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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129559
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】ブーム装置
(51)【国際特許分類】
   A01M 7/00 20060101AFI20240919BHJP
   B05B 17/00 20060101ALI20240919BHJP
【FI】
A01M7/00 Q
B05B17/00 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038854
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】000141174
【氏名又は名称】株式会社丸山製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140682
【弁理士】
【氏名又は名称】妙摩 貞茂
(72)【発明者】
【氏名】松田 公邦
【テーマコード(参考)】
2B121
4D074
【Fターム(参考)】
2B121CB03
2B121CB23
2B121CB31
2B121CB42
2B121CB47
2B121CB51
2B121CB53
2B121CB56
2B121CB69
4D074AA05
4D074BB06
4D074CC04
4D074CC25
4D074CC26
4D074CC28
4D074CC29
4D074CC32
4D074CC33
4D074CC38
4D074CC42
4D074CC55
(57)【要約】
【課題】サイドブームの長さの制御をすることなく、サイドブームの長手方向の任意の位置に物体を移動できるブーム装置を提供する。
【解決手段】ブーム装置は、サイドブーム6の長手方向に沿ってサイドブーム6に設けられたレール部69と、レール部69上を移動する移動体110を有する移動体ユニット(開閉ユニット100)と、レール部69上における移動体110の位置を操作する操作装置20と、を備える。
【選択図】図4

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体(3)の左右方向に沿って延在するサイドブーム(6)と、
前記サイドブーム(6)の長手方向に沿って前記サイドブーム(6)に設けられたレール部(69)と、
前記レール部(69)上を移動する移動体(110)を有する移動体ユニット(100)と、
前記レール部(69)上における前記移動体(110)の位置を操作する操作装置(20)と、を備える、ブーム装置。
【請求項2】
前記移動体ユニット(100)は、
前記サイドブーム(6)の長手方向において互いに離間して配置された第1回転体(101)および第2回転体(103)と、
前記第1回転体(101)を回転駆動される動力装置(105)と、
前記第1回転体(101)と前記第2回転体(103)とに架け渡された状態で、前記第1回転体(101)の回転に応じて回転移動する無端状の回転移動部材(107)と、
前記回転移動部材(107)に接続される前記移動体(110)と、を有する、請求項1に記載のブーム装置。
【請求項3】
前記移動体(110)は、鉛直方向に沿った軸を回転軸とする第1ローラ(121)と、鉛直方向に交差する方向に沿った軸を回転軸とする第2ローラ(131)とを有し、
前記レール部(69)は、前記第1ローラ(121)に対応するように前記サイドブーム(6)の上面に溝状に形成された第1レール(69A)と、前記第2ローラ(131)に対応するように前記サイドブーム(6)の側面に溝状に形成された第2レール(69B)とを有する、請求項1または2に記載のブーム装置。
【請求項4】
前記サイドブーム(6)の長手方向から見たとき、長手方向に直交する水平方向において、前記回転移動部材(107)は、前記第1ローラ(121)の回転軸よりも前記サイドブーム(6)に近い位置に設けられている、請求項2を引用する請求項3に記載のブーム装置。
【請求項5】
前記サイドブーム(6)は、長手方向に配置された薬液散布のための複数のノズル(90)を有する、請求項1に記載のブーム装置。
【請求項6】
前記複数のノズル(90)は、それぞれ開閉用の操作部材(96)を有し、
前記移動体(110)は、レール部(69)上を移動したときに前記操作部材(96)を操作可能な操作片(119)を含む、請求項5に記載のブーム装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ブーム装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、サイドブームを有するブーム装置が開示されている。サイドブームは、機体の進行方向に対して交差する水平方向に展開して、最大長さに伸ばすことで、最大の散布幅を実現でき、その長さを適宜伸縮することで、散布幅を可変に調整できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-103249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のブーム装置においては、機体から左右に張り出すサイドブームの長さが変更可能であることの開示がある。この場合、サイドブームの長さを変更することにより、例えば、サイドブームの長手方向における噴霧ノズルの位置が変更され得る。しかしながら、従来のブーム装置では、サイドブームの長さを変更することなく、サイドブームの長手方向の任意の位置に物体を移動させる手段の開示はない。
【0005】
本開示の一形態は、サイドブームの長さの制御をすることなく、サイドブームの長手方向の任意の位置に物体を移動できるブーム装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一例のブーム装置は、走行機体(3)の左右方向に沿って延在するサイドブーム(6)と、サイドブーム(6)の長手方向に沿ってサイドブーム(6)に設けられたレール部(69)と、レール部(69)上を移動する移動体(110)を有する移動体ユニット(100)と、レール部(69)上における移動体(110)の位置を操作する操作装置(20)と、を備える。
【0007】
上記のブーム装置では、サイドブーム(6)に設けられたレール部(69)上に移動体(110)が設けられており、当該移動体(110)の位置が操作装置(20)によって操作可能である。したがって、サイドブーム(6)の長さの制御をすることなく、サイドブーム(6)の長手方向の任意の位置に移動体(110)を移動できる。
【0008】
一例の移動体ユニット(100)は、サイドブーム(6)の長手方向において互いに離間して配置された第1回転体(101)および第2回転体(103)と、第1回転体(101)を回転駆動される動力装置(105)と、第1回転体(101)と第2回転体(103)とに架け渡された状態で、第1回転体(101)の回転に応じて回転移動する無端状の回転移動部材(107)と、回転移動部材(107)に接続される移動体(110)と、を有し得る。この構成では、第1回転体(101)の回転を動力装置(105)によって制御することで、簡便に移動体(110)の位置を変更することができる。
【0009】
一例の移動体(110)は、鉛直方向に沿った軸を回転軸とする第1ローラ(121)と、鉛直方向に交差する方向に沿った軸を回転軸とする第2ローラ(131)とを有し得る。レール部(69)は、第1ローラ(121)に対応するようにサイドブーム(6)の上面に溝状に形成された第1レール(69A)と、第2ローラ(131)に対応するようにサイドブーム(6)の側面に溝状に形成された第2レール(69B)とを有し得る。この構成では、サイドブーム(6)の側面と上面とが接続される角部に沿って移動体(110)を移動させることができる。
【0010】
一例のサイドブーム(6)の長手方向から見たとき、長手方向に直交する水平方向において、回転移動部材(107)は、第1ローラ(121)の回転軸よりもサイドブーム(6)に近い位置に設けられていてよい。この構成では、回転移動部材(107)から移動体(110)に作用する力によって、移動体(110)の第1ローラ(121)が第1レール(69A)に押圧されるため、レール部(69)から移動体(110)が脱落することが抑制される。
【0011】
一例のサイドブーム(6)は、長手方向に配置された複数のノズル(90)を有し得る。複数のノズル(90)は、それぞれ開閉用の操作部材(96)を有し得る。移動体(110)は、レール部(69)上を移動したときに操作部材(96)を操作可能な操作片(119)を含んでよい。この構成では、サイドブーム(6)の長手方向に沿って設けられた複数のノズル(90)にそれぞれ操作部材(96)が設けられており、サイドブーム(6)の長手方向に移動する移動体(110)がそれぞれの操作部材(96)を操作することにより各ノズル(90)の開閉が実行される。したがって、左右のサイドブーム(6)の長さを制御することなくブーム装置における散布幅を調整できる。
【発明の効果】
【0012】
本開示の一側面によれば、サイドブームの長さの制御をすることなく、サイドブームの長手方向の任意の位置に物体を移動できるブーム装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】一例のブームスプレーヤを斜め後方から見た斜視図である。
図2図1の部分拡大図である。
図3】サイドブームを構成する第2ブームの一例を示す断面図である。
図4】サイドブームを構成する第2ブームの一例を示す斜視図である。
図5】一例の第2ブームの基端側を示す斜視図である。
図6図4の部分拡大図である。
図7】一例の移動体を示す分解斜視図である。
図8】ブーム装置の制御系統の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、一例のブーム装置を有するブームスプレーヤについて図面を参照しながら具体的に説明する。便宜上、実質的に同一の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する場合がある。説明に際しては、図面に示されたXYZ直交座標系を参照する場合がある。なお、ブームスプレーヤを構成する走行機体を基準として、X方向を前後方向とし、Y方向を左右方向とし、Z方向を上下方向として説明する場合がある。
【0015】
図1は、一例のブームスプレーヤ1を斜め後方から見た斜視図である。ブームスプレーヤ1は、圃場において農地、作物等に薬液等の液体散布(噴霧)を行う、自走式の乗用管理機である。ブームスプレーヤ1は、機体フレームを有する走行機体3と、走行機体3の後部に取り付けられたブーム装置4とを備える。
【0016】
走行機体3には、作業者が着座する空間を形成するキャビン7が設けられていてよい。走行機体3においてキャビン7よりも前側には、エンジンを収容するエンジンルーム8が設けられている。走行機体3の後部には、ブーム装置4から散布される薬液等の液体を収容する液体タンク9が設けられている。走行機体3は、左右一対の前輪11と、左右一対の後輪12とを含んでいてよい。
【0017】
ブーム装置4は、走行機体3に支持された昇降装置30と、昇降装置30に支持されたセンターブーム5と、昇降装置30の両端に連結された一対のサイドブーム6とを含んでいる。センターブーム5及びサイドブーム6は、複数のノズル5a,61aが設けられた薬液散布用の送液管を有する。薬液散布を行う場合、一対のサイドブーム6は、センターブーム5の延在方向(Y方向)に沿って一直線状となるように走行機体3の左右に展開される。サイドブーム6は、薬液散布を行わないときには折り畳まれた状態で格納されている。例えば、サイドブーム6は、図1に示すように、基端よりも先端の高さ位置が高くなるように傾いた状態で格納されてもよい。
【0018】
サイドブーム6は、昇降装置30に接続された第1ブーム61と、スライド機構によって第1ブーム61に沿ってスライド移動する第2ブーム65と、を含むいわゆる伸縮ブームである。一例として、第2ブーム65は、第1ブーム61に設けられたスライド用の油圧モータの動作によって、第1ブーム61に沿ってスライド移動する。サイドブーム6は、スライド用の油圧モータが動作することによって、第2ブーム65が第1ブーム61の最も基端側に位置する縮小状態と、第2ブーム65が第1ブーム61の最も先端側に位置する伸長状態との間を移行することができる。
【0019】
図2は、図1の部分拡大図であり、ブーム装置4を斜め後方から見た斜視図である。上述の通り、ブーム装置4は、昇降装置30、センターブーム5及びサイドブーム6を含む。昇降装置30は、走行機体3に対するセンターブーム5等の高さ位置を移動させ得る。図2に示すように、昇降装置30は、支持フレーム31と昇降フレーム33とを有する。支持フレーム31は、走行機体3に接続されている。例えば、支持フレーム31は、走行機体3の後端部に支持されており、液体タンク9を下方から支持していてもよい。支持フレーム31の後端は、液体タンク9よりも後方まで延在しており、液体タンク9の後方において昇降フレーム33を支持している。図示例では、支持フレーム31が、鉛直方向に沿って伸縮する油圧シリンダ32を有しており、昇降フレーム33は、油圧シリンダ32の動作によって支持フレーム31に対して上下方向に移動可能となっている。
【0020】
昇降フレーム33は、主フレーム34と、揺動フレーム35とを有する。主フレーム34は、支持フレーム31に支持されており、揺動フレーム35を揺動可能に支持している。一例の主フレーム34は、前後方向から見て、左右方向に長い略矩形枠状を呈している。図示例の主フレーム34は、上下方向に対向する上部フレーム34a及び下部フレーム34bと、上部フレーム34aと下部フレーム34bとを接続する右フレーム34c、中央フレーム34d及び左フレーム34eと、を有する。上部フレーム34aは、上部フレーム34aから上方且つ後方に向かって突出する後部フレーム36を有する。
【0021】
揺動フレーム35は、左右方向に沿って延在しており、左右一対のダンパー35aを介して後部フレーム36に支持されている。それぞれのダンパー35aと後部フレーム36とは回動自在に接続されている。また、それぞれのダンパー35aと揺動フレーム35とは回動自在に接続されている。これにより、揺動フレーム35は、左右方向に振り子状となるように、主フレーム34に対して揺動可能に支持されている。なお、図示例では、一方のダンパー35aが伸縮可能に構成されている。そのため、一方のダンパー35aの長さを制御することにより、水平方向に対するセンターブーム5(揺動フレーム35)の角度を変更することができる。センターブーム5は、揺動フレーム35に支持されている。図示例のセンターブーム5は、揺動フレーム35よりも後方に位置しており、左右方向に沿って延在している。センターブーム5には複数のノズル5aが長さ方向に互いに離間して配置されている。センターブーム5のノズル5aには、送液管5bを介して液体タンク9から薬液が送られるようになっている。
【0022】
揺動フレーム35には、水平ロック装置37が設けられている。水平ロック装置37は、主フレーム34に対する揺動フレーム35の揺動をロックするための装置である。例えば、主フレーム34が水平に配置されている場合、水平ロック装置37は、揺動フレーム35を水平な状態に容易に保持することができる。図示例の水平ロック装置37は、左右一対の油圧シリンダ37aを有する。それぞれの油圧シリンダ37aは、揺動フレーム35に固定されている。油圧シリンダ37aは、縮小した状態において主フレーム34の右フレーム34c及び左フレーム34eから離間し、伸長した状態において右フレーム34cまたは左フレーム34eに当接する。油圧シリンダ37aが縮小している状態では、揺動フレーム35が揺動可能であり、油圧シリンダ37aが伸長した状態では、揺動フレーム35が水平な状態でロックされる。
【0023】
サイドブーム6は、左右方向において走行機体3よりも外側に張り出すことができるブームである。一形態では、一対のサイドブーム6の基端が揺動フレーム35の両端部にそれぞれ接続されている。サイドブーム6は、揺動フレーム35に対して旋回可能、且つ、傾動可能に接続される。例えば、一例のサイドブーム6は、上下方向に沿った回転軸6a及び水平方向に沿った回転軸6bを介してセンターブーム5に接続されている。
【0024】
一例のブーム装置4は、揺動フレーム35に対して直線上に左右方向に並ぶ開位置と走行機体3側に折り畳まれる閉位置との間でサイドブーム6を旋回させる油圧シリンダ41を有する。このような構成では、油圧シリンダ41が伸縮することによって、センターブーム5に支持されたサイドブーム6の旋回位置を変動させることができる。
【0025】
また、ブーム装置4は、傾斜状態と平行状態との間でサイドブーム6を傾動させる油圧シリンダ42を有する。傾斜状態は、サイドブーム6の先端の高さが基端の高さよりも高くなるようにサイドブーム6が揺動フレーム35に対して傾斜した状態であってよい。平行状態は、サイドブーム6の先端の高さが基端の高さと略同じになる状態であってよい。このような構成では、油圧シリンダ42が伸縮することによって、サイドブーム6の傾動位置を変動させることができる。
【0026】
図示例のサイドブーム6は、揺動フレーム35に接続された第1ブーム61(基端ブーム)と、第1ブーム61に対してスライド可能に接続された第2ブーム65(先端ブーム)とを有する。一例として、第2ブーム65は、第1ブーム61に設けられたスライド用の油圧モータ(図示省略)の動作によって、第1ブーム61に沿ってスライド移動する。サイドブーム6は、油圧モータが動作することによって、第2ブーム65が最も基端側に位置する縮小状態と、第2ブーム65が最も先端側に位置する伸長状態との間を移行することができる。
【0027】
図3は、第2ブーム65を示す断面図である。図4は、第2ブーム65を示す斜視図である。図3および図4に示すXYZ直交座標系は、走行機体3の左右方向(Y方向)に沿ってサイドブーム6が展開されている状態を基準としている。なお、図4に示される第2ブーム65は、図1に示す一対のサイドブーム6のうち走行機体3の前方に向かって右側に配置されたサイドブーム6を構成する。
【0028】
第2ブーム65は、筒状の送液管66を有する。送液管66は、第2ブーム65の長さ方向に沿って配置されるように、固定部材によって第2ブーム65の側面65aに固定されている。送液管66が配置される側面65aは、第1ブーム61に面する側面65bに対向する面である。送液管66には、複数のノズル90が長さ方向に沿って互いに離間して配置されている。送液管66は、例えば接続ホースを介して液体タンク9に接続されている。ノズル90は、第2ブーム65の長さ方向が水平方向に沿った状態において、噴射口90aが下向きになるように配置されている。
【0029】
ノズル90の上部には、ノズル90を開閉させるレバー96(操作部材)が連結されている。レバー96は、第2ブーム65の長さ方向が水平方向に沿った状態において、水平に延在する板片96aと、板片96aの基端側に形成された回転軸96bと、板片96aの先端側に設けられた当接部材96cと、を有する。例えば、当接部材96cは、板片96aの上面から上方に突出するように設けられたローラであってもよい。図示例のレバー96においては、当接部材96cが第2ブーム65の先端側に移動するよう(平面視において反時計回り)に板片96aが回転したときにノズル90が開状態となり、当接部材96cが第2ブーム65の基端側に移動するよう(平面視において時計回り)に板片96aが回転したときにノズル90が閉状態となる。
【0030】
レバー96は、内部にねじりコイルバネ等の付勢部材(図示省略)を有している。付勢部材は、レバー96が中立位置を保持するように、板片96aを付勢している。すなわち、外力によって板片96aが回転した後に、板片96aの働いていた外力がなくなると、ノズル90の開閉状態を維持したまま、レバー96(板片96a)が中立位置に戻るようになっている。図示例では、第2ブーム65の延在方向に直交する方向に板片96aが沿った状態が、レバー96が中立位置にある状態である。例えば、ノズル90は外力によって板片96aが反時計回りに動いたときに開状態となり、外力がなくなると、ノズル90の開状態が維持されたままレバー96が中立位置に戻る。また、ノズル90は外力によって板片が時計回りに動いたときに閉状態となり、外力がなくなると、ノズル90の閉状態が維持されたままレバー96が中立位置に戻る。なお、センターブーム5および第1ブーム61に設けられたノズル5aおよびノズル61aは、開閉制御のためのレバーを有していない。
【0031】
本実施形態において、ノズル90の開閉操作は、第2ブーム65に設けられた開閉ユニット100(移動体ユニット)によって実行される。図4に示すように、開閉ユニット100は、スプロケット101(第1回転体)と、プーリ103(第2回転体)と、動力装置105と、回転移動部材107と、移動体110と、を有する。図5は、第2ブーム65の基端側を示す斜視図であり、動力装置105の設けられたカバーが取り外された状態を示す。図6は、図4の部分拡大図である。図7は、移動体を示す分解斜視図である。
【0032】
スプロケット101は、第2ブーム65の長手方向の一端に配置されている。プーリ103は、第2ブーム65の長手方向の他端に配置されている。図示例において、スプロケット101は第2ブーム65の基端に位置しており、プーリ103は第2ブーム65の先端に位置している。スプロケット101とプーリ103とは、上下方向における下端の位置が互いに同じになるように設けられている。また、スプロケット101とプーリ103とは、左右方向(第2ブーム65の長手方向に交差する幅方向)の位置が互いに同じになるように設けられている。一例において、スプロケット101およびプーリ103の回転軸は、第2ブーム65が水平に延在している状態で、第2ブーム65の長手方向に直交するととも鉛直方向に直交している。
【0033】
回転移動部材107は、無端状をなしており、スプロケット101とプーリ103との間に架け渡されている。回転移動部材107は、スプロケット101の回転に応じて回転移動する。一例の回転移動部材107は、スプロケット101に噛み合うチェーン107aと、チェーン107aの端部同士を接続するワイヤ107bとを含む。ワイヤ107bは、複数の金属線が編み込まれた金属ワイヤロープであってもよい。図示例では、チェーン107aの長さとワイヤ107bの長さとが略同じである。
【0034】
動力装置105は、スプロケット101を回転駆動するための装置である。一例の動力装置105は、モータ105aを含む。例えば、モータはギアモータであってもよい。図示例では、モータ105aの回転出力軸に複数のギヤを介してスプロケット101の回転軸が接続されている。モータ105aの回転が制御されることにより、スプロケット101の回転方向及び回転数(回転速度)が制御される。回転移動部材107は、スプロケット101の回転方向に応じて、スプロケット101及びプーリ103の下端同士に渡された領域が第2ブーム65の先端に向かって移動する第1回転状態と、スプロケット101及びプーリ103の下端同士に渡された領域が第2ブーム65の基端に向かって移動する第2回転状態と、に制御される。
【0035】
移動体110は、レバー96の当接部材96cに当接してノズル90の開閉操作を行う。移動体110は、回転移動部材107に接続されている。移動体110は、チェーン107aとワイヤ107bとの接続位置に固定されている。図示例の移動体110は、チェーン107aとワイヤ107bとの接続位置のうち、スプロケット101及びプーリ103の下端同士に渡された領域に配置されている。これにより、移動体110は、スプロケット101及びプーリ103の下端同士を結ぶ領域において、第2ブーム65上を長手方向に沿って移動することができる。
【0036】
移動体110について、より詳細に説明する。一例の移動体110は、本体フレーム111と、第1ローラ121と、第2ローラ131とを含む。本体フレーム111は、第1ローラ121および第2ローラ131を回転自在に保持するとともに、回転移動部材107に接続されている。一例の本体フレーム111は、上壁部112と、側壁部113と、前壁部115と、後壁部116とを有する。上壁部112は、第1ローラ121を保持するための回転軸123を保持する。図示例の上壁部112は、板状を呈しており、長手方向に互いに離間した位置に一対の貫通孔112aを有している。貫通孔112aにはそれぞれボルト125が挿通されており、このボルト125に回転軸123の上端が固定されている。回転軸123の下端にはボルト127によって第1ローラ121が回転自在に保持されている。
【0037】
上壁部112の上面には、上向きに突出した接続部117が設けられている。例えば、接続部117は、上壁部112の長手方向の中央に設けられている。図示例の接続部117は、長手方向を厚さ方向とする板状を呈しており、上部に貫通孔117aを有している。回転移動部材107は、貫通孔117aに挿通された状態で、接続部117に固定されている。
【0038】
図3に示すように、第2ブーム65の長手方向に沿って見たとき、第2ブーム65の幅方向(X方向)において、接続部117の貫通孔117aの中心位置(中心線117cを参照)は、第1ローラ121の軸心の位置(中心線121cを参照)よりも第2ブーム65に近い。
【0039】
上壁部112には、操作片119が設けられている。操作片119は、レバー96の開閉操作をするための部材である。操作片119は、移動体110の移動に応じて、レバー96の当接部材96cに当接し得る。図示例では、矩形状をなす上壁部112において、側壁部113とは逆側の辺に外方に延在する延在部112cが設けられている。操作片119は、延在部112cから下向きに突出するように設けられている。一例の操作片119は、円柱状を呈しており、第1ローラ121よりも下方まで延在している。操作片119の下端の高さ位置は、板片96aの上面と当接部材96cの上端の間の位置であってよい。第2ブーム65の長手方向から見たとき、操作片119の下部の位置は、レバー96が中立位置にあるときの当接部材96cの位置に重複している。
【0040】
側壁部113は、板状を呈しており、上壁部112から下向きに突出している。側壁部113は、第2ローラ131を保持するための回転軸133を保持する。図示例の側壁部113は、長手方向に互いに離間した位置に一対の貫通孔(図示省略)を有している。この貫通孔にはボルト137が挿通されており、このボルト137が回転軸133に挿通されている。回転軸133は第2ローラ131を回転自在に支持している。ボルト137はナット(図示省略)によって側壁部113に固定されている。
【0041】
前壁部115は、板状を呈している。第2ブーム65の長手方向において先端側を前側とし基端側を後側とした場合、前壁部115は、上壁部112の前端から下向きに突出している。前壁部115の前面には、衝撃吸収のためのクッション材115aが設けられている。後壁部116は、板状を呈しており、上壁部112の後端から下向きに突出している。後壁部116の後面には、衝撃吸収のためのクッション材116aが設けられている。
【0042】
一例においては、第2ブーム65の先端に規制板67Aが設けられ、第2ブーム65の基端に規制板67Bが設けられている。規制板67Aは、第2ブーム65の先端に移動した移動体110のクッション材115aに当接することにより、移動体110がプーリ103に到達することを防止する。規制板67Bは、第2ブーム65の基端に移動した移動体110のクッション材116aに当接することにより、移動体110がスプロケット101に到達することを防止する。
【0043】
上述のように、移動体110は、鉛直方向(図示例ではZ方向)に沿った軸を回転軸とする第1ローラ121と、鉛直方向に交差する方向(図示例ではX方向)に沿った軸を回転軸とする第2ローラ131とを有する。一例においては、第1ローラ121および第2ローラ131が第2ブーム65に設けられたレール部69に係合する。図示例では、レール部69は、第1ローラ121に対応するように第2ブーム65の側面65aに溝状に形成された第1レール69Aと、第2ローラ131に対応するように第2ブーム65の上面に溝状に形成された第2レール69Bとを有する。
【0044】
開閉ユニット100の動作について説明する。移動体110が第2ブーム65の基端に位置している場合(例えば、クッション材116aが規制板67Bに当接している状態)、第2ブーム65に設けられているノズル90は全て閉状態となっている。この状態で、スプロケット101が第1回転状態に制御されるように動力装置105が動作すると、移動体110はレール部69上を第2ブーム65の先端に向かって移動する。ノズル90が配置されている位置を移動体110が通過するとき、移動体110の操作片119は当該ノズル90に接続されたレバー96の当接部材96cに当接する。これにより、レバー96の先端側が第2ブーム65の先端に向かうように回動し、ノズル90が開状態となる。
【0045】
一方、スプロケット101が第2回転状態に制御されるように動力装置105が動作すると、移動体110はレール部69上を第2ブーム65の基端に向かって移動する。ノズル90が配置されている位置を移動体110が通過するとき、移動体110の操作片119は当該ノズル90に接続されたレバー96の当接部材96cに当接する。これにより、レバー96の先端側が第2ブーム65の基端に向かうように回動し、ノズル90が閉状態となる。このように、移動体110がレール部69上を移動することにより複数のノズル90の開閉を制御することができる。それぞれのノズル90は、移動体110よりも第2ブーム65の基端側に位置しているときに開状態となり、移動体110よりも第2ブーム65の先端側に位置しているときに閉状態となる。
【0046】
図8は、ブーム装置4における操作装置の構成の一例を説明するブロック図である。図8に示すように、ブーム装置4は、開閉ユニット100に設けられた動力装置105を操作するための操作装置20を備えている。操作装置20は、作業者によって操作可能な操作部を有していてよい。図示例の操作装置20は、走行機体3の前方に向かって右側に配置されたサイドブーム6の開閉ユニット100を操作するための第1操作部21と、走行機体3の前方に向かって左側に配置されたサイドブーム6の開閉ユニット100を操作するための第2操作部22と、を有している。なお、操作装置20は、左右一対のサイドブーム6に設けられた開閉ユニット100を同時に操作する操作部を有していてもよい。第1操作部および第2操作部は、キャビン7内に設けられており、作業者が着座した状態で操作可能であってよい。
【0047】
操作装置20は、例えば、プロセッサ、記憶装置、入出力回路等を含んでいてもよい。操作装置20は、第1操作部および第2操作部の操作に応じて、開閉ユニット100の動力装置105に対して動作制御のための信号を出力する。一例において、第1操作部および第2操作部は、傾動可能なレバーを有するトグルスイッチであってよい。例えば、第1操作部および第2操作部は、レバーが傾動していない中立状態と、レバーが一方に傾動する第1状態と、レバーが他方に傾動する第2状態とに操作可能であってよい。操作部が中立状態のとき、動力装置105の動作は停止している。操作部が第1状態のとき、スプロケット101が第2回転状態に制御され、移動体110が先端側に移動するように動力装置105が制御される。操作部が第2状態のとき、移動体110が基端側に移動するように動力装置105が制御される。
【0048】
作業者がブームスプレーヤ1を使用して圃場の散布作業を行う場合、作業者は操作装置20を操作することにより、左右のサイドブーム6における散布幅を変更することができる。例えば、作業者は、複数のノズル90から噴霧される液体を目視により確認しながら、第1操作部21および第2操作部22を操作することにより、移動体110の位置を変更することで、左右のサイドブーム6における散布幅を変更する。
【0049】
以上説明のとおり、一例のブーム装置は、走行機体3の左右方向に沿って延在するサイドブーム6と、サイドブーム6の長手方向に沿ってサイドブーム6に設けられたレール部69と、レール部69上を移動する移動体110を有する開閉ユニット100と、レール部69上における移動体110の位置を操作する操作装置20と、を備える。
【0050】
上記のブーム装置では、サイドブーム6に設けられたレール部69上に移動体110が設けられており、当該移動体110の位置が操作装置20によって操作可能である。したがって、サイドブーム6の長さの制御をすることなく、サイドブーム6の長手方向の任意の位置に移動体110を移動できる。
【0051】
一例の開閉ユニット100は、サイドブーム6の長手方向において互いに離間して配置されたスプロケット101およびプーリ103と、スプロケット101を回転駆動される動力装置105と、スプロケット101とプーリ103とに架け渡された状態で、スプロケット101の回転に応じて回転移動する無端状の回転移動部材107と、回転移動部材107に接続される移動体110と、を有し得る。この構成では、スプロケット101の回転を動力装置105によって制御することで、簡便に移動体110の位置を変更することができる。
【0052】
一例の移動体110は、鉛直方向に沿った軸を回転軸とする第1ローラ121と、鉛直方向に交差する方向に沿った軸を回転軸とする第2ローラ131とを有し得る。レール部69は、第1ローラ121に対応するようにサイドブーム6の上面に溝状に形成された第1レール69Aと、第2ローラ131に対応するようにサイドブーム6の側面に溝状に形成された第2レール69Bとを有し得る。この構成では、サイドブーム6の側面と上面とが接続される角部に沿って移動体110を移動させることができる。
【0053】
サイドブーム6の長手方向から見たとき、長手方向に直交する水平方向において、一例の回転移動部材107は、第1ローラ121の回転軸よりもサイドブーム6に近い位置に設けられていてよい。この構成では、回転移動部材107から移動体110に作用する力によって、移動体110の第1ローラ121が第1レール69Aに押圧され得るため、レール部69から移動体110が脱落することが抑制され得る。
【0054】
一例のサイドブーム6は、長手方向に配置された複数のノズル90を有し得る。複数のノズル90は、それぞれ開閉用のレバー96を有し得る。移動体110は、レール部69上を移動したときにレバー96を操作可能な操作片119を含んでよい。この構成では、サイドブーム6の長手方向に沿って設けられた複数のノズル90にそれぞれレバー96が設けられており、サイドブーム6の長手方向に移動する移動体110がそれぞれのレバー96を操作することにより各ノズル90の開閉が実行される。したがって、左右のサイドブーム6の長さを制御することなくブーム装置における散布幅を調整できる。
【0055】
以上、一実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られない。
【0056】
例えば、ブーム装置4が走行機体3の後部に設けられているブームスプレーヤを例示したが、ブーム装置は走行機体の前部に設けられていてもよい。
【0057】
また、サイドブームが第1ブーム61および第2ブーム65によって構成されている例を示したが、サイドブームは、例えば、揺動フレームに接続された第1ブームと、第1ブームに対してスライド可能な第2ブームと、第2ブームに対してスライド可能な第3ブームとを有してもよく、開閉ユニットは第3ブームに設けられてもよい。
【0058】
また、移動体ユニットが、ノズルを開閉するための開閉ユニットである例を示したが、これに限定されない。例えば、移動体ユニットは、GPS受信器のような電波等を受信する装置を移動体として有してもよい。移動体ユニットは、可視光線、赤外線等によって画像および動画像を撮像する撮像装置を移動体として有してもよい。移動体ユニットは、赤外線センサ等の各種センサを移動体として有してもよい。なお、移動体が操作片を有しない場合、ノズル90による液体散布は、送液管に接続されたバルブの制御によって実行されてもよいし、ノズル90に別途設けられた電磁弁等によって制御されてもよい。
【0059】
本開示の形態は、以下のように示され得る。
[1]
走行機体(3)の左右方向に沿って延在するサイドブーム(6)と、
前記サイドブーム(6)の長手方向に沿って前記サイドブーム(6)に設けられたレール部(69)と、
前記レール部(69)上を移動する移動体(110)を有する移動体ユニット(100)と、
前記レール部(69)上における前記移動体(110)の位置を操作する操作装置(20)と、を備える、ブーム装置。
[2]
前記移動体ユニット(100)は、
前記サイドブーム(6)の長手方向において互いに離間して配置された第1回転体(101)および第2回転体(103)と、
前記第1回転体(101)を回転駆動される動力装置(105)と、
前記第1回転体(101)と前記第2回転体(103)とに架け渡された状態で、前記第1回転体(101)の回転に応じて回転移動する無端状の回転移動部材(107)と、
前記回転移動部材(107)に接続される前記移動体(110)と、を有する、[1]に記載のブーム装置。
[3]
前記移動体(110)は、鉛直方向に沿った軸を回転軸とする第1ローラ(121)と、鉛直方向に交差する方向に沿った軸を回転軸とする第2ローラ(131)とを有し、
前記レール部(69)は、前記第1ローラ(121)に対応するように前記サイドブーム(6)の上面に溝状に形成された第1レール(69A)と、前記第2ローラ(131)に対応するように前記サイドブーム(6)の側面に溝状に形成された第2レール(69B)とを有する、[1]または[2]に記載のブーム装置。
[4]
前記サイドブーム(6)の長手方向から見たとき、長手方向に直交する水平方向において、前記回転移動部材(107)は、前記第1ローラ(121)の回転軸よりも前記サイドブーム(6)に近い位置に設けられている、[2]を引用する[3]に記載のブーム装置。
[5]
前記サイドブーム(6)は、長手方向に配置された薬液散布のための複数のノズル(90)を有する、[1]~[4]のいずれかに記載のブーム装置。
[6]
前記複数のノズル(90)は、それぞれ開閉用の操作部材(96)を有し、
前記移動体(110)は、レール部(69)上を移動したときに前記操作部材(96)を操作可能な操作片(119)を含む、[5]に記載のブーム装置。
【符号の説明】
【0060】
1…ブームスプレーヤ、3…走行機体、4…ブーム装置、6…サイドブーム、20…操作装置、69…レール部、90…ノズル、96…レバー(操作部材)、100…開閉ユニット(移動体ユニット)、101…スプロケット(第1回転体)、103…プーリ(第2回転体)、105…動力装置、107…回転移動部材、110…移動体。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8