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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129519
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】冷媒マニホールド
(51)【国際特許分類】
   F25B 41/40 20210101AFI20240919BHJP
【FI】
F25B41/40 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038772
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】前田 拓洋
(57)【要約】
【課題】温度帯の異なる複数の冷媒流路の間で断熱性を担保可能な冷媒マニホールドを提供する。
【解決手段】冷媒マニホールドは、圧縮機1から凝縮器3へ向かう冷媒が流れる第1流路と、凝縮器3から蒸発器4,5へ向かう冷媒が流れる第2流路とを有する流路ハウジング11を備え、流路ハウジング11は、樹脂で一体形成されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機から凝縮器へ向かう冷媒が流れる第1流路と、前記凝縮器から蒸発器へ向かう前記冷媒が流れる第2流路とを有する流路ハウジングを備え、
前記流路ハウジングは、樹脂で一体形成されている冷媒マニホールド。
【請求項2】
圧縮機から凝縮器へ向かう冷媒が流れる第1流路と、前記凝縮器から蒸発器へ向かう前記冷媒が流れる第2流路とが形成されたハウジング本体と、当該ハウジング本体と連結されるプレート部材と、を有する流路ハウジングを備え、
前記ハウジング本体は、前記第1流路が形成される第1ハウジング本体と、前記第2流路が形成される第2ハウジング本体とを含んでおり、
前記第1ハウジング本体が金属で一体形成され、前記第2ハウジング本体が樹脂で一体形成されている冷媒マニホールド。
【請求項3】
圧縮機から凝縮器へ向かう冷媒が流れる第1流路と、前記凝縮器から蒸発器へ向かう前記冷媒が流れる第2流路とが形成されたハウジング本体と、当該ハウジング本体の前記第1流路及び前記第2流路を覆うプレート部材と、を有する流路ハウジングを備え、
前記プレート部材は、空気を介した状態で前記ハウジング本体に連結されている冷媒マニホールド。
【請求項4】
圧縮機から凝縮器へ向かう冷媒が流れる第1流路と、前記凝縮器から蒸発器へ向かう前記冷媒が流れる第2流路とを有する流路ハウジングを備え、
前記流路ハウジングは、金属で一体形成されており、
前記第1流路及び前記第2流路の表面が断熱材で覆われている冷媒マニホールド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷媒が流通する冷媒流路を備えた冷媒マニホールドに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、走行駆動源としてモータを備えた自動車(ハイブリッド車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)、プラグインハイブリッド車(PHEV:Plug-in Hybrid Electric Vehicle)、バッテリ車(BEV:Battery Electric Vehicle)、燃料電池車(FCEV:Fuel Cell Electric Vehicle)等)が普及している。これらの自動車(以下、「電動車」と総称する)は、車室内の温度を調整するためやバッテリを温調するために冷媒を用いた複数の冷媒流路が存在するため、複数の冷媒流路を備えた冷媒マニホールドが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の冷媒マニホールドは、圧縮機から凝縮器へ向かう冷媒が流れる第1流路と、凝縮器から蒸発器へ向かう冷媒が流れる第2流路とを有する流路ハウジング(文献ではベース)を備えている。この流路ハウジングは、鋳鉄又はアルミニウム等の金属材料で一体形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】中国特許第113650528号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
冷媒流路には、圧縮機から凝縮器へ向かう冷媒が流れる第1流路のように相対的に高温冷媒が流通する冷媒回路と、凝縮器から蒸発器へ向かう冷媒が流れる第2流路のように相対的に低温冷媒が流通する冷媒回路とが混在している。このため、特許文献1に記載の冷媒マニホールドでは、高温冷媒と低温冷媒との間で熱交換が行われ、冷暖房効率の低下やバッテリ冷却効率の低下を招いてしまう。
【0006】
そこで、温度帯の異なる複数の冷媒流路の間で断熱性を担保可能な冷媒マニホールドが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る冷媒マニホールドの特徴構成は、圧縮機から凝縮器へ向かう冷媒が流れる第1流路と、前記凝縮器から蒸発器へ向かう前記冷媒が流れる第2流路とを有する流路ハウジングを備え、前記流路ハウジングは、樹脂で一体形成されている点にある。
【0008】
本構成における冷媒マニホールドは、圧縮機から凝縮器へ向かう冷媒が流れる第1流路と、凝縮器から蒸発器へ向かう冷媒が流れる第2流路とを有する流路ハウジングを備えているため、複雑な冷媒配管を引き回す必要がなく、コンパクト化を図ることができる。
【0009】
しかも、本構成では、流路ハウジングを樹脂で一体形成しているため、相対的に高温冷媒が流れる第1流路と相対的に低温冷媒が流れる第2流路との間に樹脂が介在し、高温冷媒と低温冷媒との間での熱交換を抑制可能となる。その結果、温度帯の異なる複数の冷媒流路の間で断熱性を担保可能な冷媒マニホールドとなっている。
【0010】
本発明に係る冷媒マニホールドの特徴構成は、圧縮機から凝縮器へ向かう冷媒が流れる第1流路と、前記凝縮器から蒸発器へ向かう前記冷媒が流れる第2流路とが形成されたハウジング本体と、当該ハウジング本体と連結されるプレート部材と、を有する流路ハウジングを備え、前記ハウジング本体は、前記第1流路が形成される第1ハウジング本体と、前記第2流路が形成される第2ハウジング本体とを含んでおり、前記第1ハウジング本体が金属で一体形成され、前記第2ハウジング本体が樹脂で一体形成されている点にある。
【0011】
本構成における冷媒マニホールドは、圧縮機から凝縮器へ向かう冷媒が流れる第1流路と、凝縮器から蒸発器へ向かう冷媒が流れる第2流路とが形成されたハウジング本体を有する流路ハウジングを備えているため、複雑な冷媒配管を引き回す必要がなく、コンパクト化を図ることができる。
【0012】
また、本構成では、第1流路が形成される第1ハウジング本体が金属で構成され、第2流路が形成される第2ハウジング本体が樹脂で形成されるため、これら第1ハウジング本体及び第2ハウジング本体がプレート部材に連結されている。つまり、相対的に高温冷媒が流れる第1流路と相対的に低温冷媒が流れる第2流路との間に第2ハウジング本体の樹脂が介在し、高温冷媒と低温冷媒との間での熱交換を抑制可能となる。しかも、第1ハウジング本体が金属で構成されているため、圧縮機から凝縮器へ向かう高圧冷媒に対して強度も確保できる。このように、温度帯の異なる複数の冷媒流路の間で断熱性を担保可能な冷媒マニホールドとなっている。
【0013】
本発明に係る冷媒マニホールドの特徴構成は、圧縮機から凝縮器へ向かう冷媒が流れる第1流路と、前記凝縮器から蒸発器へ向かう前記冷媒が流れる第2流路とが形成されたハウジング本体と、当該ハウジング本体の前記第1流路及び前記第2流路を覆うプレート部材と、を有する流路ハウジングを備え、前記プレート部材は、空気を介した状態で前記ハウジング本体に連結されている点にある。
【0014】
本構成における冷媒マニホールドは、圧縮機から凝縮器へ向かう冷媒が流れる第1流路と、凝縮器から蒸発器へ向かう冷媒が流れる第2流路とが形成されたハウジング本体を有する流路ハウジングを備えているため、複雑な冷媒配管を引き回す必要がなく、コンパクト化を図ることができる。
【0015】
また、第1流路及び第2流路を覆うプレート部材が空気を介した状態でハウジング本体に連結されているため、相対的に高温冷媒が流れる第1流路と相対的に低温冷媒が流れる第2流路との間に空気が介在し、高温冷媒と低温冷媒との間での熱交換を抑制可能となる。しかも、プレート部材を介した外部への放熱も抑制することができる。このように、温度帯の異なる複数の冷媒流路の間で断熱性を担保可能な冷媒マニホールドとなっている。
【0016】
本発明に係る冷媒マニホールドの特徴構成は、圧縮機から凝縮器へ向かう冷媒が流れる第1流路と、前記凝縮器から蒸発器へ向かう前記冷媒が流れる第2流路とを有する流路ハウジングを備え、前記流路ハウジングは、金属で一体形成されており、前記第1流路及び前記第2流路の表面が断熱材で覆われている点にある。
【0017】
本構成における冷媒マニホールドは、圧縮機から凝縮器へ向かう冷媒が流れる第1流路と、凝縮器から蒸発器へ向かう冷媒が流れる第2流路とが形成されたハウジング本体を有する流路ハウジングを備えているため、複雑な冷媒配管を引き回す必要がなく、コンパクト化を図ることができる。
【0018】
また、第1流路及び第2流路の表面が断熱材で覆われているため、相対的に高温冷媒が流れる第1流路と相対的に低温冷媒が流れる第2流路との夫々からの放熱,吸熱が防止され、高温冷媒と低温冷媒との間での熱交換を抑制可能となる。しかも、流路ハウジングが金属で構成されているため、強度も確保できる。このように、温度帯の異なる複数の冷媒流路の間で断熱性を担保可能な冷媒マニホールドとなっている。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】冷却回路の回路構成図である。
図2】冷媒マニホールドが設けられる統合モジュールの斜視図である。
図3図2のIII-III線の矢視図である。
図4】第1の実施形態の流路ハウジングを示す図である。
図5】第2の実施形態の流路ハウジングを示す図である。
図6】第3の実施形態の流路ハウジングを示す図である。
図7】第3の実施形態の流路ハウジングを示す図である。
図8】第3の実施形態の流路ハウジングの変形例を示す図である。
図9】第4の実施形態の流路ハウジングを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係る冷媒マニホールドは、温度帯の異なる複数の冷媒流路の間において、高い断熱性を有している。以下、冷媒マニホールドについて説明する。ただし、冷媒マニホールドは、以下の記載に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【0021】
〔冷媒回路〕
図1は、本実施形態の冷媒マニホールド10(図2参照)が設けられる統合モジュール100を含む冷媒回路Cの回路構成を示す図である。冷媒回路Cは、電動車に搭載され、電動車の室内の温度を調整する冷暖房用の冷媒F1が流通する冷媒流路L(以下、単に「流路」ともいう)によって構成される。冷媒F1は、例えば、ハイドロフルオロカーボン(HFC)、ハイドロフルオロオレフィン(HFO)等の冷媒である。冷媒流路Lは、後述する冷媒マニホールド10が有する流路ハウジング11(図2参照)の内部に設けられる。
【0022】
図1に示すように、冷媒回路Cは、コンプレッサ1(圧縮機の一例)、キャビンコンデンサ2(暖房用コンデンサ)、水冷コンデンサ3(凝縮器の一例)、エバポレータ4(蒸発器の一例)、バッテリクーラ5(蒸発器の一例)、アキュムレータ6、及びバルブVを備える。コンプレッサ1、キャビンコンデンサ2、水冷コンデンサ3、エバポレータ4、バッテリクーラ5、アキュムレータ6、及びバルブVは、冷媒流路Lにより接続される。
【0023】
バルブVは、水冷コンデンサ3とアキュムレータ6との間に設けられる開閉弁V1を含む。また、バルブVは、キャビンコンデンサ2と水冷コンデンサ3との間に設けられる第1膨張弁VE1、及び水冷コンデンサ3とエバポレータ4との間に設けられる第2膨張弁VE2を更に含む。
【0024】
開閉弁V1は、水冷コンデンサ3とアキュムレータ6との間の冷媒F1の流れを制御(流通又は遮断)する。開閉弁V1が開状態にされると、冷媒F1は、コンプレッサ1、キャビンコンデンサ2、第1膨張弁VE1、水冷コンデンサ3、開閉弁V1、アキュムレータ6、コンプレッサ1の順に流れる。以下、コンプレッサ1から、キャビンコンデンサ2を介して水冷コンデンサ3へ向かう冷媒F1が流れる流路を、第1流路F11とする。
【0025】
第1膨張弁VE1及び第2膨張弁VE2は、冷媒F1を膨張させて冷媒F1の圧力を調整する。第2膨張弁VE2が開いた状態とされると、冷媒F1は、第2膨張弁VE2、エバポレータ4の順に流れた後、開閉弁V1からの冷媒F1と合流してアキュムレータ6に流入する。例えば、車室内の温度を上昇させる際(車室の暖房運転時)、開閉弁V1は、開状態とされ、第2膨張弁VE2は、閉状態とされる。一方、車室内の温度を降下させる際(車室の冷房運転時)、開閉弁V1は、閉状態とされ、第2膨張弁VE2は、開状態とされる。
【0026】
バッテリクーラ5は膨張弁を含む。バッテリクーラ5の膨張弁は、バッテリの温度調整時に開状態とされる。バッテリクーラ5の膨張弁が開状態とされると、冷媒F1は、バッテリクーラ5を流れた後、アキュムレータ6に流入する。以下、水冷コンデンサ3から第2膨張弁VE2を介してエバポレータ4へ向かう冷媒F1が流れる流路、及び水冷コンデンサ3からバッテリクーラ5へ向かう冷媒F1が流れる流路を、第2流路F12とする。
【0027】
コンプレッサ1は、冷媒F1を圧縮することにより、冷媒F1を高温高圧の気体とする。以下、コンプレッサ1によって圧縮された冷媒F1の温度を第1温度という。なお、第1温度は、例えば80度~90度である。
【0028】
コンプレッサ1で圧縮された冷媒F1は、キャビンコンデンサ2に送られ、暖房運転時に車室内の空気と熱交換(熱が奪われて降温)し、第1膨張弁VE1を経て、水冷コンデンサ3へ送られる。水冷コンデンサ3では、冷媒回路Cとは別の回路(例えば、車両に搭載される電子回路等を冷却するための冷却回路)を循環する第1熱媒F2が流通している。第1熱媒F2は、ロングライフクーラント(LLC)等の冷却水、パラフィン系等の絶縁油、ハイドロフルオロカーボン(HFC)、ハイドロフルオロオレフィン(HFO)等の冷媒である。水冷コンデンサ3に送られた冷媒F1は、水冷コンデンサ3を流通する第1熱媒F2と熱交換(熱が奪われて降温)する。以下、水冷コンデンサ3で降温した後の冷媒F1の温度を第2温度という。なお、第2温度は、例えば15度~25度である。
【0029】
第2膨張弁VE2に送られた冷媒F1は、膨張されて液体と気体とが混合した状態(霧状)となってエバポレータ4に送られる。エバポレータ4では、冷媒F1は、外部から導入された空気と熱交換(熱を奪って昇温)して気化する。
【0030】
また、バッテリクーラ5に送られた冷媒F1は、バッテリクーラ5の膨張弁により膨張される。バッテリクーラ5には冷媒回路Cとは更に別の回路(例えば、車両に搭載されるバッテリを冷却する冷却回路)を循環する第2熱媒F3が流通している。第2熱媒F3は、ロングライフクーラント(LLC)等の冷却水、パラフィン系等の絶縁油、ハイドロフルオロカーボン(HFC)、ハイドロフルオロオレフィン(HFO)等の冷媒である。バッテリクーラ5に送られた冷媒F1は、バッテリクーラ5を流通する第2熱媒F3と熱交換(熱を奪って昇温)して気化する。以下、エバポレータ4又はバッテリクーラ5で熱交換した後の冷媒F1の温度を第3温度という。なお、第3温度は、例えば60度~70度である。
【0031】
エバポレータ4で熱交換した後の冷媒F1は、アキュムレータ6に送られ、冷媒F1に含まれる液体が分離される。液体が分離された冷媒F1は、コンプレッサ1に戻る。また、バッテリクーラ5で熱交換した後の冷媒F1も、アキュムレータ6に送られ、冷媒F1に含まれる液体が分離される。液体が分離された気体状の冷媒F1は、コンプレッサ1に戻る。
【0032】
上記のように、冷媒回路Cを循環する冷媒F1の温度は変化する。具体的には、冷媒F1の温度は、コンプレッサ1から水冷コンデンサ3へ向かう冷媒F1の第1温度が最も高く、エバポレータ4及び/又はバッテリクーラ5からコンプレッサ1へ向かう冷媒F1の第3温度がその次に高く、水冷コンデンサ3からエバポレータ4及び/又はバッテリクーラ5へ向かう冷媒F1の第2温度が最も低い。なお、開閉弁V1を流通した冷媒F1の温度は、暖房、冷房等の運転状況により、第2温度と第3温度との間で変化する(最も低い場合に第2温度となり、最も高い場合に第3温度となる)。
【0033】
〔冷媒マニホールドの構成〕
図2は、冷媒マニホールド10が設けられる統合モジュール100の斜視図である。また、図3は、図2におけるIII-III線の矢視図である。
【0034】
統合モジュール100は、車両用駆動ユニット90と、電子回路ユニット91と、冷媒マニホールド10とを備える。車両用駆動ユニット90及び電子回路ユニット91はケース92に収容されている。冷媒マニホールド10は、ケース92にネジ部材により締結固定される。冷媒マニホールド10には、上述したコンプレッサ1、キャビンコンデンサ2、水冷コンデンサ3、エバポレータ4、バッテリクーラ5、アキュムレータ6、第1膨張弁VE1、第2膨張弁VE2、及び開閉弁V1等の補機に冷媒F1を流通させる冷媒流路Lが設けられる。水冷コンデンサ3、アキュムレータ6、第1膨張弁VE1、第2膨張弁VE2、及び開閉弁V1は、冷媒マニホールド10又はケース92に固定されてモジュール化されている。なお、統合モジュール100の形状や構造は特に限定されず、変更可能である。
【0035】
車両用駆動ユニット90は、駆動回転力を車両の走行系に伝えるモータや、減速機構を有する。電子回路ユニット91は、モータを駆動するための電子回路を有する。この電子回路には、オンボードチャージャ(OBC:電圧変換回路)やインバータが含まれる。
【0036】
冷媒マニホールド10は、上述した補機と、図3に示されるような流路ハウジング11とを備える。流路ハウジング11は、ハウジング本体12とプレート部材13とを有する。上述した冷媒流路Lは、ハウジング本体12に形成される。
【0037】
図1及び図3に示されるように、ハウジング本体12には、コンプレッサ1からキャビンコンデンサ2へ向かう冷媒F1が流通する第1連通路51と、キャビンコンデンサ2から第1膨張弁VE1へ向かう冷媒F1が流通する第2連通路52と、第1膨張弁VE1から水冷コンデンサ3へ向かう冷媒F1が流通する第3連通路53とが設けられる。上述した第1流路F11は、第1連通路51と第2連通路52と第3連通路53とにより構成される。
【0038】
また、ハウジング本体12には、水冷コンデンサ3から第2膨張弁VE2へ向かう冷媒F1が流通する第4連通路54と、水冷コンデンサ3からバッテリクーラ5へ向かう冷媒F1が流通する第5連通路55と、水冷コンデンサ3から開閉弁V1へ向かう冷媒F1が流通する第6連通路56とが設けられる。また、ハウジング本体12には、第2膨張弁VE2からエバポレータ4へ向かう冷媒F1が流通する第7連通路57が設けられる。上述した第2流路F12は、第4連通路54と第5連通路55と第6連通路56と第7連通路57とにより構成される。本実施形態では、図2に示されるように、第6連通路56がハウジング本体12に外付けされる。
【0039】
更に、ハウジング本体12には、開閉弁V1からアキュムレータ6へ向かう冷媒F1が流通する第8連通路58と、エバポレータ4からアキュムレータ6へ向かう冷媒F1が流通する第9連通路59と、バッテリクーラ5からアキュムレータ6へ向かう冷媒F1が流通する第10連通路60とが設けられる。
【0040】
また、ハウジング本体12には、水冷コンデンサ3に向かう第1熱媒F2が流通する第1熱媒路61と、水冷コンデンサ3からの第1熱媒F2が流通する第2熱媒路62とが設けられる。
【0041】
なお、ハウジング本体12に設けられる上述した連通路の形状や位置は、特に限定されず、変更可能である。
【0042】
〔第1の実施形態〕
図4には、第1の実施形態の冷媒マニホールド10が示される。上述したように冷媒マニホールド10は、流路ハウジング11と補機(コンプレッサ1、キャビンコンデンサ2、水冷コンデンサ3、エバポレータ4、バッテリクーラ5、アキュムレータ6、第1膨張弁VE1、第2膨張弁VE2、及び開閉弁V1等)とを含んで構成され、流路ハウジング11はハウジング本体12とプレート部材13とを有する。ハウジング本体12は、ケース92側の面(裏面)に第6連通路56を除く、第1連通路51-第10連通路60(以下「ケース側連通路」とする)が形成されている。ケース側連通路は、流路ハウジング11の裏面において、開口した状態で形成されている。プレート部材13は、少なくとも流路ハウジング11と対向する面が平坦な面で形成されており、ケース側連通路の開口部分を覆う(塞ぐ)ようにハウジング本体12に連結される。
【0043】
ここで、上述したように、コンプレッサ1によって圧縮された冷媒F1の温度(第1温度)は、例えば80度~90度である。すなわち、第1連通路51には、第1温度の冷媒F1が流通する。また、水冷コンデンサ3で降温した後の冷媒F1の温度(第2温度)は、例えば15度~25度である。すなわち、第4連通路54、第5連通路55、及び第6連通路56には、第2温度の冷媒F1が流通する。また、エバポレータ4又はバッテリクーラ5で熱交換した後の冷媒F1の温度(第3温度)は、例えば60度~70度である。すなわち、第9連通路59、及び第10連通路60には、第3温度の冷媒F1が流通する。
【0044】
本実施形態の流路ハウジング11は樹脂で一体形成されている。例えば、ハウジング本体12を樹脂成形で作製し、プレート部材13を樹脂成形で作製する際にハウジング本体12と共に、一体形成するとよい。
【0045】
このように、ハウジング本体12及びプレート部材13を樹脂で構成する、すなわち流路ハウジング11を樹脂で構成することで、第1連通路51、第2連通路52及び第3連通路53と、第4連通路54、第5連通路55及び第6連通路56と、第7連通路57と、第8連通路58、第9連通路59及び第10連通路60とにおける熱伝導が抑制される。これにより、第1連通路51を流通する冷媒F1が、他の連通路を流通する冷媒F1により冷やされることを防止し、第7連通路57を流通する冷媒F1が温められることを防止することができる。したがって、水冷コンデンサ3における冷媒F1による熱交換効率(凝縮効率)や、エバポレータ4における冷媒F1による熱交換効率(蒸発効率)が低下することを抑制できる。
【0046】
このような冷媒マニホールド10は、熱伝導率の低い樹脂材料を用いて、樹脂成形により構成することが可能である。具体的には、例えばポリアミドのような機械的強度や、耐熱性に優れた樹脂を用いるとよい。
【0047】
また、図4に示されるように、ハウジング本体12は、コンプレッサ1が連結される連結部71、キャビンコンデンサ2が連結される連結部72,73、第1膨張弁VE1が連結される連結部74、水冷コンデンサ3が連結される連結部75,76,77,78、第2膨張弁VE2が連結される連結部79、エバポレータ4が連結される連結部80,81、バッテリクーラ5が連結される連結部82,83、アキュムレータ6が連結される連結部84、第6連通路56を支持する支持部85,86が、金属部材を用いて構成される。このような金属部材を用いることで、高い寸法精度が要求される各連通路やバルブVが連結される部位を精度よく構成することが可能となる。このような連結部71-84や、支持部85,86は、流路ハウジング11を樹脂で一体形成する際に、金属部材をインサート成形するとよい(鋳包んで行うとよい)。
【0048】
以上のように、本実施形態の冷媒マニホールド10は、流路ハウジング11全体が樹脂で形成されているので断熱性を高めることができる。また、寸法精度が要求される箇所には金属部材が採用されているので、樹脂成形時における寸法管理を厳しく設定する必要がない。
【0049】
〔第2の実施形態〕
次に、冷媒マニホールド10の第2の実施形態について説明する。本実施形態でも、第1の実施形態と同様に、冷媒マニホールド10は流路ハウジング11を備える。流路ハウジング11は、第1流路F11と第2流路F12とが形成されたハウジング本体12と、当該ハウジング本体12と連結されるプレート部材13とを有する。
【0050】
図5の(A)には、第2の実施形態のハウジング本体12の上面視が示され、図5の(B)には、第2の実施形態のハウジング本体12の下面視が示される。
【0051】
本実施形態では、ハウジング本体12は、第1ハウジング本体12Aと第2ハウジング本体12Bとを含んで構成される。第1ハウジング本体12Aには、第1流路F11が形成される。第1流路F11とは、コンプレッサ1から水冷コンデンサ3へ向かう冷媒F1が流れる流路である。このような第1流路F11には、コンプレッサ1により圧力が高められた冷媒F1が流れる。そこで、本実施形態では、第1ハウジング本体12Aは、全体が金属で一体形成される。これにより、ハウジング本体12における冷媒F1からの圧力による変形を抑制できる。
【0052】
第2ハウジング本体12Bには、第2流路F12が形成される。第2流路F12とは、水冷コンデンサ3からエバポレータ4やバッテリクーラ5へ向かう冷媒F1が流れる流路である。このような第2流路F12には、コンプレッサ1により高められた圧力よりも小さい圧力であって、第2温度(例えば15度~25度)の冷媒F1が流れる。そこで、本実施形態では、第2ハウジング本体12Bは、全体が樹脂で一体形成される。これにより、第2流路F12を流れる冷媒F1の温度が温められることを抑制できる。
【0053】
このようなハウジング本体12は、まず、第1ハウジング本体12Aを金属で作製し、第2ハウジング本体12Bを樹脂で一体形成する際に、第1ハウジング本体12Aをインサート成形するとよい(鋳包んで行うとよい)。
【0054】
図示はしないが、プレート部材13も、第1プレート部材と第2プレート部材とを含んで構成することが可能である。第1プレート部材は、プレート部材13のうち、第1ハウジング本体12Aに形成された流路を覆う(塞ぐ)部分である。上述したように、第1ハウジング本体12Aには、コンプレッサ1により圧力が高められた冷媒F1が流れる第1流路F11が設けられている。このため、第1ハウジング本体12Aの第1流路F11を覆うために利用される第1プレート部材も金属で一体形成するとよい。これにより、プレート部材13における冷媒F1からの圧力による変形を抑制できる。
【0055】
第2プレート部材は、プレート部材13のうち、第2ハウジング本体12Bに形成された流路を覆う部分である。上述したように、第2ハウジング本体12Bには、コンプレッサ1により高められた圧力よりも小さい圧力の冷媒F1が流れる第2流路F12が設けられている。このため、第2ハウジング本体12Bの第2流路F12を覆うために利用される第2プレート部材は樹脂で一体形成するとよい。これにより、第2流路F12を流れる冷媒F1の温度が温められることを抑制できる。
【0056】
このようなプレート部材13は、まず、第1プレート部材を金属で作製し、第2プレート部材を樹脂で一体形成する際に、第1プレート部材をインサート成形するとよい(鋳包んで行うとよい)。更に、第2ハウジング本体12Bを樹脂で一体形成する際に、第1ハウジング本体12Aと共に、プレート部材13をインサート成形するとよい(鋳包んで行うとよい)。
【0057】
以上のように、本実施形態の冷媒マニホールド10は、流路ハウジング11におけるコンプレッサ1により圧力が高められた冷媒F1が流れる第1流路F11が設けられている第1ハウジング本体12A(例えば「高圧部」と称することが可能である)を金属部材で構成し、圧力が低くなった冷媒F1が流れる第2流路F12が設けられている第2ハウジング本体12B(例えば「低圧部」と称することが可能である)を樹脂で構成している。これにより、高圧部における樹脂の肉厚を厚くする必要がない。また、低圧部における断熱性を担保できる。
【0058】
〔第3の実施形態〕
次に、冷媒マニホールド10の第3の実施形態について説明する。本実施形態でも、第1の実施形態と同様に、冷媒マニホールド10は流路ハウジング11を備える。流路ハウジング11は、第1流路F11と第2流路F12とが形成されたハウジング本体12と、当該ハウジング本体12と連結されるプレート部材13とを有する。プレート部材13は、第1の実施形態と同様に、ハウジング本体12の第1流路F11及び第2流路F12を覆う。
【0059】
図6には、第3の実施形態の流路ハウジング11の側面図が示される。本実施形態では、プレート部材13は、空気を介した状態でハウジング本体12に連結される。空気を介した状態とは、プレート部材13が空気層を含んでいることを意味する。
【0060】
この場合、例えばプレート部材13を、上側プレート部材13Uと下側プレート部材13Dとを含んで構成し、上側プレート部材13Uは上述した第1の実施形態と同様に構成するとよい。また、下側プレート部材13Dは、図7の平面視に示すように、外周部分に、中央部13D2を囲む壁状の外縁部13D1を構成するとよい。この外縁部13D1の頂部を上側プレート部材13Uの下面に当接する状態で固定することで、プレート部材13に空気層が含まれるように構成することが可能となる。このようなプレート部材13を、ハウジング本体12に連結することで、プレート部材13を、空気層を介した状態でハウジング本体12に連結することが可能となる。
【0061】
なお、このような空気層は、プレート部材13をハウジング本体12に固定した際に、ハウジング本体12における流路が構成されている領域と重複する領域にのみ構成してもよい。すなわち、図8に示されるように、プレート部材13において、外縁部13D1よりも高さが低い中央部13D2を部分的に設けるとよい。また、空気層は、断熱性の気体を封入してもよいし、流体(油等)が封入されていてもよい。
【0062】
以上のように、本実施形態の冷媒マニホールド10は、流路ハウジング11におけるケース92側が空気層を含む2重構造で構成される。これにより、流路ハウジング11を、ケース92に収容される車両用駆動ユニット90や電子回路ユニット91に対して熱的に分離することができるので、車両用駆動ユニット90や電子回路ユニット91と、流路ハウジング11を流れる冷媒F1との間の熱交換を抑制できる。
【0063】
〔第4の実施形態〕
次に、冷媒マニホールド10の第4の実施形態について説明する。本実施形態でも、第1の実施形態と同様に、冷媒マニホールド10は流路ハウジング11を備える。流路ハウジング11は、第1流路F11と第2流路F12とが形成されたハウジング本体12と、当該ハウジング本体12と連結されるプレート部材13とを有する。
【0064】
本実施形態では、ハウジング本体12が金属で一体形成されている。図9には、本実施形態のハウジング本体12の下面視が示される。本実施形態でも、図9に示されるように、ハウジング本体12には、冷媒F1が流通する流路が形成されている。
【0065】
第1流路F11にはコンプレッサ1により加圧され、高温となった冷媒F1が流れる。また、第2流路F12には外部からの受熱を避けたい冷媒F1が流れる。そこで、本実施形態では、第1流路F11及び第2流路F12の表面が断熱材で覆われている。第1流路F11及び第2流路F12の表面とは、第1流路F11及び第2流路F12の内周面である。断熱材として、例えば断熱性の優れた断熱塗料が相当する。このような断熱塗料を、第1流路F11及び第2流路F12の夫々の内周面に塗布するとよい。これにより、第1流路F11を流れる冷媒F1による周囲への温度の拡散や、第2流路F12を流れる冷媒F1による外部からの受熱を抑制できる。
【0066】
なお、ハウジング本体12には、第1流路F11及び第2流路F12以外の他の流路も形成されるが、これらの流路にも断熱塗料を塗布してもよいし、断熱塗料を塗布しなくてもよい。
【0067】
以上のように、本実施形態の冷媒マニホールド10は、流路ハウジング11における流路の内周面が断熱材で覆われている。これにより、流路を流れる冷媒F1と、流路ハウジング11との間の熱交換を抑制できる。
【0068】
〔その他の実施形態〕
上記実施形態では、冷媒マニホールド10に、水冷コンデンサ3、アキュムレータ6、第1膨張弁VE1、第2膨張弁VE2、及び開閉弁V1等の補機が設けられるとして説明した。しかしながら、補機は、上述したもの以外に設けることも可能であるし、コンプレッサ1、キャビンコンデンサ2、水冷コンデンサ3、エバポレータ4、バッテリクーラ5、アキュムレータ6、第1膨張弁VE1、第2膨張弁VE2、及び開閉弁V1のうちのいくつかを設けてもよい。
【0069】
上記実施形態では、図1に冷却回路を示したが、図1の冷却回路は一例であって、他の回路を用いてもよい。
【0070】
上記実施形態では、冷媒マニホールド10が、統合モジュール100に設けられるとして説明した。しかしながら、冷媒マニホールド10は、統合モジュール100とは異なる装置に設けることも可能である。
【0071】
本発明は、冷媒が流通する冷媒流路を備えた冷媒マニホールドに用いることが可能である。
【符号の説明】
【0072】
1:コンプレッサ(圧縮機)
3:水冷コンデンサ(凝縮器)
4:エバポレータ(蒸発器)
5:バッテリクーラ(蒸発器)
10:冷媒マニホールド
11:流路ハウジング
12:ハウジング本体
12A:第1ハウジング本体
12B:第2ハウジング本体
13:プレート部材
F1:冷媒
F11:第1流路
F12:第2流路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9