにより、モータ21が回転しないように、モータ21の回転角度に応じて、スイッチング素子41,42,43の中からオン状態にするハイサイドスイッチが決定され、スイッチング素子44,45,46の中からオン状態にするローサイドスイッチが決定されて、モータ21への通電が行われる。
【0037】
S20の処理が終了すると、
図3に示すように、CPU31は、S30にて、検出電圧値Vdが、過電圧判定値J1より小さくなるように設定された正常判定値J2未満であるか否かを判断する。ここで、検出電圧値Vdが正常判定値J2未満である場合には、CPU31は、S40にて、モータ21への通電を停止し、サージ対応処理を終了する。
【0038】
一方、検出電圧値Vdが正常判定値J2以上である場合には、CPU31は、S40にて、S20でモータ21への通電を開始してから予め設定された継続時間Tcが経過したか否かを判断する。
【0039】
ここで、モータ21への通電を開始してから継続時間Tcが経過していない場合には、CPU31は、S20に移行する。一方、モータ21への通電を開始してから継続時間Tcが経過した場合には、CPU31は、S60にて、モータ21への通電を停止する。
【0040】
CPU31は、S70にて、予め設定された待機時間Twだけ待機する。CPU31は、S80にて、検出電圧値Vdが過電圧判定値J1を超えているか否かを判断する。ここで、検出電圧値Vdが過電圧判定値J1を超えている場合には、CPU31は、S20に移行する。一方、検出電圧値Vdが過電圧判定値J1以下である場合には、CPU31は、サージ対応処理を終了する。
【0041】
次に、制御部11によるモータ21の制御を説明する。
図4のタイミングチャートTC1は、サージの電圧の時間変化を示す。タイミングチャートTC2は、検出電圧値Vdの時間変化を示す。タイミングチャートTC3は、モータ21への通電のオンまたはオフの時間変化を示す。タイミングチャートTC4は、ロータ51の回転角度の時間変化を示す。タイミングチャートTC5は、ワイパ出力軸22の角度の時間変化を示す。
【0042】
時刻t1でのサージの発生により、時刻t2で検出電圧値Vdが過電圧判定値J1を超えると、モータ21への通電が開始される。これにより、検出電圧値Vdが低下する。なお、モータ21への通電が開始されても、ロータ51の回転角度は変化しないため、ワイパ出力軸22の角度も変化しない。
【0043】
そして、時刻t3で検出電圧値Vdが正常判定値J2未満になると、モータ21への通電が停止される。しかし、サージが継続しているため、モータ21への通電停止により、検出電圧値Vdが上昇する。
【0044】
そして、時刻t4で検出電圧値Vdが過電圧判定値J1を超えると、モータ21への通電が開始される。これにより、検出電圧値Vdが低下する。さらに、時刻t5で検出電圧値Vdが正常判定値J2未満になると、モータ21への通電が停止される。なお、時刻t4から時刻t5の間にモータ21への通電が行われても、ロータ51の回転角度は変化しないため、ワイパ出力軸22の角度も変化しない。
【0045】
次に、時刻t6で検出電圧値Vdが過電圧判定値J1を超えると、モータ21への通電が開始される。しかし、検出電圧値Vdが低下せずに上昇するため、時刻t6から継続時間Tcが経過した時刻t7でモータ21への通電が停止される。
【0046】
さらに、時刻t7から待機時間Twが経過した時刻t8で、検出電圧値Vdが過電圧判定値J1を超えているため、モータ21への通電が開始される。これにより、検出電圧値Vdが低下する。さらに、時刻t9で検出電圧値Vdが正常判定値J2未満になると、モータ21への通電が停止される。
【0047】
これにより、時刻t1でサージが発生して時刻t9までサージが継続しても、検出電圧値Vdが素子耐圧Vwを超えないようにすることができる。上記のようにモータ21への通電を行わない場合には、タイミングチャートTC2の破線L1で示すように、サージの発生により検出電圧値Vdが素子耐圧Vwを超えてしまう。
【0048】
このように構成されたワイパ制御装置1は、ワイパブレード23を駆動するモータ21を備えるワイパ2を制御する。
ワイパ制御装置1は、駆動部12と、制御部11と、電圧検出部13とを備える。
【0049】
駆動部12は、バッテリ3の正極および負極とモータ21の端子TU,TV,TWとを接続するスイッチング素子41,42,43,44,45,46を有する三相ブリッジ回路を備えてモータ21に三相交流電流を供給するように構成される。
【0050】
制御部11は、駆動部12のスイッチング素子41~46のそれぞれについてオン状態とオフ状態とを切り替えることによりモータ21を制御するように構成される。
電圧検出部13は、バッテリ3の電圧値を検出電圧値Vdとして検出するよう構成される。
【0051】
制御部11は、検出電圧値Vdが予め設定された過電圧判定値J1を超えると、ベクトル制御を用いて、q軸電流が0となるように、スイッチング素子41~46のそれぞれについてオン状態とオフ状態とを切り替えてモータ21への通電を制御するように構成される。
【0052】
このようにワイパ制御装置1は、サージが発生してバッテリ3の電圧値が過電圧判定値を超えた場合に、q軸電流が0となるようにモータ21への通電を制御するため、モータ21を回転させることなく、サージに起因した過電流をモータ21に流すことができる。これにより、ワイパ制御装置1は、サージが発生したときに、ワイパ制御装置1を構成する回路の素子に素子耐圧を超える電圧が印加されてしまう事態の発生を抑制することができ、ワイパ制御装置1を構成する回路の破損を抑制することできるため、サージに対する信頼性を向上させることができる。なお、ワイパ制御装置1は、サージが発生したときにモータ21を回転させないため、車両の走行中に突然ワイパブレード23が動作を開始して運転者の視界を遮ってしまうという事態の発生を抑制することができる。
【0053】
制御部11は、モータ21への通電を開始してから予め設定された継続時間Tcが経過した場合に、モータ21への通電を停止するように構成される。これにより、ワイパ制御装置1は、モータ21への通電に起因してスイッチング素子41~46が発熱するのを抑制してスイッチング素子41~46の破損を抑制することできるため、サージに対する信頼性を更に向上させることができる。
【0054】
以上説明した実施形態において、バッテリ3は直流電源に相当し、S10~S80はq軸電流通電部としての処理に相当する。
[第2実施形態]
以下に本開示の第2実施形態を図面とともに説明する。なお第2実施形態では、第1実施形態と異なる部分を説明する。共通する構成については同一の符号を付す。
【0055】
第2実施形態のワイパ制御装置1は、サージ対応処理が変更された点が第1実施形態と異なる。
次に、第2実施形態のサージ対応処理の手順を説明する。
【0056】
第2実施形態のサージ対応処理が実行されると、制御部11のCPU31は、
図5に示すように、S110にて、検出電圧値Vdが過電圧判定値J1を超えているか否かを判断する。ここで、検出電圧値Vdが過電圧判定値J1以下である場合には、CPU31は、S110の処理を繰り返すことにより、検出電圧値Vdが過電圧判定値J1を超えるまで待機する。
【0057】
そして、検出電圧値Vdが過電圧判定値J1を超えると、CPU31は、S120にて、U相第1固定通電設定を行う。U相第1固定通電設定は、スイッチング素子41,45をオン状態にし、スイッチング素子42,43,44,46をオフ状態にすることである。後述するU相第2固定通電設定は、スイッチング素子41,46をオン状態にし、スイッチング素子42,43,44,45をオフ状態にすることである。以下、U相第1固定通電設定およびU相第2固定通電設定をまとめてU相固定通電設定という。
【0058】
CPU31は、S130にて、モータ21への通電を行う。これにより、U相とV相との間で電流が流れる。
CPU31は、S140にて、検出電圧値Vdが正常判定値J2未満であるか否かを判断する。ここで、検出電圧値Vdが正常判定値J2未満である場合には、CPU31は、S150にて、モータ21への通電を停止し、サージ対応処理を終了する。
【0059】
一方、検出電圧値Vdが正常判定値J2以上である場合には、CPU31は、S160にて、ワイパ出力軸22の角度Θの絶対値が予め設定された回転制限角度Θaを超えているか否かを判断する。ここで、角度Θの絶対値が回転制限角度Θa以下である場合には、CPU31は、S180に移行する。
【0060】
一方、角度Θの絶対値が回転制限角度Θaを超えている場合には、CPU31は、S170にて、U相固定通電設定を切り替え、S180に移行する。具体的には、CPU31は、現時点のU相固定通電設定がU相第1固定通電設定である場合には、U相第2固定通電設定を行い、現時点のU相固定通電設定がU相第2固定通電設定である場合には、U相第1固定通電設定を行う。
【0061】
S180に移行すると、CPU31は、S130でモータ21への通電を開始してから予め設定された継続時間Tcが経過したか否かを判断する。
ここで、モータ21への通電を開始してから継続時間Tcが経過していない場合には、CPU31は、S130に移行する。一方、モータ21への通電を開始してから継続時間Tcが経過した場合には、CPU31は、S190にて、モータ21への通電を停止する。
【0062】
CPU31は、S200にて、予め設定された待機時間Twだけ待機する。CPU31は、S210にて、検出電圧値Vdが過電圧判定値J1を超えているか否かを判断する。ここで、検出電圧値Vdが過電圧判定値J1を超えている場合には、CPU31は、S130に移行する。一方、検出電圧値Vdが過電圧判定値J1以下である場合には、CPU31は、サージ対応処理を終了する。
【0063】
次に、制御部11によるモータ21の制御を説明する。
図6のタイミングチャートTC11は、サージの電圧の時間変化を示す。タイミングチャートTC12は、検出電圧値Vdの時間変化を示す。タイミングチャートTC13は、モータ21への通電のオンまたはオフの時間変化を示す。タイミングチャートTC14は、ロータ51の回転角度の時間変化を示す。タイミングチャートTC15は、ワイパ出力軸22の角度の時間変化を示す。
【0064】
タイミングチャートTC11,TC12,TC13はそれぞれ、タイミングチャートTC1,TC2,TC3と同一である。このため、タイミングチャートTC11,TC12,TC13の説明を省略する。
【0065】
タイミングチャートTC14は、モータ21への通電が行われる時刻t2から時刻t3までにおけるロータ51の回転角度の時間変化を示す。タイミングチャートTC15は、時刻t2から時刻t3までにおけるワイパ出力軸22の角度の時間変化を示す。
【0066】
図6に示すように、モータ21への通電が開始された時刻t2から、ロータ51の回転角度が徐々に大きくなり、これに伴い、ワイパ出力軸22の角度Θが徐々に大きくなる。これは、U相第1固定通電設定が行われたことにより、U相とV相との間で電流が流れるためである。
【0067】
そして、時刻t21で角度Θが回転制限角度Θaより大きくなると、ロータ51の回転角度が徐々に小さくなり、これに伴い、ワイパ出力軸22の角度Θが徐々に小さくなる。これは、時刻t21にU相第2固定通電設定が行われたことにより、U相とW相との間で電流が流れるためである。
【0068】
そして、時刻t22で角度Θが回転制限角度-Θaより小さくなると、ロータ51の回転角度が徐々に大きくなり、これに伴い、ワイパ出力軸22の角度Θが徐々に大きくなる。これは、時刻t22にU相第1固定通電設定が行われたことにより、U相とV相との間で電流が流れるためである。
【0069】
そして、時刻t23で角度Θが回転制限角度Θaより大きくなると、ロータ51の回転角度が徐々に小さくなり、これに伴い、ワイパ出力軸22の角度Θが徐々に小さくなる。これは、時刻t23にU相第2固定通電設定が行われたことにより、U相とW相との間で電流が流れるためである。
【0070】
同様にして、時刻t24,t26,t28でU相第1固定通電設定が行われ、時刻t25,t27でU相第2固定通電設定が行われることにより、U相第1固定通電UE1とU相第2固定通電UE2とが交互に繰り返される。U相第1固定通電は、U相とV相との間の通電を継続することである。U相第2固定通電は、U相とW相との間の通電を継続することである。これにより、モータ21への通電が行われても、ワイパ出力軸22の角度の変化を回転制限角度Θa以下にすることができる。
【0071】
このように構成されたワイパ制御装置1は、駆動部12と、制御部11と、電圧検出部13とを備える。
駆動部12は、モータ21の端子TU,TV,TWのそれぞれについて、端子TU,TV,TWとバッテリ3の正極側との間に配置されるスイッチング素子41,42,43と、端子TU,TV,TWとバッテリ3の負極側との間に配置されるスイッチング素子44,45,46とを有する三相ブリッジ回路を備えてモータ21に三相交流電流を供給するように構成される。
【0072】
制御部11は、検出電圧値Vdが予め設定された過電圧判定値J1を超えると、スイッチング素子41をオン状態に固定して、スイッチング素子45,46の何れか一方がオン状態となるようにスイッチング素子45,46のオン状態とオフ状態とを順次切り替えてモータ21への通電を制御するように構成される。
【0073】
このようにワイパ制御装置1は、サージが発生してバッテリ3の電圧値が過電圧判定値J1を超えた場合に、モータ21の正回転と逆回転とを交互に繰り返すことにより、サージに起因した過電流をモータ21に流すことができる。これにより、ワイパ制御装置1は、サージが発生したときに、ワイパ制御装置1を構成する回路の素子に素子耐圧を超える電圧が印加されてしまう事態の発生を抑制することができ、ワイパ制御装置1を構成する回路の破損を抑制することできるため、サージに対する信頼性を向上させることができる。なお、ワイパ制御装置1は、サージが発生したときにモータ21の正回転と逆回転とを交互に繰り返すことによりワイパブレード23の移動範囲を必要最小限に抑えることができるため、車両の走行中に突然ワイパブレード23が動作を開始して運転者の視界を遮ってしまうという事態の発生を抑制することができる。
【0074】
以上説明した実施形態において、スイッチング素子41,42,43はハイサイドスイッチング素子に相当し、スイッチング素子44,45,46はローサイドスイッチング素子に相当する。
【0075】
また、S110~S210は固定通電部としての処理に相当し、スイッチング素子41は通電対象ハイサイドスイッチング素子に相当し、スイッチング素子45は第1通電対象ローサイドスイッチング素子に相当し、スイッチング素子46は第2通電対象ローサイドスイッチング素子に相当する。
【0076】
[第3実施形態]
以下に本開示の第3実施形態を図面とともに説明する。なお第3実施形態では、第2実施形態と異なる部分を説明する。共通する構成については同一の符号を付す。
【0077】
第3実施形態のワイパ制御装置1は、サージ対応処理が変更された点が第2実施形態と異なる。
第3実施形態のサージ対応処理は、S170の代わりにS175の処理を実行する点が第2実施形態と異なる。
【0078】
すなわち、
図7に示すように、S160にて角度Θの絶対値が回転制限角度Θaを超えている場合には、CPU31は、S175にて、固定通電設定を切り替え、S180に移行する。
【0079】
具体的には、CPU31は、現時点の固定通電設定がU相第1固定通電設定である場合には、U相第2固定通電設定を行い、現時点の固定通電設定がU相第2固定通電設定である場合には、V相第1固定通電設定を行う。
【0080】
またCPU31は、現時点の固定通電設定がV相第1固定通電設定である場合には、V相第2固定通電設定を行い、現時点の固定通電設定がV相第2固定通電設定である場合には、W相第1固定通電設定を行う。
【0081】
またCPU31は、現時点の固定通電設定がW相第1固定通電設定である場合には、W相第2固定通電設定を行い、現時点の固定通電設定がW相第2固定通電設定である場合には、U相第1固定通電設定を行う。
【0082】
V相第1固定通電設定は、スイッチング素子42,44をオン状態にし、スイッチング素子41,43,45,46をオフ状態にすることである。V相第2固定通電設定は、スイッチング素子42,46をオン状態にし、スイッチング素子41,43,44,45をオフ状態にすることである。
【0083】
W相第1固定通電設定は、スイッチング素子43,44をオン状態にし、スイッチング素子41,42,45,46をオフ状態にすることである。W相第2固定通電設定は、スイッチング素子43,45をオン状態にし、スイッチング素子41,42,44,46をオフ状態にすることである。
【0084】
次に、制御部11によるモータ21の制御を説明する。
図8のタイミングチャートTC21は、サージの電圧の時間変化を示す。タイミングチャートTC22は、検出電圧値Vdの時間変化を示す。タイミングチャートTC23は、モータ21への通電のオンまたはオフの時間変化を示す。タイミングチャートTC24は、ロータ51の回転角度の時間変化を示す。タイミングチャートTC25は、ワイパ出力軸22の角度の時間変化を示す。
【0085】
タイミングチャートTC21,TC22,TC23はそれぞれ、タイミングチャートTC1,TC2,TC3と同一である。このため、タイミングチャートTC21,TC22,TC23の説明を省略する。
【0086】
タイミングチャートTC24は、モータ21への通電が行われる時刻t2から時刻t3までにおけるロータ51の回転角度の時間変化を示す。タイミングチャートTC25は、時刻t2から時刻t3までにおけるワイパ出力軸22の角度の時間変化を示す。
【0087】
図8に示すように、モータ21への通電が開始された時刻t2から、ロータ51の回転角度が徐々に大きくなり、これに伴い、ワイパ出力軸22の角度Θが徐々に大きくなる。これは、U相第1固定通電設定が行われたことにより、U相とV相との間で電流が流れるためである。
【0088】
そして、時刻t21で角度Θが回転制限角度Θaより大きくなると、ロータ51の回転角度が徐々に小さくなり、これに伴い、ワイパ出力軸22の角度Θが徐々に小さくなる。これは、時刻t21にU相第2固定通電設定が行われたことにより、U相とW相との間で電流が流れるためである。
【0089】
そして、時刻t22で角度Θが回転制限角度-Θaより小さくなると、ロータ51の回転角度が徐々に大きくなり、これに伴い、ワイパ出力軸22の角度Θが徐々に大きくなる。これは、時刻t22にV相第1固定通電設定が行われたことにより、V相とU相との間で電流が流れるためである。
【0090】
そして、時刻t23で角度Θが回転制限角度Θaより大きくなると、ロータ51の回転角度が徐々に小さくなり、これに伴い、ワイパ出力軸22の角度Θが徐々に小さくなる。これは、時刻t23にV相第2固定通電設定が行われたことにより、V相とW相との間で電流が流れるためである。
【0091】
そして、時刻t24で角度Θが回転制限角度-Θaより小さくなると、ロータ51の回転角度が徐々に大きくなり、これに伴い、ワイパ出力軸22の角度Θが徐々に大きくなる。これは、時刻t24にW相第1固定通電設定が行われたことにより、W相とU相との間で電流が流れるためである。
【0092】
そして、時刻t25で角度Θが回転制限角度Θaより大きくなると、ロータ51の回転角度が徐々に小さくなり、これに伴い、ワイパ出力軸22の角度Θが徐々に小さくなる。これは、時刻t25にW相第2固定通電設定が行われたことにより、W相とV相との間で電流が流れるためである。
【0093】
そして、時刻t26で角度Θが回転制限角度-Θaより小さくなると、ロータ51の回転角度が徐々に大きくなり、これに伴い、ワイパ出力軸22の角度Θが徐々に大きくなる。これは、時刻t26にU相第1固定通電設定が行われたことにより、U相とV相との間で電流が流れるためである。
【0094】
そして、時刻t27で角度Θが回転制限角度Θaより大きくなると、ロータ51の回転角度が徐々に小さくなり、これに伴い、ワイパ出力軸22の角度Θが徐々に小さくなる。これは、時刻t27にU相第2固定通電設定が行われたことにより、U相とW相との間で電流が流れるためである。
【0095】
そして、時刻t28で角度Θが回転制限角度-Θaより小さくなると、ロータ51の回転角度が徐々に大きくなり、これに伴い、ワイパ出力軸22の角度Θが徐々に大きくなる。これは、時刻t28にV相第1固定通電設定が行われたことにより、V相とU相との間で電流が流れるためである。
【0096】
このように、モータ21への通電を、U相第1固定通電UE1→U相第2固定通電UE2→V相第1固定通電VE1→V相第2固定通電VE2→W相第1固定通電WE1→W相第2固定通電WE2→U相第1固定通電UE1(以下、同様)の順に切り替えることにより、モータ21への通電が行われても、ワイパ出力軸22の角度の変化を回転制限角度Θa以下にすることができる。
【0097】
このように構成されたワイパ制御装置1は、固定通電において、オン状態にするハイサイドスイッチを順次切り替える。これにより、ワイパ制御装置1は、1つのハイサイドスイッチに継続して電流が流れて発熱するのを抑制してスイッチング素子41~43の破損を抑制することできるため、サージに対する信頼性を更に向上させることができる。
【0098】
以上説明した実施形態において、S110~S160,S175,S180~S210は固定通電部としての処理に相当する。
以上、本開示の一実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、種々変形して実施することができる。
【0099】
本開示に記載の制御部11およびその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサおよびメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部11およびその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部11およびその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサおよびメモリと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されてもよい。制御部11に含まれる各部の機能を実現する手法には、必ずしもソフトウェアが含まれている必要はなく、その全部の機能が、一つあるいは複数のハードウェアを用いて実現されてもよい。
【0100】
上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加または置換してもよい。
【0101】
上述したワイパ制御装置1の他、当該ワイパ制御装置1を構成要素とするシステム、当該ワイパ制御装置1としてコンピュータを機能させるためのプログラム、このプログラムを記録した半導体メモリ等の非遷移的実体的記録媒体、ワイパ制御方法など、種々の形態で本開示を実現することもできる。
【符号の説明】
【0102】
1…ワイパ制御装置、2…ワイパ、3…バッテリ、11…制御部、12…駆動部、13…電圧検出部、21…モータ、23…ワイパブレード、41,42,43,44,45,46…スイッチング素子、TU,TV,TW…端子