(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129551
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】発泡性粉末即席スープ
(51)【国際特許分類】
A23L 23/10 20160101AFI20240919BHJP
【FI】
A23L23/10
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038842
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】000106531
【氏名又は名称】サンヨー食品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【識別番号】100202418
【弁理士】
【氏名又は名称】河原 肇
(72)【発明者】
【氏名】中島(増田) 有香
【テーマコード(参考)】
4B036
【Fターム(参考)】
4B036LC01
4B036LE01
4B036LF01
4B036LF19
4B036LG04
4B036LG06
4B036LH01
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4B036LK03
4B036LK06
4B036LP06
4B036LP07
4B036LP24
(57)【要約】
【課題】泡保持能に優れており良好な風味を呈する、即席麺、即席カップ麺などに使用可能な発泡性粉末即席スープの提供。
【解決手段】酸剤及びアルカリ剤を含む起泡剤と、キラヤ抽出物とを含む発泡性粉末即席スープであって、起泡剤の含有量は、発泡性粉末即席スープの質量を基準として3.0質量%~7.5質量%であり、キラヤ抽出物の含有量は、発泡性粉末即席スープの質量を基準として0.20質量%~10.0質量%である、発泡性粉末即席スープ。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸剤及びアルカリ剤を含む起泡剤と、キラヤ抽出物とを含む発泡性粉末即席スープであって、
前記起泡剤の含有量は、前記発泡性粉末即席スープの質量を基準として3.0質量%~7.5質量%であり、
前記キラヤ抽出物の含有量は、前記発泡性粉末即席スープの質量を基準として0.20質量%~10.0質量%である、発泡性粉末即席スープ。
【請求項2】
乳又は乳製品を主要原料とする食品を更に含む、請求項1に記載の発泡性粉末即席スープ。
【請求項3】
増粘剤を更に含む、請求項1又は2に記載の発泡性粉末即席スープ。
【請求項4】
たん白加水分解物を更に含む、請求項1又は2に記載の発泡性粉末即席スープ。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の発泡性粉末即席スープを含む食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は発泡性粉末即席スープに関する。
【背景技術】
【0002】
発泡したスープは、豚骨を炊き出す際に発生する泡を特徴とする泡系豚骨ラーメン店、ブレンダーでスープを泡立てることにより生じたエスプーマを特徴とするラーメン店など、多くのラーメン店で提供されている。スープの泡は、機械的な力でスープを撹拌し、スープに空気を抱き込ませることにより形成される。このような機械的な力を、湯又は水を加えるだけで喫食可能な即席スープに利用することはできない。
【0003】
起泡剤として酸剤及びアルカリ剤を組み合わせて用いた発泡性即席飲料が知られている。
【0004】
特許文献1(特開2014-180257号公報)は、「即席飲料に、(A)酸剤、(B)アルカリ剤および(C)起泡性粉末油脂を含有することを特徴とする発泡性即席飲料」を記載している。
【0005】
特許文献2(特開平10-276673号公報)は、「粉末にした茶類に重曹とクエン酸を配合し、該配合物を粒状の錠剤にしたインスタント発泡茶類」を記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014-180257号公報
【特許文献2】特開平10-276673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
即席麺は、麺を鍋などで茹で、粉末スープにお湯を注加した後、通常10分~20分程度かけて喫食される。即席カップ麺は、お湯を注加した後3分~5分で喫食可能となり、その後喫食される。したがって、お湯の注加後、例えば20分間にわたって泡を保持することが可能な粉末即席スープが望まれている。
【0008】
酸剤及びアルカリ剤を含む起泡剤を大量に使用することで泡の発生量を増加させて、喫食時間中に泡を存在させることは可能である。しかし、酸剤又はアルカリ剤は酸味又は苦味を呈するため、起泡剤を大量に使用すると様々な味付けで提供されるスープの風味が損なわれることが多い。
【0009】
本開示は、泡保持能に優れており良好な風味を呈する、即席麺、即席カップ麺などに使用可能な発泡性粉末即席スープを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、酸剤及びアルカリ剤を含む起泡剤と、泡保持剤としてキラヤ抽出物とを所定量で組み合わせて使用することにより、上記課題が解決できることを見出して、本発明を完成させるに至った。
【0011】
本発明は、以下の態様1~5を包含する。
[態様1]
酸剤及びアルカリ剤を含む起泡剤と、キラヤ抽出物とを含む発泡性粉末即席スープであって、
前記起泡剤の含有量は、前記発泡性粉末即席スープの質量を基準として3.0質量%~7.5質量%であり、
前記キラヤ抽出物の含有量は、前記発泡性粉末即席スープの質量を基準として0.20質量%~10.0質量%である、発泡性粉末即席スープ。
[態様2]
乳又は乳製品を主要原料とする食品を更に含む、態様1に記載の発泡性粉末即席スープ。
[態様3]
増粘剤を更に含む、態様1又は2に記載の発泡性粉末即席スープ。
[態様4]
たん白加水分解物を更に含む、態様1~3のいずれか一態様に記載の発泡性粉末即席スープ。
[態様5]
態様1~4のいずれか一態様に記載の発泡性粉末即席スープを含む食品。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、泡保持能に優れており良好な風味を呈する、即席麺、即席カップ麺などに使用可能な発泡性粉末即席スープが提供される。
【0013】
上述の記載は、本発明の全ての実施形態及び本発明に関する全ての利点を開示したものとみなしてはならない。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の代表的な実施形態を例示する目的でより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されない。
【0015】
即席スープとは、水、湯などの水性媒体に溶解又は分散させて液状にした後、喫食される食品を指し、液状にする前は乾燥状態である。粉末即席スープとは、乾燥状態において粉末状であるものを指す。
【0016】
〈発泡性粉末即席スープ〉
一実施形態の発泡性粉末即席スープは、酸剤及びアルカリ剤を含む起泡剤と、キラヤ抽出物とを含む。
【0017】
起泡剤は、酸剤及びアルカリ剤を含む。発泡性粉末即席スープに湯又は水を添加したときに、酸剤とアルカリ剤の反応によりガスが発生してスープに泡が生じる。
【0018】
酸剤は、食品分野に用いられるもので、水に溶解又は分散する性質を持つものであれば特に限定されない。酸剤としては、例えば、ミョウバン(硫酸アルミニウムアンモニウム及び硫酸アルミニウムカリウム)、有機酸並びにこれらのナトリウム塩及びカリウム塩、並びにリン酸塩が挙げられる。有機酸としては、例えば、アジピン酸、アスコルビン酸、クエン酸、グルコノデルタラクトン、グルコン酸、コハク酸、酢酸、酒石酸、乳酸、フマル酸、及びリンゴ酸が挙げられる。リン酸塩としては、例えば、リン酸三カルシウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸二水素カルシウム、ピロリン酸四カリウム、メタリン酸ナトリウム、メタリン酸カリウム、ポリリン酸ナトリウム、及びポリリン酸カリウムが挙げられる。酸剤は単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0019】
酸剤としては、酸味の弱いクエン酸及びグルコン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種を使用することが好ましい。酸味の弱いこれらの酸剤は、発泡性粉末即席スープの風味への影響を抑えることができる。
【0020】
酸剤の形状は、発泡性粉末即席スープ中に均一に分散することができれば特に限定されない。酸剤の形状としては、例えば、粉末状及び顆粒状が挙げられる。酸剤は顆粒状であることが好ましい。顆粒状の酸剤は、発泡性粉末即席スープを長期保存する際に、吸湿による意図しないタイミングでの発泡を抑制することができる。
【0021】
発泡性粉末即席スープの酸剤の含有量は、発泡性粉末即席スープの質量を基準として、好ましくは1.4質量%~3.5質量%、より好ましくは2.0質量%~3.5質量%、更に好ましくは2.3質量%~3.2質量%である。酸剤の含有量を上記範囲とすることにより、発泡性粉末即席スープの発泡性を高めつつ、スープの風味への影響を効果的に低減することができる。
【0022】
アルカリ剤は、食品分野に用いられるもので、水に溶解又は分散する性質を持つものであれば特に限定されない。アルカリ剤としては、例えば、炭酸水素塩、炭酸塩及びアンモニウム塩が挙げられる。炭酸水素塩としては、例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、及び炭酸水素アンモニウムが挙げられる。炭酸塩としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、及び炭酸アンモニウムが挙げられる。アンモニウム塩としては、例えば、塩化アンモニウムが挙げられる。アルカリ剤は単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。本開示において、炭酸水素塩又は炭酸塩と、アンモニウム塩の両方に該当するものは、炭酸水素塩又は炭酸塩とみなす。
【0023】
アルカリ剤としては、スープの風味への影響が小さい炭酸水素ナトリウムを使用することが好ましい。
【0024】
アルカリ剤の形状は、発泡性粉末即席スープ中に均一に分散することができれば特に限定されない。アルカリ剤の形状としては、例えば、粉末状及び顆粒状が挙げられる。アルカリ剤は顆粒状であることが好ましい。顆粒状のアルカリ剤は、発泡性粉末即席スープを長期保存する際に、吸湿による意図しないタイミングでの発泡を抑制することができる。
【0025】
発泡性粉末即席スープのアルカリ剤の含有量は、発泡性粉末即席スープの質量を基準として、好ましくは1.6質量%~4.0質量%、より好ましくは2.5質量%~4.0質量%、更に好ましくは2.8質量%~3.9質量%である。アルカリ剤の含有量を上記範囲とすることにより、発泡性粉末即席スープの発泡性を高めつつ、スープの風味への影響を効果的に低減することができる。
【0026】
発泡性粉末即席スープの起泡剤の含有量、すなわち酸剤とアルカリ剤の合計含有量は、発泡性粉末即席スープの質量を基準として3.0質量%~7.5質量%である。起泡剤の含有量を3.0質量%~7.5質量%とすることにより、発泡性粉末即席スープの発泡性を高めつつ、スープの風味への影響を効果的に低減することができる。発泡性粉末即席スープの起泡剤の含有量は、発泡性粉末即席スープの質量を基準として、好ましくは4.6質量%~7.5質量%、より好ましくは5.2質量%~7.1質量%である。
【0027】
起泡剤中の酸剤とアルカリ剤の質量比(酸剤の質量/アルカリ剤の質量)は、好ましくは0.7~1.2、より好ましくは0.7~1.0、更に好ましくは0.7~0.9である。酸剤とアルカリ剤の質量比を上記範囲とすることにより、発泡性粉末即席スープの発泡性を効果的に高めることができる。
【0028】
キラヤ抽出物は、起泡剤による泡の形成を促進し、かつ形成された泡の形状保持性を高めることができる。キラヤ抽出物は、抽出原料であるキラヤ(学名:Quillaja Saponaria Molina)を溶媒で抽出して得られる抽出液だけではなく、当該抽出液の希釈液、濃縮液、及びエキス、当該抽出液、希釈液、濃縮液又はエキスを乾燥して得られる乾燥物、並びにこれらの粗精製物及び精製物も包含する。キラヤは、南米のチリ、ボリビア、ペルーなどに自生するバラ科シャボンノキ属に属する常緑樹である。キラヤ抽出物は、キラヤの樹皮、幹、葉、枝、花、根、種子及び果実からなる群より選択される1以上の部位を溶媒で抽出することにより得られる。溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、及びこれらの2種以上の混合溶媒が挙げられる。
【0029】
キラヤ抽出物はキラヤサポニンを含有する。サポニンとは、ステロイド骨格又はトリテルペン骨格を有する化合物(サポニゲン)に糖が結合した配糖体であって、様々な植物中に含まれており、石鹸のように著しく泡立つコロイド水溶液を作る化合物の総称である。キラヤサポニンは、強い界面活性を有するため、起泡作用及び泡保持作用を有する。そのため、キラヤ抽出物を用いることにより、発泡性粉末即席スープの発泡性及び泡保持性が向上する。
【0030】
キラヤ抽出物の形状は、発泡性粉末即席スープ中に均一に分散することができれば特に限定されない。キラヤ抽出物の形状としては、例えば、粉末状及び顆粒状が挙げられる。
【0031】
発泡性粉末即席スープのキラヤ抽出物の含有量は、発泡性粉末即席スープの質量を基準として0.20質量%~10.0質量%である。キラヤ抽出物の含有量を0.20質量%~10.0質量%とすることにより、発泡性粉末即席スープの発泡性及び泡保持性を高めつつ、キラヤ抽出物に起因するスープの風味への影響を効果的に低減することができる。発泡性粉末即席スープのキラヤ抽出物の含有量は、発泡性粉末即席スープの質量を基準として、好ましくは0.20質量%~9.9質量%、より好ましくは2.1質量%~9.8質量%である。
【0032】
発泡性粉末即席スープ中の起泡剤とキラヤ抽出物の質量比(起泡剤の質量/キラヤ抽出物の質量)は、好ましくは0.3~34.0、より好ましくは0.4~34.0、更に好ましくは0.8~3.5である。起泡剤とキラヤ抽出物の質量比を上記範囲とすることにより、発泡性粉末即席スープの発泡性及び泡保持性を効果的に高めることができる。
【0033】
発泡性粉末即席スープの原材料としては、特に制限はなく、一般に即席スープの原材料として用いられるものを使用することができる。原材料としては、例えば、塩類(塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウムなど)、糖類(砂糖、ぶどう糖、乳糖、麦芽糖、果糖、トレハロース、水あめ、デキストリンなど)、畜肉類、乳製品(乳又は乳製品を主要原料とする食品など)、魚介類、野菜類、香辛料、油脂類(食用油脂、香味油、加工油脂、粉末油脂など)、きのこ類、豆類、大豆加工品(味噌、醤油、大豆たん白、豆乳、おからなど)、ごま、ナッツ類、穀類、でん粉類、ゼラチン類、各種調味料類(アミノ酸類、核酸類、酸味料、発酵調味料、たん白加水分解物、酵母エキスなど)、増粘剤、香料、着色料、ビタミン類、ミネラル類、乳化剤、粉質改良剤(二酸化ケイ素など)などが挙げられる。これらの原材料は乾燥状態であることが好ましい。
【0034】
発泡性粉末即席スープは、乳又は乳製品を主要原料とする食品を更に含むことが好ましい。「乳又は乳製品を主要原料とする食品」とは、「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令(乳等省令)」において、脂肪の種類又は含有量の違い、添加物の有無などによって分類される種類別「クリーム」以外の食品であって、一般社団法人日本乳業協会の「乳製品表示ガイドライン」に従って表示される食品を指す。乳等省令によれば、「クリーム」とは、生乳などから乳脂肪分以外の成分を取り除いたものであり、植物性脂肪、乳化剤、安定剤などの添加物は一切加えられておらず、乳脂肪分は18.0%以上である。一方、乳脂肪を原料に使用していても乳化剤又は安定剤を添加したり、一部を植物性脂肪(ヤシ油、パーム油、大豆油など)に置き換えたりしたものは「乳又は乳製品を主要原料とする食品」に分類される。乳又は乳製品を主要原料とする食品は、発泡性粉末即席スープの起泡性及び泡保持性を更に高めることができる。
【0035】
発泡性粉末即席スープの乳又は乳製品を主要原料とする食品の含有量は、発泡性粉末即席スープの質量を基準として、好ましくは0.1質量%~8.0質量%、より好ましくは3.5質量%~8.0質量%である。
【0036】
発泡性粉末即席スープは、増粘剤を更に含むことが好ましい。増粘剤は、発泡性粉末即席スープの起泡性及び泡保持性を更に高めることができる。増粘剤としては、増粘作用を有し、食品分野に用いられ、粉末状態で水に溶解又は分散する性質を持つものであれば特に限定されない。増粘剤としては、例えば、キサンタンガム、グァーガム、カロブビーンガム、ローカストビーンガム、タラガム、タマリンドシードガム、グルコマンナン、トラガントガム、カラギナン、タラガム、カシアガム、グルコマンナン、ネイティブ型ジェランガム、脱アシル型ジェランガム、ペクチン、サイリウムシードガム、寒天、ゼラチン、ペクチン、カラヤガム、アラビアガム、マクロホモプシスガム、ラムザンガム、ガティガム、アルギン酸又はアルギン酸塩、カードラン、プルラン、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)ナトリウム、カルボキシメチルセルロース(CMC)カルシウム、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、微小繊維状セルロース、大豆多糖類、及び加工・化工でん粉からなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。スープの風味への影響が小さいことから、増粘剤としてゼラチンを用いることが好ましい。
【0037】
発泡性粉末即席スープの増粘剤の含有量は、発泡性粉末即席スープの質量を基準として、好ましくは0.1質量%~3.0質量%、より好ましくは1.3質量%~3.0質量%である。
【0038】
発泡性粉末即席スープは、たん白加水分解物を更に含むことが好ましい。たん白加水分解物は、たん白質を酵素又は酸で加水分解することによって得られるペプチド又はアミノ酸を含むものである。たん白加水分解物としては、例えば、動物性たん白加水分解物(HAP)及び植物性たん白加水分解物(HVP)からなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。たん白加水分解物は、発泡性粉末即席スープの起泡性及び泡保持性を更に高めることができる。
【0039】
発泡性粉末即席スープのたん白加水分解物の含有量は、発泡性粉末即席スープの質量を基準として、好ましくは0.1質量%~3.6質量%、より好ましくは1.5質量%~3.6質量%である。
【0040】
発泡性粉末即席スープに香料を配合することにより、酸剤、アルカリ剤又はキラヤ抽出物による酸味、苦味、特有の風味、渋みなどの不快な異味異臭をマスキングしてもよい。
【0041】
〈発泡性粉末即席スープの製造方法〉
発泡性粉末即席スープは、前記の原材料、起泡剤(酸剤及びアルカリ剤)、及びキラヤ抽出物を粉体混合することにより製造することができる。これらの成分の混合順序は特に限定されない。
【0042】
粉体混合には、容器回転型又は撹拌型の粉体混合機を用いることができる。容器回転型粉体混合機としては、例えば、W型混合機、V型混合機、及びドラム型混合機が挙げられる。撹拌型粉体混合機としては、例えば、リボン混合機、及び円錐スクリュー型混合機が挙げられる。
【0043】
粉体混合の温度は特に限定されないが、例えば、15℃~80℃とすることができる。水分の存在により生じる起泡剤の反応を抑制するため、粉体混合雰囲気中の湿度は60%RH以下であることが好ましい。粉体混合雰囲気を減圧にして、粉体混合中に原材料等から揮発する水分を外部に排出してもよい。
【0044】
乾燥状態でない原材料は、粉体混合中に乾燥しながら他の成分と混合することが好ましい。この場合、起泡剤は原材料の乾燥後に添加することが好ましい。
【0045】
必要に応じて、粉体混合後に破砕、分級、乾燥、個別包装などの後工程を行ってもよい。
【0046】
〈発泡性粉末即席スープの使用方法〉
発泡性粉末即席スープは様々な用途に使用することができる。発泡性粉末即席スープの用途として、例えば、発泡性粉末即席スープを含む、即席麺、即席カップ麺、カップスープなどの食品が挙げられる。発泡性粉末即席スープは、即席麺及び即席カップ麺のスープとして特に好適に使用することができる。発泡性粉末即席スープは、例えば、発泡性粉末即席スープの質量の20倍~35倍のお湯又は水を注加して喫食することができる。
【実施例0047】
以下の実施例において、本開示の具体的な実施形態を例示するが、本発明はこれに限定されるものではない。表も含めて部及びパーセントは全て、特に明記しない限り質量による。数値は本質的に測定原理及び測定装置に起因する誤差を含む。数値は、表に記載のものも含めて、通常の丸め処理が行われた有効数字で示される。
【0048】
〈原料〉
本実施例で使用した原料を表1に示す。
【0049】
【0050】
本実施例で使用した粉末スープ原料(とんこつ味、しょうゆ味、みそ味、及びしお味)の組成を表2に示す。
【0051】
【0052】
〈実施例1〉
とんこつ味の粉末スープ原料13.0gに、起泡剤としてクエン酸(酸剤)0.45g及び炭酸水素ナトリウム(アルカリ剤)0.55g、泡保持剤としてキラヤ抽出物であるキラヤニンP-20 0.50gを添加し、均一に混合して例1の発泡性粉末即席スープを調製した。
【0053】
発泡性粉末即席スープの発泡性及び泡保持性の測定並びに官能評価を以下の手順で行った。1Lメスシリンダーで熱湯400mLを計量し、鍋に入れて沸騰させた。鍋に即席麺70gを入れ、3分間麺をほぐしながら茹でた。その後、茹でた麺及び熱湯を500mLビーカーに移し、ビーカーに発泡性粉末即席スープを投入し、薬さじで20回撹拌してスープを溶解した。
【0054】
溶解したスープに発生した泡の高さ(mm)を測定した。溶解直後、5分後、10分後、15分後、20分後の泡高さを測定して泡保持力を評価した。スープ溶解直後の泡高さは不安定なため、発泡性粉末即席スープを投入後15秒時点の泡高さを溶解直後泡高さとした。泡がビーカー内全面を覆わなくなった場合、泡量不十分とした。
【0055】
スープの官能評価は、以下の官能評価点基準に従い4名の熟練したパネラー(パネラーA~パネラーD)が行った。4名のパネラーの官能評価点から平均値を求めた。平均値で3点~5点を許容範囲とした。
【0056】
官能評価点
5点:酸味など異味異臭を感じず、商品としての風味が良好
4点:酸味など異味異臭を若干感じられるものの、商品としての風味は保たれている
3点:酸味など異味異臭は感じられるものの、商品としての風味は保たれている
2点:酸味など異味異臭を感じ、商品としての風味は保たれていない
1点:酸味など異味異臭を強く感じ、商品としての風味は保たれていない
【0057】
〈比較例1~比較例11〉
泡保持剤を表3に記載のとおり変更した以外は、実施例1と同様の手順で発泡性粉末即席スープを調製した。得られた発泡性粉末即席スープの発泡性及び泡保持性の測定及び官能評価も実施例1と同様の手順で行った。
【0058】
実施例1及び比較例1~比較例11の発泡性粉末即席スープの組成を表3に示す。
【0059】
【0060】
実施例1及び比較例1~比較例11の発泡性粉末即席スープの評価結果を表4に示す。
【0061】
【0062】
実施例1及び比較例1~比較例11のいずれも、溶解直後の泡高さは高い値を示した。5分後以降、泡保持剤の種類による泡保持性に違いが生じた。一部の泡保持剤(比較例2、比較例6及び比較例8)の泡保持時間は、泡量不十分であったため20分に満たなかった。実施例1は溶解直後及び20分後のいずれにおいても泡高さが高く、発泡性及び泡保持性に優れていた。
【0063】
〈実施例2~実施例11及び比較例12~比較例23〉
泡保持剤をキラヤ抽出物とし、起泡剤及び泡保持剤の組成を表5に記載のとおり変更した以外は、実施例1と同様の手順で発泡性粉末即席スープを調製した。
【0064】
発泡性粉末即席スープの発泡性及び泡保持性の測定並びに官能評価を以下の手順で行った。1Lメスシリンダーで熱湯300mLを計量し、熱湯を500mLビーカーに移し、ビーカーに発泡性粉末即席スープを投入し、薬さじで20回撹拌してスープを溶解した。
【0065】
溶解したスープに発生した泡の高さ(mm)を測定した。溶解直後、5分後、10分後、15分後、20分後の泡高さを測定して泡保持力を評価した。スープ溶解直後の泡高さは不安定なため、発泡性粉末即席スープを投入後15秒時点の泡高さを溶解直後泡高さとした。泡がビーカー内全面を覆わなくなった場合、泡量不十分とした。
【0066】
スープの官能評価は、実施例1と同じ官能評価点基準に従い4名の熟練したパネラー(パネラーA~パネラーD)が行った。4名のパネラーの官能評価点から平均値を求めた。平均値で3点~5点を許容範囲とした。
【0067】
実施例2~実施例11及び比較例12~比較例23の発泡性粉末即席スープの組成を表5に示す。表5には実施例1の発泡性粉末即席スープの組成も合わせて示す。
【0068】
【0069】
実施例2~実施例11及び比較例12~比較例23の発泡性粉末即席スープの評価結果を表6に示す。表6には実施例1の発泡性粉末即席スープの評価結果も合わせて示す。
【0070】
【0071】
比較例12及び比較例13では、起泡剤の配合量が少なかったため、溶解直後から泡量が不十分であった。一方、実施例2では20分以上泡が保持された。比較例19~比較例23では、起泡剤の配合量が多かったため、酸味が強く許容範囲外であった。一方、実施例11では酸味は許容範囲内であり20分以上泡が保持された。
【0072】
比較例17及び比較例18では、キラヤ抽出物の配合量が少なかったため、溶解直後は発泡したものの10分で泡量不十分となった。一方、実施例11では20分以上泡が保持された。比較例14~比較例16では、キラヤ抽出物の配合量が多かったため、キラヤ抽出物特有の渋みが強く許容範囲外であった。一方、実施例2ではキラヤ抽出物の渋みは許容範囲内であり20分以上泡が保持された。
【0073】
〈実施例12~実施例20〉
代表的な即席麺の味付けとしてしょうゆ味、みそ味、及びしお味を選択して、発泡性粉末即席スープを調製した。起泡剤及びキラヤ抽出物の配合量を、実施例2(起泡剤の配合量が少なく、キラヤ抽出物の配合量が多い)、実施例7(起泡剤及びキラヤ抽出物の配合量が中程度)及び実施例11(起泡剤配合量が多く、キラヤ抽出物の配合量が少ない)に相当する量とし、粉末スープ原料を表7に記載のとおり変更した以外は、実施例1と同様の手順で発泡性粉末即席スープを調製した。
【0074】
発泡性粉末即席スープの発泡性及び泡保持性の測定並びに官能評価は、実施例2と同様の手順で行った。
【0075】
実施例12~実施例20の発泡性粉末即席スープの組成を表7に示す。実施例2、実施例7及び実施例11の発泡性粉末即席スープの組成も合わせて表7に再掲する。
【0076】
【0077】
実施例12~実施例20の発泡性粉末即席スープの評価結果を表8に示す。実施例2、実施例7及び実施例11の発泡性粉末即席スープの評価結果も合わせて表8に再掲する。
【0078】
【0079】
乳又は乳製品を主要原料とする食品を含み、増粘剤が多く配合されているとんこつ味(実施例2、実施例7及び実施例11)及びみそ味(実施例15~実施例17)の発泡性粉末即席スープでは、より長時間にわたって泡が保持された。いかなる理論に拘束される訳ではないが、一般的なとんこつ味及びみそ味の粉末即席スープの溶液は、粘度が高く、白濁し乳化していることが多いため、泡保持性に関して有利であったものと考えられる。乳又は乳製品を主要原料とする食品を含まず、増粘剤の配合量が少ないしょうゆ味(実施例12~実施例14)及びしお味(実施例18~実施例20)の発泡性粉末即席スープに関しても発泡及び泡の保持が観察された。