(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129518
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】冷却システム
(51)【国際特許分類】
F01P 11/04 20060101AFI20240919BHJP
F02B 63/04 20060101ALI20240919BHJP
H02K 7/18 20060101ALI20240919BHJP
【FI】
F01P11/04 Z
F01P11/04 B
F02B63/04 A
H02K7/18 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038771
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】江森 直樹
【テーマコード(参考)】
5H607
【Fターム(参考)】
5H607BB02
5H607BB07
5H607BB14
5H607CC05
5H607DD03
5H607DD08
5H607FF21
(57)【要約】
【課題】冷却液の流体エネルギーを有効活用可能な冷却システムを構成する。
【解決手段】冷却液が流通する冷却流路44と、冷却流路に流通する冷却液の流体エネルギーを電気エネルギーに変換する発電機構Gと、を備えた。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却液が流通する冷却流路と、
前記冷却流路に流通する前記冷却液の流体エネルギーを電気エネルギーに変換する発電機構と、を備えた冷却システム。
【請求項2】
前記発電機構は、前記冷却液の圧力を受けて回転するフィンと、前記フィンが連結された回転軸と、前記回転軸の回転エネルギーを電気エネルギーに変換する電磁部と、を有し、前記フィンは前記冷却流路内部に配置されている請求項1に記載の冷却システム。
【請求項3】
前記回転軸は、前記冷却流路に沿う第一軸と、当該第一軸に交差した状態でジョイント部を介して接続された第二軸とを含み、
前記電磁部は、前記第二軸から伝えられる回転力によって回転するマグネットと、当該マグネットと対向するコイルとで構成されている請求項2に記載の冷却システム。
【請求項4】
前記冷却流路は、圧力損失が相対的に高い第1回路と、圧力損失が相対的に低い第2回路とを有しており、
前記発電機構は、前記第2回路に配置されている請求項1~3の何れか一項に記載の冷却システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、走行駆動源としてモータを備えた自動車(ハイブリッド車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)、プラグインハイブリッド車(PHEV:Plug-in Hybrid Electric Vehicle)、バッテリ車(BEV:Battery Electric Vehicle)、燃料電池車(FCEV:Fuel Cell Electric Vehicle)等)が普及している。これらの自動車(以下、「電動車」と総称する)はモータを駆動させるための電池を備えている。電動車では、モータ(エンジン等の内燃機関を含む)、バッテリ、エアコン、ECU等、冷却が必要なデバイスが多いので、冷却水を循環させる冷却回路を構成してこれらを冷却している。しかし、これらのデバイスは個々に適正な動作温度が異なる場合がある。そのような場合には、循環させる冷却水の温度を動作温度の異なるデバイス毎に変えるため、冷却水の温度毎に独立した冷却回路を構成する必要があり、冷却回路の配管の引き回しや回路構成が複雑になる。
【0003】
このような課題に対して、例えば特許文献1に記載の技術が挙げられる。特許文献1に開示された冷却システムにおいては、冷却液(特許文献1では、熱媒体)が流入する流入路(特許文献1では、熱媒体流入口)と流出する流出路(特許文献1では、熱媒体流出口)とが異なる高さ位置に形成されたバルブ(特許文献1では、熱媒体三方弁)が一体化された冷却モジュール(特許文献1では、流路切替装置)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2022/019058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載のような冷却システムでは、バルブで冷却回路を切り換えることができる。このとき、何れの冷却回路でもポンプの駆動力が確保できるように、最も圧力損失の大きい冷却回路に合わせてポンプの駆動力を設定する。このため、圧力損失の小さい冷却回路では、流体エネルギーが余剰となり、有効利用できていないという問題があった。
【0006】
そこで、冷却液の流体エネルギーを有効活用可能な冷却システムが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る冷却システムの特徴構成は、冷却液が流通する冷却流路と、前記冷却流路に流通する前記冷却液の流体エネルギーを電気エネルギーに変換する発電機構と、を備えた点にある。
【0008】
本構成における冷却システムでは、冷却液が流通する冷却流路に流通する冷却液の流体エネルギーを電気エネルギーに変換する発電機構を備えている。このため、最も圧力損失の大きい冷却回路に合わせてポンプの駆動力を設定した場合でも、圧力損失の小さい冷却回路のときに発生する余剰の流体エネルギーを電気エネルギーとして有効利用できる。このように、冷却液の流体エネルギーを有効活用可能な冷却システムとなっている。
【0009】
他の特徴構成は、前記発電機構は、前記冷却液の圧力を受けて回転するフィンと、前記フィンが連結された回転軸と、前記回転軸の回転エネルギーを電気エネルギーに変換する電磁部と、を有し、前記フィンは前記冷却流路内部に配置されている点にある。
【0010】
本構成のように発電機構をフィンと回転軸と電磁部とで構成すれば、簡便な構成であり、冷却システムに導入しやすい。
【0011】
他の特徴構成は、前記回転軸は、前記冷却流路に沿う第一軸と、当該第一軸に交差した状態でジョイント部を介して接続された第二軸とを含み、前記電磁部は、前記第二軸から伝えられる回転力によって回転するマグネットと、当該マグネットと対向するコイルとで構成されている点にある。
【0012】
本構成のように回転軸を冷却流路に沿う第一軸とジョイント部を介して接続された第二軸とで構成すれば、第二軸の配置自由度が高く、冷却流路に対する回転軸の流路抵抗を低減することが可能となる。また、電磁部を、第二軸を介して回転力が伝えられるマグネットとマグネットに対向するコイルとで構成すれば、電磁部を第一軸がある冷却流路と分離して配置することができる。
【0013】
他の特徴構成は、前記冷却流路は、圧力損失が相対的に高い第1回路と、圧力損失が相対的に低い第2回路とを有しており、前記発電機構は、前記第2回路に配置されている点にある。
【0014】
本構成のように圧力損失が相対的に低い第2回路に発電機構を設ければ、余剰となった流体エネルギーを有効活用できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施形態に係るマニホールドを有する冷却システムの回路構成図である。
【
図4】別実施形態(a)の発電機構の一部切り欠き側面図である。
【
図5】別実施形態(b)の発電機構の一部切り欠き側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
〔冷却システムの構成〕
図1に示されるように、本実施形態に係るマニホールド100を含む冷却システムAは、大別して、冷却液回路Bと冷媒回路Cとからなる。冷却液回路Bにはエチレングリコール等を主成分とした不凍液、ロングライフクーラント、絶縁油等の冷却液が流通し、冷媒回路Cにはハイドロフルオロカーボン(HFC)等の冷媒が流通する。
図1において、破線で囲まれた部分が本実施形態に係るマニホールド100である。マニホールド100は、流路ハウジング105と、チラー110、水冷コンデンサ120、第一電動ポンプ4、四方弁からなるロータリバルブ5、第二電動ポンプ7、三方弁からなる切替弁10、第三電動ポンプ11、第一膨張弁23、及び第二膨張弁26を含む補機類と、を有している。
図1においては、該補機類が流路ハウジング105の内部にあるように描かれているが、
図2に示されるように、実際は流路ハウジング105の外面に装着されている。
図2には、マニホールド100の概略構成図が示されている。ただし、
図2においては、チラー110と水冷コンデンサ120とを除く補機類(例えば、ポンプやバルブ)の描写は省略されている。本実施形態において、流路ハウジング105はアルミニウムを含む熱伝導率の高い金属材料で形成され、冷却液回路Bや冷媒回路Cを構成する流路は、流路ハウジング105に直接穴を開けて形成されている。
【0017】
まず、冷却液回路Bについて説明する。冷却液回路Bは、
図1におけるチラー110と水冷コンデンサ120よりも右側の流路である。冷却液回路Bは、流路ハウジング105の外部に第一外部流路31(冷却流路の一例)を有している。第一外部流路31は、流路ハウジング105の内部に形成された第一内部流路41(冷却流路の一例)と第二内部流路42(冷却流路の一例)とに接続されている。第一外部流路31の途中には、ラジエータ1が配置されている。冷却液は、第二内部流路42、第一外部流路31、ラジエータ1、第一外部流路31、第一内部流路41の順に流通する。以下、冷却液回路Bにおける冷却液の流通方向に対する上流側、下流側を単に上流側、下流側ともいう。
【0018】
第一外部流路31におけるラジエータ1の下流側且つ第一内部流路41の上流側で、第一外部流路31から第二外部流路32(冷却流路の一例)と第三外部流路33(冷却流路の一例)とが分岐している。第二外部流路32は、下流側で流路ハウジング105の内部に形成された第三内部流路43(冷却流路の一例)に接続されている。第三内部流路43は、下流側で第二内部流路42に接続されている。第一外部流路31から第二外部流路32に分岐した冷却液は、第二外部流路32を流通し、充電器2とDC-DCコンバータ3とを冷却して第三内部流路43に流入する。冷却液は、第三内部流路43で第一電動ポンプ4により加圧された後、第二内部流路42に流入する。
【0019】
第三内部流路43における第一電動ポンプ4よりも上流側で、第三内部流路43から第四内部流路44(冷却流路の一例)が分岐している。
図1の状態では、第四内部流路44はロータリバルブ5を介して第五内部流路45(冷却流路の一例)に接続されている。第五内部流路45の下流側は第二内部流路42に接続されている。
【0020】
第三外部流路33は、下流側で流路ハウジング105の内部に形成された第六内部流路46(冷却流路の一例)に接続されている。第六内部流路46はロータリバルブ5を介して第七内部流路47(冷却流路の一例)に接続されている。第七内部流路47の途中には、第二電動ポンプ7が配置されている。第一外部流路31から第三外部流路33に分岐した冷却液は、第三外部流路33を流通し、イーアクスルインバータ6を冷却して第六内部流路46に流入する。
図1の状態で、冷却液は、ロータリバルブ5を介して第七内部流路47で第二電動ポンプ7により加圧された後、流路ハウジング105の外部に流出する。イーアクスルインバータ6とは、回転電機、減速機、及び差動歯車機構をハウジングに収容したユニットであり、インバータは該ユニットと一体的に設けられている。尚、ロータリバルブ5を回転させることにより、第四内部流路44及び第六内部流路46を接続し、第五内部流路45及び第七内部流路47を接続することができる。
【0021】
第七内部流路47は、流路ハウジング105の外部で第四外部流路34(冷却流路の一例)に接続されている。第四外部流路34は、下流側で流路ハウジング105の内部に形成された第八内部流路48(冷却流路の一例)に接続されている。第七内部流路47から流出した冷却液は、第四外部流路34を流通し、第一ヒータコア8により冷却され、その後、バッテリ9を冷却して暖められ、第八内部流路48に流入する。第八内部流路48は、下流側でチラー110に接続されている。チラー110の下流側は第二内部流路42に接続されている。第八内部流路48を流通する冷却液はチラー110に流入し、チラー110内で後述する第三内部冷媒路73から流入した霧状の冷媒に熱を奪われて冷却された後、第二内部流路42を流通する。第二内部流路42を流通する冷却液は、流路ハウジング105の外部に接続された第一外部流路31に流入する。
【0022】
第一外部流路31に接続された第一内部流路41は、下流側で水冷コンデンサ120に接続されている。また、第一内部流路41の途中には、切替弁10と第三電動ポンプ11とがこの順で配置されている。水冷コンデンサ120の下流側は第九内部流路49(冷却流路の一例)に接続されている。第一内部流路41に流入した冷却液は、第三電動ポンプ11により加圧されて水冷コンデンサ120に流入し、水冷コンデンサ120内で後述する第二内部冷媒路72から流入した高温圧縮気体の状態にある冷媒から熱を奪って加温された後、第九内部流路49を流通して流路ハウジング105の外部に流出する。
【0023】
第九内部流路49は、流路ハウジング105の外部で第五外部流路35(冷却流路の一例)に接続されている。第五外部流路35は、下流側で流路ハウジング105の内部に形成された第十内部流路50(冷却流路の一例)に接続されている。第十内部流路50は、下流側で第六内部流路46に接続されている。第九内部流路49から流出した冷却液は、第五外部流路35を流通し、第二ヒータコア12により冷却されて第十内部流路50に流入する。第十内部流路50を流通する冷却液は第六内部流路46に流入する。
【0024】
第一内部流路41に配置された切替弁10は、冷却液の流通方向を、第一内部流路41と流路ハウジング105の内部に形成された第十一内部流路51(冷却流路の一例)とに切り替える。第十一内部流路51は下流側で第十内部流路50に接続されている。冷却液が第十一内部流路51を流通するように切替弁10を切り替えたとき、冷却液は第一内部流路41から第十一内部流路51を流通して第十内部流路50に流入し、その後、第六内部流路46に流入する。
【0025】
次に、冷媒回路Cについて説明する。冷媒回路Cは、
図1におけるチラー110と水冷コンデンサ120よりも左側の流路である。冷媒回路Cは、流路ハウジング105の内部に形成され、冷媒が流通する。チラー110に対して、冷媒の流通方向の下流側(以下、冷媒回路Cにおける冷媒の流通方向に対する上流側、下流側を単に上流側、下流側ともいう)に第一内部冷媒路71を有している。第一内部冷媒路71は流路ハウジング105の外部に形成された第一外部冷媒路61に接続されている。第一外部冷媒路61の途中には、アキュムレータ21とコンプレッサ22とがこの順で配置されている。第一外部冷媒路61は下流側で流路ハウジング105の内部に形成された第二内部冷媒路72に接続されている。第二内部冷媒路72は下流側で水冷コンデンサ120に接続されている。水冷コンデンサ120の下流側は流路ハウジング105の内部に形成された第三内部冷媒路73に接続されている。第三内部冷媒路73は途中に配置された第一膨張弁23を介してチラー110に接続されている。つまり、流路ハウジング105において、第三内部冷媒路73における冷媒の流通方向に対して上流側となる位置に水冷コンデンサ120が装着され、冷媒の流通方向に対して下流側となる位置にチラー110が装着されている。
【0026】
第三内部冷媒路73における第一膨張弁23よりも上流側で、第三内部冷媒路73から第四内部冷媒路74が分岐している。第四内部冷媒路74の途中には、第二膨張弁26が配置されている。第四内部冷媒路74は流路ハウジング105の外部に形成された第二外部冷媒路62に接続されている。第二外部冷媒路62の途中には、エバポレータ24と逆止弁25とがこの順で配置されている。第二外部冷媒路62は、流路ハウジング105の内部に形成された第五内部冷媒路75に接続されている。第五内部冷媒路75は下流側で第一内部冷媒路71に接続されている。
【0027】
次に、冷媒回路Cにおける冷媒の流れについて説明する。第一外部冷媒路61を流通し、コンプレッサ22で高温圧縮気体になった冷媒は、第一外部冷媒路61を流通し、第二内部冷媒路72から水冷コンデンサ120に流入する。冷媒は、水冷コンデンサ120で、第一内部流路41から流入する冷却液に熱を奪われることにより凝縮されて液化する。液化した冷媒のうち車内の冷房に使用されるものは、水冷コンデンサ120を出て第三内部冷媒路73から第四内部冷媒路74を流通し、第二膨張弁26で膨張されて低温、低圧の霧状にされた後、流路ハウジング105から流出し、第二外部冷媒路62を流通してエバポレータ24に送られる。霧状の冷媒は、エバポレータ24で外部から導入された空気から熱を奪って蒸発する。逆に空気は冷媒に熱を奪われることにより冷却され、冷風となって車内に送られる。蒸発して気化された冷媒は、第二外部冷媒路62に配置された逆止弁25を通って第五内部冷媒路75に流入し、第一内部冷媒路71から流路ハウジング105の外部に流出する。そして、気化した冷媒は、第一外部冷媒路61を流通してアキュムレータ21に送られる。アキュムレータ21では、気化された冷媒に液体が含まれている場合に、該液体を気化された冷媒から分離する。その後、気化した冷媒は、第一外部冷媒路61を流通してコンプレッサ22に環流し、再度圧縮されて高温圧縮気体になる。
【0028】
水冷コンデンサ120で液化された冷媒のうち車内の冷房に使用されないものは、水冷コンデンサ120を出て第三内部冷媒路73を流通し、第一膨張弁23で膨張されて低温、低圧の霧状にされた後、チラー110に送られる。霧状の冷媒は、チラー110で、第八内部流路48から流入する冷却液から熱を奪って蒸発する。蒸発して気化された冷媒は、第一内部冷媒路71から流路ハウジング105の外部に流出する。そして、気化した冷媒は、第一外部冷媒路61を流通してアキュムレータ21に送られる。第二外部冷媒路62には逆止弁25があるため、冷媒はエバポレータ24に流入することはない。アキュムレータ21では、気化された冷媒に液体が含まれている場合に、液体の冷媒を分離する。その後、気化した冷媒は、第一外部冷媒路61を流通してコンプレッサ22に環流し、再度圧縮されて高温圧縮気体になる。
【0029】
通常、冷却液と冷媒の熱交換は、熱交換器であるチラー110や水冷コンデンサ120のみで行われているが、本実施形態においては、冷却液回路Bの流路と冷媒回路Cの流路とを近接させることにより、チラー110や水冷コンデンサ120においてのみではなく、流路間でも熱交換を行っている。
【0030】
チラー110に接続された流路の配置は、具体的には、
図2に示されるように、流路ハウジング105において、チラー110に流入する冷却液回路Bの第八内部流路48とチラー110から流出する冷媒回路Cの第一内部冷媒路71とを平行且つ近接させて配置すると共に、チラー110から流出する冷却液回路Bの第二内部流路42とチラー110に流入する冷媒回路Cの第三内部冷媒路73とを平行且つ近接させて配置する。このとき、第八内部流路48を流通する冷却液の流通方向と第一内部冷媒路71を流通する冷媒の流通方向とは逆になり、第二内部流路42を流通する冷却液の流通方向と第三内部冷媒路73を流通する冷媒の流通方向とは逆になる。また、流路ハウジング105において、第八内部流路48と第一内部冷媒路71はL字状に形成された箇所で熱交換を行い、第二内部流路42と第三内部冷媒路73は直線状に形成された箇所で熱交換を行う。このように構成することにより、チラー110だけでなく、第八内部流路48を流通する冷却液と第一内部冷媒路71を流通する冷媒との間でも熱交換が行われると共に、第二内部流路42を流通する冷却液と第三内部冷媒路73を流通する冷媒との間でも熱交換が行われる。このように、チラー110の外部の内部流路と内部冷媒路との間でも熱交換が行われるため、チラー110として小型のものを用いても必要十分な冷却性能を得ることができる。
【0031】
また、水冷コンデンサ120に接続された流路の配置は、具体的には、
図2に示されるように、流路ハウジング105において、水冷コンデンサ120に流入する冷却液回路Bの第一内部流路41と水冷コンデンサ120から流出する冷媒回路Cの第三内部冷媒路73とを平行且つ近接させて配置すると共に、水冷コンデンサ120から流出する冷却液回路Bの第九内部流路49と水冷コンデンサ120に流入する冷媒回路Cの第二内部冷媒路72とを平行且つ近接させて配置する。このとき、第一内部流路41を流通する冷却液の流通方向と第三内部冷媒路73を流通する冷媒の流通方向とは逆になり、第九内部流路49を流通する冷却液の流通方向と第二内部冷媒路72を流通する冷媒の流通方向とは逆になる。また、流路ハウジング105において、第一内部流路41と第三内部冷媒路73は直線状に形成された箇所で熱交換を行い、第九内部流路49と第二内部冷媒路72はL字状に形成された箇所で熱交換を行う。このように構成することにより、水冷コンデンサ120だけでなく、第一内部流路41を流通する冷却液と第三内部冷媒路73を流通する冷媒との間でも熱交換が行われると共に、第九内部流路49を流通する冷却液と第二内部冷媒路72を流通する冷媒との間でも熱交換が行われる。このように、水冷コンデンサ120の外部の内部流路と内部冷媒路との間でも熱交換が行われるため、水冷コンデンサ120として小型のものを用いても必要十分な冷却性能を得ることができる。
【0032】
〔発電機構〕
この冷却システムAでは、第一電動ポンプ4が第三内部流路43から冷却液を吸引し、この冷却液が第一外部流路31に送り出す。また、第二内部流路42に流れる冷却液の一部が第五内部流路45に流れ、ロータリバルブ5から第四内部流路44に流れる。この第四内部流路44は第三内部流路43に接続している。
【0033】
第二内部流路42は、第二電動ポンプ7から送り出された冷却液が、第三内部流路43、第四外部流路34、チラー110を、順次流れた後であるため、冷却液に余剰の流体エネルギーを含むと考えられる。更に、第五内部流路45、ロータリバルブ5、第四内部流路44は殆ど圧力損失が存在しないものであり、しかも、第三内部流路43には第一電動ポンプ4の吸引力が作用する。
【0034】
つまり、冷却液回路Bのうち、第一電動ポンプ4と第二電動ポンプ7とから冷却液が供給されるイーアクスルインバータ6と、第一ヒータコア8と、バッテリ9と、チラー110とに冷却液を流す第三外部流路33、第六内部流路46、第七内部流路47、第八内部流路48とを圧力損失が相対的に大きい第1回路と捉えることが可能である。
【0035】
これに対し、冷却液回路Bのうち、第一電動ポンプ4に冷却液を戻す第四内部流路44と、第五内部流路45とは、第1回路に対し相対的に圧力損失が小さい第2回路と捉えることが可能である。このことから、第2回路に流れる冷却液の流体エネルギーを電気エネルギーに変換して取り出すことが考えられる。
【0036】
このような理由から、冷却液に含まれる余剰の流体エネルギーを電気エネルギーに変換して取り出すため、第四内部流路44に発電機構Gを備えている。尚、発電機構Gは第五内部流路45(
図1にP1で示す位置)に備えることが可能である。
【0037】
図3に示すように、発電機構Gは、第四内部流路44の中間に備えたケース80の内部に、回転自在に支持された回転体81と、回転体81の外周に備えた複数のフィン82と、回転体81をケース80の内部に回転自在に支持する複数のステー83と、回転体81の回転により駆動される発電機84(電磁部の一例)とを備えている。
【0038】
この発電機構Gは、回転体81の回転軸芯Xが第四内部流路44において冷却液が流れる方向と平行しており、回転体81の内部に発電機84が収容されている。この発電機構Gでは、ステー83の内部に電力線を配置しており、第四内部流路44に流れる冷却液の圧力が複数のフィン82に作用することで、回転体81を、回転軸芯Xを中心に回転させ、この回転力が伝えられることで発電機84にて発電が行われる。このように発電された電力は電力線を介して外部に取り出される。
【0039】
発電機84は、回転体81と一体的に回転するマグネット84aと、マグネット84aの外周に配置され固定側に支持されたコイル84bとを備えている。これにより、回転体81が回転した場合にはマグネット84aの回転によりコイル84bに電流を発生させる形態での発電を可能にしている。
【0040】
このように取り出された電力は、バッテリ9(又は、不図示の補機バッテリ)に充電され、必要に応じて第一電動ポンプ4、第二電動ポンプ7、第三電動ポンプ11等に供給することや、冷却システムAを制御する制御装置(図示せず)の電源として用いられる。
【0041】
〔発電機構の配置例〕
図1に示す冷却液回路Bでは、先に説明した第三外部流路33、第六内部流路46、第七内部流路47、第八内部流路48に加えて、第一電動ポンプ4から冷却液が供給される充電器2と、DC-DCコンバータ3とに冷却液を流す第二外部流路32を第1回路と捉えることも可能である。
【0042】
このとき、第1回路に冷却液を循環させるのに第一電動ポンプ4及び第二電動ポンプ7の2つを駆動させていることから、冷却液回路Bのうち、比較的余力の生まれる第一電動ポンプ4の駆動力により冷却液を供給する第三内部流路43を、第1回路に対し相対的に圧力損失が小さい第2回路と捉えることが可能である。これにより、この第2回路としての第三内部流路43(
図1においてP2で示す位置)に発電機構Gを備えることも考えられる。
【0043】
また、先に説明した第三外部流路33、第六内部流路46、第七内部流路47、第八内部流路48に加えて、第三電動ポンプ11は、水冷コンデンサ120、第二ヒータコア12に冷却液を供給するものであり、第九内部流路49と第五外部流路35とを、圧力損失が相対的に大きい第1回路と捉えることが可能である。このとき、第1回路に冷却液を循環させるのに第二電動ポンプ7及び第三電動ポンプ11の2つを駆動させていることから、比較的余力の生まれる第三電動ポンプ11の駆動力により水冷コンデンサ120に冷却液を供給する第一内部流路41は、第1回路に対し相対的に圧力損失が小さい第2回路と捉えることが可能である。このような理由から、第一内部流路41(
図1にP3で示す位置)に発電機構Gを備えることも考えられる。
【0044】
この冷却システムAでは、冷却システムAを構成する複数の冷却流路に発電機構Gを備えることも可能である。
【0045】
〔別実施形態〕
本発明は、上記した実施形態以外に以下のように構成しても良い(実施形態と同じ機能を有するものには、実施形態と共通の番号、符号を付している)。
【0046】
(a)
図4に示すように、ケース80の外部に発電機84(電磁部の一例)を備えることにより発電機構Gを構成する。つまり、流路(実施形態では第四内部流路44)の中間に備えたケース80の内部に、回転自在に備えた回転体81と、回転体81の外周に備えた複数のフィン82と、回転体81の回転を発電機84に伝える伝動軸ユニットGTと、ステー83とを備えている。
【0047】
この別実施形態(a)では、伝動軸ユニットGTが、回転体81の回転力が伝えられる第一軸85aと、第一軸85aに接続された第二軸85bと、第二軸85bに接続された第三軸85cと、これらが互いに交差する姿勢で駆動力を伝えることが可能な2つのボールジョイント86(ジョイント部の一例)と、これらを覆う伝動軸ケース87を備えている。
【0048】
この別実施形態(a)では、第三軸85cの回転力を発電機84に伝えるように構成されている。発電機84は、第三軸85cの駆動力によって回転するマグネット84aと、マグネット84aを取り囲む位置に配置されたコイル84bとを備えている。
【0049】
この別実施形態(a)では、伝動軸ケース87が剛性の高い樹脂パイプや、金属パイプやで構成され、伝動軸ケース87がステー83によってケース80の内壁に支持されることにより、回転体81の位置を維持している。これにより、回転体81を高い精度でケース80の内部で回転させることが可能となる。
【0050】
この構成では、発電機84を流路中に配置しないため、回転体81の小径化が可能となり、ケース80の大型化を招くことがない。また、ボールジョイント86を用いることにより、例えば、ユニバーサルジョイントを用いる構成と比較して、回転速度に乱れのない円滑な伝動を可能にし、伝動軸ユニットGTの伝動軸ケース87の大径化の抑制も可能にする。
【0051】
この別実施形態(a)の変形例として、柔軟な変形が可能で、湾曲状態でも回転力を伝えることが可能なフレキシブルシャフトを、伝動軸ケース87に収容する形態に構成することも可能である。この場合、第三軸85cを省略しても良い。また、伝動軸ユニットGTが4つ以上の軸を有していても良い。
【0052】
(b)
図5に示すように、ケース80の外部に発電機84(電磁部の一例)を備えて発電機構Gを構成する。この別実施形態(b)は、別実施形態(a)と同様に伝動軸ユニットGTを備えるものであるが、伝動軸ユニットGTの構成が異なる。
【0053】
つまり、伝動軸ユニットGTは、回転体81の回転力が伝えられる第一軸85aと、発電機84に回転力を伝えるように第一軸85aに接続された第二軸85bと、第一軸85aを第二軸85bに伝えるベベルギヤ式のギヤ伝動部88(ジョイント部の一例)を備え、これらを覆う伝動軸ケース87を備えている。
【0054】
この構成では、発電機84を流路中に配置しないため、回転体81の小径化が可能となり、ケース80の大型化を招くことがない。また、ベベルギヤ式のギヤ伝動部88を用いることにより、第一軸85aに対する第二軸85bの角度を直角に設定することが可能となり、伝動軸ケース87の小型化を可能にする。
【0055】
この別実施形態(b)では、伝動軸ケース87として、剛性の高い樹脂パイプや、金属パイプを用いることが可能であり、
図5に示すようにステー等の補強部材を用いることなく、回転体81を支持し、発電機構Gにおける流路抵抗の低下を可能にする。
【0056】
(c)流体のエネルギーを、電気エネルギーに変換する発電機構Gとして、実施形態、別実施形態に記載した構成に限るものではなく、例えば、水力発電に用いられるフランシス水車、カプラン水車等の構成の水車を用いても良い。
【0057】
尚、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、冷却液が流通する冷却流路を冷却する冷却システムに利用することができる。
【符号の説明】
【0059】
41 第一内部流路(冷却流路)
43 第三内部流路(冷却流路)
44 第四内部流路(冷却流路)
45 第五内部流路(冷却流路)
G 発電機構
82 フィン
84 発電機(電磁部)
84a マグネット
84b コイル
85a 第一軸
85b 第二軸
86 ボールジョイント(ジョイント部)
88 ギヤ伝動部(ジョイント部)