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特開2024-129509鉛蓄電池用セパレータ、および鉛蓄電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129509
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】鉛蓄電池用セパレータ、および鉛蓄電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/449 20210101AFI20240919BHJP
   H01M 50/489 20210101ALI20240919BHJP
   H01M 50/443 20210101ALI20240919BHJP
   H01M 50/434 20210101ALI20240919BHJP
【FI】
H01M50/449
H01M50/489
H01M50/443 B
H01M50/434
H01M50/443 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038757
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100142387
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 都子
(74)【代理人】
【識別番号】100135895
【弁理士】
【氏名又は名称】三間 俊介
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 康史
(72)【発明者】
【氏名】船木 万壽郎
(72)【発明者】
【氏名】岩間 珠莉
【テーマコード(参考)】
5H021
【Fターム(参考)】
5H021CC03
5H021CC04
5H021EE02
5H021EE21
5H021HH00
5H021HH03
(57)【要約】
【課題】本発明は、樹脂基材と層の接着性を有し、且つ電解液中の電気抵抗(ER)が低いことを兼ね備えた鉛蓄電池用セパレータ、およびこれを用いた鉛蓄電池を提供することを目的とする。
【解決手段】樹脂製の基材と、前記基材の少なくとも片面に積層された層とを有し、前記基材と前記層の180度(°)ピール強度が0.50N/10mm以上、かつ前記基材の硫酸中の電気抵抗(ER1)に対する前記基材と前記層の積層体の電気抵抗(ER2)の比(ER2/ER1)が1.05以下の鉛蓄電池用セパレータが提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製の基材と、前記基材の少なくとも片面に積層された層とを有する、鉛蓄電池用セパレータであって、
前記基材と前記層の180度ピール強度が0.50N/10mm以上、かつ前記基材の硫酸中の電気抵抗(ER1)に対して前記基材と前記層の積層体の電気抵抗(ER2)の比(ER2/ER1)が1.05以下である、
鉛蓄電池用セパレータ。
【請求項2】
前記層は樹脂を含み、かつ前記樹脂の中心粒径(d50)が0.45μm以上である、請求項1に記載の鉛蓄電池用セパレータ。
【請求項3】
前記層に樹脂が占める割合が、15質量%以上55質量%以下である、請求項1又は2に記載の鉛蓄電池用セパレータ。
【請求項4】
前記層の厚みが、0.1μm以上10μm以下である、請求項1又は2に記載の鉛蓄電池用セパレータ。
【請求項5】
前記層が炭素材料を含む、請求項1又は2に記載の鉛蓄電池用セパレータ。
【請求項6】
前記層が、ファーネスブラック、アセチレンブラック及びケッチェンブラックから成る群から選択される少なくとも一つを含む、請求項1又は2に記載の鉛蓄電池用セパレータ。
【請求項7】
正極と、負極と、前記正極及び前記負極の間に請求項1又は2に記載の鉛蓄電池用セパレータとを備える、鉛蓄電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、鉛蓄電池用セパレータ、およびこれを用いた鉛蓄電池に関する。
【背景技術】
【0002】
鉛蓄電池は、車載用途、例えば、乗用車、バス、トラック、二輪車、及びゴルフカート、並びに産業用途、例えば、フォークリフト、耕作機械、鉄道、無停電電源装置(UPS:Uninterruptible Power Supply)、及び通信機器等において、世界的に広く使用されている。特に、近年の車載用途では、ハイブリッド式電気自動車(HEV)や、アイドリングスタートアンドストップ(ISS)車などの、約50%~80%の部分充電状態(PSoC)での動作に対応できる性能が求められている。
【0003】
鉛蓄電池への主な要求性能は、充電受入性、サイクル特性、及び減液特性(water loss性能)である。環境性能及び燃費向上のために充電制御機能や回生充電機能を搭載した鉛蓄電池は、充電機会が短く限られている。そのため、効率よく多くのエネルギーを電池へ充電する為に充電受入性が求められる。電池が長くPSoCで維持されるとサイクル特性は低下し易くなる。その理由は、PSoCの電池では、電極表面に結晶性の高い硫酸塩が形成され易く、形成された硫酸塩結晶が蓄積すると、電極の充電受入性能が劇的に減少し(サルフェーション)、最終的に寿命に至るからである。また、負極が水素発生電位に達すると、水が分解され、減液が起こる。そのため、メンテナンス性の観点から、減液特性の向上及び維持が求められる。
【0004】
鉛蓄電池用セパレータは、一般に耐電圧特性を有する微多孔構造を持つ膜体であり、正極と負極の短絡を防止するために、両極表面に密着した状態で配置される。従来、鉛蓄電池の性能を向上させること等を目的として、鉛蓄電池用セパレータの基材の表面に構造体(単に「層」又は「塗工層」ともいう。)を設けることが行われている。
【0005】
特許文献1には、不織布又は織布を用いた多孔性基材シートに合成樹脂と無機粉体との混合物を塗布した鉛蓄電池セパレータによって、電槽内を汚すことなく電池寿命を改善する技術が公開されている。
【0006】
また、特許文献2および3には、工学炭素材料を塗布または添加した鉛蓄電池セパレータによって、鉛蓄電池の充電受入性およびサイクル寿命を改善する技術が公開されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6―236752号公報
【特許文献2】特許第6846933号公報
【特許文献3】国際公開第2022/191150号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1では、セパレータの電気抵抗(ER)を下げる観点から、不織布又は織布を用いており、最大孔径が小さくERが上昇し易い樹脂製の基材に対し、接着性とERを両立させること及びその手段について記載していない。
【0009】
また、特許文献2および3は、基材と層の接着性について、どのような塗布層および樹脂が好ましいか明らかとなっていない。
【0010】
本開示は、セパレータのERを低くすること、且つ基材と層の接着性を兼ね備えた鉛蓄電池用セパレータ、およびこれを用いた鉛蓄電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以下、本開示の実施形態の例を列記する。
[1]
樹脂製の基材と、前記基材の少なくとも片面に積層された層とを有する、鉛蓄電池用セパレータであって、
前記基材と上記層の180度ピール強度が0.50N/10mm以上、かつ前記基材の硫酸中の電気抵抗(ER1)に対して前記基材と前記層の積層体の電気抵抗(ER2)の比(ER2/ER1)が1.05以下である、
鉛蓄電池用セパレータ。
[2]
前記層は樹脂を含み、かつ前記樹脂の中心粒径(d50)が0.45μm以上である、項目1に記載の鉛蓄電池用セパレータ。
[3]
前記層に樹脂が占める割合が、15質量%以上55質量%以下である、項目1又は2に記載の鉛蓄電池用セパレータ。
[4]
前記層の厚みが、0.1μm以上10μm以下である、項目1~3のいずれか一項に記載の鉛蓄電池用セパレータ。
[5]
前記層が炭素材料を含む、項目1~4のいずれか一項に記載の鉛蓄電池用セパレータ。
[6]
前記層が、ファーネスブラック、アセチレンブラック及びケッチェンブラックから成る群から選択される少なくとも一つを含む、項目1~5のいずれか一項に記載の鉛蓄電池用セパレータ。
[7]
正極と、負極と、前記正極及び前記負極の間に項目1~6のいずれか一項に記載の鉛蓄電池用セパレータとを備える、鉛蓄電池。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、セパレータのERを低くすること、且つ基材と層の接着性を兼ね備えた鉛蓄電池用セパレータ、およびこれを用いた鉛蓄電池が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の実施形態の例について、詳細に説明する。なお、本開示は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0014】
《鉛蓄電池用セパレータ》
本開示の鉛蓄電池用セパレータ(以下、単に「セパレータ」ともいう。)は、樹脂製の基材と、該基材の少なくとも片面に積層され、基材と層の180度ピール強度は0.50N/10mm以上を有し、そして上記基材の硫酸中の電気抵抗(ER1)に対して基材と層の積層体の電気抵抗(ER2)の比(ER2/ER1)が1.05以下を有する。本実施形態のセパレータは、正極と負極の間に配置され、正極と負極との電気的短絡を防止することができる。上記層は、基材の両面に積層されていてもよく、基材の片面又は両面の全体に積層されていても部分的に積層されていてもよい。また上記層に更に別の層を積層しても良い。
【0015】
〈180度ピール強度〉
本明細書において「180度ピール強度」とは、上記樹脂製の基材と上記層の界面剥離強度、および/または、上記層の凝集剥離強度を指す。
180度ピール強度が低い場合、充放電サイクルに伴う電極厚みの変化によって、層の剥離や基材からの脱落が生じ、サイクル寿命を悪化させる。この観点から2000サイクル以上のサイクル寿命とするためには、180度(°)ピール強度としては、0.50N/10mm以上が好ましく、より好ましくは0.60N/10mm以上、さらに好ましくは0.70N/10mm以上、特に好ましくは0.80N/10mm以上である。また、180度ピール強度の上限は、特に限定されないが、ERを損なわない範囲で最大とすることが好ましい。
【0016】
〈樹脂〉
本実施形態に係る層は、主材料の結着性を高め、層の剥離や基材からの脱落を抑制する観点から、樹脂を含む。
【0017】
上記層のERを増加させないために、樹脂の中心粒径(d50)は0.45μm以上であることが好ましい。樹脂の平均粒径が小さい場合、樹脂粒径と基材の孔径サイズが近くなり、層の形成時(塗工時)に基材表面の空孔を樹脂が塞いでERが上昇する。また、一定重量で比較した場合、d50が小さくなるにつれ、樹脂の粒子数は増加することとなるため、より基材表面の空孔を覆い易くなり、ERは上昇する。
【0018】
樹脂の層に占める量は、前記層の固形分全体の質量を100質量部として、好ましくは15質量部以上55質量部以下、より好ましくは30質量部~55質量部の範囲内である。樹脂の層に占める割合が60質量%以上となると、ERが上昇し、電極容量およびサイクル寿命を悪化させる。
【0019】
樹脂としては、例えば、スチレン系樹脂、アクリル・ウレタン系樹脂、アクリル・スチレン系樹脂、酢酸ビニル・アクリル系樹脂、スチレン・ブタジエン系樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン系樹脂、天然ゴム系樹脂、ポリブタジエン系樹脂(BR樹脂)、メチルメタクリレート・ブタジエン系樹脂、2-ビニルピリジン・スチレン・ブタジエン系樹脂(VP樹脂)、クロロプレン樹脂(CR樹脂)、ポリエチレン又はポリプロピレン又はポリブテン又はそれらの共重合体等のポリオレフィン系樹脂、該ポリオレフィン系樹脂を塩素化又は酸変性した変性ポリオレフィン系樹脂、ポリフッ化ビニリデン又はポリテトラフルオロエチレン等の含フッ素樹脂、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン共重合体又はエチレン-テトラフルオロエチレン共重合体等の含フッ素ゴムバインダー、(メタ)アクリル酸-スチレン-ブタジエン共重合体樹脂及びその水素化物、ポリビニルアルコール樹脂、及びポリビニルアルコール・ポリアセテート共重合体樹脂等が挙げられる。
【0020】
上記樹脂の中でも、結着性と耐酸性とを向上させる観点から、アクリル系樹脂、又はスチレン系樹脂が好ましく、アクリル系樹脂がより好ましい。なお、本明細書で「アクリル系樹脂」は、アクリル系共重合樹脂、例えばアクリル・ウレタン系樹脂、アクリル・スチレン系樹脂、アクリル・スチレン・ブタジエン系樹脂、及び酢酸ビニル・アクリル系樹脂、並びにアクリル樹脂等の重合体を包含する。また、本明細書で「スチレン系樹脂」は、スチレン系共重合樹脂、例えばアクリル・スチレン系樹脂、スチレン・ブタジエン系樹脂、アクリル・スチレン・ブタジエン系樹脂、及び2-ビニルピリジン・スチレン・ブタジエン系樹脂、並びにスチレン樹脂等の重合体を包含する。
【0021】
これらの樹脂は、上記例示した組成に、その他の成分が1種以上含まれていてもよい。なお、樹脂は、1種に限定されず、複数種を併用することができる。例えば、アクリル系樹脂とスチレン系樹脂の組み合わせ等が例示できる。
【0022】
本実施形態に係る層の厚みは、層の剥離やセパレータからの脱落を抑制し、基材表面に均一に層を形成する観点から、0.1~10μmであることが好ましく、より好ましくは0.1~5μmである。
【0023】
〈炭素材料〉
本実施形態に係る層は、導電性の観点から炭素材料を含むことが好ましい。炭素材料としては、例えば、黒鉛、活性炭、カーボンブラック、グラフェン、及びフラーレン等の炭素クラスター、炭素モノリシック材料、並びにそれらの混合物が挙げられる。上記炭素材料の中でも、導電性の観点から、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、黒鉛、およびカーボンナノチューブが好ましく、ファーネスブラック、アセチレンブラック、およびケッチェンブラックから成る群から選択される少なくとも一つがより好ましい。
【0024】
炭素材料の中心粒径(d50)は、均一な層厚みの形成が容易である観点から、好ましくは0.01μm~50μm、より好ましくは0.01μm~30μm、更に好ましくは0.01μm~10μmである。
【0025】
上記層は、層内での導電ネットワークを形成して表面抵抗を低下させる観点から、上記層の合計質量100質量部を基準として、炭素材料を10質量部以上含むことが好ましい。層内での導電ネットワークを形成し、層の表面抵抗を低下させ、負極表面のサルフェーションを抑制する観点から、炭素材料の含有量の下限値は、層の合計質量100質量部を基準として、より好ましくは11質量部以上、更に好ましくは12質量部以上、更に好ましくは13質量部以上、更に好ましくは14質量部以上、更に好ましくは15質量部以上、更に好ましくは17質量部以上、または更に好ましくは19質量部以上である。また、耐酸化性を向上させる観点から、上記層における炭素材料の含有割合の下限値と組み合わせることができる上限値は、上記層の合計質量100質量部を基準として、好ましくは45質量部以下、より好ましくは44質量部以下、更に好ましくは43質量部以下、更に好ましくは42質量部以下、更に好ましくは41質量部以下、更に好ましくは40質量部以下、または更に好ましくは38質量部以下である。
【0026】
〈無機粒子〉
本実施形態に係る層は、イオン透過性および電池性能向上の観点から、希硫酸に不溶な無機粒子を含んでもよい。不溶な無機粒子とは、25℃で比重1.28の希硫酸200mLに無機粒子2gを添加し、24時間静置させた時に、溶解による重量変化率が1重量%(wt%)以下であるものを示す。無機粒子としては、例えば、シリカ、ゼオライト、シリカゲル、金属粒子、セラミックス、並びにそれらの混合物が挙げられる。
【0027】
無機粒子の含有量は、上記層の全質量を100質量部として、好ましくは3質量部~35質量部、より好ましくは10質量部~30質量部である。
【0028】
〈界面活性剤〉
本実施形態に係る層は、層の主材料を均一に分散させる観点から、界面活性剤を含んでもよい。層の材料が炭素材料である場合、界面活性剤によって炭素材料が層全体に亘って均一に分布し、均一な導電パスを形成することができるため、好ましい。界面活性剤としては、例えば、硫酸エステル型、リン酸エステル型、カルボン酸型、及びスルホン酸型などのアニオン系界面活性剤、第4級アンモニウム塩型、及びアミドアミン型などのカチオン系界面活性剤、アルキルベタイン型、アミドベタイン型、及びアミンオキサイド型などの両性界面活性剤、エーテル型、脂肪酸エステル型、及びアルキルグルコキシドなどの非イオン系界面活性剤、並びにポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、ポリスルホン酸塩、ポリナフタレンスルホン酸塩、ポリアルキレンポリアミンアルキレンオキシド、ポリアルキレンポリイミンアルキレンオキシド、ポリビニルピ口リドン、及びセルロース型などの高分子型界面活性剤など、各種界面活性剤を用いることができる。フィラ一同士の凝集を防ぐ目的で、これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いられる。層の主材料を均一に分散させる効果が得られるものであれば、これらに限定されるものではない。界面活性剤としては、イオン性界面活性剤、すなわちアニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、及び両性界面活性剤からなる群から選択される少なくとも一つを含むことが好ましい。
【0029】
界面活性剤の量は、前記層を100質量部として、好ましくは1質量部~95質量部、より好ましくは10質量部~60質量部である。
【0030】
〈増粘剤〉
本実施形態に係る層は、基材表面に均一に層を形成する観点から、増粘剤を含むことが好ましい。増粘剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ウレタン変性ポリエーテル、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、ビニルメチルエーテル-無水マレイン酸共重合体などの合成高分子、カルボキシメチルセルロース(CMC)、カルボメトキシセルロース、ヒド口キシエチルセルロース、ヒド口キシフ口ピルセルロースなどのセルロース誘導体、キサンタンガム、ダイユータンガム、ウェランガム、ジェランガム、グアーガム、カラギーナンガム、ペクチンなどの天然多糖類、デキス卜リン、アルファ化でんぷんなどのでんぷん類が挙げられる。増粘剤は、スラリーの粘度、ポットライフ及び粒度分布の観点から適宜選択される。これらは1種を単独で文は2種以上を組み合わせても用いられる。
【0031】
増粘剤の量は、前記層を100質量部として、好ましくは0.1質量部~50質量部、より好ましくは1質量部~20質量部である。
【0032】
〈基材〉
イオンが透過し得るように、基材は通常微多孔質である。基材の最大孔径は、500nm以下が好ましく、より好ましくは400nm以下であり、更に好ましくは300nm以下であり、更に好ましくは200nm以下であり、又は更に好ましくは150nm以下である。
【0033】
基材としては、イオンが透過し得るように微多孔質であれば特に限定されず、好ましくはポリビニル、及びポリオレフィン等の熱可塑性ポリマー、フェノール樹脂等の熱硬化性ポリマー、天然又は合成ゴム、及びラテックス等のゴム材料、並びにこれらの組合せ等の天然又は合成材料から製造された多孔質膜が挙げられる。基材は、より好ましくは、熱可塑性ポリマーから製造された微多孔膜である。前記熱可塑性ポリマーとしては、基本的には、鉛蓄電池の用途に適したあらゆる酸耐性熱可塑性材料が挙げられ、好ましい熱可塑性ポリマーとしては、例えばポリビニル、及びポリオレフィン等が挙げられる。ポリビニルとしては、例えばポリ塩化ビニル(PVC)が挙げられる。ポリオレフィンとしては、例えばポリエチレン、及びポリプロピレン等が挙げられる。中でも、基材は、ポリエチレンを含むことが好ましく、膜強度又は鉛蓄電池内での耐久性を向上させる観点から、ポリエチレンは、重量平均分子量が600,000以上の高分子量ポリエチレンであることが好ましい。ポリエチレンは、より好ましくは、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、すなわち重量平均分子量が1,000,000以上、特に4,000,000以上、最も好ましくは5,000,000~8,000,000のポリエチレンである。尚、本明細書における超高分子量ポリエチレンとは、重量平均分子量1,000,000以上のポリエチレンを意味する。これらの基材は、親水性を高める観点から無機粉体を含んでいることが好ましい。
【0034】
基材に使用する無機粒子としては、耐酸性及び耐酸化性に優れ、親水性の高い、シリカ、アルミナ、カオリン、チタニア、ケイ酸アルミニウム又は硫酸バリウムの粒子が好ましく、より好ましくは、シリカ粒子である。また基材は、耐酸化性を高める観点から鉱物オイルを含んでいることが好ましい。
【0035】
《鉛蓄電池》
本開示の鉛蓄電池は、本開示の鉛蓄電池用セパレータを備える。該鉛蓄電池は、正極と、負極と、該正極及び該負極の間に本開示のセパレータを配置した鉛蓄電池である。充電時に効率よく負極の硫酸鉛を還元する観点から、好ましくは前記層を負極に対向させることが好ましい。電解液としては希硫酸を含む電解液を使用することができる。正極を構成する正極格子は鉛又は鉛合金でよく、正極活物質は、酸化鉛、例えば二酸化鉛でよい。負極を構成する負極格子は鉛又は鉛合金でよく、負極活物質は鉛でよく、鉛負極そのものは、例えば海綿状の形態でよい。また、これらの正極及び負極の活物質は、鉛又は鉛合金以外のその他の金属元素を50質量%以下含んでもよい。希硫酸とは、比重1.1~1.4の硫酸であり、電解液は添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、サルフェーションの抑制の観点から、例えば、アルミニウムイオンを含むことができる。その他の添加剤としては、リチウムイオン、ナトリウムイオン等の金属イオンが挙げられる。
【0036】
正極と負極の間に本開示のセパレータを設けることで、電極容量およびサイクル寿命が良好である鉛蓄電池が得られる。本開示の鉛蓄電池用セパレータは、開放式鉛蓄電池、及び制御弁式鉛蓄電池のいずれにおいても使用可能である。
【0037】
《鉛蓄電池用セパレータの製造方法》
〈基材の作製〉
以下、基材がポリオレフィン製、例えば超高分子量ポリエチレンからなる基材を例に挙げて、その製造方法を説明するが、基材は、その上に層を形成することができる限り、以下の製造方法によって得られる基材に限定されない。
【0038】
基材を製造する方法は、以下:
熱可塑性ポリマー、例えば超高分子量ポリエチレン(以後、「UHMWPE」と呼ぶ)を用意する工程と;
粒子状充填剤を用意する工程と;
室温(25℃)において液状物である加工用可塑剤を用意する工程と;
UHMWPE、粒子状充填剤、および加工用可塑剤を混合して、混合物を形成する工程と;
該混合物を、ダイ、例えばスロットダイまたはインフレーションダイ等を通して押出し加工して、シートを形成する工程と;
該シートから部分的または全面的に可塑剤を除去し、それによって微孔質マトリックスを形成する抽出工程と
を含む。上記シートを形成する工程の後、抽出工程の前に、該シートを、冷却ローラ上へのキャスト法、カレンダー法、またはインフレーション法によって、さらに加工してもよい。そのキャスト法またはカレンダー法等で処理されたシートを、次いで、上記抽出工程に供して、部分的または全面的に可塑剤を除去し、それにより微孔質マトリックスを形成することができる。
【0039】
上記方法で得られる該微孔質マトリックスは、UHMWPE、可塑剤(部分的に抽出した場合)、およびマトリックス全体に分散された粒子状充填剤を含む。その粒子状充填剤は、微孔質マトリックスの5重量パーセント~95重量パーセントを占めていることが好ましい。粒子状充填剤としては、例えば、上記で説明された無機粉体のうち、粒子状のものを使用してよい。本願明細書において、「微孔質マトリックス」とは、相互に連通している細孔のネットワークを有し、上記構成材料によって微孔質マトリックス全体が連結されている構造をいう。それらの細孔が、微孔質マトリックスの容積の25パーセント~90パーセントを占めていることが好ましい。基材の製造方法は、抽出工程の後、該微孔質マトリックスを延伸する工程と;その延伸された微孔質マトリックスをカレンダー加工して最終的な微孔質材料を製造する工程を更に含んでもよい。上記カレンダー加工を行うことで、高温においても、寸法安定性に優れる基材が形成できる。
【0040】
〈層の形成〉
本実施形態に係る層は、基材表面に直接形成する場合と、単層または複数の層からなる積層体を形成後に基材と積層する場合とがある。また基材へ本実施形態に係る層を形成後に複数の層を導入してもよい。
【0041】
基材に積層される層を形成する方法は、以下:
層を形成する材料を溶媒と混合する工程と;
基材または積層体の表面に材料の混合物を導入する工程と;
混合物を乾燥させて溶媒を除去する工程と
を含む。材料は、溶媒中で均一化し、混合物とすることが好ましい。溶媒は、水系溶媒でもよいし、有機溶媒でもよい。導入の方法としては、混合物を、例えばダイコート法やグラビアコート法を用いて、基材または積層体の表面へ湿潤状態で塗布することが挙げられる。混合物を塗布した基材または積層体は、プレス等の更なる加工を行ってもよい。
【0042】
《鉛蓄電池の製造方法》
本開示のセパレータを備える鉛蓄電池は、正極と、負極と、該正極及び該負極の間に本開示のセパレータとを備える。鉛蓄電池用セパレータの形態は、鉛蓄電池の各構成部材と適合するように、決定されることができる。本開示の鉛蓄電池は、好ましくは、電槽、正極、負極、及び電解液として希硫酸を含み、該正極と該負極の間に本開示のセパレータを配置した鉛蓄電池である。正極を構成する正極格子は鉛又は鉛合金でよく、正極活物質は、酸化鉛、例えば二酸化鉛でよい。負極を構成する負極格子は鉛又は鉛合金でよく、負極活物質は鉛でよく、鉛負極そのものは、例えば海綿状の形態でよい。また、これらの正極及び負極の活物質については、上記組成にその他の金属元素が30質量%以下で含まれていてよい。また、希硫酸は、上記の定義のとおりであり、さらに添加剤を含むことができる。上記基材と上記層の接着性と低ERを両立したセパレータを鉛蓄電池に使用することで、層の剥離や基材からの脱落を抑制し、電解液の拡散を向上させることができる。その為、鉛蓄電池の上記正極と上記負極の間に本開示のセパレータを配置することが好ましい。特に限定されないが、セパレータは、負極の充電受入性を向上させる観点から、上記層を負極側に配置することが好ましい。本開示の鉛蓄電池用セパレータは、開放式鉛蓄電池、及び制御弁式鉛蓄電池のいずれにおいても使用可能である。
【実施例0043】
以下、本発明の実施例について詳述するが、これらは説明のために記述されるものであり、本発明の範囲が以下の実施例に限定されるものではない。実施例および比較例で得たセパレータおよび鉛蓄電池の各種評価結果を表1に示す。各評価項目について、評価手法を以下に説明する
【0044】
《樹脂の中心粒径(d50)》
中心粒径の測定には、マイクロトラック・ベル社製MT3300EX1(光学台)とSDC(資料循環器)を用いた。測定用ソフトウェアはMicrotracIIを用いた。測定条件は、以下のとおりとした。
[測定条件]
Set Zero時間: 10
測定時間: 10
測定回数: 1
また、分析条件は樹脂の主材料に応じて変更する必要がある。一例としてアクリル樹脂を主材料とし、水溶媒をサンプルとした場合の分析条件を以下に示す。
[分析条件]
透過性: 吸収
粒子屈折率: 1.49
形状: 非球形
溶媒屈折率: 1.333
【0045】
《180度ピール強度》
〈サンプル作製〉
セパレータをTD方向に幅30mm、MD方向に長さ300mmでカットした。測定面と反対面に両面テープ(日東電工製、品番:No.5000NS)を貼り、1mm厚のSUS板に貼りつけた。測定面にはセロテープ(登録商標)(ニチバン株式会社製、品番:405、幅24mm、長さ300mm)を手動でローラを押し当て、MD方向に圧着しながらセパレータに貼りつけた。
【0046】
〈ピール強度測定〉
測定には、株式会社エー・アンド・デイ社製テンシロンRTG-1210を用いた。試験速度は30mm/minとし、測定開始後、最初の25mmの長さの測定値は無視し、その後、試験板から引き剥がされた50mmの長さの粘着力測定値を平均し、10mm幅に換算して180度(°)ピール強度とした。
【0047】
《表面層の膜厚》
表面層の膜厚の観察及び測定には、KEYENCE社製デジタルマイクロスコープVHX-6000を用いた。セパレータの断面をデジタルマイクロスコープで観察し(倍率200倍)、セパレータの塗工層について、断面厚みを任意の3点で測定し、該3点の相加平均値を算出した。
【0048】
《電解液中の電気抵抗(ER)》
ERの測定には、Caltronics社製Palico測定システムを用い、硫酸浴には、比重1.28の希硫酸を用い、硫酸浴の温度は27℃とした。測定前にセパレータを24時間、比重1.28、温度25℃の希硫酸に浸漬した。上記測定条件にて、セパレータのERを3点測定し、平均値を求めた。単位はΩ・cmである。求められたERについて、基材の電気抵抗をER1とし、基材と層の積層体のERをER2とし、ER2/ER1の比(ER比)を算出した。ER比が1.0より高いほど、層の電気抵抗が高いことを示す。
【0049】
〈電極容量〉
ポリカーボネート製電槽、酸化鉛正極2枚、鉛負極1枚を用い、比重1.28の希硫酸を電解液として注入して、鉛蓄電池(2V単セル)を作製した。この鉛蓄電池を用いて、電極容量およびサイクル試験を実施した。該試験には、アスカ電子社製充放電試験装置 ACD-01 G-Versionを用いた。
【0050】
電極容量測定は充放電サイクル試験の実施前に測定した。具体的には、25℃において、以下の(1)に示す初充電を行った後、(2)~(3)を1サイクルとして、5サイクル目が完了した時点でサイクルを停止させた。この時、5サイクル目の放電容量を電極容量として使用した。求められた電極容量について、基材(層を有さないセパレータ)に対して、98%以上の電極容量を示すセパレータをA、95%以上の電極容量を示すセパレータをB、90%以上の電極容量を示すセパレータをCとした。
(1)初充電:電流レート0.1C(2×I20)、電圧値2.67V、24時間の定電流-定電圧充電
(2)放電:電流レート0.05C(1×I20)、終止条件:電圧値1.75Vの定電流放電
(3)充電:電流レート0.1C(2×I20)、電圧値2.47V、24時間の定電流-定電圧充電
【0051】
〈サイクル試験〉
充放電サイクル試験の具体的な条件は、以下のとおりである。25℃において、満充電状態の鉛蓄電池に対して以下の(4)に示す初放電を行った後、下記(5)~(6)を1サイクルとして、電池の放電終端電圧が1.75Vを下回るまでサイクルを繰り返し、その時のサイクル数を、サイクル寿命として求めた。
(4)初放電:電流レート0.2C(4×I20)、150分間の定電流放電
(5)充電:電流レート0.35C(7×I20)、電圧値2.4V、40分間の定電流-定電圧充電
(6)放電:電流レート0.35C(7×I20)、電圧値1.75V、30分間の定電流-定電圧放電
【0052】
《参考例》
基材には、ポリエチレン、シリカ粒子、および鉱物オイルを含有するセパレータ(Daramic社製)を用いた。該基材は、厚み200μmの平膜の片面に高さ600μmのリブ(凸形状)を有し、平均流量孔径は30nm、最大孔径は83nmであった。
【0053】
《実施例1》
層の形成のために、スラリーの調製を行った。固形分としてカーボンブラック、イオン性界面活性剤、アクリル系樹脂、所望により増粘剤、所望によりカーボンナノチューブ、およびシリカ粒子を水中に分散及び混合し、固形分濃度3質量%のスラリーを調製した。この時、スラリー中の固形分全体の質量(得られる層の合計質量に対応)を100質量部として、中心粒径(d50)0.71μmのカーボンブラック(ファーネスブラック)を63.8質量部、イオン性界面活性剤を21.2質量部、および中心粒径(d50)0.45μmのアクリル系樹脂(水系ラテックス)15.0質量部(固形分換算)を調合した。アプリケーターを用い、該スラリーを参考例に記載の基材の片面へ手動塗工(ハンドコート)し、80℃のオーブンで5分間乾燥し、上記層を基材片面に備えるセパレータを得た。この時アプリケーターのギャップ(セパレータとアプリケーターとの間に形成されるクリアランス)は、45μmであった。得られたセパレータを用いて、膜物性および電池性能を確認した。得られた結果を表1に記載する。
【0054】
《実施例2》
スラリーについて、カーボンブラックの量を63.8質量部から33.8質量部に変更した点、イオン性界面活性剤の量を11.2質量部に変更した点、およびアクリル系樹脂の量を55.0質量部(固形分換算)に変更した点を除き、実施例1と同様である。
【0055】
《実施例3》
スラリーについて、アクリル系樹脂の中心粒径を0.45μmから0.55μmに変更した点を除き、実施例1と同様である。
【0056】
《実施例4》
スラリーについて、カーボンブラックの量を63.8質量部から45.0質量部に変更した点、イオン性界面活性剤の量を15.0質量部に変更した点、アクリル系樹脂の中心粒径を0.55μmに変更した点、およびアクリル系樹脂の量を40.1質量部(固形分換算)に変更した点を除き、実施例1と同様である。
【0057】
《実施例5》
スラリーについて、カーボンブラックの量を63.8質量部から37.5質量部に変更した点、イオン性界面活性剤の量を12.5質量部に変更した点、アクリル系樹脂の中心粒径を0.55μmに変更した点、およびアクリル系樹脂の量を50.0質量部(固形分換算)に変更した点を除き、実施例1と同様である。
【0058】
《実施例6》
スラリーについて、カーボンブラックの量を63.8質量部から33.8質量部に変更した点、イオン性界面活性剤の量を11.2質量部に変更した点、アクリル系樹脂の中心粒径を0.55μmに変更した点、およびアクリル系樹脂の量を55.0質量部(固形分換算)に変更した点を除き、実施例1と同様である。
【0059】
《実施例7》
スラリーについて、カーボンブラックの量を63.8質量部から33.8質量部に変更した点、イオン性界面活性剤の量を11.2質量部に変更した点、アクリル系樹脂の中心粒径を0.85μmに変更した点、およびアクリル系樹脂の量を55.0質量部(固形分換算)に変更した点を除き、実施例1と同様である。
【0060】
《実施例8》
スラリーについて、カーボンブラックの量を63.8質量部から33.8質量部に変更した点、イオン性界面活性剤の量を11.2質量部に変更した点、アクリル系樹脂の中心粒径を0.55μmに変更した点、アクリル系樹脂の量を55.0質量部(固形分換算)に変更した点、および手動塗工(ハンドコート)時のアプリケーターのギャップ(セパレータとアプリケーターとの間に形成されるクリアランス)を、45μmから120μmに変更した点を除き、実施例1と同様である。
【0061】
《実施例9》
スラリーについて、中心粒径(d50)0.71μmのカーボンブラック(ファーネスブラック)を中心粒径(d50)0.80μmのカーボンブラック(アセチレンブラック)に変更した点を除き、実施例1と同様である。
【0062】
《比較例1》
スラリーについて、アクリル系樹脂の中心粒径を0.45μmから0.20μmに変更した点を除き、実施例1と同様である。
【0063】
《比較例2》
スラリーについて、カーボンブラックの量を63.8質量部から33.8質量部に変更した点、イオン性界面活性剤の量を11.2質量部に変更した点、アクリル系樹脂の中心粒径を0.45μmから0.20μmに変更した点、およびアクリル系樹脂の量を55.0質量部(固形分換算)に変更した点を除き、実施例1と同様である。
【0064】
《比較例3》
スラリーについて、カーボンブラックの量を63.8質量部から64.5質量部に変更した点、イオン性界面活性剤の量を21.5質量部に変更した点、アクリル系樹脂の中心粒径を0.45μmから0.55μmに変更した点、およびアクリル系樹脂の量を14.0質量部(固形分換算)に変更した点を除き、実施例1と同様である。
【0065】
《比較例4》
スラリーについて、カーボンブラックの量を63.8質量部から30.0質量部に変更した点、イオン性界面活性剤の量を10.0質量部に変更した点、アクリル系樹脂の中心粒径を0.45μmから0.55μmに変更した点、およびアクリル系樹脂の量を60.0質量部(固形分換算)に変更した点を除き、実施例1と同様である。
【0066】
《比較例5》
スラリーについて、カーボンブラックの量を63.8質量部から33.8質量部に変更した点、イオン性界面活性剤の量を11.2質量部に変更した点、アクリル系樹脂の中心粒径を0.45μmから0.55μmに変更した点、アクリル系樹脂の量を55.0質量部(固形分換算)に変更した点、および手動塗工(ハンドコート)時のアプリケーターのギャップ(セパレータとアプリケーターとの間に形成されるクリアランス)を、45μmから150μmに変更した点を除き、実施例1と同様である。
【0067】
以下、表1に実施例及び比較例の結果を示す。
【0068】
【表1】
【0069】
実施例と比較例の結果より、180度ピール強度が0.50N/10mm以上、かつER比が1.05以下の場合に、層の剥離や基材からの脱落が抑制され、効果的に電極に作用し、また電解液の拡散が容易になるため、サイクル数が2000サイクル以上と長寿命となる。また樹脂の中心粒径が0.45μm未満、もしくは層の厚みが10μmを超える場合、ERの増加が顕著となりサイクル寿命を悪化させる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本開示の鉛蓄電池用セパレータは、鉛蓄電池、例えば液式バッテリー(Flooded Battery(FB))用として有用であり、特に強化型液式バッテリー(Enhanced Flooded Battery(EFB))のセパレータとして適している。