(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129553
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】電気化学装置
(51)【国際特許分類】
H01M 8/2465 20160101AFI20240919BHJP
C25B 9/60 20210101ALI20240919BHJP
H01M 8/12 20160101ALN20240919BHJP
【FI】
H01M8/2465
C25B9/60
H01M8/12 101
H01M8/12 102C
H01M8/12 102B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038847
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】志知 晋一郎
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 邦彦
【テーマコード(参考)】
4K021
5H126
【Fターム(参考)】
4K021CA01
5H126AA22
5H126BB06
5H126CC02
5H126GG02
5H126JJ03
(57)【要約】
【課題】電気化学セルの損傷を抑制可能な電気化学装置を提供する。
【解決手段】燃料電池装置1は、x軸方向に延びるガス流路121が形成された燃料電池セル10と、燃料電池セル10の第1端部10aを支持する第1支持部21と、燃料電池セル10の第2端部10bを支持する第2支持部23とを備える。第1支持部21は、第1支持板30と、第1支持板30から第2支持部23側に突出する第1キャップ部40とを有する。第1キャップ部40は、第1端部10aが挿入される第1挿入凹部41aが形成された第1挿入部41と、ガス流路121に連なる第1連通孔42aが形成された第1可撓部42とを含む。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向に延びるガス流路が内部に形成された電気化学セルと、
前記所定方向における前記電気化学セルの第1端部を支持する第1支持部と、
前記所定方向における前記電気化学セルの第2端部を支持する第2支持部と、
を備え、
前記第1支持部は、第1支持板と、前記第1支持板から前記第2支持部側に突出する第1キャップ部とを有し、
前記第1キャップ部は、前記第1端部が挿入される第1挿入凹部が形成された第1挿入部と、前記第1支持板と前記第1挿入部とに連結され、前記ガス流路に連なる第1連通孔が形成された第1可撓部とを含む、
電気化学装置。
【請求項2】
前記第1挿入部と前記第1端部の隙間には接合材が配置されている、
請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項3】
前記接合材は、前記第1挿入凹部の内周面と前記第1端部の外周面の間に介挿されている、
請求項2に記載の電気化学装置。
【請求項4】
前記所定方向における前記電気化学セルの全長に対する、前記所定方向における前記第1挿入凹部の深さの比は、0.02以上0.05以下である、
請求項1乃至3のいずれかに記載の電気化学装置。
【請求項5】
前記所定方向における前記電気化学セルの全長に対する、前記所定方向における前記第1連通孔の長さの比は、0.05以上0.20以下である、
請求項1乃至3のいずれかに記載の電気化学装置。
【請求項6】
前記第2支持部は、第2支持板と、前記第2支持板から前記第1支持部側に突出する第2キャップ部とを有し、
前記第2キャップ部は、前記第2端部が挿入される第2挿入凹部が形成された第2挿入部と、前記第2支持板と前記第2挿入部とに連結され、前記ガス流路に連なる第2連通孔が形成された第2可撓部とを含む、
請求項1乃至3のいずれかに記載の電気化学装置。
【請求項7】
前記電気化学セルは、セラミックス製であり、
前記第1支持部及び前記第2支持部は、それぞれ金属製である、
請求項1乃至3のいずれかに記載の電気化学装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気化学装置は、マニホールドと、複数の電気化学セル(電解セル、燃料電池など)とを備える(例えば、特許文献1参照)。各電気化学セルは、板状に形成されており、各電気化学セルの一端部は、マニホールドの支持板に形成された挿入孔に挿入されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電気化学装置が運搬中に揺れると、電気化学セルが撓むように振動することによって、電気化学セルが挿入孔付近で損傷しやすい。
【0005】
本発明の課題は、電気化学セルの損傷を抑制可能な電気化学装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1側面に係る電気化学装置は、所定方向に延びるガス流路が形成された電気化学セルと、所定方向における電気化学セルの第1端部を支持する第1支持部と、所定方向における電気化学セルの第2端部を支持する第2支持部とを備える。第1支持部は、第1支持板と、第1支持板から第2支持部側に突出する第1キャップ部とを有する。第1キャップ部は、第1端部が挿入される第1挿入凹部が形成された第1挿入部と、第1支持板と第1挿入部とに連結され、ガス流路に連なる第1連通孔が形成された第1可撓部とを含む。
【0007】
本発明の第2側面に係る電気化学装置は、上記第1側面に係り、第1挿入部と第1端部の隙間には接合材が配置されている。
【0008】
本発明の第3側面に係る電気化学装置は、上記第2側面に係り、接合材は、第1挿入凹部の内周面と第1端部の外周面の間に介挿されている。
【0009】
本発明の第4側面に係る電気化学装置は、上記第1乃至第3側面のいずれかに係り、所定方向における電気化学セルの全長に対する、所定方向における第1挿入凹部の深さの比は、0.02以上0.05以下である。
【0010】
本発明の第5側面に係る電気化学装置は、上記第1乃至第4側面のいずれかに係り、所定方向における電気化学セルの全長に対する、所定方向における第1連通孔の長さの比は、0.05以上0.20以下である。
【0011】
本発明の第6側面に係る電気化学装置は、上記第1乃至第5側面のいずれかに係り、第2支持部は、第2支持板と、第2支持板から第1支持部側に突出する第2キャップ部とを有する。第2キャップ部は、第2端部が挿入される第2挿入凹部が形成された第2挿入部と、第2支持板と第2挿入部とに連結され、ガス流路に連なる第2連通孔が形成された第2可撓部とを含む。
【0012】
本発明の第7側面に係る電気化学装置は、上記第1乃至第6側面のいずれかに係り、電気化学セルは、セラミックス製であり、第1支持部及び第2支持部は、それぞれ金属製である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、電気化学セルの損傷を抑制可能な電気化学装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【発明を実施するための形態】
【0015】
[燃料電池装置1]
図1は、実施形態に係る燃料電池装置1(電気化学装置の一例)の透視斜視図である。
図1に示すように、燃料電池装置1は、複数の燃料電池セル10(電気化学セルの一例)及び筐体20を備える。
【0016】
[燃料電池セル10]
図1に示すように、複数の燃料電池セル10は、筐体20内に収容される。複数の燃料電池セル10は、筐体20内に固定される。複数の燃料電池セル10は、z軸方向に配列されている。z軸方向は、燃料電池セル10の配列方向である。燃料電池セル10どうしは、図示しない集電部材によって電気的に接続されている。
【0017】
図2は、実施形態に係る燃料電池セル10の斜視図である。本実施形態に係る燃料電池セル10は、セラミックス製の固体酸化物形燃料電池セル(SOFC:Solid Oxide Fuel Cell)である。燃料電池セル10は、いわゆる横縞型の燃料電池セルである。
【0018】
燃料電池セル10は、x軸方向に延びる板状に形成される。x軸方向は、燃料電池セル10の長手方向である。x軸方向は、z軸方向に垂直な方向である。x軸方向は、本発明に係る「所定方向」の一例である。x軸方向における燃料電池セル10の全長Lは特に限られないが、例えば100mm以上300mm以下とすることができる。全長Lは、燃料電池セル10の第1端面E1と第2端面E2のx軸方向における距離である。
【0019】
燃料電池セル10は、第1端部10a及び第2端部10bを有する。第1端部10aは、x軸方向における燃料電池セル10の一端部である。第1端部10aは、第1端面E1を含む。第2端部10bは、x軸方向における燃料電池セル10の他端部である。第2端部10bは、第2端面E2を含む。
【0020】
燃料電池セル10は、複数の発電素子部11及び基板12を有する。
【0021】
発電素子部11は、基板12の両面に配置されている。ただし、発電素子部11は、基板12の片面のみに支持されていてもよい。発電素子部11どうしは、x軸方向において互いに間隔をあけて配置されている。
【0022】
基板12は、支持板12a及び緻密膜12bを有する。
【0023】
支持板12aは、板状に形成されている。支持板12aは、電子伝導性を有さない多孔質の材料によって構成される。支持板12aは、例えば、CSZ(カルシア安定化ジルコニア)、YSZ(イットリア安定化ジルコニア)、Y2O3(イットリア)及びこれらのうち少なくとも2つを含む複合材料から構成され得る。或いは、支持板12aは、MgO(酸化マグネシウム)とMgAl2O4(マグネシアアルミナスピネル)とから構成されてもよい。支持板12aの気孔率は、20%以上60%以下とすることができる。
【0024】
支持板12aは、x軸方向に延びる複数のガス流路121を内部に有している。各ガス流路121は、x軸方向における支持板12aの両端面に開口している。各ガス流路121の両端は、後述する供給空間S1及び排出空間S2(
図1参照)に連通している。各ガス流路121は、y軸方向において互いに間隔をあけて配置されている。y軸方向は、燃料電池セル10の短手方向である。y軸方向は、x軸方向及びz軸方向に垂直な方向である。
【0025】
緻密膜12bは、支持板12aの表面のうち発電素子部11が配置されていない領域を覆っている。緻密膜12bは、緻密膜12bの内側の空間を流れる燃料ガスと緻密膜12bの外側の空間を流れる空気との混合を防止するガスシール機能を有する。緻密膜12bの気孔率は、10%以下であることが好ましい。
【0026】
緻密膜12bは、絶縁性セラミックスによって構成される。絶縁性セラミックスとしては、後述する電解質14の構成材料を用いることができる。緻密膜12bは、電解質14と一体的に形成されていてもよい。
【0027】
図3は、燃料電池セル10の断面図である。発電素子部11は、燃料極13、電解質14、空気極15、反応防止膜16及び電気的接続部17を有する。
【0028】
燃料極13は、電子伝導性を有する多孔質の材料から構成される焼成体である。燃料極13は、燃料極集電部131と燃料極活性部132とを有する。
【0029】
燃料極集電部131は、支持板12aに形成された第1凹部123内に配置される。燃料極集電部131には、第2凹部131a及び第3凹部131bが形成されている。燃料極活性部132は、第2凹部131a内に配置される。
【0030】
燃料極集電部131は、例えば、NiO(酸化ニッケル)とYSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)とから構成され得る。或いは、燃料極集電部131は、NiO(酸化ニッケル)とY2O3(イットリア)とから構成されてもよいし、NiO(酸化ニッケル)とCSZ(カルシア安定化ジルコニア)とから構成されてもよい。燃料極集電部131の厚さ(すなわち、第1凹部123の深さ)は、50μm以上500μm以下とすることができる。
【0031】
燃料極活性部132は、例えば、NiO(酸化ニッケル)とYSZ(8YSZ)とから構成され得る。或いは、燃料極活性部132は、NiOとGDC(ガドリニウムドープセリア)とから構成されてもよい。燃料極活性部132の厚さは、5μm以上30μm以下とすることができる。
【0032】
電解質14は、燃料極13を覆うように配置される。電解質14は、イオン伝導性を有し且つ電子伝導性を有さない緻密な材料から構成される焼成体である。電解質14は、例えば、YSZ(8YSZ)から構成され得る。或いは、電解質14は、LSGM(ランタンガレート)から構成されてもよい。電解質14の厚さは、3μm以上50μm以下とすることができる。
【0033】
空気極15は、後述する反応防止膜16上に配置される。空気極15は、電子伝導性を有する多孔質の材料から構成される焼成体である。空気極15は、例えば、LSCF=(La,Sr)(Co,Fe)O3(ランタンストロンチウムコバルトフェライト)から構成され得る。或いは、空気極15は、LSF=(La,Sr)FeO3(ランタンストロンチウムフェライト)、LNF=La(Ni,Fe)O3(ランタンニッケルフェライト)、又は、LSC=(La,Sr)CoO3(ランタンストロンチウムコバルタイト)等から構成されてもよい。空気極15の厚さは、10μm以上100μm以下とすることができる。
【0034】
反応防止膜16は、緻密な材料から構成される焼成体である。反応防止膜16は、電解質14と空気極15との間に配置される。反応防止膜16は、電解質14内のYSZと空気極15内のSrとが反応して電解質14と空気極15との界面に電気抵抗が大きい反応層が形成される現象の発生を抑制するために設けられている。
【0035】
反応防止膜16は、希土類元素を含むセリアを含んだ材料から構成されている。反応防止膜16は、例えば、GDC=(Ce,Gd)O2(ガドリニウムドープセリア)から構成され得る。反応防止膜16の厚さは、3μm以上50μm以下とすることができる。
【0036】
電気的接続部17は、隣接する2つの発電素子部11どうしを電気的に接続する。電気的接続部17は、インターコネクタ171及び空気極集電部172を有する。
【0037】
インターコネクタ171は、燃料極集電部131の第3凹部131b内に配置される。インターコネクタ171は、電子伝導性を有する緻密な材料から構成される焼成体である。インターコネクタ171は、例えば、LaCrO3(ランタンクロマイト)から構成され得る。或いは、インターコネクタ171は、(Sr,La)TiO3(ストロンチウムチタネート)から構成されてもよい。インターコネクタ171の厚さは、10μm以上100μm以下とすることができる。
【0038】
空気極集電部172は、インターコネクタ171と空気極15の間を延びるように配置される。空気極集電部172は、電子伝導性を有する多孔質の材料から構成される焼成体である。空気極集電部172は、例えば、LSCFから構成され得る。或いは、空気極集電部172は、LSCから構成されてもよい。或いは、空気極集電部172は、Ag(銀)、Ag-Pd(銀パラジウム合金)から構成されてもよい。空気極集電部172の厚さは、50μm以上500μm以下とすることができる。
【0039】
[筐体20]
図1に示すように、筐体20は、複数の燃料電池セル10を収容する。筐体20は、第1支持部21、第1外板22、第2支持部23、第2外板24及び側板25を有する。
【0040】
第1支持部21は、各燃料電池セル10の第1端部10aを支持する。第1支持部21は、全体として板状に形成されている。第1外板22は、第1支持部21と対向する。第1外板22は、全体として板状に形成されている。第1支持部21及び第1外板22それぞれの外周は、気密かつ液密に側板25と接続される。これによって、第1支持部21と第1外板22の間に、燃料ガスが供給される供給空間S1が形成される。
【0041】
第2支持部23は、各燃料電池セル10の第2端部10bを支持する。第2支持部23は、全体として板状に形成されている。第2外板24は、第2支持部23と対向する。第2外板24は、全体として板状に形成されている。第2支持部23及び第2外板24それぞれの外周は、気密かつ液密に側板25と接続される。これによって、第2支持部23と第2外板24の間に、各燃料電池セル10において消費されなかった残燃料ガスが排出される排出空間S2が形成される。
【0042】
側板25は、複数の燃料電池セル10を取り囲むように配置される。側板25は、全体として筒状に形成される。側板25は、気密かつ液密に第1支持部21、第1外板22、第2支持部23及び第2外板24それぞれの外周と接続される。これによって、上述した供給空間S1及び排出空間S2に加えて、第1支持部21と第2支持部23の間に、酸素を含む酸化剤ガス(例えば、空気)が流通する流通空間S3が形成される。
【0043】
側板25は、燃料ガス供給口25a、残燃料ガス排出口25b、酸化剤ガス供給口25c及び酸化剤ガス排出口25dを有する。燃料ガス供給口25aは、燃料ガスを供給するための開口部であり、供給空間S1に繋がっている。残燃料ガス排出口25bは、残燃料ガスを排出するための開口部であり、排出空間S2に繋がっている。酸化剤ガス供給口25cは、酸化剤ガスを供給するための開口部であり、流通空間S3に繋がっている。酸化剤ガス排出口25dは、各燃料電池セル10において消費されなかった酸化剤ガスを排出するための開口部であり、流通空間S3に繋がっている。
【0044】
[第1支持部21]
図4は、第1支持部21の斜視図である。第1支持部21は、第1支持板30及び複数の第1キャップ部40を有する。本実施形態において、第1支持板30と第1キャップ部40は別々の部材である。
【0045】
第1支持板30は、板状に形成されている。第1支持板30は、第1主面T1及び複数の第1貫通孔31を有する。第1主面T1は、流通空間S3(
図1参照)に面する。複数の第1貫通孔31は、z軸方向に配列されている。各第1貫通孔31は、第1支持板30をx軸方向に貫通する。第1貫通孔31には、第1キャップ部40が取り付けられている。
【0046】
複数の第1キャップ部40それぞれは、幅広の筒状に形成されている。複数の第1キャップ部40は、z軸方向に配列されている。第1キャップ部40は、x軸方向において第1支持板30の第1主面T1から突出している。第1キャップ部40は、第1支持板30から第2支持部23(
図1参照)側に突出する。
【0047】
第1キャップ部40は、燃料電池セル10に対して個別に設けられる。第1キャップ部40は、燃料電池セル10の第1端部10aを支持する。第1キャップ部40は、第1支持板30の第1貫通孔31に取り付けられる。本実施形態では、第1キャップ部40の一部が第1貫通孔31に挿入されており、第1キャップ部40の残りの部分が第1支持板30から突出している。
【0048】
第1支持板30及び第1キャップ部40は、金属製である。金属材料としては、例えば、フェライト系ステンレス、オーステナイト系ステンレス、ニッケル基合金などを用いることができる。
【0049】
ここで、
図5は、第1支持部21の断面図である。
図5では、第1支持部21によって燃料電池セル10の第1端部10aが支持された状態が図示されている。
【0050】
図5に示すように、第1キャップ部40は、第1挿入部41及び第1可撓部42を有する。
【0051】
第1挿入部41は、第1外面T2及び第1挿入凹部41aを有する。第1外面T2は、第1挿入部41の表面のうち第2支持部23(
図1参照)と対向する領域である。第1挿入凹部41aは、第1外面T2に形成される有底凹部である。第1挿入凹部41aは、x軸方向に延びる。第1挿入凹部41aには、燃料電池セル10の第1端部10aが挿入される。第1挿入凹部41aは、第1底面T3を有する。第1底面T3には、燃料電池セル10の第1端面E1が当接する。このように、燃料電池セル10の第1端部10aは、第1挿入凹部41aに挿入されることによって支持されている。
【0052】
第1挿入部41と燃料電池セル10の第1端部10aとの隙間には、第1接合材50が配置されている。具体的には、第1接合材50は、第1挿入凹部41aの内周面と燃料電池セル10の第1端部10aの外周面の間に介挿されている。第1接合材50は、供給空間S1内の燃料ガスと流通空間S3内の酸化剤ガスとの混合を防止するガスシール機能を有する。
【0053】
第1接合材50は、例えば、結晶化ガラスによって構成することができる。結晶化ガラスとしては、例えば、SiO2-B2O3系、SiO2-CaO系、又はSiO2-MgO系が採用され得る。本明細書において、結晶化ガラスとは、全体積に対する「結晶相が占める体積」の割合(結晶化度)が60%以上であり、全体積に対する「非晶質相及び不純物が占める体積」の割合が40%未満のガラスを意味する。なお、第1接合材50は、非晶質ガラス、ろう材、又はセラミックスなどによって構成することもできる。具体的には、第1接合材50は、SiO2-MgO-B2O5-Al2O3系及びSiO2-MgO-Al2O3-ZnO系よりなる群から選ばれる少なくとも一種によって構成することができる。
【0054】
第1可撓部42は、第1支持板30と第1挿入部41とに連結される。
図5に示すように、第1可撓部42のうち供給空間S1側の端部は第1支持板30の第1貫通孔31に挿入されており、第1可撓部42のうち残りの部分は第1支持板30の第1主面T1から突出している。
【0055】
第1可撓部42は、第1内面T4及び第1連通孔42aを有する。第1内面T4は、第1外面T2の反対側に設けられる。第1連通孔42aは、第1内面T4から第1底面T3まで第1可撓部42を貫通する孔である。第1連通孔42aは、x軸方向に延びる。第1連通孔42aは、第1挿入凹部41aに挿入された燃料電池セル10の各ガス流路121と供給空間S1とに連なる。
【0056】
ここで、燃料電池装置1が運搬中に揺れると、x軸方向における燃料電池セル10の中央部分が撓むようにz軸方向に振動する。このとき、第1可撓部42は、燃料電池セル10の振動に合わせるようにz軸方向に撓む。これによって、第1可撓部42から燃料電池セル10への反発力を和らげることができるため、燃料電池セル10の第1端部10aに損傷(割れ、クラックなど)が生じることを抑制できる。
【0057】
x軸方向における燃料電池セル10の全長L(
図2参照)に対する、x軸方向における第1挿入凹部41aの深さA1の比(A1/L)は、0.02以上0.05以下であることが好ましい。比(A1/L)を0.02以上とすることによって、振動による撓みが燃料電池セル10に発生した状態においても第1挿入凹部41aによる十分な固定力を発揮できるため、燃料電池セル10が割れることを抑制できる。比(A1/L)を0.05以下とすることによって、セラミック製の燃料電池セル10と金属製の第1キャップ部40とのCTE(熱膨張係数)差に起因して昇温時にクラックが第1接合材50に生じることを抑制できる。
【0058】
x軸方向における燃料電池セル10の全長L(
図2参照)に対する、x軸方向における第1連通孔42aの長さA2の比(A2/L)は、0.05以上0.20以下であることが好ましい。比(A2/L)を0.05以上とすることによって、第1キャップ部40から燃料電池セル10への反発力を低減できるため、振動によって燃料電池セル10が割れることを抑制できる。比(A2/L)を0.20以下とすることによって、燃料電池セル10が隣接する他の燃料電池セル10と接触することを抑制できる。
【0059】
z軸方向における第1可撓部42の厚みC1は、断面二次モーメントI(厚みC1を変数に含む。)とヤング率Eとの積IEが小さくなるよう設定することが好ましい。
【0060】
ここで、次の表1は、第1キャップ部40における比(A1/L)及び比(A2/L)についての上記効果を実際に検証した結果である。表1では、割れ又はクラックが発生しなかった場合を「〇」と評価し、割れ又はクラックが発生した場合を「×」と評価した。
【0061】
なお、燃料電池セル10の全長Lを200mmに統一し、z軸方向における燃料電池セル10どうしの間隔を5mmに統一した。また、第2キャップ部70は、第1キャップ部40と同じ構成とした。
【0062】
【0063】
表1に示すように、比(A1/L)を0.02以上とすることによって、燃料電池セル10が振動によって割れることを抑制できた。また、比(A1/L)を0.05以下とすることによって、昇温時において第1接合材50にクラックが生じることを抑制できた。また、比(A2/L)を0.05以上とすることによって、燃料電池セル10が振動によって割れることを抑制できた。また、比(A2/L)を0.20以下とすることによって、燃料電池セル10どうしの接触による割れを抑制できた。
【0064】
[第2支持部23]
図6は、第2支持部23の斜視図である。第2支持部23は、第2支持板60及び複数の第2キャップ部70を有する。
【0065】
第2支持板60は、板状に形成されている。第2支持板60は、第2主面U1及び複数の第2貫通孔61を有する。第2主面U1は、流通空間S3(
図1参照)に面する。複数の第2貫通孔61は、z軸方向に配列されている。各第2貫通孔61は、第2支持板60をx軸方向に貫通する。第2貫通孔61には、第2キャップ部70が取り付けられている。
【0066】
複数の第2キャップ部70それぞれは、幅広の筒状に形成されている。複数の第2キャップ部70は、z軸方向に配列されている。第2キャップ部70は、x軸方向において第2支持板60の第2主面U1から突出している。第2キャップ部70は、第2支持板60から第2支持部23(
図1参照)側に突出する。
【0067】
第2キャップ部70は、燃料電池セル10に対して個別に設けられる。第2キャップ部70は、燃料電池セル10の第2端部10bを支持する。第2キャップ部70は、第2支持板60の第2貫通孔61に取り付けられる。本実施形態では、第2キャップ部70の一部が第2貫通孔61に挿入されており、第2キャップ部70の残りの部分が第2支持板60から突出している。
【0068】
第2支持板60及び第2キャップ部70それぞれは、金属製である。金属材料としては、例えば、フェライト系ステンレス、オーステナイト系ステンレス、ニッケル基合金などを用いることができる。
【0069】
ここで、
図7は、第2支持部23の断面図である。
図7では、第2支持部23によって燃料電池セル10の第2端部10bが支持された状態が図示されている。
【0070】
図7に示すように、第2キャップ部70は、第2挿入部71及び第2可撓部72を有する。
【0071】
第2挿入部71は、第2外面U2及び第2挿入凹部71aを有する。第2外面U2は、第2挿入部71の表面のうち第1支持部21(
図1参照)と対向する領域である。第2挿入凹部71aは、第2外面U2に形成される有底凹部である。第2挿入凹部71aは、x軸方向に延びる。第2挿入凹部71aには、燃料電池セル10の第2端部10bが挿入される。第2挿入凹部71aは、第2底面U3を有する。第2底面U3には、燃料電池セル10の第2端面E1が当接する。このように、燃料電池セル10の第2端部10bは、第2挿入凹部71aに挿入されることによって支持されている。
【0072】
第2挿入部71と燃料電池セル10の第2端部10bとの隙間には、第2接合材80が配置されている。具体的には、第2接合材80は、第2挿入凹部71aの内周面と燃料電池セル10の第2端部10bの外周面の間に介挿されている。第2接合材80は、排出空間S2内の残燃料ガスと流通空間S3内の酸化剤ガスとの混合を防止するガスシール機能を有する。
【0073】
第2接合材80は、例えば、結晶化ガラス、非晶質ガラス、ろう材、又はセラミックスなどによって構成することができる。
【0074】
第2可撓部72は、第2支持板60と第2挿入部71とに連結される。
図7に示すように、第2可撓部72のうち排出空間S2側の端部は第2支持板60の第2貫通孔61に挿入されており、第2可撓部72のうち残りの部分は第2支持板60の第2主面U1から突出している。
【0075】
第2可撓部72は、第2内面U4及び第2連通孔72aを有する。第2内面U4は、第2外面U2の反対側に設けられる。第2連通孔72aは、第2内面U4から第2底面U3まで第2可撓部72を貫通する孔である。第2連通孔72aは、x軸方向に延びる。第2連通孔72aは、第2挿入凹部71aに挿入された燃料電池セル10の各ガス流路121と排出空間S2とに連なる。
【0076】
ここで、燃料電池装置1が運搬中に揺れると、x軸方向における燃料電池セル10の中央部分が撓むようにz軸方向に振動する。このとき、第2可撓部72は、燃料電池セル10の振動に合わせるようにz軸方向に撓む。これによって、第2可撓部72から燃料電池セル10への反発力を和らげることができるため、燃料電池セル10の第2端部10bに損傷(割れ、クラックなど)が生じることを抑制できる。
【0077】
x軸方向における燃料電池セル10の全長L(
図2参照)に対する、x軸方向における第2挿入凹部71aの深さB1の比(B1/L)は、0.02以上0.05以下であることが好ましい。比(B1/L)を0.02以上とすることによって、振動による撓みが燃料電池セル10に発生した状態においても第2挿入凹部71aによる十分な固定力を発揮できるため、燃料電池セル10が割れることを抑制できる。比(B1/L)を0.05以下とすることによって、セラミック製の燃料電池セル10と金属製の第2キャップ部70とのCTE差に起因して昇温時にクラックが第2接合材80に生じることを抑制できる。
【0078】
x軸方向における燃料電池セル10の全長L(
図2参照)に対する、x軸方向における第2連通孔72aの長さB2の比(B2/L)は、0.05以上0.20以下であることが好ましい。比(B2/L)を0.05以上とすることによって、第2キャップ部70から燃料電池セル10への反発力を低減できるため、振動によって燃料電池セル10が割れることを抑制できる。比(B2/L)を0.20以下とすることによって、燃料電池セル10が隣接する他の燃料電池セル10と接触することを抑制できる。
【0079】
z軸方向における第2可撓部72の厚みC2は、断面二次モーメントI(厚みC2を変数に含む。)とヤング率Eとの積IEが小さくなるよう設定することが好ましい。
【0080】
(実施形態の変形例)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0081】
[変形例1]
上記実施形態において、第1支持板30と第1キャップ部40は別々の部材であり、第1キャップ部40の一部が第1支持板30の第1貫通孔31に挿入されることとしたが、これに限られない。
【0082】
例えば、
図8に示すように、第1キャップ部40は、第1支持板30の第1主面T1上に配置されていてもよい。この場合、第1主面T1の平面視において、第1キャップ部40は、第1貫通孔31の回りを取り囲むように配置される。
【0083】
また、
図9に示すように、第1キャップ部40は、第1支持板30と一体的に形成された部材であってもよい。
【0084】
同様に、上記実施形態において、第2支持板60と第2キャップ部70は別々の部材であり、第2キャップ部70の一部が第2支持板60の第2貫通孔61に挿入されることとしたが、これに限られない。
【0085】
[変形例2]
上記実施形態では、第1挿入凹部41aの内周面と燃料電池セル10の第1端部10aの外周面との間に第1接合材50が介挿されることとしたが、これに限られない。
【0086】
例えば、
図10に示すように、第1接合材50は、第1挿入部41の第1外面T2上に配置されていてもよい。この場合、第1接合材50は、第1挿入凹部41aの内周面と燃料電池セル10の第1端部10aの外周面との間に介挿されていなくてもよい。
【0087】
また、第1挿入凹部41aの内周面と燃料電池セル10の第1端部10aの外周面との間に第1接合材50が介挿されている場合、第1接合材50は、第1挿入凹部41aの第1底面T3と燃料電池セル10の第1端面E1との間にも介挿されていてもよい。
【0088】
また、第1挿入凹部41aの内周面と燃料電池セル10の第1端部10aの外周面との間に隙間が形成されない場合、第1接合材50は不要である。
【0089】
同様に、第2挿入凹部71aの内周面と燃料電池セル10の第2端部10bの外周面の間に第2接合材80が介挿されることとしたが、これに限られない。
【0090】
[変形例3]
上記実施形態では、電気化学セルの一例として横縞型の燃料電池セル10について説明したが、これに限られない。
【0091】
電気化学セルは、支持基板の1つの主面上に1つの発電素子が配置される縦縞型の燃料電池セルや、円筒状の支持管の内面上又は外面上に1つの発電素子が配置される円筒型の燃料電池セルであってもよい。
【0092】
また、電気化学セルは、燃料電池セルに限られない。電気化学セルは、電気エネルギーを化学エネルギーに変えるため全体的な酸化還元反応から起電力が生じるように一対の電極が配置された素子と、化学エネルギーを電気エネルギーに変えるための素子との総称である。従って、電気化学セルには、酸化物イオン或いはプロトンをキャリアとする燃料電池セルのほか、SOEC(Solid Oxide Electrolysis Cell:固体酸化物形電解セル)などの電解セルも含まれる。
【0093】
従って、本発明に係る電気化学装置は、燃料電池装置に限られず、電解装置などであってもよい。
【符号の説明】
【0094】
1…燃料電池装置、10…燃料電池セル、10a…第1端部、10b…第2端部、20…筐体、21…第1支持部、22…第1外板、23…第2支持部、24…第2外板、25…側板、30…第1支持板、40…第1キャップ部、41…第1挿入部、41a…第1挿入凹部、42…第1可撓部、42a…第1連通孔、50…第1接合材
60…第2支持板、70…第2キャップ部、71…第2挿入部、71a…第2挿入凹部、72…第2可撓部、72a…第2連通孔、80…第2接合材、S1…供給空間、S2…排出空間、S3…流通空間