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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024012951
(43)【公開日】2024-01-31
(54)【発明の名称】データ処理システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/86 20060101AFI20240124BHJP
   G01N 30/72 20060101ALI20240124BHJP
   G01N 27/62 20210101ALI20240124BHJP
【FI】
G01N30/86 D
G01N30/86 P
G01N30/72 C
G01N27/62 Y
G01N27/62 X
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022114804
(22)【出願日】2022-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100205981
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 大輔
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 智裕
【テーマコード(参考)】
2G041
【Fターム(参考)】
2G041CA01
2G041EA04
2G041HA01
2G041HA04
2G041LA03
2G041MA01
2G041MA05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】クロマトグラム上の各ピーク部分が共溶出であるか否かをユーザが容易に認識できるようにする。
【解決手段】クロマトグラフ質量分析装置(100)のデータ処理システム(1)であって、測定データに基づいてクロマトグラムを作成し、クロマトグラムと質量分析データとの対応関係を用いて、クロマトグラム上のピーク部分のうち複数の成分のピークが重なって1つのピーク形状を形成しているピーク部分を共溶出ピークとして特定するように構成され、情報表示部(12)は、クロマトグラムを表示する際に、データ処理部(10)によって共溶出ピークとして特定されたピーク部分を他のピーク部分とは異なる態様で表示し、それによって、クロマトグラム上の各ピーク部分が共溶出ピークであるか否かをユーザに視覚的に認識させるように構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロマトグラフ質量分析装置を用いてサンプルを分析することによって質量分析計によって取得された質量分析データと質量分析計でない検出器によって取得された測定データとを分析データとして保持するデータ保持部と、
前記データ保持部に保持された前記分析データを用いてデータ処理を行なうように構成されたデータ処理部と、
前記データ処理部によって処理されたデータを表示するように構成された情報表示部と、を備えたデータ処理システムであって、
前記データ処理部は、前記測定データに基づいてクロマトグラムを作成し、前記クロマトグラムと前記質量分析データとの対応関係を用いて、前記クロマトグラム上のピーク部分のうち複数の成分のピークが重なって1つのピーク形状を形成しているピーク部分を共溶出ピークとして特定するように構成され、
前記情報表示部は、前記クロマトグラムを表示する際に、前記データ処理部によって前記共溶出ピークとして特定されたピーク部分を他のピーク部分とは異なる態様で表示し、それによって、前記クロマトグラム上の各ピーク部分が前記共溶出ピークであるか否かをユーザに視覚的に認識させるように構成されている、データ処理システム。
【請求項2】
前記情報表示部は、前記異なる態様として、前記共溶出ピークとして特定されたピーク部分に前記他のピーク部分とは異なる色を付するように構成されている、請求項1に記載のデータ処理システム。
【請求項3】
前記データ処理部は、前記クロマトグラム上の各ピーク部分に含まれている成分のマスクロマトグラムを前記質量分析データから抽出するように構成され、
前記情報表示部は、ユーザによって前記クロマトグラム上でピーク部分が指定されたときに、指定された前記ピーク部分に含まれる成分のマスクロマトグラムを前記クロマトグラムと並べて表示するように構成されている、請求項1に記載のデータ処理システム。
【請求項4】
前記データ処理部は、前記クロマトグラム上の各ピーク部分に関するピーク情報であって各ピーク部分が前記共溶出ピークであるか否かを一覧で示す情報を含むピークテーブルを前記分析データに基づいて作成するように構成され、
前記情報表示部は、ユーザからの要求に基づき、前記データ処理部により作成された前記ピークテーブルを表示するように構成されている、請求項1に記載のデータ処理システム。
【請求項5】
前記データ保持部は、前記クロマトグラフ質量分析装置を用いて同一のサンプルについて互いに異なる複数の分析メソッドを用いて分析を行なって取得された複数の分析データを保持しており、
前記データ処理部は、前記複数の分析データのそれぞれに基づく複数のクロマトグラムを作成し、前記複数のクロマトグラムのいずれかを基準クロマトグラムとし、前記複数のクロマトグラムのうち前記基準クロマトグラム以外のクロマトグラム上のピーク部分が前記基準クロマトグラム上のピーク部分のいずれに対応するかを特定するピーク同定を実行するように構成され、
共溶出ピークを前記ピーク同定の対象から除外するか否かを予めユーザが設定し得るように構成されており、
前記共溶出ピークを前記ピーク同定の対象から除外することが予め設定されている場合に、前記データ処理部は、前記共溶出ピークとして特定されたピーク部分を前記ピーク同定の対象から除外するように構成されている、請求項1に記載のデータ処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロマトグラフ質量分析装置により得られた分析データを用いてデータ処理を行なうデータ処理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
液体クロマトグラフやガスクロマトグラフなどのクロマトグラフでは、対象サンプルの分析に最適な分析メソッド(使用する分離カラム、移動相、移動相の流量などの条件の組合せ)を開発するために、様々な分析メソッドを使用して複数回にわたって分析を行ない、各分析で得られた分析データを比較することによって対象サンプル中の成分が最もよく分離できている分析メソッドを探索するという作業が行われる。
【0003】
分析メソッドによっては、サンプル中の複数の成分が互いに完全に分離されない状態で分離カラムから溶出される、所謂、共溶出が起こることがある。共溶出が起こると、複数の成分のピークがクロマトグラム上で重なって1つのピーク形状(以下、共溶出ピークと称する)を形成する。そのため、クロマトグラム上でピーク形状を形成している部分(以下、ピーク部分という)が共溶出ピークかどうかを確認しながら、各分析メソッドでの分析によって得られた実験データを評価する必要がある。
【0004】
ここで、特許文献1では、PDA(フォトダイオードアレイ)検出器などの質量分析計以外の検出器と質量分析計とを分離カラムの下流に備えたクロマトグラフ質量分析装置の分析データを使用して、検出器の測定データから得られるクロマトグラムに質量分析データから得られる情報を付加することが開示されている。開示の技術によれば、クロマトグラムに、どのような質量電化比をもった成分が溶出しているかといった情報を付加することもできるので、ユーザがその付加情報を参照すればクロマトグラム上の各ピークが共溶出ピークであるか否かを確認することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2020/194582号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
メソッド開発では、同一サンプルについて得られた多数のクロマトグラムを参照しながら分離が良好なメソッドを選ぶ必要がある。その際、質量分析データから抽出された付加情報がクロマトグラムに付加されていても、各クロマトグラムの各ピーク部分が共溶出ピークであるか否かをユーザが付加情報を参照しながら確認する必要があり、ユーザにとってどのクロマトグラムが良好な分離を示しているのかを視覚的に認識することが容易であるとは言えない。
【0007】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、クロマトグラム上の各ピーク部分が共溶出であるか否かをユーザが容易に認識できるようにすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るデータ処理システムは、クロマトグラフ質量分析装置を用いてサンプルを分析することによって質量分析計によって取得された質量分析データと質量分析計でない検出器によって取得された測定データとを分析データとして保持するデータ保持部と、前記データ保持部に保持された前記分析データを用いてデータ処理を行なうように構成されたデータ処理部と、前記データ処理部によって処理されたデータを表示するように構成された情報表示部と、を備えたデータ処理システムであって、前記データ処理部は、前記測定データに基づいてクロマトグラムを作成し、前記クロマトグラムと前記質量分析データとの対応関係を用いて、前記クロマトグラム上のピーク部分のうち複数の成分のピークが重なって1つのピーク形状を形成しているピーク部分を共溶出ピークとして特定するように構成され、前記情報表示部は、前記クロマトグラムを表示する際に、前記データ処理部によって前記共溶出ピークとして特定されたピーク部分を他のピーク部分とは異なる態様で表示し、それによって、前記クロマトグラム上の各ピーク部分が前記共溶出ピークであるか否かをユーザに視覚的に認識させるように構成されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るデータ処理システムによれば、検出器によって取得された測定データに基づくクロマトグラムと質量分析計によって取得された質量分析データを用いて共溶出ピークを特定し、クロマトグラムを表示する際に、共溶出ピークとして特定されたピーク部分を他のピーク部分とは異なる態様で表示することによって各ピーク部分が共溶出ピークであるか否かをユーザに視覚的に認識させるので、クロマトグラム上の各ピークが共溶出であるか否かをユーザが容易に認識できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】データ処理システムの一実施例を示すブロック図である。
図2】同実施例においてクロマトグラムを表示する際の動作の一例を示すフローチャートである。
図3】クロマトグラム上でピークが指定されたときの動作の一例を示すフローチャートである。
図4】ディスプレイに表示されたクロマトグラムの一例である。
図5】クロマトグラム上で共溶出ピークが指定されたときの画面の一例である。
図6】ピークテーブルが表示された画面の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係るデータ処理システムの一実施例について、図面を参照しながら説明する。
【0012】
図1に示されているように、データ処理システム1は、データ処理装置2、入力装置4、及びディスプレイ6を備えている。データ処理装置2は、専用のプログラムが導入されたパーソナルコンピュータなどのコンピュータ装置によって実現される。入力装置4は、デー処理装置2と通信可能に接続されたキーボード及び/又はマウス等によって実現される。ユーザは、入力装置4を介してデータ処理装置2に対して情報入力を行なうことができる。ディスプレイ6はデータ処理装置2と通信可能に接続され、データ処理装置2から出力される情報を表示する。
【0013】
データ処理装置2は、データ保持部8、データ処理部10、及び情報表示部12を備えている。データ処理装置2には、液体クロマトグラフ質量分析装置100(以下、LC-MS100と称する)でサンプルを分析することによって取得された分析データが取り込まれ、取り込まれた分析データがデータ保持部8に保持される。
【0014】
LC-MS100は、分離カラムの下流に設けられた質量分析計以外の検出器(例えば、UV検出器)と、その検出器の下流に設けられた質量分析計と、を備えたものである。LC-MS100の検出器では、分離カラムからの溶出時間(保持時間)と分離カラムからの溶出液中の成分濃度に応じた信号強度との関係を示す測定データが得られる。LC-MS100の質量分析計では、検出器を経た溶出液中の成分の質量電化比(m/z)と成分量に応じた信号強度との関係を示す一定時間ごとのスキャンデータが質量分析データとして得られる。データ保持部8には、検出器によって取得された測定データと質量分析計によって取得された質量分析データが保持される。データ保持部8は、データ処理装置2に設けられているデータ記憶装置の一部の記憶領域によって実現される。
【0015】
データ処理部10は、データ保持部8に保持された分析データのデータ処理を実行するように構成されている。データ処理部10により実行されるデータ処理の詳細については後述する。データ処理部10は、データ処理装置2に設けられているCPU(中央演算装置)がプログラムを実行することによって得られる機能である。
【0016】
情報表示部12は、データ処理部10によって処理されたデータをディスプレイ6に表示するように構成されている。情報表示部12も、データ処理装置2に設けられているCPUがプログラムを実行することによって得られる機能である。
【0017】
この実施例のデータ処理システム1は、LC-MS100の検出器で得られた測定データに基づいて作成されるクロマトグラムをディスプレイ6に表示する際に、クロマトグラムに現れているピーク部分(波形がピーク形状になっている部分)が共溶出ピークであるか否かをユーザが視覚的に認識できるように、共溶出ピークであるピーク部分を他のピーク部分とは異なる態様で示すようになっている。共溶出ピークとは、複数の成分のピークが互いに重なって1つのピーク形状を形成しているピーク部分である。クロマトグラム上の各ピーク部分が共溶出ピークであるか否かは、例えば、国際公開第2020/194582号に開示されている方法を用いて判定することができる。
【0018】
以下に、クロマトグラムの表示に関するデータ処理動作の一例について、図2のフローチャートを参照しながら説明する。
【0019】
最初に、データ処理部10は、対象となる分析データを読み込む(ステップ101)。データ処理部10は、検出器によって得られた測定データを使用してクロマトグラムを作成し、質量分析計によって得られた質量分析データを使用して、1回の質量走査を行なう間に検出されたイオンの強度を合計することによってトータルイオンクロマトグラム(TIC)を作成する(ステップ102)。
【0020】
次に、データ処理部10は、クロマトグラムとTICのそれぞれで、ピーク状の波形を形成しているピーク部分を検出する(ステップ103)。ピーク部分の検出には、クロマトグラムの傾きに基づいてピーク開始点、ピークトップ及びピーク終了点を検出する方法などを使用することができる。クロマトグラムとTICのそれぞれでピーク部分を検出した後、データ処理部10は、検出器を通過した成分が質量分析計に流入するまでの遅れ時間を考慮して、クロマトグラム上のピーク部分とTIC上のピーク部分とを対応付ける(ステップ104)。例えば、TICの溶出時間から遅れ時間を引き、クロマトグラム上のピーク部分とTIC上のピーク部分の溶出時間が略同じであるピーク同士を対応付ける。
【0021】
次に、データ処理部10は、TIC上の各ピーク部分の開始点から終了点までの範囲内でマスクロマトグラムを算出し、TIC上の各ピーク部分に含まれるピークを検出する(ステップ105)。その後、データ処理部10は、ピーク部分ごとに、ピークが検出されたマスクロマトグラムのピークトップ保持時間を比較することによって、TIC上の各ピーク部分に含まれる成分数を割り出す。各ピーク部分に含まれる成分数を割り出す際、マスクロマトグラムのピーク保持時間の差が一定範囲内であれば同一成分のものであると判断し、ピークトップ保持時間の差が一定範囲を超えているマスクロマトグラムは互いに異なる成分のものであると判断する。データ処理部10は、単一のピーク部分に複数の成分が含まれている場合は共溶出であると判断し、当該ピーク部分を共溶出ピークであると特定する(ステップ106)。
【0022】
上記の処理の過程において、各ピーク部分に含まれる成分のマスクロマトグラムがデータ処理部10によって抽出され、所定のデータ記憶領域に記憶される。同一成分について複数のマスクロマトグラムが存在する場合、信号強度が最大の質量電化比のマスクロマトグラムが当該成分のマスクロマトグラムとして抽出される。
【0023】
情報表示部12は、例えばユーザからの要求に従って、ディスプレイ6にクロマトグラムを表示する際に、データ処理部10によって共溶出ピークとして特定されたピーク部分を他のピーク部分と色分けし(ステップ107)、ユーザが共溶出ピークであるピーク部分とそうでないピーク部分とを視覚的に識別できるような状態のクロマトグラムをディスプレイ6に表示する(ステップ108)。
【0024】
図4は、共溶出ピークとして特定されたピーク部分とそれ以外のピーク部分とが色分けされた状態でディスプレイ6に表示されたクロマトグラムの一例である。この例では、共溶出ピークとして特定されたピーク部分にのみ色が塗られており、共溶出ピークが存在するか否か、どのピーク部分が共溶出ピークであるかが一目瞭然である。
【0025】
また、図3に示されているように、情報表示部12は、ディスプレイ6に表示されているマスクロマトグラム上で任意のピーク部分を指定すると、指定されたピーク部分に含まれる成分のマスクロマトグラムを所定のデータ記憶領域から読み出し(ステップ201)、読み出したマスクロマトグラムをクロマトグラムと同一画面上に表示する(ステップ202)。ユーザが共溶出ピークを指定した場合、図5に示されているように、その共溶出ピークに含まれている複数成分のそれぞれのマスクロマトグラムが表示される。クロマトグラムと同一画面に表示されたマスクロマトグラムには当該成分の質量電化比も示される。これにより、ユーザは、どのような質量電化比をもった成分が共溶出しているのかを容易に確認することができる。
【0026】
また、データ処理部10は、クロマトグラム上の各ピーク部分に関する情報を一覧で示すピークテーブルを作成する機能を有し、情報表示部12は、ユーザからの要求に従って、データ処理部10により作成されたピークテーブルをディスプレイ6に表示する機能を有する。図6はディスプレイ6に表示されたピークテーブルの一例である。ピークテーブルで示される情報には、クロマトグラム上の各ピーク部分が共溶出ピークであるか否かに関する情報が含まれる。これにより、ユーザは、クロマトグラム上の色分けだけでなく、ピークテーブルからも、当該クロマトグラムが共溶出ピークを含むか否か、どのピーク部分が共溶出ピークであるかといった情報を容易に得ることができる。
【0027】
また、データ保持部8には、同一成分について互いに異なる分析メソッドを使用して取得された複数の分析データを保持させることができる。その場合、データ処理部10は、データ保持部8に保持されている同一成分についての複数の分析データを使用して分析メソッドごとの複数のクロマトグラムを作成し、複数のクロマトグラムのそれぞれに現れているピークを互いに対応付けるピーク同定を実行することができる。ピーク同定では、複数のクロマトグラムのうちの1つを基準クロマトグラムとし、他のクロマトグラム上のピークのそれぞれが基準クロマトグラム上のどのピークに対応するかを特定する。このピーク同定では、ピーク面積、ピーク高さ、ピーク面積%(同一クロマトグラム上の全ピークの合計面積のうち当該ピークの面積割合)、高さ%(同一クロマトグラム上の全ピークの合計高さのうち当該ピークの高さ割合)、ピークNo(溶出順位)、UVスペクトルの類似度、マススペクトルの類似度、マススペクトルのベースピークの質量電化比、などを使用して行なうことができる。このようなピーク同定の対象として共溶出ピークを含めるか否かをユーザが任意に設定できるようになっていてもよい。その場合、ユーザが共溶出ピークをピーク同定の対象から除外するように設定すると、データ処理部10は、共溶出ピークをピーク同定の対象から除外する。
【0028】
以上において説明した実施例は、本発明に係るデータ処理システムの実施形態の一例に過ぎない。本発明に係るデータ処理システムの実施形態は以下の通りである。
【0029】
本発明に係るデータ処理システムの一実施形態では、クロマトグラフ質量分析装置を用いてサンプルを分析することによって質量分析計によって取得された質量分析データと質量分析計でない検出器によって取得された測定データとを分析データとして保持するデータ保持部と、前記データ保持部に保持された前記分析データを用いてデータ処理を行なうように構成されたデータ処理部と、前記データ処理部によって処理されたデータを表示するように構成された情報表示部と、を備えたデータ処理システムであって、前記データ処理部は、前記測定データに基づいてクロマトグラムを作成し、前記クロマトグラムと前記質量分析データとの対応関係を用いて、前記クロマトグラム上のピーク部分のうち複数の成分のピークが重なって1つのピーク形状を形成しているピーク部分を共溶出ピークとして特定するように構成され、前記情報表示部は、前記クロマトグラムを表示する際に、前記データ処理部によって前記共溶出ピークとして特定されたピーク部分を他のピーク部分とは異なる態様で表示し、それによって、前記クロマトグラム上の各ピーク部分が前記共溶出ピークであるか否かをユーザに視覚的に認識させるように構成されている。
【0030】
上記一実施形態の第1態様では、前記情報表示部は、前記異なる態様として、前記共溶出ピークとして特定されたピーク部分に前記他のピーク部分とは異なる色を付するように構成されている。
【0031】
上記一実施形態の第2態様では、前記データ処理部は、前記クロマトグラム上の各ピーク部分に含まれている成分のマスクロマトグラムを前記質量分析データから抽出するように構成され、前記情報表示部は、ユーザによって前記クロマトグラム上でピーク部分が指定されたときに、指定された前記ピーク部分に含まれる成分のマスクロマトグラムを前記クロマトグラムと並べて表示するように構成されている。これにより、クロマトグラム上の各ピーク部分にどのような質量電化比をもつ成分が含まれているかを容易に確認することができる。
【0032】
上記一実施形態の第3態様では、前記データ処理部は、前記クロマトグラム上の各ピーク部分に関するピーク情報であって各ピーク部分が前記共溶出ピークであるか否かを一覧で示す情報を含むピークテーブルを前記分析データに基づいて作成するように構成され、前記情報表示部は、ユーザからの要求に基づき、前記データ処理部により作成された前記ピークテーブルを表示するように構成されている。
【0033】
上記一実施形態の第4態様では、前記データ保持部は、前記クロマトグラフ質量分析装置を用いて同一のサンプルについて互いに異なる複数の分析メソッドを用いて分析を行なって取得された複数の分析データを保持しており、前記データ処理部は、前記複数の分析データのそれぞれに基づく複数のクロマトグラムを作成し、前記複数のクロマトグラムのいずれかを基準クロマトグラムとし、前記複数のクロマトグラムのうち前記基準クロマトグラム以外のクロマトグラム上のピーク部分が前記基準クロマトグラム上のピーク部分のいずれに対応するかを特定するピーク同定を実行するように構成され、共溶出ピークを前記ピーク同定の対象から除外するか否かを予めユーザが設定し得るように構成されており、前記共溶出ピークを前記ピーク同定の対象から除外することが予め設定されている場合に、前記データ処理部は、前記共溶出ピークとして特定されたピーク部分を前記ピーク同定の対象から除外するように構成されている。
【符号の説明】
【0034】
1 データ処理システム
2 データ処理装置
4 入力装置
6 ディスプレイ
8 データ保持部
10 データ処理部
12 情報表示部
100 LC-MS
図1
図2
図3
図4
図5
図6