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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129522
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】養生方法
(51)【国際特許分類】
   B66C 11/14 20060101AFI20240919BHJP
   B66C 7/10 20060101ALI20240919BHJP
   B66C 9/10 20060101ALI20240919BHJP
   E01F 8/00 20060101ALI20240919BHJP
【FI】
B66C11/14
B66C7/10
B66C9/10
E01F8/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038776
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】沼崎 孝義
(72)【発明者】
【氏名】青山 裕作
(72)【発明者】
【氏名】奥田 浩文
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 剛
(72)【発明者】
【氏名】辺見 厚志
【テーマコード(参考)】
2D001
3F202
3F203
【Fターム(参考)】
2D001AA01
2D001CA01
2D001PC01
3F202BA01
3F203CA04
3F203CC01
(57)【要約】
【課題】荷材の荷吊り作業を行う際に特殊な移動体を用いることなく資材の飛散防止の養生を行うことができる養生方法を提供する。
【解決手段】移動体10に設置された荷吊りユニット25を用いて、移動体10の側方に位置する遮音パネルP1の荷吊り作業を行う際に用いられる養生方法であって、荷吊りユニット25に支持される養生張出材101を、遮音パネルP1の上方を通じて、遮音パネルP1に対する移動体10の反対側まで張り出したのち、養生張出材101の張出側先端から垂下する養生幕材105の下端の位置を調整し、養生幕材105の下端に設けられた閉塞材110によって、養生幕材105と遮音パネルP1との間を下側から閉塞する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷吊りユニットを用いて、前記荷吊りユニットの側方に位置する荷材の荷吊り作業を行う際の養生方法であって、
前記荷吊りユニットに支持される養生張出材を、前記荷材の上方を通じて、前記荷材に対する前記荷吊りユニットの反対側まで張り出したのち、
前記養生張出材の張出側先端から垂下する養生幕材の下端の位置を調整し、
前記養生幕材の下端に設けられた閉塞材によって、前記養生幕材と前記荷材との間を下側から閉塞する
養生方法。
【請求項2】
前記養生幕材は、巻回機構に巻き回されており、
前記巻回機構を操作することにより、前記養生幕材の下端の位置を調整する
請求項1に記載の養生方法。
【請求項3】
前記荷吊り作業は、上下方向に積み重ねられた前記荷材を上から順番に撤去する撤去作業であり、
荷吊り対象である上側荷材と前記上側荷材の下に位置する下側荷材との間に、前記荷材に対する前記荷吊りユニット側から挿入される係止用金物を用いて、前記閉塞材を前記下側荷材に係止する
請求項1または2に記載の養生方法。
【請求項4】
前記閉塞材は、前記上側荷材の下側において仮固定材で仮固定された状態で前記係止用金物と連結具で連結される
請求項3に記載の養生方法。
【請求項5】
前記荷吊り作業は、上下方向に積み重ねられた前記荷材を上から順番に撤去する撤去作業であり、
前記閉塞材に設けられた介錯ロープを、荷吊り対象である上側荷材と前記上側荷材の下に位置する下側荷材との間を通じて、前記荷材に対する前記荷吊りユニット側に引き込んだのち、前記荷材に対する前記荷吊りユニット側で前記介錯ロープを固定する
請求項1または2に記載の養生方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、資材の飛散を防止する養生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高速道路などには、周辺への騒音低減を目的の1つとして遮音壁が設置される。遮音壁は、例えば特許文献1のように、所定間隔で設けられた支柱と、隣り合う一対の支柱に支持されて上下方向に積み重ねられた遮音パネルと、によって形成されている。こうした遮音壁においては、定期的に遮音パネルの交換作業が行われる。交換作業においては、例えば特許文献1のような荷吊り作業車を用いて、既存の遮音パネルの撤去作用が行われたのち、新設の遮音パネルの設置作業が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-20975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、遮音パネルの撤去作業においては、上述した荷吊り作業車のほか、遮音壁外側の養生を行うために橋梁点検車が必要とされていた。しかしながら、橋梁点検車を用いた養生は橋梁点検車の手配が必要となるため、橋梁点検車を用いることなく遮音壁外側の養生を行うことが求められていた。なお、こうした要望は、橋梁点検車などの特殊な移動体を用いて養生を行う作業現場に共通するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する養生方法は、荷吊りユニットを用いて、前記荷吊りユニットの側方に位置する荷材の荷吊り作業を行う際の養生方法であって、前記荷吊りユニットに支持される養生張出材を、前記荷材の上方を通じて、前記荷材に対する前記荷吊りユニットの反対側まで張り出したのち、前記養生張出材の張出側先端から垂下する養生幕材の下端の位置を調整し、前記養生幕材の下端に設けられた閉塞材によって、前記養生幕材と前記荷材との間を下側から閉塞する。これにより、荷材に対する荷吊りユニットの反対側を養生することができる。その結果、橋梁点検車の手配が不要となる。
【0006】
上記構成において、前記養生幕材は、巻回機構に巻き回されており、前記巻回機構を操作することにより、前記養生幕材の下端の位置を調整することが好ましい。これにより、巻回機構を操作することで養生幕材の下端位置を上下方向に調整することができる。
【0007】
上記構成において、前記荷吊り作業は、上下方向に積み重ねられた前記荷材を上から順番に撤去する撤去作業であり、荷吊り対象である上側荷材と前記上側荷材の下に位置する下側荷材との間に、前記荷材に対する前記荷吊りユニット側から挿入される係止用金物を用いて、前記閉塞材を前記下側荷材に係止することが好ましい。これにより、養生幕材と上側荷材との間が下側から閉塞された状態が維持されやすくなる。その結果、資材の飛散をより確実に防止することができる。
【0008】
上記構成において、前記閉塞材は、前記上側荷材の下側において仮固定材で仮固定された状態で前記係止用金物と連結具で連結されることが好ましい。これにより、閉塞材が係止された状態をより確実に維持することができる。
【0009】
上記構成において、前記荷吊り作業は、上下方向に積み重ねられた前記荷材を上から順番に撤去する撤去作業であり、前記閉塞材に設けられた介錯ロープを、荷吊り対象である上側荷材と前記上側荷材の下に位置する下側荷材との間を通じて、前記荷材に対する前記荷吊りユニット側に引き込んだのち、前記荷材に対する前記荷吊りユニット側で前記介錯ロープを固定してもよい。これにより、養生幕材と上側荷材との間が下側から閉塞された状態が維持されやすくなる。その結果、資材の飛散をより確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】養生方法の一実施形態を実現する作業システムの概略構成を示す斜視図であって、荷吊りユニットが設置された移動体を示す斜視図である。
図2】移動体の後方から見た吊り下げ機構を模式的に示す図である。
図3】ビームの張り出し動作開始時を模式的に示す上面図である。
図4】ビームの張り出し動作の途中経過を模式的に示す上面図である。
図5】移動体の右側にビームが最大限張り出した状態を模式的に示す上面図である。
図6】養生ユニットの概略構成を説明するための模式図である。
図7】荷吊り対象付近における養生ユニットを示す模式図である。
図8】荷吊り対象付近における養生ユニットを上方から見た模式図である。
図9】係止用金物の他の例を模式的に示す図である。
図10】(a)閉塞材が取り付けられた養生幕材を繰り出している様子を示す模式図であり、(b)閉塞材をH型支柱に仮固定した状態を示す模式図であり、(c)係止機構によって閉塞材が係止された状態を示す模式図である。
図11】(a)次に撤去される遮音パネルを養生ユニットで養生した様子を示す模式図であり、(b)一番下にある遮音パネルを養生ユニットで養生した様子を示す模式図である。
図12】変形例において、養生幕材の模式的に示す正面図である。
図13】変形例において、養生張出材が荷吊りユニットの内側に収納された状態を模式的に示す上面図である。
図14】変形例において、(a)介錯ロープが取り付けられた閉塞材を車線内側に引き込む様子を模式的に示す図であり、(b)閉塞材が車線内側に引き込まれた状態を模式的に示す図である。
図15】変形例において、(a)養生幕材が車線内側に引き込んだ様子を模式的に示す図であり、(b)養生幕材によって養生された状態を模式的に示す図であり、(c)養生幕材の下端が遮音パネルに挟まれた状態を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1図11を参照して、養生方法の一実施形態について説明する。本実施形態において、養生方法は、移動体、移動体に設置された荷吊りユニット、および、荷吊りユニットに設置された養生ユニットを備えた作業システムを用いて実現される。作業システムは、例えば、高速道路や一般道路等において遮音壁を形成する遮音パネルを交換する際に、遮音パネルを荷材として吊り下げて搬送する荷吊り作業に用いられる。作業システムにおいては、作業現場まで移動体が移動したのち、養生ユニットを用いて車線外側から遮音壁を養生したうえで荷吊りユニットを利用した荷吊り作業が行われる。
【0012】
(移動体)
図1に示すように、移動体10は、前後方向(所定方向)に移動可能に構成されている。移動体10は、例えばキャブオーバ型のトラックである。移動体10は、前後方向に延びる車体フレーム11を有している。車体フレーム11の前部にはキャブ12が搭載されている。車体フレーム11には、キャブ12の後方に略矩形状の荷台13が設けられている。荷台13には荷吊りユニット25が着脱可能に搭載されている。
【0013】
車体フレーム11には、キャブ12の下方に、例えばエンジンやモータ・ジェネレタなどで構成される駆動動力源が搭載されている。車体フレーム11には、キャブ12の下方に操舵輪14が設けられ、荷台13の下方に駆動輪15が設けられている。
【0014】
(荷吊りユニット)
荷吊りユニット25は、荷材を吊り上げて所定位置まで搬送する際に用いられる。荷吊りユニット25は、枠体30とビーム34とを備えている。枠体30は、支柱31、下部フレーム体32、上部フレーム体33で構成されている。
【0015】
各支柱31は、荷台13の各隅部から上方に延びている。各支柱31は、複数の支柱部によって伸縮可能に構成される。本実施形態においては、各支柱31は、筒状の下側支柱部31Aと、下側支柱部31Aに内挿されて下側支柱部31Aに対して進退移動可能な筒状の上側支柱部31Bとを有する二重筒構造に構成されている。下側支柱部31Aおよび上側支柱部31Bは、例えば角形鋼管で構成される。
【0016】
各支柱31は、移動体10の走行中は、上側支柱部31Bを下側支柱部31Aに格納することにより、荷吊りユニット25を含めた移動体10の車高を低く抑える。また、各支柱31は、施工現場においては、荷吊りユニット25を遮音壁等の施工に適した高さへと調整される。
【0017】
前側に位置する一対の支柱31、および、後側に位置する一対の支柱31においては、下側支柱部31Aの上端部が連結フレーム31Cによって連結されている。これにより、枠体30の機械的な強度、例えば支柱31を伸張させたときの強度を高めることができる。
【0018】
また、各支柱31は、下側支柱部31Aの下端部に固定されたジャッキ35を介して荷台13に連結されている。ジャッキ35は、移動体10の駆動動力源によって駆動される電動機械式のジャッキである。ジャッキ35は、移動体10に搭載された図示されない制御装置を通じて、個別に、また、複数同時に駆動可能に構成されている。ジャッキ35は、制御装置からの駆動信号を受けて支柱31の延在方向に伸縮する。荷吊りユニット25は、ジャッキ35を選択的に駆動させることにより、移動体10の前後方向および幅方向において相対高さを調整可能に構成されている。ジャッキ35は、ビーム34の水平度を調整可能な調整装置を構成する。なお、ジャッキ35は、流体作動式のジャッキであってもよい。
【0019】
下部フレーム体32は、各支柱31の下端部を繋ぐようにチャンネル状(コ字状)に配設された複数のフレームで構成されている。下部フレーム体32は、前側下部フレーム36、後側下部フレーム37、右側下部フレーム38を有している。各フレーム36~38は、角形鋼管、H形鋼、I形鋼、横方向に開口する断面チャンネル状(コ字状)の鋼材で構成されている。前側下部フレーム36は、前側に位置する一対の支柱31を連結している。後側下部フレーム37は、後側に位置する一対の支柱31を連結している。右側下部フレーム38は、右側に位置する前後一対の支柱31を連結している。各フレーム36~38は、溶接やボルトナットを用いた締結などといった各種接合法によって各支柱31の下側支柱部31Aに連結されている。
【0020】
なお、下部フレーム体32は、後述する一対の走行レール45の延在方向に並ぶ一対の支柱31の下側支柱部31Aを連結するフレームを、一対の走行レール45の対向方向における一方側に有していればよい。そのため、下部フレーム体32は、右側下部フレーム38に代えて、左側に位置する前後一対の支柱31の下側支柱部31Aを連結する左側下部フレームを有する構成であってもよい。
【0021】
本実施形態において、右側下部フレーム38は、角形鋼管で構成される。右側下部フレーム38には、足場プレート40が取り付けられている。足場プレート40は、荷吊りユニット25の前後方向の長さと略同等の長板状に形成されている。足場プレート40は、ヒンジ41を介して取り付けられており、右側下部フレーム38に対して回動可能に構成されている。足場プレート40は、移動体10が走行する際には荷吊りユニット25側に折り畳んで格納可能に、また、荷台13に載置された搬送対象を搬送する際には水平方向に展開可能に構成されている。
【0022】
なお、足場プレート40は、支柱31の所定高さ位置に取り付けてもよい。また、足場プレート40は、回動可能な折り畳み式に限定されず、下部フレーム体32や支柱31に設けられたブラケット等に固定される構成であってもよい。また、足場プレート40は、移動体10の右側および左側の双方に設けられてもよい。
【0023】
上部フレーム体33は、各支柱31の上端部に連結されている。上部フレーム体33は、左右一対の走行レール45、前側上部フレーム46、後側上部フレーム47、中央上部フレーム48を備えている。
【0024】
左右一対の走行レール45は、移動体10の前後方向に延びているとともに移動体10の幅方向で対向している。左右一対の走行レール45の延在方向は、各走行レール45が延びる方向である。左右一対の走行レール45の対向方向は、走行レール45が互いに向かい合う方向であり、左右一対の走行レール45が並ぶ方向である。枠体30において、走行レール45の延在方向は移動体10の前後方向に対応し、走行レール45の対向方向は移動体10の幅方向に対応している。
【0025】
左右一対の走行レール45は、例えば、H形鋼またはI形鋼で構成されている。左側の走行レール45は、移動体10の左側に位置する前後一対の支柱31の上端部間に架け渡されている。右側の走行レール45は、移動体10の右側に位置する前後一対の支柱31の上端部間に架け渡されている。これらの走行レール45は、溶接やボルトナットを用いた締結などといった各種接合法によって支柱31の上端部に連結されている。
【0026】
各走行レール45の前端部および後端部には、シャックル49が設けられている。これらのシャックル49にロープなどを巻き掛けることにより、クレーンなどによる荷吊りユニット25の荷台13への積み込みなどが可能となる。
【0027】
前側上部フレーム46、後側上部フレーム47、および、中央上部フレーム48は、角形鋼管、H形鋼、I形鋼、横方向に開口する断面チャンネル状(コ字状)の鋼材で構成されている。前側上部フレーム46は、前側に位置する左右一対の支柱31の上端部を連結している。後側上部フレーム47は、後側に位置する左右一対の支柱31の上端部を連結している。中央上部フレーム48は、左右一対の走行レール45の中央部において上面部を連結している。これらのフレーム46,47,48は、溶接やボルトナットを用いた締結などといった各種接合法によって各々の連結対象に連結されている。
【0028】
また、上部フレーム体33は、中央上部フレーム48よりも前側に位置する前側クロスバー51と、中央上部フレーム48よりも後側に位置する後側クロスバー52と、を有している。
【0029】
前側クロスバー51は、互いに交差する一対のフレームで構成されている。一方のフレームは、左側の走行レール45の前端部と右側の走行レール45の中央部とを連結している。他方のフレームは、左側の走行レール45の中央部と右側の走行レール45の前端部とを連結している。
【0030】
後側クロスバー52は、互いに交差する一対のフレームで構成されている。一方のフレームは、左側の走行レール45の中央部と右側の走行レール45の後端部とを連結している。他方のフレームは、左側の走行レール45の後端部と右側の走行レール45の中央部とを連結している。
【0031】
ビーム34は、吊り下げ機構55を介して各走行レール45に吊り下げられている。ビーム34は、例えば、H形鋼又はI形鋼で構成されている。ビーム34は、左右一対の走行レール45の離間距離よりも長く、かつ、上部フレーム体33の対角距離(左側の走行レール45の前端と右側の走行レール45の後端との離間距離)よりも短い長さに形成されている。ビーム34は、各走行レール45に取り付けられた吊り下げ機構55によって、各走行レール45に沿って移動可能に、かつ、ビーム34の延在方向に沿って往復移動可能に構成されている。
【0032】
ビーム34には、荷吊り用プレーントロリ56を介して天秤フレーム57が吊り下げられている。天秤フレーム57は、荷吊り用プレーントロリ56によってビーム34を走行可能に構成されている。天秤フレーム57の両端部には、チェーンブロック等、遮音パネルを保持可能な吊り具58が設けられている。遮音パネルを保持した状態にある吊り具58を操作することにより、遮音パネルを昇降させることができる。
【0033】
図2に示すように、吊り下げ機構55は、各走行レール45を走行可能な上側プレーントロリ61とビーム34を走行可能な下側プレーントロリ62とを有している。
上側プレーントロリ61は、走行レール45を挟んで対向する一対のプレート63と、一対のプレート63を連結する連結軸64と、各プレート63に回転自在に軸支されて走行レール45の下側フランジ面を転動するローラ65とを備えている。
【0034】
下側プレーントロリ62は、ビーム34を挟んで対向する一対のプレート68と、各プレート68を連結する連結軸69と、各プレート68に回転自在に軸支されてビーム34の上側フランジ面を転動するローラ70とを備えている。
【0035】
上側プレーントロリ61および下側プレーントロリ62は、その連結軸64,69が接続部材71によって接続されている。接続部材71は、スイベルやダブルサルカン等で構成される回転継手である。接続部材71は、連結軸64に取り付けられる上側接続部71Aと連結軸69に取り付けられる下側接続部71Bとが相対回転可能に構成されている。接続部材71は、鉛直方向を回転中心として上側プレーントロリ61および下側プレーントロリ62を相対回転可能に接続している。すなわち、吊り下げ機構55では、接続部材71の上側接続部71Aおよび下側接続部71Bが相対回転することで、各走行レール45に対する水平方向へのビーム34の傾動動作が円滑に行われるようになっている。
【0036】
また、吊り下げ機構55は、ストッパ74とロック機構75とを有している。ストッパ74は、ビーム34の両端部に設けられている。ストッパ74は、各プレーントロリ56,62のビーム34からの脱落を防止する。ロック機構75は、ボルト等によってビーム34に着脱可能に構成されている。ロック機構75は、例えば、断面略L字状のアングル材で構成されている。ロック機構75は、下側プレーントロリ62をストッパ74との間に挟み込みこんで、ビーム34に対する下側プレーントロリ62の走行を規制することにより、ビーム34の自身の延在方向への移動を規制する。ロック機構75によって、左側の下側プレーントロリ62がロックされると、移動体10の左側へのビーム34の張り出しが防止される。また、ロック機構75によって、右側の下側プレーントロリ62がロックされると、移動体10の右側へのビーム34の張り出しが防止される。
【0037】
図3図5を参照して、ビーム34の張り出し動作について説明する。なお、移動体10の右側への張り出し動作と左側への張り出し動作は略同様の動作である。そのため、以下では、移動体10の右側への張り出し動作を説明し、左側への張り出し動作についての説明は省略する。
【0038】
図3に示すように、荷吊りユニット25においては、ビーム34の延在方向を荷吊りユニット25の略対角方向にすることにより、左右一対の走行レール45間にビーム34が格納される。
【0039】
この状態から、左側の走行レール45に取り付けられた吊り下げ機構55の下側プレーントロリ62をロック機構75でロックしたのち、ビーム34をR方向に回動させることで、移動体10の右側へのビーム34の張り出し動作が開始される。
【0040】
図4に示すように、ビーム34をR方向へ回動させると、ビーム34の左端部は、ロック機構75によって走行レール45よりも左側への張り出しを規制されたまま、吊り下げ機構55の上側プレーントロリ61によって走行レール45を後方に向けて移動する。
【0041】
一方、ビーム34の右端部は、右側の走行レール45に取り付けられた吊り下げ機構55の上側プレーントロリ61によって走行レール45を前方に向けて移動する。この際、吊り下げ機構55の下側プレーントロリ62がビーム34を走行することにより、ビーム34の右端部は、走行レール45よりも右側へビーム34の延在方向に沿うように送り出される。
【0042】
図5に示すように、ビーム34を走行レール45に対して90度回動させると、ビーム34は、走行レール45よりも右側に最大限に張り出した状態になる。
荷吊りユニット25は、ビーム34をR方向に回動させたり、ビーム34を走行レール45に沿って移動させたりすることによって、移動体10の側方の所望位置まで搬送対象を搬送できるように構成されている。
【0043】
図1に示すように、荷吊りユニット25は、支柱31を伸縮可能な前後一対のリフタ90を有している。前後一対のリフタ90は、調整装置を構成する。前後一対のリフタ90は、移動体10の駆動動力源によって駆動されるとともに、制御装置によって、個別に、また、同時に駆動可能に構成されている。前側に位置するリフタ90が第1リフタであり、後側に位置するリフタが第2リフタである。なお、これらのリフタ90は、その位置が異なるだけで基本的な構成は同じであるため、後側に位置するリフタ90について説明し、前側に位置するリフタ90については、その詳細な説明は省略する。
【0044】
リフタ90は、リフタベース91、リフタ本体92を有している。リフタベース91は、溶接やボルトナットを用いた締結などといった各種接合法によって、後側に位置する一対の支柱31や後側下部フレーム37に対して固定されている。
【0045】
リフタ本体92は、リフタベース91に取り付けられている。リフタ本体92は、伸縮フレーム93を有している。伸縮フレーム93の上端部は、溶接やボルトナットを用いた締結などといった各種接合法によって後側上部フレーム47に連結されている。
【0046】
リフタ本体92は、図示されない油圧シリンダを有しており、制御装置からの駆動信号を受けて伸縮フレーム93を伸縮させることにより、後側上部フレーム47の高さを調整可能に構成されている。
【0047】
荷吊りユニット25は、前後一対のリフタ90の伸縮フレーム93が同時期に伸縮することにより、荷吊りユニット25の全体高さが調整可能に構成されている。また、荷吊りユニット25は、前後一対のリフタ90の一方において伸縮フレーム93が伸縮することにより、前後方向における相対高さを調整可能に構成されている。
【0048】
(養生ユニット)
図6図11を参照して養生ユニット100について説明する。
図6に示すように、養生ユニット100は、道路95の地覆部96に設置された遮音壁97を、遮音壁97に対する荷吊りユニット25の反対側である車線外側から養生する。養生ユニット100は、荷吊りユニット25を用いた遮音パネルP1,P2,P3,P4の撤去作業(荷吊り作業)時に、車線外側への資材の飛散を防止する。遮音壁97は、図6の紙面直交方向にH型支柱98を所定間隔で設置する(図8参照)とともに、隣接する一対のH型支柱98の間に複数の遮音パネルP1,P2,P3,P4を上方から差し込むことにより構築される。遮音パネルを交換する際には、上から順番に遮音パネルP1,P2,P3,P4の撤去作業が行われる。
【0049】
なお、図6においては、荷吊りユニット25等を簡略化して示している。また、以下では、遮音パネルP1の撤去作業を行う場合を想定して養生ユニット100について説明する。
【0050】
養生ユニット100は、養生張出材101、養生幕材105、および、閉塞材110を有する。これらの養生張出材101、養生幕材105、および、閉塞材110は、移動体10や一般的な貨物移動体によって作業現場まで運搬される。
【0051】
養生張出材101は、施工現場まで搬送されたのち、枠体30の上端部に着脱可能に設置される。養生張出材101は、移動体10の幅方向に延びるように枠体30に設置されるアーム状の部材である。養生張出材101は、各種鋼材を用いて伸縮可能に形成されている。養生張出材101は、枠体30に取り付けられる第1アーム材102と、第1アーム材102に支持されて第1アーム材102に対して進退移動可能な第2アーム材103と、を有している。養生張出材101は、枠体30の前端部および後端部に設置される。このほか、養生張出材101は、前端部と後端部との間の中間部に設置されてもよい。作業現場において、養生張出材101は、枠体30の上端部に設置されたのち、車線外側に張出先端が位置するように伸長される。
【0052】
養生幕材105は、養生張出材101の張出側先端から垂れ下がるように設けられる。養生幕材105は、隣接する一対のH型支柱98を車線外側から覆うことが可能な形状に形成されている。
【0053】
養生幕材105は、養生張出材101の張出側先端に設けられた巻回機構106に巻き回されている。巻回機構106は、図示されないリモートコントローラーなどによって操作可能に構成されている。養生幕材105は、巻回機構106を操作することにより、養生幕材105の下端の位置が調整可能に構成されている。また、養生幕材105は、巻回機構106に収納可能に構成されている。
【0054】
養生幕材105は、ファスナーなどの着脱機構を介して上下方向に接続される複数の幕材によって形成されることが好ましい。例えば、養生幕材105は、網目の粗いネット状の上側幕材108と、網目の細かいメッシュ状の下側幕材109とで形成される。
【0055】
閉塞材110は、養生幕材105の下端に基端部が連結されている。閉塞材110は、養生幕材105と荷吊り対象となる遮音パネルP1との間を下側から閉塞する。閉塞材110は、例えば木板材によって形成される。閉塞材110の先端部には、閉塞材110をH型支柱98に仮固定する仮固定材111が設けられている。仮固定材111は、閉塞材110の両端部に設けられている(図8参照)。仮固定材111は、磁石によって形成されている。
【0056】
養生ユニット100は、荷吊り対象の遮音パネルP1(上側荷材)の下側に位置する遮音パネルP2(下側荷材)に閉塞材110を係止する係止機構115を有している。係止機構115は、係止用金物116と連結具117とを有する。
【0057】
係止用金物116は、車線内側から遮音パネルP2に取り付けられる。連結具117は、仮固定材111に取り付けられている。連結具117は、仮固定材111に取り付けられている。連結具117は、仮固定材111を介して閉塞材110と係止用金物116とを連結する。連結具117は、例えばカラビナである。
【0058】
図7に示すように、係止用金物116は、挿入部121、接続部122、差込部123を有する。
挿入部121は、遮音パネルP1と遮音パネルP2との間に挿入される部分である。挿入部121は、遮音パネルP1,P2よりも幅広であり、挿入側先端部が車線外側に配置される形状に形成されている。挿入側先端部には、連結具117が連結される図示されない連結孔が形成されている。挿入部121は、バールなどの工具を用いて遮音パネルP1を持ち上げた状態で遮音パネルP1と遮音パネルP2との間に挿入される。
【0059】
接続部122は、車線内側において挿入部121から下方へ延びている。差込部123は、接続部122の下端に設けられている。差込部123は、遮音パネルP2のルーバー部分に差し込み可能な形状に形成されている。差込部123は、遮音パネルP2に差し込まれることで遮音パネルP2と係合する。差込部123は、挿入側先端部に鉛直荷重が作用としたときに係止用金物116が遮音パネルP2から外れることを防止する。
【0060】
図8に示すように、係止用金物116は、一対のH型支柱98の内側から各H型支柱98に隣接するように個別に設置される。また、図9に示すように、差込部123は、遮音パネルP1と遮音パネルP2との間に差し込まれる構成であってもよい。
【0061】
(養生手順)
養生ユニット100を用いた養生手順について説明する。
図10(a)に示すように、養生張出材101を枠体30の上端部に設置したのち、巻回機構106が車線外側に配置されるように養生張出材101を伸長させる。そして、養生幕材105の下端部に閉塞材110を取り付けたのち、巻回機構106を操作して養生幕材105を繰り出し、閉塞材110を下降させる。
【0062】
図10(b)に示すように、遮音パネルP1の下側に閉塞材110が配置されるように、各仮固定材111で閉塞材110を各H型支柱98に仮固定する。
図10(c)に示すように、バールなどの工具を用いて遮音パネルP1を持ち上げた状態で、遮音パネルP1と遮音パネルP2との間に係止用金物116の挿入部121を挿入するとともに差込部123を遮音パネルP2のルーバー部分に差し込む。そして、仮固定材111と挿入部121の挿入側先端部とが連結具117によって連結される。これにより、遮音パネルP1の撤去作業に応じた養生が終了する。
【0063】
遮音パネルP1の撤去作業が終了すると、遮音パネルP2の撤去作業に応じた養生が行われる。具体的には、図10(c)に示した状態から連結具117と係止用金物116との連結を解除したのち、係止用金物116を撤去するとともに仮固定材111による閉塞材110の仮固定を解除する。
【0064】
そして、図11(a)に示すように、巻回機構106を操作して養生幕材105を繰り出し、閉塞材110を下降させたのち、閉塞材110の仮固定、遮音パネルP3に対する係止用金物116の取付、連結具117による連結を行う。これにより、遮音パネルP2の荷吊り作業に応じた養生が終了する。
【0065】
図11(b)に示すように、一番下に位置する遮音パネルP4の撤去作業に応じた養生においては、連結具117に紐状体125を取り付けた状態で閉塞材110を仮固定したのち、その紐状体125を遮音パネルP4の下側を通す。そして、車線内側において紐状体125を固定する。これにより、一番下の遮音パネルP4の撤去作業に応じた養生が終了する。
【0066】
本実施形態の作用および効果について説明する。
(1)上記実施形態においては、養生ユニット100によって遮音壁97が車線外側から養生される。その結果、橋梁点検車などの特殊な移動体の手配が不要となる。
【0067】
(2)養生幕材105は、網目の粗いネット状の上側幕材108と、網目の細かいメッシュ状の下側幕材109とで形成されている。これにより、養生幕材105を通じた資材の飛散を防止しつつ、養生幕材105への風の影響を低減することができる。
【0068】
(3)養生幕材105は、繰り出し・巻き上げ操作可能な巻回機構106に収容可能に構成されている。これにより、巻回機構106を操作することにより、養生幕材105の下端の位置を容易に調整することができる。また、養生幕材105をコンパクトな状態で運搬することができる。
【0069】
(4)閉塞材110は、係止機構115によって、荷吊り対象の遮音パネルの下側に位置する遮音パネルに係止可能に構成されている。これにより、養生幕材105と荷吊り対象となる遮音パネルとの間を閉塞材110で閉塞した状態が維持される。その結果、車線外側への資材の飛散をより確実に防止することができる。
【0070】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
図12に示すように、養生幕材105は、上側幕材108と、下側幕材109と、上側幕材108と下側幕材109とに着脱機構131を介して接続される中間幕材130と、で形成されてもよい。これにより、巻回機構106を有していない養生ユニット100においても、荷吊り対象の高さに応じて養生幕材105の調整を行うことができる。
【0071】
図13に示すように、養生ユニット100は、移動体10の上面視における荷吊りユニット25の内側に養生張出材101を収納する収納機構135を介して荷吊りユニット25に取り付けられていてよい。収納機構135は、荷吊りユニット25に対して、上下方向を回転中心として養生張出材101の基端部が回転可能に連結された回転軸材136を有する。これにより、収縮状態にある養生張出材101を収納機構135を用いて回転させることにより、養生張出材101を荷吊りユニット25の内側に収納することができる。その結果、移動体10とともに養生ユニット100を運搬することができるとともに養生張出材101の設置作業が不要となる。
【0072】
図14(a)に示すように、養生ユニット100は、閉塞材110に介錯ロープ140が設けられていてもよい。こうした構成においては、荷吊り対象の遮音パネルP1の撤去作業に応じた位置までへ閉塞材110を移動させる。その後、遮音パネルP1を持ち上げた状態で引き込み具141を用いて介錯ロープ140を車線内側に引き込む。そして、図14(b)に示すように、遮音パネルP1と遮音パネルP2とで閉塞材110を挟んだのち、介錯ロープ140をH型支柱98などに固定する。これにより、遮音パネルP1の撤去作業に応じた養生が終了する。
【0073】
・養生ユニット100は、閉塞材110を有していなくともよい。
例えば、図15(a)に示すように遮音パネルP1を持ち上げた状態で養生幕材105を車線内側へと引き込んだのち、図15(b)に示すように養生幕材105が遮音パネルP1と遮音パネルP2とに挟まれる。養生幕材105の下端には、遮音パネルP2のルーバー部分に差し込まれる差込材145が取り付けられていることが好ましい。また例えば、図15(c)に示すように、養生幕材105は、その下端部が遮音パネルP2と遮音パネルP3とに挟まれてもよい。なお、一番下の遮音パネルP4の荷吊り作業時、養生幕材105は、その下端がH型支柱98に固定されてよいし、車線内側において固定されてもよい。
【0074】
・上記実施形態においては、養生張出材101を伸縮可能とした。これに限らず、養生張出材101は、その長さが固定されていてもよい。
・上記実施形態の作業システムでは、遮音壁を構成する遮音パネルを荷材とした。これに限らず、荷吊り対象に対する移動体の反対側への資材の飛散を防止することを目的としていればよく、荷材は遮音パネルに限られない。
【0075】
・養生幕材105は、荷吊りユニット25に支持された養生張出材101から垂下していればよい。そのため、荷吊りユニット25は、荷材の側方に設置されればよく、移動体10に設置されていなくともよい。
【符号の説明】
【0076】
P1,P2,P3,P4…荷材としての遮音パネル、10…移動体、11…車体フレーム、12…キャブ、13…荷台、14…操舵輪、15…駆動輪、25…荷吊りユニット、30…枠体、31…支柱、31A…下側支柱部、31B…上側支柱部、31C…連結フレーム、32…下部フレーム体、33…上部フレーム体、34…ビーム、35…ジャッキ、36…前側下部フレーム、37…後側下部フレーム、38…右側下部フレーム、40…足場プレート、41…ヒンジ、45…走行レール、46…前側上部フレーム、47…後側上部フレーム、48…中央上部フレーム、49…シャックル、51…前側クロスバー、52…後側クロスバー、55…吊り下げ機構、56…荷吊り用プレーントロリ、56…プレーントロリ、57…天秤フレーム、58…吊り具、61…上側プレーントロリ、62…下側プレーントロリ、62…プレーントロリ、63…プレート、64…連結軸、65…ローラ、68…プレート、69…連結軸、70…ローラ、71…接続部材、71A…上側接続部、71B…下側接続部、74…ストッパ、75…ロック機構、90…リフタ、91…リフタベース、92…リフタ本体、93…伸縮フレーム、95…道路、96…地覆部、97…遮音壁、98…H型支柱、100…養生ユニット、101…養生張出材、102…第1アーム材、103…第2アーム材、105…養生幕材、106…巻回機構、108…上側幕材、109…下側幕材、110…閉塞材、111…仮固定材、115…係止機構、116…係止用金物、117…連結具、121…挿入部、122…接続部、123…差込部、125…紐状体、130…中間幕材、131…着脱機構、135…収納機構、136…回転軸材、140…介錯ロープ、141…引き込み具、145…差込材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図15