(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129529
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】電気化学セルおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 50/446 20210101AFI20240919BHJP
H01M 50/443 20210101ALI20240919BHJP
H01M 50/411 20210101ALI20240919BHJP
H01M 50/403 20210101ALI20240919BHJP
H01M 10/0566 20100101ALI20240919BHJP
H01M 10/056 20100101ALI20240919BHJP
H01M 10/0585 20100101ALI20240919BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20240919BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20240919BHJP
H01B 1/06 20060101ALI20240919BHJP
【FI】
H01M50/446
H01M50/443 M
H01M50/411
H01M50/403 A
H01M10/0566
H01M10/056
H01M10/0585
H01M10/052
H01M4/62 Z
H01B1/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038809
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】000002325
【氏名又は名称】セイコーインスツル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】菅野 佳実
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 竜
【テーマコード(参考)】
5G301
5H021
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5G301CA16
5G301CD01
5H021BB01
5H021EE01
5H021EE22
5H021EE32
5H021HH01
5H021HH03
5H029AJ06
5H029AJ12
5H029AK03
5H029AL07
5H029AL12
5H029AM09
5H029AM12
5H029BJ12
5H029CJ02
5H029CJ08
5H029DJ04
5H029DJ09
5H029DJ12
5H029DJ16
5H029EJ05
5H029EJ11
5H029HJ01
5H029HJ05
5H050AA12
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA08
5H050CB08
5H050CB12
5H050DA13
5H050DA19
5H050EA12
5H050EA22
5H050FA02
5H050FA17
5H050FA18
5H050GA02
5H050GA10
5H050HA01
5H050HA05
(57)【要約】
【課題】本発明は、電気化学セルとその製造方法の提供を目的とする。
【解決手段】本発明の電気化学セルは、正極集電体上に正極活物質を含む正極層を備えた正極体と、負極集電体上に負極活物質を含む負極層を備えた負極体が、セパレータ層を介し対峙された電極体を電解液とともに外装体の内部に収容した電気化学セルであって、前記セパレータ層が、イオン液体を無機固体主粒子の表面に担持した複数の第1複合粒子と、イオン液体を前記無機固体主粒子より小さい無機固体副粒子の表面に担持した複数の第2複合粒子を含むセパレータ層であることを特徴とする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極集電体上に正極活物質を含む正極層を備えた正極体と、負極集電体上に負極活物質を含む負極層を備えた負極体が、セパレータ層を介し対峙された電極体を電解液とともに外装体の内部に収容した電気化学セルであって、
前記セパレータ層が、イオン液体を無機固体主粒子の表面に担持した複数の第1複合粒子と、イオン液体を前記無機固体主粒子より小さい無機固体副粒子の表面に担持した複数の第2複合粒子を含むセパレータ層であることを特徴とする電気化学セル。
【請求項2】
前記無機固体主粒子の平均粒径が5μm以上30μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の電気化学セル。
【請求項3】
前記無機固体副粒子の平均粒径が0.005μm以上0.010μm以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電気化学セル。
【請求項4】
前記無機固体主粒子と前記無機固体副粒子が50:50~30:70の割合で含まれていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電気化学セル。
【請求項5】
前記第2複合粒子が前記正極層と前記負極層の少なくとも一方に分散されている請求項1または請求項2に記載の電気化学セル。
【請求項6】
無機固体主粒子と、前記無機固体主粒子より小さい無機固体副粒子と、イオン液体とを所定の割合で溶媒に投入し、混合した後、加熱処理により溶媒を揮発させることにより第1複合粒子及び第2複合粒子を作製し、リチウム塩を含むイオン液体:65~80質量%、前記第1複合粒子+前記第2複合粒子:20~30質量%、バインダー:1~5質量%を含有する疑似固体電解質のスラリーを作製し、
前記スラリーを用いて疑似固体電解質シートを作製し、
前記疑似固体電解質シートから得たセパレータ層を介し、正極体と負極体を重ねて電極体を作製することを特徴とする電気化学セルの製造方法。
【請求項7】
平均粒径が5μm以上30μm以下の無機固体主粒子を用いることを特徴とする請求項6に記載の電気化学セルの製造方法。
【請求項8】
平均粒径が0.005μm以上0.010μm以下の無機固体副粒子を用いることを特徴とする請求項6または請求項7に記載の電気化学セルの製造方法。
【請求項9】
前記無機固体主粒子と前記無機固体副粒子を50:50~30:70の割合で用いることを特徴とする請求項6または請求項7に記載の電気化学セルの製造方法。
【請求項10】
前記第2複合粒子を前記正極体と前記負極体の少なくとも一方に分散させる請求項6または請求項7に記載の電気化学セルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学セルおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
正極活物質層を含む正極と負極活物質層を含む負極と多孔質セパレータ層を有し、多孔質セパレータを介し正極と負極を対峙させた状態でケーシング内に電解液とともに収容した電池が知られている。
【0003】
この種の電池において以下の特許文献1に示すように、接触抵抗低減による導電性向上及び安全性向上を課題として、金属酸化物粒子とイオン伝導材を含む疑似固体電解質を用いた全固体リチウム二次電池が知られている。
また、以下の非特許文献1に示すように、疑似固体電解質の金属酸化物粒子としてヒュームドシリカナノ粒子を用い、さらに、紫外線硬化樹脂を添加することで、3Dプリント可能な室温硬化型プロトン伝導性インク材料が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】第62回電池討論会 要旨集 1F16 「疑似固体リチウムイオン二次電池の3Dプリント造形技術の開発」:(東北大学多元研)雁部祥行、小林弘明、岩瀬和至、シュタウススヴェン、本間格:電気化学会 電池技術委員会編
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述の電池では、疑似固体電解質を塗膜として正極側あるいは負極側の活物質層表面に塗布し、ケーシングの内部に正極と負極を対峙させた状態で電解液に浸漬し、電池を構成する必要がある。
前述の疑似固体電解質のセパレータ層を用いて電池を構成する場合、ケーシングへの電解液注入後、正極と負極およびセパレータを電解液に浸漬し、正極とセパレータ層と負極の界面を一体化するための圧着処理を施す必要がある。
ところが、圧着処理を実施すると、疑似固体電解質のセパレータ層の厚み制御が容易ではなく、セパレータ層を介し対峙している正極の活物質と負極の活物質が接触するおそれがあり、正負極短絡を引き起こすおそれがあった。
【0007】
このため本願発明は、固体電解質のセパレータを用い、製造時に圧着を実施したとして正極側の活物質と負極側の活物質の接触を防止し、正負極短絡の問題を回避することができる電気化学セルおよびその製造方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明に係る電気化学セルは、正極集電体上に正極活物質を含む正極層を備えた正極体と、負極集電体上に負極活物質を含む負極層を備えた負極体が、セパレータ層を介し対峙された電極体を電解液とともに外装体の内部に収容した電気化学セルであって、
前記セパレータ層が、イオン液体を無機固体主粒子の表面に担持した複数の第1複合粒子と、イオン液体を前記無機固体主粒子より小さい無機固体副粒子の表面に担持した複数の第2複合粒子を含むセパレータ層であることを特徴とする。
【0009】
第1複合粒子および第2複合粒子の周囲に適量のイオン液体が存在するので、セパレータ層は良好なイオン伝導性を得ることができ、電池性能の向上に寄与する。
第1複合粒子および第2複合粒子はイオン液体を担持しているため、径の大きな無機固体主粒子を含む第1複合粒子が正極体と負極体の仕切体として適切な間隔を維持し、正負極の短絡を防止しつつ良好なイオン伝導性を発揮する。
イオン液体を担持した第1複合粒子および第2複合粒子とバインダーを含むセパレータ層は、スラリーを乾燥させた疑似固体電解質層であり、焼成体ではないため、軟質である。このため、正極体と負極体の間に軟質のセパレータ層を配置した構造となるので、衝撃などの負荷が作用したとして破損リスクの低い電気化学セルを提供できる。
また、電極体を外装体に収容することで外力や負荷などに耐える堅牢な構成の電気化学セルを提供できる。
【0010】
(2)本発明に係る一形態に係る電気化学セルにおいて、前記無機固体主粒子の平均粒径が5μm以上30μm以下であることが好ましい。
【0011】
前述の範囲の平均粒径を有する無機固体主粒子であれば、正極体と負極体を仕切るセパレータ層として必要な剛性を有し、正極体と負極体を適切な間隔で仕切るので、電池を構成するために外装体に収容後、加圧したとして、正負極の短絡防止に寄与する。また、作製した電池について、充放電において正極あるいは負極が膨潤、収縮が伴う場合にも正負極の短絡防止に寄与する。
前述の粒径の無機固体主粒子であれば、粒子の表面に適量のイオン液体を担持することができ、イオン伝導性の向上に寄与する。
【0012】
(3)本発明の一形態に係る電気化学セルにおいて、前記無機固体副粒子の平均粒径が0.005μm以上0.010μm以下であることが好ましい。
【0013】
前述の範囲の平均粒径を有する無機固体副粒子であり、その表面にイオン液体を担持しているならば、正極体と負極体を仕切るセパレータ層として必要なイオン伝導性を発揮する。
【0014】
(4)本発明の一形態に係る電気化学セルにおいて、前記無機固体主粒子と前記無機固体副粒子が50:50~30:70の割合で含まれていることが好ましい。
(5)本発明の一形態に係る電気化学セルにおいて、前記第2複合粒子が前記正極層と前記負極層の少なくとも一方に分散されていることが好ましい。
【0015】
(6)本発明の一形態に係る電気化学セルの製造方法は、無機固体主粒子と、前記無機固体主粒子より小さい無機固体副粒子と、イオン液体とを所定の割合で溶媒に投入し、混合した後、加熱処理により溶媒を揮発させることにより第1複合粒子及び第2複合粒子を作製し、リチウム塩を含むイオン液体:65~80質量%、前記第1複合粒子+前記第2複合粒子:20~30質量%、バインダー:1~5質量%を含有する疑似固体電解質のスラリーを作製し、前記スラリーを用いて疑似固体電解質シートを作製し、前記疑似固体電解質シートから得たセパレータ層を介し、正極体と負極体を重ねて電極体を作製することを特徴とする。
【0016】
セパレータ層はイオン液体を表面に担持した適量の無機固体主粒子および無機固体副粒子を含むため、正極体と負極体を仕切るための適切な剛性を有し、正負極の短絡を防止しつつ良好なイオン伝導性を発揮する電池を得ることができる。
リチウム塩を含むイオン液体を表面に担持した無機固体主粒子および無機固体副粒子とバインダーを前述の割合で含むセパレータ層は、スラリーを乾燥させた疑似固体電解質であり、焼成体ではないため、軟質である。
このため、正極体と負極体の間に軟質のセパレータ層を配置した構造となるので、衝撃などの負荷が作用したとして破損リスクの低い電気化学セルを提供できる。また、無機固体主粒子および無機固体副粒子の周囲に適量のイオン液体が存在するので、良好なイオン伝導性を得ることができ、電池性能の向上に寄与する。
【0017】
(7)本発明の一形態に係る電気化学セルの製造方法において、平均粒径が10μm以上20μm以下の無機固体主粒子を用いることが好ましい。
(8)本発明に係る電気化学セルの製造方法において、平均粒径が0.005μm以上0.010μm以下の無機固体副粒子を用いることが好ましい。
(9)本発明に係る電気化学セルの製造方法において、前記無機固体主粒子と前記無機固体副粒子を50:50~30:70の割合で用いることが好ましい。
(10)本発明に係る電気化学セルの製造方法において、前記第2複合粒子を前記正極体と前記負極体の少なくとも一方に分散することが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る電気化学セルは、イオン液体を表面に担持した第1複合粒子および第2複合粒子を有するセパレータ層で正極体と負極体を仕切るので、セパレータ層が仕切体として両者間の適切な間隔を維持し、正負極の短絡を防止しつつ良好なイオン伝導性を発揮する電気化学セルを提供できる。従って、電気化学セルを構成するために正極体とセパレータ層および負極体を熱圧着するなどの処理を施しても、正極層と負極層との間で正負極短絡を生じない電気化学セルを提供できる。
イオン液体を担持した無機固体主粒子および無機固体副粒子とバインダーを適切な割合で含むセパレータ層は、スラリーを乾燥させた疑似固体電解質であり、焼成体ではないため、軟質である。このため、正極体と負極体の間に軟質の疑似固体電解質層のセパレータ層を配置した構造となるので、衝撃などの負荷が作用したとして破損リスクの低い電気化学セルを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】第1実施形態に係る電気化学セルの概要を示す分解斜視図である。
【
図3】同電気化学セルの内部構造を示す部分断面図である。
【
図4】同電気化学セルにおいて電極体を加圧し正極体と負極体が変形して接近する状態を説明するための概要図。
【
図5】同電気化学セルにおいて電極体を加圧し正極体と負極体が変形して接近した状態を示す概要図。
【
図6】一般的な疑似電解質層を備えた電極体を加圧し正極体と負極体が変形して接近する状態を説明するための概要図。
【
図7】一般的な疑似電解質層を備えた電極体を加圧し正極体と負極体が変形して接近する状態を示す概要図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る電気化学セルの実施形態について図面を参照し説明する。
以下の実施形態では、電気化学セルの一例として、袋状のケーシングに正極と負極およびセパレータを収容した電池を挙げ、この電池の構成について説明する。
なお、以下の説明に用いる図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更し、表示している。
【0021】
<第1実施形態>
図1は本発明に係る第1実施形態の電気化学セルを示す分解斜視図、
図2は同電気化学セルの正面図である。
本実施形態の電池(電気化学セル)1は袋状の外装体(ケーシング)2の内部に、板状の正極体3と負極体4を、セパレータ層5を介し対峙させた構成の電極体7を収容し、この電極体7を電解液6とともに外装体2に封入した構成を有する。
【0022】
外装体2は、一例として、ラミネートフィルム(ラミネート構造体)により形成されている。ラミネートフィルムは、金属箔(金属層)と、内側面に設けられ金属箔を被覆する融着層(樹脂層)と、外側面に設けられ金属箔を被覆する保護層(樹脂層)とを有する。金属層は、例えばアルミニウムやステンレス鋼等からなり、外気や水蒸気を遮断する金属箔により形成されている。
ラミネートフィルムにおいて内側の樹脂層は重ね合わせて熱融着することができ、例えば、ポリオレフィンのポリエチレンやポリプロピレン等の熱可塑性樹脂の単体やコポリマーから形成される。外側面の保護層は、例えば、上述のポリオレフィンや、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン等から形成される。ラミネートフィルムは、互いの合わせ面とした部分の樹脂層同士を溶着することで
図1または
図2に示す袋状に構成される。
【0023】
正極体3は、
図3に示すように正極集電体3Aの片面に正極層3Bを有する。正極集電体3Aは、アルミニウムまたはアルミニウム合金あるいはステンレス等の金属材料で形成されている。正極層3Bは、
図3に示すように正極活物質3a、導電助剤3bを有し、図示略のバインダー及び増粘剤等を含む層から構成される。例えば、正極層3Bは、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム等の複合金属酸化物などで形成されている。例えば、導電助剤としては、カーボンブラック類、炭素材料及び金属微粉等が挙げられる。例えば、バインダーとしては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレンブタジエンゴム(SBR)及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の樹脂材料が挙げられる。例えば、増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース(CMC)等の樹脂材料が挙げられる。正極層3Bにはこれらに加え、後述する第2複合粒子5Bが分散されている。
【0024】
負極体4は、銅、ニッケルあるいはステンレス等の金属材料で形成された負極集電体4Aと負極層4Bを有する。負極層4Bは、負極集電体4Aの片面側に
図3に例示する負極活物質4aと導電助剤4bに加え、図示略のバインダーや増粘剤等を含む層である。
例えば、負極層4Bは、黒鉛等の炭素材料で形成されていても良い。例えば、導電助剤4bとしては、カーボンブラック類、炭素材料及び金属微粉等が挙げられる。例えば、バインダーとしては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレンブタジエンゴム(SBR)及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の樹脂材料が挙げられる。例えば、増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース(CMC)等の樹脂材料が挙げられる。負極層4Bには、これらに加え、後述する第2複合粒子5Bが分散されている。
あるいは、負極層4Bは、金属リチウムを抵抗加熱蒸着法などで蒸着した金属リチウムの蒸着膜からなる。負極層4Bは金属リチウムをホットプレスなどの熱圧着法あるいは合金化反応を利用した接着法により付着させた金属リチウムの層であってもよい。
【0025】
(セパレータ層の詳細構造)
セパレータ層5は、一例として無機固体主粒子5aの表面にイオン液体を担持した複数の第1複合粒子5Aと、無機固体副粒子5bの表面にイオン液体を担持した複数の第2複合粒子5Bを有する。
無機固体主粒子5aと無機固体副粒子5bは、誘電体無機固体粒子(SiO2粒子、TiO2粒子、BaTiO3粒子など)からなる。無機固体主粒子5aは、平均粒子径(メディアン径:D50)5μm~30μm(5000nm~30000nm)程度であることが好ましい。無機固体副粒子5bは、平均粒子径(メディアン径:D50)0.005μm~0.010μm(5nm~10nm)程度であることが好ましい。無機固体主粒子5aと無機固体副粒子5bは前述の粒径範囲であれば、複数の粒径のものを組み合わせて用いることができる。無機固体主粒子5aとして例えば、平均粒径5μm(5000nm)のSiO2粒子を用いることができ、無機固体副粒子5bとして例えば、平均粒径0.007μm(7nm)のSiO2粒子を用いることができる。
【0026】
第1複合粒子5A及び第2複合粒子5Bは、例えば無機固体主粒子5aあるいは無機固体副粒子5bと、イオン液体とを溶媒中で混合し、その後溶媒を蒸発させることにより得ることができる。このようにして得られた第1複合粒子5A及び第2複合粒子5Bは、無機固体主粒子5a及び無機固体副粒子5bの表面にイオン液体が電気的結合により担持され、表面にイオン液体コーティング層eが形成された粉末状態となる。
イオン液体は各粒子表面に電気的に結合しているため、第1複合粒子5Aと第2複合粒子5Bは表面に液体を担持しているとはいえ、固体粉末のように扱うことができる。
セパレータ層5は、例えば、リチウム塩を含むイオン液体:65~80質量%、セパレータ粒子(第1複合粒子+第2複合粒子):20~30質量%、バインダー:1~5質量%を含有する疑似固体電解質層からなる。
【0027】
セパレータ層5を製造するには、リチウム塩を含有するイオン液体と、上述した第1複合粒子5A及び第2複合粒子5Bからなるセパレータ粒子と、バインダーとを所定の割合で溶媒中に投入し、攪拌してスラリーを作成する。溶媒中に可塑剤や分散剤を添加しても良い。
このスラリーをドクターブレード法、シート成型法などでキャリアフィルム表面に必要厚さ塗工し、この塗工物を大気中、電気炉中などで加熱し、乾燥させて疑似固体電解質シートを得る。この疑似固体電解質シートを必要な形状になるようにキャリアフィルムから剥がして、疑似固体電解質層であるセパレータ層5とすることができる。
セパレータ層5の乾燥は、電気炉等で積極的に加熱処理し、溶媒を揮発させて乾燥しても良いし、大気中で乾燥しても良い。
【0028】
イオン液体と無機固体主粒子および無機固体副粒子とバインダーを混合する場合に用いる溶媒は、NMP(N-メチル-2-ピロリドン)、1-プロパノール、2-プロパノール、エタノール、アセトン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートのうち、1種または2種以上の混合物を用いることができる。
【0029】
前記リチウム塩を含むイオン液体において、リチウム塩は、LiTFSI(リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド)、LiFSI、LiPF6、LiBF4、LiClO4などを用いることができる。
イオン液体は、アニオンとカチオンのイオンのみから構成される液体であり、高いイオン伝導性を有する。前記イオン液体を構成する溶媒は、アンモニウム系溶媒、イミダゾリウム系溶媒、ピロリジニウム系溶媒、ピペリジニウム系溶媒の何れかを選択することができる。
アンモニウム系溶媒は、TMPA-TFSI(N,N,N-トリメチル-N-プロピルアンモニウムビス-(テトラフルオロメタンスルホニル)イミド)、TMBA-TFSI(N、N、N-トリメチルブチルアンモニウムビス-(テトラフルオロメタンスルホニル)イミド)、TMHA-TFSI(トリメチルヘキシルアンモニウム-(テトラフルオロメタンスルホニル)イミド)のうち、いずれか1種または2種以上を用いることができる。
【0030】
イミダゾリウム系溶媒は、EMI-BF4(1-エチル-3-メチルイミダゾリウム-テトラフルオロボレート)、EMI-PF6(1-エチル-3-メチルイミダゾリウム-ヘキサフルオロフォスフェート)、EMI-TFSI(1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド)、EMI-FSI、BMI-PF6(1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム-ヘキサフルオロフォスフェート)、BMI-TFSIのうち、いずれか1種または2種以上を用いることができる。
【0031】
ピロリジニウム系溶媒は、MPPyr-PF(1-メチル-1-プロピルピロリジニウム-フォスフェート)、MPPyr-TFSI、MPPy-FSI、BMPyr-PF6(1-ブチル-1-メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド-ヘキサフルオロフォスフェート)、BMPyr-TFSIのうち、いずれか1種または2種以上を用いることができる。
ピペリジニウム系溶媒は、MPPip-TFSI(1-メチル-1-プロピルピロリジニウム-(テトラフルオロメタンスルホニル)イミド)を用いることができる。
【0032】
これらの中で、一例として、EMI-TFSIにLiTFSI(リチウムビス(トリフルオロメチレンスルホニル)イミド)を1Mとなるように混合した1MのLiTFSI/EMI-TFSIを用いることができる。LiTFSI/EMI-TFSIを用いる場合、LiTFSIの濃度は0.8~1.5Mの範囲とすることが好ましい。
【0033】
セパレータ層5に含まれるイオン液体は、65質量%以上80質量%以下の範囲であることが望ましい。
イオン液体の含有量が前述の範囲であれば、無機固体主粒子5aと無機固体副粒子5bに担持されるイオン液体量をより多く塗工し、余剰な無機固体副粒子5bおよびイオン液体を正極層3B(または負極層4B)に含侵できることとなり、塗工により形成したセパレータ層5を介する電池的な接触が良好となり、イオン伝導が高くなり、電池性能が向上する。
【0034】
セパレータ層5に含まれる無機固体主粒子5aと無機固体副粒子5bは、酸化物粒子を選択できる。粒子を構成する材料は、例えば、非イオン性伝導材料として、SiO2、Al2O3、TiO2、ZrO2、MgOのうち1種または2種以上を用いることができる。あるいは、粒子を構成する材料は、イオン導電性材料として、Li1.3Al0.3Ti1.7(PO)4、Li1.5Al0.5Ge1.5(PO)4、Li7La3Zr2O12、Li5La3Ta2O12のうち、1種または2種以上を用いることができる。
セパレータ層5に含まれる無機固体主粒子5aの含有量が少ない場合、正負極の短絡のリスクを有する。無機固体主粒子5aの含有量が前述の範囲であれば、正負極短絡のおそれはなく、かつイオン伝導度が高くなる。
無機固体主粒子5aと無機固体副粒子5bは、50:50~30:70の比率で混合し、前述のようにイオン液体、バインダーとともに溶媒中に投入することができる。一例として無機固体主粒子5aと無機固体副粒子5bは、50:50の比率で混合することができる。
【0035】
無機固体主粒子5aと無機固体副粒子5bによるイオン液体の担持量は、これら粒子の比表面積に影響すると考えられる。無機固体主粒子5aと無機固体副粒子5bの粒径が小さいほど比表面積は大きく、イオン液体の担持量が増加するため、イオン伝導は高くなる。しかし、無機固体副粒子5bの粒子径が小さくなり過ぎると粒子の凝集性が高くなり、セパレータ粒子の均一分散ができないおそれを生じる。
高いイオン伝導を得るとともに、無機固体主粒子5aと無機固体副粒子5bを均一分散させたセパレータ層5であることが好ましい。無機固体主粒子5aと無機固体副粒子5bの平均粒径は、一般的なレーザー回折・散乱法により求められる体積基準の累積50%における粒子径を採用できる。
【0036】
セパレータ層5に含まれるバインダーは、1質量%以上5質量%以下であることが望ましい。
バインダーを形成する材料は、PVdF(ポリフッ化ビニリデン)、PVdF-HFP(ヘキサフルオロプロピレン)、PVA(ポリビニルアルコール)、PVB(ポリブチルビニラール)、PVP(ポリビニルピロリドン)、PEO(ポリエチレンオキサイド)、PEG(ポリエチレングリコール)のうち、1種または2種以上を用いることができる。
バインダーは複数混合して用いても良い。例えば、PVdFを用いることでセパレータ層5の機械的強度向上を図り、PEOを用いてセパレータ層5に柔軟性を付与することができる。
セパレータ層5において、無機固体主粒子5aと無機固体副粒子5bの表面のイオン液体は結合状態にあるため、電解液として用いる有機電解液(有機溶媒)に溶け出すことはない。前記イオン液体が自由水はない状態(Water hull、結合水などと呼ばれている状態)でSiO2表面に結合しており、かつ、この結合水が連続状態(リチウムイオンが移動できる状態)であると考えられる。
【0037】
前述のセパレータ層5は、負極層4Bと正極層3Bの境界にこれらの各層に密着させた状態で設置されることが好ましい。
セパレータ層5を負極層4Bあるいは正極層3Bに密着するには、ホットプレスによる熱圧着法を採用してもよいし、前述のスラリーを負極層4Bあるいは正極層3Bの表面に直接塗布し、乾燥させても良い。負極層4Bと正極層3Bの間にセパレータ層5を介在させて両者を一体化し、電極体7を構成することができる。
【0038】
ホットプレスによる熱圧着により、正極体3と負極体4はセパレータ層5を押圧するように押し付けられるが、セパレータ層5には、径の大きな無機固体主粒子5aが含まれているので、正負極短絡のおそれはない。セパレータ層5に含まれる無機固体主粒子5aの割合が少ない場合、熱圧着に伴い、正負極短絡のおそれを生じる。
【0039】
電極体7において正極集電体3Aには、短冊板などからなる正極タブ8が取り付けられ、負極集電体4Aには短冊板などからなる負極タブ9を取り付けられる。
正極タブ8、負極タブ9は、SUS316などの耐食性に優れたステンレス鋼板等の短冊状の板材からなり、電気化学セル1の負極端子あるいは正極端子として機能する。
正極タブ8、負極タブ9を備えた電極体7を電解液6とともに外装体2の内部に挿入し、外装体の端部から正極タブ8、負極タブ9を突出させ、外装体2の外周部を熱溶着するなどして外装体2を封止することで
図2に示す電気化学セル1を得ることができる。
【0040】
正極タブ8、負極タブ9の取り付けは、導電ペーストによる貼り付け、あるいは溶接などの接合手法により実施できる。タブの溶接はレーザー溶接、抵抗溶接、超音波溶接などいずれの方法を用いても良い。
【0041】
上述の電気化学セル1において、正極活物質3a、負極活物質4a、導電性炭素などの一般的な粒径は10~50μmであるので、無機固体副粒子を構成するSiO2は前述の活物質あるいは導電性炭素の1/2000~1/5000程度の大きさで、比較すると極めて小さい。
正極層3Bと疑似固体電解質のセパレータ層5と負極層4Bを作成した後で、これらの層を圧着して接合し、リチウムイオンの伝導パスを作成する必要がある。本発明者らは、室温で100kg/ψ10mmの圧力で伝導パスを作成できることを確認できている。
正極層と負極層も含めて全体で薄くなっており、セパレータ層も圧着前より薄くなっていると考えられる。このため、セパレータ層の厚みは、セパレータ層の塗工厚みと、伝導パスを作成するための温度・圧力で決定される。
なお、セパレータ層5の厚みは薄い方が抵抗を小さくできるので電池として好ましいのであるが、電池製造工程内でのショート、電池の収縮膨張を伴う充放電状態・サイクル後のショート、リチウムデンドライトの負極から正極側への成長によるショートなど、品質・安全性の面からみると、セパレータ層5は厚い方が好ましい。このため、前述の大きさの無機固体主粒子5aを用いることで電気化学セル1としての諸特性を満足できるようにすることができる。
また、作製した電池について、充放電において正極あるいは負極が膨潤、収縮が伴う場合にも正負極の短絡防止に寄与する。
【0042】
上述の電気化学セル1を製造する場合に用いる材料に特に制限はないが、これまで説明した構成要素の他に以下のものを例示できる。
・正極活物質または負極活物質:ソフトカーボンやハードカーボンなどの炭素系材料、リチウム、硫黄。Liを含む、または含まない酸化物を利用できる。
・導電助剤:カーボンブラックや、アセチレンブラックなどを添加できる。
・集電体の材料:銅、アルミ、SUS、ニッケルなどを選択できる。
・溶媒:水、アルコール系、ケトン系などを選択できる。
・分散剤、可塑剤を添加してもよい。グリーンシートの作製時に使用されている一般的な分散剤、可塑剤を添加できる。
【0043】
・集電体を構成する箔の厚みは20μm以下とすることができる。
・外装体:金属ラミネート、金属缶、樹脂コーティング、酸化物コーティングの何れかを選択できる。
・電極体の形状:円形、楕円形、多角形などを例示できる。
【0044】
正極層の組成:Li1.3Al0.3Ti1.7P3O12の場合、これに黒鉛を混ぜたものを選択でき、焼成条件:800℃、黒鉛の燃焼を抑える為、窒素やアルゴン雰囲気、真空雰囲気を選択できる。
【0045】
・一括焼成できないもの
一般的な酸化物系固体電解質であるLi1.5Al0.5Ge1.5P3O12(LAGP)などのガラスセラミック系の焼成温度は約800℃である。Li7La3Zr2O12(LLZ)などの結晶系は1000℃以上である。
そのため、活物質として、高エネルギー密度として注目されるリチウム(融点約180℃)や、硫黄(融点115℃)などは一括焼成の場合、電池の構成材料として使用できない。集電材として一般的な、アルミニウム(融点約660℃)も使用できない。
これらに対し、上述の例では、イオン液体を含むセパレータ層5を用いているので、リチウムや硫黄、アルミニウムの使用に際し、熱の問題を生じない。このため、電池特性に優れた電気化学セル1を得ることができる。
【0046】
図4は、正極層3Bと負極層4Bの間にセパレータ層5が介挿された構造において、前述のように電気化学セル1を製造する際、外装体2の内部に電極体7を収容し、外装体2の外部から圧着処理を行って加圧した状態の一例を示す。
図4においては、正極層3Bの詳細構造と負極層4Bの詳細構造は略し、各層とも軟質体からなる1層構造のように示している。
正極層3Bと負極層4Bはいずれもスラリー状の軟質層であるため、加圧の状況によってはこれらが部分的に変形し、
図5に示すようにセパレータ層5をその厚さ方向に潰すように変形するおそれがある。なお、正極層3Bは正極集電体3Aの片面側に、負極層4Bは負極集電体4Aの片面側に塗布されているが、正極集電体3Aと負極集電体4Aは何れも金属箔からなるので、加圧の状況によって
図5に示す状態となるおそれがある。
【0047】
しかし、本実施形態のセパレータ層5にあっては、5μm~30μm程度の径の大きな無機固体主粒子5aを主体とする第1複合粒子5Aを複数有している。無機固体主粒子5aは、圧着処理時の加圧により正極層3Bと負極層4Bが部分的に接近する方向に変形したとして、正極層3Bと負極層4Bの間隔を適度な間隔に維持するセパレータとして機能する。このため、電気化学セル1の製造工程において圧着処理を施したとして、正負極短絡を生じていない電気化学セル1を製造できる。
【0048】
これに対し、
図6に示すように第2複合粒子5Bのみからセパレータ層5が構成されていた場合、
図7に示すように正極層3Bと負極層4Bが部分的に接近する方向に変形すると、正負極短絡を生じるおそれがある。
セパレータ層5に前述の粒径の第1複合粒子5Aを必要数含むことにより、正負極短絡を生じ難い構造の電気化学セル1を提供できる。
【実施例0049】
(実施例試料作成)
イオン液体として、EMI-FSI(1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(フルオロメタンスルホニル)イミド)に、LiTFSI(リチウムビス(トリフルオロメチレンスルホニル)イミド)を1Mとなるように混合した1MのLiTFSI/EMI-FSIを用意した。無機固体主粒子としてSiO2粒子(平均粒径15μm(D50))を用意し、無機固体副粒子としてSiO2粒子(平均粒径0.007μm(D50))を用意した。バインダーはPVdF-HFPを用意した。無機固体主粒子(SiO2主粒子)と無機固体副粒子(SiO2副粒子)は以下に示す表1に記載のように、体積比40:60~100:0の範囲において8種類の割合で用意した。
【0050】
【0051】
イオン液体(1MのLiTFSI/EMI-FSI)をSiO2粒子全体に対し15質量%、バインダー(PVdF-HFP)をSiO2粒子全体に対し40質量%となるように混合し、固形物とアセトンの質量比を28:72となるように秤量し、SiO2粒子とイオン液体と結着剤をアセトンに投入してスラリーを作成した。
作成したスラリーを負極電極シートの片面にメイヤーバーを用いてスラリー膜厚が50μmとなるように塗工し、その後乾燥した。乾燥後の塗工膜は厚み20μmとなった。断面をSEM観察したところ、SiO2粒子が積み上がり多孔質層を形成していることを確認できた。
【0052】
(評価用電池の作製)
評価用電池は、活物質LiCoO
2を集電体上に備えた正極塗工電極(LiCoO
2:導電助剤:複合粒子:バインダー=43:5:47:5)と、前述のスラリーを集電体表面に塗布した負極塗工電極(SiO:導電助剤:複合粒子:バインダー=35:10:45:10)を貼り合わせて電極体を構成し、電極体の外部に電極タブを取り付け、ラミネートフィルムの袋状の外装体に収容した。なお、袋状の外装体の一辺は空いている状態とする。
ここで、正極塗工電極および負極塗工電極に用いた複合粒子は次のようにして作製した。まず、SiO
2粒子(平均粒径0.007μm(D
50))とイオン液体(1MのLiTFSI/EMI-FSI)とを体積比35:65の割合としてアセトンと混合し、その後アセトンを蒸発させることにより複合粒子を得た。
袋状の外装体の両面から100℃、100kg/cm
2の圧力でプレスし、正極塗工電極とセパレータ層と負極塗工電極の界面を密着させた。
次に、外装体内部に電解液を注入し、電極体の全体が電解液に浸る程度電解液を入れ、それぞれ所定時間40分間エージング(放置)し、各エージング時間経過後、余分な電解液を捨てるとともに、外装体の残り一辺を熱圧着により封止し、
図2に示す構成の評価用電池を作製した。
【0053】
(ショート発生率測定)
表1に示すNo.1~No.8の各スラリーを用いた評価用電池を50個ずつ作成し、評価用電池を化成処理後、個々の評価用電池のショート発生率を測定した。各評価用電池において適用したスラリー以外の構成は同等である。測定結果を以下の表2に示す。
【0054】
【0055】
ショート発生率測定試験においてショートしていない良品の評価用電池をそれぞれ5個ずつ用いて充放電のサイクル特性を測定した。
5個の評価用電池において初期容量の80%を切ったサイクルをサイクル寿命とする。サイクルの基準は500cycとする。その結果を以下の表3に記載する。なお、サイクル試験において、サイクル基準を500cycとした場合、サイクル基準以上の試料は試験を打ち切ってそれ以上の試験はしていない。
【0056】
【0057】
表2に示す結果から、ショートを生じない方が良いので、No.1~No.7の試料における主粒子と副粒子の比率が望ましいと考えられ、表3に示す結果から、サイクル特性はNo.3~No.9の試料の主粒子と副粒子の比率が望ましいと考えられる。
このため、無機固体主粒子(SiO2主粒子)と無機固体副粒子(SiO2副粒子)を混合する場合の体積比は、No.3~No.7の範囲、即ち、無機固体主粒子(SiO2主粒子)を50:50~30:70の割合で混合することが望ましいと考えられる。
1…電池(電気化学セル)、2…外装体(ケーシング)、3…正極体、3A…正極集電体、3a…正極活物質、3B…正極層、4…負極体、4A…負極集電体、4a…負極活物質、4B…負極層、5…セパレータ層、5A…第1複合粒子、5a…無機固体主粒子、5B…第2複合粒子、5b…無機固体副粒子、6…電解液、7…電極体、8…正極タブ、9…負極タブ、e…イオン液体コーティング層。