(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129504
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】林相区分図作成装置、林相区分図作成方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06T 7/00 20170101AFI20240919BHJP
G06V 10/774 20220101ALI20240919BHJP
G06T 11/60 20060101ALI20240919BHJP
G09B 29/00 20060101ALI20240919BHJP
【FI】
G06T7/00 640
G06V10/774
G06T7/00 350B
G06T11/60 300
G09B29/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038748
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
(71)【出願人】
【識別番号】517220036
【氏名又は名称】精密林業計測株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】加藤 正人
(72)【発明者】
【氏名】トウ ソウキュウ
(72)【発明者】
【氏名】竹中 悠輝
【テーマコード(参考)】
2C032
5B050
5L096
【Fターム(参考)】
2C032HA02
2C032HC21
5B050AA07
5B050BA02
5B050BA04
5B050BA17
5B050DA01
5B050EA06
5B050EA07
5L096AA09
5L096CA02
5L096FA66
5L096GA10
5L096GA34
5L096GA51
5L096KA04
(57)【要約】
【課題】森林域に含まれる単木の樹種分類及び林相区分を自動で行う。
【解決手段】林相区分図作成装置は、取得した所定森林域点群データを用いた単木の樹冠精密解析の結果に対する調査員の樹種分類の結果と調査員の所定の森林域の現地調査の結果に基づいて作成された所定の森林域内の単木の樹種データを取得し、所定森林域点群データから抽出した単木点群データに樹種情報を加えるラベリング処理を樹種データに基づき実行してAIモデルの学習用データセットを作成し、学習用データセットをAIモデルの訓練用データセットと検証用データセットに振り分け、訓練及び評価が実行された後のAIモデルを用い調査対象森林域の3次元点群データに基づき調査対象森林域に含まれる単木をスギ、ヒノキ、カラマツ、アカマツ、広葉樹に樹種分類し、その結果に基づきレーザ林相図を作成し、レーザ林相図に含まれる複数の林相の境界を作成する。
【選択図】
図24
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の森林域に対してレーザ光を照射することによって得られた3次元の点群データである所定森林域点群データを取得すると共に、前記所定森林域点群データを用いて行われた前記所定の森林域に含まれる複数の単木のそれぞれの樹冠の精密な解析の結果である精密単木樹冠解析結果に対する調査員による樹種分類の結果と、調査員による前記所定の森林域の現地調査の結果とに基づいて作成された前記所定の森林域に含まれる複数の単木のそれぞれの樹種を示す樹種データを取得するデータ取得部と、
前記データ取得部によって取得された前記所定森林域点群データから、前記所定の森林域に含まれる複数の単木のそれぞれの点群データである単木点群データを抽出すると共に、抽出された前記単木点群データに対して樹種を示す情報を加えるラベリング処理を、前記データ取得部によって取得された前記樹種データに基づいて実行することによって、AIモデルの学習に用いられる学習用データセットを作成するラベリング処理部と、
前記ラベリング処理部によって作成された前記学習用データセットを、少なくとも、前記AIモデルの訓練に用いられる訓練用データセットと、前記AIモデルの評価に用いられる検証用データセットとに振り分けるデータセット作成部と、
前記データセット作成部によって作成された前記訓練用データセットを用いて前記AIモデルの訓練を実行すると共に、前記データセット作成部によって作成された前記検証用データセットを用いて前記AIモデルの評価を実行する訓練実行部と、
訓練及び評価が実行された後の前記AIモデルを用いることにより、調査対象森林域に対してレーザ光を照射することによって得られた3次元の点群データである調査対象森林域点群データに基づいて、前記調査対象森林域に含まれる複数の単木のそれぞれの樹種分類を実行すると共に、前記調査対象森林域に含まれる複数の単木のそれぞれの樹種分類の結果に基づいて前記調査対象森林域のレーザ林相図を作成するレーザ林相図作成部と、
前記レーザ林相図作成部によって作成された前記レーザ林相図に含まれる複数の林相の境界を作成する林相境界作成部とを備え、
前記レーザ林相図作成部は、訓練及び評価が実行された後の前記AIモデルを用いることにより、前記調査対象森林域に含まれる複数の単木のそれぞれを、スギ、ヒノキ、カラマツ、アカマツ及び広葉樹のいずれかに樹種分類する、
林相区分図作成装置。
【請求項2】
前記レーザ林相図作成部は、前記調査対象森林域に含まれる複数の単木のそれぞれの樹種分類を実行した後に、前記調査対象森林域に含まれる孤立木を削除するマスク処理を実行して前記レーザ林相図を作成し、
前記孤立木とは、前記孤立木から所定距離の範囲内に前記孤立木と同一の樹種の単木が存在しない単木である、
請求項1に記載の林相区分図作成装置。
【請求項3】
前記ラベリング処理では、抽出された前記単木点群データのファイル名に樹種名が含められる、
請求項1に記載の林相区分図作成装置。
【請求項4】
前記訓練実行部によって実行される前記AIモデルの訓練では、樹種ごとの前記単木点群データの樹冠形状を前記AIモデルに学習させる、
請求項1に記載の林相区分図作成装置。
【請求項5】
前記データセット作成部は、前記ラベリング処理部によって作成された前記学習用データセットを、前記訓練用データセットと、前記検証用データセットと、前記AIモデルを前記調査対象森林域に適用できるか否かの判断に用いられるテスト用データセットとに振り分ける、
請求項1に記載の林相区分図作成装置。
【請求項6】
林相区分図作成装置が、所定の森林域に対してレーザ光を照射することによって得られた3次元の点群データである所定森林域点群データを取得すると共に、前記林相区分図作成装置が、前記所定森林域点群データを用いて行われた前記所定の森林域に含まれる複数の単木のそれぞれの樹冠の精密な解析の結果である精密単木樹冠解析結果に対する調査員による樹種分類の結果と、調査員による前記所定の森林域の現地調査の結果とに基づいて作成された前記所定の森林域に含まれる複数の単木のそれぞれの樹種を示す樹種データを取得するデータ取得ステップと、
前記林相区分図作成装置が、前記データ取得ステップにおいて取得された前記所定森林域点群データから、前記所定の森林域に含まれる複数の単木のそれぞれの点群データである単木点群データを抽出すると共に、抽出された前記単木点群データに対して樹種を示す情報を加えるラベリング処理を、前記データ取得ステップにおいて取得された前記樹種データに基づいて実行することによって、AIモデルの学習に用いられる学習用データセットを作成するラベリング処理ステップと、
前記林相区分図作成装置が、前記ラベリング処理ステップにおいて作成された前記学習用データセットを、少なくとも、前記AIモデルの訓練に用いられる訓練用データセットと、前記AIモデルの評価に用いられる検証用データセットとに振り分けるデータセット作成ステップと、
前記林相区分図作成装置が、前記データセット作成ステップにおいて作成された前記訓練用データセットを用いて前記AIモデルの訓練を実行すると共に、前記データセット作成ステップにおいて作成された前記検証用データセットを用いて前記AIモデルの評価を実行する訓練実行ステップと、
前記林相区分図作成装置が、訓練及び評価が実行された後の前記AIモデルを用いることにより、調査対象森林域に対してレーザ光を照射することによって得られた3次元の点群データである調査対象森林域点群データに基づいて、前記調査対象森林域に含まれる複数の単木のそれぞれの樹種分類を実行すると共に、前記調査対象森林域に含まれる複数の単木のそれぞれの樹種分類の結果に基づいて前記調査対象森林域のレーザ林相図を作成するレーザ林相図作成ステップと、
前記林相区分図作成装置が、前記レーザ林相図作成ステップにおいて作成された前記レーザ林相図に含まれる複数の林相の境界を作成する林相境界作成ステップとを備え、
前記レーザ林相図作成ステップでは、訓練及び評価が実行された後の前記AIモデルを用いることにより、前記調査対象森林域に含まれる複数の単木のそれぞれが、スギ、ヒノキ、カラマツ、アカマツ及び広葉樹のいずれかに樹種分類される、
林相区分図作成方法。
【請求項7】
コンピュータに、
所定の森林域に対してレーザ光を照射することによって得られた3次元の点群データである所定森林域点群データを取得すると共に、前記所定森林域点群データを用いて行われた前記所定の森林域に含まれる複数の単木のそれぞれの樹冠の精密な解析の結果である精密単木樹冠解析結果に対する調査員による樹種分類の結果と、調査員による前記所定の森林域の現地調査の結果とに基づいて作成された前記所定の森林域に含まれる複数の単木のそれぞれの樹種を示す樹種データを取得するデータ取得ステップと、
前記データ取得ステップにおいて取得された前記所定森林域点群データから、前記所定の森林域に含まれる複数の単木のそれぞれの点群データである単木点群データを抽出すると共に、抽出された前記単木点群データに対して樹種を示す情報を加えるラベリング処理を、前記データ取得ステップにおいて取得された前記樹種データに基づいて実行することによって、AIモデルの学習に用いられる学習用データセットを作成するラベリング処理ステップと、
前記ラベリング処理ステップにおいて作成された前記学習用データセットを、少なくとも、前記AIモデルの訓練に用いられる訓練用データセットと、前記AIモデルの評価に用いられる検証用データセットとに振り分けるデータセット作成ステップと、
前記データセット作成ステップにおいて作成された前記訓練用データセットを用いて前記AIモデルの訓練を実行すると共に、前記データセット作成ステップにおいて作成された前記検証用データセットを用いて前記AIモデルの評価を実行する訓練実行ステップと、
訓練及び評価が実行された後の前記AIモデルを用いることにより、調査対象森林域に対してレーザ光を照射することによって得られた3次元の点群データである調査対象森林域点群データに基づいて、前記調査対象森林域に含まれる複数の単木のそれぞれの樹種分類を実行すると共に、前記調査対象森林域に含まれる複数の単木のそれぞれの樹種分類の結果に基づいて前記調査対象森林域のレーザ林相図を作成するレーザ林相図作成ステップと、
前記レーザ林相図作成ステップにおいて作成された前記レーザ林相図に含まれる複数の林相の境界を作成する林相境界作成ステップとを実行させるためのプログラムであって、
前記レーザ林相図作成ステップでは、訓練及び評価が実行された後の前記AIモデルを用いることにより、前記調査対象森林域に含まれる複数の単木のそれぞれが、スギ、ヒノキ、カラマツ、アカマツ及び広葉樹のいずれかに樹種分類される、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、林相区分図作成装置、林相区分図作成方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
森林は、温室効果ガスの吸収源として、2050年カーボンニュートラルの実現に向けて不可欠な役割を担っており、ESG(環境・社会・ガバナンス)投資の流れが加速する中で、投資の関心が高まっている。一方、国内の森林は、所有者、境界の不明確な森林が多く、国土調査法に基づき自治体が行う地籍調査の進捗率は30%と低い。森林境界が不明確で、資源内容(樹種や本数、蓄積)の情報整備も遅れており、森林管理と林業生産を行う上で大きな課題である。
【0003】
特許文献1には、航空レーザ測量データのみから樹木の分布を把握できる植生図を作成する技術について記載されている。特許文献1に記載された技術では、樹木の分布を把握できる植生図を作成するために用いられる航空レーザ測量データに、航空機から地上までの距離を示すデータと、地上からのレーザ反射パルスの強度を示すデータとが含まれる。
特許文献1に記載された技術では、樹木の分布を把握できる植生図を作成するために地上からのレーザ反射パルスの強度を示すデータが用いられるが、地上からのレーザ反射パルスの強度を示すデータを用いる必要なく、森林域に含まれる複数の単木のそれぞれの樹種分類を自動で行い、林相区分を自動で行うことができる技術が望まれる。
【0004】
特許文献2には、航空レーザ計測データを用いて林相解析を行う技術について記載されている。特許文献2に記載された技術では、航空レーザ計測データから森林の林相の違いをカラー画像で可視化することによって、林相解析が行われる。
ところで、特許文献2に記載された技術では、林相解析を行うために、航空レーザ計測データから反射パルス指標、反射強度等の特徴量が抽出される。反射パルス指標、反射強度等の特徴量を用いる必要なく、森林域に含まれる複数の単木のそれぞれの樹種分類を自動で行い、林相区分を自動で行うことができる技術が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5592855号公報
【特許文献2】特許第6207968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した点に鑑み、本発明は、森林域に含まれる複数の単木のそれぞれの樹種分類を自動で行い、林相区分を自動で行うことができる林相区分図作成装置、林相区分図作成方法及びプログラムを提供することを目的とする。
詳細には、本発明は、地上からのレーザ反射パルスの強度を示すデータを用いたり、反射パルス指標、反射強度等の特徴量を用いたりする必要なく、森林域に含まれる複数の単木のそれぞれの樹種分類を自動で行い、林相区分を自動で行うことができる林相区分図作成装置、林相区分図作成方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、所定の森林域に対してレーザ光を照射することによって得られた3次元の点群データである所定森林域点群データを取得すると共に、前記所定森林域点群データを用いて行われた前記所定の森林域に含まれる複数の単木のそれぞれの樹冠の精密な解析の結果である精密単木樹冠解析結果に対する調査員による樹種分類の結果と、調査員による前記所定の森林域の現地調査の結果とに基づいて作成された前記所定の森林域に含まれる複数の単木のそれぞれの樹種を示す樹種データを取得するデータ取得部と、前記データ取得部によって取得された前記所定森林域点群データから、前記所定の森林域に含まれる複数の単木のそれぞれの点群データである単木点群データを抽出すると共に、抽出された前記単木点群データに対して樹種を示す情報を加えるラベリング処理を、前記データ取得部によって取得された前記樹種データに基づいて実行することによって、AIモデルの学習に用いられる学習用データセットを作成するラベリング処理部と、前記ラベリング処理部によって作成された前記学習用データセットを、少なくとも、前記AIモデルの訓練に用いられる訓練用データセットと、前記AIモデルの評価に用いられる検証用データセットとに振り分けるデータセット作成部と、前記データセット作成部によって作成された前記訓練用データセットを用いて前記AIモデルの訓練を実行すると共に、前記データセット作成部によって作成された前記検証用データセットを用いて前記AIモデルの評価を実行する訓練実行部と、訓練及び評価が実行された後の前記AIモデルを用いることにより、調査対象森林域に対してレーザ光を照射することによって得られた3次元の点群データである調査対象森林域点群データに基づいて、前記調査対象森林域に含まれる複数の単木のそれぞれの樹種分類を実行すると共に、前記調査対象森林域に含まれる複数の単木のそれぞれの樹種分類の結果に基づいて前記調査対象森林域のレーザ林相図を作成するレーザ林相図作成部と、前記レーザ林相図作成部によって作成された前記レーザ林相図に含まれる複数の林相の境界を作成する林相境界作成部とを備え、前記レーザ林相図作成部は、訓練及び評価が実行された後の前記AIモデルを用いることにより、前記調査対象森林域に含まれる複数の単木のそれぞれを、スギ、ヒノキ、カラマツ、アカマツ及び広葉樹のいずれかに樹種分類する、林相区分図作成装置である。
【0008】
本発明の一態様の林相区分図作成装置では、前記レーザ林相図作成部は、前記調査対象森林域に含まれる複数の単木のそれぞれの樹種分類を実行した後に、前記調査対象森林域に含まれる孤立木を削除するマスク処理を実行して前記レーザ林相図を作成し、前記孤立木とは、前記孤立木から所定距離の範囲内に前記孤立木と同一の樹種の単木が存在しない単木であってもよい。
【0009】
本発明の一態様の林相区分図作成装置では、前記ラベリング処理では、抽出された前記単木点群データのファイル名に樹種名が含められてもよい。
【0010】
本発明の一態様の林相区分図作成装置では、前記訓練実行部によって実行される前記AIモデルの訓練では、樹種ごとの前記単木点群データの樹冠形状を前記AIモデルに学習させてもよい。
【0011】
本発明の一態様の林相区分図作成装置では、前記データセット作成部は、前記ラベリング処理部によって作成された前記学習用データセットを、前記訓練用データセットと、前記検証用データセットと、前記AIモデルを前記調査対象森林域に適用できるか否かの判断に用いられるテスト用データセットとに振り分けてもよい。
【0012】
本発明の一態様は、林相区分図作成装置が、所定の森林域に対してレーザ光を照射することによって得られた3次元の点群データである所定森林域点群データを取得すると共に、前記林相区分図作成装置が、前記所定森林域点群データを用いて行われた前記所定の森林域に含まれる複数の単木のそれぞれの樹冠の精密な解析の結果である精密単木樹冠解析結果に対する調査員による樹種分類の結果と、調査員による前記所定の森林域の現地調査の結果とに基づいて作成された前記所定の森林域に含まれる複数の単木のそれぞれの樹種を示す樹種データを取得するデータ取得ステップと、前記林相区分図作成装置が、前記データ取得ステップにおいて取得された前記所定森林域点群データから、前記所定の森林域に含まれる複数の単木のそれぞれの点群データである単木点群データを抽出すると共に、抽出された前記単木点群データに対して樹種を示す情報を加えるラベリング処理を、前記データ取得ステップにおいて取得された前記樹種データに基づいて実行することによって、AIモデルの学習に用いられる学習用データセットを作成するラベリング処理ステップと、前記林相区分図作成装置が、前記ラベリング処理ステップにおいて作成された前記学習用データセットを、少なくとも、前記AIモデルの訓練に用いられる訓練用データセットと、前記AIモデルの評価に用いられる検証用データセットとに振り分けるデータセット作成ステップと、前記林相区分図作成装置が、前記データセット作成ステップにおいて作成された前記訓練用データセットを用いて前記AIモデルの訓練を実行すると共に、前記データセット作成ステップにおいて作成された前記検証用データセットを用いて前記AIモデルの評価を実行する訓練実行ステップと、前記林相区分図作成装置が、訓練及び評価が実行された後の前記AIモデルを用いることにより、調査対象森林域に対してレーザ光を照射することによって得られた3次元の点群データである調査対象森林域点群データに基づいて、前記調査対象森林域に含まれる複数の単木のそれぞれの樹種分類を実行すると共に、前記調査対象森林域に含まれる複数の単木のそれぞれの樹種分類の結果に基づいて前記調査対象森林域のレーザ林相図を作成するレーザ林相図作成ステップと、前記林相区分図作成装置が、前記レーザ林相図作成ステップにおいて作成された前記レーザ林相図に含まれる複数の林相の境界を作成する林相境界作成ステップとを備え、前記レーザ林相図作成ステップでは、訓練及び評価が実行された後の前記AIモデルを用いることにより、前記調査対象森林域に含まれる複数の単木のそれぞれが、スギ、ヒノキ、カラマツ、アカマツ及び広葉樹のいずれかに樹種分類される、林相区分図作成方法である。
【0013】
本発明の一態様は、コンピュータに、所定の森林域に対してレーザ光を照射することによって得られた3次元の点群データである所定森林域点群データを取得すると共に、前記所定森林域点群データを用いて行われた前記所定の森林域に含まれる複数の単木のそれぞれの樹冠の精密な解析の結果である精密単木樹冠解析結果に対する調査員による樹種分類の結果と、調査員による前記所定の森林域の現地調査の結果とに基づいて作成された前記所定の森林域に含まれる複数の単木のそれぞれの樹種を示す樹種データを取得するデータ取得ステップと、前記データ取得ステップにおいて取得された前記所定森林域点群データから、前記所定の森林域に含まれる複数の単木のそれぞれの点群データである単木点群データを抽出すると共に、抽出された前記単木点群データに対して樹種を示す情報を加えるラベリング処理を、前記データ取得ステップにおいて取得された前記樹種データに基づいて実行することによって、AIモデルの学習に用いられる学習用データセットを作成するラベリング処理ステップと、前記ラベリング処理ステップにおいて作成された前記学習用データセットを、少なくとも、前記AIモデルの訓練に用いられる訓練用データセットと、前記AIモデルの評価に用いられる検証用データセットとに振り分けるデータセット作成ステップと、前記データセット作成ステップにおいて作成された前記訓練用データセットを用いて前記AIモデルの訓練を実行すると共に、前記データセット作成ステップにおいて作成された前記検証用データセットを用いて前記AIモデルの評価を実行する訓練実行ステップと、訓練及び評価が実行された後の前記AIモデルを用いることにより、調査対象森林域に対してレーザ光を照射することによって得られた3次元の点群データである調査対象森林域点群データに基づいて、前記調査対象森林域に含まれる複数の単木のそれぞれの樹種分類を実行すると共に、前記調査対象森林域に含まれる複数の単木のそれぞれの樹種分類の結果に基づいて前記調査対象森林域のレーザ林相図を作成するレーザ林相図作成ステップと、前記レーザ林相図作成ステップにおいて作成された前記レーザ林相図に含まれる複数の林相の境界を作成する林相境界作成ステップとを実行させるためのプログラムであって、前記レーザ林相図作成ステップでは、訓練及び評価が実行された後の前記AIモデルを用いることにより、前記調査対象森林域に含まれる複数の単木のそれぞれが、スギ、ヒノキ、カラマツ、アカマツ及び広葉樹のいずれかに樹種分類される、プログラムである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、森林域に含まれる複数の単木のそれぞれの樹種分類を自動で行い、林相区分を自動で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1実施形態の林相区分図作成装置1が適用された林相区分図作成システムSMの一例を示す図である。
【
図2】本発明者等が所定の森林域として用いた16箇所の調査地の概要を示す図である。
【
図3】16箇所の調査地を日本地図上に示した図である。
【
図4】16箇所の調査地のうちの北信の7箇所(木島平1、木島平2、木島平3、高標山、向原、牛首山、山ノ内)を地図上に示すと共に、調査地の高標山を地図上に拡大して示した図である。
【
図5】
図4(B)に示す調査地の高標山に対してレーザ光を照射することによって得られた3次元点群画像(3次元点群データ)を示す図である。
【
図6】
図5に示す調査地の高標山の森林のCTスキャン画像を示す図(垂直断面図)である。
【
図7】例えば
図5に示すような3次元点群データを処理することによって得られる表層モデルDSM(Digital Surface Model)、地形モデルDEM(Digital Elevation Model)及び樹高モデルCHM(Canopy Height Model)を説明するための図である。
【
図8】精密単木樹冠解析部22によって行われる複数の単木のそれぞれの樹冠の精密な解析の一例を説明するための図である。
【
図9】
図8(B)に示す精密単木樹冠解析結果に対して調査員によって行われる目視による樹種分類の一例を説明するための図である。
【
図10】調査員としての本発明者等によって行われた現地調査時に撮影された写真の一例を示す図である。
【
図11】調査員としての本発明者等によって行われた現地調査時に撮影された写真の一例を示す図である。
【
図12】調査員としての本発明者等によって行われた現地調査時に撮影された写真の一例を示す図である。
【
図13】ラベリング処理部12による処理の一例を概念的に説明するための図である。
【
図14】
図1に示す例において用いられるAI(Artificial Intelligence)モデルによる解析原理を説明するための図である。
【
図15】
図1に示す例における上述したAIモデルの用い方を説明するための図である。
【
図16】学習後のAIモデルに入力可能な単木の全体の点群データと、学習後のAIモデルが樹種分類を行うために必要な単木の樹冠の点群データとの関係を説明するための図である。
【
図17】データセット作成部13によって作成された訓練用データセット、検証用データセット及びテスト用データセットの一例を示す図である。
【
図18】ラベリング処理部12によって作成された学習用データセットを訓練用データセットと検証用データセットとテスト用データセットとに振り分ける(分割する)ためのデータセット作成部13による処理の一例を概念的に説明するための図である。
【
図19】1本の単木に対応するCSVファイルに含まれる点群データの一例を示す図である。
【
図20】
図17に「訓練用本数」で示す訓練用データセットを用いて訓練が実行され、
図17に「検証用本数」で示す検証用データセットを用いて評価が実行されたAIモデルの評価結果の一例を示す図である。
【
図21】
図17に示す検証用データセットを用いて評価が実行されたAIモデルによるアカマツ、ヒノキ、カラマツ、広葉樹及びスギの5クラス分類の混合行列等を示している。
【
図22】レーザ林相図作成部15によってAIモデルを用いて実行される複数の単木のそれぞれの樹種分類の結果等の一例を示す図である。
【
図23】レーザ林相図作成部15によって作成されたレーザ林相図から、レーザ林相図に含まれる複数の林相の境界が林相境界作成部16によって作成される処理の一例を示している。
【
図24】第1実施形態の林相区分図作成装置1によって実行される処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【
図25】第2実施形態の林相区分図作成装置1の一例を示す図である。
【
図26】第1及び第2実施形態の林相区分図作成装置1の適用例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照し、本発明の林相区分図作成装置、林相区分図作成方法及びプログラムの実施形態について説明する。
【0017】
<第1実施形態>
図1は第1実施形態の林相区分図作成装置1が適用された林相区分図作成システムSMの一例を示す図である。
図1に示す例では、林相区分図作成システムSMにデータ作成装置2と林相区分図作成装置1とが含まれる。
データ作成装置2は、例えば通信インターフェースとメモリとプロセッサとを備えるコンピュータによって構成されている。通信インターフェースとメモリとプロセッサとは、信号線を介して接続されている。通信インターフェースは、データ作成装置2を林相区分図作成装置1等に例えばネットワーク等を介して接続するためのインターフェース回路を有する。メモリは、例えば揮発性の半導体メモリ及び不揮発性の半導体メモリを有する。メモリは、プロセッサにより実行される処理において使用されるプログラム及び各種のデータを記憶する。プロセッサは、点群データ取得部21としての機能と、精密単木樹冠解析部22としての機能と、樹種分類結果取得部23としての機能と、現地調査結果取得部24としての機能と、データ作成部25としての機能とを有する。
【0018】
点群データ取得部21は、例えば航空機、ドローン等を用いて行われた航空レーザ空撮により得られた点群データを取得する。点群データ取得部21によって取得される点群データは、所定の森林域(後述するAIモデルの学習用データの作成に用いられる森林域)に対してレーザ光を照射することによって得られた3次元の点群データ(所定森林域点群データ)である。
【0019】
図2~
図4は上述した所定の森林域の一例を説明するための図である。詳細には、
図2は上述した所定の森林域として本発明者等が用いた16箇所の調査地の概要を示しており、
図3は16箇所の調査地を日本地図上に示しており、
図4(A)は16箇所の調査地のうちの北信の7箇所(木島平1、木島平2、木島平3、高標山、向原、牛首山、山ノ内)を地図上に示しており、
図4(B)は調査地の高標山を地図上に拡大して示している。
図2~
図4に示す例では、点群データ取得部21が、所定の森林域としての16箇所の調査地に対してレーザ光を照射することによって得られた3次元の点群データを取得するが、他の例では、所定の森林域として、
図2~
図4に示す16箇所の調査地以外の調査地が用いられてもよい。つまり、点群データ取得部21が、
図2~
図4に示す16箇所の調査地以外の調査地に対してレーザ光を照射することによって得られた3次元の点群データを取得してもよい。
また、
図2~
図4に示す例では、点群データ取得部21によって取得される点群データを得るためにドローン機体(UAV(DJI社製M600Pro))及びレーザセンサ(Yellowscan社製Surveyor Ultra)が用いられるが、他の例では、点群データ取得部21によって取得される点群データを得るために航空機を用いたり、上述したレーザセンサとは異なるレーザセンサを用いたりしてもよい。
【0020】
図1に示す例では、点群データ取得部21が、取得された所定森林域点群データに対してストリップ調整及びノイズフィルタリングの後処理を実行する。
他の例では、点群データ取得部21が、上述した後処理を実行しなくてもよく(例えば点群データ取得部21が後処理済の所定森林域点群データを取得してもよく)、ストリップ調整及びノイズフィルタリングとは異なる後処理を実行してもよい。
【0021】
図5は
図4(B)に示す調査地の高標山に対してレーザ光を照射することによって得られた3次元点群画像(詳細には、上述した後処理が実行された後の3次元点群データ)を示す図である。
図6は
図5に示す調査地の高標山の森林のCTスキャン画像を示す図(垂直断面図)である。
図7は例えば
図5に示すような3次元点群データを処理することによって得られる表層モデルDSM(Digital Surface Model)、地形モデルDEM(Digital Elevation Model)及び樹高モデルCHM(Canopy Height Model)を説明するための図である。
点群データ取得部21によって取得された3次元の点群データ(詳細には、上述した後処理が実行された後の3次元の点群データ)から表層モデルDSM、地形モデルDEM及び樹高モデルCHMを得るための手法としては、例えば下記のURLが示すWEBサイトに記載された公知の手法を用いることができる。具体的には、表層モデルDSMは、レーザセンサによって検出されたファーストパルスを用いることによって算出可能であり、地形モデルDEMは、レーザセンサによって検出されたラストパルスを用いることによって算出可能である。地形モデルDEMとして、WEBサイト等から入手可能なデータを用いてもよい。
https://www.gsi.go.jp/chirijoho/chirijoho40069.html
https://www.rinya.maff.go.jp/j/gyoumu/gijutu/kenkyu_happyo/attach/pdf/H30_happyo-8.pdf
【0022】
図1に示す例では、精密単木樹冠解析部22が、特許第6570039号公報に記載された技術を用いることにより、上述した所定の森林域に含まれる複数の単木のそれぞれの樹冠の精密な解析を行う。詳細には、精密単木樹冠解析部22は、点群データ取得部21によって取得されて後処理が実行された所定森林域点群データ(詳細には、所定森林域点群データから得られる樹高モデルCHM)を用いることにより、上述した所定の森林域に含まれる複数の単木のそれぞれの樹冠の精密な解析を行い、その解析の結果である精密単木樹冠解析結果を出力する。
【0023】
図8は精密単木樹冠解析部22によって行われる複数の単木のそれぞれの樹冠の精密な解析の一例を説明するための図である。詳細には、
図8(A)は
図4(B)に示す調査地の高標山の樹高モデルCHMを示しており、
図8(B)は
図8(A)に示す樹高モデルCHMに対して特許第6570039号公報に記載された技術を適用することにより得られた精密単木樹冠解析結果を示している。
図8(B)に示す例では、調査地の高標山に含まれる複数の単木のそれぞれの樹冠が閉曲線によって囲まれて示されている。
【0024】
図1に示す例では、樹種分類結果取得部23が、点群データ取得部21によって取得された所定森林域点群データを用いて精密単木樹冠解析部22により行われた所定の森林域に含まれる複数の単木のそれぞれの樹冠の精密な解析の結果である精密単木樹冠解析結果(
図8(B)参照)に対する調査員による樹種分類の結果を取得する。
【0025】
図9は
図8(B)に示す精密単木樹冠解析結果に対して調査員によって行われる目視による樹種分類の一例を説明するための図である。詳細には、
図9(A)は
図8(B)に示す精密単木樹冠解析結果を示しており、
図9(B)は
図9(A)に示す精密単木樹冠解析結果に対して調査員としての本発明者等によって行われた目視による樹種分類の結果を示している。
図9に示す例では、
図9(B)に示す調査員による目視樹種分類の結果が、
図9(A)及び
図9(B)に示す森林域内にカラマツと広葉樹とが含まれることを示している。
【0026】
図1に示す例では、上述したように樹種分類結果取得部23が、精密単木樹冠解析結果に対する調査員による目視樹種分類の結果を取得するのみならず、現地調査結果取得部24が、調査員による上述した所定の森林域の現地調査の結果を取得する。
【0027】
図10~
図12は調査員としての本発明者等によって行われた現地調査時に撮影された写真の一例を示す図である。詳細には、
図10(A)はヒノキ林の現地写真を示しており、
図10(B)はスギ林の現地写真を示しており、
図11(A)はカラマツ林の現地写真を示しており、
図11(B)はアカマツ林の現地写真を示しており、
図12は広葉樹林の現地写真を示している。
図8(B)に示す精密単木樹冠解析結果に対する調査員による目視樹種分類では樹種分類を十分に正確に行うことができない場合であっても、
図10~
図12に示すような現地写真及び現地の位置情報を用いることにより、上述した所定の森林域に含まれるすべての単木の樹種分類を十分に正確に行うことができる。
【0028】
図1に示す例では、データ作成部25が、樹種分類結果取得部23によって取得された精密単木樹冠解析結果(
図8(B)参照)に対する調査員による樹種分類の結果と、現地調査結果取得部24によって取得された調査員による上述した所定の森林域の現地調査の結果とに基づいて、上述した所定の森林域に含まれる複数の単木のそれぞれの樹種を示す樹種データを作成する。更に、データ作成部25は、上述した所定の森林域に含まれる複数の単木のそれぞれの樹種を示す樹種データと、点群データ取得部21によって取得された所定森林域点群データとを対応づけたデータ(つまり、所定森林域点群データと、所定森林域点群データに対応する樹種データとの組)を作成する。
【0029】
林相区分図作成装置1は、例えばネットワーク等を介してデータ作成装置2に接続されている。林相区分図作成装置1は、例えば通信インターフェースとメモリとプロセッサとを備えるコンピュータによって構成されている。林相区分図作成装置1の通信インターフェースとメモリとプロセッサとは、林相区分図作成装置1内の信号線を介して接続されている。林相区分図作成装置1の通信インターフェースは、林相区分図作成装置1をデータ作成装置2等に接続するためのインターフェース回路を有する。林相区分図作成装置1のメモリは、例えば揮発性の半導体メモリ及び不揮発性の半導体メモリを有する。林相区分図作成装置1のメモリは、林相区分図作成装置1のプロセッサにより実行される処理において使用されるプログラム及び各種のデータを記憶する。林相区分図作成装置1のプロセッサは、データ取得部11としての機能と、ラベリング処理部12としての機能と、データセット作成部13としての機能と、訓練実行部14としての機能と、レーザ林相図作成部15としての機能と、林相境界作成部16としての機能とを有する。
【0030】
データ取得部11は、データ作成装置2のデータ作成部25によって作成された所定森林域点群データと樹種データとの組を取得する。つまり、データ取得部11は、上述した所定の森林域に対してレーザ光を照射することによって得られた所定森林域点群データと、上述した所定の森林域に含まれる複数の単木のそれぞれの樹種を示す樹種データとの組を取得する。
ラベリング処理部12は、例えば下記のURLが示すWEBサイトに記載された技術等を用いることによって、データ取得部11によって取得された所定森林域点群データから、上述した所定の森林域に含まれる複数の単木のそれぞれの点群データである単木点群データを抽出する。更に、ラベリング処理部12は、抽出された単木点群データに対して樹種を示す情報を加えるラベリング処理を、データ取得部11によって取得された樹種データに基づいて実行する。
https://www.ipros.jp/product/detail/2000082505/
つまり、ラベリング処理部12は、単木点群データと単木点群データに加えられた樹種を示す情報との組である学習用データセットを作成する。詳細には、ラベリング処理部12は、上述した所定の森林域に含まれる単木の数と等しい数の学習用データセットを作成する。この学習用データセットは、後述するAIモデルの学習に用いられる。
【0031】
図13はラベリング処理部12による処理の一例を概念的に説明するための図である。
図13に示す例では、例えば、ラベリング処理部12が、フォルダ「Abucho_ULS_2018_20211116093610」からCSVファイル形式の単木点群データ「Abucho_ULS_2018_3232」を抽出すると共に、その単木点群データ「Abucho_ULS_2018_3232」に樹種を示す情報としての樹種名「Sugi」を加えるラベリング処理を実行し、単木点群データと単木点群データに加えられた樹種を示す情報との組である学習用データセットとしてのCSVファイル「Abucho_ULS_2018_3232_Sugi.csv」を作成する。また、ラベリング処理部12は、フォルダ「Abucho_ULS_2018_20211116093610」からCSVファイル形式の単木点群データ「Abucho_ULS_2018_3233」を抽出すると共に、その単木点群データ「Abucho_ULS_2018_3233」に樹種を示す情報としての樹種名「Sugi」を加えるラベリング処理を実行し、単木点群データと単木点群データに加えられた樹種を示す情報との組である学習用データセットとしてのCSVファイル「Abucho_ULS_2018_3233_Sugi.csv」を作成する。更に、ラベリング処理部12は、フォルダ「Abucho_ULS_2018_20211116093610」からCSVファイル形式の単木点群データ「Abucho_ULS_2018_3241」を抽出すると共に、その単木点群データ「Abucho_ULS_2018_3241」に樹種を示す情報としての樹種名「Hinoki」を加えるラベリング処理を実行し、単木点群データと単木点群データに加えられた樹種を示す情報との組である学習用データセットとしてのCSVファイル「Abucho_ULS_2018_3241_Hinoki.csv」を作成する。また、ラベリング処理部12は、フォルダ「Abucho_ULS_2018_20211116093610」からCSVファイル形式の単木点群データ「Abucho_ULS_2018_3242」を抽出すると共に、その単木点群データ「Abucho_ULS_2018_3242」に樹種を示す情報としての樹種名「Kouyoujyu」を加えるラベリング処理を実行し、単木点群データと単木点群データに加えられた樹種を示す情報との組である学習用データセットとしてのCSVファイル「Abucho_ULS_2018_3242_Kouyoujyu.csv」を作成する。つまり、ラベリング処理部12によって実行されるラベリング処理では、抽出された単木点群データのファイル名に樹種名が含められる。
【0032】
図1に示す例では、データセット作成部13が、例えば下記のURLが示すWEBサイトに記載された技術等を用いることによって、ラベリング処理部12によって作成された学習用データセット(上述した所定の森林域に含まれる単木の数と等しい数の学習用データセット)を、AIモデルの訓練に用いられる訓練用データセットと、AIモデルの評価に用いられる検証用データセットと、AIモデルを調査対象森林域(上述した所定の森林域とは異なる森林域)に適用できるか否かの判断に用いられるテスト用データセットとに振り分ける(分割する)。
https://pystyle.info/pytorch-split-dataset/
https://atmarkit.itmedia.co.jp/ait/articles/2006/08/news031_2.html
https://www.mgo-tec.com/blog-entry-colab-dataset01.html
https://slash-z.com/data-split-of-cross-validation/
https://take-tech-engineer.com/torch-utils-data-random-split/
図1に示す例では、データセット作成部13が、学習用データセットを訓練用データセットと検証用データセットとテスト用データセットとに振り分けるが、他の例では、データセット作成部13が、学習用データセットを訓練用データセットと検証用データセットとに振り分けてもよい(つまり、テスト用データセットが作成されなくてもよい)。
【0033】
図1に示す例では、データセット作成部13によって作成された訓練用データセットを用いた訓練が行われると共に、データセット作成部13によって作成された検証用データセットを用いた評価が行われるAIモデルとして、下記の文献に記載されたPointNetという深層学習アルゴリズムが用いられる。
Charles, R. Qi, Hao Su, Mo Kaichun, and Leonidas J. Guibas. PointNet: Deep Learning on Point Sets for 3D Classification and Segmentation. In 2017 IEEE Conference on Computer Vision and Pattern Recognition (CVPR), 77-85. Honolulu, HI: IEEE, 2017. https://doi.org/10.1109/CVPR.2017.16.
【0034】
図14は
図1に示す例において用いられるAIモデルによる解析原理を説明するための図である。
図14に示すように、このAIモデルは、3次元点群データと、その3次元点群データに対応する対象物の種類名(カップ、テーブル、椅子、車、木)との組であるデータセットを用いた学習を行うことにより、入力された3次元点群データに対応する対象物の種類名を出力できるようになる。つまり、このAIモデルは、学習後に、入力された3次元点群データが示す点群の分布形状に基づいて、入力された3次元点群データに対応する対象物の種類を判読できるようになる。
【0035】
図15は
図1に示す例における上述したAIモデルの用い方を説明するための図である。
図15に示すように、
図1に示す例では、ラベリング処理部12によって作成された学習用データセット(単木点群データと単木点群データに加えられた樹種(スギ、ヒノキ、カラマツ、アカマツ及び広葉樹のいずれか)を示す情報との組)を用いることによって、AIモデルの学習が行われる。AIモデルは、学習後に、入力された3次元点群データが示す樹冠形状に基づいて、入力された3次元点群データに対応する単木の樹種を分類できるようになる。
【0036】
図16は学習後のAIモデルに入力可能な単木の全体の点群データと、学習後のAIモデルが樹種分類を行うために必要な単木の樹冠の点群データとの関係を説明するための図である。詳細には、
図16(A)は学習後のAIモデルに入力可能な単木の全体の点群データを示しており、
図16(B)は学習後のAIモデルが樹種分類を行うために必要な単木の樹冠の点群データ(単木の全体の点群データの一部)を示している。
本発明者等は、鋭意研究において、学習後のAIモデルに対して、
図16(A)に示すような単木の全体の点群データを入力しなくても、
図16(B)に示すような単木の樹冠の点群データ(単木の全体の点群データの一部)を入力すれば、学習後のAIモデルが樹種分類を正確に行うことができることを見い出した。つまり、本発明者等は、学習後のAIモデルに対して、ドローンを用いて得られた点群データを入力しなくても、航空機を用いて得られた点群データを入力すれば、学習後のAIモデルが十分に正確な樹種分類を行うことができることを見い出したのである。
【0037】
図17はデータセット作成部13によって作成された訓練用データセット、検証用データセット及びテスト用データセットの一例を示す図である。
図17に示す例では、訓練用データセットが、樹種ごとにAIモデルのパラメータを調整するために用いられた。検証用データセットは、AIモデルの精度の評価に用いられた。テスト用データセットは、学習済のAIモデルを上述した所定の森林域とは異なる森林域(調査対象森林域)に適用可能な否かを判断するために用いられた。
また、
図17に示す例では、訓練用本数(訓練用データセットに含まれる単木の本数)と検証用本数(検証用データセットに含まれる単木の本数)とは、樹種間の精度のバラツキが無いように同一本数とし、残り(=総本数-(訓練用本数+検証用本数))はテスト用として使用した。データセットの目標割合は、例えば訓練用本数:検証用本数:テスト用本数=60:25:10とした。
【0038】
図18はラベリング処理部12によって作成された学習用データセットを訓練用データセットと検証用データセットとテスト用データセットとに振り分ける(分割する)ためのデータセット作成部13による処理の一例を概念的に説明するための図である。
図18に示す例では、ラベリング処理部12によって作成された学習用データセット(16箇所の調査地に対応する16個のフォルダ「Abucho_ULS_2018_20211116093610」、「Abuhagi_ULS_2019_20211116095126」、「Chichibu_ULS_2019_20211116090814」、「Chichibu_ULS_2020_20211115175130」、「Hiketa_ULS_2021_20211207132016」、「Mukai_ULS_2018_20211117112644」、「Oshiba_ULS_2017_20211116085930」、「Shunan_ULS_2019_20211116082533」、「Site2_ULS_2019_20211117135015」、「Site3_ULS_2019_20211117141644」、「Site5_ULS_2019_20211117171316」、「Takapyou_ULS_2021_20211117124354」、「Takasuka_ULS_2020_20211115162514」、「Tatsuno_ULS_2021_20220728180944」、「Ushikubi_ULS_2017_20211116112453」、「Yamanouchi_ULS_2016_20211117120133」)が、訓練用データセットに対応するフォルダ「Sample Train」と検証用データセットに対応するフォルダ「Sample Valid」とテスト用データセットに対応するフォルダ「Sample Test」とに振り分けられる(分割される)。訓練用データセットに対応するフォルダ「Sample Train」には、CSVファイル「Tatsuno_ULS_2021_13259_Akamatsu.csv」、「Shunan_ULS_2019_5863_Sugi.csv」等が含まれる。
詳細には、
図18に示す例では、データセット作成部13が、16箇所の調査地に対応する学習用データセットを集め、その学習用データセットの65%を訓練用データセットに振り分け、その学習用データセットの25%を検証用データセットに振り分け、その学習用データセットの10%をテスト用データセットに振り分ける。
【0039】
図19は1本の単木に対応するCSVファイルに含まれる複数の点のデータ(点群データ)の一例を示す図である。
図19に示す例では、CSVファイル「Abucho_ULS_2018_199_Kouyoujyu.csv」が、
図2に示す16箇所の調査地のうちの調査地「阿武町」において収集された2910本の広葉樹のうちの1本の広葉樹の3次元の点群データに対応している。このCSVファイル「Abucho_ULS_2018_199_Kouyoujyu.csv」には、1本の広葉樹を構成する点群の3次元座標値(X,Y,Z)を示す情報が含まれる。
【0040】
図1に示す例では、訓練実行部14が、データセット作成部13によって作成された訓練用データセットを用いてAIモデルの訓練を実行すると共に、データセット作成部13によって作成された検証用データセットを用いてAIモデルの評価を実行する。
図15に示すように、訓練実行部14によって実行されるAIモデルの訓練では、樹種ごとの単木点群データの樹冠形状をAIモデルに学習させる。
【0041】
図20は
図17に「訓練用本数」で示す訓練用データセットを用いて訓練が実行され、
図17に「検証用本数」で示す検証用データセットを用いて評価が実行されたAIモデルの評価結果の一例を示す図である。詳細には、
図20(A)はエポック数(
図20(A)の横軸)と損失(Loss)(
図20(A)の縦軸)との関係を示しており、
図20(B)はエポック数(
図20(B)の横軸)と識別精度(Accuracy)(
図20(B)の縦軸)との関係を示している。
図20に示す例では、
図20(A)及び
図20(B)に楕円で示すように、過学習によるデータの損失が生じることなく、かつ、良い識別精度を得ることができた訓練用データセットを用いた訓練の繰り返し回数(エポック数)が250回になった。また、
図20(A)に示すように、その訓練の実行時間(elapsed)は189時間42分57秒になった。
また、
図20に示す例では、
図20(B)に示すように、良い訓練精度(Training Accuracy)のみならず、良い検証精度(Validation Accuracy)も得ることができた。
【0042】
図21は
図17に示す検証用データセットを用いて評価が実行されたAIモデルによるアカマツ、ヒノキ、カラマツ、広葉樹及びスギの5クラス分類の混合行列等を示している。詳細には、
図21(A)は
図17に示す検証用データセットを用いて評価が実行されたAIモデルによるアカマツ、ヒノキ、カラマツ、広葉樹及びスギの5クラス分類の混合行列を示しており、
図21(B)は
図21(A)に示す評価において分類精度が85.4%と高かったスギの3次元点群データの樹冠形状を示している。
図21に示すように、訓練用データセットを用いた訓練が実行された後のAIモデルが、高い精度でアカマツ、ヒノキ、カラマツ、広葉樹及びスギの5クラス分類を実行可能であることを確認できた。
【0043】
図1に示す例では、レーザ林相図作成部15が、訓練、評価及びテストが実行された後のAIモデルを用いることにより、調査対象森林域(上述した所定の森林域とは異なる森林域)に対してレーザ光を照射することによって得られた3次元の点群データである調査対象森林域点群データに基づいて、調査対象森林域に含まれる複数の単木のそれぞれの樹種分類を実行する。詳細には、レーザ林相図作成部15は、訓練及び評価が実行された後のAIモデルを用いることにより、調査対象森林域に含まれる複数の単木のそれぞれを、スギ、ヒノキ、カラマツ、アカマツ及び広葉樹のいずれかに樹種分類する。更に、レーザ林相図作成部15は、調査対象森林域に含まれる複数の単木のそれぞれの樹種分類の結果に基づいて調査対象森林域のレーザ林相図を作成する。
他の例では、レーザ林相図作成部15が、訓練及び評価が実行された後のAIモデルを用いることにより、調査対象森林域に対してレーザ光を照射することによって得られた調査対象森林域点群データに基づいて、調査対象森林域に含まれる複数の単木のそれぞれの樹種分類を実行すると共に、調査対象森林域に含まれる複数の単木のそれぞれの樹種分類の結果に基づいて調査対象森林域のレーザ林相図を作成してもよい。
【0044】
詳細には、
図1に示す例では、レーザ林相図作成部15が、調査対象森林域に含まれる複数の単木のそれぞれの樹種分類を実行した後に、調査対象森林域に含まれる孤立木(孤立木から所定距離の範囲内にその孤立木と同一の樹種の単木が存在しない単木)を削除するマスク処理を実行してレーザ林相図を作成する。
【0045】
図22はレーザ林相図作成部15によってAIモデルを用いて実行される複数の単木のそれぞれの樹種分類の結果等の一例を示す図である。詳細には、
図22(A)は訓練及び評価が実行された後のAIモデルを用いてレーザ林相図作成部15によって実行されたテスト用データセットに含まれる調査地「高標山」の複数の単木のそれぞれの樹種分類の結果を示しており、
図22(B)は
図22(A)に示す樹種分類の結果に対してマスク処理を実行することにより作成された調査地「高標山」のレーザ林相図を示している。
図22(A)及び
図22(B)に示す例では、調査地「高標山」のうちのカラマツが優占する樹種であるカラマツ優占領域内においてカラマツの単木から15m以内に位置する広葉樹等の他樹種の単木(孤立木)を除去するマスク処理が、
図22(A)に示す樹種分類の結果に対して実行される。更に、調査地「高標山」のうちの広葉樹が優占する樹種である広葉樹優占領域内において広葉樹の単木から15m以内に位置するカラマツ等の他樹種の単木(孤立木)を除去するマスク処理が、
図22(A)に示す樹種分類の結果に対して実行される。
その結果、
図22(B)に示すように、カラマツ優占領域を「カラマツ林」と表現し、広葉樹優占領域を「広葉樹林」と表現した調査地「高標山」のレーザ林相図が作成される。
【0046】
図1に示す例では、林相境界作成部16が、レーザ林相図作成部15によって作成されたレーザ林相図に含まれる複数の林相の境界を作成する。
【0047】
図23はレーザ林相図作成部15によって作成されたレーザ林相図から、レーザ林相図に含まれる複数の林相の境界が林相境界作成部16によって作成される処理の一例を示している。詳細には、
図23(A)はレーザ林相図作成部15によって作成された調査地「高標山」のレーザ林相図を示しており、
図23(B)は
図23(A)に示すレーザ林相図から、林相境界作成部16によって作成されたレーザ林相図に含まれる複数の林相の境界を示している。
図23(A)及び
図23(B)に示す例では、
図23(A)に示す調査地「高標山」のレーザ林相図に「カラマツ林」と「広葉樹林」とが含まれるため、
図23(B)に示すように、林相境界作成部16は、「カラマツ林」と「広葉樹林」との境界を作成し、その境界をポリゴン出力する。
更に、
図23(A)及び
図23(B)に示す例では、林相境界作成部16が、調査地「高標山」の外縁を調査地「高標山」と外部の森林域との境界として作成し、その境界をポリゴン出力する。
【0048】
図24は第1実施形態の林相区分図作成装置1によって実行される処理の一例を説明するためのフローチャートである。
図24に示す例では、ステップS11において、データ取得部11が、データ作成装置2のデータ作成部25によって作成された所定森林域点群データと樹種データとの組を取得する。
つまり、ステップS11では、データ取得部11が、所定の森林域に対してレーザ光を照射することによって得られた3次元の点群データである所定森林域点群データを取得する。更に、データ取得部11は、所定森林域点群データを用いてデータ作成装置2の精密単木樹冠解析部22によって行われた所定の森林域に含まれる複数の単木のそれぞれの樹冠の精密な解析の結果である精密単木樹冠解析結果に対する調査員による樹種分類の結果と、調査員による所定の森林域の現地調査の結果とに基づいて、データ作成装置2のデータ作成部25によって作成された所定の森林域に含まれる複数の単木のそれぞれの樹種を示す樹種データを取得する。
【0049】
ステップS12では、ラベリング処理部12が、ステップS11において取得された所定森林域点群データから、所定の森林域に含まれる複数の単木のそれぞれの点群データである単木点群データを抽出する。更に、ラベリング処理部12は、抽出された単木点群データに対して樹種を示す情報を加えるラベリング処理を、ステップS11において取得された樹種データに基づいて実行することによって、AIモデルの学習に用いられる学習用データセットを作成する。
ステップS13では、データセット作成部13が、ステップS12において作成された学習用データセットを、少なくとも、AIモデルの訓練に用いられる訓練用データセットと、AIモデルの評価に用いられる検証用データセットとに振り分ける。
ステップS14では、訓練実行部14が、ステップS13において作成された訓練用データセットを用いてAIモデルの訓練を実行すると共に、ステップS13において作成された検証用データセットを用いてAIモデルの評価を実行する。
【0050】
ステップS15では、レーザ林相図作成部15が、少なくとも訓練及び評価が実行された後のAIモデルを用いることにより、調査対象森林域に対してレーザ光を照射することによって得られた3次元の点群データである調査対象森林域点群データに基づいて、調査対象森林域に含まれる複数の単木のそれぞれの樹種分類を実行すると共に、調査対象森林域に含まれる複数の単木のそれぞれの樹種分類の結果に基づいて調査対象森林域のレーザ林相図を作成する。
詳細には、ステップS15では、少なくとも訓練及び評価が実行された後のAIモデルを用いることにより、調査対象森林域に含まれる複数の単木のそれぞれが、スギ、ヒノキ、カラマツ、アカマツ及び広葉樹のいずれかに樹種分類される。
ステップS16では、林相境界作成部16が、ステップS15において作成されたレーザ林相図に含まれる複数の林相の境界を作成する。
【0051】
<第2実施形態>
第2実施形態の林相区分図作成装置1は、後述する点を除き、
図1に示す第1実施形態の林相区分図作成装置1と同様に構成されている。
【0052】
図25は第2実施形態の林相区分図作成装置1の一例を示す図である。
図25に示す例では、林相区分図作成装置1が、例えば通信インターフェースとメモリとプロセッサとを備えるコンピュータによって構成されている。通信インターフェースとメモリとプロセッサとは、林相区分図作成装置1内の信号線を介して接続されている。通信インターフェースは、航空レーザ空撮により得られた点群データ、調査員による樹種分類の結果、及び調査員による所定の森林域の現地調査の結果を取得するためのインターフェース回路を有する。メモリは、林相区分図作成装置1のプロセッサにより実行される処理において使用されるプログラム及び各種のデータを記憶する。プロセッサは、データ作成装置10としての機能と、データ取得部11としての機能と、ラベリング処理部12としての機能と、データセット作成部13としての機能と、訓練実行部14としての機能と、レーザ林相図作成部15としての機能と、林相境界作成部16としての機能とを有する。
【0053】
データ作成装置10は、
図1に示すデータ作成装置2と概略同様の機能を有する。データ作成装置10は、精密単木樹冠解析部10Aとしての機能と、樹種分類結果取得部10Bとしての機能と、現地調査結果取得部10Cとしての機能と、データ作成部10Dとしての機能とを有する。精密単木樹冠解析部10Aは、
図1に示すデータ作成装置2の精密単木樹冠解析部22と概略同様の機能を有する。樹種分類結果取得部10Bは、
図1に示すデータ作成装置2の樹種分類結果取得部23と概略同様の機能を有する。現地調査結果取得部10Cは、
図1に示すデータ作成装置2の現地調査結果取得部24と概略同様の機能を有する。データ作成部10Dは、
図1に示すデータ作成装置2のデータ作成部25と概略同様の機能を有する。
【0054】
図25に示す例では、データ取得部11が、
図1に示すデータ作成装置2の点群データ取得部21が有する機能を有する。つまり、データ取得部11は、所定の森林域(AIモデルの学習用データの作成に用いられる森林域)に対してレーザ光を照射することによって得られた3次元の点群データ(所定森林域点群データ)を取得する。また、データ取得部11は、取得された所定森林域点群データに対してストリップ調整及びノイズフィルタリングの後処理を実行する。
他の例では、データ取得部11が、上述した後処理を実行しなくてもよく(例えばデータ取得部11が後処理済の所定森林域点群データを取得してもよく)、ストリップ調整及びノイズフィルタリングとは異なる後処理を実行してもよい。
【0055】
図25に示す例では、データ取得部11が、データ作成装置10のデータ作成部10Dによって作成された所定森林域点群データと樹種データとの組を取得する。つまり、データ取得部11は、所定の森林域に対してレーザ光を照射することによって得られた所定森林域点群データと、所定の森林域に含まれる複数の単木のそれぞれの樹種を示す樹種データとの組を取得する。
【0056】
<適用例>
図26は第1及び第2実施形態の林相区分図作成装置1の適用例を示す図である。詳細には、
図26(A)は林相境界作成部16によって作成された調査地「高標山」の複数の林相(「カラマツ林」、「広葉樹林」、「スギ林」)の境界を示す図と、調査地「高標山」における地籍調査に基づいて作成された地籍図(「所有者境界線」を示す図)とをマージして示しており、
図26(B)は
図26(A)に示す破線の矩形で囲まれた部分を拡大して示している。
本発明者等は、鋭意研究において、
図26(A)及び
図26(B)に示すように、林相境界作成部16によって作成された調査地「高標山」の複数の林相の境界と、地籍図が示す「所有者境界線」とが概略一致することを見い出した。
つまり、本発明者等は、第1及び第2実施形態の林相区分図作成装置1を地籍調査に適用し、林相境界作成部16によって作成される複数の林相の境界を「所有者境界線」とみなすことによって、地籍調査の進捗率を向上可能であることを見い出した。
【0057】
上述したように、第1及び第2実施形態の林相区分図作成装置1では、ドローン、航空機等のレーザ計測により取得された3Dレーザ点群デ-タの樹冠形状をAIモデルに学習させることによって、単木の樹種分類を正確に行い、優占する林相(カラマツ林、スギ林、ヒノキ林、アカマツ林、広葉樹林)を自動で区分することができる。つまり、第1及び第2実施形態の林相区分図作成装置1では、AIモデルを用いることによって科学的かつ客観的な林相区分を行うことができる。更に、第1及び第2実施形態の林相区分図作成装置1では、区分された林相の境界がポリゴン出力されるため、第1及び第2実施形態の林相区分図作成装置1の利用者は、初心者であっても、第1及び第2実施形態の林相区分図作成装置1から出力される林相の境界に基づき、モバイル、GNSS(Global Navigation Satellite System)等を用いて現地で境界杭の位置決めを容易に行うことができる。
本発明は、政府や自治体が求める森林境界不明の解消と日本林業の成長産業化に貢献する極めて有効な実用技術である。また、本発明は、諸外国の森林にも適用可能であり、日本が先導する国際共同研究に貢献することができる。
【0058】
以上のように、本発明の林相区分図作成装置、林相区分図作成方法及びプログラムの実施形態について図面を参照して説明したが、本発明の林相区分図作成装置、林相区分図作成方法及びプログラムは上述した実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。上述した実施形態の各例の構成を適宜組み合わせてもよい。
上述した実施形態の各例では、林相区分図作成装置1において行われる処理を、プログラムを実行することにより行われるソフトウエア処理として説明したが、林相区分図作成装置1において行われる処理が、ハードウエアにより行われる処理であってもよい。あるいは、林相区分図作成装置1において行われる処理が、ソフトウエア及びハードウエアの双方を組み合わせた処理であってもよい。
【符号の説明】
【0059】
1…林相区分図作成装置、11…データ取得部、12…ラベリング処理部、13…データセット作成部、14…訓練実行部、15…レーザ林相図作成部、16…林相境界作成部、2、10…データ作成装置、21…点群データ取得部、22、10A…精密単木樹冠解析部、23、10B…樹種分類結果取得部、24、10C…現地調査結果取得部、25、10D…データ作成部、SM…林相区分図作成システム