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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129527
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】電気化学反応セルスタック
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/2484 20160101AFI20240919BHJP
   H01M 8/2483 20160101ALI20240919BHJP
   H01M 8/12 20160101ALI20240919BHJP
   H01M 8/2465 20160101ALI20240919BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20240919BHJP
【FI】
H01M8/2484
H01M8/2483
H01M8/12 101
H01M8/12 102A
H01M8/2465
H01M8/10 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038806
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】519322392
【氏名又は名称】森村SOFCテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】弁理士法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤木 陽祐
【テーマコード(参考)】
5H126
【Fターム(参考)】
5H126AA22
5H126AA23
5H126AA26
5H126BB06
5H126EE11
5H126EE13
5H126JJ02
(57)【要約】
【課題】電気化学反応セルスタックのガス流路の内圧の調整にかかるコストを低減する。
【解決手段】電気化学反応セルスタックは、複数の電気化学反応単位が第1の方向に並べて配置された電気化学反応ブロックと、電気化学反応ブロックを挟んで第1の方向に互いに対向する一対のエンド部材とを備え、空気極と燃料極との一方である特定電極に面するガス流路にガスを供給する第1のマニホールドと、特定電極に面するガス流路からガスを排出する第2のマニホールドとが形成され、さらに、一対のエンド部材の少なくとも一方である特定エンド部材に接続され、第1のマニホールドに連通する第1のガス貫通孔が形成された第1のガス通路部材と、特定エンド部材に接続され、第2のマニホールドに連通する第2のガス貫通孔が形成された第2のガス通路部材とを備える。第2のガス貫通孔における最小断面積は、第1のガス貫通孔における最小断面積よりも小さい。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質層と、前記電解質層を挟んで互いに対向する空気極および燃料極と、を含む単セルをそれぞれ有する複数の電気化学反応単位が第1の方向に並べて配置された電気化学反応ブロックと、
前記電気化学反応ブロックを挟んで前記第1の方向に互いに対向する一対のエンド部材であって、前記一対のエンド部材のうちの少なくとも一方である特定エンド部材に、前記第1の方向に貫通する第1のエンド貫通孔および第2のエンド貫通孔が形成された一対のエンド部材と、
を備え、各前記電気化学反応単位における前記空気極と前記燃料極との一方である特定電極に面するガス流路にガスを供給する第1のマニホールドであって、前記第1のエンド貫通孔を含む第1のマニホールドと、前記特定電極に面する前記ガス流路からガスを排出する第2のマニホールドであって、前記第2のエンド貫通孔を含む第2のマニホールドと、が形成された電気化学反応セルスタックであって、さらに、
前記特定エンド部材に接続され、前記第1のマニホールドに連通し、前記電気化学反応ブロックにガスを供給する第1のガス貫通孔が形成された第1のガス通路部材と、
前記特定エンド部材に接続され、前記第2のマニホールドに連通し、前記電気化学反応ブロックからガスを排出する第2のガス貫通孔が形成された第2のガス通路部材と、
を備える電気化学反応セルスタックにおいて、
前記第2のガス貫通孔における最小断面積は、前記第1のガス貫通孔における最小断面積よりも小さい、
ことを特徴とする、電気化学反応セルスタック。
【請求項2】
請求項1に記載の電気化学反応セルスタックにおいて、
前記第2のガス貫通孔における最小断面積は、前記第2のマニホールドにおける最小断面積よりも小さい、
ことを特徴とする、電気化学反応セルスタック。
【請求項3】
請求項2に記載の電気化学反応セルスタックにおいて、
前記特定電極は、前記空気極である、
ことを特徴とする、電気化学反応セルスタック。
【請求項4】
請求項2に記載の電気化学反応セルスタックにおいて、
前記特定電極は、前記燃料極である、
ことを特徴とする、電気化学反応セルスタック。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の電気化学反応セルスタックにおいて、
前記特定エンド部材は、前記第1の方向に貫通する第3のエンド貫通孔および第4のエンド貫通孔が形成され、
各前記電気化学反応単位における前記空気極と前記燃料極との他方である他の特定電極に面するガス流路にガスを供給する第3のマニホールドであって、前記第3のエンド貫通孔を含む第3のマニホールドと、前記他の特定電極に面する前記ガス流路からガスを排出する第4のマニホールドであって、前記第4のエンド貫通孔を含む第4のマニホールドと、が形成され、
前記電気化学反応セルスタックは、さらに、
前記特定エンド部材に接続され、前記第3のマニホールドに連通し、前記電気化学反応ブロックにガスを供給する第3のガス貫通孔が形成された第3のガス通路部材と、
前記特定エンド部材に接続され、前記第4のマニホールドに連通し、前記電気化学反応ブロックからガスを排出する第4のガス貫通孔が形成された第4のガス通路部材と、
を備え、
前記第2のガス貫通孔と前記第4のガス貫通孔とは、最小断面積が異なる、
ことを特徴とする、電気化学反応セルスタック。
【請求項6】
請求項5に記載の電気化学反応セルスタックにおいて、
前記第2のガス通路部材および前記第4のガス通路部材は、フランジ孔が形成されたフランジ部をそれぞれ有し、
前記第2のガス貫通孔は、前記フランジ孔を含み、
前記フランジ孔は、前記第2のガス貫通孔において最小断面積を形成する、
ことを特徴とする、電気化学反応セルスタック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術は、電気化学反応セルスタックに関する。
【背景技術】
【0002】
水素と酸素との電気化学反応を利用して発電を行う燃料電池の種類の1つとして、固体酸化物形の燃料電池(以下、「SOFC」という。)が知られている。SOFCの構成単位である燃料電池単セル(以下、単に「単セル」という。)は、電解質層と、電解質層を挟んで互いに対向する空気極および燃料極とを含む。
【0003】
SOFCは、単セルを有する複数の発電単位が所定の方向(以下、「第1の方向」という。)に並べて配置された発電ブロックと、発電ブロックに対して第1の方向の一方側に配置され、第1の方向に貫通するエンド貫通孔が形成されたエンド部材とを備える燃料電池スタックの形態で利用される。燃料電池スタックは、空気極と燃料極との一方である特定電極に面するガス室に連通するマニホールドであって、エンド貫通孔を含むマニホールドが形成される。燃料電池スタックは、さらに、エンド部材に対して第1の方向の上記一方側に接続され、第1の方向に貫通し、かつ、エンド貫通孔に連通するガス貫通孔が形成されたガス通路部材を備える(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-73494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発電反応に用いられるガスが燃料電池スタックに供給されると、燃料電池スタック内のガス流路に内圧が生じる。このとき、例えば、供給するガスの流量や作動温度、発電ブロックを構成する部材の厚みの製造誤差等によって、同一の製造方法で製造された燃料電池スタックであっても、機種によって内圧が変わるおそれがある。このような場合、発電反応に好適な内圧に調整する必要があるが、個々の機種に応じて発電ブロックを構成する部材またはエンド部材の仕様を変更することは、コスト面等で課題がある。
【0006】
なお、このような課題は、例えば、水の電気分解反応を利用して水素を生成する電解単セル(以下、「SOEC」という。)にも共通の課題である。なお、本明細書では、燃料電池単セルと電解単セルとをまとめて電気化学反応単セルと呼び、燃料電池発電単位と電解セル単位とをまとめて電気化学反応単位と呼び、発電ブロックと電解ブロックとをまとめて電気化学反応ブロックと呼び、燃料電池スタックと電解セルスタックとをまとめて電気化学反応セルスタックと呼ぶ。また、このような課題は、SOFCやSOECに限らず、他のタイプの電気化学反応セルスタック等の種々の電気化学反応装置にも共通の課題である。
【0007】
本明細書では、上述した課題を解決することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書に開示される技術は、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【0009】
(1)本明細書に開示される電気化学反応セルスタックは、電気化学反応ブロックと、一対のエンド部材と、を備える。前記電気化学反応ブロックは、電解質層と、前記電解質層を挟んで互いに対向する空気極および燃料極と、を含む単セルをそれぞれ有する複数の電気化学反応単位が第1の方向に並べて配置されている。前記一対のエンド部材は、前記電気化学反応ブロックを挟んで前記第1の方向に互いに対向し、前記一対のエンド部材のうちの少なくとも一方である特定エンド部材に、前記第1の方向に貫通する第1のエンド貫通孔および第2のエンド貫通孔が形成されている。前記電気化学反応セルスタックは、各前記電気化学反応単位における前記空気極と前記燃料極との一方である特定電極に面するガス流路にガスを供給する第1のマニホールドであって、前記第1のエンド貫通孔を含む第1のマニホールドと、前記特定電極に面する前記ガス流路からガスを排出する第2のマニホールドであって、前記第2のエンド貫通孔を含む第2のマニホールドと、が形成されている。前記電気化学反応セルスタックは、さらに、前記特定エンド部材に接続され、前記第1のマニホールドに連通し、前記電気化学反応ブロックにガスを供給する第1のガス貫通孔が形成された第1のガス通路部材と、前記特定エンド部材に接続され、前記第2のマニホールドに連通し、前記電気化学反応ブロックからガスを排出する第2のガス貫通孔が形成された第2のガス通路部材と、を備える。前記第2のガス貫通孔における最小断面積は、前記第1のガス貫通孔における最小断面積よりも小さい。
【0010】
電気化学反応セルスタックにガスが供給されると、電気化学反応セルスタック内のガス流路に内圧が生じる。このとき、例えば、供給するガスの流量や作動温度、電気化学反応ブロックを構成する部材の厚みの製造誤差等によって、同一の製造方法で製造された電気化学反応セルスタックであっても、機種によって内圧が変わるおそれがある。このような場合、電気化学反応に好適な内圧に調整する必要があるが、個々の機種に応じて電気化学反応ブロックを構成する部材またはエンド部材の仕様を変更することは、コスト面等で課題がある。本電気化学反応セルスタックによれば、特定電極に供給されるガスが流れる一連のガス流路において、エンド部材に接続され、電気化学反応ブロックからガスを排出する第2のガス貫通孔の最小断面積は、エンド部材に接続され、電気化学反応ブロックにガスを供給する第1のガス貫通孔の最小断面積よりも小さい。これにより、電気化学反応ブロックまたはエンド部材の仕様を変更せずとも、特定電極に供給されるガスが流れる一連のガス流路のうちの一部の断面積を狭めることができ、圧力損失を増大させることによって、特定電極に供給されるガスが流れる一連のガス流路の内圧を高くすることができる。そのため、電気化学反応セルスタックにおけるガス流路の内圧の調整にかかるコストを低減することができる。
【0011】
(2)上記電気化学反応セルスタックにおいて、前記第2のガス貫通孔における最小断面積は、前記第2のマニホールドにおける最小断面積よりも小さい構成としてもよい。本構成によれば、第2のガス貫通孔における最小断面積が、第2のマニホールドにおける最小断面積よりも小さいため、電気化学反応ブロックおよびエンド部材に含まれる第2のマニホールドの仕様を変更せずとも、第2のガス貫通孔の仕様によって特定電極に供給されるガスが流れる一連のガス流路の内圧を高くすることができる。そのため、電気化学反応セルスタックにおけるガス流路の内圧の調整にかかるコストをより効果的に低減することができる。
【0012】
(3)上記電気化学反応セルスタックにおいて、前記特定電極は、前記空気極である構成としてもよい。電気化学反応セルスタックにガスが供給されると、電気化学反応セルスタック内のガス流路に内圧が生じる。このとき、電気化学反応セルスタックの使用環境によっては、空気極および燃料極のそれぞれに供給されるガスが流れる一連のガス流路に圧力差が生じ、空気極に供給されるガスが流れる一連のガス流路の内圧が、燃料極に供給されるガスが流れる一連のガス流路の内圧よりも低くなることがある。圧力差が一定の値を超えた場合、圧力差によって単セルが破損するおそれがある。本構成によれば、空気極に供給されるガスが流れる一連のガス流路において、第2のガス貫通孔の最小断面積は、第1のガス貫通孔の最小断面積よりも小さい。これにより、電気化学反応ブロックまたはエンド部材の仕様を変更せずとも、空気極に供給されるガスが流れる一連のガス流路のうちの一部の断面積を狭めることができ、圧力損失を増大させることによって、空気極に供給されるガスが流れる一連のガス流路の内圧を高くすることができる。そのため、電気化学反応セルスタックにおける空気極および燃料極のそれぞれに供給されるガスが流れる一連のガス流路の圧力差の調整にかかるコストを低減することができる。
【0013】
(4)上記電気化学反応セルスタックにおいて、前記特定電極は、前記燃料極である構成としてもよい。電気化学反応セルスタックにガスが供給されると、電気化学反応セルスタック内のガス流路に内圧が生じる。このとき、電気化学反応セルスタックの使用環境によっては、空気極および燃料極のそれぞれに供給されるガスのガス流路に圧力差が生じ、燃料極に供給されるガスが流れる一連のガス流路の内圧が、空気極に供給されるガスが流れる一連のガス流路の内圧よりも低くなることがある。圧力差が一定の値を超えた場合、圧力差によって単セルが破損するおそれがある。本構成によれば、燃料極に供給されるガスが流れる一連のガス流路において、第2のガス貫通孔の最小断面積は、第1のガス貫通孔の最小断面積よりも小さい。これにより、電気化学反応ブロックまたはエンド部材の仕様を変更せずとも、燃料極に供給されるガスが流れる一連のガス流路のうちの一部の断面積を狭めることができ、圧力損失を増大させることによって、燃料極に供給されるガスが流れる一連のガス流路の内圧を高くすることができる。そのため、電気化学反応セルスタックにおける空気極および燃料極のそれぞれに供給されるガスが流れる一連のガス流路の圧力差の調整にかかるコストを低減することができる。
【0014】
(5)上記電気化学反応セルスタックにおいて、前記特定エンド部材は、前記第1の方向に貫通する第3のエンド貫通孔および第4のエンド貫通孔が形成され、各前記電気化学反応単位における前記空気極と前記燃料極との他方である他の特定電極に面するガス流路にガスを供給する第3のマニホールドであって、前記第3のエンド貫通孔を含む第3のマニホールドと、前記他の特定電極に面する前記ガス流路からガスを排出する第4のマニホールドであって、前記第4のエンド貫通孔を含む第4のマニホールドと、が形成され、前記電気化学反応セルスタックは、さらに、前記特定エンド部材に接続され、前記第3のマニホールドに連通し、前記電気化学反応ブロックにガスを供給する第3のガス貫通孔が形成された第3のガス通路部材と、前記特定エンド部材に接続され、前記第4のマニホールドに連通し、前記電気化学反応ブロックからガスを排出する第4のガス貫通孔が形成された第4のガス通路部材と、を備え、前記第2のガス貫通孔と前記第4のガス貫通孔とは、最小断面積が異なる構成としてもよい。
【0015】
本構成によれば、特定電極に面する流路から排出されるガスのガス流路である第2のガス貫通孔と、他の特定電極に面する流路から排出されるガスのガス流路である第4のガス貫通孔とで、最小断面積を変えることにより、電気化学反応セルスタックにおけるガス流路の内圧の調整をより確実に行うことができる。
【0016】
(6)上記電気化学反応セルスタックにおいて、前記第2のガス通路部材および前記第4のガス通路部材は、フランジ孔が形成されたフランジ部をそれぞれ有し、前記第2のガス貫通孔は、前記フランジ孔を含み、前記フランジ孔は、前記第2のガス貫通孔において最小断面積を形成する構成としてもよい。本構成によれば、第2のガス通路部材および第4のガス通路部材がフランジ部を有し、フランジ部に形成されたフランジ孔が第2のガス貫通孔に含まれ、フランジ孔が第2のガス貫通孔における最小断面積を形成する。そのため、第2のガス通路部材のうち、フランジ部の仕様の変更のみによって一連のガス流路のうちの一部の断面積を狭めることができ、圧力損失を増大させることによって、特定電極に供給されるガスが流れる一連のガス流路の内圧を高くすることができる。そのため、電気化学反応セルスタックにおけるガス流路の内圧の調整にかかるコストをより効果的に低減することができる。
【0017】
なお、本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、電気化学反応セルスタック(燃料電池スタックまたは電解セルスタック)やその製造方法等の形態で実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1実施形態における燃料電池スタック100の外観構成を示す斜視図
図2図1のII-IIの位置における燃料電池スタック100のXZ断面構成を示す説明図
図3図1のIII-IIIの位置における燃料電池スタック100のXZ断面構成を示す説明図
図4図1のIV-IVの位置における燃料電池スタック100のYZ断面構成を示す説明図
図5図2に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のXZ断面構成を示す説明図
図6図3に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のXZ断面構成を示す説明図
図7図4に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のYZ断面構成を示す説明図
図8】ガス通路部材310A~310Dの構成を示す斜視図
図9】第2実施形態における燃料電池スタック100aの外観構成を示す斜視図
図10図9のX-Xの位置における燃料電池スタック100aのXZ断面構成を示す説明図
図11図9のXI-XIの位置における燃料電池スタック100aのXZ断面構成を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0019】
A.第1実施形態:
A-1.燃料電池スタック100の構成:
図1は、第1実施形態における燃料電池スタック100の外観構成を示す斜視図であり、図2は、図1のII-IIの位置における燃料電池スタック100のXZ断面構成を示す説明図であり、図3は、図1のIII-IIIの位置における燃料電池スタック100のXZ断面構成を示す説明図であり、図4は、図1のIV-IVの位置における燃料電池スタック100のYZ断面構成を示す説明図である。各図には、方向を特定するための互いに直交するXYZ軸が示されている。本明細書では、便宜的に、Z軸正方向を上方向と呼び、Z軸負方向を下方向と呼ぶものとするが、燃料電池スタック100は、実際にはそのような向きとは異なる向きで設置されてもよい。燃料電池スタック100は、特許請求の範囲における電気化学反応セルスタックの一例である。
【0020】
燃料電池スタック100は、複数の(本実施形態では7つの)燃料電池発電単位(以下、単に「発電単位」という。)102と、一対のターミナルプレート410,420と、一対の電流線414,424と、末端セパレータ210と、下端プレート189と、絶縁部200と、上端プレート220と、一対のエンドプレート104,106とを備える。発電単位102は、特許請求の範囲における電気化学反応単位の一例である。
【0021】
7つの発電単位102は、所定の配列方向(本実施形態では上下方向)に並べて配置されている。一対のターミナルプレート410,420のうちの一方(以下、「上側ターミナルプレート410」という。)は、7つの発電単位102から構成される集合体(以下、「発電ブロック103」という。)の上側に配置されており、一対のターミナルプレート410,420のうちの他方(以下、「下側ターミナルプレート420」という。)は、発電ブロック103の下側に配置されている。末端セパレータ210は、上側ターミナルプレート410の上側に配置されており、下端プレート189は、下側ターミナルプレート420の下側に配置されている。絶縁部200は、末端セパレータ210の上側に配置されている。一対のエンドプレート104,106のうちの一方(以下、「上側エンドプレート104」という。)は、絶縁部200の上側に配置されており、一対のエンドプレート104,106のうちの他方(以下、「下側エンドプレート106」という。)は、下端プレート189の下側に配置されている。一対のエンドプレート104,106は、発電ブロック103と、ターミナルプレート410,420と、末端セパレータ210と、下端プレート189と、絶縁部200とを上下から挟むように配置されている。発電ブロック103は、特許請求の範囲における電気化学反応ブロックの一例である。エンドプレート104,106は、特許請求の範囲における一対のエンド部材の一例である。下側エンドプレート106は、特許請求の範囲における特定エンド部材の一例である。上記所定の配列方向(上下方向)は、特許請求の範囲における第1の方向に相当する。
【0022】
図1および図4に示すように、燃料電池スタック100を構成する各層(発電ブロック103、ターミナルプレート410,420、末端セパレータ210、下端プレート189、絶縁部200、および、エンドプレート104,106)のZ軸方向回りの外周の4つの角部付近には、各層を上下方向に貫通する孔が形成されている。これらの各層に形成された互いに対応する孔同士が上下方向に連通して、上下方向に延びるボルト孔109を構成している。以下の説明では、ボルト孔109を構成するために燃料電池スタック100の各層に形成された孔も、ボルト孔109と呼ぶ場合がある。
【0023】
各ボルト孔109にはボルト22が挿入されている。各ボルト22の上端部は、上側エンドプレート104の孔を介してナット24のネジ孔に螺合しており、各ボルト22の下端部は、下側エンドプレート106の孔を介してナット24のネジ孔に螺合している。このような構成のボルト22およびナット24により、燃料電池スタック100の各層が一体に締結されている。
【0024】
また、図1から図3に示すように、燃料電池スタック100を構成する各層(各発電単位102、下側ターミナルプレート420、下端プレート189、下側エンドプレート106)のZ軸方向回りの周縁部には、各層を上下方向に貫通する4つの孔が形成されており、各層に形成された互いに対応する孔同士が上下方向に連通して、最上部の発電単位102から下側エンドプレート106にわたって上下方向に延びる連通孔108を構成している。以下の説明では、連通孔108を構成するために燃料電池スタック100の各層に形成された孔も、連通孔108と呼ぶ場合がある。なお、以下、連通孔108のうち、下側エンドプレート106に形成された孔を、特にエンド貫通孔107という。
【0025】
図1および図2に示すように、燃料電池スタック100のZ軸方向回りの外周を構成する1つの辺(Y軸に平行な2つの辺の内のX軸正方向側の辺)の付近に位置する1つの連通孔108は、燃料電池スタック100の外部から酸化剤ガスOGが導入され、その酸化剤ガスOGを各発電単位102の後述する空気室166に供給するガス流路である空気極側ガス供給マニホールド161として機能し、該辺の反対側の辺の付近に位置する1つの連通孔108は、各発電単位102の空気室166から排出されたガスである酸化剤オフガスOOGを燃料電池スタック100の外部へ排出するガス流路である空気極側ガス排出マニホールド162として機能する。なお、酸化剤ガスOGとしては、例えば空気が使用される。空気極側ガス供給マニホールド161は、特許請求の範囲における第3のマニホールドないし第1のマニホールドの一例である。空気極側ガス排出マニホールド162は、特許請求の範囲における第4のマニホールドないし第2のマニホールドの一例である。
【0026】
また、図1および図3に示すように、燃料電池スタック100のZ軸方向回りの外周を構成する辺の内、上述した空気極側ガス供給マニホールド161として機能する連通孔108に最も近い辺の付近に位置する他の1つの連通孔108は、燃料電池スタック100の外部から燃料ガスFGが導入され、その燃料ガスFGを各発電単位102の後述する燃料室176に供給するガス流路である燃料極側ガス供給マニホールド171として機能し、上述した空気極側ガス排出マニホールド162として機能する連通孔108に最も近い辺の付近に位置する他の1つの連通孔108は、各発電単位102の燃料室176から排出されたガスである燃料オフガスFOGを燃料電池スタック100の外部へ排出するガス流路である燃料極側ガス排出マニホールド172として機能する。なお、燃料ガスFGとしては、例えば都市ガスを改質した水素リッチなガスが使用される。燃料極側ガス供給マニホールド171は、特許請求の範囲における第1のマニホールドないし第3のマニホールドの一例である。燃料極側ガス排出マニホールド172は、特許請求の範囲における第2のマニホールドないし第4のマニホールドの一例である。
【0027】
図1から図3に示すように、燃料電池スタック100には、4つのガス通路部材310A~310Dが設けられている。ガス通路部材310A~310Dは、それぞれ、中空筒状の本体部320A~320Dと、フランジ部330A~330Dとを有している。本体部320A~320Dとフランジ部330A~330Dとは、例えば溶接により互いに接合されている。ガス通路部材310A~310Dには、各種ガスの流路であるガス貫通孔340A~340Dが形成されており、発電ブロック103に各種ガスを供給し、または、発電ブロック103から各種ガスを排出する。フランジ部330A~330Dは、本体部320A~320Dの下端側から上下方向に垂直な面方向に張り出すように設けられている。フランジ部330A~330Dの上下方向視での外形は略矩形状であり、フランジ部330A~330Dの4つの角部のそれぞれには、ボルト孔29(図1等参照)が形成されている。各ボルト孔29には、燃料電池スタック100を外部装置に接続するためのボルト(図示せず)が挿入される。なお、本明細書における「ガス通路部材」とは、ガス流路が形成された部材であって、実質的に下側エンドプレート106に直接接続される部材を意味する。すなわち、燃料電池スタック100が、例えば、燃焼器や改質器等の補助器と接続され、燃料電池モジュール等における構成要素の1つとして利用される形態においては、ガス通路部材310A~310Dに接続された補助器側の配管は、ガス通路部材には含まれない。ガス通路部材310A~310Dの詳細な構成については後述する。
【0028】
(エンドプレート104,106の構成)
一対のエンドプレート104,106は、Z軸方向視での外形が略矩形の平板状の部材であり、例えば金属により形成されている。一対のエンドプレート104,106の中央付近には、それぞれ、Z軸方向に貫通する孔32,34が形成されている。Z軸方向視で、一対のエンドプレート104,106のそれぞれに形成された孔32,34の内周線は、後述する各単セル110の少なくとも一部を内包している。各ボルト22および各ナット24による締結によって生じるZ軸方向の圧縮力は、主として各発電単位102の周縁部(後述する各単セル110より外周側の部分)に作用する。
【0029】
(ターミナルプレート410,420および電流線414,424の構成)
一対のターミナルプレート410,420は、Z軸方向視での外形が略矩形の平板状の部材であり、導電材料により形成されている。上側ターミナルプレート410の中央付近には、Z軸方向に貫通する孔412が形成されている。Z軸方向視で、上側ターミナルプレート410に形成された孔412の内周線は、後述する各単セル110の少なくとも一部を内包している。Z軸方向視で、一対のターミナルプレート410,420のそれぞれの一方側の端部は、発電ブロック103から側方に張り出している。ターミナルプレート410,420のそれぞれの上面には、溶接部415,425を介して電流線414,424が接続されている。電流線414,424は、平板状の部材であり、導電材料により形成されている。電流線414,424のうち、上側にある上側電流線414は、燃料電池スタック100のプラス側の出力端子として機能し、下側にある下側電流線424は、燃料電池スタック100のマイナス側の出力端子として機能する。
【0030】
(上端プレート220の構成)
上端プレート220は、Z軸方向視での外形が略矩形の平板状の部材であり、導電材料により形成されている。上端プレート220は、発電ブロック103の上側に配置されており、発電ブロック103における上端に位置するインターコネクタ190(後述)に電気的に接続されている。本実施形態では、上端プレート220とインターコネクタ190とは、後述の燃料極側集電部材144と同一構造の接続部材を介して電気的に接続されている。
【0031】
(末端セパレータ210の構成)
末端セパレータ210は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の貫通孔211が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、金属により形成されている。末端セパレータ210における貫通孔211を取り囲む部分(以下、「貫通孔周囲部」という。)は、上端プレート220の周囲部における上側の表面に例えば溶接により接合されている。末端セパレータ210は、上端プレート220と発電ブロック103との間の空間と燃料電池スタック100の外部空間とを区画する。
【0032】
末端セパレータ210は、末端セパレータ210の貫通孔周囲部を含む内側部216と、内側部216より外周側に位置する外側部217と、内側部216と外側部217とを連結する連結部218とを備える。本実施形態では、内側部216および外側部217は、Z軸方向に略直交する方向に延びる略平板状である。また、連結部218は、内側部216と外側部217との両方に対して下側に突出するように湾曲した形状である。すなわち、連結部218は、下側に凸、かつ、上側に凹な形状である。連結部218は、Z軸方向における位置が内側部216および外側部217とは異なる部分を含んでいる。
【0033】
(下端プレート189の構成)
下端プレート189は、Z軸方向視での外形が略矩形の平板状の部材であり、例えば絶縁材料により形成されている。下端プレート189の周縁部は、下側ターミナルプレート420と下側エンドプレート106との間に挟み込まれており、これにより、下側ターミナルプレート420と下側エンドプレート106との絶縁性が確保されている。
【0034】
(絶縁部200の構成)
絶縁部200は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の貫通孔が形成されたフレーム状の部材であり、例えば絶縁材料により形成されている。絶縁部200は、上側エンドプレート104と末端セパレータ210との間に挟み込まれており、これにより、上側エンドプレート104と末端セパレータ210との絶縁性が確保されている。
【0035】
(発電単位102の構成)
図5は、図2に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のXZ断面構成を示す説明図であり、図6は、図3に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のXZ断面構成を示す説明図であり、図7は、図4に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のYZ断面構成を示す説明図である。
【0036】
図5から図7に示すように、発電単位102は、燃料電池単セル(以下、「単セル」という。)110と、単セル用セパレータ120と、空気極側フレーム130と、燃料極側フレーム140と、燃料極側集電部材144と、発電単位102の最上層および最下層を構成する一対のインターコネクタ190および一対のIC用セパレータ180とを備えている。単セル用セパレータ120、空気極側フレーム130、燃料極側フレーム140、IC用セパレータ180におけるZ軸方向回りの周縁部には、各マニホールド161,162,171,172として機能する各連通孔108を構成する孔と、各ボルト孔109を構成する孔とが形成されている。
【0037】
単セル110は、電解質層112と、電解質層112の上側に配置された空気極114と、電解質層112の下側に配置された燃料極116と、電解質層112と空気極114との間に配置された反応防止層118とを備える。なお、本実施形態の単セル110は、燃料極116で単セル110を構成する他の層(電解質層112、空気極114、反応防止層118)を支持する燃料極支持型の単セルである。
【0038】
電解質層112は、Z軸方向視で略矩形の平板状の部材であり、固体酸化物(例えば、YSZ(イットリア安定化ジルコニア))を含むように構成されている。すなわち、本実施形態の単セル110は、電解質として固体酸化物を用いる固体酸化物形燃料電池(SOFC)である。空気極114は、Z軸方向視で電解質層112より小さい略矩形の平板状の部材であり、例えばペロブスカイト型酸化物(例えば、LSCF(ランタンストロンチウムコバルト鉄酸化物))を含むように構成されている。燃料極116は、Z軸方向視で電解質層112と略同じ大きさの略矩形の平板状の部材であり、例えば、Ni(ニッケル)、Niとセラミック粒子からなるサーメット、Ni基合金等により形成されている。反応防止層118は、Z軸方向視で空気極114と略同じ大きさの略矩形の平板状の部材であり、例えばGDC(ガドリニウムドープセリア)を含むように構成されている。反応防止層118は、空気極114から拡散した元素(例えば、Sr)が電解質層112に含まれる元素(例えば、Zr)と反応して高抵抗な物質(例えば、SrZrO)が生成されることを抑制する機能を有する。燃料極116は、特許請求の範囲における特定電極ないし他の特定電極の一例である。空気極114は、特許請求の範囲における他の特定電極ないし特定電極の一例である。
【0039】
単セル用セパレータ120は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の貫通孔121が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、金属により形成されている。単セル用セパレータ120における貫通孔121を取り囲む部分(以下、「貫通孔周囲部」という。)は、単セル110(電解質層112)の周縁部における上側の表面に対向している。単セル用セパレータ120は、その対向した部分に配置されたロウ材(例えばAgロウ)により形成された接合部124により、単セル110と接合されている。単セル用セパレータ120により、空気極114に面する空気室166と燃料極116に面する燃料室176とが区画される。
【0040】
単セル用セパレータ120は、単セル用セパレータ120の貫通孔周囲部を含む内側部126と、内側部126より外周側に位置する外側部127と、内側部126と外側部127とを連結する連結部128とを備える。本実施形態では、内側部126および外側部127は、Z軸方向に略直交する方向に延びる略平板状である。また、連結部128は、内側部126と外側部127との両方に対して下側に突出するように湾曲した形状である。すなわち、連結部128は、下側に凸、かつ、上側に凹な形状である。換言すれば、連結部128は、単セル用セパレータ120により区画される空気室166および燃料室176のうちの空気室166側に凹な形状である。連結部128は、Z軸方向における位置が内側部126および外側部127とは異なる部分を含んでいる。
【0041】
単セル用セパレータ120における貫通孔121付近には、ガラスを含むガラスシール部125が配置されている。ガラスシール部125は、接合部124に対して空気室166側に位置しており、単セル用セパレータ120の貫通孔周囲部の表面と、単セル110(本実施形態では電解質層112)の表面との両方に接触するように形成されている。ガラスシール部125により、単セル110の周縁部における一方の電極側から他方の電極側へのガスのリーク(クロスリーク)が効果的に抑制される。
【0042】
インターコネクタ190は、略矩形の平板状の平板部150と、平板部150から空気極114側に突出した複数の略柱状の空気極側集電部134とを有する導電性の部材であり、金属(例えば、フェライト系ステンレス)により形成されている。本実施形態では、インターコネクタ190の表面(空気室166に面する表面)に、例えばスピネル型酸化物により構成された導電性の被覆層194が形成されている。以下では、被覆層194に覆われたインターコネクタ190を、単にインターコネクタ190という。インターコネクタ190の各空気極側集電部134は、例えばスピネル型酸化物により構成された導電性接合材196を介して、単セル110の空気極114に接合されており、これにより単セル110の空気極114に電気的に接続されている。インターコネクタ190は、発電単位102間の電気的導通を確保するとともに、発電単位102間での反応ガスの混合を抑制する。なお、本実施形態では、2つの発電単位102が隣接して配置されている場合、1つのインターコネクタ190は、隣接する2つの発電単位102に共有されている。すなわち、ある発電単位102における上側のインターコネクタ190は、その発電単位102の上側に隣接する他の発電単位102における下側のインターコネクタ190と同一部材である。また、燃料電池スタック100は下側ターミナルプレート420および下端プレート189を備えているため、燃料電池スタック100において最も下側に位置する発電単位102は下側のインターコネクタ190を備えていない(図2から図4参照)。
【0043】
IC用セパレータ180は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の貫通孔181が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、金属により形成されている。IC用セパレータ180における貫通孔181を取り囲む部分(以下、「貫通孔周囲部」という。)は、インターコネクタ190の平板部150の周縁部における上側の表面に例えば溶接により接合されている。ある発電単位102に含まれる一対のIC用セパレータ180のうち、上側のIC用セパレータ180は、該発電単位102の空気室166と、該発電単位102に対して上側に隣り合う他の発電単位102の燃料室176とを区画する。また、ある発電単位102に含まれる一対のIC用セパレータ180のうち、下側のIC用セパレータ180は、該発電単位102の燃料室176と、該発電単位102に対して下側に隣り合う他の発電単位102の空気室166とを区画する。このように、IC用セパレータ180により、発電単位102の周縁部における発電単位102間のガスのリークが抑制される。なお、燃料電池スタック100において最も上側に位置する発電単位102の上側のインターコネクタ190に接合されたIC用セパレータ180は、上側ターミナルプレート410に電気的に接続されている。
【0044】
IC用セパレータ180は、IC用セパレータ180の貫通孔周囲部を含む内側部186と、内側部186より外周側に位置する外側部187と、内側部186と外側部187とを連結する連結部188とを備える。本実施形態では、内側部186および外側部187は、Z軸方向に略直交する方向に延びる略平板状である。また、連結部188は、内側部186と外側部187との両方に対して下側に突出するように湾曲した形状である。すなわち、連結部188は、下側に凸、かつ、上側に凹な形状である。連結部188は、Z軸方向における位置が内側部186および外側部187とは異なる部分を含んでいる。
【0045】
空気極側フレーム130は、中央付近にZ軸方向に貫通する略矩形の孔131が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、マイカ等の絶縁体により形成されている。空気極側フレーム130の孔131は、空気極114に面する空気室166を画定する。空気極側フレーム130は、単セル用セパレータ120の周縁部における上側の表面と、上側のIC用セパレータ180の周縁部における下側の表面とに接触しており、両者の間のガスシール性(すなわち、空気室166のガスシール性)を確保するシール部材として機能する。また、空気極側フレーム130によって、発電単位102に含まれる一対のIC用セパレータ180の間(すなわち、一対のインターコネクタ190の間)が電気的に絶縁される。また、空気極側フレーム130には、空気極側ガス供給マニホールド161と空気室166とを連通する酸化剤ガス供給連通孔132と、空気室166と空気極側ガス排出マニホールド162とを連通する酸化剤ガス排出連通孔133とが形成されている。
【0046】
燃料極側フレーム140は、中央付近にZ軸方向に貫通する略矩形の孔141が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、金属により形成されている。燃料極側フレーム140の孔141は、燃料極116に面する燃料室176を画定する。燃料極側フレーム140は、単セル用セパレータ120の周縁部における下側の表面と、下側のIC用セパレータ180の周縁部における上側の表面とに接触している。また、燃料極側フレーム140には、燃料極側ガス供給マニホールド171と燃料室176とを連通する燃料ガス供給連通孔142と、燃料室176と燃料極側ガス排出マニホールド172とを連通する燃料ガス排出連通孔143とが形成されている。
【0047】
燃料極側集電部材144は、燃料室176内に配置されている。燃料極側集電部材144は、インターコネクタ対向部146と、電極対向部145と、電極対向部145とインターコネクタ対向部146とをつなぐ連接部147とを備えており、例えば、ニッケルやニッケル合金、ステンレス等により形成されている。電極対向部145は、燃料極116の下側の表面に接触しており、インターコネクタ対向部146は、インターコネクタ190の平板部150の上側の表面に接触している。ただし、上述したように、燃料電池スタック100において最も下側に位置する発電単位102は下側のインターコネクタ190を備えていないため、該発電単位102における燃料極側集電部材144のインターコネクタ対向部146は、下側ターミナルプレート420に接触している。燃料極側集電部材144は、このような構成であるため、燃料極116とインターコネクタ190(または下端プレート189)とを電気的に接続する。なお、燃料極側集電部材144の電極対向部145とインターコネクタ対向部146との間には、例えばマイカにより形成されたスペーサー149が配置されている。そのため、燃料極側集電部材144が温度サイクルや反応ガス圧力変動による発電単位102の変形に追随し、燃料極側集電部材144を介した燃料極116とインターコネクタ190(または下側ターミナルプレート420)との電気的接続が良好に維持される。燃料極側集電部材144は、例えば、平板状の材料(例えば、厚さ10~200μmのニッケル箔)に複数の矩形の切り込みを入れ、複数の矩形部分を曲げ起こしてスペーサー149を挟むように加工することにより作製される。曲げ起こされた各矩形部分が電極対向部145となり、曲げ起こされた部分以外の穴が開いた状態の平板部分がインターコネクタ対向部146となり、電極対向部145とインターコネクタ対向部146とをつなぐ部分が連接部147となる。
【0048】
A-2.ガス通路部材310A~310Dの詳細構成:
図8は、ガス通路部材310A~310Dの構成を示す斜視図である。ガス通路部材310A~310Dは、後に詳述するように、フランジ孔332A~332Dの孔径が異なるものの、それ以外の構成は概ね同一であるため、図8では、ガス通路部材310A~310Dのうち、ガス通路部材310Bの構成のみを示している。
【0049】
図3および図8に示すように、ガス通路部材310Bは、本体部320Bと、フランジ部330Bとを有している。ガス通路部材310Bには、上下方向に貫通するガス貫通孔340Bが形成されている。ガス貫通孔340Bは、本体部320Bに形成された上下方向に貫通する貫通孔である本体孔322Bと、フランジ部330Bに形成された上下方向に貫通する貫通孔であるフランジ孔332Bとを含んでいる。本体部320Bの上端は、燃料極側ガス排出マニホールド172に含まれるエンド貫通孔107(以下、「エンド貫通孔107B」という。)内に挿入され、例えば溶接により接合されている。すなわち、ガス貫通孔340Bは、燃料極側ガス排出マニホールド172に連通し、発電ブロック103から燃料オフガスFOGを排出する。ガス通路部材310Bは、特許請求の範囲における第2のガス通路部材の一例である。ガス貫通孔340Bは、特許請求の範囲における第2のガス貫通孔の一例である。エンド貫通孔107Bは、特許請求の範囲における第2のエンド貫通孔の一例である。
【0050】
また、図3および図8に示すように、ガス通路部材310Aは、本体部320Aと、フランジ部330Aとを有している。ガス通路部材310Aには、上下方向に貫通するガス貫通孔340Aが形成されている。ガス貫通孔340Aは、本体部320Aに形成された上下方向に貫通する貫通孔である本体孔322Aと、フランジ部330Aに形成された上下方向に貫通する貫通孔であるフランジ孔332Aとを含んでいる。本体部320Aの上端は、燃料極側ガス供給マニホールド171に含まれるエンド貫通孔107(以下、「エンド貫通孔107A」という。)内に挿入され、例えば溶接により接合されている。すなわち、ガス貫通孔340Aは、燃料極側ガス供給マニホールド171に連通し、発電ブロック103に燃料ガスFGを供給する。ガス通路部材310Aは、特許請求の範囲における第1のガス通路部材の一例である。ガス貫通孔340Aは、特許請求の範囲における第1のガス貫通孔の一例である。エンド貫通孔107Aは、特許請求の範囲における第1のエンド貫通孔の一例である。
【0051】
また、図2および図8に示すように、ガス通路部材310Dは、本体部320Dと、フランジ部330Dとを有している。ガス通路部材310Dには、上下方向に貫通するガス貫通孔340Dが形成されている。ガス貫通孔340Dは、本体部320Dに形成された上下方向に貫通する貫通孔である本体孔322Dと、フランジ部330Dに形成された上下方向に貫通する貫通孔であるフランジ孔332Dとを含んでいる。本体部320Dの上端は、空気極側ガス排出マニホールド162に含まれるエンド貫通孔107(以下、「エンド貫通孔107D」という。)内に挿入され、例えば溶接により接合されている。すなわち、ガス貫通孔340Dは、空気極側ガス排出マニホールド162に連通し、発電ブロック103から酸化剤オフガスOOGを排出する。ガス通路部材310Dは、特許請求の範囲における第4のガス通路部材の一例である。ガス貫通孔340Dは、特許請求の範囲における第4のガス貫通孔の一例である。エンド貫通孔107Dは、特許請求の範囲における第4のエンド貫通孔の一例である。
【0052】
また、図2および図8に示すように、ガス通路部材310Cは、本体部320Cと、フランジ部330Cとを有している。ガス通路部材310Cには、上下方向に貫通するガス貫通孔340Cが形成されている。ガス貫通孔340Cは、本体部320Cに形成された上下方向に貫通する貫通孔である本体孔322Cと、フランジ部330Cに形成された上下方向に貫通する貫通孔であるフランジ孔332Cとを含んでいる。本体部320Cの上端は、空気極側ガス供給マニホールド161に含まれるエンド貫通孔107(以下、「エンド貫通孔107C」という。)内に挿入され、例えば溶接により接合されている。すなわち、ガス貫通孔340Cは、空気極側ガス供給マニホールド161に連通し、発電ブロック103に酸化剤ガスOGを供給する。ガス通路部材310Cは、特許請求の範囲における第3のガス通路部材の一例である。ガス貫通孔340Cは、特許請求の範囲における第3のガス貫通孔の一例である。エンド貫通孔107Cは、特許請求の範囲における第3のエンド貫通孔の一例である。
【0053】
本体部320A~320Dは、互いに同一の構造を有している。本体部320A~320Dの本体孔322A~322Dは、上下方向視での形状が略円形である。本体孔322A~322Dの孔径は、燃料電池スタック100との接続位置であるスタック接続部CSから、ガス配管(図示せず)との接続位置である配管接続部PSに向かうにつれて大きくなる構造を有している。すなわち、本体孔322A~322Dにおいて、最も孔径が小さいのはスタック接続部CSである。
【0054】
フランジ部330A~330Dは、フランジ孔332A~332Dの孔径が互いに異なるという点において相違する。具体的には、フランジ部330A~330Dのフランジ孔332A~332Dは、いずれも上下方向視での形状が略円形である。フランジ孔332A,332C,332Dは、互いに同一の孔径を有しており、それらの孔径は、本体孔322A~322Dの配管接続部PSの孔径と略同一である。一方、フランジ孔332Bは、他のフランジ孔(フランジ孔332A,332C,332D)とは異なる孔径を有しており、その孔径は、本体孔322A~322Dのスタック接続部CSよりも小さい孔径を有している。
【0055】
本体部320A~320Dおよびフランジ部330A~330Dが上記のような構成を有しているため、ガス貫通孔340A~340Dのそれぞれにおいて孔径が最小となる位置も異なる。具体的には、ガス貫通孔340A,340C,340Dのそれぞれにおいて孔径が最小となる位置は、本体孔322A,322C,322Dのスタック接続部CSである。そのため、ガス貫通孔340A,340C,340Dにおいて最小断面積となる位置は、本体孔322A,322C,322Dのスタック接続部CSである。一方、ガス貫通孔340Bにおいて孔径が最小となる位置は、フランジ孔332Bである。そのため、ガス貫通孔340Bにおいて最小断面積となる位置は、フランジ孔332Bである。なお、本明細書における「最小断面積」とは、詳細には、燃料電池スタック100のガス流路を形成する各部において、ガス流路におけるガスの流れ方向に交差する方向の断面積が最小となる位置の断面積を意味している。
【0056】
前述の通り、フランジ孔332Bの孔径は、本体孔322A~322Dにおけるスタック接続部CSの孔径よりも小さい。そのため、燃料ガスFGの流路を形成するガス貫通孔340Aおよびガス貫通孔340Bについて、発電ブロック103から燃料オフガスFOGの排出を行うガス貫通孔340Bにおける最小断面積は、発電ブロック103に燃料ガスFGの供給を行うガス貫通孔340Aにおける最小断面積よりも小さい。また、燃料オフガスFOGの排出を行うガス貫通孔340Bと、酸化剤オフガスOOGの排出を行うガス貫通孔340Dとは、最小断面積が異なる。また、ガス貫通孔340Bの最小断面積は、ガス貫通孔340Bに連通している燃料極側ガス排出マニホールド172の最小断面積よりも小さくなるように構成されている。
【0057】
A-3.燃料電池スタック100の動作:
図2および図5に示すように、ガス通路部材310Cに接続されたガス配管(図示せず)を介して酸化剤ガスOGが供給されると、酸化剤ガスOGは、ガス通路部材310Cのガス貫通孔340Cを介して空気極側ガス供給マニホールド161に供給され、空気極側ガス供給マニホールド161から各発電単位102の酸化剤ガス供給連通孔132を介して、空気室166に供給される。また、図3および図6に示すように、ガス通路部材310Aに接続されたガス配管(図示せず)を介して燃料ガスFGが供給されると、燃料ガスFGは、ガス通路部材310Aのガス貫通孔340Aを介して燃料極側ガス供給マニホールド171に供給され、燃料極側ガス供給マニホールド171から各発電単位102の燃料ガス供給連通孔142を介して、燃料室176に供給される。
【0058】
各発電単位102の空気室166に酸化剤ガスOGが供給され、燃料室176に燃料ガスFGが供給されると、単セル110において酸化剤ガスOGおよび燃料ガスFGの電気化学反応による発電が行われる。この発電反応は発熱反応である。各発電単位102において、単セル110の空気極114は上側のインターコネクタ190に電気的に接続され、燃料極116は燃料極側集電部材144を介して下側のインターコネクタ190(または、下端プレート189)に電気的に接続されている。すなわち、燃料電池スタック100に含まれる複数の発電単位102は、電気的に直列に接続されている。また、最も上位に位置する発電単位102の上側のインターコネクタ190およびIC用セパレータ180は、上側ターミナルプレート410に電気的に接続されており、最も下側に位置する発電単位102の燃料極側集電部材144には、下側ターミナルプレート420が電気的に接続されている。そのため、燃料電池スタック100の出力端子として機能するターミナルプレート410,420から、各発電単位102において生成された電気エネルギーが取り出される。なお、SOFCは、比較的高温(例えば700℃から1000℃)で発電が行われることから、起動後、発電により発生する熱で高温が維持できる状態になるまで、燃料電池スタック100が加熱器(図示せず)により加熱されてもよい。
【0059】
図2および図5に示すように、各発電単位102の空気室166から酸化剤ガス排出連通孔133を介して空気極側ガス排出マニホールド162に排出された酸化剤オフガスOOGは、ガス通路部材310Dのガス貫通孔340Dを経て、ガス通路部材310Dに接続されたガス配管(図示せず)を介して燃料電池スタック100の外部に排出される。また、図3および図6に示すように、各発電単位102の燃料室176から燃料ガス排出連通孔143を介して燃料極側ガス排出マニホールド172に排出された燃料オフガスFOGは、ガス通路部材310Bのガス貫通孔340Bを経て、ガス通路部材310Bに接続されたガス配管(図示せず)を介して燃料電池スタック100の外部に排出される。
【0060】
なお、本実施形態の燃料電池スタック100では、Z軸方向視で、空気極側ガス供給マニホールド161に連通する酸化剤ガス供給連通孔132と、燃料極側ガス供給マニホールド171に連通する燃料ガス供給連通孔142とが、単セルの一の辺に(同じ方向に)対向するように配置されており、かつ、空気極側ガス排出マニホールド162に連通する酸化剤ガス排出連通孔133と、燃料極側ガス排出マニホールド172に連通する燃料ガス排出連通孔143とが、単セルの一の辺に対して単セル110の中心点を挟んで対向する他の辺に(同じ方向に)対向するように配置されている。すなわち、本実施形態の発電単位102(燃料電池スタック100)は、空気室166における酸化剤ガスOGの主たる流れ方向(X軸正方向からX軸負方向へ向かう方向)と燃料室176における燃料ガスFGの主たる流れ方向(X軸正方向からX軸負方向へ向かう方向)とが略同一の方向であるコフロータイプのSOFCである。
【0061】
A-4.本実施形態の効果:
以上説明したように、本実施形態の燃料電池スタック100は、発電ブロック103と、エンドプレート104,106と、を備える。発電ブロック103は、電解質層112と、電解質層112を挟んで互いに対向する空気極114および燃料極116と、を含む単セル110をそれぞれ有する複数の発電単位102が上下方向に並べて配置されている。エンドプレート104,106は、発電ブロック103を挟んで上下方向に互いに対向し、下側エンドプレート106に、上下方向に貫通するエンド貫通孔107Aおよびエンド貫通孔107Bが形成されている。燃料電池スタック100は、各発電単位102における空気極114と燃料極116との一方である特定電極に面するガス流路にガスを供給するマニホールドであって、エンド貫通孔107Aを含む燃料極側ガス供給マニホールド171と、特定電極に面するガス流路からガスを排出するマニホールドであって、エンド貫通孔107Bを含む燃料極側ガス排出マニホールド172と、が形成されている。燃料電池スタック100は、さらに、下側エンドプレート106に接続され、燃料極側ガス供給マニホールド171に連通し、発電ブロック103にガスを供給するガス貫通孔340Aが形成されたガス通路部材310Aと、下側エンドプレート106に接続され、燃料極側ガス排出マニホールド172に連通し、発電ブロック103からガスを排出するガス貫通孔340Bが形成されたガス通路部材310Bと、を備える。ガス貫通孔340Bにおける最小断面積は、ガス貫通孔340Aにおける最小断面積よりも小さい。
【0062】
燃料電池スタック100にガスが供給されると、燃料電池スタック100内のガス流路に内圧が生じる。このとき、例えば、供給するガスの流量や作動温度、発電ブロック103を構成する部材の厚みの製造誤差等によって、同一の製造方法で製造された燃料電池スタック100であっても、機種によって内圧が変わるおそれがある。このような場合、発電反応に好適な内圧に調整する必要があるが、個々の機種に応じて発電ブロック103を構成する部材または下側エンドプレート106の仕様を変更することは、コスト面等で課題がある。本実施形態の燃料電池スタック100によれば、特定電極に供給されるガスが流れる一連のガス流路において、下側エンドプレート106に接続され、発電ブロック103からガスを排出するガス貫通孔340Bの最小断面積は、下側エンドプレート106に接続され、発電ブロック103にガスを供給するガス貫通孔340Aの最小断面積よりも小さい。これにより、発電ブロック103または下側エンドプレート106の仕様を変更せずとも、特定電極に供給されるガスが流れる一連のガス流路のうちの一部の断面積を狭めることができ、圧力損失を増大させることによって、特定電極に供給されるガスが流れる一連のガス流路の内圧を高くすることができる。そのため、燃料電池スタック100におけるガス流路の内圧の調整にかかるコストを低減することができる。
【0063】
また、本実施形態の燃料電池スタック100では、ガス貫通孔340Bにおける最小断面積は、燃料極側ガス排出マニホールド172における最小断面積よりも小さい。本実施形態の燃料電池スタック100によれば、ガス貫通孔340Bにおける最小断面積が、燃料極側ガス排出マニホールド172における最小断面積よりも小さいため、発電ブロック103および下側エンドプレート106に含まれる燃料極側ガス排出マニホールド172の仕様を変更せずとも、ガス貫通孔340Bの仕様によって特定電極に供給されるガスが流れる一連のガス流路の内圧を高くすることができる。そのため、燃料電池スタック100におけるガス流路の内圧の調整にかかるコストをより効果的に低減することができる。
【0064】
また、本実施形態の燃料電池スタック100では、特定電極は、燃料極116である。燃料電池スタック100にガスが供給されると、燃料電池スタック100内のガス流路に内圧が生じる。このとき、燃料電池スタック100の使用環境によっては、空気極114および燃料極116のそれぞれに供給されるガスが流れる一連のガス流路に圧力差が生じ、燃料極116に供給されるガスが流れる一連のガス流路の内圧が、空気極114に供給されるガスが流れる一連のガス流路の内圧よりも低くなることがある。圧力差が一定の値を超えた場合、圧力差によって単セル110が破損するおそれがある。本実施形態の燃料電池スタック100によれば、燃料極116に供給されるガスが流れる一連のガス流路において、ガス貫通孔340Bの最小断面積は、ガス貫通孔340Aの断面積よりも小さい。これにより、発電ブロック103または下側エンドプレート106の仕様を変更せずとも、燃料極116に供給されるガスが流れる一連のガス流路のうちの一部の断面積を狭めることができ、圧力損失を増大させることによって、燃料極116に供給されるガスが流れる一連のガス流路の内圧を高くすることができる。そのため、燃料電池スタック100における空気極114および燃料極116のそれぞれに供給されるガスが流れる一連のガス流路の圧力差の調整にかかるコストを低減することができる。
【0065】
また、本実施形態の燃料電池スタック100では、下側エンドプレート106は、上下方向に貫通するエンド貫通孔107Cおよびエンド貫通孔107Dが形成され、燃料電池スタック100は、発電単位102における空気極114と燃料極116との他方である他の特定電極に面するガス流路にガスを供給するマニホールドであって、エンド貫通孔107Cを含む空気極側ガス供給マニホールド161と、他の特定電極に面するガス流路からガスを排出するマニホールドであって、エンド貫通孔107Dを含む空気極側ガス排出マニホールド162と、が形成される。燃料電池スタック100は、さらに、下側エンドプレート106に接続され、空気極側ガス供給マニホールド161に連通し、発電ブロック103にガスを供給するガス貫通孔340Cが形成されたガス通路部材310Cと、下側エンドプレート106に接続され、空気極側ガス排出マニホールド162に連通し、発電ブロック103からガスを排出するガス貫通孔340Dが形成されたガス通路部材310Dと、を備え、ガス貫通孔340Bとガス貫通孔340Dとは、最小断面積が異なる。
【0066】
本実施形態の燃料電池スタック100によれば、特定電極に面する流路から排出されるガスのガス流路であるガス貫通孔340Bと、他の特定電極に面する流路から排出されるガスのガス流路であるガス貫通孔340Dとで、最小断面積を変えることにより、燃料電池スタック100におけるガス流路の内圧の調整をより正確に行うことができる。
【0067】
また、本実施形態の燃料電池スタック100では、ガス通路部材310Bおよびガス通路部材310Dは、フランジ孔332B,332Dが形成されたフランジ部330B,330Dをそれぞれ有し、ガス貫通孔340Bは、フランジ孔332Bを含み、フランジ孔332Bは、ガス貫通孔340Bにおいて最小断面積を形成する。本実施形態の燃料電池スタック100によれば、ガス通路部材310B,310Dがフランジ部330B,330Dを有し、フランジ部330Bに形成されたフランジ孔332Bがガス貫通孔340Bに含まれ、フランジ孔332Bがガス貫通孔340Bにおける最小断面積を形成する。そのため、ガス通路部材310Bのうち、フランジ部330Bの仕様の変更のみによって一連のガス流路のうちの一部の断面積を狭めることができ、圧力損失を増大させることによって、特定電極に供給されるガスが流れる一連のガス流路の内圧を高くすることができる。そのため、燃料電池スタック100におけるガス流路の内圧の調整にかかるコストをより効果的に低減することができる。
【0068】
B.第2実施形態:
図9は、第2実施形態における燃料電池スタック100aの外観構成を示す斜視図である。以下では、第2実施形態の燃料電池スタック100aの構成のうち、上述した第1実施形態の燃料電池スタック100と同一の構成については、同一の符号を付すことによってその説明を適宜省略する。
【0069】
図10は、図9のX-Xの位置における燃料電池スタック100aのXZ断面構成を示す説明図である。また、図11は、図9のXI-XIの位置における燃料電池スタック100aのXZ断面構成を示す説明図である。第2実施形態における燃料電池スタック100aは、酸化剤オフガスOOGの排出を行うガス通路部材と、燃料オフガスFOGの排出を行うガス通路部材とが、第1実施形態における燃料電池スタック100と異なっている。具体的には、第2実施形態における燃料電池スタック100aでは、発電ブロック103から酸化剤オフガスOOGの排出を行うガス排出部材310Daのフランジ部330Daは、フランジ孔332Daが形成されている。フランジ孔332Daの孔径は、本体孔322A~322Dのスタック接続部CSよりも小さい孔径を有している。また、発電ブロック103から燃料オフガスFOGの排出を行うガス排出部材310Baのフランジ部330Baは、フランジ孔332Baが形成されている。フランジ孔332Baの孔径は、本体孔322A~322Dの配管接続部PSの孔径と略同一である。
【0070】
ガス排出部材310Baおよびガス排出部材310Daが上記のような構成を有しているため、ガス貫通孔340Baおよびガス貫通孔340Daのそれぞれにおいて最小断面積となる位置も第1実施形態と異なる。すなわち、ガス貫通孔340Daにおいて最小断面積となる位置は、フランジ孔332Daであり、ガス貫通孔340Baにおいて最小断面積となる位置は、ガス貫通孔340A,340Cと同様に、本体孔322Bのスタック接続部CSである。
【0071】
前述の通り、フランジ孔332Daの孔径は、本体孔322A~322Dにおけるスタック接続部CSの孔径よりも小さい。そのため、酸化剤ガスOGの流路を形成するガス貫通孔340Cおよびガス貫通孔340Daについて、発電ブロック103から酸化剤オフガスOOGの排出を行うガス貫通孔340Daにおける最小断面積は、発電ブロック103に酸化剤ガスOGの供給を行うガス貫通孔340Cにおける最小断面積よりも小さい。また、酸化剤オフガスOOGの排出を行うガス貫通孔340Daと、燃料オフガスFOGの排出を行うガス貫通孔340Bとは、最小断面積が異なる。また、ガス貫通孔340Daの最小断面積は、ガス貫通孔340Daに連通している空気極側ガス排出マニホールド162の最小断面積よりも小さくなるように構成されている。
【0072】
以上説明したように、第2実施形態における燃料電池スタック100aは、発電ブロック103と、エンドプレート104,106と、を備える。発電ブロック103は、電解質層112と、電解質層112を挟んで互いに対向する空気極114および燃料極116と、を含む単セル110をそれぞれ有する複数の発電単位102が上下方向に並べて配置されている。エンドプレート104,106は、発電ブロック103を挟んで上下方向に互いに対向し、下側エンドプレート106に、上下方向に貫通するエンド貫通孔107Cおよびエンド貫通孔107Dが形成されている。燃料電池スタック100は、各発電単位102における空気極114と燃料極116との一方である特定電極に面するガス流路にガスを供給するマニホールドであって、エンド貫通孔107Cを含む空気極側ガス供給マニホールド161と、特定電極に面するガス流路からガスを排出するマニホールドであって、エンド貫通孔107Dを含む空気極側ガス排出マニホールド162と、が形成されている。燃料電池スタック100は、さらに、下側エンドプレート106に接続され、空気極側ガス供給マニホールド161に連通し、発電ブロック103にガスを供給するガス貫通孔340Cが形成されたガス通路部材310Cと、下側エンドプレート106に接続され、空気極側ガス排出マニホールド162に連通し、発電ブロック103からガスを排出するガス貫通孔340Dが形成されたガス通路部材310D、を備える。ガス貫通孔340Dにおける最小断面積は、ガス貫通孔340Cにおける最小断面積よりも小さい。また、第2実施形態における燃料電池スタック100aでは、特定電極は、空気極114である。
【0073】
燃料電池スタック100にガスが供給されると、燃料電池スタック100内のガス流路に内圧が生じる。このとき、燃料電池スタック100の使用環境によっては、空気極114および燃料極116のそれぞれに供給されるガスが流れる一連のガス流路に圧力差が生じ、空気極114に供給されるガスが流れる一連のガス流路の内圧が、燃料極116に供給されるガスが流れる一連のガス流路の内圧よりも低くなることがある。圧力差が一定の値を超えた場合、圧力差によって単セル110が破損するおそれがある。本実施形態の燃料電池スタック100によれば、空気極114に供給されるガスが流れる一連のガス流路において、ガス貫通孔340Dの最小断面積は、ガス貫通孔340Cの断面積よりも小さい。これにより、発電ブロック103または下側エンドプレート106の仕様を変更せずとも、空気極114に供給されるガスが流れる一連のガス流路のうちの一部の断面積を狭めることができ、圧力損失を増大させることによって、空気極114に供給されるガスが流れる一連のガス流路の内圧を高くすることができる。そのため、燃料電池スタック100における空気極114および燃料極116のそれぞれに供給されるガスが流れる一連のガス流路の圧力差の調整にかかるコストを低減することができる。
【0074】
C.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0075】
上記実施形態における燃料電池スタック100の構成や燃料電池スタック100を構成する各部分の構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。
【0076】
また、上記実施形態において、燃料電池スタック100に含まれる単セル110の個数(発電単位102の個数)は、あくまで一例であり、単セル110の個数は燃料電池スタック100に要求される出力電圧に応じて適宜決められる。また、上記実施形態における各部材を構成する材料は、あくまで例示であり、各部材が他の材料により構成されていてもよい。
【0077】
また、上記実施形態において、ガス貫通孔340Bおよびガス貫通孔340Daにおける最小断面積の位置は、フランジ孔332Bおよびフランジ孔332Daであるが、最小断面積の位置が、本体孔322Bおよび本体孔322Dにあってもよい。具体的には、本体孔322Aまたは本体孔322Cにおける最小断面積に対して、本体孔322Bまたは本体孔322Dの最小断面積が小さくなるような構成とすることによって実現することができる。なお、このような場合において、フランジ部330Bおよびフランジ部330Daは、必ずしも必要ではない。
【0078】
また、上記実施形態では、燃料ガスFGのガス流路または酸化剤ガスOGのガス流路のいずれか一方において、ガスの供給を行うガス貫通孔とガスの排出を行うガス貫通孔の最小断面積が異なる形態が示されているが、燃料ガスFGのガス流路および酸化剤ガスOGのガス流路の双方において、ガスの供給を行うガス貫通孔とガスの排出を行うガス貫通孔の最小断面積が異なる形態であってもよい。
【0079】
また、上記実施形態において、フランジ孔332A~332Dは、上下方向視での形状が略円形であったが、例えば略矩形等の他の形状であってもよい。
【0080】
また、上記実施形態では、特定エンド部材が、下側エンドプレート106によって構成されているが、特定エンド部材が、上側エンドプレート104によって構成されていてもよく、或いは、上側エンドプレート104と下側エンドプレート106とで構成されていてもよい。すなわち、上記実施形態では、エンド貫通孔107A~107Dは、いずれも、下側エンドプレート106に形成されているが、上側エンドプレート104に形成されていてもよく、或いは、上側エンドプレート104と下側エンドプレート106とのそれぞれに分かれて配置されていてもよい。
【0081】
また、上記実施形態では、単セル110が反応防止層118を有しているが、単セル110が反応防止層118を有さないとしてもよい。また、上記実施形態では、インターコネクタ190は導電性の被覆層194を含んでいるが、インターコネクタ190が被覆層194を含んでいなくてもよい。
【0082】
また、上記実施形態の燃料電池スタック100は、コフロータイプのSOFCであるが、本明細書に開示される技術は、カウンターフロータイプやクロスフロータイプのSOFCにも同様に適用可能である。
【0083】
また、上記実施形態では、単セル110は、燃料極支持型の単セルであるが、電解質支持型や金属支持型等の他のタイプの単セルであってもよい。
【0084】
また、上記実施形態では、燃料ガスに含まれる水素と酸化剤ガスに含まれる酸素との電気化学反応を利用して発電を行うSOFCを対象としているが、本明細書に開示される技術は、例えば、水の電気分解反応を利用して水素の生成を行う固体酸化物形電解セル(SOEC)の構成単位である電解セル単位や、電解セル単位を複数備える電解セルスタックにも同様に適用可能である。なお、電解セル単位および電解セルスタックの構成は、例えば特開2016-81813号に記載されているように公知であるためここでは詳述しないが、概略的には上述した実施形態における発電単位102および燃料電池スタック100と同様の構成である。すなわち、上述した実施形態における燃料電池スタック100を電解セルスタックと読み替え、発電単位102を電解セル単位と読み替え、単セル110を電解単セルと読み替えればよい。ただし、電解セルスタックの運転の際には、空気極114がプラス(陽極)で燃料極116がマイナス(陰極)となるように両電極間に電圧が印加されると共に、マニホールドを介して原料ガスとしての水蒸気が供給される。これにより、各電解セル単位において水の電気分解反応が起こり、燃料室176で水素ガスが発生し、マニホールドを介して電解セルスタックの外部に水素が取り出される。
【0085】
また、上記実施形態では、固体酸化物形燃料電池(SOFC)を例に説明したが、本明細書に開示される技術は、固体高分子形燃料電池(PEFC)、リン酸型燃料電池(PAFC)、溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC)といった他のタイプの燃料電池(または電解セル)にも適用可能である。
【符号の説明】
【0086】
22:ボルト 24:ナット 29:ボルト孔 32,34:孔 100,100a:燃料電池スタック 102:発電単位 103:発電ブロック 104:上側エンドプレート 106:下側エンドプレート 107A~107D:エンド貫通孔 108:連通孔 109:ボルト孔 110:単セル 112:電解質層 114:空気極 116:燃料極 118:反応防止層 120:単セル用セパレータ 121:貫通孔 124:接合部 125:ガラスシール部 126:内側部 127:外側部 128:連結部 130:空気極側フレーム 131:孔 132:酸化剤ガス供給連通孔 133:酸化剤ガス排出連通孔 134:空気極側集電部 140:燃料極側フレーム 141:孔 142:燃料ガス供給連通孔 143:燃料ガス排出連通孔 144:燃料極側集電部材 145:電極対向部 146:インターコネクタ対向部 147:連接部 149:スペーサー 150:平板部 161:空気極側ガス供給マニホールド 162:空気極側ガス排出マニホールド 166:空気室 171:燃料極側ガス供給マニホールド 172:燃料極側ガス排出マニホールド 176:燃料室 180:IC用セパレータ 181:貫通孔 186:内側部 187:外側部 188:連結部 189:下端プレート 190:インターコネクタ 194:被覆層 196:導電性接合材 200:絶縁部 210:末端セパレータ 211:貫通孔 216:内側部 217:外側部 218:連結部 220:上端プレート 310A~310D,310Ba,310Da:ガス排出部材 320A~320D:本体部 322A~322D:本体孔 330A~330D,330Ba,330Da:フランジ部 332A~332D,332Ba,332Da:フランジ孔 340A~340D,340Ba,340Da:ガス貫通孔 410:上側ターミナルプレート 412:孔 420:下側ターミナルプレート 414:上側電流線 424:下側電流線 415,425:溶接部 FG:燃料ガス FOG:燃料オフガス OG:酸化剤ガス OOG:酸化剤オフガス PS:配管接続部 CS:スタック接続部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11