(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129536
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】バイナリー発電システム
(51)【国際特許分類】
F01K 25/10 20060101AFI20240919BHJP
F16T 1/20 20060101ALI20240919BHJP
F16T 1/24 20060101ALN20240919BHJP
【FI】
F01K25/10 R
F16T1/20 A
F16T1/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038821
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】591162022
【氏名又は名称】巴工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【弁理士】
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100160886
【弁理士】
【氏名又は名称】久松 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】岩永 陽二朗
(72)【発明者】
【氏名】食野 悠
【テーマコード(参考)】
3G081
【Fターム(参考)】
3G081BA02
3G081BB04
3G081BB07
3G081BC11
3G081BC15
(57)【要約】 (修正有)
【課題】圧力計の検出結果によらずに、ドレン排出を行うことが可能なバイナリー発電システムを提供する。
【解決手段】熱交換器に供給される蒸気の流量を調節する第1温度調節弁と、熱交換器で発生したドレンを回収するドレントラップと、を有し、ドレントラップは、ドレンが流入して貯留される貯留空間が形成されたケーシングと、貯留空間のドレンを排出する排出弁と、蒸気を貯留空間に導入する給気弁と、貯留空間の蒸気を排出する排気弁と、貯留空間に配置されたフロートを有し、該フロートが所定低位まで上昇すると排出弁を開弁し、貯留空間の上流側の圧力と下流側の圧力との圧力差によって貯留空間のドレンを排出するトラップ動作と、フロートが所定高位まで上昇すると給気弁を開弁すると共に排気弁を閉弁し、蒸気の圧力によって貯留空間のドレンを排出するポンプ動作とを実行する弁作動機構と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気を熱交換器に供給し、作動媒体を蒸気化することにより発電を行うバイナリー発電システムにおいて、
前記熱交換器に供給される蒸気の流量を調節する第1温度調節弁と、
前記熱交換器で発生したドレンを回収するドレントラップと、を有し、
前記ドレントラップは、
ドレンが流入して貯留される貯留空間が形成されたケーシングと、
前記貯留空間のドレンを排出する排出弁と、
蒸気を前記貯留空間に導入する給気弁と、
前記貯留空間の蒸気を排出する排気弁と、
前記貯留空間に配置されたフロートを有し、該フロートが所定低位まで上昇すると前記
排出弁を開弁し、前記貯留空間の上流側の圧力と下流側の圧力との圧力差によって前記貯
留空間のドレンを排出するトラップ動作と、前記フロートが所定高位まで上昇すると前記給気弁を開弁すると共に前記排気弁を閉弁し、前記蒸気の圧力によって前記貯留空間のドレンを排出するポンプ動作とを実行する弁作動機構と、
を備えることを特徴とするバイナリー発電システム。
【請求項2】
前記熱交換器は、間接熱交換器であり、
さらに、前記間接熱交換器で昇温された温水が流入することにより、作動媒体を蒸気化する蒸発器、
を有することを特徴とする請求項1に記載のバイナリー発電システム。
【請求項3】
前記間接熱交換器で昇温された温水の温度が、目標温度範囲に収まるように、前記第1温度調節弁の開度を調節するコントローラ、
を有することを特徴とする請求項2に記載のバイナリー発電システム。
【請求項4】
作動媒体を循環させるための動力を生成する媒体循環ポンプを有し、
前記コントローラは、前記蒸発器で蒸気化された作動媒体の温度が、当該作動媒体の圧力に対応した飽和温度よりも所定温度以上高くなるように、前記媒体循環ポンプの駆動を制御する、
ことを特徴とする請求項3に記載のバイナリー発電システム。
【請求項5】
前記間接熱交換器に流入する温水を予め昇温する顕熱回収器と、
前記ドレントラップから排出されるドレンを前記顕熱回収器に流入させ、前記顕熱回収器から流出したドレンを移送先に向かって送液する主配管と、
前記顕熱回収器の入側に接続された前記主配管から分岐して、前記顕熱回収器の出側に接続された前記主配管にドレンを分岐流入させる分岐配管と、
前記顕熱回収器に流入するドレンの流量を調節する第2温度調節弁と、
を有することを特徴とする請求項3に記載のバイナリー発電システム。
【請求項6】
前記コントローラは、前記顕熱回収器から前記間接熱交換器に向かう温水の温度が設定値となるように、前記第2温度調節弁の開度を調節する処理を行う、或いはドレンの移送先の要求温度を下回らない条件下で前記顕熱回収器に流入するドレンの流量が最大化されるように、前記第2温度調節弁の開度を調節する処理を行う、
ことを特徴とする請求項5に記載のバイナリー発電システム。
【請求項7】
作動媒体を循環させるための動力を生成する媒体循環ポンプを有し、
前記コントローラは、前記蒸発器で蒸気化された作動媒体の温度が、当該作動媒体の圧力に対応した飽和温度よりも所定温度以上高くなるように、前記媒体循環ポンプの駆動を制御する、
ことを特徴とする請求項6に記載のバイナリー発電システム。
【請求項8】
前記蒸発器に流入する作動媒体を予熱する予熱器を有し、
前記コントローラは、前記予熱器から前記蒸発器に向かう作動媒体の温度が設定値となるように、前記第2温度調節弁の開度を調節する処理を行う、或いはドレンの移送先の要求温度を下回らない条件下で前記顕熱回収器に流入するドレンの流量が最大化されるように、前記第2温度調節弁の開度を調節する処理を行う、
ことを特徴とする請求項5に記載のバイナリー発電システム。
【請求項9】
作動媒体を循環させるための動力を生成する媒体循環ポンプを有し、
前記コントローラは、前記蒸発器で蒸気化された作動媒体の温度が、当該作動媒体の圧力に対応した飽和温度よりも所定温度以上高くなるように、前記媒体循環ポンプの駆動を制御する、
ことを特徴とする請求項8に記載のバイナリー発電システム。
【請求項10】
前記熱交換器は、蒸発器であることを特徴とする請求項1に記載のバイナリー発電システム。
【請求項11】
前記蒸発器で蒸気化した作動媒体の温度が、目標温度範囲に収まるように、前記第1温度調節弁の開度を調節するコントローラを有することを特徴とする請求項10に記載のバイナリー発電システム。
【請求項12】
更に、前記蒸発器に流入する作動媒体を予熱するための予熱器と、
前記ドレントラップから排出されるドレンを前記予熱器に流入させるドレン配管と、
を有することを特徴とする請求項11に記載のバイナリー発電システム。
【請求項13】
更に、前記蒸発器に流入する作動媒体を予熱するための予熱器と、
前記ドレントラップから排出されるドレンを前記予熱器に流入させ、前記予熱器から流出したドレンを移送先に向かって送液する主配管と、
前記予熱器の入側に接続された前記主配管から分岐して、前記予熱器の出側に接続された前記主配管にドレンを分岐流入させる分岐配管と、
前記予熱器に流入するドレンの流量を調節する第2温度調節弁を有し、
前記コントローラは、前記予熱器から前記蒸発器に向かう作動媒体の温度が設定値となるように、前記第2温度調節弁の開度を調節する処理を行う、或いはドレンの移送先の要求温度を下回らない条件下で前記予熱器に流入するドレンの流量が最大化されるように、前記第2温度調節弁の開度を調節する処理を行う、
ことを特徴とする請求項11に記載のバイナリー発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱源である蒸気により、沸点の低い媒体を加熱・蒸発させ、かかる蒸気でタービンを駆動して発電するバイナリー発電システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
低温の熱源(例えば、地熱)から熱を回収して発電を行うバイナリー発電装置が知られている。このバイナリー発電装置は、低沸点の有機化合物などを作動媒体としており、通常の蒸気タービンを用いた発電装置に比べて低温の熱源であっても発電することができる。
【0003】
バイナリー発電装置のように蒸気を熱源とする発電装置では、蒸発器の内部で蒸気が凝縮してドレン(復水)が発生する。そして、このドレンが排出されずに蒸発器に滞留する現象(ストール現象)が発生する場合がある。すなわち、バイナリー発電では、発電機を安定的に運転するために、蒸発器に向かう蒸気の流量を調節する温度調節弁が設けられている場合があり、かかる温度調節弁を設けることにより、ストール現象が発生する。
ストール現象は、主として以下の要因で発生すると考えられる。
(1)運転開始時など熱負荷が低く、系が安定しないため、蒸気供給量が変動する。
(2)ドレンを排出する配管に目詰まりやスケール付着が起こり、背圧が高くなる。
(3)電力需要の変動、運転時の条件が変更されることにより、蒸気供給量が変動する。
なお、蒸発器における負荷率が所定値を下回ると、ストール現象が発生する。所定値は、蒸発器の容量、運転条件によって変わるため、一義的に定義できないが、例えば、以下の式(1)に基づき、算出することができる。
【数1】
ただし、T1:蒸発器に供給する蒸気の飽和温度、T2:ドレントラップ出口の背圧に対応する飽和温度、Tm:蒸発器に供給される熱交換媒体(二次系を流れる媒体)の平均温度である。
【0004】
ストール現象が発生すると、蒸発器における液面レベルが変わり、蒸発器の伝熱面積も変動するため、発電の安定性が損なわれる。また、ウォーターハンマー現象による金属疲労の問題も懸念される。
【0005】
特許文献1には、0.2MPaG以下の圧力の蒸気を熱源として作動媒体を蒸発させる蒸発器と、前記蒸発器で蒸発した気体の作動媒体を膨張させて回転駆動力を発生する膨張機と、前記膨張機で膨張した気体の作動媒体を液体に凝縮する凝縮器と、前記凝縮器から蒸発器に向って作動媒体を循環させる循環ポンプとを備えるバイナリー発電装置の運転方法であって、前記蒸発器の入側の蒸気圧力を計測する入側蒸気圧力計と、前記蒸発器の出側の蒸気圧力を計測する出側蒸気圧力計と、前記蒸発器内に溜まったドレンを蒸気配管外に強制的に排出する強制ドレン排出手段と、を設けておき、前記出側蒸気圧力計で計測された蒸気圧力P3が、入側蒸気圧力計で計測された蒸気圧力P1より大きくなった場合に、前記強制ドレン排出手段を作動させることを特徴とするバイナリー発電装置の運転方法が開示されている。
【0006】
特許文献2には、熱交換器で発生したドレンが流入するドレントラップにおいて、ドレントラップの貯留空間における水位に応じて、機械的に各種の弁を動作させることにより、ドレンを強制排出するメカニカルポンプが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第6173235号
【特許文献2】国際公開第2019/069558
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1のバイナリー発電装置では、蒸発器の入側及び出側にそれぞれ入側蒸気圧力計及び出側蒸気圧力計を設置するとともに、これらの圧力計の測定結果に基づき、強制ドレン排出手段の動作を制御しているため、強制ドレン排出手段の動作タイミングが遅延し、発電の安定性及び発電効率が損なわれる場合があった。また、蒸気に含まれるスケールが入側蒸気圧力計に付着することにより、強制ドレン排出手段の正常な動作が妨げられるおそれがあった。
さらに、特許文献1のシステムには、温度調整弁が実装されていないため、熱源が変動したときに熱量を制御することが難しい。
【0009】
特許文献2には、メカニカルポンプをバイナリー発電に用いることは開示されていない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のバイナリー発電システムは、(1)蒸気を熱交換器に供給し、作動媒体を蒸気化することにより発電を行うバイナリー発電システムにおいて、前記熱交換器に供給される蒸気の流量を調節する第1温度調節弁と、前記熱交換器で発生したドレンを回収するドレントラップと、を有し、前記ドレントラップは、ドレンが流入して貯留される貯留空間が形成されたケーシングと、前記貯留空間のドレンを排出する排出弁と、蒸気を前記貯留空間に導入する給気弁と、前記貯留空間の蒸気を排出する排気弁と、前記貯留空間に配置されたフロートを有し、該フロートが所定低位まで上昇すると前記排出弁を開弁し、前記貯留空間の上流側の圧力と下流側の圧力との圧力差によって前記貯留空間のドレンを排出するトラップ動作と、前記フロートが所定高位まで上昇すると前記給気弁を開弁すると共に前記排気弁を閉弁し、前記蒸気の圧力によって前記貯留空間のドレンを排出するポンプ動作とを実行する弁作動機構と、を備えることを特徴とする。
【0011】
(2)前記熱交換器は、間接熱交換器であり、さらに、前記間接熱交換器で昇温された温水が流入することにより、作動媒体を蒸気化する蒸発器、を有することを特徴とする上記(1)に記載のバイナリー発電システム。
【0012】
(3)前記間接熱交換器で昇温された温水の温度が、目標温度範囲に収まるように、前記第1温度調節弁の開度を調節するコントローラ、を有することを特徴とする上記(2)に記載のバイナリー発電システム。
【0013】
(4)作動媒体を循環させるための動力を生成する媒体循環ポンプを有し、前記コントローラは、前記蒸発器で蒸気化された作動媒体の温度が、当該作動媒体の圧力に対応した飽和温度よりも所定温度以上高くなるように、前記媒体循環ポンプの駆動を制御する、ことを特徴とする上記(3)に記載のバイナリー発電システム。
【0014】
(5)前記間接熱交換器に流入する温水を予め昇温する顕熱回収器と、前記ドレントラップから排出されるドレンを前記顕熱回収器に流入させ、前記顕熱回収器から流出したドレンを移送先に向かって送液する主配管と、前記顕熱回収器の入側に接続された前記主配管から分岐して、前記顕熱回収器の出側に接続された前記主配管にドレンを分岐流入させる分岐配管と、前記顕熱回収器に流入するドレンの流量を調節する第2温度調節弁と、を有することを特徴とする上記(3)に記載のバイナリー発電システム。
【0015】
(6)前記コントローラは、前記顕熱回収器から前記間接熱交換器に向かう温水の温度が設定値となるように、前記第2温度調節弁の開度を調節する処理を行う、或いはドレンの移送先の要求温度を下回らない条件下で前記顕熱回収器に流入するドレンの流量が最大化されるように、前記第2温度調節弁の開度を調節する処理を行う、ことを特徴とする上記(5)に記載のバイナリー発電システム。
【0016】
(7)作動媒体を循環させるための動力を生成する媒体循環ポンプを有し、前記コントローラは、前記蒸発器で蒸気化された作動媒体の温度が、当該作動媒体の圧力に対応した飽和温度よりも所定温度以上高くなるように、前記媒体循環ポンプの駆動を制御する、
ことを特徴とする上記(6)に記載のバイナリー発電システム。
【0017】
(8)前記蒸発器に流入する作動媒体を予熱する予熱器を有し、前記コントローラは、前記予熱器から前記蒸発器に向かう作動媒体の温度が設定値となるように、前記第2温度調節弁の開度を調節する処理を行う、或いはドレンの移送先の要求温度を下回らない条件下で前記顕熱回収器に流入するドレンの流量が最大化されるように、前記第2温度調節弁の開度を調節する処理を行う、ことを特徴とする上記(5)に記載のバイナリー発電システム。
【0018】
(9)作動媒体を循環させるための動力を生成する媒体循環ポンプを有し、前記コントローラは、前記蒸発器で蒸気化された作動媒体の温度が、当該作動媒体の圧力に対応した飽和温度よりも所定温度以上高くなるように、前記媒体循環ポンプの駆動を制御する、
ことを特徴とする上記(8)に記載のバイナリー発電システム。
【0019】
(10)前記熱交換器は、蒸発器であることを特徴とする上記(1)に記載のバイナリー発電システム。
【0020】
(11)前記蒸発器で蒸気化した作動媒体の温度が、目標温度範囲に収まるように、前記第1温度調節弁の開度を調節するコントローラを有することを特徴とする上記(10)に記載のバイナリー発電システム。
【0021】
(12)更に、前記蒸発器に流入する作動媒体を予熱するための予熱器と、前記ドレントラップから排出されるドレンを前記予熱器に流入させるドレン配管と、を有することを特徴とする上記(11)に記載のバイナリー発電システム。
【0022】
(13)更に、前記蒸発器に流入する作動媒体を予熱するための予熱器と、前記ドレントラップから排出されるドレンを前記予熱器に流入させ、前記予熱器から流出したドレンを移送先に向かって送液する主配管と、前記予熱器の入側に接続された前記主配管から分岐して、前記予熱器の出側に接続された前記主配管にドレンを分岐流入させる分岐配管と、前記予熱器に流入するドレンの流量を調節する第2温度調節弁を有し、前記コントローラは、前記予熱器から前記蒸発器に向かう作動媒体の温度が設定値となるように、前記第2温度調節弁の開度を調節する処理を行う、或いはドレンの移送先の要求温度を下回らない条件下で前記予熱器に流入するドレンの流量が最大化されるように、前記第2温度調節弁の開度を調節する処理を行う、ことを特徴とする上記(11)に記載のバイナリー発電システム。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、フロートを利用してドレンを強制排出する構成となっているため、発電の安定性及び発電効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】バイナリー発電システムの概略図である(第1実施形態)。
【
図3】ドレントラップの一部における拡大図である。
【
図4】バイナリー発電システムの概略図である(第2実施形態)。
【
図5】バイナリー発電システムの概略図である(第3実施形態)。
【
図6】バイナリー発電システムの概略図である(第4実施形態)。
【
図7】バイナリー発電システムの概略図である(第5実施形態)。
【
図8】バイナリー発電システムの概略図である(第6実施形態)。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態のバイナリー発電システムの概略図である。本実施形態のバイナリー発電システム1は、熱源としての蒸気を供給する一次系10と、一次系10の蒸気によって加熱された温水を循環させる二次系(温水循環ライン)20と、二次系20の温水によって加熱された作動媒体(蒸気)を用いてタービンを回転させ、バイナリー発電を行う三次系30と、三次系30を流れる作動媒体(蒸気)を冷却して液相状態に戻す四次系40とを含む。
【0026】
一次系10は、主蒸気配管11、分岐蒸気配管12、第1ドレン配管13、温度制御弁(第1温度調節弁に相当する)14、間接熱交換器15、ポンプ機能付きのドレントラップ16、第2ドレン配管17、蒸気排出管18を含む。主蒸気配管11には、熱源としての蒸気が供給される。蒸気の供給源には、地熱流体などを用いることができる。地熱流体とは、マグマによって熱せられ、高いエネルギーを有する高温・高圧の蒸気のことである。なお、蒸気は、ボイラーで発生する余剰蒸気であってもよい。蒸気の圧力は特に限定しない。本実施形態のバイナリー発電システムは、蒸気圧力の高低を問わないから、高圧の蒸気であっても、低圧の蒸気であっても、本実施形態のバイナリー発電システムの熱源として用いることができる。
【0027】
分岐蒸気配管12は、主蒸気配管11から分岐しており、ドレントラップ16に対して蒸気を供給する。蒸気排出管18は、ドレントラップ16に流入した蒸気を第1ドレン配管13に排出する。
第1ドレン配管13は、間接熱交換器15で発生したドレンを、ドレントラップ16に流入させ、第2ドレン配管17は、ドレントラップ16に流入したドレンを排出する。
第1ドレン配管13及び第2ドレン配管17には、ドレンの逆流を防止する逆止弁(不図示)が設けられている。なお、蒸気排出管18は、第1ドレン配管13の逆止弁よりも上流側の位置に接続されており、かかる位置から第1ドレン配管13に対して蒸気を排出する構成となっている。
【0028】
温度制御弁14は、主蒸気配管11に設けられており、間接熱交換器15に流入する蒸気の流量を調節する。温度調節弁14には、公知の電動弁、空圧弁を用いることができる。間接熱交換器15は、主蒸気配管11から流入する蒸気(つまり、一次系10を流れる蒸気)と、二次系20を流れる温水との熱交換を行う機能を有している。間接熱交換器15は、バイナリー発電システムから分解できる構造となっている。したがって、間接熱交換器15にスケールが付着して、熱伝達効率が低下した場合には、間接熱交換器15を分解してスケールを取り除くことにより、メンテナンスを行うことができる。
本実施形態では、熱源としての蒸気を供給する一次系10と、バイナリー発電を行う三次系30との間に二次系20を介在させている。これにより、蒸気に含まれるスケール成分などが、蒸発器22(後述する)の伝熱面に付着して、熱伝達の効率が低下することを防止できる。バイナリー発電システムに実装される蒸発器22は、省スペース化のため、一般的に分解不可能な構造となっている。したがって、蒸発器22にスケール成分が付着すると、分解してメンテナンスを行うことができない。本実施形態では、二次系20を介在させて、蒸気に含まれるスケール成分などを、蒸発器22(後述する)の伝熱面に付着しにくくすることにより、メンテナンスフリーを指向している。
【0029】
二次系20は、温水循環配管21、蒸発器22、温水循環ポンプ23、温水温度検出部24を含む。温水循環ポンプ23を作動させることにより、温水循環配管21の内部において温水を循環させることができる。間接熱交換器15及び蒸発器22は、温水循環配管21の管路に設けられており、間接熱交換器15において加熱された温水が、蒸発器22に流入して、三次系30を流れる作動媒体(液体)を加熱することができる。温水温度検出部24は、間接熱交換器15から蒸発器22に向かって流れる温水の温度を検出して、その検出結果をコントローラ70に送信する。
【0030】
コントローラ70は、温度制御弁14の動作を制御して、間接熱交換器15から蒸発器22に向かって流れる温水の温度が目標温度範囲に含まれるように制御する。目標温度範囲は、予め設定した設定温度に対して±1℃以内が好ましい。また、温度の変動幅を、0.3℃/S以内に制限することが望ましい。設定温度は、例えば、供給される蒸気の温度及び供給蒸気量に基づき、適宜設定することができる。
なお、コントローラ70は、バイナリー発電システム全体の制御を司り、本明細書に記載する処理が実現できれば、ハードウェア構成は特に限定しない。例えば、単一のCPUを用いてコントローラ70を実現してもよいし、複数のCPUを用いてコントローラ70を実現してもよい。
例えば、検出温度が目標温度範囲に達しない場合、コントローラ70は、温度制御弁14の開度を上げて、二次系20を流れる温水の温度を上昇させる処理を行う。
一方、検出温度が目標温度範囲を超過している場合、コントローラ70は、温度制御弁14の開度を絞り、二次系20を流れる温水の温度を下降させる処理を行う。
【0031】
三次系30は、媒体循環配管31、媒体圧力検出部32、媒体温度検出部33、発電機34、凝縮器35、レシーバタンク36、媒体循環ポンプ37を含む。媒体循環ポンプ37を作動させることにより、媒体循環配管31の内部において作動媒体を循環させることができる。作動媒体には、水よりも沸点の低いアンモニア水、ペンタン、代替フロンなどを用いることができる。媒体圧力検出部32は、蒸発器22から発電機34に向かう作動媒体(蒸気)の圧力を検出し、その検出結果をコントローラ70に送信する。媒体温度検出部33は、蒸発器22から発電機34に向かう作動媒体(蒸気)の温度を検出し、その検出結果をコントローラ70に送信する。
【0032】
コントローラ70は、媒体圧力検出部32及び媒体温度検出部33の検出結果に基づき、検出した圧力に対応した作動媒体の飽和温度よりも、実際の作動媒体(蒸気)の温度が所定温度以上高くなるように、媒体循環ポンプ37の駆動を制御する。かかる制御を実施することにより、発電機34に向かう作動媒体(蒸気)の中に液体が含まれ、この液体が発電機34に衝突することにより、発電機34(タービン)を破損するなどのトラブルの発生を防止することができる。所定温度は、好ましくは3℃以上10℃以下である。具体的には、作動媒体(蒸気)の温度が低い場合には、蒸発器22に供給される作動媒体(液体)の流量を下げることにより、作動媒体(蒸気)の温度を上げる処理を行う。
【0033】
発電機34は、作動媒体(蒸気)の熱エネルギーをタービンの回転エネルギーに変換することにより電力を生成する原動機の一種である。発電機34の後段には、インバータ及びコンバータを設けることができる。インバータで発電機34に制動をかけて直流部に回生し、コンバータで直流部を商用電源に回生することができる。
【0034】
凝縮器35は、発電機34の下流に配設されており、発電機34で使用された作動媒体(蒸気)を、四次系40を流れる冷却水によって冷却し、液化する機能を有している。レシーバタンク36は、凝縮器35の下流に配設されており、凝縮した媒体(液体)が貯留されている。
【0035】
四次系40は、冷却循環配管41、冷却塔42、冷却水循環ポンプ43を含む。冷却水循環ポンプ43は、凝縮器35に対して冷却水を供給する。凝縮器35に流入した冷却水は、作動媒体(蒸気)の凝縮熱を受熱して昇温し、冷却塔42にて冷却される。なお、冷却塔42を省略して、河川などの水源から冷却水を凝縮器35に直接供給してもよい。
【0036】
続いて、一次系10に設けられたドレントラップ16について、詳細に説明する。ドレントラップ16は、間接熱交換器15で発生したドレン(復水)を回収し、この回収したドレンを排出することにより、ストール現象の発生を抑制する。
【0037】
かかるストール現象の発生を抑制するためのドレントラップ16の構成について、詳細に説明する。
図2は、ドレントラップの全体図である。
図3は、ドレントラップの一部における拡大図である。
ドレントラップ16は、密閉容器であるケーシング110と、給気弁120と、排気弁130と、排出弁165と、弁作動機構140とを備えている。
ケーシング110は、本体部111及び蓋部112からなり、これらの部材は互いにボルトによって結合されている。ケーシング110には、流入したドレン(液体)を貯留する貯留空間113が形成されている。蓋部112には、ドレンが流入する液体流入口114と、ドレンが圧送(排出)される液体排出口115と、蒸気が導入される気体導入口116と、蒸気が排出される気体排出口117とが設けられている。液体流入口114には第1ドレン配管13が接続され、液体排出口115には第2ドレン配管17が接続され、気体導入口116には分岐蒸気配管12が接続され、気体排出口117には蒸気排出管18が接続されている。
【0038】
液体流入口114は蓋部112の上部側に設けられ、液体排出口115は蓋部112の下部側に設けられている。気体導入口116および気体排出口117は、何れも蓋部112の上部に設けられている。これら液体流入口114等は、何れも貯留空間113と連通している。
【0039】
図3にも示すように、気体導入口116には給気弁120が設けられ、気体排出口117には排気弁130が設けられている。給気弁120および排気弁130は、それぞれ気体導入口116および気体排出口117を開閉することができる。給気弁120は、蒸気を気体導入口116から貯留空間113に導入することによって、貯留空間113のドレンを液体排出口115から圧送することができる。排気弁130は、貯留空間113に導入された蒸気を気体排出口117から排出することができる。
【0040】
給気弁120は、弁ケース121、弁体122および昇降棒123を有する。弁ケース121は軸方向に貫通孔を有し、この貫通孔の上側には弁座124が形成されている。弁ケース121の中間部には、貫通孔と外部とが連通する開口125が形成されている。弁体122は、球状に形成されており、昇降棒123の上端に一体的に設けられている。昇降棒123は、弁ケース121の貫通孔に上下動可能に挿入されている。給気弁120は、昇降棒123が上昇すると弁体122が弁座124から離脱することにより気体導入口116が開放され、昇降棒123が下降すると弁体122が弁座124に着座することにより気体導入口116が閉じられる。
【0041】
排気弁130は、弁ケース131、弁体132および昇降棒133を有する。弁ケース131は軸方向に貫通孔を有し、貫通孔のやや上側には弁座134が形成されている。弁ケース131には、貫通孔と外部とが連通する開口135が形成されている。弁体132は、略半球状に形成されており、昇降棒133の上端に一体的に設けられている。昇降棒133は、弁ケース131の貫通孔に上下動可能に挿入されている。排気弁130は、昇降棒133が上昇すると弁体132が弁座134に着座することにより気体排出口117を閉じ、昇降棒133が下降すると弁体132が弁座134から離脱することにより気体排出口117を開放する。
【0042】
排気弁130の昇降棒133の下端には、弁操作棒136が連結されている。つまり、排気弁130の昇降棒133は、弁操作棒136とともに上下動する。また、弁操作棒136には連設板137が設けられており、この連設板137は給気弁120の昇降棒123の下方領域まで延びている。給気弁120の昇降棒123は、弁操作棒136が上昇すると連設板137によって押し上げられて上昇し、弁操作棒136が下降すると連設板137も下降するので自重で下降する。つまり、弁操作棒136が上昇すると、給気弁120が開き、排気弁130が閉じる。一方、弁操作棒136が下降すると、給気弁120が閉じ、排気弁130が開く。
【0043】
図2に示すように、液体排出口115には排出弁165が設けられている。排出弁165は、弁ケース166、弁体167および昇降棒168を有する。弁ケース166は、液体排出口115に連通する内部空間を有している。弁ケース166は、上下二箇所に開口169を有しており、これらの開口169を介して、弁ケース166の内部と貯留空間113とが連通されている。
弁体167は、円板状に形成されており、昇降棒168に一体的に2つ設けられている。昇降棒168は、弁ケース166の2つの開口169に上下動可能に挿入されており、2つの弁体167が間隔を隔てて上下に配置されている。昇降棒168が上昇して弁体167が開口169を閉じることで液体排出口115が閉じられ、昇降棒168が下降して弁体167が開口169を開放することで液体排出口115が開放される。
【0044】
弁作動機構140は、ケーシング110内に設けられ、弁操作棒136を上下動させて給気弁120、排気弁130および排出弁165を開閉する機構である。弁作動機構140は、フロート141およびスナップ機構150を有する。この弁作動機構140は、コントローラ70によって動作制御されるものではなく、ケーシング110内に流入するドレンの水位によって動作制御される。
【0045】
フロート141は、球形に形成されており、レバー142が取り付けられている。レバー142は、ブラケット144に設けられた軸143に回転可能に支持されている。レバー142のフロート141とは反対側の端部には、軸145が設けられている。スナップ機構150は、フロートアーム151、副アーム152、コイルばね153、2つの受け部材154,155を有する。フロートアーム151は、一端部がブラケット159に設けられた軸158に回転可能に支持されている。なお、ブラケット144,159は互いにねじを介して結合されることにより、蓋部112に取り付けられている。フロートアーム151の他端部には、溝151aが形成されており、その溝151aにはレバー142の軸145が篏合している。かかる構成により、フロート141の上昇下降に伴い、フロートアーム151を、軸158を中心として揺動させることができる。
【0046】
また、フロートアーム151には軸156が設けられている。副アーム152は、上端部が軸158に回転可能に支持されており、下端部に軸157が設けられている。受け部材154はフロートアーム151の軸156に回転可能に支持され、受け部材155は副アーム152の軸157に回転可能に支持されている。両受け部材154,155の間には、圧縮方向にチャージされたコイルばね153が取り付けられている。また、副アーム152には軸161が設けられ、この軸161に弁操作棒136の下端部が連結されている。
【0047】
レバー142には弁作動軸171が連結されている。弁作動軸171は、一端(上端)が軸172によってレバー142に回転可能に連結され、他端(下端)が軸173によって排出弁165の昇降棒168の端部に回転可能に連結されている。軸172は、軸143よりもフロート141から離間した位置に配設されている。
弁作動軸155は、フロートアーム152の揺動に伴って変位し排出弁120の昇降棒123を上下動させる。つまり、弁作動軸155はフロート151の昇降によって排出弁120を開閉する機能を有している。
【0048】
かかる構成を備えた弁作動機構140は、フロート141の上昇下降に伴って変位し、弁操作棒136を上下動させて給気弁120および排気弁130を開閉させる。また、弁作動機構140は、フロート141の上昇下降に伴って変位し、弁作動軸171によって昇降棒168を上下動させて排出弁165を開閉させる。
【0049】
具体的には、ドレンが貯留空間113に溜まっていない場合、フロート141は貯留空間113の底部に位置する。このとき、弁操作棒136は下降しており、給気弁120は閉じられており、排気弁130は開いている。一方、弁作動軸171は上昇しており、排出弁165は閉じられている。
上述の状態において、間接熱交換器15においてドレンが発生すると、第1ドレン配管13を経由して液体流入口114からドレンが流入し、貯留空間113に溜まる(流入行程)。流入行程では、貯留空間113にドレンが溜まっていくに従って、フロート141が上昇するとともに、蒸気が気体排出口117から排出される。フロート141の上昇に伴い、弁作動軸171は下降する。
【0050】
フロート141が所定低位(トラップ動作位)まで上昇すると、弁作動軸171によって昇降棒168(弁体167)が下降し、排出弁165が開く。排出弁165が開くと、トラップ動作が行われる。トラップ動作は、貯留空間113に溜まっているドレンが、上下流の圧力差(ドレントラップ16の上流側の圧力と下流側の圧力の差)によって液体排出口115から排出される動作である。この場合、当然のことではあるが、上流側の圧力が下流側の圧力よりも高い。トラップ動作は、流入行程の際に行われる動作である。
【0051】
ここで、流入工程の際に、トラップ動作が不能となり、ストール状態となる場合がある。ストール状態については、説明を繰り返さない。しかしながら、本実施形態のドレントラップ16は、以下に説明するポンプ機能を有しているため、ストール状態を直ちに解消することができる。
【0052】
具体的には、ストール状態になると、フロート141がさらに所定高位(上反転位、ポンプ動作位)まで上昇し、スナップ機構150によって弁操作棒136が上昇する。これにより、給気弁120が開くと共に排気弁130が閉じ、流入行程が終了し圧送行程が開始される。
すなわち、給気弁120が開くと、分岐蒸気配管12の蒸気が気体導入口116から流入して、貯留空間113の上部(ドレンの上方空間)に導入されるため、ドレントラップ16では、圧送行程が開始されポンプ動作が行われる。ポンプ動作は、貯留空間113に溜まっているドレンが、導入された蒸気の圧力によって下方へ押し込まれて、液体排出口115から圧送される動作であり、ストール状態を速やかに解消することができる。液体排出口115から圧送されたドレンは、第2ドレン配管17を経由して、還元井、熱利用施設など(以下、「移送先」ともいう)に送液され、再利用することができる。熱利用施設には、温泉などの入浴施設、ビニールハウス、養殖施設などが含まれる。
【0053】
ドレンの圧送(排出)によって貯留空間113のドレン液位が低下すると、フロート141は下降する。そして、フロート141が所定中間位(下反転位)まで下降すると、スナップ機構150によって弁操作棒136が下降する。これにより、給気弁120が閉じると共に排気弁130が開き、圧送行程(ポンプ動作)が終了し流入行程が開始される。このように、圧送行程の全体においてポンプ動作が行われる。そして、さらにフロート151が所定低位まで下降すると排出弁120が閉じ、トラップ動作が停止される。この後も、流入行程は継続する。
【0054】
このように、本実施形態のドレントラップ16では、弁作動機構140が給気弁120および排気弁130を開閉することによって流入行程と圧送行程(ポンプ動作)とが実行される一方、流入行程時には弁作動機構140が排出弁165を開くことによってトラップ動作が実行される。
【0055】
(第2実施形態)
図4は、第2実施形態のバイナリー発電システムの概略図である。第1実施形態と機能が共通する要素には、同一符号を付して、詳細な説明を省略する。本実施形態のバイナリー発電システムは、第1実施形態の二次系20を省略している点で、第1実施形態と相違する。そなわち、一次系10の蒸気を蒸発器22に流入させることにより、作動媒体を加熱している。
【0056】
本実施形態のバイナリー発電システムにも、ポンプ機能を備えたドレントラップ16が一次系10に実装されており、ドレントラップ16のポンプ動作によって、ストール状態を速やかに解消することができる。
【0057】
コントローラ70は、発電機34に向かう作動媒体(蒸気)の温度が、目標温度範囲に収まるように、温度制御弁14の開度を調節している。これにより、バイナリー発電を安定的に行うことができる。
【0058】
(第3実施形態)
図5は、第3実施形態のバイナリー発電システムの概略図である。第2実施形態と機能が共通する要素には、同一符号を付して、詳細な説明を省略する。本実施形態のバイナリー発電システムは、第2実施形態の変形例に相当し、蒸発器22に向かう作動媒体を予め予熱する予熱器25が実装されている。
【0059】
予熱器25には、ドレントラップ16から第2ドレン配管17を介して排出されるドレンと、作動媒体(液体)とが流入し、これらのドレン及び作動媒体(液体)が予熱器25の中で熱交換を行うことにより、作動媒体が予熱される。
【0060】
蒸発器22で得られた作動媒体(蒸気)と、凝縮器35で得られた作動媒体(液体)との温度差が過度に大きい場合、蒸発器22のプレートが熱応力により破損するおそれがある。そこで、蒸発器22に流入する前に予め予熱器25によって、作動媒体の温度を予熱しておくことで、かかるトラブルが起こることを防止できる。
【0061】
また、予熱器25の熱源には、ドレントラップ16から排出されるドレンを利用しているため、熱回収効率が上がり、発電出力の増大及び発電効率の向上を図ることができる。また、作動媒体(液体)を予熱するための独立した加熱設備などが不要となるため、設備費及び消費電力を削減することができる。
【0062】
なお、本実施形態においても、コントローラ70は、発電機34に向かう作動媒体(蒸気)の温度が、目標温度範囲に収まるように、温度制御弁14の開度を調節している。これにより、バイナリー発電を安定的に行うことができる。
【0063】
(第4実施形態)
図6は、第4実施形態のバイナリー発電システムの概略図である。第3実施形態と機能が共通する要素には、同一符号を付すことにより、詳細な説明を省略する。本実施形態のバイナリー発電システムは、第3実施形態の変形例に相当し、温度調節弁(第2温度調節弁に相当する)14Aの開度を調節することによって、予熱器25に流入するドレンの流量を調節している。
【0064】
第2ドレン配管17は、主配管17aと、主配管17aから分岐した分岐配管17bとを含む。主配管17aは、予熱器25に向かってドレンを送液するとともに、予熱器25から排出されるドレンを移送先に向かって送液する。分岐配管17bは、主配管17aを流れるドレンを、予熱器25を経由せずに移送先に送液する(言い換えると、ドレンを主配管17aに戻す)。温度調節弁(第2温度調節弁に相当する)14Aは、分岐配管17bに設けられている。温度調節弁14Aの開度を調節することによって、予熱器25に流入するドレンの流量を調節することができる。なお、主配管17a及び分岐配管17bの分岐点に三方弁(第2温度調節弁に相当する)を設けて、かかる三方弁の開度を調節することによって、ドレンの流量を調節してもよい。
【0065】
温度調節弁14Aの開度は、コントローラ70によって調節される。
予熱器25と蒸発器22との間には、媒体温度検出部33Aが設けられており、予熱器25の出口に接続された主配管17aには、ドレン温度検出部33Bが設けられている。
コントローラ70は、媒体温度検出部33Aの検出結果に基づき、蒸発器22に向かう作動媒体の温度が予め設定した設定値を満たすように、温度調節弁14Aの開度を調節することができる(パターン1)。
具体的には、蒸発器22に向かう作動媒体の温度が設定値よりも低い場合には、予熱器25に流入するドレンの流量を増やす方向に温度調節弁14Aが調節され、蒸発器22に向かう作動媒体の温度が設定値よりも高い場合には、予熱器25に流入するドレンの流量を減らす方向に温度調節弁14Aが調節される。これにより、ドレンの熱エネルギーを作動媒体の温度制御に有効活用することができる。
【0066】
コントローラ70は、移送先の要求するドレン温度を満たすことを条件として、予熱器25に向かうドレンの流量が最大化するように、温度調節弁14Aの開度を調節することもできる(パターン2)。この場合、コントローラ70は、ドレン温度検出部33Bの検出結果に基づき、温度調節弁14Aの開度を調節することができる。具体的には、ドレン温度検出部33Bの検出温度が要求温度を下回らないように、予熱器25に流入させるドレンの流量を最大化させればよい。これにより、要求温度を満足しながら、作動媒体の昇温にドレンを最大限活用することができる。
移送先の要求するドレン温度がない場合には、温度調節弁14Aを閉じて、ドレンの全量を予熱器25に流入させてもよい。
本実施形態のバイナリー発電システムは、パターン1及びパターン2のうちいずれか一方を選択できる選択手段を備えた構成であってもよいし、パターン1及びパターン2のうち一方を実装し、他方を実装しない構成であってもよい。
【0067】
なお、本実施形態においても、コントローラ70は、発電機34に向かう作動媒体(蒸気)の温度が、目標温度範囲に収まるように、温度制御弁14の開度を調節している。これにより、バイナリー発電を安定的に行うことができる。
【0068】
(第5実施形態)
図7は、第5実施形態のバイナリー発電システムの概略図である。第1実施形態及び第4実施形態と機能が共通する要素には、同一符号を付すことにより、詳細な説明を省略する。本実施形態のバイナリー発電システムは、第1実施形態及び第4実施形態の変形例に相当する。
【0069】
顕熱回収器26には、ドレントラップ16から第2ドレン配管17を介して排出されるドレンと、温水とが流入し、これらのドレン及び温水が顕熱回収器26の中で熱交換を行うことにより、温水が昇温される。温水温度検出部33Aは、顕熱回収器26から間接熱交換器15に向かう温水の温度を検出する。
【0070】
コントローラ70は、温水温度検出部33Aの検出結果に基づき、温水の温度が設定値になるように、温度調節弁14Aの開度を調節することができる(第4実施形態のパターン1に対応する)。これにより、間接熱交換器15に流入する温水の温度が一定になるから、より安定的に発電することができる。
また、第4実施形態に記載するパターン2を実装してもよい。この場合、第4実施形態と同様にパターン1又はパターン2の制御が実施できるように、バイナリー発電システムを構成することができる。パターン1及びパターン2の詳細については、説明を繰り返さない。
【0071】
本実施形態においても、コントローラ70は、蒸発器22で蒸気化された作動媒体の温度が、当該作動媒体の圧力に対応した飽和温度よりも所定温度以上高くなるように、媒体循環ポンプ37の駆動を制御する。
【0072】
なお、本実施形態において、コントローラ70は、蒸発器22に向かう温水の温度が、目標温度範囲に収まるように、温度制御弁14の開度を調節している。これにより、バイナリー発電を安定的に行うことができる。
【0073】
(第6実施形態)
図8は、第6実施形態のバイナリー発電システムの概略図である。第5実施形態等と機能が共通する要素には、同一符号を付すことにより、詳細な説明を省略する。本実施形態のバイナリー発電システムは、第5実施形態の変形例に相当する。
【0074】
予熱器25と蒸発器22との間には、蒸発器22に流入する作動媒体の温度を検出する媒体温度検出部33Aが設けられている。
【0075】
コントローラ70は、媒体温度検出部33Aの検出結果に基づき、媒体の温度が設定値になるように、温度調節弁14Aの開度を調節する(第4実施形態のパターン1に対応する)。すなわち、温度調節弁14Aの開度が調節されることで、二次系20を流れる温水の温度が調節されるため、結果的に、予熱器25で予熱される作動媒体の温度を調節することができる。また、第4実施形態に記載するパターン2を実装してもよい。この場合、第4実施形態と同様にパターン1又はパターン2の制御が実施できるように、バイナリー発電システムを構成することができる。パターン1及びパターン2の詳細については、説明を繰り返さない。
【0076】
なお、本実施形態において、コントローラ70は、蒸発器22に向かう温水の温度が、目標温度範囲に収まるように、温度制御弁14の開度を調節している。これにより、バイナリー発電を安定的に行うことができる。
【符号の説明】
【0077】
1 バイナリー発電システム
11 主蒸気配管
12 分岐蒸気配管
13 第1ドレン配管
14 温度制御弁
15 間接熱交換器
16 ドレントラップ
17 第2ドレン配管
22 蒸発器
110 ケーシング
120 給気弁
130 排気弁
140 弁作動機構
165 排出弁