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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129513
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】処理装置、処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/11 20060101AFI20240919BHJP
   A61B 5/113 20060101ALI20240919BHJP
   G01V 3/12 20060101ALI20240919BHJP
【FI】
A61B5/11 110
A61B5/113
G01V3/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038763
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松浦 圭記
(72)【発明者】
【氏名】川上 莉穂
(72)【発明者】
【氏名】岩出 彩花
(72)【発明者】
【氏名】小澤 尚志
【テーマコード(参考)】
2G105
4C038
【Fターム(参考)】
2G105AA01
2G105BB15
2G105CC01
2G105DD02
2G105EE01
2G105FF02
2G105FF13
2G105GG03
2G105HH01
2G105JJ05
2G105KK06
4C038VA04
4C038VB31
4C038VB32
4C038VB33
4C038VC14
4C038VC20
(57)【要約】
【課題】バイタル指標の時系列データを人物毎に演算する。
【解決手段】処理装置は、測定範囲内における少なくとも1人の人物で反射した信号からバイタル信号を取得する信号取得部と、バイタル信号に基づいて少なくとも1人の人物のバイタル状態を示すバイタル指標を算出する指標算出部と、測定範囲内の人物の体動の有無を判定する体動判定部と、測定範囲内の人物の人数を推定する人数推定部と、測定範囲内の人物の体動が有ると判定された場合、推定された人数の変化の可能性の有無を判定する人数変化判定部と、バイタル指標の時系列データを人物毎に演算する演算部と、を備え、演算部は、推定された人数の変化の可能性が有ると判定された場合、推定された人数の変化の可能性が有ると判定される前のバイタル指標の時系列データと、推定された人数の変化の可能性が有ると判定された後のバイタル指標の時系列データと、を分けて演算する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定範囲内における少なくとも1人の人物で反射した信号からバイタル信号を取得する信号取得部と、
前記バイタル信号に基づいて前記少なくとも1人の前記人物のバイタル状態を示すバイタル指標を算出する指標算出部と、
前記測定範囲内の前記人物の体動の有無を判定する体動判定部と、
前記測定範囲内の前記人物の人数を推定する人数推定部と、
前記測定範囲内の前記人物の前記体動が有ると判定された場合、前記推定された人数の変化の可能性の有無を判定する人数変化判定部と、
前記バイタル指標の時系列データを前記人物毎に演算する演算部と、
を備え、
前記演算部は、前記推定された人数の変化の可能性が有ると判定された場合、前記推定された人数の変化の可能性が有ると判定される前の前記バイタル指標の前記時系列データと、前記推定された人数の変化の可能性が有ると判定された後の前記バイタル指標の前記時系列データと、を分けて演算する、
処理装置。
【請求項2】
前記体動判定部は、前記測定範囲内の前記人物の体動時間を算出し、
前記人数変化判定部は、前記人物の前記体動時間に基づいて、前記推定された人数の変化の可能性の有無を判定する、
請求項1に記載の処理装置。
【請求項3】
前記指標算出部は、複数の期間のそれぞれの前記バイタル指標を算出し、
前記人数推定部は、前記複数の期間のそれぞれにおいて、前記測定範囲内の前記人物の人数を推定し、
前記体動判定部は、前記複数の期間のそれぞれにおいて、前記測定範囲内の前記人物の前記体動の有無を判定し、
前記演算部は、前記複数の期間における前記測定範囲内の前記人物の前記体動がないと判定された期間のうち、前記推定された人数分の前記バイタル指標が算出されなかった期間を除外して、前記バイタル指標の前記時系列データを前記人物毎に演算する、
請求項1に記載の処理装置。
【請求項4】
前記測定範囲内の前記人物の位置を特定し、前記バイタル指標に紐づいた前記人物の位置情報を前記人物毎に算出する位置情報算出部を備え、
前記指標算出部は、複数の期間のそれぞれの前記バイタル指標を算出し、
前記位置情報算出部は、前記複数の期間のそれぞれの前記位置情報を算出し、
前記演算部は、前記複数の期間のそれぞれの前記位置情報に基づいて、前記人物毎に前記バイタル指標を対応付けることにより前記バイタル指標の組み合わせを前記人物毎に決定し、前記バイタル指標の前記組み合わせに基づいて、前記バイタル指標の前記時系列データを前記人物毎に演算する、
請求項1に記載の処理装置。
【請求項5】
前記指標算出部は、複数の期間のそれぞれの前記バイタル指標を算出し、
前記演算部は、前記複数の期間のそれぞれの前記バイタル指標の値に基づいて、前記人物毎に前記バイタル指標を対応付けることにより前記バイタル指標の組み合わせを前記人物毎に決定し、前記バイタル指標の前記組み合わせに基づいて、前記バイタル指標の前記時系列データを人物毎に演算する、
請求項1に記載の処理装置。
【請求項6】
前記バイタル指標の前記時系列データを前記人物毎に出力する指標出力部を備え、
前記指標出力部は、前記推定された人数の変化の可能性が有ると判定された場合、前記推定された人数の変化の可能性が有ると判定される前の前記バイタル指標の前記時系列データと、前記推定された人数の変化の可能性が有ると判定された後の前記バイタル指標の前記時系列データと、を分けて出力する、
請求項1に記載の処理装置。
【請求項7】
前記信号取得部は、前記バイタル信号に基づいて取得したバイタル波形群を前記バイタル信号から算出した特徴量に基づいて複数のクラスタにクラスタリングする処理を実行し、
前記人数推定部は、クラスタ数に基づいて、前記測定範囲内の前記人物の人数を推定する、
請求項1から6の何れか一項に記載の処理装置。
【請求項8】
前記体動判定部は、前記複数の期間のそれぞれにおいて、前記測定範囲内の前記人物の前記体動の有無を判定し、
前記人数推定部は、前記複数の期間のそれぞれにおいて、前記測定範囲内の前記人物の人数を推定し、かつ、前記複数の期間における連続期間のうち、前記測定範囲内の前記人物の前記体動が無いと判定された期間については、前記クラスタ数の最大値を前記測定範囲内の前記人物の人数と推定する、
請求項7に記載の処理装置。
【請求項9】
前記推定された人数及び前記クラスタ数に基づいて、前記測定範囲内の前記少なくとも1人の前記人物のバイタル異常を検出する異常検出部を備える、
請求項7に記載の処理装置。
【請求項10】
前記体動判定部は、前記複数の期間のそれぞれにおいて、前記測定範囲内の前記人物の前記体動の有無を判定し、
前記人数推定部は、前記複数の期間のそれぞれにおいて、前記測定範囲内の前記人物の人数を推定し、かつ、前記複数の期間における連続期間のうち、前記測定範囲内の前記人物の前記体動が無いと判定された期間については、前記クラスタ数の最大値を前記測定範囲内の前記人物の人数と推定し、
前記異常検出部は、前記連続期間のうち、前記測定範囲内の前記人物の前記体動が無いと判定された期間であって、かつ、前記クラスタ数が前記最大値よりも小さい期間を、前記人物の前記バイタル異常が発生した期間であると決定する、
請求項9に記載の処理装置。
【請求項11】
前記測定範囲内の前記少なくとも1人の前記人物のバイタル異常を検出する異常検出部を備え、
前記体動判定部は、前記複数の期間のそれぞれにおいて、前記測定範囲内の前記人物の前記体動の有無を判定し、
前記人数推定部は、前記複数の期間のそれぞれにおいて、前記測定範囲内の前記人物の人数を推定し、かつ、前記複数の期間における連続期間のうち、前記測定範囲内の前記人物の前記体動が無いと判定された期間については、前記クラスタ数の最大値を前記測定範囲内の前記人物の人数と推定し、
前記異常検出部は、前記連続期間のうち、前記測定範囲内の前記人物の前記体動が無いと判定された期間であって、かつ、前記クラスタ数が前記最大値よりも小さい期間の直前の期間における前記バイタル信号に基づいて、前記測定範囲内の前記少なくとも1人の前記人物に前記バイタル異常が発生しているか否かを判定する、
請求項7に記載の処理装置。
【請求項12】
処理装置が実行する処理方法であって、
測定範囲内における少なくとも1人の人物で反射した信号からバイタル信号を取得する信号取得ステップと、
前記バイタル信号に基づいて前記少なくとも1人の前記人物のバイタル状態を示すバイタル指標を算出する指標算出ステップと、
前記測定範囲内の前記人物の体動の有無を判定する体動判定ステップと、
前記測定範囲内の前記人物の人数を推定する人数推定ステップと、
前記測定範囲内の前記人物の前記体動が有ると判定された場合、前記推定された人数の変化の可能性の有無を判定する人数変化判定ステップと、
前記バイタル指標の時系列データを前記人物毎に演算する演算ステップと、
を有し、
前記演算ステップは、前記推定された人数の変化の可能性が有ると判定された場合、前記推定された人数の変化の可能性が有ると判定される前の前記バイタル指標の前記時系列データと、前記推定された人数の変化の可能性が有ると判定された後の前記バイタル指標の前記時系列データと、を分けて演算することを含む、
処理方法。
【請求項13】
コンピュータに、
測定範囲内における少なくとも1人の人物で反射した信号からバイタル信号を取得する信号取得ステップと、
前記バイタル信号に基づいて前記少なくとも1人の前記人物のバイタル状態を示すバイタル指標を算出する指標算出ステップと、
前記測定範囲内の前記人物の体動の有無を判定する体動判定ステップと、
前記測定範囲内の前記人物の人数を推定する人数推定ステップと、
前記測定範囲内の前記人物の前記体動が有ると判定された場合、前記推定された人数の変化の可能性の有無を判定する人数変化判定ステップと、
前記バイタル指標の時系列データを前記人物毎に演算する演算ステップと、
を実行させるためのプログラムであって、
前記演算ステップは、前記推定された人数の変化の可能性が有ると判定された場合、前記推定された人数の変化の可能性が有ると判定される前の前記バイタル指標の前記時系列データと、前記推定された人数の変化の可能性が有ると判定された後の前記バイタル指標の前記時系列データと、を分けて演算することを含む、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理装置、処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、レーダ信号から得られる位相信号から信号要素を分離し、分離した信号要素の繰返し性や周波数特性等の時間的な特徴から対象とするバイタル信号を同定し、バイタル指標を算出する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2021/171091号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バイタル指標を時系列に沿って取得することで、バイタル指標の時系列データが演算されている。測定対象の被験者の人数が不明又は不定の場合、複数人分のバイタル信号やバイタル指標が検出される可能性がある。バイタル指標を時系列に沿って取得する場合、バイタル指標の取得数は時刻によって変化している可能性がある。例えば、第1の時刻におけるバイタル指標の取得数と、第2の時刻のバイタル指標の取得数とが異なる場合がある。バイタル指標の取得数が変化する原因には、実際に被験者の人数が変化した場合が考えられる。従来の手法では、被験者の人数が変化した可能性が有ることを考慮してバイタル指標の時系列データを演算していないため、バイタル指標の時系列データを人物毎に演算することが困難であった。本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、バイタル指標の時系列データを人物毎に演算することが可能な技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一観点に係る処理装置は、測定範囲内における少なくとも1人の人物で反射した信号からバイタル信号を取得する信号取得部と、前記バイタル信号に基づいて前記少なくとも1人の前記人物のバイタル状態を示すバイタル指標を算出する指標算出部と、前記測定範囲内の前記人物の体動の有無を判定する体動判定部と、前記測定範囲内の前記人物の人数を推定する人数推定部と、前記測定範囲内の前記人物の前記体動が有ると判定された場合、前記推定された人数の変化の可能性の有無を判定する人数変化判定部と、前記バイタル指標の時系列データを前記人物毎に演算する演算部と、を備え、前記演算部は、前記推定された人数の変化の可能性が有ると判定された場合、前記推定された人数の変化の可能性が有ると判定される前の前記バイタル指標の前記時系列データと、前記推定された人数の変化の可能性が有ると判定された後の前記バイタル指標の前記時系列データと、を分けて演算する、処理装置である。
【0006】
処理装置によれば、バイタル指標の時系列データを人物毎に演算し、測定範囲内の人物の人数の変化の可能性が有る場合、人数の変化の可能性が有ると判定される前のバイタル指標の時系列データと、人数の変化の可能性が有ると判定された後のバイタル指標の時系列データと、を分けて演算する。これにより、人数が変化する前の人数分のバイタル指標の時系列データと、人数が変化した後の人数分のバイタル指標の時系列データと、を分けて人物毎に演算することができる。
【0007】
本発明の一観点に係る処理装置において、前記体動判定部は、前記測定範囲内の前記人
物の体動時間を算出し、前記人数変化判定部は、前記人物の前記体動時間に基づいて、前記推定された人数の変化の可能性の有無を判定してもよい。例えば、人物の体動時間が短い場合には、推定された人数の変化の可能性が無く、人物の体動時間が長い場合には、推定された人数の変化の可能性が有る。処理装置によれば、人物の体動時間に基づいて、推定された人数の変化の可能性の有無を判定することで、推定された人数の変化の可能性の有無を簡易に判定することが可能である。
【0008】
本発明の一観点に係る処理装置において、前記指標算出部は、複数の期間のそれぞれの前記バイタル指標を算出し、前記人数推定部は、前記複数の期間のそれぞれにおいて、前記測定範囲内の前記人物の人数を推定し、前記体動判定部は、前記複数の期間のそれぞれにおいて、前記測定範囲内の前記人物の前記体動の有無を判定し、前記演算部は、前記複数の期間における前記測定範囲内の前記人物の前記体動がないと判定された期間のうち、前記推定された人数分の前記バイタル指標が算出されなかった期間を除外して、前記バイタル指標の前記時系列データを前記人物毎に演算してもよい。推定された人数分のバイタル指標が算出されなかった期間についてのバイタル指標の時系列データは、信頼性の低いデータである可能性がある。処理装置によれば、推定された人数分のバイタル指標が算出されなかった期間を除外して、バイタル指標の時系列データを人物毎に演算することで、バイタル指標の時系列データの信頼性を向上することができる。
【0009】
本発明の一観点に係る処理装置は、前記測定範囲内の前記人物の位置を特定し、前記バイタル指標に紐づいた前記人物の位置情報を前記人物毎に算出する位置情報算出部を備え、前記指標算出部は、複数の期間のそれぞれの前記バイタル指標を算出し、前記位置情報算出部は、前記複数の期間のそれぞれの前記位置情報を算出し、前記演算部は、前記複数の期間のそれぞれの前記位置情報に基づいて、前記人物毎に前記バイタル指標を対応付けることにより前記バイタル指標の組み合わせを前記人物毎に決定し、前記バイタル指標の前記組み合わせに基づいて、前記バイタル指標の前記時系列データを前記人物毎に演算してもよい。これにより、人物毎にバイタル指標の時系列データを演算することが可能となる。
【0010】
本発明の一観点に係る処理装置において、前記指標算出部は、複数の期間のそれぞれの前記バイタル指標を算出し、前記演算部は、前記複数の期間のそれぞれの前記バイタル指標の値に基づいて、前記人物毎に前記バイタル指標を対応付けることにより前記バイタル指標の組み合わせを前記人物毎に決定し、前記バイタル指標の前記組み合わせに基づいて、前記バイタル指標の前記時系列データを人物毎に演算してもよい。これにより、人物毎にバイタル指標の時系列データを演算することが可能となる。
【0011】
本発明の一観点に係る処理装置は、前記バイタル指標の前記時系列データを前記人物毎に出力する指標出力部を備え、前記指標出力部は、前記推定された人数の変化の可能性が有ると判定された場合、前記推定された人数の変化の可能性が有ると判定される前の前記バイタル指標の前記時系列データと、前記推定された人数の変化の可能性が有ると判定された後の前記バイタル指標の前記時系列データと、を分けて出力してもよい。これにより、人数が変化する前の人数分のバイタル指標の時系列データと、人数が変化した後の人数分のバイタル指標の時系列データと、を分けて人物毎に出力することができる。
【0012】
本発明の一観点に係る処理装置において、前記信号取得部は、前記バイタル信号に基づいて取得したバイタル波形群を前記バイタル信号から算出した特徴量に基づいて複数のクラスタにクラスタリングする処理を実行し、前記人数推定部は、クラスタリングされた前記バイタル波形群のクラスタ数に基づいて、前記測定範囲内の前記人物の人数を推定してもよい。本発明の一観点に係る処理装置において、前記体動判定部は、前記複数の期間のそれぞれにおいて、前記測定範囲内の前記人物の前記体動の有無を判定し、前記人数推定
部は、前記複数の期間のそれぞれにおいて、前記測定範囲内の前記人物の人数を推定し、かつ、前記複数の期間における連続期間のうち、前記測定範囲内の前記人物の前記体動が無いと判定された期間については、前記クラスタ数の最大値を前記測定範囲内の前記人物の人数と推定してもよい。複数の期間における連続期間のうち、測定範囲内の人物の体動が無いと判定された期間は、人数の変化がないと推定できるため、クラスタ数の最大値を測定範囲内の人物の人数と推定する。
【0013】
本発明の一観点に係る処理装置は、前記推定された人数及び前記クラスタ数に基づいて、前記測定範囲内の前記少なくとも1人の前記人物のバイタル異常を検出する異常検出部を備えてもよい。本発明の一観点に係る処理装置において、前記体動判定部は、前記複数の期間のそれぞれにおいて、前記測定範囲内の前記人物の前記体動の有無を判定し、前記人数推定部は、前記複数の期間のそれぞれにおいて、前記測定範囲内の前記人物の人数を推定し、かつ、前記複数の期間における連続期間のうち、前記測定範囲内の前記人物の前記体動が無いと判定された期間については、前記クラスタ数の最大値を前記測定範囲内の前記人物の人数と推定し、前記異常検出部は、前記連続期間のうち、前記測定範囲内の前記人物の前記体動が無いと判定された期間であって、かつ、前記クラスタ数が前記最大値よりも小さい期間を、前記人物の前記バイタル異常が発生した期間であると決定してもよい。これにより、ユーザは、測定範囲内の人物のバイタル異常やバイタル異常が発生した期間を把握することが可能となる。
【0014】
本発明の一観点に係る処理装置は、前記測定範囲内の前記少なくとも1人の前記人物のバイタル異常を検出する異常検出部を備え、前記体動判定部は、前記複数の期間のそれぞれにおいて、前記測定範囲内の前記人物の前記体動の有無を判定し、前記人数推定部は、前記複数の期間のそれぞれにおいて、前記測定範囲内の前記人物の人数を推定し、かつ、前記複数の期間における連続期間のうち、前記測定範囲内の前記人物の前記体動が無いと判定された期間については、前記クラスタ数の最大値を前記測定範囲内の前記人物の人数と推定し、前記異常検出部は、前記連続期間のうち、前記測定範囲内の前記人物の前記体動が無いと判定された期間であって、かつ、前記クラスタ数が前記最大値よりも小さい期間の直前の期間における前記バイタル信号に基づいて、前記測定範囲内の前記少なくとも1人の前記人物に前記バイタル異常が発生しているか否かを判定してもよい。これにより、ユーザは、測定範囲内の人物のバイタル異常を把握することが可能となる。
【0015】
なお、本発明は、上記処理の少なくとも一部を含む処理方法や、上記処理の少なくとも一部をコンピュータに実行させるためのプログラム、または、そのようなプログラムを非一時的に記録したコンピュータ読取可能な記録媒体として捉えることもできる。上記構成および処理の各々は技術的な矛盾が生じない限り互いに組み合わせて本発明を構成することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、バイタル指標の時系列データを人物毎に演算することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、処理装置の構成例を模式的に示す図である。
図2図2は、処理装置の概略構成を示す図である。
図3図3は、処理装置の例を示すブロック図である。
図4図4は、信号取得部の機能の構成を示すブロック図である。
図5図5は、処理装置の処理フローの一例を示すフローチャートである。
図6図6Aは、クラスタリングされた呼吸波形群の代表波形の座標の説明図であり、図6Bは、クラスタリングされた呼吸波形群のそれぞれの代表波形の一例を示す図である。
図7図7は、測定範囲内の人数の推定処理の説明図である。
図8図8は、バイタル指標の時系列データから信頼性の低いデータを除外する一例の説明図である。
図9図9は、呼吸指標の時系列データを測定範囲内の人物毎に出力する処理の一例の説明図である。
図10図10は、呼吸指標の時系列データを測定範囲内の人物毎に出力する処理の一例の説明図である。
図11図11は、測定範囲内の人物の体動の有無を判定する処理フローの一例を示すフローチャートである。
図12図12Aは、人が安静にしている状態における静止物成分を除去した受信信号の振幅強度を示す図である。図12Bは、人の体動が発生している状態における静止物成分を除去した受信信号の振幅強度を示す図である。
図13図13は、推定された人数の変化の可能性の有無を判定する処理フローの一例を示すフローチャートである。
図14図14A図14Cは、人数変化の判定処理の説明図である。
図15図15A図15Cは、静止物成分を除去した受信信号の信号強度を示す図である。
図16図16A図16Dは、クラスタリングの結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、適用例及び実施形態について図を参照しながら説明する。以下に示す適用例及び実施形態は、本願の一態様であり、本願の権利範囲を限定するものではない。
【0019】
<適用例>
図1は、本発明が適用された処理装置100の使用例を模式的に示す図である。図1に示す使用例では、部屋10内に設置されたベッド20の上に測定対象である3人の人物31、32、33が並んでいる。また、部屋10内には、処理装置100が配置されている。処理装置100は、ベッド20上の測定対象の人物31、32、33に信号を送信し、いわゆる非接触のセンシングを行う。測定対象の人物31、32、33に送信される信号の周波数としては、ミリ波レーダに用いられる30GHz~300GHzの周波数帯の周波数が挙げられるが、光、電波、音波、超音波など、これ以外の周波数帯の周波数が採用されてよい。
【0020】
図2は、処理装置100の構成例を示す図である。処理装置100は、送受信装置111と、制御装置112と、記憶装置113と、出力装置114とを備える。送受信装置111は、測定範囲内における少なくとも1人の人物で反射した信号を受信する信号受信部として機能する。例えば、送受信装置111は、図1に示す人物31、32、33に対する信号の送受信を行う。処理装置100の測定範囲は、例えば、図1に示すベッド20上の所定範囲であるが、この所定範囲に限定されない。制御装置112は、測定範囲内における少なくとも1人の人物で反射した信号からバイタル信号を取得する。また、制御装置112は、バイタル信号に基づいて測定範囲内における少なくとも1人の人物のバイタル状態を示すバイタル指標を算出する。記憶装置113は、送受信装置111が受信した信号データや、制御装置112が実行する処理において使用されるデータや生成されるデータなど、種々のデータを記憶する。出力装置114は、制御装置112が実行した処理の結果に応じてユーザに通知したり、外部の装置に処理結果に関するデータを出力したりする。なお、出力装置114は、各種無線通信や有線通信など種々の通信方法によって外部の装置に処理結果に関するデータを出力することができるように構成されてもよい。
【0021】
処理装置100は、電波レーダ、超音波センサ、音波センサなどの信号の送受信手段を用いて測定範囲内における少なくとも1人の人物に対して非接触のセンシングを行い、人
物のバイタル状態を示すバイタル指標の算出及び測定範囲内の人物の人数の推定を行う。処理装置100は、バイタル指標の時系列データを人物毎に演算し、推定された人数の変化の可能性が有る場合、推定された人数の変化の可能性が有ると判定される前のバイタル指標の時系列データと、推定された人数の変化の可能性が有ると判定された後のバイタル指標の時系列データと、を分けて演算する。したがって、処理装置100によれば、人数が変化する前の人数分のバイタル指標の時系列データと、人数が変化した後の人数分のバイタル指標の時系列データと、を分けて人物毎に演算することができる。
【0022】
<実施形態の説明>
本件開示の技術の一実施形態について説明する。本実施形態では、一例として、図1に示すように部屋10に処理装置100とベッド20が配置され、ベッド20に複数の人物31、32、33が横たわり、測定対象の各人物のバイタル指標を処理装置100によって取得する場合を想定する。例えば、処理装置100は、各人物の睡眠時のバイタル指標を取得してもよい。なお、ここでは、取得するバイタル指標は測定対象の人物の呼吸に関する指標(呼吸指標)を想定するが、取得するバイタル指標は、心拍に関する指標(心拍指標)であってもよい。
【0023】
図3は、一実施形態に係る処理装置100の構成例を示すブロック図である。図3に示すように、処理装置100において、送受信装置111は、測定範囲内における人物に信号を送信する送信部121と、測定範囲内における人物で反射した信号を受信する受信部122とを有する。制御装置112は、信号取得部131と、指標算出部132と、体動判定部133と、人数推定部134と、人数変化判定部135と、演算部136と、指標出力部137と、異常検出部138と、位置情報算出部139とを有する。
【0024】
制御装置112は、CPU(Central Processing Unit)やRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)などを含み、処理装置100内の各部の制御や、各
種の処理などを行う。記憶装置113は、制御装置112で実行されるプログラムや、制御装置112において実行される処理で使用される各種データなどを記憶する。例えば、記憶装置113は、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)などの補助記憶装置である。記憶装置113は、着脱可能な記憶媒体によって実現される場合も有り得る。出力装置114は、制御装置112によって生成されたデータを、表示装置300に出力する。なお、制御装置112によって生成されたデータは、記憶装置113に記憶されて、任意のタイミングで出力装置114から表示装置300に出力されてもよい。出力装置114は、例えばネットワークカード等の通信装置によって実現される通信インターフェースであってもよい。
【0025】
また、本実施形態では処理装置100と表示装置300とは別体の装置であるものとするが、処理装置100は表示装置300と一体に構成されてもよい。図3に示す処理装置100の構成要素の全てが必須というわけではなく、適宜、処理装置100の構成要素の追加又は削除がなされてもよい。また、処理装置100の少なくとも一部の機能が、クラウド上のコンピュータによって実現されてもよいし、PLC(Programmable Logic Controller)やシングルボードコンピュータなどのマイクロコンピュータであってもよい。
【0026】
信号取得部131は、測定範囲内における少なくとも1人の人物で反射した信号からバイタル信号を取得する。指標算出部132は、バイタル信号に基づいて測定範囲内における少なくとも1人の人物のバイタル状態を示すバイタル指標を算出する。体動判定部133は、測定範囲内の人物の体動の有無を判定する。人数推定部134は、測定範囲内の人物の数(人数)を推定する。人数変化判定部135は、推定された人数の変化の可能性の有無を判定する。すなわち、人数変化判定部135は、測定範囲内の人物の数の増減の可能性の有無を判定する。演算部136は、バイタル指標の時系列データを測定範囲内の人
物毎に演算する。演算部136は、推定された人数の変化の可能性が有ると判定された場合、推定された人数の変化の可能性が有ると判定される前のバイタル指標の時系列データと、推定された人数の変化の可能性が有ると判定された後のバイタル指標の時系列データと、を分けて演算する。指標出力部137は、バイタル指標の時系列データを測定範囲内の人物毎に出力する。異常検出部138は、測定範囲内の少なくとも1人の人物のバイタル異常を検出する。位置情報算出部139は、測定範囲内の人物の位置を特定し、バイタル指標に紐づいた人物の位置情報を人物毎に算出する。
【0027】
処理装置100は、所定のタイムスロットで各種の処理を実行する。したがって、信号取得部131は、複数の期間のそれぞれにおいて、バイタル信号を取得する。指標算出部132は、複数の期間のそれぞれのバイタル指標を算出する。体動判定部133は、複数の期間のそれぞれにおいて、測定範囲内の人物の体動の有無を判定する。人数推定部134は、複数の期間のそれぞれにおいて、測定範囲内の人数を推定する。人数変化判定部135は、複数の期間のそれぞれにおいて、推定された人数の変化の可能性の有無を判定する。異常検出部138は、複数の期間のそれぞれにおいて、測定範囲内の少なくとも1人の人物のバイタル異常を検出する。位置情報算出部139は、複数の期間のそれぞれにおいて、測定範囲内の人物の位置を特定し、バイタル指標に紐づいた人物の位置情報を人物毎に算出する。
【0028】
図4は、信号取得部131の機能の構成を示すブロック図である。信号取得部131の機能は、信号処理部151及びクラスタリング部152から構成される。信号処理部151は、受信部122が受信した信号に対して信号処理を行い、受信部122が受信した信号から抽出したバイタル信号に基づいてバイタル波形群を取得する。ここでは、バイタル信号は、例えば、呼吸信号であるが、心拍信号であってもよい。また、バイタル波形群は、例えば、呼吸波形群であるが、心拍波形群であってもよい。クラスタリング部152は、バイタル波形群をクラスタリングする処理を実行し、クラスタリングされたバイタル波形群のクラスタ数、バイタル波形群のそれぞれの代表波形及び代表波形の座標(位置情報)を取得する。
【0029】
図5は、処理装置100の処理フローの一例を示すフローチャートである。一例として、処理装置100に対して図5の処理フローの開始が指示されることで、図5の処理が実行される。ステップS101において、送信部121は、測定範囲内に信号を送信する。例えば、送信部121は、チャープ信号を送信してもよい。送信部121が送信するチャープ信号の周波数帯域やアップチャープやダウンチャープなどの送信方式は適宜設定されてよい。ここでは、一例として、FMCW(周波数連続変調)方式で、送受信のサンプリング周期は100μs程度、アンテナ数は8chのアレイを用いることを想定する。受信部122は、測定範囲内における少なくとも1人の人物や静止物などで反射した信号を受信する。
【0030】
ステップS102において、信号処理部151は、送信部121が送信したチャープ信号と受信部122が受信した信号の差分から得られるIF信号に対して信号処理を行い、送受信装置111(処理装置100)から信号が反射した位置(測定位置)までの距離を算出する。具体的には、信号処理部151は、IF信号をAD変換後、フーリエ変換(FFT)を行って得られる異なる周波数スペクトルに基づいて、送受信装置111から測定位置までの距離を算出する。
【0031】
ステップS103において、信号処理部151は、IF信号に対して信号処理を行い、送受信装置111(処理装置100)に対する測定位置の方位(角度)を算出する。具体的には、信号処理部151は、受信部122の複数のアンテナ間の受信信号の位相差から角度(到来方位)を算出する。ステップS104において、体動判定部133は、測定範
囲内の人物の体動の有無を判定する。測定範囲内の人物の体動が無いと判定された場合、処理がステップS105に進む。測定範囲内の人物の体動が有ると判定された場合、処理がステップS110に進む。
【0032】
ステップS105において、信号処理部151は、受信部122が受信した信号に対して信号処理を行うことで抽出した呼吸信号に基づいて、呼吸波形群を取得する。受信部122が受信した信号は、呼吸運動に起因しない信号も含まれている。呼吸運動に起因しない信号として、例えば、ベッドや壁などの静止物、人の微妙な動き、ファンの振動、ペットやロボット等の動き、複数の物体に基づく信号が混在した信号、ノイズ成分などが挙げられる。信号処理部151は、受信部122が受信した信号から呼吸運動に起因しない信号を取り除くことで、受信部122が受信した信号から呼吸運動に起因する信号(呼吸信号)のみを取り出す。信号処理部151は、例えば、反射波の信号強度、位相変動量、振幅変動量、位相の繰り返し性、周波数などの特徴に基づいて、呼吸運動に起因しない信号の除外や呼吸信号の抽出を行う。
【0033】
ステップS106において、クラスタリング部152は、バイタル信号から算出した特徴量に基づいて呼吸波形群をクラスタリングし、クラスタリングされた呼吸波形群のクラスタ数、呼吸波形群のそれぞれの代表波形及び代表波形の座標を取得する。クラスタリング部152は、k平均クラスタリング(Kmeans Clustering)のアルゴリズムを用いて、
呼吸波形群をクラスタリングしてもよい。クラスタリング部152は、呼吸波形群から算出される特徴量を入力としたクラスタリングをしてもよい。特徴量は、例えば、バイタル信号の周波数、位相及び座標情報(距離、方位)等である。また、クラスタリング部152は、混合ガウス分布モデル(GMM:Gaussian mixture model)、X-means、変分混合
ガウス分布モデル(VBGMM:Variational BayesianGMM)などのアルゴリズムを用いて、呼吸波形群をクラスタリングしてもよい。図6Aは、クラスタリングされた呼吸波形群の代表波形の座標の説明図である。図6Aの横軸は方位であり、図6Aの縦軸は距離である。図6Aには、代表波形A1の座標(X1,Y1)、代表波形B1の座標(X2,Y2)、代表波形C1の座標(X3,Y3)が示されている。図6Bは、クラスタリングされた呼吸波形群のそれぞれの代表波形の一例を示す図である。図6Bの縦軸は振幅であり、図6Bの横軸は時間である。
【0034】
ステップS107において、指標算出部132は、呼吸信号に基づいて測定範囲内における少なくとも1人の人物の呼吸状態を示す呼吸指標を算出する。指標算出部132は、1スロット分の呼吸指標を算出する。1スロットは、例えば、20sec(250フレーム)である。
【0035】
ステップS108において、指標出力部137は、呼吸指標の出力の指示が有るか否かを判定する。呼吸指標の出力の指示が有る場合(S108:YES)、処理がステップS109に進む。呼吸指標の出力の指示が無い場合(S108:NO)、処理がステップS101に戻る。ユーザが、処理装置100を操作して、処理装置100に呼吸指標の出力の指示を入力してもよい。
【0036】
ステップS109において、演算部136は、呼吸指標の時系列データを測定範囲内の人物毎に算出し、指標出力部137は、呼吸指標の時系列データを測定範囲内の人物毎に出力する。その後、処理がステップS101に戻る。呼吸指標の時系列データは、複数スロットの呼吸指標を時系列に並べたデータであり、呼吸指標の時間トレンドを示すデータである。また、演算部136は、任意のタイミングで呼吸指標の時系列データを演算してもよいし、予め設定されたスケジュール情報に基づいて呼吸指標の時系列データを演算してもよい。指標出力部137は、任意のタイミングで呼吸指標の時系列データを出力してもよいし、予め設定されたスケジュール情報に基づいて呼吸指標の時系列データを出力し
てもよい。
【0037】
ステップS110において、人数推定部134は、測定範囲内の人数を推定し、人数変化判定部135は、推定された人数の変化の可能性の有無を判定する。推定された人数の変化の可能性が有ると判定された場合(S110:YES)、処理がステップS111に進む。推定された人数の変化の可能性が無いと判定された場合(S110:NO)、処理がステップS101に戻る。
【0038】
ステップS111において、演算部136は、呼吸指標の時系列データを測定範囲内の人物毎に演算する。この場合、演算部136は、人数の変化の可能性が有ると判定される前の呼吸指標の時系列データと、人数の変化の可能性が有ると判定された後の呼吸指標の時系列データと、を分けて演算する。これにより、人数が変化する前の人数分のバイタル指標の時系列データと、人数が変化した後の人数分のバイタル指標の時系列データと、を分けて人物毎に演算することができる。ステップS111の処理が行われた後、処理がステップS101に戻る。
【0039】
ステップS112において、指標出力部137は、呼吸指標の出力の指示が有るか否かを判定する。呼吸指標の出力の指示が有る場合(S112:YES)、処理がステップS113に進む。呼吸指標の出力の指示が無い場合(S112:NO)、処理がステップS101に戻る。ユーザが、処理装置100を操作して、処理装置100に呼吸指標の出力の指示を入力してもよい。
【0040】
ステップS113において、指標出力部137は、呼吸指標の時系列データを測定範囲内の人物毎に出力する。この場合、指標出力部137は、人数の変化の可能性が有ると判定される前の呼吸指標の時系列データと、人数の変化の可能性が有ると判定された後の呼吸指標の時系列データと、を分けて出力する。これにより、人数が変化する前の人数分のバイタル指標の時系列データと、人数が変化した後の人数分のバイタル指標の時系列データと、を分けて人物毎に出力することができる。
【0041】
図7は、測定範囲内の人数の推定処理の説明図である。図7の各スロット(時間スロット)は20secである。第1スロット(スロット番号1)、第12スロット(スロット番号12)では、図5の処理フローのステップS104で測定範囲内の人物の体動が有ると判定されている(体動判定=1)。したがって、第1スロット、第12スロットの各期間では、測定範囲内の少なくとも1人の人物が動的状態である。第2~11、13スロット(スロット番号2~11、13)では、図5の処理フローのステップS104で測定範囲内の人物の体動が無いと判定されている(体動判定=0)。したがって、第2~11、13スロットの各期間では、測定範囲内の全ての人物が静的状態である。図7では、第2~11、13スロットのクラスタ数の最大値が“3”である。
【0042】
測定範囲内の人物が体動状態ではなく、測定範囲内の人物の動きがないと判断される期間においては、測定範囲内の人数に変化がないと推定できるため、呼吸波形群のクラスタリング処理の結果の最大値を、測定範囲内における正しい人数と決めることが可能である。静的状態(人数の変化がない状態)期間内で最も多い数のバイタル指標(呼吸指標)の時に実際の人数に相当するバイタル指標が計測出来ており、そうでない場合は、バイタル信号が抽出基準に満たない、SN比の悪化などの理由で人数分のバイタル信号が取得できなかったと推定できる。人数推定部134は、静的状態(人数の変化がない状態)期間におけるクラスタ数の最大値に基づいて、測定範囲内の人数を推定する。すなわち、人数推定部134は、複数の期間における連続期間のうち、測定範囲内の人物の体動が無いと判定された期間については、クラスタ数の最大値を測定範囲内の人数と推定する。図7に示す例では、人数推定部134は、静的状態期間における測定範囲内の人数を“3”と推定
する。
【0043】
図7では、第4スロット及び第10スロットにおけるクラスタ数が“2”であり、静的状態期間におけるクラスタ数の最大値と一致していない。このような場合、無呼吸状態などの通常の呼吸状態とは異なる状態の人物が測定範囲内に存在する可能性がある。そのため、静的状態期間のうちのクラスタ数がクラスタ数の最大値よりも小さい期間については、測定範囲内の人物が無呼吸や咳などの異常状態であった可能性が高い。測定範囲内の人物が無呼吸や咳などの異常状態であった可能性がある期間を検出することが好ましい。そこで、本実施形態では、異常検出部138は、推定された人数と、クラスタ数とに、基づいて、測定範囲内の少なくとも1人の人物のバイタル異常を検出する。異常検出部138は、推定された人数(クラスタ数の最大値)とクラスタ数とが一致していない場合、測定範囲内の少なくとも1人の人物にバイタル異常が発生したと判定する。そして、異常検出部138は、複数の期間における連続期間のうち、測定範囲内の人物の体動が無いと判定された期間であって、かつ、クラスタ数がクラスタ数の最大値よりも小さい期間を、測定範囲内における人物のバイタル異常が発生した期間であると決定する。これにより、ユーザは、測定範囲内の人物のバイタル異常やバイタル異常が発生した期間を把握することが可能となる。
【0044】
異常検出部138は、推定された人数とクラスタ数とが一致していないスロットの直前のスロットにおけるバイタル信号の変動に基づいて、測定範囲内の少なくとも1人の人物のバイタル異常を検出してもよい。例えば、異常検出部138は、バイタル信号の変動に基づいて、呼吸数が徐々に小さくなっていることや、バイタル信号の振幅値が徐々に小さくなっていること等を検出することで、測定範囲内の少なくとも1人の人物にバイタル異常が発生しているか否かを判定してもよい。異常検出部138は、推定された人数とクラスタ数とが一致していないスロットと、直前のスロットとに基づいて、呼吸信号が取得できた空間領域の受信信号からバイタル異常が発生した際の体表の動きの特徴と一致する特徴が検出できた否かを判定してもよい。異常検出部138は、呼吸信号が取得できた空間領域の受信信号からバイタル異常が発生した際の体表の動きの特徴と一致する特徴が検出できた否かの結果に基づいて、測定範囲内の少なくとも1人の人物にバイタル異常が発生しているか否かを判定してもよい。このように、異常検出部138は、複数の期間における連続期間のうち、測定範囲内の人物の体動が無いと判定された期間であって、かつ、クラスタ数がクラスタ数の最大値よりも小さい期間の直前の期間におけるバイタル信号に基づいて、測定範囲内の少なくとも1人の人物にバイタル異常が発生しているか否かを判定してもよい。これにより、ユーザは、測定範囲内の人物のバイタル異常を把握することが可能となる。
【0045】
図8は、バイタル指標の時系列データから信頼性の低いデータを除外する一例の説明図である。図8のスロット番号、スロット(時間スロット)、体動判定、クラスタ数及び呼吸指標は、図7と同様である。第4スロット(スロット番号4)及び第10スロット(スロット番号10)のそれぞれのクラスタ数は“2”であり、静的状態期間におけるクラスタ数の最大値は“3”である。人数推定部134は、静的状態期間におけるクラスタ数の最大値に基づいて、測定範囲内の人数を推定するため、第1~第11スロットの期間の人数推定結果は3人である。第4スロットの期間及び第10スロットの期間では、人数推定部134によって推定された人数分の呼吸指標が算出されていないため、第4スロットの期間及び第10スロットの期間における呼吸指標のデータは、信頼性の低いデータである。バイタル指標の時系列データから信頼性の低いデータを除外することが好ましい。そこで、本実施形態では、演算部136は、複数の期間における測定範囲内の人物の体動がないと判定された期間(静的状態期間)のうち、推定された人数分のバイタル指標(例えば呼吸指標)が算出されなかった期間を除外して、バイタル指標の時系列データを人物毎に演算する。これにより、バイタル指標の時系列データから信頼性の低いデータが除外され
、バイタル指標の時系列データの信頼性が向上する。
【0046】
図9は、呼吸指標の時系列データを測定範囲内の人物毎に出力する処理の一例の説明図である。図9の各スロット(時間スロット)は20secである。図9に示す呼吸指標は、呼吸数を含んでいる。第1、2及び4スロット(スロット番号1、2及び4)の期間のクラスタ数は“3”であり、第3スロット(スロット番号3)の期間のクラスタ数は“2”である。人数推定部134は、静的状態期間におけるクラスタ数の最大値に基づいて、測定範囲内の人数を推定するため、第1~第4スロットの期間の人数推定結果は3人である。第1、2及び4スロットの期間では、推定された人数分の呼吸数が算出されている。第3スロットの期間では、推定された人数分の呼吸数が算出されていない。この場合、ターゲットとなる人物が存在するが、ターゲットとなる人物の呼吸信号が抽出条件を満たしていないと判断され、1人分の呼吸数が算出されない。そのため、第3スロットの期間では、2人分の呼吸数が算出され、1人分の呼吸数の算出結果がnullとなっている。
【0047】
演算部136は、各スロットの期間の呼吸数をそれぞれ比較し、各スロットの期間のそれぞれの呼吸数の対応関係を人物毎に決定する。同一人物の隣接するスロット同士の呼吸数については、急激に変化する可能性が低い。そこで、演算部136は、隣接するスロット同士の呼吸数の差分が最小となるような組み合わせを決定する。図9に示す例では、演算部136は、矢印D1~D3によって紐づけられた呼吸数の組み合わせと、矢印E1~E2によって紐づけられた呼吸数の組み合わせと、矢印F1~F3によって紐づけられた呼吸数の組み合わせと、を決定する。このように、演算部136は、複数の期間のそれぞれの呼吸指標の値に基づいて、人物毎に呼吸指標を対応付けることにより呼吸指標の組み合わせを人物毎に決定し、呼吸指標の組み合わせに基づいて、呼吸指標の時系列データを人物毎に演算する。従来の手法では、人物毎にバイタル指標の時系列データを演算ができていなかったが、本実施形態では、人物毎にバイタル指標の時系列データを演算することが可能となる。バイタル指標の時系列データを解析する際、人物毎のバイタル指標を容易に把握することが可能である。なお、呼吸指標の時系列データの演算処理は、脈拍指標の時系列データの演算処理及びバイタル指標の時系列データの演算処理にも適用できる。
【0048】
図10は、呼吸指標の時系列データを測定範囲内の人物毎に演算する処理の一例の説明図である。図10の各スロット(時間スロット)は20secである。図10に示す呼吸指標は、呼吸数及び空間座標(距離と方位)を含んでいる。呼吸指標に含まれる座標は、例えば、クラスタリングされた呼吸波形群の代表波形の座標であってもよい。第1、2及び4スロットの期間では、推定された人数分の呼吸数及び座標が算出されている。第3スロットの期間では、推定された人数分の呼吸数及び座標が算出されていない。第3スロットの期間では、2人分の呼吸数及び座標が算出され、1人分の呼吸数及び座標の算出結果がnullとなっている。
【0049】
演算部136は、各スロットの期間の座標をそれぞれ比較し、各スロットの期間のそれぞれの座標の対応関係を人物毎に決定する。演算部136は、隣接する2つのスロットにおける座標と座標との間の距離(座標間距離)が最小となるような組み合わせを決定する。図10に示す例では、演算部136は、矢印K1~K3によって紐づけられた呼吸指標の組み合わせと、矢印L1~L2によって紐づけられた呼吸指標の組み合わせと、矢印M1~M3によって紐づけられた呼吸指標の組み合わせと、を決定する。このように、演算部136は、複数の期間のそれぞれの座標(位置情報)に基づいて、人物毎に呼吸指標を対応付けることにより呼吸指標の組み合わせを人物毎に決定し、呼吸指標の組み合わせに基づいて、呼吸指標の時系列データを人物毎に演算する。これにより、測定範囲内の人物毎のバイタル指標の時系列データを正確に演算することができる。バイタル指標の時系列データを解析する際、人物毎のバイタル指標を容易に把握することが可能である。なお、呼吸指標の時系列データの演算処理は、脈拍指標の時系列データの演算処理及びバイタル
指標の時系列データの演算処理にも適用できる。
【0050】
図11は、測定範囲内の人物の体動の有無を判定する処理フローの一例を示すフローチャートである。図11の処理フローは、図5のステップS104において実行される。ステップS201において、信号処理部151は、受信部122が受信した信号に対して信号処理を行うことで、受信信号から静止物成分を除去する。信号処理部151は、例えば、隣接するフレーム間の時間差分処理を行ってもよいし、各フレームの信号からスロット内の信号の時間平均の差分処理を行ってもよい。ステップS202において、信号処理部151は、静止物成分を除去した信号に基づいて、体動指標(振幅値)を算出する。
【0051】
ステップS203において、体動判定部133は、体動指標が閾値以上であるか否かを判定する。体動指標が閾値以上である場合(S203:YES)、処理がステップS204に進む。ステップS204において、体動判定部133は、測定範囲内の人物の体動が有ると判定し、処理が図5のステップS110に進む。体動指標が閾値未満である場合(S203:NO)、処理がステップS205に進む。ステップS205において、体動判定部133は、測定範囲内の人物の体動が無いと判定し、処理が図5のステップS105に進む。
【0052】
図12A及び図12Bを参照して、測定範囲内の人物の体動の有無を判定する処理の一例を説明する。図12Aは、人が安静にしている状態における静止物成分を除去した受信信号の振幅強度を示す図である。図12Bは、人の体動が発生している状態における静止物成分を除去した受信信号の振幅強度を示す図である。図12A及び図12Bの横軸は方位を示し、図12A及び図12Bの縦軸は距離を示す。人の体動が発生している状態は、人が安静にしている状態に比べ、人が存在する位置の振幅値が向上する。体動判定部133は、振幅値の変動に基づいて、測定範囲内の人物の体動の有無を判定してもよい。また、人の体動が発生している状態は、人が安静にしている状態に比べ、振幅値が強い範囲が広がる。体動判定部133は、振幅値が強い範囲の広がり度合に基づいて、測定範囲内の人物の体動の有無を判定してもよい。
【0053】
図13は、推定された人数の変化の可能性の有無を判定する処理フローの一例を示すフローチャートである。図13の処理フローは、図5のステップS110において実行される。ステップS301において、人数変化判定部135は、体動時間を算出(測定)する。体動時間は、例えば、測定範囲内の人物の体動が検出されたタイミングから測定範囲内の人物の体動が検出されなくなったタイミングまでの時間(経過時間)である。
【0054】
ステップS302において、人数変化判定部135は、前スロット(処理対象スロットよりも前のスロット)で測定範囲内の人物の体動が有るか否かを判定する。前スロットで測定範囲内の人物の体動が有る場合(S302:YES)、処理がS303に進む。前スロットで測定範囲内の人物の体動が無い場合(S302:NO)、処理がS305に進む。
【0055】
ステップS303において、人数変化判定部135は、測定範囲内の人物の体動が連続しているか否かを判定する。具体的には、人数変化判定部135は、前スロットにおける測定範囲内の人物の体動と、処理対象スロットにおける測定範囲内の人物の体動とが連続した関係にあるか否かを判定する。前スロットにおける測定範囲内の人物の体動と、処理対象スロットにおける測定範囲内の人物の体動とが連続した関係にある場合、人数変化判定部135は、測定範囲内の人物の体動が連続していると判定する。測定範囲内の人物の体動が連続している場合(S303:YES)、処理がステップS304に進む。前スロットにおける測定範囲内の人物の体動と、処理対象スロットにおける測定範囲内の人物の体動とが連続した関係にない場合、人数変化判定部135は、測定範囲内の人物の体動が
連続していないと判定する。測定範囲内の人物の体動が連続していない場合(S303:NO)、処理がステップS305に進む。
【0056】
ステップS304において、人数変化判定部135は、前スロットにおける体動時間と処理対象スロットにおける体動時間とを合算した合算体動時間を算出する。ステップS305において、人数変化判定部135は、体動時間が閾値時間以上であるか否かを判定する。体動時間が閾値時間以上である場合(S305:YES)、処理がステップS306に進む。体動時間が閾値時間未満である場合(S305:NO)、処理がステップS307に進む。ステップS304で合算体動時間が算出されている場合、人数変化判定部135は、合算体動時間が閾値時間以上であるか否かを判定する。合算体動時間が閾値時間以上である場合(S305:YES)、処理がステップS306に進む。合算体動時間が閾値時間未満である場合(S305:NO)、処理がステップS307に進む。
【0057】
ステップS306において、人数変化判定部135は、推定された人数の変化の可能性が有ると判定し、処理が図5のステップS111に進む。ステップS307において、人数変化判定部135は、推定された人数の変化の可能性が無いと判定し、処理が図5のステップS101に戻る。人物の体動時間に基づいて、推定された人数の変化の可能性の有無を判定することで、推定された人数の変化の可能性の有無を簡易に判定することが可能である。
【0058】
測定範囲内の人物が測定範囲外に移動可能な時間に基づいて、閾値時間を決定してもよく、例えば、下記の(1)及び(2)に示す時間に基づいて、閾値時間を決定してもよい。
(1)人がベッドから起き上がる時間(人がベッドに入ってから寝転ぶまでの時間)
(2)人が測定範囲内から測定範囲外に移動するまでの時間(人が測定範囲外から測定範囲内のベッドに移動するまでの時間)
測定範囲内の人の位置から測定範囲外までの最短距離を0.5mとし、人の移動時間を1m/secと想定した場合、(1)の時間が5sec、(2)の時間が0.5secであるので、閾値時間を5.5secとしてもよい。
【0059】
図14A図14Cを参照して、人数変化判定部135による人数変化の判定処理の一例について説明する。図14A図14Cは、人数変化の判定処理の説明図である。図14A及び図14Bの縦軸は、体動指標を示し、図14A及び図14Bの横軸は、時間(フレーム)を示している。体動指標は、体動の大きさを表す指標である。人数変化判定部135は、受信部122が受信した信号の振幅情報などに基づいて、体動指標を算出してもよい。図14Aに示す体動指標が増加した期間T1及び図14Bに示す体動指標が増加した期間T2は、測定範囲内の人物の体動が発生した期間である。期間T1及び期間T2は、測定範囲内の人物の体動が検出されたタイミングから測定範囲内の人物の体動が検出されなくなったタイミングまでの経過時間であってもよい。図14Aに示す期間T1は、図14Cに示す動的状態期間A2に対応し、図14Bに示す期間(T2)は、図12Cに示す動的状態期間(B1)に対応している。
【0060】
期間(T1)が閾値時間(規定時間)よりも短い場合、人数変化判定部135は、推定された人数の変化の可能性が無いと判定する。図12Cに示すように、期間(T1)に対応する動的状態期間(A2)は、静的状態期間(A1)と静的状態期間(A3)との間の期間である。人数変化判定部135は、期間(A1)、期間(A2)及び期間(A3)を含む期間Aを、測定範囲内の人物の人数が変化していない期間であると推定する。
【0061】
期間(T2)が閾値時間よりも長い場合、人数変化判定部135は、推定された人数の変化の可能性が有ると判定してもよい。また、図12Bに示すように、体動指標のベース
ラインが変化している場合、測定範囲内の人物が移動した可能性が有る。人数変化判定部135は、体動指標のベースラインが変化している場合、推定された人数の変化の可能性が有ると判定してもよい。
【0062】
図15A図15Cを参照して、人数変化判定部135による人数変化の判定処理の一例について説明する。図15Aは、人が安静にしている状態における静止物成分を除去した受信信号の信号強度を示す図である。図15Bは、人の体動が発生している状態における静止物成分を除去した受信信号の信号強度を示す図である。図15Cは、人が移動している状態における受信信号の信号強度を示す図である。図15A図15Cの横軸は方位を示し、図15A図15Cの縦軸は距離を示す。
【0063】
図15Bに示すように、人の体動が発生している状態では、信号ピークが発生しており、図15Cに示すように、人が移動している状態では、人の体動により発生した信号ピークの位置が変化している。人数変化判定部135は、信号ピークの位置の変化に基づいて、推定された人数の変化の可能性が有ると判定してもよい。例えば、人数変化判定部135は、信号ピークの位置の変化を追跡することで、人が測定範囲内から測定範囲外に移動したか否かを検出し、推定された人数の変化の可能性が有るか否かを判定してもよい。
【0064】
図16A図16Dは、クラスタリングの結果を示す図であり、クラスタリングによって分類されたクラスタインデックスのマップである。図16A図16Dのそれぞれの横軸は距離を示し、図16A図16Dのそれぞれの縦軸は方位を示す。図16Aには、図7に示す第2スロットの期間におけるクラスタリングの結果が示されている。図16Bには、図7に示す第3スロットの期間におけるクラスタリングの結果が示されている。図16Cには、図7に示す第4スロットの期間におけるクラスタリングの結果が示されている。図16Dには、図7に示す第5スロットの期間におけるクラスタリングの結果が示されている。なお、クラスタリングのインデックスは順不同で割り当てられるため、図16A及び図16Cに示すように、同じ領域でもスロット毎に異なるインデックスが割り当てられる場合がある。図7に示す第2~5スロットの期間は、静的状態期間であり、測定範囲内の人物の体動が無いと判定されている。しかし、第3スロットのクラスタ数が、第4スロットのクラスタ数よりも減少している。また、図16Cに示すように、点線で囲んだ領域(bin)における呼吸信号が検出されていない。これは、第4スロットの期間において、無呼吸、息切れ、咳などが原因で呼吸が乱れた人物が存在している可能性が高いことを意味する。
【0065】
異常検出部138は、測定範囲内における人物のバイタル異常が発生したことをユーザに知らせる。異常検出部138又は出力装置114は、測定範囲内における人物のバイタル異常が発生したことのメッセージを、表示装置300に出力してもよい。異常検出部138は、処理装置100に設けられた表示灯を点灯又は点滅させたり、処理装置100から音声や警告音を出力したりすることで、バイタル異常が発生したことを報知してもよい。これにより、ユーザは、測定範囲内における人物にバイタル異常が発生したことを把握することができる。異常検出部138は、測定範囲内における人物のバイタル異常が発生した期間(異常期間)をユーザに知らせる。異常検出部138又は出力装置114は、異常期間に関するデータを、表示装置300に出力してもよい。異常検出部138は、処理装置100から音声を出力することで、異常期間を報知してもよい。これにより、ユーザは、異常期間を把握することができる。
【0066】
本発明は、上記説明した各構成、各手段、各機能の少なくとも一部を有する処理システムや制御システムとして捉えてもよい。本発明は、上記説明した各処理の少なくとも一部を含む処理方法や制御方法として捉えてもよい。本発明は、コンピュータが上記で説明した各処理を実行する方法として捉えてもよい。本発明は、コンピュータに上記で説明した
各処理を実行させるためのプログラムとして捉えてもよく、プログラムを、ネットワークを通じて、又は、非一時的にデータを保持するコンピュータ読取可能な記録媒体等からコンピュータに提供してもよい。
【0067】
《コンピュータが読み取り可能な記録媒体》
情報処理装置その他の機械、装置(以下、コンピュータ等)に上記何れかの機能を実現させるプログラムをコンピュータ等が読み取り可能な記録媒体に記録することができる。そして、コンピュータ等に、この記録媒体のプログラムを読み込ませて実行させることにより、その機能を提供させることができる。
【0068】
ここで、コンピュータ等が読み取り可能な記録媒体とは、データやプログラム等の情報を電気的、磁気的、光学的、機械的、または化学的作用によって蓄積し、コンピュータ等から読み取ることができる記録媒体をいう。このような記録媒体のうちコンピュータ等から取り外し可能なものとしては、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、CD-R/W、DVD、ブルーレイディスク、フラッシュメモリなどのメモリカード等がある。また、コンピュータ等に固定された記録媒体としてハードディスクやROM等がある。
【0069】
(付記1)
測定範囲内における少なくとも1人の人物で反射した信号からバイタル信号を取得する信号取得部(131)と、
前記バイタル信号に基づいて前記少なくとも1人の前記人物のバイタル状態を示すバイタル指標を算出する指標算出部(132)と、
前記測定範囲内の前記人物の体動の有無を判定する体動判定部(133)と、
前記測定範囲内の前記人物の人数を推定する人数推定部(134)と、
前記測定範囲内の前記人物の前記体動が有ると判定された場合、前記推定された人数の変化の可能性の有無を判定する人数変化判定部(135)と、
前記バイタル指標の時系列データを前記人物毎に演算する演算部(136)と、
を備え、
前記演算部(136)は、前記推定された人数の変化の可能性が有ると判定された場合、前記推定された人数の変化の可能性が有ると判定される前の前記バイタル指標の前記時系列データと、前記推定された人数の変化の可能性が有ると判定された後の前記バイタル指標の前記時系列データと、を分けて演算する、
処理装置(100)。
【0070】
(付記2)
前記体動判定部(133)は、前記測定範囲内の前記人物の体動時間を算出し、
前記人数変化判定部(135)は、前記人物の前記体動時間に基づいて、前記推定された人数の変化の可能性の有無を判定する、
付記1に記載の処理装置(100)。
【0071】
(付記3)
前記指標算出部(132)は、複数の期間のそれぞれの前記バイタル指標を算出し、
前記人数推定部(134)は、前記複数の期間のそれぞれにおいて、前記測定範囲内の前記人物の人数を推定し、
前記体動判定部(133)は、前記複数の期間のそれぞれにおいて、前記測定範囲内の前記人物の前記体動の有無を判定し、
前記演算部(136)は、前記複数の期間における前記測定範囲内の前記人物の前記体動がないと判定された期間のうち、前記推定された人数分の前記バイタル指標が算出されなかった期間を除外して、前記バイタル指標の前記時系列データを前記人物毎に演算する

付記1又は2に記載の処理装置(100)。
【0072】
(付記4)
前記測定範囲内の前記人物の位置を特定し、前記バイタル指標に紐づいた前記人物の位置情報を前記人物毎に算出する位置情報算出部(138)を備え、
前記指標算出部(132)は、複数の期間のそれぞれの前記バイタル指標を算出し、
前記位置情報算出部(138)は、前記複数の期間のそれぞれの前記位置情報を算出し、
前記演算部(136)は、前記複数の期間のそれぞれの前記位置情報に基づいて、前記人物毎に前記バイタル指標を対応付けることにより前記バイタル指標の組み合わせを前記人物毎に決定し、前記バイタル指標の前記組み合わせに基づいて、前記バイタル指標の前記時系列データを前記人物毎に演算する、
付記1から3の何れか一つに記載の処理装置(100)。
【0073】
(付記5)
前記指標算出部(132)は、複数の期間のそれぞれの前記バイタル指標を算出し、
前記演算部(136)は、前記複数の期間のそれぞれの前記バイタル指標の値に基づいて、前記人物毎に前記バイタル指標を対応付けることにより前記バイタル指標の組み合わせを前記人物毎に決定し、前記バイタル指標の前記組み合わせに基づいて、前記バイタル指標の時系列データを人物毎に演算する、
付記1から3の何れか一つに記載の処理装置(100)。
【0074】
(付記6)
前記バイタル指標の前記時系列データを前記人物毎に出力する指標出力部(137)を備え、
前記指標出力部(137)は、前記推定された人数の変化の可能性が有ると判定された場合、前記推定された人数の変化の可能性が有ると判定される前の前記バイタル指標の前記時系列データと、前記推定された人数の変化の可能性が有ると判定された後の前記バイタル指標の前記時系列データと、を分けて出力する、
付記1から5の何れか一つに記載の処理装置(100)。
【0075】
(付記7)
前記信号取得部(131)は、前記バイタル信号に基づいて取得したバイタル波形群を前記バイタル信号から算出した特徴量に基づいて複数のクラスタにクラスタリングする処理を実行し、
前記人数推定部(134)は、クラスタ数に基づいて、前記測定範囲内の前記人物の人数を推定する、
付記1から6の何れか一つに記載の処理装置(100)。
【0076】
(付記8)
前記体動判定部(133)は、前記複数の期間のそれぞれにおいて、前記測定範囲内の前記人物の前記体動の有無を判定し、
前記人数推定部(134)は、前記複数の期間のそれぞれにおいて、前記測定範囲内の前記人物の人数を推定し、かつ、前記複数の期間における連続期間のうち、前記測定範囲内の前記人物の前記体動が無いと判定された期間については、前記クラスタ数の最大値を前記測定範囲内の前記人物の人数と推定する、
付記7に記載の処理装置(100)。
【0077】
(付記9)
前記推定された人数及び前記クラスタ数に基づいて、前記測定範囲内の前記少なくとも1人の前記人物のバイタル異常を検出する異常検出部(137)を備える、
付記7に記載の処理装置(100)。
【0078】
(付記10)
前記体動判定部(133)は、前記複数の期間のそれぞれにおいて、前記測定範囲内の前記人物の前記体動の有無を判定し、
前記人数推定部(134)は、前記複数の期間のそれぞれにおいて、前記測定範囲内の前記人物の人数を推定し、かつ、前記複数の期間における連続期間のうち、前記測定範囲内の前記人物の前記体動が無いと判定された期間については、前記クラスタ数の最大値を前記測定範囲内の前記人物の人数と推定し、
前記異常検出部(137)は、前記連続期間のうち、前記測定範囲内の前記人物の前記体動が無いと判定された期間であって、かつ、前記クラスタ数が前記最大値よりも小さい期間を、前記人物の前記バイタル異常が発生した期間であると決定する、
付記9に記載の処理装置(100)。
【0079】
(付記11)
前記測定範囲内の前記少なくとも1人の前記人物のバイタル異常を検出する異常検出部(137)を備え、
前記体動判定部(133)は、前記複数の期間のそれぞれにおいて、前記測定範囲内の前記人物の前記体動の有無を判定し、
前記人数推定部(134)は、前記複数の期間のそれぞれにおいて、前記測定範囲内の前記人物の人数を推定し、かつ、前記複数の期間における連続期間のうち、前記測定範囲内の前記人物の前記体動が無いと判定された期間については、前記クラスタ数の最大値を前記測定範囲内の前記人物の人数と推定し、
前記異常検出部(137)は、前記連続期間のうち、前記測定範囲内の前記人物の前記体動が無いと判定された期間であって、かつ、前記クラスタ数が前記最大値よりも小さい期間の直前の期間における前記バイタル信号に基づいて、前記測定範囲内の前記少なくとも1人の前記人物に前記バイタル異常が発生しているか否かを判定する、
付記7に記載の処理装置(100)。
【0080】
(付記12)
処理装置(100)が実行する処理方法であって、
測定範囲内における少なくとも1人の人物で反射した信号からバイタル信号を取得する信号取得ステップと、
前記バイタル信号に基づいて前記少なくとも1人の前記人物のバイタル状態を示すバイタル指標を算出する指標算出ステップと、
前記測定範囲内の前記人物の体動の有無を判定する体動判定ステップと、
前記測定範囲内の前記人物の人数を推定する人数推定ステップと、
前記測定範囲内の前記人物の前記体動が有ると判定された場合、前記推定された人数の変化の可能性の有無を判定する人数変化判定ステップと、
前記バイタル指標の時系列データを前記人物毎に演算する演算ステップと、
を有し、
前記演算ステップは、前記推定された人数の変化の可能性が有ると判定された場合、前記推定された人数の変化の可能性が有ると判定される前の前記バイタル指標の前記時系列データと、前記推定された人数の変化の可能性が有ると判定された後の前記バイタル指標の前記時系列データと、を分けて演算することを含む、
処理方法。
【0081】
(付記13)
コンピュータに、
測定範囲内における少なくとも1人の人物で反射した信号からバイタル信号を取得する信号取得ステップと、
前記バイタル信号に基づいて前記少なくとも1人の前記人物のバイタル状態を示すバイタル指標を算出する指標算出ステップと、
前記測定範囲内の前記人物の体動の有無を判定する体動判定ステップと、
前記測定範囲内の前記人物の人数を推定する人数推定ステップと、
前記測定範囲内の前記人物の前記体動が有ると判定された場合、前記推定された人数の変化の可能性の有無を判定する人数変化判定ステップと、
前記バイタル指標の時系列データを前記人物毎に演算する演算ステップと、
を実行させるためのプログラムであって、
前記演算ステップは、前記推定された人数の変化の可能性が有ると判定された場合、前記推定された人数の変化の可能性が有ると判定される前の前記バイタル指標の前記時系列データと、前記推定された人数の変化の可能性が有ると判定された後の前記バイタル指標の前記時系列データと、を分けて演算することを含む、
プログラム。
【符号の説明】
【0082】
100:処理装置
111:送受信装置
112:制御装置
113:記憶装置
114:出力装置
121:送信部
122:受信部
131:信号取得部
132:指標算出部
133:体動判定部
134:人数推定部
135:人数変化判定部
136:演算部
137:指標出力部
138:異常検出部
139:位置情報算出部
151:信号処理部
152:クラスタリング部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図16