(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129512
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】3相電流共振型DC/DCコンバータ
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20240919BHJP
【FI】
H02M3/28 Q
H02M3/28 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038762
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】000004606
【氏名又は名称】ニチコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】弁理士法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 雅史
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AS08
5H730BB27
5H730BB61
5H730DD03
5H730DD04
5H730DD16
5H730EE04
5H730EE07
5H730EE13
5H730FG00
5H730FG07
(57)【要約】
【課題】素子および回路を追加することなく、広範囲の出力電圧に対応することが可能な3相電流共振型DC/DCコンバータを提供する。
【解決手段】トランス部10と、1次側スイッチング回路11と、1次側共振回路12と、2次側スイッチング回路13と、制御部15Aとを備える3相電流共振型DC/DCコンバータ1Aであって、制御部15Aは、1次側スイッチング回路11の駆動周波数が所定の第1周波数以下の場合、2次側スイッチング回路13を短絡状態にするブースト期間を生じさせるブースト制御を行い、第1の共振期間内にスイッチング素子Q8をオンさせてブースト期間を生じさせ、第2の共振期間内にスイッチング素子Q10をオンさせてブースト期間を生じさせ、第3の共振期間内にスイッチング素子Q12をオンさせてブースト期間を生じさせることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1トランス回路、第2トランス回路および第3トランス回路を含み、各トランス回路が1次側コイルおよび2次側コイルを含むトランス部と、
並列接続された第1レグ、第2レグおよび第3レグを含み、各レグが直列接続された上アームおよび下アームを含み、各アームが並列接続されたスイッチング素子、逆接ダイオードおよび部分共振コンデンサを含む1次側スイッチング回路と、
前記第1レグおよび前記第1トランス回路の前記1次側コイルに接続される第1共振回路、前記第2レグおよび前記第2トランス回路の前記1次側コイルに接続される第2共振回路、前記第3レグおよび前記第3トランス回路の前記1次側コイルに接続される第3共振回路を含み、各共振回路が共振コイルおよび共振コンデンサを含む1次側共振回路と、
並列接続された第4レグ、第5レグおよび第6レグを含み、各レグが並列接続されたスイッチング素子、逆接ダイオードおよび部分共振コンデンサを含む2次側スイッチング回路と、
前記1次側スイッチング回路および前記2次側スイッチング回路を制御する制御部と、
を備え、前記1次側スイッチング回路から前記2次側スイッチング回路への順方向電力伝送を行う3相電流共振型DC/DCコンバータであって、
前記制御部は、
前記1次側スイッチング回路の駆動周波数が第1周波数よりも高い場合、または前記1次側スイッチング回路の入力電圧が第1入力電圧以上の場合、前記2次側スイッチング回路の出力に応じて前記駆動周波数を制御する周波数変調制御を行い、
前記入力電圧が前記第1入力電圧より低く、かつ前記駆動周波数が前記第1周波数以下の場合、前記2次側スイッチング回路を短絡状態にするブースト期間を生じさせるブースト制御を行い、
前記ブースト制御時の前記制御部は、
前記第1共振回路と前記第2共振回路に共振電流が流れる期間内、前記第2共振回路と前記第3共振回路に共振電流が流れる期間内、および前記第3共振回路と前記第1共振回路に共振電流が流れる期間内に、前記2次側スイッチング回路のいずれかの前記スイッチング素子をオンさせて前記ブースト期間を生じさせる
ことを特徴とする3相電流共振型DC/DCコンバータ。
【請求項2】
前記トランス部は、
前記第1トランス回路の前記2次側コイルが前記第4レグに接続され、
前記第2トランス回路の前記2次側コイルが前記第5レグに接続され、
前記第3トランス回路の前記2次側コイルが前記第6レグに接続されており、
前記2次側スイッチング回路は、
前記第4レグ、前記第5レグおよび前記第6レグの各レグが直列接続された上アームおよび下アームを含み、各アームが並列接続された前記スイッチング素子、前記逆接ダイオードおよび前記部分共振コンデンサを含み
前記ブースト制御時の前記制御部は、
前記第1共振回路と前記第2共振回路に共振電流が流れる期間内に、前記第4レグの前記下アームの前記スイッチング素子または前記第5レグの前記上アームの前記スイッチング素子をオンさせて前記ブースト期間を生じさせ、
前記第2共振回路と前記第3共振回路に共振電流が流れる期間内に、前記第5レグの前記下アームの前記スイッチング素子または前記第6レグの前記上アームの前記スイッチング素子をオンさせて前記ブースト期間を生じさせ、
前記第3共振回路と前記第1共振回路に共振電流が流れる期間内に、前記第6レグの前記下アームの前記スイッチング素子または前記第4レグの前記上アームの前記スイッチング素子をオンさせて前記ブースト期間を生じさせる
ことを特徴とする請求項1に記載の3相電流共振型DC/DCコンバータ。
【請求項3】
前記ブースト制御時の前記制御部は、
前記駆動周波数と前記第1周波数との差分に周波数ブースト変換ゲインを乗じてブースト量を算出し、前記ブースト量に基づいて前記ブースト期間の長さを決定する
ことを特徴とする請求項1に記載の3相電流共振型DC/DCコンバータ。
【請求項4】
前記ブースト制御時の前記制御部は、
前記2次側スイッチング回路の出力値と所定の目標値との差分に出力ブースト変換ゲインを乗じてブースト量を算出し、前記ブースト量に基づいて前記ブースト期間の長さを決定する
ことを特徴とする請求項1に記載の3相電流共振型DC/DCコンバータ。
【請求項5】
前記ブースト制御時の前記制御部は、
前記共振電流が流れる期間が開始するタイミングで前記ブースト期間を開始させる
ことを特徴とする請求項1に記載の3相電流共振型DC/DCコンバータ。
【請求項6】
前記2次側スイッチング回路は、
前記第4レグ、前記第5レグおよび前記第6レグの各レグが直列接続された上アームおよび下アームを含み、各アームが並列接続された前記スイッチング素子、前記逆接ダイオードおよび前記部分共振コンデンサを含み、
前記制御部は、
前記2次側スイッチング回路に対して、前記各アームのいずれかの前記スイッチング素子をオンさせて同期整流期間を生じさせる同期整流制御を行い、
前記ブースト制御かつ前記同期整流制御時の前記制御部は、
前記共振電流が流れる期間が開始するタイミングで前記ブースト期間を開始させ、かつ前記ブースト期間が終了するタイミングで前記同期整流期間を開始させる
ことを特徴とする請求項1に記載の3相電流共振型DC/DCコンバータ。
【請求項7】
前記制御部は、
前記1次側スイッチング回路の前記入力電圧が低いと前記前記ブースト期間が長くなるように、前記前記ブースト期間の最大値を前記入力電圧によって可変させる
ことを特徴とする請求項1に記載の3相電流共振型DC/DCコンバータ。
【請求項8】
前記2次側スイッチング回路は、
前記第4レグ、前記第5レグおよび前記第6レグの各レグが直列接続された上アームおよび下アームを含み、
前記第4レグの前記下アームおよび前記第5レグの前記上アームのうち、一方が並列接続された前記スイッチング素子、前記逆接ダイオードおよび前記部分共振コンデンサで構成され、他方がダイオードのみで構成され、
前記第5レグの前記下アームおよび前記第6レグの前記上アームのうち、一方が並列接続された前記スイッチング素子、前記逆接ダイオードおよび前記部分共振コンデンサで構成され、他方がダイオードのみで構成され、
前記第6レグの前記下アームおよび前記第4レグの前記上アームのうち、一方が並列接続された前記スイッチング素子、前記逆接ダイオードおよび前記部分共振コンデンサで構成され、他方がダイオードのみで構成され、
前記ブースト制御時の前記制御部は、
前記第1共振回路と前記第2共振回路に共振電流が流れる期間内に、前記第4レグの前記下アームの前記スイッチング素子または前記第5レグの前記上アームの前記スイッチング素子をオンさせて前記ブースト期間を生じさせ、
前記第2共振回路と前記第3共振回路に共振電流が流れる期間内に、前記第5レグの前記下アームの前記スイッチング素子または前記第6レグの前記上アームの前記スイッチング素子をオンさせて前記ブースト期間を生じさせ、
前記第3共振回路と前記第1共振回路に共振電流が流れる期間内に、前記第6レグの前記下アームの前記スイッチング素子または前記第4レグの前記上アームの前記スイッチング素子をオンさせて前記ブースト期間を生じさせる
ことを特徴とする請求項1に記載の3相電流共振型DC/DCコンバータ。
【請求項9】
前記第4レグおよび前記第1トランス回路の前記2次側コイルに接続される第4共振回路、前記第5レグおよび前記第2トランス回路の前記2次側コイルに接続される第5共振回路、前記第6レグおよび前記第3トランス回路の前記2次側コイルに接続される第6共振回路を含み、各共振回路が共振コイルおよび共振コンデンサを含む2次側共振回路をさらに備え、
前記2次側スイッチング回路は、
前記第4レグ、前記第5レグおよび前記第6レグの各レグが直列接続された上アームおよび下アームを含み、各アームが並列接続された前記スイッチング素子、前記逆接ダイオードおよび前記部分共振コンデンサを含み、
前記制御部は、前記2次側スイッチング回路から前記1次側スイッチング回路への逆方向電力伝送を行わせる時に、
前記2次側スイッチング回路の駆動周波数が第2周波数よりも高い場合、または前記2次側スイッチング回路の入力電圧が第2入力電圧以上の場合、前記1次側スイッチング回路の出力に応じて前記駆動周波数を制御する周波数変調制御を行い、
前記入力電圧が前記第2入力電圧より低く、かつ前記駆動周波数が前記第2周波数以下の場合、前記1次側スイッチング回路を短絡状態にするブースト期間を生じさせるブースト制御を行い、
前記ブースト制御時の前記制御部は、
前記第4共振回路と前記第5共振回路に共振電流が流れる期間内、前記第5共振回路と前記第6共振回路に共振電流が流れる期間内、および前記第6共振回路と前記第4共振回路に共振電流が流れる期間内に、前記1次側スイッチング回路のいずれかの前記スイッチング素子をオンさせて前記ブースト期間を生じさせる
ことを特徴とする請求項1に記載の3相電流共振型DC/DCコンバータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3相電流共振型DC/DCコンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車の長距離走行に合わせて電気自動車のバッテリーの大容量化が進んでおり、そのため、充電装置(急速充電器)の充電容量も数10[kW]から200[kW]程度の大容量化が求められている。また、電気自動車のバッテリーを非常用電源として使用するV2Gシステムの開発も進んでいる。充電装置やV2Gシステムにおいて使用される電源装置は、例えば、PFC(AC/DCコンバータ)とDC/DCコンバータで構成されるか、または双方向インバータと双方向DC/DCコンバータで構成されることが一般的である。DC/DCコンバータや双方向DC/DCコンバータには、小型化、高効率化、低コスト化、大容量化等の要望から、近年、CLLC/LLC方式の3相電流共振型DC/DCコンバータが採用されている。
【0003】
3相電流共振型DC/DCコンバータは、ハーフブリッジ構成または単相フルブリッジ構成のCLLC/LLC方式の電流共振型DC/DCコンバータを3相駆動としたもので、大電力化が可能であり、自律平衡機能による低リップル出力が可能という特徴がある。しかしながら、3相電流共振型DC/DCコンバータは、ハーフブリッジ構成または単相フルブリッジ構成のCLLC/LLC方式の電流共振型DC/DCコンバータと同様に、出力電圧範囲が狭いという問題がある。特に双方向の電力伝送を行うCLLC方式の場合、降圧動作はバースト(間欠)制御や位相シフト制御などの制御を工夫することで、追加回路なしに電力を絞ることが可能であるが、昇圧動作は付加回路が必要になる等、問題が多い。
【0004】
特許文献1では、昇圧回路を直列接続したCLLC方式の3相電流共振型DC/DCコンバータが開示されている。しかしながら、3相電流共振型DC/DCコンバータに昇圧回路を直列に接続すると、昇圧回路を構成する複数のスイッチング素子および昇圧用コイルによって、部品点数の増加による高コスト化、装置全体(またはシステム全体)の大型化、スイッチング素子のスイッチング損失と昇圧用コイルの鉄損および銅損による電力変換効率の低下を招くことになる。
【0005】
特許文献2には、単相フルブリッジ構成で、トランスの2次側巻線に直列にLC共振回路を設け、昇圧動作として2次側スイッチング回路を短絡させてブースト動作を行わせる電圧電流型DC/DCコンバータが開示されている。特許文献2に記載の電圧電流型DC/DCコンバータでは、トランスの巻線比と出力電圧によって、2次側スイッチング回路を短絡させる期間(短絡スイッチのオンデューティ)を制御することで、昇圧回路を設けることなく昇圧動作が可能となる。しかしながら、上記の制御(ブースト制御)を、そのまま電流共振型DC/DCコンバータに適用することはできない。電流共振型DC/DCコンバータは、スイッチング素子の駆動周波数を制御する周波数変調制御を行うため(駆動周波数によって出力が変わるので)、例えば、ブースト制御時の駆動周波数をどう制御するかを考慮する必要がある。まして、3相電流共振型DC/DCコンバータの場合は、駆動側の共振電流経路が同時に2系統存在し、1次側スイッチング回路のスイッチング素子がオンしていても共振電流が流れ続けるわけではないので、制御はより複雑になる。そのため、3相電流共振型DC/DCコンバータでブースト制御を行う場合、例えば、どのタイミングで、どの経路で、2次側スイッチング回路を短絡させるかが問題となる。
【0006】
特許文献3には、2次側から1次側への電力伝送を行う場合に、1次側スイッチング回路を短絡させてブースト動作を行わせる単相フルブリッジ構成のDC/DCコンバータが開示されている。特許文献3に記載のDC/DCコンバータは、2次側が電圧型の回路構成であるため、特許文献2に記載の電圧電流型DC/DCコンバータと同様に、上記の制御(ブースト制御)を、そのまま電流共振型DC/DCコンバータに適用することはできない。特に、3相電流共振型DC/DCコンバータの場合は、上記のとおり、どのタイミングで、どの経路で、ブースト動作を行わせるかが問題となる。
【0007】
特許文献4には、トランスの2次巻線に流れる電流の臨界を検出して1次側スイッチング回路(ハーフブリッジ構成)のスイッチング素子をオンさせ、当該オンタイミングに合わせて2次側スイッチング回路(ブリッジ整流回路)のスイッチング素子を所定時間オンさせることで、2次側スイッチング回路を短絡させるコンバータが開示されている。特許文献4に記載のコンバータは、上記の制御により、上記の所定時間に2次側スイッチング回路が昇圧動作を行うため、出力電圧を高くすることができる。しかしながら、上記の制御を電流共振型DC/DCコンバータに適用すると、1次側スイッチング回路のスイッチング周期が短縮されて1次側スイッチング回路の駆動周波数が増加してしまう。その結果、電流共振型DC/DCコンバータでは、昇圧動作による出力電圧の上昇と駆動周波数の増加による出力電圧の低下とが同時に起こる。そのため、2次側スイッチング回路を短絡させる時間が同じでも、駆動周波数が共振周波数に近い比較的低い値の場合は、出力電圧の上昇が優位となり大きな出力を得ることができるが、駆動周波数が共振周波数よりも離れた比較的高い値の場合は、出力電圧の低下が優位となり小さな出力となってしまう。このように、特許文献4に記載の制御を電流共振型DC/DCコンバータに適用した場合、制御特性が駆動周波数によって変わるという問題が生じる。さらに、3相電流共振型DC/DCコンバータに適用した場合は、上記の問題に加えて、どのタイミングで、どの経路で、2次側スイッチング回路を短絡させるかが問題となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】中国特許第114157159号明細書
【特許文献2】特開2005-224012号公報
【特許文献3】特開2014-180167号公報
【特許文献4】特開2021-112003号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その課題とするところは、素子および回路を追加することなく、広範囲の出力電圧に対応することが可能な3相電流共振型DC/DCコンバータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係る3相電流共振型DC/DCコンバータは、
第1トランス回路、第2トランス回路および第3トランス回路を含み、各トランス回路が1次側コイルおよび2次側コイルを含むトランス部と、
並列接続された第1レグ、第2レグおよび第3レグを含み、各レグが直列接続された上アームおよび下アームを含み、各アームが並列接続されたスイッチング素子、逆接ダイオードおよび部分共振コンデンサを含む1次側スイッチング回路と、
前記第1レグおよび前記第1トランス回路の前記1次側コイルに接続される第1共振回路、前記第2レグおよび前記第2トランス回路の前記1次側コイルに接続される第2共振回路、前記第3レグおよび前記第3トランス回路の前記1次側コイルに接続される第3共振回路を含み、各共振回路が共振コイルおよび共振コンデンサを含む1次側共振回路と、
並列接続された第4レグ、第5レグおよび第6レグを含み、各レグが並列接続されたスイッチング素子、逆接ダイオードおよび部分共振コンデンサを含む2次側スイッチング回路と、
前記1次側スイッチング回路および前記2次側スイッチング回路を制御する制御部と、
を備え、前記1次側スイッチング回路から前記2次側スイッチング回路への順方向電力伝送を行う3相電流共振型DC/DCコンバータであって、
前記制御部は、
前記1次側スイッチング回路の駆動周波数が第1周波数よりも高い場合、または前記1次側スイッチング回路の入力電圧が第1入力電圧以上の場合、前記2次側スイッチング回路の出力に応じて前記駆動周波数を制御する周波数変調制御を行い、
前記入力電圧が前記第1入力電圧より低く、かつ前記駆動周波数が前記第1周波数以下の場合、前記2次側スイッチング回路を短絡状態にするブースト期間を生じさせるブースト制御を行い、
前記ブースト制御時の前記制御部は、
前記第1共振回路と前記第2共振回路に共振電流が流れる期間内、前記第2共振回路と前記第3共振回路に共振電流が流れる期間内、および前記第3共振回路と前記第1共振回路に共振電流が流れる期間内に、前記2次側スイッチング回路のいずれかの前記スイッチング素子をオンさせて前記ブースト期間を生じさせることを特徴とする。
【0011】
この構成では、入力電圧が所定の第1入力電圧より低く、かつ駆動周波数が所定の第1周波数以下の場合にブースト制御を行うことで、ブースト期間に、共振回路に大きな共振電流を流して共振コイルに短期間に大きなエネルギーを蓄え、そのエネルギーを負荷電流として放出することができるので、入力電圧が低い場合でも高い出力電圧を得ることができる。すなわち、この構成によれば、昇圧動作を行うための素子および回路を追加することなく、広範囲の出力電圧に対応することができる。
【0012】
前記3相電流共振型DC/DCコンバータにおいて、
前記トランス部は、
前記第1トランス回路の前記2次側コイルが前記第4レグに接続され、
前記第2トランス回路の前記2次側コイルが前記第5レグに接続され、
前記第3トランス回路の前記2次側コイルが前記第6レグに接続されており、
前記2次側スイッチング回路は、
前記第4レグ、前記第5レグおよび前記第6レグの各レグが直列接続された上アームおよび下アームを含み、各アームが並列接続された前記スイッチング素子、前記逆接ダイオードおよび前記部分共振コンデンサを含み
前記ブースト制御時の前記制御部は、
前記第1共振回路と前記第2共振回路に共振電流が流れる期間内に、前記第4レグの前記下アームの前記スイッチング素子または前記第5レグの前記上アームの前記スイッチング素子をオンさせて前記ブースト期間を生じさせ、
前記第2共振回路と前記第3共振回路に共振電流が流れる期間内に、前記第5レグの前記下アームの前記スイッチング素子または前記第6レグの前記上アームの前記スイッチング素子をオンさせて前記ブースト期間を生じさせ、
前記第3共振回路と前記第1共振回路に共振電流が流れる期間内に、前記第6レグの前記下アームの前記スイッチング素子または前記第4レグの前記上アームの前記スイッチング素子をオンさせて前記ブースト期間を生じさせるよう構成できる。
【0013】
前記3相電流共振型DC/DCコンバータにおいて、
前記ブースト制御時の前記制御部は、
前記駆動周波数と前記第1周波数との差分に周波数ブースト変換ゲインを乗じてブースト量を算出し、前記ブースト量に基づいて前記ブースト期間の長さを決定するよう構成できる。
【0014】
前記3相電流共振型DC/DCコンバータにおいて、
前記ブースト制御時の前記制御部は、
前記2次側スイッチング回路の出力値と所定の目標値との差分に出力ブースト変換ゲインを乗じてブースト量を算出し、前記ブースト量に基づいて前記ブースト期間の長さを決定するよう構成できる。
【0015】
前記3相電流共振型DC/DCコンバータにおいて、
前記ブースト制御時の前記制御部は、
前記共振電流が流れる期間が開始するタイミングで前記ブースト期間を開始させるよう構成できる。
【0016】
前記3相電流共振型DC/DCコンバータにおいて、
前記2次側スイッチング回路は、
前記第4レグ、前記第5レグおよび前記第6レグの各レグが直列接続された上アームおよび下アームを含み、各アームが並列接続された前記スイッチング素子、前記逆接ダイオードおよび前記部分共振コンデンサを含み、
前記制御部は、
前記2次側スイッチング回路に対して、前記各アームのいずれかの前記スイッチング素子をオンさせて同期整流期間を生じさせる同期整流制御を行い、
前記ブースト制御かつ前記同期整流制御時の前記制御部は、
前記共振電流が流れる期間が開始するタイミングで前記ブースト期間を開始させ、かつ前記ブースト期間が終了するタイミングで前記同期整流期間を開始させるよう構成できる。
【0017】
前記3相電流共振型DC/DCコンバータにおいて、
前記制御部は、
前記1次側スイッチング回路の前記入力電圧が低いと前記前記ブースト期間が長くなるように、前記前記ブースト期間の最大値を前記入力電圧によって可変させるよう構成できる。
【0018】
前記3相電流共振型DC/DCコンバータにおいて、
前記2次側スイッチング回路は、
前記第4レグ、前記第5レグおよび前記第6レグの各レグが直列接続された上アームおよび下アームを含み、
前記第4レグの前記下アームおよび前記第5レグの前記上アームのうち、一方が並列接続された前記スイッチング素子、前記逆接ダイオードおよび前記部分共振コンデンサで構成され、他方がダイオードのみで構成され、
前記第5レグの前記下アームおよび前記第6レグの前記上アームのうち、一方が並列接続された前記スイッチング素子、前記逆接ダイオードおよび前記部分共振コンデンサで構成され、他方がダイオードのみで構成され、
前記第6レグの前記下アームおよび前記第4レグの前記上アームのうち、一方が並列接続された前記スイッチング素子、前記逆接ダイオードおよび前記部分共振コンデンサで構成され、他方がダイオードのみで構成され、
前記ブースト制御時の前記制御部は、
前記第1共振回路と前記第2共振回路に共振電流が流れる期間内に、前記第4レグの前記下アームの前記スイッチング素子または前記第5レグの前記上アームの前記スイッチング素子をオンさせて前記ブースト期間を生じさせ、
前記第2共振回路と前記第3共振回路に共振電流が流れる期間内に、前記第5レグの前記下アームの前記スイッチング素子または前記第6レグの前記上アームの前記スイッチング素子をオンさせて前記ブースト期間を生じさせ、
前記第3共振回路と前記第1共振回路に共振電流が流れる期間内に、前記第6レグの前記下アームの前記スイッチング素子または前記第4レグの前記上アームの前記スイッチング素子をオンさせて前記ブースト期間を生じさせるよう構成できる。
【0019】
前記3相電流共振型DC/DCコンバータにおいて、
前記第4レグおよび前記第1トランス回路の前記2次側コイルに接続される第4共振回路、前記第5レグおよび前記第2トランス回路の前記2次側コイルに接続される第5共振回路、前記第6レグおよび前記第3トランス回路の前記2次側コイルに接続される第6共振回路を含み、各共振回路が共振コイルおよび共振コンデンサを含む2次側共振回路をさらに備え、
前記2次側スイッチング回路は、
前記第4レグ、前記第5レグおよび前記第6レグの各レグが直列接続された上アームおよび下アームを含み、各アームが並列接続された前記スイッチング素子、前記逆接ダイオードおよび前記部分共振コンデンサを含み、
前記制御部は、前記2次側スイッチング回路から前記1次側スイッチング回路への逆方向電力伝送を行わせる時に、
前記2次側スイッチング回路の駆動周波数が第2周波数よりも高い場合、または前記2次側スイッチング回路の入力電圧が第2入力電圧以上の場合、前記1次側スイッチング回路の出力に応じて前記駆動周波数を制御する周波数変調制御を行い、
前記入力電圧が前記第2入力電圧より低く、かつ前記駆動周波数が前記第2周波数以下の場合、前記1次側スイッチング回路を短絡状態にするブースト期間を生じさせるブースト制御を行い、
前記ブースト制御時の前記制御部は、
前記第4共振回路と前記第5共振回路に共振電流が流れる期間内、前記第5共振回路と前記第6共振回路に共振電流が流れる期間内、および前記第6共振回路と前記第4共振回路に共振電流が流れる期間内に、前記1次側スイッチング回路のいずれかの前記スイッチング素子をオンさせて前記ブースト期間を生じさせるよう構成できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、素子および回路を追加することなく、広範囲の出力電圧に対応することが可能な3相電流共振型DC/DCコンバータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】第1実施形態に係る3相電流共振型DC/DCコンバータの回路図の例である。
【
図2】第1実施形態の駆動周波数とブースト量との関係を示す図である。
【
図3】第1実施形態の周波数ブースト変換制御ブロックを示す図である。
【
図4】第1実施形態に係る3相電流共振型DC/DCコンバータの制御フロー図の例である。
【
図5】第1実施形態のダイオード整流制御時の制御タイミングを示す図の例である。
【
図6】第1実施形態における電流経路図であって、(A)は
図5のモード1の期間の図、(B)は
図5のモード2の期間の図である。
【
図7】第1実施形態における電流経路図であって、(A)は
図5のモード3の期間の図、(B)は
図5のモード4の期間の図である。
【
図8】第1実施形態における電流経路図であって、(A)は
図5のモード5の期間の図、(B)は
図5のモード6の期間の図である。
【
図9】第1実施形態のダイオード整流制御かつブースト制御時の制御タイミングを示す図の例である。
【
図10】第1実施形態における電流経路図であって、(A)は
図9のモード1-1の期間の図、(B)は
図9のモード1の期間の図である。
【
図11】第1実施形態における電流経路図であって、(A)は
図9のモード3-1の期間の図、(B)は
図9のモード3の期間の図である。
【
図12】第1実施形態における電流経路図であって、(A)は
図9のモード5-1の期間の図、(B)は
図9のモード5の期間の図である。
【
図13】第1実施形態の同期整流制御時の制御タイミングを示す図の例である。
【
図14】第1実施形態における電流経路図であって、(A)は
図13のモード1の期間の図、(B)は
図13のモード2の期間の図である。
【
図15】第1実施形態における電流経路図であって、(A)は
図13のモード3の期間の図、(B)は
図13のモード4の期間の図である。
【
図16】第1実施形態における電流経路図であって、(A)は
図13のモード5の期間の図、(B)は
図13のモード6の期間の図である。
【
図17】第1実施形態の同期整流制御かつブースト制御時の制御タイミングを示す図の例である。
【
図18】第1実施形態における電流経路図であって、(A)は
図17のモード1-1の期間の図、(B)は
図17のモード1の期間の図である。
【
図19】第1実施形態における電流経路図であって、(A)は
図17のモード3-1の期間の図、(B)は
図17のモード3の期間の図である。
【
図20】第1実施形態における電流経路図であって、(A)は
図17のモード5-1の期間の図、(B)は
図17のモード5の期間の図である。
【
図21】第2実施形態に係る3相電流共振型DC/DCコンバータの回路図の例である。
【
図22】第2実施形態の出力電圧ブースト変換制御ブロックを示す図である。
【
図23】第2実施形態に係る3相電流共振型DC/DCコンバータの制御フロー図の例である。
【
図24】第3実施形態に係る3相電流共振型DC/DCコンバータの回路図の例である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る3相電流共振型DC/DCコンバータの実施形態について説明する。
【0023】
[第1実施形態]
図1に、本発明の第1実施形態に係る3相電流共振型DC/DCコンバータ1A(以下、DC/DCコンバータ1A)を示す。DC/DCコンバータ1Aは、CLLC方式の3相電流共振型DC/DCコンバータであり、1次側回路から2次側回路への順方向電力伝送と、2次側回路から1次側回路への逆方向電力伝送とを行う。
【0024】
DC/DCコンバータ1Aは、端子T1~T4を備え、端子T1、T2に交流電圧を直流電圧に変換するための双方向インバータの直流側端子が接続され、端子T3、T4に負荷(例えば、電気自動車のバッテリー)が接続される。例えば、端子T1、T2側から端子T3、T4側への順方向電力伝送時の場合、端子T1、T2には直流電圧V1が入力され、端子T3、T4からは直流電圧V2や負荷に供給する直流電流が出力される。
【0025】
DC/DCコンバータ1Aは、トランス部10と、1次側スイッチング回路11、1次側共振回路12およびコンデンサCo1を含む1次側回路と、2次側スイッチング回路13、2次側共振回路14およびコンデンサCo2を含む2次側回路と、制御部15Aと、1次側スイッチング回路11および2次側スイッチング回路13の各駆動回路(図示せず)と検出回路(図示せず)とを備える。検出回路は、制御部15Aの制御に必要な電圧値および電流値等を検出するものであり、例えば、各種センサおよびAD変換器で構成される。
【0026】
トランス部10(本発明の「トランス部」に相当)は、高周波絶縁トランスで構成され、第1相のトランス回路Tr1と、第2相のトランス回路Tr2と、第3相のトランス回路Tr3とを含み、各相のトランス回路は1次側コイル(巻線)と2次側コイル(巻線)を有する。トランス回路Tr1~Tr3の1次側コイルは、1次側共振回路12を介して1次側スイッチング回路11に接続され、トランス回路Tr1~Tr3の2次側コイルは、2次側共振回路14を介して2次側スイッチング回路13に接続される。各相のトランス回路Tr1~Tr3を1個または複数のトランスで構成してもよいし、3相を有する1つの3相トランスあるいは複数の相を有する複数のトランスでトランス部10を構成してもよい。なお、トランス回路Tr1~Tr3の1次側の各励磁コイルは、各トランス回路の1次側コイルに含まれるものとし、トランス回路Tr1~Tr3の2次側の各励磁コイルは、各トランス回路の2次側コイルに含まれるものとして、励磁コイルの図示は省略している。
【0027】
1次側スイッチング回路11は、並列接続された第1相の第1レグ、第2相の第2レグおよび第3相の第3レグを含み、各レグが直列接続された上アームおよび下アームを含む。第1レグの上アームはスイッチング素子Q1、ダイオードD1、コンデンサC1を含む。同様に、第1レグの下アームはスイッチング素子Q2、ダイオードD2、コンデンサC2を含み、第2レグの上アームはスイッチング素子Q3、ダイオードD3、コンデンサC3を含み、第2レグの下アームはスイッチング素子Q4、ダイオードD4、コンデンサC4を含み、第3レグの上アームはスイッチング素子Q5、ダイオードD5、コンデンサC5を含み、第3レグの下アームはスイッチング素子Q6、ダイオードD6、コンデンサC6を含む。ダイオードD1~D6は順方向電力伝送時の還流用または逆方向電力伝送時の整流用の逆接ダイオードであり、コンデンサC1~C6はソフトスイッチング用の部分共振コンデンサである。
【0028】
スイッチング素子Q1は、例えば、IGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)、SiC(炭化ケイ素)やGaN(窒化ガリウム)を使用したMOSFET(金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)等の、高周波でスイッチングが可能な電力用半導体スイッチング素子を用いることができる。スイッチング素子Q2~Q6および後述するスイッチング素子Q7~Q12についても同様である。
【0029】
ダイオードD1は、スイッチング素子Q1の電流路に逆方向に並列接続される。ダイオードD1は、スイッチング素子Q1の寄生ダイオードでもよいし、スイッチング素子Q1とは独立した外付けダイオードでもよいし、その両方でもよい。ダイオードD2~D6および後述するダイオードD7~D12についても同様である。
【0030】
コンデンサC1は、スイッチング素子Q1の電流路およびダイオードD1に並列接続される。コンデンサC1は、スイッチング素子Q1の寄生コンデンサでもよいし、スイッチング素子Q1とは独立した外付けコンデンサでもよいし、その両方でもよい。コンデンサC2~C6および後述するコンデンサC7~C12についても同様である。
【0031】
1次側共振回路12は、共振コイルLr1および共振コンデンサCr1を含む第1共振回路と、共振コイルLr2および共振コンデンサCr2を含む第2共振回路と、共振コイルLr3および共振コンデンサCr3を含む第3共振回路とを備える。共振コイルLr1は、一端が第1レグのスイッチング素子Q1、Q2の接続点X1に接続され、他端がトランス回路Tr1の1次側コイルを経由して、共振コンデンサCr1の一端に接続される。共振コイルLr2は、一端が第2レグのスイッチング素子Q3、Q4の接続点X2に接続され、他端がトランス回路Tr2の1次側コイルを経由して、共振コンデンサCr2の一端に接続される。共振コイルLr3は、一端が第3レグのスイッチング素子Q5、Q6の接続点X3に接続され、他端がトランス回路Tr3の1次側コイルを経由して、共振コンデンサCr3の一端に接続される。共振コンデンサCr1~Cr3の他端は、相互に接続されて中性点Y1を構成する。なお、本発明の「共振コイル」は、本発明の「トランス部」とは独立したコイルとしてもよいし、トランス部に含まれる漏れインダクタンスで構成してもよく、その両方でもよい。すなわち、共振コイルLr1はトランス部10のトランス回路Tr1の1次側漏れインダクタンスを利用してもよく、トランス回路Tr1とは別のリアクトルとしてもよいし、両者の組み合わせでもよい。共振コイルLr2、Lr3についても同様である。
【0032】
共振コイルLr1と共振コンデンサCr1とは、互いの位置を入れ替えてもよいし、トランス回路Tr1の1次側コイルの一端側または他端側に両方配置してもよい。共振コイルLr2と共振コンデンサCr2、共振コイルLr3と共振コンデンサCr3についても同様である。なお、トランス部10の1次側はY結線としているが、平衡結線であればΔ結線でもよく、2次側もY結線としているが、Δ結線でもよい。
【0033】
コンデンサCo1は、順方向電力伝送時の入力電圧リップル除去を兼ねた逆方向電力伝送時の出力リップル除去用のコンデンサであり、端子T1、T2間に接続される。
【0034】
2次側スイッチング回路13は、1次側スイッチング回路11と同じ構成であり、並列接続された第1相の第4レグ、第2相の第5レグおよび第3相の第6レグを含み、各レグが直列接続された上アームおよび下アームを含む。各レグの上アームはスイッチング素子Q7、Q9、Q11、ダイオードD7、D9、D11、コンデンサC7、C9、C11を含む。同様に、各レグの下アームはスイッチング素子Q8、Q10、Q12、ダイオードD8、D10、D12、コンデンサC8、C10、C12を含む。ダイオードD7~D12は逆方向電力伝送時の還流用または順方向電力伝送時の整流用の逆接ダイオードであり、コンデンサC7~C12はソフトスイッチング用の部分共振コンデンサである。
【0035】
2次側共振回路14は、1次側共振回路12と同じ構成であり、共振コイルLr4および共振コンデンサCr4を含む第4共振回路と、共振コイルLr5および共振コンデンサCr5を含む第5共振回路と、共振コイルLr6および共振コンデンサCr6を含む第6共振回路とを備える。共振コイルLr4は、一端が第4レグのスイッチング素子Q7、Q8の接続点X4に接続され、他端がトランス回路Tr1の2次側コイルを経由して、共振コンデンサCr4の一端に接続される。共振コイルLr5は、一端が第5レグのスイッチング素子Q9、Q10の接続点X5に接続され、他端がトランス回路Tr2の2次側コイルを経由して、共振コンデンサCr5の一端に接続される。共振コイルLr6は、一端が第6レグのスイッチング素子Q11、Q12の接続点X6に接続され、他端がトランス回路Tr3の2次側コイルを経由して、共振コンデンサCr6の一端に接続される。共振コンデンサCr4~Cr6の他端は、相互に接続されて中性点Y2を構成する。なお、共振コイルLr4はトランス回路Tr1の2次側漏れインダクタンスを利用してもよく、トランス回路Tr1とは別のリアクトルとしてもよいし、両者の組み合わせでもよい。共振コイルLr5、Lr6についても同様である。
【0036】
コンデンサCo2は、逆方向電力伝送時の入力電圧リップル除去を兼ねた順方向電力伝送時の出力リップル除去用のコンデンサであり、端子T3、T4間に接続される。
【0037】
制御部15Aは、スイッチング素子Q1~Q12をオン/オフさせるための各種制御を行う処理部と、メモリ等で構成された記憶部とを含む。制御部15Aは、マイクロコントローラやDSP等を使用したデジタル回路で構成されていてもよいし、アナログ回路で構成されていてもよいし、デジタル回路とアナログ回路とを組み合わせた回路で構成されていてもよい。
【0038】
順方向電力伝送時の制御部15Aは、1次側スイッチング回路11のスイッチング素子Q1~Q6の駆動周波数が予め設定した周波数(本発明の「第1周波数」に相当)よりも高い場合、または入力電圧V1があらかじめ設定した入力電圧(本発明の「第1入力電圧」に相当)以上の場合、1次側スイッチング回路11に対して周波数変調制御を行い、2次側スイッチング回路13に対してダイオード整流制御または同期整流制御を行う。1次側スイッチング回路11の入力電圧V1が第1入力電圧より低く、駆動周波数が第1周波数以下の場合、制御部15Aは、ブースト制御(本実施形態では、「周波数ブースト変換制御」と称する)を行う。
【0039】
なお、第1周波数は、1次側スイッチング回路11の入力電圧V1が低く、駆動周波数を低下させる周波数変調制御を行っても通常使用する駆動周波数の範囲では目標とする出力電圧に到達できない場合に、周波数ブースト変換制御を開始する閾値となる駆動周波数である。ここで通常使用する駆動周波数の範囲とは、トランス回路Tr1~Tr3の1次側の励磁コイルと共振コイルLr1~Lr3のインダクタンスおよび共振コンデンサCr1~Cr3のキャパシタンスで決まる共振周波数よりも大きな周波数範囲のことである。
【0040】
周波数ブースト変換制御は、順方向電力伝送時の駆動側であるスイッチング素子Q1~Q6の駆動周波数に基づいて制御量であるブースト量を算出し、1次側共振回路12に共振電流が流れる期間内において、1次側スイッチング回路11のスイッチング素子Q1~Q6のオンタイミングに合わせてブースト制御を開始し、当該ブースト量に対応したブースト期間だけ2次側スイッチング回路13を短絡させる制御である。周波数ブースト変換制御では、ブースト期間に、1次側共振回路12に大きな共振電流を流して共振コイルLr1~Lr3に大きなエネルギーを蓄え、そのエネルギーを2次側スイッチング回路13に負荷電流として放出することで、入力電圧V1が低い場合でも高い出力電圧V2を得ることができる。
【0041】
逆方向電力伝送時の制御部15Aは、2次側スイッチング回路13のスイッチング素子Q7~Q12の駆動周波数が予め設定した周波数(本発明の「第2周波数」に相当)よりも高い場合、または入力電圧V2があらかじめ設定した入力電圧(本発明の「第2入力電圧)に相当」)以上の場合、2次側スイッチング回路13に対して周波数変調制御を行い、1次側スイッチング回路11に対してダイオード整流制御または同期整流制御を行う。一方、2次側スイッチング回路13の入力電圧V2が第2入力電圧より低く、駆動周波数が第2周波数以下の場合、制御部15Aは、ブースト制御(本実施形態では、周波数ブースト変換制御)を行う。
【0042】
逆方向電力伝送時の周波数ブースト変換制御については、順方向電力伝送時と同様、逆方向電力伝送時の駆動側であるスイッチング素子Q7~Q12の駆動周波数に基づいて制御量であるブースト量を算出し、2次側共振回路14に共振電流が流れる期間内において、2次側スイッチング回路13のスイッチング素子Q7~Q12のオンタイミングに合わせて、当該ブースト量に対応したブースト期間だけ1次側スイッチング回路11を短絡させる制御を行う。
【0043】
なお、第2周波数は、2次側スイッチング回路13の入力電圧V2が低く、駆動周波数を低下させる周波数変調制御を行っても通常使用する駆動周波数の範囲では目標とする出力電圧に到達できない場合に、周波数ブースト変換制御を開始する閾値となる駆動周波数である。
【0044】
DC/DCコンバータ1Aでは、1次側回路の回路構成と2次側回路の回路構成とがトランス部10を挟んで対称であるため、制御部15Aは、順方向電力伝送時に1次側スイッチング回路11に対して行う制御を、逆方向電力伝送時は2次側スイッチング回路13に対して行い、順方向電力伝送時に2次側スイッチング回路13に対して行う制御を、逆方向電力伝送時は1次側スイッチング回路11に対して行う。具体的な制御内容は、順方向電力伝送時と逆方向電力伝送時とで共通するため、以下では、順方向電力伝送時についてのみ説明する。
【0045】
図2に、順方向電力伝送時における、1次側スイッチング回路11の駆動周波数f[kHz]と周波数ブースト変換制御の制御量であるブースト量ψ[°]との関係を例示する。
図2では、入力電圧V1がV11(例えば、V11=300[V])の場合のブースト量ψと、入力電圧V1がV12(例えば、V12=150[V])の場合のブースト量ψとを示している。ブースト量ψは、駆動周波数fの周期Tを360°とした時に、1次側共振回路12に共振電流が流れる期間内に、2次側スイッチング回路13のスイッチング素子Q7~Q12のいずれかをオンして2次側スイッチング回路13を短絡させる期間を[°]で表した値とする。ブースト量ψは、入力電圧V1が低いV12の場合の方がより大きな昇圧比が必要なため大きい値となり、入力電圧V1が高いV11の場合の方がより小さい昇圧比でよいので小さい値となっている。
【0046】
駆動周波数fが第1周波数に相当するブースト開始駆動周波数fψs[kHz]よりも高い場合、制御部15Aは、1次側スイッチング回路11に対して周波数変調制御を行う。入力電圧V1があらかじめ定めた閾値(V1th[V])未満で、駆動周波数fがブースト開始駆動周波数fψs以下の場合、周波数変調制御だけでは駆動周波数fを減少させても出力値(例えば、出力電圧V2)が目標値(例えば、目標電圧値)まで上昇しないので、制御部15Aは、周波数ブースト変換制御を行う。ブースト開始駆動周波数fψsは、トランス部10の巻線比と、入力電圧V1および出力電圧V2と、共振コイルLr1~Lr3および共振コンデンサCr1~Cr3による共振定数とに基づいて算出することができる。
図2では、fψs=90[kHz]としている。なお、入力電圧V1がV1th以上の場合は、トランス部10の変圧比の関係で、入力電圧V1が低くても(例えば、V1=V1thでも)周波数変調制御のみで出力値を目標値まで昇圧できるので、駆動周波数fがブースト開始駆動周波数fψs以下にならない。そのため、入力電圧V1がV1th以上の場合は、制御部15Aは、1次側スイッチング回路11に対して周波数変調制御を行う。
【0047】
駆動周波数fが最大ブースト駆動周波数fψh(
図2では、fψh=67[kHz])よりも高い場合、駆動周波数fの減少に応じてブースト量ψは増加する。駆動周波数fが最大ブースト駆動周波数fψh以下の場合、入力電圧V1がV11(300[V])の時のブースト量ψは最大ブースト量ψh(V11)に固定(クランプ)され、入力電圧V1がV12(150[V])の時のブースト量ψは最大ブースト量ψh(V12)に固定(クランプ)される。
図2では、ψh(V11)=15°であり、ψh(V12)=45°である。
【0048】
なお、最大ブースト量ψh(V1x)を設けているのは、ブースト制御により2次側スイッチング回路13を短絡させる制御を行うと、ごく短時間に大きなエネルギーが共振コイルLr1~Lr3に蓄積されるため、ブースト量ψが大きすぎることにより、過昇圧になり制御が不安定になることを防止するためである。このように、入力電圧V1の電圧値によってブースト量ψを変えることで、入力電圧V1が低くても最適な昇圧比を得ることができ、出力電圧範囲の拡大を適切に行うことができる。
【0049】
図3に、制御部15Aが備える周波数ブースト変換制御ブロック20を示す。周波数ブースト変換制御ブロック20は、第1加算部21と、第1乗算部22と、第1クランプ部23とを備える。
【0050】
第1加算部21は、入力電圧V1が第1入力電圧V1thより低い場合、駆動周波数fとブースト開始駆動周波数fψsとを比較し、駆動周波数fがブースト開始駆動周波数fψs以下の場合に、駆動周波数fとブースト開始駆動周波数fψsとの差分(fψs-f)を第1乗算部22に出力する。
【0051】
第1乗算部22は、上記差分(fψs-f)に周波数ブースト変換ゲインKψ(V1x)を乗算してブースト量ψを算出し、当該ブースト量ψを第1クランプ部23に出力する。周波数ブースト変換ゲインKψ(V1x)は、その時の入力電圧V1(
図2では、V1=V11またはV12)によって決まる値である。なお、周波数ブースト変換ゲインKψ(V1x)は、入力電圧V1が低い方がより高い昇圧比(大きなブースト量ψ)を得る必要があるので、より大きな値とすることが好ましい。
図2の例では、Kψ(V11)<Kψ(V12)となる。
【0052】
第1クランプ部23は、ブースト量ψの下限を0°とし上限を最大ブースト量ψh(V1x)として、ブースト量ψ(ψ=(fψs-f)×Kψ(V1x)≦ψh(V1x))を出力する。最大ブースト量ψh(V1x)は、その時の入力電圧V1(
図2では、ψh(V1x)=ψh(V11)またはψh(V12))によって決まる値である。なお、最大ブースト量ψh(V1x)は、入力電圧V1が低い方がより高い昇圧比(大きなブースト量ψ)を得る必要があるので、より大きな値とすることが好ましい。
図2の例では、ψh(V11)<ψh(V12)となる。
【0053】
制御部15Aは、第1クランプ部23から出力されたブースト量ψに基づいて、周波数ブースト変換制御を行う。制御部15Aが出力を上昇させる場合、制御部15Aは、駆動周波数fが制御量なので、駆動周波数fを減少するように制御する。そのため、第1加算部21から出力される差分(fψs-f)は増加する。ブースト量ψが最大ブースト量ψh(V1x)に達するまでは、駆動周波数fの減少に伴ってブースト量ψは一様に増加するため、DC/DCコンバータ1Aの出力は上昇する。なお、
図2および
図3では、入力電圧V1によって周波数ブースト変換ゲインKψ(V1x)および最大ブースト量ψh(V1x)を変えているが、さらに、ブースト開始駆動周波数fψsを入力電圧V1によって変えてもよい。例えば、入力電圧V1が低い場合は、ブースト開始駆動周波数fψsを高く設定し、より高い駆動周波数fから周波数ブースト変換制御を開始するようにしてもよい。
図2の例では、fψs(V11)<fψs(V12)となる。そのようにすることにより、あまり高い周波数ブースト変換ゲインKψ(V1x)を用いずに高いブースト量ψを得ることができ、より安定したブースト制御を行うことができる。
【0054】
図4に、順方向電力伝送時において制御部15Aが実行する制御処理のフロー図の例を示す。
【0055】
制御処理を開始した制御部15Aは、まず、周波数変調制御を開始する。制御部15Aは、検出回路からDC/DCコンバータ1Aの入出力情報(例えば、入力電圧V1、端子T1に入力される入力電流、出力電圧V2、端子T3から出力される出力電流)を取得する(S101)。
【0056】
入出力情報を取得した制御部15Aは、入力電圧V1と予め定めた閾値V1th[V]とを比較し、入力電圧V1が閾値V1th未満かどうかを判定する(S102)。入力電圧V1が閾値V1th未満の場合(S102でYES)、制御部15Aは、記憶部に記憶された制御パラメータを読み出し(S103)、ステップS104に移行する。制御パラメータには、周波数ブースト変換制御の制御パラメータであるブースト開始駆動周波数fψs、周波数ブースト変換ゲインKψ(V1x)、最大ブースト量ψh(V1x)等が含まれる。なお、制御パラメータのうちの固定パラメータは、起動時に一度読み込むだけでよい。入力電圧V1が閾値V1th以上の場合(S102でNO)、制御部15Aは、ステップS104に移行する。
【0057】
ステップS104に移行した制御部15Aは、DC/DCコンバータ1Aの出力値(例えば、出力電力値)と目標値(例えば、目標電力値)とを比較し、両者の差分に基づいてスイッチング素子Q1~Q6の駆動周波数fを決定する。制御部15Aは、出力値が目標値よりも小さい場合は駆動周波数fを減少させ、出力値が目標値よりも大きい場合は駆動周波数fを増加させる。目標値は、例えば、制御部15Aで予め設定した値としてもよいし、DC/DCコンバータ1Aの入出力条件から決まる値としてもよいし、外部の装置から入力される値としてもよい。目標値は、時々刻々と変化してもよい。
【0058】
次いで、制御部15Aは、ステップS104で決定した駆動周波数fとブースト開始駆動周波数fψsとを比較し、駆動周波数fがブースト開始駆動周波数fψs以下かどうかを判定する(S105)。駆動周波数fがブースト開始駆動周波数fψsよりも高い場合(S105でNO)、制御部15Aは、駆動周波数fをステップS104で決定した値に設定して、スイッチング素子Q1~Q6を駆動周波数fで駆動させるとともに、2次側スイッチング回路13に対してダイオード整流制御または同期整流制御を行い(S106)、ステップS111に移行する。
【0059】
駆動周波数fがブースト開始駆動周波数fψs以下の場合(S105でYES)、制御部15Aは、駆動周波数fとブースト開始駆動周波数fψsとの差分(fψs-f)に周波数ブースト変換ゲインKψ(V1x)を乗算してブースト量ψを算出する(S107)。ステップS107の処理は、第1加算部21および第1乗算部22で行われる。
【0060】
ブースト量ψを算出した制御部15Aは、当該ブースト量ψと最大ブースト量ψh(V1x)とを比較し、ブースト量ψが最大ブースト量ψh(V1x)以上かどうかを判定する(S108)。制御部15Aは、ブースト量ψが最大ブースト量ψh(V1x)以上の場合(S108でYES)、ブースト量ψを最大ブースト量ψh(V1x)に設定し(S109)、ステップS110に移行する。一方、ブースト量ψが最大ブースト量ψh(V1x)未満の場合(S108でNO)、ブースト量ψをステップS107で算出した値に設定してステップS110に移行する。
【0061】
ステップS110に移行した制御部15Aは、駆動周波数fをステップS104で決定した値に設定して、スイッチング素子Q1~Q6を駆動周波数fで駆動させるとともに、設定したブースト量ψに基づいて周波数ブースト変換制御を行う(S110)。
【0062】
次いで、制御部15Aは、出力値が目標値に達したかどうかを判定する(S111)。制御部15Aは、出力値が目標値に達していない場合(S111でNO)、ステップS101以降の処理を繰り返し、出力値が目標値に達している場合(S111でYES)、ステップS112に移行する。ステップS112では、制御部15Aは、制御処理を継続するかどうかを判定する。制御部15Aは、例えば、外部の装置から終了指令を受信したかどうかに基づいて、ステップS112の判定を行う。制御部15Aは、例えば、終了指令を受信していない場合に制御処理を継続すると判定して(S112でYES)、ステップS101以降の処理を繰り返し、終了指令を受信している場合に、制御処理を継続しないと判定して(S112でNO)、制御処理を終了させる。
【0063】
図5に、駆動周波数fがブースト開始駆動周波数fψsよりも高い場合のDC/DCコンバータ1Aの制御タイミングを示す。
図5では、制御部15Aは、スイッチング素子Q1~Q6に対して周波数変調制御を行い、スイッチング素子Q7~Q12に対してダイオード整流制御を行っている。図中の1~6は制御タイミングのモードを表すものであり、当該制御時にはモード1~6が繰り返される。なお、
図5ではデッドタイムの記載を省略しており、以降の図面でもデッドタイムの記載は省略する。
【0064】
周波数変調制御時の制御部15Aは、スイッチング素子Q1、Q2を所定のデッドタイムを設けて180°の位相差で交互にオンオフさせ、スイッチング素子Q3、Q4を所定のデッドタイムを設けて180°の位相差で交互にオンオフさせ、スイッチング素子Q5、Q6を所定のデッドタイムを設けて180°の位相差で交互にオンオフさせる。スイッチング素子Q1~Q6のデューティは、例えば、50%に設定される。なお、厳密には、スイッチング素子Q1~Q6のオンデューティは50%からデッドタイム分減少する。さらに、制御部15Aは、第1レグと第2レグ間の位相差を120°に固定し、第2レグと第3レグ間の位相差を120°に固定し、第3レグと第1レグ間の位相差を120°に固定した状態で、スイッチング素子Q1~Q6の各駆動周波数を同一の駆動周波数fとし、同一の駆動周波数fを同時に同程度変化させることで、DC/DCコンバータ1Aの出力値(例えば、出力電力値)を所定の目標値(例えば、目標電力値)に近づける。制御部15Aは、出力値が目標値よりも小さい場合は駆動周波数fを減少させ、出力値が目標値よりも大きい場合は駆動周波数fを増加させる。
【0065】
ダイオード整流制御時の制御部15Aは、スイッチング素子Q7~Q12を連続オフ状態にする。これにより、2次側スイッチング回路13は、ダイオードD7~D12のダイオードブリッジ回路となり、当該ダイオードブリッジ回路によるダイオード整流が行われる。
【0066】
図6~
図8に、
図5のモード1~6の期間における主要な電流経路図を示す。
図6~
図8において、実線は、1次側回路を流れる共振電流および2次側回路を流れる負荷電流を示し、破線は、1次側回路を流れる励磁電流を示し、以降の図面でも同様とする。なお、
図6~
図8では、スイッチング素子Q1~Q6のターンオン、ターンオフ時の電流(過渡時の電流)の記載を省略しており、以降の図面でも過渡時の電流の記載は省略する。
【0067】
図6(A)に示すように、モード1の期間では、スイッチング素子Q1がターンオンすると、共振コイルLr1と共振コンデンサCr1とを含む第1共振回路および共振コイルLr2と共振コンデンサCr2とを含む第2共振回路に共振電流が流れ、トランス回路Tr1、Tr2を経由して2次側回路に負荷電流が流れる。共振コイルLr3と共振コンデンサCr3とを含む第3共振回路には、励磁電流のみ流れるため、トランス回路Tr3の2次側コイルには負荷電流が流れていない。
【0068】
図6(B)はモード2の後半期間を示す。モード2の後半期間では、1次側回路に励磁電流のみ流れる(モード1の期間に流れていた共振電流は収束している)ため、2次側回路には負荷電流が流れていない。なお、共振電流が流れる共振期間は、駆動周波数f、DC/DCコンバータ1Aの入出力条件、負荷の条件によって異なる。
【0069】
図7(A)に示すように、モード3の期間では、スイッチング素子Q3がターンオンすると、第2共振回路および第3共振回路に共振電流が流れ、トランス回路Tr2、Tr3を経由して2次側回路に負荷電流が流れる。第1共振回路には、励磁電流のみ流れるため、トランス回路Tr1の2次側コイルには負荷電流が流れていない。
【0070】
図7(B)はモード4の後半期間を示す。モード4の後半期間では、1次側回路に励磁電流のみ流れる(モード3の期間に流れていた共振電流は収束している)ため、2次側回路には負荷電流が流れていない。
【0071】
図8(A)に示すように、モード5の期間では、スイッチング素子Q5がターンオンすると、第3共振回路および第1共振回路に共振電流が流れ、トランス回路Tr3、Tr1を経由して2次側回路に負荷電流が流れる。第2共振回路には、励磁電流のみ流れるため、トランス回路Tr2の2次側コイルには負荷電流が流れていない。
【0072】
図8(B)はモード6の後半期間を示す。モード6の後半期間では、1次側回路に励磁電流のみ流れる(モード5の期間に流れていた共振電流は収束している)ため、2次側回路には負荷電流が流れていない。
【0073】
図9に、駆動周波数fがブースト開始駆動周波数fψs以下の場合のDC/DCコンバータ1Aの制御タイミングを示す。
図9では、制御部15Aは、ダイオード整流制御および周波数ブースト変換制御を行っている。
図5との違いは、モード1-1、モード3-1およびモード5-1のブースト期間ψが存在している点である。ブースト期間ψは、ブースト量ψに対応する期間である。
【0074】
ダイオード整流制御および周波数ブースト変換制御時の制御部15Aは、第1共振回路および第2共振回路に共振電流が流れる共振期間が開始するタイミング(スイッチング素子Q1のオンタイミング)で、第4レグのスイッチング素子Q8をターンオンさせてモード1-1のブースト期間ψを生じさせ、第2共振回路および第3共振回路に共振電流が流れる共振期間が開始するタイミング(スイッチング素子Q3のオンタイミング)で、第5レグのスイッチング素子Q10をターンオンさせてモード3-1のブースト期間ψを生じさせ、第3共振回路および第1共振回路に共振電流が流れる共振期間が開始するタイミング(スイッチング素子Q5のオンタイミング)で、第6レグのスイッチング素子Q12をターンオンさせてモード5-1のブースト期間ψを生じさせる。
【0075】
ダイオード整流制御および周波数ブースト変換制御時の制御部15Aは、モード1-1のブースト期間ψが終了するタイミングでスイッチング素子Q8をターンオフさせ、モード3-1のブースト期間ψが終了するタイミングでスイッチング素子Q10をターンオフさせ、モード5-1のブースト期間ψが終了するタイミングでスイッチング素子Q12をターンオフさせる。スイッチング素子Q7、Q9、Q11は連続オフ状態となる。
【0076】
図10~
図12に、
図9のモード1-1、1、3-1、3、5-1、5の期間における電流経路図を示す。
図9のモード2、モード4、モード6の期間における電流経路は、
図5のモード2、モード4、モード6の期間における電流経路と同じであるため省略する。
【0077】
図10(A)に示すように、モード1-1の期間では、スイッチング素子Q1がターンオンすると第1共振回路および第2共振回路に共振電流が流れ、トランス回路Tr1、Tr2を経由して2次側回路に負荷電流が流れる。2次側回路では、スイッチング素子Q8がターンオンすることにより、スイッチング素子Q8とダイオードD10の経路で2次側スイッチング回路13が短絡状態となる。これにより、第1共振回路および第2共振回路では、通常の共振電流よりも大きな共振電流が流れ、共振コイルLr1、Lr2に大きなエネルギーが蓄積される。
図10(B)に示すように、モード1の期間では、スイッチング素子Q8がターンオフすることにより、モード1-1の期間に蓄積されたエネルギーが解放され、2次側回路では通常の負荷電流よりも大きな負荷電流が流れる。このように、DC/DCコンバータ1Aでは、モード1-1およびモード1の期間で昇圧動作が行われる。
【0078】
図11(A)に示すように、モード3-1の期間では、スイッチング素子Q3がターンオンすると第2共振回路および第3共振回路に共振電流が流れ、トランス回路Tr2、Tr3を経由して2次側回路に負荷電流が流れる。2次側回路では、スイッチング素子Q10がターンオンすることにより、スイッチング素子Q10とダイオードD12の経路で2次側スイッチング回路13が短絡状態となる。これにより、第2共振回路および第3共振回路では、通常の共振電流よりも大きな共振電流が流れ、共振コイルLr2、Lr3に大きなエネルギーが蓄積される。
図11(B)に示すように、モード3の期間では、スイッチング素子Q10がターンオフすることにより、モード3-1の期間に蓄積されたエネルギーが解放され、2次側回路では通常の負荷電流よりも大きな負荷電流が流れる。このように、DC/DCコンバータ1Aでは、モード3-1およびモード3の期間で昇圧動作が行われる。
【0079】
図12(A)に示すように、モード5-1の期間では、スイッチング素子Q5がターンオンすると第3共振回路および第1共振回路に共振電流が流れ、トランス回路Tr3、Tr1を経由して2次側回路に負荷電流が流れる。2次側回路では、スイッチング素子Q12がターンオンすることにより、スイッチング素子Q12とダイオードD8の経路で2次側スイッチング回路13が短絡状態となる。これにより、第3共振回路および第1共振回路では、通常の共振電流よりも大きな共振電流が流れ、共振コイルLr3、Lr1に大きなエネルギーが蓄積される。
図12(B)に示すように、モード5の期間では、スイッチング素子Q12がターンオフすることにより、モード5-1の期間に蓄積されたエネルギーが解放され、2次側回路では通常の負荷電流よりも大きな負荷電流が流れる。このように、DC/DCコンバータ1Aでは、モード5-1およびモード5の期間で昇圧動作が行われる。
【0080】
本実施形態では、制御部15Aは、スイッチング素子Q8のオンタイミングをスイッチング素子Q1のオンタイミングに同期させることにより、共振期間が開始するタイミングでモード1-1のブースト期間ψを生じさせている。しかしながら、共振期間が開始するタイミング判断は、これに限るものではなく、制御部15Aは、2次側回路(例えば、トランス回路Tr1、Tr2の2次側コイル)に流れる負荷電流(第4~第6共振回路に流れる電流、または第4~第6レグに流れる電流)あるいは2次側各レグの上アームまたは下アームの電圧を検出し、当該負荷電流の立ち上がりに同期させてスイッチング素子Q8をターンオンさせてもよい。また、共振期間内であれば、スイッチング素子Q1のターンオンから2次側電流の位相遅れを考慮した一定時間経過後にスイッチング素子Q8をターンオンさせてもよいが、モード1-1がモード1の後になると、負荷電流が増加してからスイッチング素子Q8をターンオンさせることになり、負荷電流をハードスイッチングすることになることに加えて、ダイオードD7の逆回復期間に2次側スイッチング回路13が短絡状態となるため、ノイズが発生するおそれがある。このため、本実施形態のように、共振期間が開始するタイミングでブースト期間ψを生じさせることが好ましい。モード3-1、モード5-1についても同様である。
【0081】
図13に、駆動周波数fがブースト開始駆動周波数fψsよりも高い場合のDC/DCコンバータ1Aの制御タイミングを示す。
図13では、制御部15Aは、スイッチング素子Q1~Q6に対して周波数変調制御を行い、スイッチング素子Q7~Q12に対して同期整流制御を行っている。周波数変調制御は、
図5の周波数変調制御と同じである。
【0082】
同期整流制御時の制御部15Aは、モード1の共振電流に応じて2次側回路に負荷電流が流れ始めるタイミングでスイッチング素子Q7、Q10をターンオンさせ、モード3の共振電流に応じて2次側回路に負荷電流が流れ始めるタイミングでスイッチング素子Q9、Q12をターンオンさせ、モード5の共振電流に応じて2次側回路に負荷電流が流れ始めるタイミングでスイッチング素子Q8、Q11をターンオンさせる。制御部15Aは、例えば、2次側スイッチング回路13の各レグを流れる負荷電流を検出することで、負荷電流が流れ始めるタイミングを検出する。しかしながら、これに限るものではなく、制御部15Aは、2次側スイッチング回路13の各レグを流れる共振電流を検出するか、またはスイッチング素子Q7~Q12の電流路の両端電圧を検出して、上記タイミングを検出してもよい。
【0083】
同期整流制御時の制御部15Aは、モード1の負荷電流が収束してゼロになるタイミングでスイッチング素子Q7、Q10をターンオフさせ、モード3の負荷電流が収束してゼロになるタイミングでスイッチング素子Q9、Q12をターンオフさせ、モード5の負荷電流が収束してゼロになるタイミングでスイッチング素子Q8、Q11をターンオフさせる。制御部15Aは、負荷電流が流れ始めるタイミングを検出するのと同様にして、負荷電流が収束してゼロになるタイミングを検出する。
【0084】
【0085】
図14(A)に示すように、モード1の期間では、スイッチング素子Q1、Q7、Q10がターンオンして、第1共振回路および第2共振回路に共振電流が流れ、トランス回路Tr1、Tr2を経由して2次側回路に負荷電流が流れる。第3共振回路には、励磁電流のみ流れるため、トランス回路Tr3の2次側コイルには負荷電流が流れていない。
【0086】
図14(B)はモード2の後半期間を示す。モード2の後半期間では、スイッチング素子Q7、Q10がターンオフして同期整流が終了し、1次側回路に励磁電流のみ流れる(モード1の期間に流れていた共振電流は収束している)ため、2次側回路には負荷電流が流れていない。
【0087】
図15(A)に示すように、モード3の期間では、スイッチング素子Q3、Q9、Q12がターンオンして、第2共振回路および第3共振回路に共振電流が流れ、トランス回路Tr2、Tr3を経由して2次側回路に負荷電流が流れる。第1共振回路には、励磁電流のみ流れるため、トランス回路Tr1の2次側コイルには負荷電流が流れていない。
【0088】
図15(B)はモード4の後半期間を示す。モード4の後半期間では、スイッチング素子Q9、Q12がターンオフして同期整流が終了し、1次側回路に励磁電流のみ流れる(モード3の期間に流れていた共振電流は収束している)ため、2次側回路には負荷電流が流れていない。
【0089】
図16(A)に示すように、モード5の期間では、スイッチング素子Q5、Q8、Q11がターンオンして、第3共振回路および第1共振回路に共振電流が流れ、トランス回路Tr3、Tr1を経由して2次側回路に負荷電流が流れる。第2共振回路には、励磁電流のみ流れるため、トランス回路Tr2の2次側コイルには負荷電流が流れていない。
【0090】
図16(B)はモード6の後半期間を示す。モード6の後半期間では、スイッチング素子Q8、Q11がターンオフして同期整流が終了し、1次側回路に励磁電流のみ流れる(モード5の期間に流れていた共振電流は収束している)ため、2次側回路には負荷電流が流れていない。
【0091】
図17に、駆動周波数fがブースト開始駆動周波数fψs以下の場合のDC/DCコンバータ1Aの制御タイミングを示す。
図17では、制御部15Aは、同期整流制御および周波数ブースト変換制御を行っている。
図13との違いは、モード1-1、モード3-1およびモード5-1のブースト期間ψが存在している点である。
【0092】
同期整流制御および周波数ブースト変換制御時の制御部15Aは、第1共振回路および第2共振回路に共振電流が流れる共振期間が開始するタイミングで、スイッチング素子Q7をオフしたままスイッチング素子Q8をターンオンさせてモード1-1のブースト期間ψを生じさせ、第2共振回路および第3共振回路に共振電流が流れる共振期間が開始するタイミングで、スイッチング素子Q9をオフしたままスイッチング素子Q10をターンオンさせてモード3-1のブースト期間ψを生じさせ、第3共振回路および第1共振回路に共振電流が流れる共振期間が開始するタイミングで、スイッチング素子Q11をオフしたままスイッチング素子Q12をターンオンさせてモード5-1のブースト期間ψを生じさせる。
【0093】
同期整流制御および周波数ブースト変換制御時の制御部15Aは、モード1-1のブースト期間ψが終了するタイミングで、スイッチング素子Q8をターンオフ、スイッチング素子Q7をターンオンさせて同期整流を開始させ、モード3-1のブースト期間ψが終了するタイミングで、スイッチング素子Q10をターンオフ、スイッチング素子Q9をターンオンさせて同期整流を開始させ、モード5-1のブースト期間ψが終了するタイミングで、スイッチング素子Q12をターンオフ、スイッチング素子Q11をターンオンさせて同期整流を開始させる。なお、モード1-1からモード1への移行時、モード3-1からモード3への移行時、モード5-1からモード5の移行時には、オフ・オン期間の重複による負荷短絡を避けるためにデッドタイムを設けてもよい。
【0094】
図18~
図20に、
図17のモード1-1、1、3-1、3、5-1、5の期間における電流経路図を示す。
図17のモード2、モード4、モード6の期間における電流経路は、
図13のモード2、モード4、モード6の期間における電流経路と同じであるため省略する。
【0095】
図18(A)に示すように、モード1-1の期間では、スイッチング素子Q1がターンオンすると第1共振回路および第2共振回路に共振電流が流れ、トランス回路Tr1、Tr2を経由して2次側回路に負荷電流が流れる。2次側回路では、スイッチング素子Q8、Q10がターンオンすることにより、スイッチング素子Q8とスイッチング素子Q10(またはダイオードD10)の経路で2次側スイッチング回路13が短絡状態となる。これにより、第1共振回路および第2共振回路では、通常の共振電流よりも大きな共振電流が流れ、共振コイルLr1、Lr2に大きなエネルギーが蓄積される。
図18(B)に示すように、モード1の期間では、スイッチング素子Q8がターンオフ、スイッチング素子Q7がターンオンすることにより、モード1-1の期間に蓄積されたエネルギーが解放され、2次側回路では通常の負荷電流よりも大きな負荷電流が流れる。このように、DC/DCコンバータ1Aでは、モード1-1およびモード1の期間で昇圧動作が行われる。
【0096】
図19(A)に示すように、モード3-1の期間では、スイッチング素子Q3がターンオンすると第2共振回路および第3共振回路に共振電流が流れ、トランス回路Tr2、Tr3を経由して2次側回路に負荷電流が流れる。2次側回路では、スイッチング素子Q10、Q12がターンオンすることにより、スイッチング素子Q10とスイッチング素子Q12(またはダイオードD12)の経路で2次側スイッチング回路13が短絡状態となる。これにより、第2共振回路および第3共振回路では、通常の共振電流よりも大きな共振電流が流れ、共振コイルLr2、Lr3に大きなエネルギーが蓄積される。
図19(B)に示すように、モード3の期間では、スイッチング素子Q10がターンオフ、スイッチング素子Q9がターンオンすることにより、モード3-1の期間に蓄積されたエネルギーが解放され、2次側回路では通常の負荷電流よりも大きな負荷電流が流れる。このように、DC/DCコンバータ1Aでは、モード3-1およびモード3の期間で昇圧動作が行われる。
【0097】
図20(A)に示すように、モード5-1の期間では、スイッチング素子Q5がターンオンすると第3共振回路および第1共振回路に共振電流が流れ、トランス回路Tr3、Tr1を経由して2次側回路に負荷電流が流れる。2次側回路では、スイッチング素子Q12、Q8がターンオンすることにより、スイッチング素子Q12とスイッチング素子Q8(またはダイオードD8)の経路で2次側スイッチング回路13が短絡状態となる。これにより、第3共振回路および第1共振回路では、通常の共振電流よりも大きな共振電流が流れ、共振コイルLr3、Lr1に大きなエネルギーが蓄積される。
図20(B)に示すように、モード5の期間では、スイッチング素子Q12がターンオフ、スイッチング素子Q11がターンオンすることにより、モード5-1の期間に蓄積されたエネルギーが解放され、2次側回路では通常の負荷電流よりも大きな負荷電流が流れる。このように、DC/DCコンバータ1Aでは、モード5-1およびモード5の期間で昇圧動作が行われる。
【0098】
本実施形態では、制御部15Aは、スイッチング素子Q7のオンタイミングをスイッチング素子Q8のオフタイミングに同期させることにより、モード1-1のブースト期間ψが終了するタイミングで、同期整流を開始させている。しかしながら、これに限るものではなく、共振期間内にブースト期間ψを生じさせるのであれば、同期整流を開始させるタイミングは適宜変更することができる。ただし、モード1-1がモード1の後になると、負荷電流が増加してからスイッチング素子Q8をターンオンさせることになり、負荷電流をハードスイッチングすることになり、ノイズが発生するおそれがある。このため、本実施形態のように、ブースト期間ψが終了するタイミングで同期整流を開始させることが好ましい。モード3-1とモード3、モード5-1とモード5についても同様である。
【0099】
[第2実施形態]
図21に、本発明の第2実施形態に係る3相電流共振型DC/DCコンバータ1B(以下、DC/DCコンバータ1B)を示す。DC/DCコンバータ1Bは、制御部15Bを除いて、第1実施形態と同じ構成である。
【0100】
制御部15Bは、第1実施形態の周波数ブースト変換制御ブロック20の代わりに、
図22に示す出力電圧ブースト変換制御ブロック20’を備える点、周波数ブースト変換制御の代わりに出力電圧ブースト変換制御を行う点を除いて、第1実施形態と同じである。
【0101】
図22に示すように、出力電圧ブースト変換制御ブロック20’は、第2加算部21’と、第2乗算部22’と、第2クランプ部23’とを備える。
【0102】
第2加算部21’は、出力電圧V2と目標電圧V2t[V]とを比較し、入力電圧V1があらかじめ定めた閾値(V1th)未満で、駆動周波数fがブースト開始駆動周波数fψs以下の場合に、出力電圧V2と目標電圧V2tとの差分(V2t-V2)を第2乗算部22’に出力する。
【0103】
第2乗算部22’は、上記差分(V2t-V2)に出力電圧ブースト変換ゲインK’ψ(V1x)を乗算してブースト量ψを算出し、当該ブースト量ψを第2クランプ部23’に出力する。出力電圧ブースト変換ゲインK’ψ(V1x)は、第1実施形態の周波数ブースト変換ゲインKψ(V1x)と同様に、その時の入力電圧V1(例えば、V1=V11またはV12)によって決まる値である。
【0104】
第2クランプ部23’は、ブースト量ψの下限を0°とし上限を最大ブースト量ψh(V1x)として、ブースト量ψ(ψ=(V2t-V2)×K’ψ(V1x)≦ψh(V1x))を出力する。最大ブースト量ψh(V1x)は、第1実施形態と同様に、その時の入力電圧V1(例えば、ψh(V1x)=ψh(V11)またはψh(V12))によって決まる値である。
【0105】
制御部15Bは、第2クランプ部23’から出力されたブースト量ψに基づいて、出力電圧ブースト変換制御を行う。なお、本実施形態では、入力電圧V1によって出力電圧ブースト変換ゲインK’ψ(V1x)および最大ブースト量ψh(V1x)を変えているが、さらに、ブースト開始駆動周波数fψsを入力電圧V1によって変えてもよい。
【0106】
図23に、順方向電力伝送時において制御部15Bが実行する制御処理のフロー図の例を示す。
図4との違いは、ステップS203、S207、S208である。ステップS201、S202はステップS101、S102と同じであり、ステップS204~S206はステップS104~S106と同じであり、ステップS209~S213はステップS108~S112と同じである。以下、ステップS203、S207、S208についてのみ説明する。
【0107】
ステップS203では、制御部15Bは、記憶部に記憶された制御パラメータを読み出す。制御パラメータには、出力電圧ブースト変換制御の制御パラメータであるブースト開始駆動周波数fψs、出力電圧ブースト変換ゲインK’ψ(V1x)、最大ブースト量ψh(V1x)等が含まれる。なお、制御パラメータのうちの固定パラメータは、起動時に一度読み込むだけでよい。
【0108】
ステップS207では、制御部15Bは、駆動周波数fをブースト開始駆動周波数fψsに設定する。すなわち、出力電圧ブースト変換制御は、駆動周波数fをブースト開始駆動周波数fψsに固定する点において、周波数ブースト変換制御と異なる。
【0109】
ステップS208では、制御部15Bは、出力電圧V2と目標電圧V2tとの差分(V2t-V2)に出力電圧ブースト変換ゲインK’ψ(V1x)を乗算してブースト量ψを算出する。すなわち、
図4では、駆動周波数fを変化させてブースト量ψを決め、周波数ブースト変換制御を行うことで出力電圧V2をブースト制御したが、
図23では、駆動周波数fをブースト開始駆動周波数fψsに設定し、出力電圧V2そのものでブースト量ψを決めブースト制御する点が異なる。
【0110】
本実施形態に係るDC/DCコンバータ1Bによれば、第1実施形態の駆動周波数fに基づいてブースト量ψを算出することによる効果を除いて、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。すなわち、DC/DCコンバータ1Bでは、駆動周波数fがブースト開始駆動周波数fψs以下の場合にブースト制御(出力電圧ブースト変換制御)を行うことで、ブースト期間ψに、共振回路に大きな共振電流を流して共振コイルLr1~Lr3に短期間に大きなエネルギーを蓄え、そのエネルギーを負荷電流として放出することができるので、入力電圧V1が低い場合でも高い出力電圧V2を得ることができる。その結果、DC/DCコンバータ1Bによれば、素子および回路を追加することなく、広範囲の出力電圧V2に対応することができる。逆方向電力伝送時も、同様の効果を得ることができる。
【0111】
[第3実施形態]
図24に、本発明の第3実施形態に係る3相電流共振型DC/DCコンバータ1C(以下、DC/DCコンバータ1C)を示す。DC/DCコンバータ1Cは、2次側スイッチング回路13Cおよび制御部15Cを備える点、2次側共振回路14を備えていない点を除いて、第1実施形態と同じ構成である。
【0112】
DC/DCコンバータ1Cは、LLC方式の3相電流共振型DC/DCコンバータであり、1次側回路から2次側回路への順方向電力伝送を行い、2次側回路から1次側回路への逆方向電力伝送は行わない。DC/DCコンバータ1Cは、コンデンサCo1を備えていなくてもよい。
【0113】
2次側スイッチング回路13Cは、第4レグの上アームがダイオードD7’、第5レグの上アームがダイオードD9’、第6レグの上アームがダイオードD11’のみで構成される点を除いて、第1実施形態の2次側スイッチング回路13と同じである。
【0114】
制御部15Cは、逆方向電力伝送時の制御を行わない点、スイッチング素子Q7、Q9、Q11を制御しない点を除いて、第1実施形態の制御部15Aと同じ構成である。
【0115】
DC/DCコンバータ1Cでは、駆動周波数fがブースト開始駆動周波数fψs以下の場合にブースト制御(周波数ブースト変換制御)を行うことで、ブースト期間ψに、共振回路に大きな共振電流を流して共振コイルLr1~Lr3に短期間に大きなエネルギーを蓄え、そのエネルギーを負荷電流として放出することができるので、入力電圧V1が低い場合でも高い出力電圧V2を得ることができる。その結果、DC/DCコンバータ1Cによれば、素子および回路を追加することなく、広範囲の出力電圧V2に対応することができる。
【0116】
なお、本実施形態の場合は、第1実施形態で2次側スイッチング回路13をダイオード整流した場合と同様、スイッチング素子Q1のターンオンから一定時間経過後にスイッチング素子Q8をターンオンさせてもよいが、モード1-1がモード1の後になると、負荷電流が増加してからスイッチング素子Q8をターンオンさせることになり、ダイオードD7の逆回復期間に2次側スイッチング回路13が短絡状態となるため、ノイズが発生するおそれがある。このため、第1実施形態と同様に、共振期間が開始するタイミングでブースト期間ψを生じさせることが好ましい。モード3-1、モード5-1についても同様である。
【0117】
また、制御部15Cは、第2実施形態の制御部15Bと同じ構成とすることも可能である。
【0118】
以上、本発明に係る3相電流共振型DC/DCコンバータの実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0119】
本発明に係る3相電流共振型DC/DCコンバータは、第1トランス回路、第2トランス回路および第3トランス回路を含み、各トランス回路が1次側コイルおよび2次側コイルを含むトランス部と、並列接続された第1レグ、第2レグおよび第3レグを含み、各レグが直列接続された上アームおよび下アームを含み、各アームが並列接続されたスイッチング素子、逆接ダイオードおよび部分共振コンデンサを含む1次側スイッチング回路と、第1レグおよび第1トランス回路の1次側コイルに接続される第1共振回路、第2レグおよび第2トランス回路の1次側コイルに接続される第2共振回路、第3レグおよび第3トランス回路の1次側コイルに接続される第3共振回路を含み、各共振回路が共振コイルおよび共振コンデンサを含む1次側共振回路と、並列接続された第4レグ、第5レグおよび第6レグを含み、各レグが並列接続されたスイッチング素子、逆接ダイオードおよび部分共振コンデンサを含む2次側スイッチング回路と、1次側スイッチング回路および2次側スイッチング回路を制御する制御部と、を備え、1次側スイッチング回路から2次側スイッチング回路への順方向電力伝送を行う3相電流共振型DC/DCコンバータであって、制御部は、1次側スイッチング回路の駆動周波数が第1周波数よりも高い場合、または1次側スイッチング回路の入力電圧が第1入力電圧以上の場合、2次側スイッチング回路の出力に応じて駆動周波数を制御する周波数変調制御を行い、入力電圧が第1入力電圧より低く、かつ駆動周波数が第1周波数以下の場合、2次側スイッチング回路を短絡状態にするブースト期間を生じさせるブースト制御を行い、ブースト制御時の制御部は、第1共振回路と第2共振回路に共振電流が流れる期間内、第2共振回路と第3共振回路に共振電流が流れる期間内、および第3共振回路と第1共振回路に共振電流が流れる期間内に、2次側スイッチング回路のいずれかのスイッチング素子をオンさせてブースト期間を生じさせるのであれば、適宜構成を変更できる。
【0120】
例えば、第1実施形態、第2実施形態では、第1トランス回路の2次側が第4レグに、第2トランス回路の2次側が第5レグに、第3トランス回路の2次側が第6レグに接続された2次側スイッチング回路なので、ブースト制御時の制御部は、第1共振回路および第2共振回路に共振電流が流れる期間内に、第4レグの下アームまたは第5レグの上アームのスイッチング素子をオンさせてブースト期間を生じさせ、第2共振回路および第3共振回路に共振電流が流れる期間内に、第5レグの下アームまたは第6レグの上アームのスイッチング素子をオンさせてブースト期間を生じさせ、第3共振回路および第1共振回路に共振電流が流れる期間内に、第6レグの下アームまたは第4レグの上アームのスイッチング素子をオンさせてブースト期間を生じさせるように構成できる。
【0121】
また、同様に第3実施形態では、第4レグ、第5レグ、第6レグの上アームをダイオードとし、下アームをスイッチング素子としたが、各レグのダイオードとスイッチング素子を適宜入れ替えることができる。例えば、第4レグの下アームおよび第5レグの上アームのうち、一方が並列接続されたスイッチング素子、逆接ダイオードおよび部分共振コンデンサで構成され、他方がダイオードのみで構成されてもよいし、第5レグの下アームおよび第6レグの上アームのうち、一方が並列接続されたスイッチング素子、逆接ダイオードおよび部分共振コンデンサで構成され、他方がダイオードのみで構成されてもよいし、第6レグの下アームおよび第4レグの上アームのうち、一方が並列接続されたスイッチング素子、逆接ダイオードおよび部分共振コンデンサで構成され、他方がダイオードのみで構成されてもよい。この場合、ブースト制御時の制御部は、第1共振回路および第2共振回路に共振電流が流れる期間内に、第4レグの下アームまたは第5レグの上アームのスイッチング素子をオンさせてブースト期間を生じさせ、第2共振回路および第3共振回路に共振電流が流れる期間内に、第5レグの下アームまたは第6レグの上アームのスイッチング素子をオンさせてブースト期間を生じさせ、第3共振回路および第1共振回路に共振電流が流れる期間内に、第6レグの下アームまたは第4レグの上アームのスイッチング素子をオンさせてブースト期間を生じさせるように構成できる。
【0122】
例えば、第1実施形態および第3実施形態では、駆動周波数fに基づいてブースト量ψを算出し、第2実施形態では、出力電圧V2に基づいてブースト量ψを算出しているが、出力電圧V2以外の出力(出力電流や出力電力等)に基づいてブースト量ψを算出してもよい。すなわち、ブースト制御時の制御部は、2次側回路の出力値と所定の目標値との差分に出力ブースト変換ゲインを乗じてブースト量を算出し、当該ブースト量に基づいてブースト期間の長さを決定するよう構成できる。
【符号の説明】
【0123】
1A~1C 3相電流共振型DC/DCコンバータ
10 トランス部
11 1次側スイッチング回路
12 1次側共振回路
13、13C 2次側スイッチング回路
14 2次側共振回路
15A~15C 制御部
20 出力電圧ブースト変換制御ブロック
20’ 周波数ブースト変換制御ブロック
21 第1加算部
21’ 第2加算部
22 第1乗算部
22’ 第2乗算部
23 第1クランプ部
23’ 第2クランプ部