(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129530
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】コイルユニット
(51)【国際特許分類】
H01F 38/18 20060101AFI20240919BHJP
H02J 50/10 20160101ALI20240919BHJP
【FI】
H01F38/18
H02J50/10
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038810
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】勝谷 仁
(57)【要約】
【課題】所望の充給電の出力及び効率を確保しつつ、送電側の機器及び部材の保守容易性を向上させることができるコイルユニットを提供する。
【解決手段】コイルユニットは、コイル21を収容する筐体11と、コア部材12とを備える。コア部材12は、コイル21の空芯領域21aに挿入されるとともに、筐体11を貫通して外部に突出する。コア部材12は、空芯領域21aに配置される壁部12bと、壁部12bの開口端を開閉する蓋部12cとを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受電装置に非接触で電力を伝送するコイルと、
前記コイルを収容する筐体と、
前記コイルの空芯領域に挿入されるとともに、前記筐体を貫通して外部に突出するコア部材と
を備え、
前記コア部材は、
前記空芯領域に配置される枠状の壁部と、
前記壁部の開口端を開閉する蓋部と
を備える
コイルユニット。
【請求項2】
前記蓋部の表面は、路面から外部に露出するとともに前記路面よりも高い視認性を有する
請求項1に記載のコイルユニット。
【請求項3】
前記筐体及び前記コア部材を支持するとともに、前記壁部によって囲まれる中空の内部空間に通じる貫通孔が形成された支持部材を備える
請求項1又は請求項2に記載のコイルユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイルユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、より多くの人々が手ごろで信頼でき、持続可能かつ先進的なエネルギーへのアクセスを確保できるようにするため、エネルギーの効率化に貢献する二次電池を搭載する車両での充給電に関する研究開発が行われている。
従来、非接触での電力伝送により車両の外部から車両に電力を供給する非接触電力伝送システムでは、送電側のコイルユニットを走行路に埋設する構造が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2及び特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-105435号公報
【特許文献2】特開2018-18926号公報
【特許文献3】特開2022-12377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、二次電池を搭載する車両での充給電に関する技術においては、所望の充給電の出力及び効率を確保しつつ、送電側の機器の保守容易性を向上させることが望まれている。例えば、上記従来技術の送電側のコイルユニットでは、筐体に収容された状態で走行路に埋設される場合、送電側の機器及び部材に対する各種の保守作業に煩雑な手間を要するという問題が生じる。
【0005】
本発明は、所望の充給電の出力及び効率を確保しつつ、送電側の機器及び部材の保守容易性を向上させることができるコイルユニットを提供することを目的とする。そして、延いてはエネルギーの効率化に寄与するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決して係る目的を達成するために、本発明は以下の態様を採用した。
(1):本発明の一態様に係るコイルユニット(例えば、実施形態でのコイルユニット10)は、受電装置(例えば、実施形態での受電装置T)に非接触で電力を伝送するコイル(例えば、実施形態でのコイル21)と、前記コイルを収容する筐体(例えば、実施形態での筐体11)と、前記コイルの空芯領域(例えば、実施形態での空芯領域21a)に挿入されるとともに、前記筐体を貫通して外部に突出するコア部材(例えば、実施形態でのコア部材12)とを備え、前記コア部材は、前記空芯領域に配置される枠状の壁部(例えば、実施形態での壁部12b)と、前記壁部の開口端を開閉する蓋部(例えば、実施形態での蓋部12c)とを備える。
【0007】
(2):上記(1)に記載のコイルユニットでは、前記蓋部の表面(例えば、実施形態での上面12A)は、路面(例えば、実施形態での路面S)から外部に露出するとともに前記路面よりも高い視認性を有してもよい。
【0008】
(3):上記(1)又は(2)に記載のコイルユニットは、前記筐体及び前記コア部材を支持するとともに、前記壁部によって囲まれる中空の内部空間(例えば、実施形態での内部空間12e)に通じる貫通孔(例えば、実施形態での貫通孔13a)が形成された支持部材(例えば、実施形態での支持部材13)を備えてもよい。
【発明の効果】
【0009】
上記(1)によれば、コイルの空芯領域に配置されることで結合係数を向上させるコア部材は、壁部の開口端を開閉する蓋部を備えることにより、壁部によって囲まれる中空の内部空間を蓋部によって外部に開放することができる。壁部の内部空間又は壁部の内部空間に通じる他の内部空間に配置される各種の機器及び部材等を、容易に外部に露出させることができ、各種の保守作業の容易性を向上させることができる。
【0010】
上記(2)の場合、蓋部の表面は路面から外部に露出することにより、例えば蓋部が走行路の内部に埋設される場合に比べて、車両等の移動体に搭載される受電装置とコイルユニットとの間の距離が増大することを抑制することができる。蓋部の表面は路面よりも高い視認性を有することにより、受電装置を搭載する車両等の移動体を容易にコイルユニットに誘導することができる。
【0011】
上記(3)の場合、壁部によって囲まれる中空の内部空間に通じる貫通孔が形成された支持部材を備えることにより、支持部材の貫通孔又は支持部材の貫通孔に通じる他の内部空間に配置される各種の機器及び部材等を、容易に外部に露出させることができ、各種の保守作業の容易性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態でのコイルユニットの構成を示す斜視図。
【
図2】本発明の実施形態でのコイルユニットの構成を示す分解斜視図。
【
図3】本発明の実施形態でのコイルユニットを、
図1に示すA-A線の位置でY-Z平面により切断して示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態に係るコイルユニットについて、添付図面を参照しながら説明する。
図1は、実施形態でのコイルユニット10の構成を示す斜視図である。
図2は、実施形態でのコイルユニット10の構成を示す分解斜視図である。
図3は、実施形態でのコイルユニット10を、実施形態でのコイルユニットを、
図1に示すA-A線の位置でY-Z平面により切断して示す断面図である。
以下において、3次元空間で互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸の各軸方向は、各軸に平行な方向である。例えば
図1から
図3に示すように、Z軸方向は鉛直方向等のコイルユニット10の上下方向に平行であり、X軸方向及びY軸方向は水平方向等のコイルユニット10の上下方向に直交する方向である。
【0014】
実施形態のコイルユニット10は、例えば、非接触での電力伝送により車両等の移動体の外部から移動体の受電装置Tに電力を供給する非接触電力伝送システムの一部を構成する。実施形態のコイルユニット10は、例えば、車両の走行路等に設置される送電装置に備えられる。
実施形態のコイルユニット10は、例えば、車両等の走行路の地下に埋設される角筒状のマンホールMHの上部に配置される。マンホールMHの内部空間には、例えば、非接触電力伝送システムの送電装置を構成する各種の機器及び部材が収容されている。
【0015】
図1、
図2及び
図3に示すように、コイルユニット10は、例えば、筐体11と、コア部材12と、支持部材13と、コイル21と、絶縁部材22と、フェライトコア23とを備える。
筐体11の外形は、例えば矩形枠状に形成されている。筐体11は、例えば、後述するコイル21、絶縁部材22及びフェライトコア23に対して、上下方向の上方側並びに上下方向に直交する方向での内方側及び外方側を取り囲むように設けられる。筐体11は、後述するコイル21、絶縁部材22及びフェライトコア23を収容する。
【0016】
コア部材12は、例えば、板状部12aと、壁部12bと、蓋部12cとを備える。コア部材12は、例えば珪素鋼板等の電磁鋼板のような磁性材料によって形成されている。
板状部12aの外形は、例えば中央部を厚さ方向に貫通する貫通孔12dが形成された矩形枠状に形成されている。板状部12aは、例えば上下方向で筐体11の下方側に積層されるように配置されることで、筐体11の内面との間にコイル21、絶縁部材22及びフェライトコア23が収容される収容空間を形成する。
【0017】
壁部12bの外形は、例えば板状部12aの貫通孔12dを取り囲む周縁部から上下方向の上方に突出する矩形枠状に形成されている。壁部12bは、後述するコイル21の空芯領域21a並びに絶縁部材22及びフェライトコア23の各貫通孔22a,23aに配置される。壁部12bは、筐体11の貫通孔11aに挿入されることで、筐体11の上面11Aから上方に突出する。
蓋部12cの外形は、例えば矩形板状に形成されている。蓋部12cは、壁部12bの上部開口端を開閉する。蓋部12cの上面12Aは、例えば適宜の彩色、模様及び表示等の少なくともいずれかによって、コイルユニット10が設けられる走行路の路面Sよりも高い視認性を有するように形成されている。
【0018】
支持部材13の外形は、例えば厚さ方向に貫通孔13aが形成された矩形板状に形成されている。支持部材13は、例えば、マンホールMHの上部に配置されるとともに、筐体11及びコア部材12を支持する。
【0019】
コイル21の外形は、例えば筐体11の内面に沿った渦巻状に形成されている。
絶縁部材22の外形は、例えば厚さ方向に貫通孔22aが形成された矩形のシート状に形成されている。絶縁部材22は、電気的絶縁性を有する材料によって形成されている。
フェライトコア23の外形は、例えば厚さ方向に貫通孔232aが形成された矩形板状に形成されている。
コイル21、絶縁部材22及びフェライトコア23は、上下方向に沿って順次に積層されて筐体11の内部に配置される。
【0020】
図3に示すように、コイルユニット10は、例えば、地中Eに埋設されるマンホールMHの上部に配置され、車両等の走行路を形成するコンクリート又はアスファルト等の舗装材ASによって固定されている。コイルユニット10は、例えば、走行路の路面Sとコア部材12の蓋部12cの上面12Aとが同一平面を形成するように配置される。
コイルユニット10において、コア部材12の壁部12bによって取り囲まれる中空の内部空間12eと、支持部材13の貫通孔13aと、マンホールMHの内部空間Maとは、互いに通じている。例えば、コア部材12の蓋部12cが取り外されることで壁部12bの上部開口端が開状態にされると、支持部材13の貫通孔13a及びマンホールMHの内部空間Maが外部に開放される。例えば、コア部材12の蓋部12cは、壁部12bの上部開口端を開放することによって、マンホールMHの内部空間Maに収容されている非接触電力伝送システムの送電装置を構成する各種の機器及び部材等を外部に露出させる。
【0021】
上述したように、実施形態のコイルユニット10によれば、コイル21の空芯領域21aに配置されることで結合係数を向上させるコア部材12は、壁部12bの上部開口端を開閉する蓋部12cを備えることにより、壁部12bによって囲まれる中空の内部空間12eを蓋部12cによって外部に開放することができる。壁部12bの内部空間12e又は壁部12bの内部空間12eに通じる他の内部空間に配置される各種の機器及び部材等を、容易に外部に露出させることができ、各種の保守作業の容易性を向上させることができる。
【0022】
壁部12bによって囲まれる中空の内部空間12eに通じる貫通孔13aが形成された支持部材13を備えることにより、支持部材13の貫通孔13a又は支持部材13の貫通孔13aに通じる他の内部空間に配置される各種の機器及び部材等を、容易に外部に露出させることができ、各種の保守作業の容易性を向上させることができる。
壁部12bの内部空間12eと、支持部材13の貫通孔13aと、マンホールMHの内部空間Maとは、互いに通じていることにより、例えば非接触電力伝送システムの送電装置を構成する各種の機器及び部材等がマンホールMHの内部空間Maに収容されている場合であっても、保守容易性を向上させることができる。
【0023】
蓋部12cの上面12Aは路面Sから外部に露出することにより、例えば蓋部12cが走行路の内部に埋設される場合に比べて、車両等の移動体に搭載される受電装置とコイルユニット10との間の距離が増大することを抑制することができる。磁路長の増大を抑制することによって、非接触の電力伝送の出力及び効率を向上させることができる。
蓋部12cの上面12Aは路面Sよりも高い視認性を有することにより、受電装置を搭載する車両等の移動体を容易にコイルユニット10に誘導することができる。例えば、走行路の走行区分線等を検出して走行支援を制御する装置を搭載する移動体の場合、蓋部12cの上面12Aを精度良く検出することができる。移動体に搭載される受電装置とコイルユニット10との位置合わせの精度を向上させることができるので、非接触の電力伝送の出力及び効率を向上させることができる。
【0024】
本発明の実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0025】
10…コイルユニット、11…筐体、12…コア部材、12a…板状部、12b…壁部、12c…蓋部、12d…貫通孔、12e…内部空間、12A…上面(表面)、13…支持部材、13a…貫通孔、21…コイル、21a…空芯領域、22…絶縁部材、23…フェライトコア、15…コイル、S…路面、T…受電装置、MH…マンホール、Ma…内部空間。