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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129491
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】光輝塗膜及びカバー
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/28 20060101AFI20240919BHJP
   G02B 5/22 20060101ALI20240919BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240919BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20240919BHJP
   B32B 7/027 20190101ALI20240919BHJP
   C09D 5/32 20060101ALI20240919BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20240919BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20240919BHJP
【FI】
G02B5/28
G02B5/22
B32B27/00 E
B32B27/20 Z
B32B7/027
C09D5/32
C09D7/61
C09D201/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038728
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】三宅 光一
(72)【発明者】
【氏名】安藤 宏明
(72)【発明者】
【氏名】川口 滉
(72)【発明者】
【氏名】深川 鋼司
【テーマコード(参考)】
2H148
4F100
4J038
【Fターム(参考)】
2H148CA14
2H148CA24
2H148GA05
2H148GA18
2H148GA23
2H148GA24
2H148GA32
4F100AA20A
4F100AK03B
4F100AK25B
4F100AK45B
4F100AK53A
4F100AT00B
4F100BA03
4F100BA07
4F100CA02A
4F100CA23A
4F100GB07
4F100GB31
4F100JD10A
4F100JD10B
4F100JL10A
4F100JN01B
4F100JN02C
4F100JN06A
4F100JN22A
4F100JN24A
4J038DB001
4J038HA216
4J038HA446
4J038KA03
4J038KA08
4J038NA19
4J038PB08
(57)【要約】
【課題】赤外線透過性を有しつつ、光輝外観を有することができる。
【解決手段】光輝塗膜12は、赤外線透過性のベース樹脂21とベース樹脂21に添加されたフィラー22とを含む。フィラー22は、第1誘電体層と、第1誘電体層よりも屈折率の低い第2誘電体層とが交互且つ多層に積層されてなり、可視光を反射する一方、赤外線を透過させるコールドミラー薄膜である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外線透過性のベース樹脂と前記ベース樹脂に添加されたフィラーとを含む光輝塗膜であって、
前記フィラーは、第1誘電体層と、前記第1誘電体層よりも屈折率の低い第2誘電体層とが交互且つ多層に積層されてなり、可視光を反射する一方、赤外線を透過させるコールドミラー薄膜である、
光輝塗膜。
【請求項2】
粒子感の指標のG値が、3以上、11以下であり、
入射角が45°であり、受光角が25°であるときの明度の指標であるL*値をL*(25°)値とするとき、
前記L*(25°)値が、20以上100以下である、
請求項1に記載の光輝塗膜。
【請求項3】
前記G値が、3以上、6以下であり、
前記L*(25°)値が、80以上、100以下である、
請求項2に記載の光輝塗膜。
【請求項4】
前記G値が、7以上、12以下であり、
前記L*値(25°)が、20以上、60以下である、
請求項2に記載の光輝塗膜。
【請求項5】
入射角が45°であり、受光角が45°であるときの明度の指標であるL*値をL*(45°)値とするとき、
前記L*(45°)値が、10以上、50以下である、
請求項2に記載の光輝塗膜。
【請求項6】
波長が900nmである赤外線の透過率が60%以上である、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の光輝塗膜。
【請求項7】
透明基材と、
前記透明基材上に設けられた請求項1に記載の光輝塗膜と、
前記光輝塗膜における前記透明基材とは反対側の面に設けられ、可視光の透過を阻止する可視光カット層と、を備える、
カバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光輝塗膜及びカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電磁波透過性を有する光輝塗装樹脂製品が開示されている。この光輝塗装樹脂製品は、樹脂基材と、樹脂基材上に設けられた光輝性塗膜とを有する。光輝性塗膜は、アルミニウムからなる扁平状の光輝材を含む塗料を樹脂基材上に塗装することにより形成されており、ミリ波透過性を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-30075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の光輝塗装樹脂製品の場合、塗膜中にアルミニウムからなる光輝材が配合されているために、800nm~3000nmの波長の赤外線が光輝材によって反射される。このため、赤外線透過性が低下するという問題がある。
【0005】
したがって、赤外線透過性を有しつつ、光輝外観を有する光輝塗膜及びカバーが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための光輝塗膜及びカバーの各態様を記載する。
[態様1]
赤外線透過性のベース樹脂と前記ベース樹脂に添加されたフィラーとを含む光輝塗膜であって、前記フィラーは、第1誘電体層と、前記第1誘電体層よりも屈折率の低い第2誘電体層とが交互且つ多層に積層されてなり、可視光を反射する一方、赤外線を透過させるコールドミラー薄膜である、光輝塗膜。
【0007】
同構成によれば、フィラーは可視光を反射するコールドミラー薄膜であるので、フィラーによって可視光が反射されることで光輝塗膜は光輝外観を有する。また、フィラーは赤外線を透過させる光学薄膜であるので、光輝塗膜の意匠性を高めるべくフィラーの配合割合を高めた場合であっても、赤外線の透過率がほとんど低下しない。
【0008】
また、上記構成によれば、コールドミラー薄膜を構成する第1誘電体層及び第2誘電体層の積層数を適宜設定することにより、フィラーによる可視光の反射率、すなわち光輝外観と、及び赤外線の透過率とを容易に調整することができる。
【0009】
したがって、赤外線透過性を有しつつ、光輝外観を有することができる。
[態様2]
粒子感の指標であるG値が、3以上、11以下であり、入射角が45°であり、受光角が25°であるときの明度の指標であるL*値をL*(25°)値とするとき、前記L*(25°)値が、20以上100以下である、態様1に記載の光輝塗膜。
【0010】
同構成によれば、赤外線透過性を有しつつ、特にシルバー調あるいはメタリック調の光輝塗膜を具現化することができる。
[態様3]
前記G値が、3以上、6以下であり、前記L*(25°)値が、80以上、100以下である、態様2に記載の光輝塗膜。
【0011】
同構成によれば、赤外線透過性を有しつつ、特にシルバー調の光輝外観を有する光輝塗膜を具現化することができる。
[態様4]
前記G値が、7以上、12以下であり、前記L*値(25°)が、20以上、60以下である、態様2に記載の光輝塗膜。
【0012】
同構成によれば、赤外線透過性を有しつつ、特にメタリック調の光輝外観を有する光輝塗膜を具現化することができる。
[態様5]
入射角が45°であり、受光角が45°であるときの明度の指標であるL*値をL*(45°)値とするとき、前記L*(45°)値が、10以上、50以下である、態様2から態様4のいずれか一項に記載の光輝塗膜。
【0013】
同構成によれば、赤外線透過性を有しつつ、特にシルバー調あるいはメタリック調の光輝外観を有する光輝塗膜をより確実に具現化することができる。
[態様6]
波長が900nmである赤外線の透過率が60%以上である、態様1から態様5のいずれか一項に記載の光輝塗膜。
【0014】
同構成によれば、赤外線センサを前方から覆うカバーを構成する光輝塗膜として具現化することができる。
[態様7]
透明基材と、前記透明基材上に設けられた態様1から態様6のいずれか一項に記載の光輝塗膜と、前記光輝塗膜における前記透明基材とは反対側の面に設けられ、可視光の透過を阻止する可視光カット層と、を備える、カバー。
【0015】
同構成によれば、上記光輝塗膜の各々と同様な作用効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、赤外線透過性を有しつつ、光輝外観を有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、一実施形態のカバーの断面図である。
図2図2は、図1の光輝塗膜の拡大断面図である。
図3図3は、図2のフィラーの拡大断面図である。
図4図4は、光輝塗膜のフィラーの質量濃度と、波長が900nmである赤外線の透過率との関係を示すグラフである。
図5図5は、光輝塗膜のL*(25°)値と、波長が900nmである赤外線の透過率との関係を示すグラフである。
図6図6は、光輝塗膜のL*(45°)値と、波長が900nmである赤外線の透過率との関係を示すグラフである。
図7図7は、光輝塗膜のG値と、波長が900nmである赤外線の透過率との関係を示すグラフである。
図8図8は、L*(25°)値とL*(45°)値との関係を示すグラフである。
図9図9は、Si(15°)値とG値との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図1図9を参照して、光輝塗膜及びカバーを赤外線透過性の光輝塗膜及びカバーとして具体化した一実施形態について説明する。
図1に示すように、車両には、赤外線レーダ装置90が設けられている。赤外線レーダ装置90は、880nm以上、930nm以下である第1波長帯または1540nm以上、1560nm以下である第2波長帯に含まれる波長の赤外線IRを送信する。
【0019】
なお、以降において、赤外線レーダ装置90からの赤外線IRの送信方向の前方及び後方をそれぞれ単に前方及び後方として説明する。
車両には、赤外線レーダ装置90を前方から覆う赤外線透過性のカバー10が設けられている。
【0020】
カバー10は、透明基材11と、光輝塗膜12と、可視光カット層13とを備える。
透明基材11は、赤外線透過性を有する。透明基材11は、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、シクロオレフィンポリマー、樹脂ガラスなどの樹脂材料製である。本実施形態の透明基材11は、ポリカーボネート製である。
【0021】
光輝塗膜12は、透明基材11上に設けられ、赤外線透過性を有する。
可視光カット層13は、光輝塗膜12において透明基材11とは反対側の面、すなわち光輝塗膜12の後面に設けられ、可視光の透過を阻止する。
【0022】
図2に示すように、光輝塗膜12は、赤外線透過性のベース樹脂21と、ベース樹脂21に添加されたフィラー22とを含む。
光輝塗膜12は、ベース樹脂21及びフィラー22を含む塗料を透明基材11の後面に塗工されている。塗料には、必要に応じて硬化剤が用いられてもよい。
【0023】
<ベース樹脂21>
ベース樹脂21は、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン、ユリア樹脂、フェノール樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、塩化ビニル、ポリスチレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート及びメラミン樹脂からなる群から選ばれた少なくとも一種を主成分とする。なお、「主成分」とは、その材料の特性に影響を与える成分を意味し、その成分の含有量は、通常、材料全体の50質量%以上である。
【0024】
硬化剤は、ベース樹脂21の材料に応じて適宜用いられる。ベース樹脂21としてエポキシ樹脂を主成分とするものが用いられる場合、硬化剤としては、例えば、酸無水物系硬化剤、フェノール系硬化剤等が挙げられる。ベース樹脂21として、エポキシ樹脂以外のものを主成分とするものが用いられる場合、硬化剤は省略可能である。
【0025】
また、上記硬化剤としては、その目的及び用途によっては、上記酸無水物系硬化剤及びフェノール系硬化剤以外に、他の硬化剤を用いることができる。このような硬化剤としては、例えば、アミン系硬化剤、上記酸無水物系硬化剤をアルコールで部分エステル化したもの、又は、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸等のカルボン酸の硬化剤等が挙げられる。これらは、単独でもしくは2種以上併せて用いられてもよく、さらには、上記酸無水物系硬化剤及びフェノール系硬化剤と併せて用いられてもよい。
【0026】
なお、硬化剤が用いられる場合には、硬化促進剤が併用されてもよい。
<フィラー22>
図3に示すように、フィラー22は、第1誘電体層31と、第1誘電体層31よりも屈折率の低い第2誘電体層32とが交互且つ多層に積層されてなり、可視光(VL)を反射する一方、赤外線(IR)を透過させるコールドミラー薄膜である。
【0027】
本実施形態の第1誘電体層31は、二酸化チタン(TiO2)である。また、本実施形態の第2誘電体層32は、二酸化ケイ素(SiO2)である。
<メタリック調またはシルバー調の光輝外観を有するための指標>
ここで、メタリック調またはシルバー調の光輝外観を有するために必要なL*(25°)値、L*(45°)値、Si(15°)値、G値の関係について説明する。
【0028】
L*(25°)値は、入射角が45°であり、受光角が25°であるときの明度の指標のL*値である。L*(25°)値が大きいほど、白色を呈する一方、L*(25°)値が小さいほど、黒色を呈する。
【0029】
L*(45°)値は、入射角が45°であり、受光角が45°であるときの明度の指標のL*値である。L*(45°)値が大きいほど、白色を呈する一方、L*(45°)値が小さいほど、黒色を呈する。
【0030】
Si(15°)値は、入射角が15°であり、受光角が0°であるときの光輝感の指標のSi値である。Si(15°)値が大きいほど、光輝感、すなわちギラギラ感が大きくなる一方、Si(15°)値が小さいほど、光輝感が小さくなる。
【0031】
G値は、粒子感の指標である。G値が大きいほど、粒状性が大きくなる一方、G値が小さいほど、粒状性が小さくなる、すなわち微細性が大きくなる。
図8に、メタリック調またはシルバー調の光輝外観を有する既存の複数種の光輝塗膜を用いて測定したL*(25°)値とL*(45°)値との関係を示す。
【0032】
図8に示す領域Aに含まれる光輝塗膜は、メタリック調の光輝外観を有する。すなわち、光輝塗膜のL*(25°)値が20以上、60以下であり、光輝塗膜のL*(45°)値が10以上、30以下である場合には、光輝塗膜はメタリック調の光輝外観を有する。
【0033】
図8に示す領域Bに含まれる光輝路膜は、シルバー調の光輝外観を有する。すなわち、光輝塗膜のL*(25°)値が80以上、100以下であり、光輝塗膜のL*(45°)値が40以上、50以下である場合には、光輝塗膜はシルバー調の光輝外観を有する。
【0034】
図9に、メタリック調またはシルバー調の光輝外観を有する既存の複数種の光輝塗膜を用いて測定したSi(15°)値とG値との関係を示す。
図9に示す領域Cに含まれる光輝塗膜は、メタリック調の光輝外観を有する。すなわち、光輝塗膜のSi(15°)値が15以上、25以下であり、光輝塗膜のG値が7以上、11以下である場合には、光輝塗膜はメタリック調の光輝外観を有する。
【0035】
図9に示す領域Dに含まれる光輝塗膜は、シルバー調の光輝外観を有する。すなわち、光輝塗膜のSi(15°)値が5以上、14以下であり、光輝塗膜のG値が3以上、6以下である場合には、光輝塗膜はシルバー調の光輝外観を有する。
【0036】
以上のことから、光輝塗膜12がメタリック調の光輝外観を有する上では、光輝塗膜12は、以下の特性を有することが好ましい。すなわち、L*(25°)値が、20以上、60以下であり、L*(45°)値が、10以上、30以下であり、Si*(15°)値が、15以上、25以下であり、G値が、7以上、11以下であることが好ましい。
【0037】
また、光輝塗膜12がシルバー調の光輝外観を有する上では、光輝塗膜12は、以下の特性を有することが好ましい。すなわち、L*(25°)値が、80以上、100以下であり、L*(45°)値が、40以上、50以下であり、Si*(15°)値が、4以上、14以下であり、G値が、3以上、6以下であることが好ましい。
【0038】
光輝塗膜12がメタリック調またはシルバー調の光輝外観を有する上で、光輝塗膜12は、以下の特性を有することが好ましい。すなわち、L*(25°)値が、20以上、100以下であり、L*(45°)値が、10以上、50以下であり、Si*(15°)値が、5以上、25以下であり、G値が、3以上、11以下であることが好ましい。
【0039】
<実施例及び比較例>
次に、実施例及び比較例について説明する。
実施例1は、第1誘電体層31と第2誘電体層32とが交互に積層して形成された20層の層構造を有するフィラー22を含む本実施形態の光輝塗膜12である。
【0040】
実施例2は、第1誘電体層31と第2誘電体層32とが交互に積層して形成された25層の層構造を有するフィラー22を含む本実施形態の光輝塗膜12である。
比較例1は、本実施形態のベース樹脂21と、ベース樹脂21に添加されたアルミフレークからなるフィラーを含む光輝塗膜である。
【0041】
比較例2は、本実施形態のベース樹脂21と、ベース樹脂21に添加された蒸着アルミニウムからなるフィラーを含む光輝塗膜である。
比較例3は、本実施形態のベース樹脂21と、ベース樹脂21に添加されたガラスフレークからなるフィラーを含む光輝塗膜である。
【0042】
比較例4は、本実施形態のベース樹脂21と、ベース樹脂21に添加されたマイカからなるフィラーを含む光輝塗膜である。
赤外線レーダ装置90を前方から覆う赤外線透過性のカバー10に用いられる光輝塗膜12においては、波長が900nmである赤外線の透過率が60%以上であることが好ましい。
【0043】
図4に、光輝塗膜のフィラーの質量濃度(%)と、波長が900nmである赤外線の透過率(%)との関係を示す。
図4に示すように、実施例1では、フィラー22の質量濃度が2%の場合には、透過率が85%である。フィラー22の質量濃度が9%の場合には、透過率が72%である。フィラー22の質量濃度が24%の場合には、透過率が48%である。
【0044】
実施例2では、フィラー22の質量濃度が5%の場合には、透過率が85%である。フィラー22の質量濃度が15%の場合には、透過率が84%である。
一方、比較例1~4では、フィラーの質量濃度が0%の場合には、透過率が90%程であるのに対し、フィラーが添加されることで透過率が大幅に低下する。比較例1~4のうち最も透過率が高い比較例4の場合でも、フィラーの質量濃度が4%の場合に、透過率が63%である。
【0045】
図5に、光輝塗膜のL*(25°)値と、波長が900nmである赤外線の透過率(%)との関係を示す。
図5に示すように、実施例1及び実施例2では、透過率60%以上において、L*(25°)値が22以上であり、60以下となる。
【0046】
図6に、光輝塗膜のL*(45°)値と、波長が900nmである赤外線の透過率(%)との関係を示す。
図6に示すように、実施例1及び実施例2では、透過率60%以上において、L*(45°)値が17以上であり、45以下となる。
【0047】
図7に、光輝塗膜のG値と、波長が900nmである赤外線の透過率(%)との関係を示す。
図7に示すように、実施例1では、透過率60%以上において、G値が17以上であり、27以下となる。また、実施例2では、透過率60%以上において、G値が46以上、62以下となる。
【0048】
なお、多角度分光測色計BYK-maci(BYK社製)を用いてL*(25°)値、L*(45°)値、Si(15°)値、G値を測定した。
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
【0049】
(1)光輝塗膜12は、赤外線透過性のベース樹脂21とベース樹脂21に添加されたフィラー22とを含む。フィラー22は、第1誘電体層31と、第1誘電体層31よりも屈折率の低い第2誘電体層32とが交互且つ多層に積層されてなり、可視光を反射する一方、赤外線を透過させるコールドミラー薄膜である。
【0050】
こうした構成によれば、フィラー22は可視光を反射するコールドミラー薄膜であるので、フィラー22によって可視光が反射されることで光輝塗膜12は光輝外観を有する。また、フィラー22は赤外線を透過させる光学薄膜であるので、光輝塗膜12の意匠性を高めるべくフィラー22の配合割合を高めた場合であっても、赤外線の透過率がほとんど低下しない。
【0051】
また、上記構成によれば、コールドミラー薄膜を構成する第1誘電体層31及び第2誘電体層32の積層数を適宜設定することにより、フィラー22による可視光の反射率、すなわち光輝外観と、赤外線の透過率とを容易に調整することができる。
【0052】
したがって、赤外線透過性を有しつつ、光輝外観を有することができる。
(2)光輝塗膜12のG値が、3以上、11以下である。光輝塗膜12のL*(25°)値が、20以上100以下である。
【0053】
こうした構成によれば、赤外線透過性を有しつつ、特にシルバー調あるいはメタリック調の光輝外観を有する光輝塗膜12を具現化することができる。
(3)光輝塗膜12のG値が、3以上、6以下である。光輝塗膜12のL*(25°)値が、80以上、100以下である。
【0054】
こうした構成によれば、赤外線透過性を有しつつ、特にシルバー調の光輝外観を有する光輝塗膜12を具現化することができる。
(4)光輝塗膜12のG値が、7以上、12以下である。光輝塗膜12のL*値(25°)が、20以上、60以下である。
【0055】
こうした構成によれば、赤外線透過性を有しつつ、特にメタリック調の光輝外観を有する光輝塗膜12を具現化することができる。
(5)光輝塗膜12のL*(45°)値が、10以上、50以下である。
【0056】
こうした構成によれば、赤外線透過性を有しつつ、特にシルバー調あるいはメタリック調の光輝外観を有する光輝塗膜12をより確実に具現化することができる。
(6)波長が900nmである赤外線の透過率が60%以上である。
【0057】
こうした構成によれば、赤外線レーダ装置90を前方から覆うカバー10を構成する光輝塗膜12として具現化することができる。
(7)透明基材11と、透明基材11上に設けられた光輝塗膜12と、光輝塗膜12における透明基材11とは反対側の面に設けられ、可視光の透過を阻止する可視光カット層13とを備える。
【0058】
こうした構成によれば、上記(1)~(6)と同様な作用効果を奏することができる。
<変形例>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0059】
・コールドミラー薄膜を構成する第1誘電体層31及び第2誘電体層32は、二酸化チタン及び二酸化ケイ素に限定されない。他に例えば、第1誘電体層31及び第2誘電体層32として、五酸化タンタル(Ta2O5)及び二酸化ケイ素を採用することや、硫化亜鉛(ZnS)及びフッ化マグネシウム(MgF2)を採用することもできる。
【0060】
・光輝塗膜は、赤外線透過性及びミリ波透過性の双方を有するものとして具体化することもできる。また、カバーは、赤外線透過性及びミリ波透過性の双方を有する光輝塗膜を有するものとして具体化することもできる。
【符号の説明】
【0061】
10…カバー
11…透明基材
12…光輝塗膜
13…可視光カット層
21…ベース樹脂
22…フィラー
31…第1誘電体層
32…第2誘電体層
90…赤外線レーダ装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9